説明

シート処理装置及び画像形成装置

【課題】 階段状に重ねて搬送される複数枚のシートのずらし量やずらし方向は、精度良く管理されるシート処理装置を提供する。
【解決手段】 重ね合わせローラ対14と、重ね合わせローラ対14の回転を制御するコントローラ51と、を備え、コントローラ51は、1枚目のシートと一枚目のシートの上に重ねられた2枚目のシートを挟持している前記搬送ローラ対のニップ部に、2枚目のシートの上に重ねられた3枚目のシートの先端が到達する前に、1枚目のシートを下流側に搬送して、1枚目のシートの後端を前記搬送ローラ対のニップ部を通過させるように前記搬送ローラ対の回転を制御する搬送部13Xを構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを処理するシート処理装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真複写機やレーザビームプリンタ等の画像形成装置に、画像形成済みのシートを仕分けるソータ等のシート処理装置が接続されている。この種のシート処理装置には、ソート機能のみならず、複数枚のシートを整合したり、複数枚のシートを針綴じするステイプラによってシート束を作成したりする機能等があり、構成が多様化してきている。例えば、整合機能、及び綴じ機能を備えるシート処理装置では、画像形成装置から搬送されたシートは、一枚ずつ搬送されるごとに整合部で整合された後に、整合された複数枚のシートがステイプラによって綴じ処理される。
【0003】
近年、処理トレイに積載された先行シート束の処理時間を稼ぐため、後続シート束を形成するシートのうち最初の数枚を待機させ、先行シート束の処理後に待機させた数枚のシートを重ね合わせて処理トレイに搬送する技術が特許文献1に開示されている。
【0004】
特許文献1には、搬送されてきたシートを待機させるための搬送大ローラがシート処理装置の内部に配置される構成が開示されている。まず、搬送されてきた1枚目のシートが紙検知センサに検知されたタイミングで搬送大ローラが回転し、1枚目のシートが搬送大ローラに巻き付けられる。次に、2枚目のシートが紙検知センサに検知されたタイミングで搬送大ローラが回転し、2枚目のシートが搬送大ローラに巻き付けられる。さらに、3枚目のシートが紙検知センサに検知されたタイミングで搬送大ローラが回転し、3枚目のシートが搬送大ローラに巻き付けられる。この場合に、搬送大ローラの表面では、2枚目のシート方が1枚目のシートよりも回転方向に先行するように巻き付けられると共に、3枚目のシートの方が2枚目のシートよりも回転方向に先行するように巻き付けられる。そして、3枚のシートが巻き付いた後、フラッパにより3枚のシートを搬送大ローラから引き剥がして3枚のシートを重ねた状態で処理トレイへと搬送する。
【0005】
こうした構成によれば、2枚目のシートは1枚目のシートに対して搬送方向下流に所定量ずらされ、3枚目のシートは2枚目のシートに対して搬送方向下流に所定量ずらされる。そして、3枚のシートは、重ねられた状態で搬送される。
【0006】
また、従来、重ねられたシートを搬送方向に整合するためにシート端をシート突き当て面に突き当てる方法が一般的に用いられている。このとき、重ねられたシートの下側のシートのシート端が先にシート突き当て面に突き当てられるようになっている。シート端をシート突き当て面に突き当てるための突き当て手段が、重ねられたシートの上側のシートの上面に作用するように設けられているためである。突き当て手段が重ねられたシートの上側のシートの上面に作用すると、重ねられたシートのシート間に発生する摩擦力により重ねられたシートの上側のシートとともに下側のシートが移送され、下側のシートのシート端が先にシート突き当て面に突き当てられる。その後も引き続き、突き当て手段により上側のシートが下側のシート上を移送され、シート端が確実にシート突き当て面に突き当てられ、これにより重ねられたシートの搬送方向の整合が完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−194569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載の構成において、3枚のシートが一つのローラ対に挟持されてしまう可能性があり、3枚のシートを所定量ずらした状態で搬送することができない場合があった。一つのローラ対が3枚のシートを挟持した状態では、2枚目のシートは、1枚目のシートと3枚目のシートの間に挟まれることになり、そのローラ対に直接接することができなくなる。その結果、そのローラ対により2枚目のシートを直接搬送することができず、2枚目のシートはシート同士の摩擦力により搬送されることになる。すなわち、3枚のシートを正確に搬送することができなくなり、シートを所定量ずらした状態で搬送することができない。
【0009】
3枚のシートを所定量ずつずらした状態で搬送することができなくなると、重ねたシート束がシート突き当て面に向けて搬送されるまでの間にそのずらし方向が逆転する可能性がある。図5に示されるように、処理トレイの積載面の上に1枚目のシートS1が積載され、その上に2枚目のシートS2が積載され、さらにその上に3枚目のシートS3が積載される。ここで、整合ローラ18と3枚目のシートS3の間の摩擦係数μ1、3枚目のシートS3と2枚目のシートS2の間の摩擦係数μ2、2枚目のシートS2と1枚目のシートS1の間の摩擦係数μ3とする。
【0010】
図5に示されるように、整合ローラ18が3枚目のシートS3の上面に接触すると、μ1は、μ2やμ3よりもはるかに大きいために、3枚目のシートS3が2枚目のシートS2を追い越してしまい、2枚目のシートS2の整合ができない場合がある。つまり、2枚目のシートが整合壁19に突き当たる前に整合ローラ18が3枚目のシートに接触した場合には、2枚目のシートと3枚目のシートとの間でスリップが発生し、各シートの下流端の位置関係(以下、ずらし方向)が逆転する可能性があるためである。
【0011】
ずらし方向が逆転すると、本来2枚目のシートS2が3枚目のシートS3に先行すべきところ、3枚目のシートS3が2枚目のシートS2に先行して整合壁19に到達するまで整合ローラ18によって搬送される。3枚目のシートS3が整合壁19に到達した時点で、2枚目のシートS2には3枚目のシートS3とのシート間摩擦による搬送力が伝わらなくなり、2枚目のシートS2は整合壁19に到達する前に停止し、整合壁19に当接させることが不可能となる。
【0012】
こうしたことから、重ねられたシートのずらし方向が変化しないようにするために、特許文献1に記載の構成では、搬送中に多少の外的影響を受けてもずらし方向を維持できるように、予めずらし量を多めに設定しておくことで対処することが考えられる。そのための搬送大ローラの直径は、巻き付け可能な最長シートのシート長さに予め多めに設定されたずらし量を加えた周長を確保するために、かなり大きくする必要がある。このため、装置が大型化したり、より長さの短いシートを出力する場合には単位時間当たりの出力枚数が少なく、すなわち生産性が低下したりするなどの弊害が発生する。
【0013】
そこで、本発明は、階段状に重ねて搬送される複数枚のシートのずらし量やずらし方向を精度良く管理することができるシート処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明のシート処理装置は、1枚目、2枚目、3枚目の順でシートを搬送する搬送手段と、前記搬送手段の下流側に設けられ、ニップ部でシートを挟持して搬送する第1搬送ローラ対と、前記搬送手段と前記第1搬送ローラ対の間に設けられ、先行シートの上に後続シートを搬送方向に重ね合わせるための重ね合わせ手段であって、1枚目のシートの上に2枚目のシートを重ね、2枚目のシートの上に3枚目のシートを重ねる重ね合わせ手段と、前記第1搬送ローラ対の回転を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、1枚目のシートと一枚目のシートの上に重ねられた2枚目のシートを挟持している前記第1搬送ローラ対のニップ部に、2枚目のシートの上に重ねられた3枚目のシートの先端が到達する前に、1枚目のシートを下流側に搬送して、1枚目のシートの後端を前記第1搬送ローラ対のニップ部を通過させるように前記第1搬送ローラ対の回転を制御することを特徴とする。
