説明

シートベルト装置

【課題】ラップベルト側からショルダーベルト側へスムーズにガスを送ることができつつ、シートベルトの使用性の悪化も防止できるシートベルト装置を提供すること。
【解決手段】シートベルト装置4は、インフレータ10と、このインフレータ10から発せられるガスを送り可能に袋状に形成されているシートベルト20と、このシートベルト20が差し込まれているタングプレート30と、このタングプレート30を装着可能なバックル40とを備えている。インフレータ10からガスが発せられる前の状態では、シートベルト20の袋状の内部は、その長手方向に沿って第1の内部22と第2の内部24に区画されており、インフレータ10から発せられたガスは、第2の内部24にのみ送られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートベルト装置に関し、詳しくは、インフレータと、このインフレータから発せられるガスを送り可能に袋状に形成されているシートベルトと、このシートベルトが差し込まれているタングプレートと、このタングプレートを装着可能なバックルとを備えたシートベルト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートベルトの一方側の端部にインフレータを接続させておき、車両に追突が発生すると、この接続させたインフレータから発せられるガスをシートベルトの内部へ送り、この送られたガスによってシートベルトを膨らますことで乗員の保護を図ることができるシートベルト装置が知られている。ここで、下記特許文献1には、シートベルトの内部にチューブを設け、このチューブを介してラップベルト側からショルダーベルト側へガスを送るシートベルト装置が開示されている。これにより、シートベルトがタングプレートによって折り返されていても、ラップベルト側からショルダーベルト側へスムーズにガスを送ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2002−502750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来技術では、シートベルトの内部にチューブを設けているため、シートベルトの厚みが増すこととなり、シートベルトの使用性が悪くなるという問題が発生していた。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、ラップベルト側からショルダーベルト側へスムーズにガスを送ることができつつ、シートベルトの使用性の悪化も防止できるシートベルト装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのものであって、以下のように構成されている。
請求項1に記載の発明は、インフレータと、このインフレータから発せられるガスを送り可能に袋状に形成されているシートベルトと、このシートベルトが差し込まれているタングプレートと、このタングプレートを装着可能なバックルとを備えたシートベルト装置であって、インフレータからガスが発せられる前の状態では、シートベルトの袋状の内部は、その長手方向に沿って第1の内部と第2の内部に区画されており、インフレータから発せられたガスは、第2の内部に送られることを特徴とする構成である。
この構成によれば、インフレータからのガスの導入時、第2の内部が膨らんでいく。そして、第2の内部を膨らませると、この膨らみに伴って、第1の内部も膨らませることができる。したがって、従来技術と同様に、ラップベルト側からショルダーベルト側へスムーズにガスを送ることができる。また、この構成によれば、従来技術と異なり、シートベルトの内部にチューブを設ける必要がない。そのため、シートベルトの厚みが増すことも無く、シートベルトの使用性の悪化を防止できる。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のシートベルト装置であって、第2の内部にのみ送られたガスが第2の内部で高圧になると、第1の内部と第2の内部の区画がバーストすることで、インフレータから発せられたガスは第1の内部にも送られることを特徴とする構成である。
そのため、シートベルトを膨らませることができる。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1〜2のいずれかに記載のシートベルト装置であって、第1の内部と第2の内部の区画は、縫製によって行われていることを特徴とする構成である。