【0015】
本発明の他のシート処理装置は、1枚目、2枚目、3枚目の順でシートを搬送する搬送手段と、前記搬送手段の下流側に設けられ、ニップ部でシートを挟持して搬送する第1搬送ローラ対と、前記搬送手段と前記搬送ローラ対の間に設けられ、先行シートの上に後続シートを搬送方向に重ね合わせるための重ね合わせ手段であって、1枚目のシートの上に2枚目のシートを重ね、2枚目のシートの上に3枚目のシートを重ねる重ね合わせ手段と、前記第1搬送ローラ対の下流側に設けられ、ニップ部でシートを挟持して搬送する第2搬送ローラ対と、前記第1搬送ローラ対の回転および前記第2搬送ローラ対の回転を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、2枚目のシートの上に重ねられた3枚目のシートの先端が1枚目のシートと1枚目のシートの上に重ねられた2枚目のシートを挟持している前記第1搬送ローラ対のニップ部に到達する前に、2枚目のシートを下流側に搬送して、2枚目のシートの先端が1枚目のシートを挟持している第2搬送ローラ対のニップ部に到達させるように前記第1搬送ローラ対及び前記第2搬送ローラ対の回転を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の構成によれば、階段状に重ねて搬送される複数枚のシートのずらし量やずらし方向は、精度良く管理される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例1に係る画像形成装置の構成を示す断面図である。
【図2】重ね合わせローラ対に挟持されるシートが搬送される搬送タイミング、排出ローラ対、センサ、上ローラ、下ローラが駆動する駆動タイミングを示すタイミングチャートである。
【図3】2枚目のシートが1枚目のシートに重ね合わされた状態で重ね合わせローラ対に搬入された様子を示す断面図等である。
【図4】1枚目のシートから3枚目のシートまでが重ね合わせられて整合壁へと搬送される様子を示す断面図等である。
【図5】2枚目のシートが整合壁に突き当たる前に、3枚目のシートが整合壁に突き当たる様子を示す断面図である。
【図6】実施例2に係る重ね合わせローラ対に挟持されるシートが搬送される搬送タイミング、排出ローラ対、センサ、上ローラ、下ローラが駆動する駆動タイミングを示すタイミングチャートである。
【図7】2枚目のシートが1枚目のシートに重ね合わされた状態で重ね合わせローラ対に搬入された様子を示す断面図等である。
【図8】1枚目のシートから3枚目のシートまでが重ね合わされて重ね合わせローラ対に搬入された様子を示す断面図等である。
【図9】実施例3に係る重ね合わせローラ対に挟持されるシートが搬送される搬送タイミング、排出ローラ対、センサ、上ローラ、下ローラが駆動する駆動タイミングを示すタイミングチャートである。
【図10】3枚目のシートが2枚目のシートに重ね合わされた状態で重ね合わせローラ対に搬入される直前の様子を示す断面図等である。
【図11】3枚目のシートが2枚目のシートに重ね合わされた状態で重ね合わせローラ対に搬入された様子を示す断面図等である。
【図12】実施例4に係るシート処理システムの構成を示す拡大断面図である。
【図13】重ね合わせローラ対に挟持されるシートが搬送される搬送タイミング、排出ローラ対、センサ、上ローラ、下ローラが駆動する駆動タイミングを示すタイミングチャートである。
【図14】2枚目のシートの先端が重ね合わせローラ対に接触して小さなループを作ってから、重ね合わせローラ対の駆動が再開されるタイミングを示す断面図等である。
【図15】シート処理システムを上方から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、この発明を実施するための形態を実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対位置等は、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるから、特に特定的な記載が無い限りは、発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明の実施例1に係る画像形成装置100の構成を示す断面図である。図15は、図1の上方から見た画像形成装置100の断面図である。『画像形成システム』である画像形成装置100は、電子写真画像形成プロセスを利用したフルカラーレーザビームプリンタである。図1に示されるように、画像形成装置100は画像形成装置本体(以下、単に『装置本体』という)100Aを有し、この装置本体100Aの内部には、画像を形成する画像形成部が設けられる。画像形成部は、『像担持体』である感光体ドラム5、『転写装置』である一次転写ローラ6等を含む。少なくとも感光体ドラム5については、プロセスカートリッジ9に含まれ、プロセスカートリッジ9として装置本体100Aに組み込まれる構成となっている。
【0020】
画像形成装置100は、収容カセット2、給送ローラ3、レジストローラ4、一次転写ローラ6、中間転写ベルト7、二次転写ローラ8、プロセスカートリッジ9、光学ユニット10、定着器11、排出ローラ対12、シート処理装置13を備える。プロセスカートリッジ9は、感光体ドラム5、一次帯電器31、現像装置32を有する。
【0021】
画像形成部では、まず、一次帯電器31が、感光体ドラム5の表面を一様に帯電させる。次に、光学ユニット10が、感光体ドラム5の表面にレーザビームを照射して静電像を形成する。次に、現像装置32が、トナーによって静電像を現像する。この作像プロセスはイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のプロセスカートリッジ9において行われる。感光体ドラム5の表面のトナー像は、回転走行する中間転写ベルト7の表面に順次転写されて重ね合わせられる。そして、中間転写ベルト7の表面のトナー像は、二次転写ローラ8と二次転写対向ローラ33のニップ部において、搬送されてくるシートSに一括して二次転写されるようになっている。
【0022】
この一方で、シートSは、収容カセット2の内部に積載されており、給送ローラ3で給送され、レジストローラ4に搬送される。そして、シートSには、二次転写ローラ8及び二次転写対向ローラ33のニップ部でトナー画像が転写される。トナー画像を転写された後には、シートSは、定着器11に搬送される。トナーは、熱及び圧力を受け、溶融して、シートSに定着する。その後に、シートSは、排出ローラ対12を通過して、シート搬送装置としてのシート処理装置13へと搬送される。
【0023】
装置本体100Aには、シート処理装置13が接続され、画像形成システムとして一体的に機能するよう制御される。装置本体100Aの内部には、内部の各種の機器の駆動を制御するコントローラ50が配置されている。また、コントローラ51がシート処理装置13側にも別に設けられており、装置本体100A側のコントローラ50との通信によりシート処理装置13を制御するようになっている(図3(a)参照)。
【0024】
なお、コントローラ50が直接的にシート処理装置13を制御するように構成することも可能である。シート処理装置13は、装置本体100Aに一体的に装備されても良いし、後付けのオプション装着とされても良い。以下で、シート処理装置13の説明にあたって、搬送されるシートSのシート搬送方向Jの下流端を、「下流端」又は「先端」といい、搬送されるシートSのシート搬送方向Jの上流端を、「上流端」又は「後端」という。また、順に搬送される1枚目のシートS1と2枚目のシートS2との関係では、1枚目のシートS1が『先行シート』に相当し、2枚目のシートS2が『後続シート』に相当するものとする。また、順に搬送される2枚目のシートS2と3枚目のシートS3との関係では、2枚目のシートS2が『先行シート』に相当し、3枚目のシートS3が『後続シート』に相当する。
【0025】
シート処理装置13は、『シート搬送部』としての搬送部13Xと、搬送部13Xよりもシート搬送方向Jの下流に配置されてシートの処理をする『シート処理部』としての処理部13Yと、を備える。搬送部13Xは、重ね合わせローラ対14及び束搬送ローラ対17を有する。処理部13Yは、シートSを整合する整合ローラ18及び整合壁19を有する。なお、コントローラ51は、処理部13Yが先行ジョブを処理する間に、搬送部13Xが後続のシートのバッファを行うことを特徴とする。また、シート処理装置13は、画像形成部により画像が形成されたシートを1枚目、2枚目、3枚目の順で搬送するシート搬送手段としての排出ローラ対12を有する。また、シート処理装置13は、排出ローラ対12よりもシート搬送方向Jの下流で、重ね合わせローラ対14よりもシート搬送方向Jの上流に、搬送されるシートを検知する検知手段としてのセンサ23を有している。また、シート処理装置13は、センサ23の下流かつ重ね合わせローラ対14の上流の搬送路に、シートを重ね合わせるための段差20(重ね合わせ手段)を有している。本実施形態において、段差20、排出ローラ対12により搬送される後続シートは、段差20の上で先行シートの上に重ねられる。
【0026】
『第1搬送ローラ対』としての重ね合わせローラ対14は、排出ローラ対12のシート搬送方向下流に配置され、複数枚のシートを重ね合わせるローラ対である。重ね合わせローラ対14では後述の動作により複数枚のシートを一時重ねて保持する(バッファする)機能を有する。なおバッファする目的は、先行するジョブの処理動作中に、すぐに続いて出力されてくる後続紙を待機させておくためである。
【0027】
重ね合わせローラ対14は、下方に配置される『第1ローラ』としての下ローラ16及び上方に配置される『第2ローラ』としての上ローラ15を有する。上ローラ15及び下ローラ16は、互いに対向し、共にシート搬送方向Jと直交するシート幅方向M(図1中で紙面と直交する方向)の全域にローラ部を有する所謂通しローラである。なお、この上ローラ15及び下ローラ16は、シート幅方向に複数に分割された分割ローラで構成されていても良い。また、ローラの材質は、摩擦係数が高いソリッドまたは発泡のゴムローラが好ましい。
【0028】
下ローラ16は、両端部の軸受部(不図示)をバネ(不図示)で加圧され、上ローラ15とニップを形成している。上ローラ15と下ローラ16は共に駆動と停止を制御可能である。それぞれがモータに接続されていても良いし(図3(a)参照)、単一のモータから駆動力を分岐し、途中に電磁クラッチなどの駆動力伝達を制御する装置を有していても良い。なお、下ローラ16の軸上には、下ローラ16の回転を減速または停止させるブレーキ手段としての不図示のトルクリミッタが設けられている。
【0029】
『第2搬送ローラ対』としての束搬送ローラ対17は、重ね合わせローラ対14よりもシート搬送方向Jの下流に配置される。束搬送ローラ対17は、重ね合わせローラ対14から搬送されてくるシート束を搬送する。束搬送ローラ対17は、接離自在であり、シートの整合時は離間してニップを解除することができる。
【0030】
整合ローラ18は、束搬送ローラ対17よりもシート搬送方向Jの下流に配置され、搬送面21の表面に当接し、シートSを整合壁19へと移動させて突き当てる。整合壁19は、整合ローラ18よりもシート搬送方向Jの下流に配置され、搬送されてくるシート束を搬送方向に整合する壁である。コントローラ51が重ね合わせローラ対14の駆動を制御することで、1枚目からn枚目(nは2以上の自然数)までのシートは、先に搬送されてきたものから順に整合ローラ18に進入し、整合壁19に突き当たり、シート搬送方向Jで整合される。シート搬送方向Jにおいて整合ローラ18と整合壁19の間には、ステイプラ27(針綴じ装置)が備えられている。
【0031】
整合壁19に配置されたステイプラ27は、整合ローラ18によって整合壁19に突き当てられて整合されたシート束に対して針綴じする。その後に、整合壁19は、針綴じ完了後に退避して、不図示の搬出手段によりシート束を排出トレイ22へと搬出する。次に、図2以後の図を参照しつつ、シート処理装置13の動作を説明する。
【0032】
後に詳述するが、『制御手段』としてのコントローラ51は、重ね合わせローラ対14及び束搬送ローラ対17の回転を制御する。ただし、前述したように、『制御手段』としてコントローラ50を用いて、コントローラ50が、重ね合わせローラ対14及び束搬送ローラ対17の回転を制御する構成としても良い。
【0033】
図2は、重ね合わせローラ対14に挟持されるシートが搬送される搬送タイミング、排出ローラ対12、センサ23、上ローラ15、下ローラ16が駆動する駆動タイミングを示すタイミングチャートである。タイミングの説明にあたっては、タイミングaからタイミングeの順に説明する。まず、コントローラ51は、画像が形成されたシートS1を排出するため、排出ローラ対12を駆動させる。排出ローラ対12により搬送されたシートS1の先端がセンサ23を通過すると、センサ23がONになる。
【0034】
コントローラ51は、シートS1の先端を検知したセンサ23からの検知信号に対応し、シートS1の先端が重ね合わせローラ対14に到達するタイミングに合わせて、上ローラ15及び下ローラ16を駆動させる(タイミングa参照)。このとき、上ローラ15と下ローラ16は、同じ周速度で回転駆動される。なお、コントローラ51は、下ローラ16のみを回転駆動させて上ローラ15を従動回転させてもよい。
【0035】
上ローラ15と下ローラ16が回転駆動されることにより搬送されるシートS1の後端がセンサ23を通過すると、センサ23はOFFになる。コントローラ51は、シートS1の後端を検知したセンサ23からの検知信号に対応し、上ローラ15と下ローラ16の駆動を停止させる(タイミングb参照)。これにより、シートS1は、重ね合わせローラ対14により所定距離搬送された後、重ね合わせローラ対14に挟持された状態で保持される。なお、シートS1の上にシートS2を重ね合わせるため、シートS1の停止位置は、シートS1の後端が段差20(図1参照)を少し過ぎた位置とする。
【0036】
引き続いて、画像が形成されたシートS2が、排出ローラ対12により、シート処理装置13に向けて搬送されてくる。排出ローラ対12により搬送されるシートS2は、段差20を通ることで、シート搬送方向Jにおいて、シートS1の上に重ね合わせられる。また、シートS2の先端がセンサ23を通過すると、センサ23はONになる。コントローラ51は、シートS2の先端を検知したセンサ23からの検知信号に対応し、シートS2の先端が重ね合わせローラ対14に到達するタイミングに合わせて、上ローラ15及び下ローラ16を駆動させる(タイミングc参照)。これにより、シートS2は、シートS1の上面に沿って重ね合わせローラ対14のニップ部に搬入される。
【0037】
その後、コントローラ51は、直ぐに下ローラ16の駆動を停止させる。具体的には、コントローラ51は、時間fの間だけ下ローラ16を駆動させた後、下ローラ16の駆動を停止させる(タイミングα1参照)。このように、シートS2が重ね合わせローラ対14のニップ部に搬入される際に、コントローラ51が上ローラ15及び下ローラ16の双方を回転させることにより、シートS2が搬入される影響により、シートS1の姿勢が乱されないようにすることができる。
【0038】
その後、コントローラ51は、上ローラ15のみを駆動させるので、シートS2は、停止しているシートS1の上に重ね合されながら下流に搬送される。そして、シートS2の後端がセンサ23を通過すると、センサ23はOFFになる。このように、コントローラ51が上ローラ15のみを駆動させることにより、シートS1の上に重ねられるシートS2の搬送方向の重ね合わせ量が制御される。