この構成によれば、シートベルトの内部を縫製によって区画しているため、シートベルトを簡単に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の実施例1に係るシートベルト装置を適用した助手席の全体斜視図であり、タングプレートをバックルに装着したシートベルトの使用状態を示している。
【図2】図2は、図1のシートベルトの断面図である。
【図3】図3は、図2のシートベルトの膨らみ途中の状態を示す図である。
【図4】図4は、図3のシートベルトの膨らみが完了した状態を示す図である。
【図5】図5は、本発明の実施例2に係るシートベルトの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。
(実施例1)
まず、本発明の実施例1を説明する。はじめに、実施例1に係る助手席1を説明する。この助手席1は、シートクッション2と、シートバック3と、シートベルト装置4とから構成されている(図1参照)。これら構成部材2、3、4のうち、シートベルト装置4について説明していく。なお、シートクッション2と、シートバック3とは、公知の構成で良いため、その詳細な説明は省略することとする。
【0011】
このシートベルト装置4は、主として、インフレータ10と、シートベルト20と、タングプレート30と、バックル40とから構成されている。以下に、これら構成部材10、20、30、40を個別に説明していく。
【0012】
はじめに、インフレータ10から説明していく。このインフレータ10は、高圧のガスを発する部材であり、シートクッション2のクッションフレーム(図示しない)のアウタ側に取り付けられている。このインフレータ10は、ECU(図示しない)が車両に前突が発生したことを検出すると、高圧のガスを発するような構造となっている。
【0013】
次に、シートベルト20を説明する。このシートベルト20は、助手席1の乗員を拘束するベルト部材である。このシートベルト20の一端側は、アンカー50を介してシートクッション2のクッションフレーム(図示しない)のアウタ側に締結されている。一方、このシートベルト20の他端側は、シートバック3の内部に取り付けられているリトラクタ(図示しない)に締結されている。
【0014】
また、このシートベルト20は、その一端側から他端側に向けてガスを送り可能な風路26を有する略筒状に形成されている。ここで、この風路26について詳述すると、この風路26は、インフレータ10が作動する前の常時(以下、単に、「通常時」と記す)、その長手方向に沿ってメイン風路22と、一対のサブ風路24、24を成すように第1の糸N1、N1の縫合によって区画されている。このメイン風路22とサブ風路24とが、特許請求の範囲に記載の「第1の内部と第2の内部」に相当する。
【0015】
そして、このシートベルト20の両サブ風路24、24の一端側とインフレータ10とは、ホース12、12を介して接続されている。これにより、インフレータ10から発せられたガスをシートベルト20の両サブ風路24、24へ送ることができる。なお、このシートベルト20は、通常時、そのメイン風路22が一対のサブ風路24、24をそれぞれ上下に挟み込む格好を成すように折り重ね合わされた状態で、自身が略帯状を成すように、その両縁が第2の糸N2、N2によって縫い合わされている(図2参照)。なお、これら両糸N1、N2の縫合により、メイン風路22は、両サブ風路24、24の各上下に枝分かれ(4つに枝分かれ)する格好をなしている。
【0016】
なお、シートベルト20の他端側において、第1の糸N1、N1は、その縫合端が第2の糸N2、N2の縫合端より手前側となるように縫合されている(図1の一部拡大図参照)。これにより、後述するように、インフレータ10からガスが発せられシートベルト20の一端側から他端側に向けて両サブ風路24、24とメイン風路22とが連通状態となるとき、メイン風路22において、その他端側から一端側に向けてもガスを送ることができるため、ラップベルト20aとショルダーベルト20bと間で、これらの膨らみが完了するまでの時間差を少なくできる。
【0017】
次に、タングプレート30を説明する。タングプレート30は、後述するバックル40に装着可能なプレート部材である。このタングプレート30は、シートベルト20を差し込み可能なベルト差込孔32を有するように略O字状に形成されている。そして、このタングプレート30は、そのベルト差込孔32にシートベルト20が差し込まれた状態で、シートベルト20に引っ掛けられている。
【0018】
最後に、バックル40を説明する。バックル40は、タングプレート30を装着可能な受け部材であり、シートクッション2のクッションフレーム(図示しない)のインナ側に取り付けられている。そして、シートベルト20を助手席1に着座した乗員に掛け留めてタングプレート30をバックル40に装着すると、シートベルト20によって乗員を拘束できる。このように乗員を拘束した状態をシートベルト20の使用状態と記す(図1参照)。