【0039】
図3(a)は、シートS2がシートS1の上に重ね合わされた状態で重ね合わせローラ対14に搬入される様子を示す断面図である。上述したように、シートS2が上ローラ15により下流へ搬送される間、コントローラ51は、下ローラ16を停止させる。これにより、図3(a)に示されるように、上ローラ15のみが回転することで、シートS2はシートS1の上をスライドしながら重ねられていく。
【0040】
コントローラ51が上ローラ15のみを回転させてシートS2を搬送させている間、下ローラ16は、不図示のトルクリミッタによってブレーキをかけられた状態で停止している。
【0041】
ここで、上ローラ15と2枚目のシートS2のとの間の摩擦力をμ1、下ローラ16と1枚目のシートS1との間の摩擦力をμ2、1枚目のシートS1と2枚目のシートS2との間の摩擦力をμ3とする。そうすると、μ1>μ3、かつ、μ2>μ3という関係が成り立つので、上ローラ15のみを回転させることでシートS2を停止しているシートS1に対して擦り合わせながら搬送することができる。
【0042】
コントローラ51は、センサ23がシートS2の通過を検知したタイミングの情報に基づいて、上ローラ15の駆動のタイミングを変更するように制御する。この制御のために、シートS2の停止位置は、シートS2の先端がシートS1の先端よりもシート搬送方向Jで所定量のずらし量Lだけ上流側に配置される(タイミングα1〜タイミングd)。
【0043】
引き続いて、画像が形成されたシートS3が、排出ローラ対12により、シート処理装置13に向けて搬送されてくる。排出ローラ対12により搬送されるシートS3は、段差20を通ることで、シート搬送方向Jにおいて、シートS2の上に重ね合わせられる。また、シートS3の先端がセンサ23を通過すると、センサ23はONになる。コントローラ51は、シートS3の先端を検知したセンサ23からの検知信号に対応し、シートS3の先端が重ね合わせローラ対14に到達するタイミングに合わせて、上ローラ15及び下ローラ16を駆動させる(タイミングe参照)。これにより、シートS3は、シートS2の上面に沿って重ね合わせローラ対14のニップ部に搬入される。
【0044】
コントローラ51は、シートS3のシート搬送方向Jの先端が重ね合わせローラ対14のニップ部に到達する前に、シートS1のシート搬送方向Jの後端が通過するように、重ね合わせローラ対14の駆動を制御する。具体的には、コントローラ51は、上ローラ15と下ローラ16を同じ周速度で回転させる(タイミングe)。これにより、シートS1及びシートS2は上ローラ15及び下ローラ16により重なった束の状態で搬送される。
【0045】
図3(b)は、3枚目のシートS3が2枚目のシートS2に重ね合わされた状態で重ね合わせローラ対14に搬入される直前の様子を示す断面図である。図3(b)に示されるように、排出ローラ対12により搬送されるシートS3の先端が重ね合わせローラ対14のニップ部に搬入される前に、シートS1の後端は重ね合わせローラ対14のニップ部を通過している。その後、重ね合わせローラ対14はシートS2に対してシート搬送方向Jにずらされた状態で重ねられたシートS3をシートS2と共に挟持する(図3(c)参照)。
【0046】
図3(c)は、シートS3がシートS2に重ね合わされた状態で重ね合わせローラ対14に搬入された様子を示す断面図である。図3(c)を参照しつつ、重ね合わせローラ対14に挟持されるシートの枚数が2枚以下である場合に、重ね合わせローラ対14がシートを安定して搬送できる理由を述べる。上ローラ15とシートS3との間の摩擦力をμ1、下ローラ16とシートS2との間の摩擦力をμ2、シートS2とシートS3との間の摩擦力をμ3とすると、μ1>μ3、かつ、μ2>μ3となる。したがって、シートS2及びシートS3は、シート同士の摩擦力μ3によって移動することがなく、シートS2は下ローラ16により搬送され、シートS3は上ローラ15により搬送される。すなわち、シートS2及びシートS3の挙動が直接接するローラにより支配されるため、安定した搬送が可能となる。
【0047】
引き続いて、3枚重ね合わせられたシートS1、シートS2、シートS3が搬送されていく動作について説明する。図4(a)に示すように、重ね合わせローラ対14により搬送されるシートS1、S2、S3は、束搬送ローラ対17により、整合ローラ18へ搬送される。なお、シートS3の先端が重ね合わせローラ対14のニップ部に到達してから束搬送ローラ対17のニップ部に到達するまでの間は、コントローラ51は、上ローラ15と下ローラ16を駆動させた状態を維持する(図2に示されるタイミングe以後を参照)。
【0048】
束搬送ローラ対17により搬送されるシートは、整合ローラ18へと搬送される。整合ローラ18が回転駆動されることにより、シートは1枚目から順に整合壁19へと突き当てられる。ここで、シートが整合壁19へ突き当てられる際にシートを座屈させないように、整合ローラ18は、シートへの加圧力とシートへの摩擦力μ4を弱く設定されている。
【0049】
整合ローラ18とシートの当接部におけるシートS1の裏面と搬送面21(図1参照)との摩擦力をμ6、束搬送ローラ対17とシートS2の摩擦力をμ5、とすると、本実施形態では、μ5>μ4>>μ6の関係となるように摩擦力を設定している。整合壁19へ向けて搬送されるシートS1は、先端側が整合ローラ18に、後端側が束搬送ローラ対17に搬送される。ここで、前述したように、μ5がμ4より大きくなるように設定されているので、シートS1の搬送速度は、束搬送ローラ対17の回転速度に依存する。
【0050】
また、シートS1の後端が束搬送ローラ対17を抜けた後は、シートS1は先端が整合壁19に突き当たるまで整合ローラ18のみにより搬送される。
【0051】
シートS1と同様に、シートS2及びシートS3も同様に束搬送ローラ対17と整合ローラ18により搬送され、整合壁19に突き当てられることでシートの先端が整合される。なお、1ジョブを構成するシートの枚数が4枚以上の場合には、4枚目以降のシートは、連続して1枚ずつ搬送されてくるので、前に搬入されたシートの上面に順次に重ねて先端の整合が行われる。
【0052】
次に、図4(b)を参照して、シートの先端のずらし量と整合ローラ18の配置の関係について説明する。図4(b)は、1枚目のシートS1から3枚目のシートS3までが所定量のずらし量Lでずらされた様子を示す断面図である。シートSの先端をずらして重ねる理由は、シートSを1枚ずつ順に整合させるためである。整合ローラ18に接触するシートSは、画像形成された順でなければならないのは前述した通りである。
【0053】
図4(b)に示すように、整合ローラ18のニップから整合壁19までの距離を寸法Dとする。また、シートS1の先端とシートS2の先端の距離及びシートS2の先端とシートS3の先端の距離をずらし量Lとする。本実施形態では、寸法D≦ずらし量Lの関係となるように、整合壁19に対する整合ローラ18の位置、及び、束搬送ローラ対17によって搬送されて停止するシートの先端の位置が設定されている。
【0054】
ずらし量Lが寸法Dよりも大きく設定されているため、整合ローラ18に搬送されるシートS1の先端が整合壁19に突き当たった後に、束搬送ローラ対17に搬送されるシートS2の先端は整合ローラ18の手前に到達する。なお、このときシートS3もシートS2と共に束搬送ローラ対17により下流側に搬送される。同様に、整合ローラ18に搬送されるシートS2の先端が整合壁19に突き当たった後に、束搬送ローラ対17に搬送されるシートS3の先端は整合ローラ18の手前に到達する。
【0055】
前述の寸法D及びずらし量Lの関係をまとめる。整合ローラ18のニップ部から整合壁19の当接面19aまでのシート搬送方向Jの距離をDとする。n枚目のシートの下流端とn+1枚目のシートの下流端のシート搬送方向Jのずらし量をLとする。そして、DとLの関係がD≦Lであることにより、整合ローラ18によってシートを1枚ずつ整合壁19に突き当てることができるため、確実にシートを整合することができる。なお、nは1以上の整数である。
【0056】
このとき、寸法Dよりもずらし量Lが小さくなってしまうと、整合ローラ18が先行シートを整合壁19へ突き当てる前に、後続シートが整合ローラ18のニップに到達してしまうことになる。そうすると、整合ローラ18は先行シートと後続シートの2枚のシートを同時に搬送することになってしまい、シートを安定して搬送することができない。
【0057】
なお、装置本体100Aを小型化するため、ずらし量Lは、できるだけ小さく設定されている。ずらし量Lを大きく取り過ぎた場合、装置本体100Aの寸法(特にシート搬送方向)が大きくなるからである。すなわち、ずらし量Lを小さくするということは、シートを重ね合わせる重ね量を大きくすることである。
【0058】
整合壁19に突き当てられ、整合されたシートは、ステイプラ27によって綴じ動作が行われる。そして、整合壁19が退避させられ、不図示の搬送手段によって、シート束は排出トレイ22へと排出され、処理も終了する。
【0059】
以上説明したように、実施例1の構成によれば、シートをバッファさせて(ジョブを待つために一時的に留める)重ね合わせる際、ローラ対に挟持されるシートは、常に2枚以下である。具体的には、重ね合わせローラ対14のニップ部と、束搬送ローラ対17のニップ部のいずれにおいても、シートが3枚挟持されることはない。したがって、シートを安定して搬送することができ、整合ローラ18で整合するために必要なシートの先端ずらし量を正確に管理することができる。また、実施例1の構成によれば、ローラ対に挟持されるシートが2枚以下である一方で、図3及び図4に示すようにシート自体は3枚重ね合わせることができるため、装置を大型化することなくシートを重ね合わせる量を増やすことができる。
【0060】
なお、以上の実施例1の説明では、コントローラ51が下ローラ16を停止させ上ローラ15のみを回転させることでシートを重ね合わせる構成について説明したが、本発明はこれに限定されるべきではない。例えば、コントローラ51が上ローラ15を停止させ、下ローラ16を逆転させることでシートを重ね合わせる構成であってもよい。また、下ローラ16を停止させなくとも、上ローラ15よりも遅い速度で回転させることでシートを重ね合わせる構成であってもよい。
【0061】
また、以上の実施例1の説明では、重ね合わせローラ対14にシートの先端が到達する際には、コントローラ51が上ローラ15及び下ローラ16の双方を回転させる構成について説明したが、必ずしも下ローラ16を回転させる必要はない。下ローラ16を停止させる構成とする場合には、上ローラ15とシートS2との間の摩擦力を、下ローラ16とシートS1との間の摩擦力よりも小さくなるように設定する。この設定により、シートS2が重ね合わせローラ対14に搬入される際に、上ローラ15を駆動したときに、シートS1の姿勢が変化しないようにすることができる。
【実施例2】
【0062】
次に、実施例2について説明する。実施例2の説明において、実施例1の構成や動作と同じ部分については適宜説明を省略する。図6は、重ね合わせローラ対14に挟持されるシートが搬送される搬送タイミング、排出ローラ対12、センサ23、上ローラ15、下ローラ16が駆動する駆動タイミングを示す実施例2にのタイミングチャートである。タイミングの説明にあたっては、タイミングgからタイミングkの順に説明する。
【0063】
実施例1では、重ね合わせローラ対14に挟持されるシートの枚数を制御する構成について説明したが、実施例2では、重ね合わせローラ対14だけでなく束搬送ローラ対17で挟持されるシートの枚数を制御する。具体的には、実施例1では、重ね合わせローラ対14に挟持されるシートが3枚にならないように制御する構成であったが、実施例2では、重ね合わせローラ対14又は束搬送ローラ対17に一時的に3枚のシートが挟持される。
【0064】
ただし、実施例2では、重ね合わせローラ対14又は束搬送ローラ対17の一方に3枚のシートが挟持されているときは、重ね合わせローラ対14又は束搬送ローラ対17の他方には2枚のシートが挟持される。すなわち、実施例2でも実施例1と同様に、3枚のシートのそれぞれが直接ローラと接するので、安定してシートを搬送することができる。
【0065】
図6を参照しつつ、実施例2の制御等に関して詳細に説明する。排出ローラ対12により搬送された1枚目のシートS1が、重ね合わせローラ対14により所定距離搬送された後、重ね合わせローラ対14の駆動が停止されるまでの動作及び制御は、実施例1と同様である。すなわち、実施例2におけるタイミングgは実施例1におけるタイミングaに相当し、実施例2におけるタイミングhは実施例1におけるタイミングbに相当する。
【0066】
また、2枚目のシートS2が、排出ローラ対12により排出され、シートS1の上に重ね合わせられた後に停止させられるまでの動作及び制御についても、実施例1と同様である。すなわち、実施例2におけるタイミングiは実施例1におけるタイミングcに相当し、実施例2におけるタイミングjは実施例1におけるタイミングdに相当する。また、実施例2におけるタイミングα2は、実施例1におけるタイミングα1に相当する。
【0067】
図7(a)は、2枚目のシートS2が1枚目のシートS1に重ね合わされた状態で重ね合わせローラ対14に搬入された様子を示す断面図である。図7(a)に示されるように、上ローラ15のみが回転することで、シートS1とシートS2が擦り合わされながら重ね合わせられる。このときに、下ローラ16は、不図示のトルクリミッタによりブレーキをかけられた状態で停止している。ここで、上ローラ15、下ローラ16、及び、シートの摩擦関係は、実施例1の場合と同様であり(図3(a)参照)、シートS2を、停止しているシートS1に対して擦り合わせながら搬送することができる。
【0068】
タイミングα2からタイミングjまでの間、コントローラ51が下ローラ16の駆動を停止させた状態のまま上ローラ15を回転させるので、シートS2がシートS1の上に重ね合わせられる。図7(a)は、コントローラ51がタイミングjで上ローラ15の駆動を停止させた時のシートS1及びシートS2の状態を示す。
【0069】
また、排出ローラ対12により排出されたシートS3が、上ローラ15及び下ローラ16により挟持されて搬送される動作及び制御についても、実施例1と同様である。すなわち、実施例2におけるタイミングkは実施例1におけるタイミングeに相当する。図7(b)は、コントローラ51がタイミングkで上ローラ15及び下ローラ16の駆動を開始させる際のシートS1、シートS2及びシートS3の状態を示す。このときのシートS2の先端から束搬送ローラ対17のニップまでの距離をAし、シートS3の先端から重ね合わせローラ対14のニップ部までの距離をBとする。すなわち、排出ローラ対12により搬送されるシートS3の先端が、重ね合わせローラ対14のニップよりも寸法Bだけシート搬送方向Jの上流の位置まで搬送されたときに、上ローラ15及び下ローラ16は、再び駆動を開始する(タイミングk参照)。
【0070】
実施例2では、コントローラ51は、タイミングkで重ね合わせローラ対14の駆動を開始させると同時に束搬送ローラ対17の駆動も開始させる。なお、このときの重ね合わせローラ対14と束搬送ローラ対17の周速度は同じである。図7(c)は、タイミングkで重ね合わせローラ対14と束搬送ローラ対17が駆動を開始してから所定時間経過した後のシートS1、S2、S3の状態を示す図である。図7(b)における寸法Aが寸法Bよりも短いため、シートS3の先端が重ね合わせローラ対14のニップ部に到達する前に、シートS2の先端は束搬送ローラ対17のニップ部に到達する。
【0071】