【0019】
これらインフレータ10と、シートベルト20と、タングプレート30と、バックル40とからシートベルト装置4は構成されている。そして、助手席1は、公知のシートクッション2と、公知のシートバック3と、上述したシートベルト装置4とから構成されている。
【0020】
続いて、図2〜4を参照して、上述したシートベルト装置4の作用を説明する。なお、この説明にあたって、使用状態にあるときのシートベルト20の作用を説明することとする。ECU(図示しない)が車両に追突が発生したことを検出すると、インフレータ10からガスが発せられる。この発せられたガスは、ホース12、12を介してシートベルト20(ラップベルト20a)の両サブ風路24、24の一端側へ送られる。
【0021】
なお、ラップベルト20aとは、シートベルト20のうち、タングプレート30とアンカー50との間のシートベルト20を意味している。これに対し、シートベルト20のうち、タングプレート30とシートバック3の肩口との間をショルダーベルト20bと記すこととする。
【0022】
すると、シートベルト20(ラップベルト20a)の両サブ風路24、24にガスが送られるため、このガスが送られたシートベルト20の両サブ風路24、24は、その一端側(ラップベルト20a側)からシートバック3側(ショルダーベルト20b側)に向けて順に膨らんでいく。このとき、両サブ風路24、24が膨らんでいっても、この膨らみに伴って、メイン風路22も膨らませることができる(図3参照)。
【0023】
やがて、両サブ風路24、24が完全に膨らんだ状態になると(両サブ風路24、24内部でガスが高圧になると)、シートベルト20の一端側から他端側に向けて第1の糸N1、N1と第2の糸N2、N2とが切断されるため、シートベルト20の一端側から他端側に向けて両サブ風路24、24とメイン風路22とが連通状態となる。このように連通状態になると、インフレータ10から送られるガスはメイン風路22にも送られるため、シートベルト20を膨らませることができる(図4参照)。なお、このように連通状態になると、既に説明したように、メイン風路22において、その他端側から一端側に向けてもガスを送ることができるため、ラップベルト20aとショルダーベルト20bと間で、これらの膨らみが完了するまでの時間差を少なくできる。そして、膨らんだシートベルト20によって、従来技術と同様に、乗員の保護を図ることができる。
【0024】
なお、上述したように、両サブ風路24、24の膨らみに伴ってメイン風路22も膨らんでいくため、例えば、通常時のシートベルト20の使用状態において、タングプレート30によるシートベルト20の折り返しによりシートベルト20のメイン風路22が塞がれぎみの状態になっていても(図2の状態になっていても)、インフレータ10からガスが発せられると、この折り返し部位のメイン風路22を確保できる(図3参照)。したがって、ラップベルト20a側からショルダーベルト20b側へスムーズにガスを送ることができる。
【0025】
なお、インフレータ10から発せられたガスは高圧であるため、シートベルト20(ラップベルト20aとショルダーベルト20b)を瞬時に膨らませることができる。このようにシートベルト20を膨らませることができると、単に、乗員を拘束する通常のシートベルト(ベルトそのものが膨らむことないシートベルト)と比較すると、車両に追突が発生したときの乗員の初期拘束性能を向上させることができる。
【0026】
また、このようにシートベルト20を膨らませることができると、車両に追突が発生した後にシートベルト20に対して乗員から荷重が作用しても、この作用した荷重の面圧が低下するため、その反力による乗員への衝撃も減少させることができる。このように、単に乗員を拘束する通常のシートベルトと比較すると、乗員の保護をより図ることができる。
【0027】
本発明の実施例1に係るシートベルト装置4は、上述したように構成されている。この構成によれば、インフレータ10からのガスの導入時、両サブ風路24、24が膨らんでいく。そして、両サブ風路24、24を膨らませると、この膨らみに伴って、メイン風路22も膨らませることができる。したがって、従来技術と同様に、ラップベルト20a側からショルダーベルト20b側へスムーズにガスを送ることができる。また、この構成によれば、従来技術と異なり、シートベルト20の内部(風路26)にチューブを設ける必要がない。そのため、シートベルト20の厚みが増すことも無く、シートベルト20の使用性の悪化を防止できる。
【0028】