もし、反対に、図7(b)における寸法Aが寸法Bよりも長い場合には、シートS2の先端が束搬送ローラ対17のニップ部に到達する前に、シートS3が重ね合わせローラ対14のニップ部に到達することになる。そうすると、シートS2は、重ね合わせローラ対14及び束搬送ローラ対17のいずれとも直接接触していないことになり、シートの搬送の正確性が低下することになる。
【0072】
図8(a)は、図7(c)に示す状態からさらに所定時間経過した時のシートS1、S2、S3の状態を示す図である。シートS3の先端は、重ね合わせローラ対14のニップ部に到達し、重ね合わせローラ対14には、シートS1、S2、S3の3枚のシートが挟持されている。図8(a)の状態では、重ね合わせローラ対14によりシートが3枚挟持されることになるが、束搬送ローラ対17により挟持されるシートの枚数が2枚以下となるため、3枚のシートのいずれもがそれぞれローラに接する。具体的には、図8(a)の状態では、シートS1は束搬送ローラ対17の下のローラに接し、シートS2は束搬送ローラ対17の上のローラに接し、シートS3は上ローラ15に接している。したがって、安定してシートを搬送することができる。
【0073】
また、図8(a)における重ね合わせローラ対14のニップ部からの束搬送ローラ対17のニップ部との間隔を寸法Cとし、シートS1とシートS3が重なっているシート搬送方向の長さを寸法Dとする。寸法Dは、シートS3の先端とシートS1の後端との距離である。
【0074】
実施例2では、寸法Cが寸法Dよりも長くなるように設定されているため、図8(b)に示すように、シートS3の先端が束搬送ローラ対17のニップ部に到達したときには、シートS1の後端は重ね合わせローラ対14のニップ部を通過している。したがって、図8(b)の状態では、束搬送ローラ対17によりシートが3枚挟持されることになるが、重ね合わせローラ対14により挟持されるシートの枚数が2枚以下となるため、3枚のシートのいずれもがそれぞれローラに接する。具体的には、図8(b)の状態では、シートS1は束搬送ローラ対17の下のローラに接し、シートS2は下ローラ16に接し、シートS3は上ローラ15に接している。
【0075】
もし、これとは反対に、寸法C≦寸法Dの関係に設定されているならば、シートS1、シートS2及びシートS3が3枚同時に、束搬送ローラ対17と重ね合わせローラ対14との両方に挟持される状態もあり得る。そうなると、シートS2は、シートS1とシートS3に挟まれて、いずれのローラにも接触していない状態になり得る。そのために、シートS2の搬送の正確性が低下する。図8(b)以降の動作は、実施例1と同一であり、説明を省略する。
【0076】
以上説明したように、本実施の形態に係るシート処理装置によれば、シートを3枚重ねる際、3枚のシートのそれぞれが重ね合わせローラ対14または束搬送ローラ対17のいずれかのローラに直接接するので、安定してシートを搬送することができる。
【0077】
また、実施例2では、寸法Dの範囲において3枚のシートをオーバーラップさせて重ねることができるので、多くのバッファ時間を稼ぐことができる。
【0078】
また、実施例1と同様に、整合ローラ18で整合するために必要なシート先端ずらし量を正確に管理することができるので、確実な整合と装置の小型化を実現することが可能である。
【実施例3】
【0079】
次に、実施例3について説明する。実施例3の説明において、実施例1の構成や動作と同じ部分については適宜説明を省略する。図9は、実施例3に係る重ね合わせローラ対14に挟持されるシートが搬送される搬送タイミング、排出ローラ対12、センサ23、上ローラ15、下ローラ16が駆動する駆動タイミングを示すタイミングチャートである。タイミングの説明にあたっては、タイミングmからタイミングuの順に説明する。
【0080】
実施例2では、束搬送ローラ対17又は重ね合わせローラ対14に挟持されるシートの枚数が3枚となる制御を示した。実施例3では、3枚のシートのシート搬送方向Jで重なる長さを更に大きくすることを特徴とする。
【0081】
以下、図9及び図10を参照して、実施例3の構成及び動作に関して説明する。特に、実施例3では、束搬送ローラ対17及び重ね合わせローラ対14の配置に特徴があり、束搬送ローラ対17及び重ね合わせローラ対14の間隔は、後に詳述する。
【0082】
排出ローラ対12により搬送された1枚目のシートS1が、重ね合わせローラ対14により所定距離搬送された後、重ね合わせローラ対14の駆動が停止されるまでの動作及び制御は、実施例1及び実施例2と同様である。すなわち、実施例3におけるタイミングmは実施例1におけるタイミングaに相当し、実施例3におけるタイミングnは実施例1におけるタイミングbに相当する。
【0083】
また、シートS2が、排出ローラ対12により排出され、シートS1の上に重ね合わせられた後に停止させられるまでの動作及び制御についても、実施例1及び実施例2と同様である。すなわち、実施例3におけるタイミングoは実施例1におけるタイミングcに相当し、実施例3におけるタイミングpは実施例1におけるタイミングdに相当する。また、実施例3におけるタイミングα3は、実施例1におけるタイミングα1に相当する。
【0084】
タイミングα3からタイミングpまでの間、コントローラ51が下ローラ16の駆動を停止させた状態のまま上ローラ15を回転させるので、シートS2がシートS1の上に重ね合わせられる。この動作についても、実施例1及び実施例2と同じである。
【0085】
その後、コントローラ51は、停止させていた上ローラ15、下ローラ16及び束搬送ローラ対17を駆動させ(タイミングq参照)、すぐに停止させる(タイミングs参照)。これにより、シートS1及びシートS2は下流に搬送され、図10(a)に示すように、シートS2の後端は、重ね合わせローラ対14のニップ部を通過する。
【0086】
なお、このとき、図10(a)に示すように、シートS2の先端部は束搬送ローラ対17のニップ部に到達し、束搬送ローラ対17に挟持されているが、このことは実施例2においては重要ではない。すなわち、タイミングsの時点では、シートS2の先端は束搬送ローラ対17のニップ部に到達していなくてもよい。
【0087】
その後、排出ローラ対12により搬送されるシートS3の先端が重ね合わせローラ対14のニップ部に到達する前に、コントローラ51は上ローラ15及び下ローラ16を駆動させる(タイミングt参照)。実施例3におけるタイミングtは実施例1におけるタイミングeに相当する。これにより、シートS3は、シートS2の上面に沿って重ね合わせローラ対14のニップ部に搬入される。また、コントローラ51は、束搬送ローラ対17も駆動させる(タイミングt)。
【0088】
その後、コントローラ51は、下ローラ16及び束搬送ローラ対17の駆動を停止させる(タイミングα4参照)。これにより、上ローラ15のみが駆動されることになるので、シートS3は上ローラ15により搬送され、シートS2の上に重ね合わせられる。
【0089】
シートS3が重ね合わせローラ対14に挟持された後、コントローラ51は、下ローラ16の駆動を停止させ(タイミングα4)、上ローラ15のみを駆動させる。このように、タイミングα4からタイミングuまでの間、シートS3は、上ローラ15により搬送され、シートS2の上に重ね合わせられる。図10(b)は、タイミングα4からタイミングuの間の瞬間を示す図であり、シートS3が上ローラ15によりシートS2の上に重ね合わせられていることを示す。なお、図10(b)に示されるように、シートS2は、既に束搬送ローラ対17のニップに到達している。
【0090】
上ローラ15により搬送されるシートS3の先端が束搬送ローラ対17のニップ部に到達する前に、コントローラ51は、下ローラ16及び束搬送ローラ対17を駆動させる(タイミングu参照)。以上の実施例3の説明では、シートS3が重ね合わせローラ対14に挟持されてから、上ローラ15の駆動が停止することがない。しかし、より待機時間を稼ぎたい場合には、シートS3が重ね合わせローラ対14に挟持された後に、上ローラ15の駆動を停止させても良い。なお、図9のタイミングチャートにも示されているが、4枚目の以後のシートが重ね合わせローラ対14に来る場合には、上ローラ15及び下ローラ16は、駆動した状態を継続することになる。
【0091】
図11(a)は、タイミングuで下ローラ16及び束搬送ローラ対17の駆動が開始させられる前の、シートS1、シートS2、シートS3の状態を示す図である。束搬送ローラ対17のニップ部と重ね合わせローラ対14のニップ部との間の距離を寸法Gとする。寸法Fは、シートS3の先端とシートS1の後端との距離であり、3枚のシートの全てが重ねあっている長さである。寸法Eは、シートS1の後端と重ね合わせローラ対14のニップとの間の距離である。なお、タイミングuで下ローラ16及び束搬送ローラ対17の駆動が開始される際のシートS3の先端位置は、センサ23の検知結果に対応して、排出ローラ対12によって制御される。
【0092】
ここでバッファ時間を最も大きく取るためには、3枚のシートを重ねる領域をできるだけ増やすようにする必要がある。具体的には、図11(a)に示す寸法Eを小さく、寸法Gを大きくすることで、寸法Fを大きくすることができ、3枚のシートを重ねる領域を大きくすることができる。
【0093】
コントローラ51は、このようにして、3枚のシートを重ね合わせた後、重ね合わせローラ対14及び束搬送ローラ対17を回転駆動させて、シート束を整合壁19へと搬出する(タイミングu参照)。図11(b)に示すように、搬出時はいずれのシートもそれぞれローラに接しており、安定して搬送することができる。以降の動作は、実施例1と同一である。以上説明したように、本実施の形態に係るシート処理装置によれば、シートを3枚重ねる際、3枚のシートのそれぞれが重ね合わせローラ対14または束搬送ローラ対17のいずれかのローラに直接接するので、安定してシートを搬送することができる。
【0094】
本実施の形態に係るシート処理装置によれば、シートを3枚重ねる際、3枚のシートのそれぞれが重ね合わせローラ対14又は束搬送ローラ対17のいずれかにのローラに直接接しており、安定して搬送することができる。
【0095】
また、実施例3では、実施例2に比べて、シートS3をオーバーラップさせる量を大きく取ることが可能であるため、より長いバッファ時間を得ることができ、高速化に対して有利である。また、実施例1と同様に、整合ローラ18で整合するために必要なシート先端ずらし量を正確に管理することができるので、確実な整合と装置の小型化を実現することが可能である。
【実施例4】
【0096】
次に、実施例4について説明する。実施例4の説明において、実施例1の構成や動作と同じ部分については適宜説明を省略する。図12は、実施例4に係るシート処理装置113の構成を示す拡大断面図である。以下、実施例4のシート処理装置113の構成及び動作に関して説明する。
【0097】
図13は、重ね合わせローラ対24に挟持されるシートが搬送される搬送タイミング、排出ローラ対12、センサ23、上ローラ25、下ローラ26が駆動する駆動タイミングを示すタイミングチャートである。これらの部材は、コントローラ51によって制御されている。
【0098】
シートS1は、排出ローラ対12から搬出されると、重ね合わせローラ対24で挟持されながら搬送される。コントローラ51は、上ローラ25及び下ローラ26を、同じ周速度でお互いが逆方向に回転するように駆動させる(タイミング「ア」参照)。つまり、上ローラ25及び下ローラ26は、ニップの部位では同一方向に移動しており、双方ともシートをシート搬送方向Jの方向に向かわしめる方向に回転する。例えば、上ローラ25が正方向に回転可能であれば、下ローラ26は逆方向に回転可能である。
【0099】
コントローラ51は、上ローラ25及び下ローラ26は、シートS1の後端が排出ローラ対12を抜けた後に、共に停止させる(タイミング「イ」参照)。こうして、シートS1は、重ね合わせローラ対24に挟持された状態で保持される。なお、シートS1の停止位置は、シートS1の後端がセンサ23を通過した時間を基準として制御され、シートS1の後端が段差20(図1参照)を少し過ぎた位置とする。なお、シートは必ずしも停止する必要が無く、例えば減速するだけでも良いし、減速後に短時間だけ停止する等でも良い。
【0100】
引き続いて、シートS2が排出ローラ対12から排出されてきて、重ね合わせローラ対24に搬入されてくる。重ね合わせローラ対24は、シートS2が到達するまで、停止状態又は減速状態を維持し、シートS2が到達する直前又は直後に、駆動を再開して(タイミング「ウ」参照)、シートS1及びシートS2を重ねた状態で搬送する。このように、シートS2がシートS1に重ね合わせられて搬送されてきたときでも、シートS2の両方がニップされる瞬間だけでなく、その後も、下ローラ26は上ローラ25と共に回転する。この点が、実施例1の制御と異なる。
【0101】
図14(a)は、シートS2の先端が重ね合わせローラ対24に接触して小さなループを作ってから、重ね合わせローラ対24の駆動が再開されるタイミングを示す断面図である。図14(a)に示されるように、シートS1が重ね合わせローラ対24に挟持された状態で停止しているところに、シートS2が排出ローラ対12で挟持されつつ搬送される。このときに、シートS2の先端は、上ローラ25及び下ローラ26のニップに到達して斜行補正されることになる。このように制御されることで、シートS2の先端のずらし量が正確に揃えられ、斜行(スキュー)に対しても有効である。
【0102】
なお、実施例4では、実施例1の構成に比較して、重ね合わせローラ対24が排出ローラ対12から離れた位置に配置されている。この理由は以下の通りである。実施例1では、コントローラ51が下ローラ16を停止させた状態で上ローラ15だけを回転させてシートS1の上にシートS2を重ねることで、2枚のシートを重ねたときの搬送方向のずらし量をコントロールしていた。
【0103】
一方で実施例4では、コントローラ51は、下ローラ26を停止させた状態で上ローラ25だけを回転させるという制御を行わない。すなわち、実施例4では、シートS2が重ね合わせローラ対24に搬入された後は、シートS1とS2に相対速度差は生じさせない。つまり、2枚のシートを重ねたときの搬送方向のずらし量は、タイミングでシートS1を停止した位置における、重ね合わせローラ対24のニップからシートS1の搬送方向下流端までの距離となる。したがって、2枚のシートのずらし量をなるべく小さく取るためには、シート長さを考慮すると、重ね合わせローラ対24と排出ローラ対12に比較的長い距離を取ることが必要である。以上の理由により、実施例4では、重ね合わせローラ対24と排出ローラ対12の距離、実施例1よりも長く設定されている。
【0104】
シートS1及びシートS2を重ねた後は、重ね合わせローラ対24は、停止せずに、シート搬送方向Jの下流の整合壁19へと2枚のシートを束にして搬送しても良い。あるいは、バッファを行うために、図13のタイミングチャートに示されるように、上ローラ25及び下ローラ26を再び一旦停止(図13のタイミング「エ」参照)又は減速しても良い。
【0105】
図14(b)は、3枚目のシートS3の先端が重ね合わせローラ対24に搬入される様子を示す断面図である。図14(b)を参照しつつ、重ね合わせローラ対24を再び停止する場合の動作について、以下で説明する。シートS3が重ね合わせローラ対24に搬入されるタイミングに先立って、重ね合わせローラ対24の駆動を開始し(図13のタイミング「オ」参照)、シートS1とシートS2を重ねた状態で束としての搬送を開始する。そして、シートS3の先端が重ね合わせローラ対24に搬入されるときには、シートS1の後端が重ね合わせローラ対24から搬出されている(図14(b)参照)。
【0106】
このようにすることで、3枚のシートが重なっている状態でも、重ね合わせローラ対24で挟持されるシート枚数は常に2枚以下とすることができるため、いずれのシートも安定した搬送を行うことが出来る。挟持枚数が2枚以下であれば、シートを安定して搬送できる理由は、実施例1で説明した通りである。
【0107】