また、この構成によれば、両サブ風路24、24が完全に膨らんだ状態になると(両サブ風路24、24内部でガスが高圧になると)、シートベルト20の一端側から他端側に向けて第1の糸N1、N1と第2の糸N2、N2とが切断されるため、シートベルト20の一端側から他端側に向けて両サブ風路24、24とメイン風路22とが連通状態となる。そのため、インフレータ10から送られるガスをメイン風路22にも送ることができる。したがって、シートベルト20を膨らませることができる。
【0029】
また、この構成によれば、風路26は、その長手方向に沿ってメイン風路22と、一対のサブ風路24、24を成すように第1の糸N1、N1の縫合によって区画されている。そのため、このようにシートベルト20の風路26を縫製によって区画しているため、シートベルト20を簡単に製造できる。
【0030】
(実施例2)
次に、実施例2を説明する。この実施例2のシートベルト装置4は、既に説明した実施例1のシートベルト装置4と比較すると、メイン風路22の枝分かれの数を変更した形態である。なお、以下の説明にあたって、実施例1と同一もしくは均等な構成の部材には、図面において同一符号を付すことで重複する説明は省略することとする。
【0031】
図5に示すように、メイン風路22は、両糸N1、N2の縫合により、両サブ風路24、24の各下に枝分かれ(2つに枝分かれ)する格好をなしている。
【0032】
本発明の実施例2に係るシートベルト装置4は、上述したように構成されている。この構成によれば、実施例1のシートベルト装置4と同様の作用効果を得ることができる。また、この構成によれば、実施例1よりシートベルト20をコンパクトにできる。
【0033】
上述した内容は、あくまでも本発明の一実施の形態に関するものであって、本発明が上記内容に限定されることを意味するものではない。
各実施例では、助手席1を例に説明した。しかし、これに限定されるものでなく、運転席、後部座席等であっても構わない。
【0034】
また、各実施例では、シートベルト20そのもの(ラップベルト20aとショルダーベルト20b)を膨らませる例を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、ラップベルト20aとショルダーベルト20bとにエアバック袋を設けておき、この設けたエアバック袋を膨らませても構わない。その場合、シートベルト20そのものを膨らませるより、膨らませの展開量を大きく確保できる。
【0035】
また、各実施例では、インフレータ10から発せられたガスは、ホース12、12を介してシートベルト20(ラップベルト20a)の両サブ風路24、24の一端側へ送られる例を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、ホース12、12を介してシートベルト20(ラップベルト20a)のメイン風路22の一端側にも送られる形態でも構わない。その場合、シートベルト20全体としてのクッション性をガスが発せられた初期状態から向上させることができる。
【符号の説明】
【0036】
4 シートベルト装置
10 インフレータ
20 シートベルト
22 メイン風路(第1の内部)
24 サブ風路(第2の内部)
30 タングプレート
40 バックル
N1 第1の縫製




【特許請求の範囲】
【請求項1】
インフレータと、
このインフレータから発せられるガスを送り可能に袋状に形成されているシートベルト と、
このシートベルトが差し込まれているタングプレートと、
このタングプレートを装着可能なバックルと、を備えたシートベルト装置であって、
インフレータからガスが発せられる前の状態では、シートベルトの袋状の内部は、その長手方向に沿って第1の内部と第2の内部に区画されており、
インフレータから発せられたガスは、第2の内部に送られることを特徴とするシートベルト装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシートベルト装置であって、
第2の内部にのみ送られたガスが第2の内部で高圧になると、第1の内部と第2の内部の区画がバーストすることで、インフレータから発せられたガスは第1の内部にも送られることを特徴とするシートベルト装置。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれかに記載のシートベルト装置であって、
第1の内部と第2の内部の区画は、縫製によって行われていることを特徴とするシートベルト装置。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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