シートS3が重ね合わせローラ対24に搬入された後は、重ね合わせローラ対24の回転駆動を停止させることなく、全てのシートを搬出する。これ以降の動作は、実施例1の場合と同一である。
【0108】
以上説明したように、本実施例に係る画像形成装置のシート処理装置を用いることにより、シートを3枚重ねる際、3枚がオーバーラップしないように重ねることができるので、安定して搬送することができる。また、実施例4では、整合ローラ18で整合するために必要なシート先端ずらし量を正確に管理することができるので、確実な整合と装置の小型化を実現することが可能である。実施例4では、下ローラ26を停止させた状態で上ローラ25を回転させるためのクラッチやトルクリミッタなどの構成が必要ない。また、実施例4では、上ローラ25だけを回転させることによるシートを重ね合わせる動作を行わないので、シートを重ねる祭の画像不良の懸念が少ない。
【0109】
以下、実施例1〜4の効果の分析をまとめる。
【0110】
実施例1又は4の構成によれば、以下の効果が得られる。コントローラ51は、3枚目のシートS3のシート搬送方向Jの下流端が重ね合わせローラ対14に到達する前に、1枚目のシートS1のシート搬送方向Jの上流端が重ね合わせローラ対14のニップから抜けるように重ね合わせローラ対14を駆動する。したがって、3枚のシートを重ねて搬送する場合に、1枚目のシートS1及び3枚目のシートS3は、オーバーラップしないようにシート搬送方向Jにずらして重ねた状態で束として搬送される。そのために、重ね合わせローラ対14が、常に2枚以下のシートを挟持する状態となり、このときに、3枚のシートのいずれもが、搬送される過程で重ね合わせローラ対14の各々に直接に接触する。その結果、重ねられたシートは、精度良く束として搬送され、重ねられたシートのずらし量やずらし方向は、管理可能となる。
【0111】
実施例2又は3の構成によれば、束搬送ローラ対17がシートS2を挟持してから、重ね合わせローラ対14がシートS3を挟持することになる。したがって、3枚のシートを重ねて搬送する場合に、重ね合わせローラ対14が1枚目から3枚目までの3枚のシートをオーバーラップした状態で挟持するときでも、束搬送ローラ対17は、1枚目のシートS1及び2枚目のシートS2の2枚のみを挟持する。このときに、3枚のシートのいずれもが、重ね合わせローラ対14及び束搬送ローラ対17のいずれかに直接に接触する状態となる。その結果、重ねられたシートは、精度良く束として搬送され、重ねられたシートのずらし量やずらし方向は、管理可能となる。
【0112】
実施例1又は3の構成によれば、重ね合わせローラ対14が3枚目のシートS3を挟持する前に1枚目のシートS1が重ね合わせローラ対14から抜けるように制御される。そのために、3枚のシートが重ねて搬送されてきても、重ね合わせローラ対14は、常に2枚以下のシートしか挟持しない。その結果、全てのシートは、重ね合わせローラ対14の上ローラ15又は下ローラ16に接触して搬送される。
【0113】
実施例2の構成によれば、以下の効果が得られる。3枚のシートを重ねて搬送する場合に、束搬送ローラ対17が1枚目から3枚目までの3枚のシートをオーバーラップした状態で挟持するときでも、重ね合わせローラ対14は、2枚目のシートS2及び3枚目のシートS3の2枚のみを挟持する。このときに、3枚のシートのいずれもが、重ね合わせローラ対14及び束搬送ローラ対17のいずれかに直接に接触する状態となる。その結果、重ねられたシートは、精度よく束として搬送され、重ねられたシートのずらし量やずらし方向は、管理可能となる。
【0114】
実施例3の構成によれば、コントローラ51は、重ね合わせローラ対14が1枚目のシートS1及び2枚目のシートS2を挟持しつつ減速し、排出ローラ対12が3枚目のシートを挟持しつつ搬送するように制御する。したがって、1枚目のシートS1及び2枚目のシートS2がオーバーラップする領域に更に3枚目のシートがオーバーラップする領域を増加させることができる。そのために、1枚目のシートS1乃至3枚目のシートS3がオーバーラップする領域を増加させることができる。その結果、更に多くのバッファ時間を作り出すことができ、より高速の出力スピードに対応することができる。
【0115】
実施例1〜3のいずれかの構成によれば、上ローラ15の方の回転速度が速くて下ローラ16の回転速度の方が遅い状態となれば、2枚目のシートS2は1枚目のシートS1に対してスライドし易い。
【0116】
実施例4の構成によれば、下ローラ16及び上ローラ15は、お互いの回転方向が逆方向になるように同一の回転速度で回転する。その結果、1枚目のシートS1にずれて重なる2枚目のシートS2がループを作ってレジ補正される。また、2枚目のシートS2にずれて重なる3枚目のシートS3がループを作ってレジ補正される。
【0117】
実施例1〜4のいずれかの構成によれば、整合ローラ18及び整合壁19が設けられている。そのために、複数枚のシートのずらし量が精度良く管理された状態で束として搬送される。その結果、複数枚のシートの先端の整合のために、必要最小限のずらし量で済む。その結果、従来の大ローラに巻き付けるタイプのバッファ機構に比べて、小型化、及び、シートのシート搬送方向の長さの違いやシート同士の間隔の短縮に伴う処理生産性の低下の防止が実現される。
【符号の説明】
【0118】
12 排出ローラ対(搬送手段)
13X 搬送部(シート搬送装置)
14 重ね合わせローラ対(第1搬送ローラ対)
20 段差(重ね合わせ手段)
51 コントローラ(制御手段)
J シート搬送方向
S1 1枚目のシート
S2 2枚目のシート
S3 3枚目のシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1枚目、2枚目、3枚目の順でシートを搬送する搬送手段と、
前記搬送手段の下流側に設けられ、ニップ部でシートを挟持して搬送する第1搬送ローラ対と、
前記搬送手段と前記第1搬送ローラ対の間に設けられ、先行シートの上に後続シートを搬送方向に重ね合わせるための重ね合わせ手段であって、1枚目のシートの上に2枚目のシートを重ね、2枚目のシートの上に3枚目のシートを重ねる重ね合わせ手段と、
前記第1搬送ローラ対の回転を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、1枚目のシートと1枚目のシートの上に重ねられた2枚目のシートを挟持している前記第1搬送ローラ対のニップ部に、2枚目のシートの上に重ねられた3枚目のシートの先端が到達する前に、1枚目のシートを下流側に搬送して、1枚目のシートの後端を前記第1搬送ローラ対のニップ部を通過させるように前記第1搬送ローラ対の回転を制御することを特徴とするシート処理装置。
【請求項2】
1枚目、2枚目、3枚目の順でシートを搬送する搬送手段と、
前記搬送手段の下流側に設けられ、ニップ部でシートを挟持して搬送する第1搬送ローラ対と、
前記搬送手段と前記搬送ローラ対の間に設けられ、先行シートの上に後続シートを搬送方向に重ね合わせるための重ね合わせ手段であって、1枚目のシートの上に2枚目のシートを重ね、2枚目のシートの上に3枚目のシートを重ねる重ね合わせ手段と、
前記第1搬送ローラ対の下流側に設けられ、ニップ部でシートを挟持して搬送する第2搬送ローラ対と、
前記第1搬送ローラ対の回転および前記第2搬送ローラ対の回転を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、2枚目のシートの上に重ねられた3枚目のシートの先端が1枚目のシートと1枚目のシートの上に重ねられた2枚目のシートを挟持している前記第1搬送ローラ対のニップ部に到達する前に、2枚目のシートを下流側に搬送して、2枚目のシートの先端が1枚目のシートを挟持している第2搬送ローラ対のニップ部に到達させるように前記第1搬送ローラ対及び前記第2搬送ローラ対の回転を制御することを特徴とするシート処理装置。
【請求項3】
2枚目のシートの上に重ねられた3枚目のシートの先端が前記第2搬送ローラ対のニップ部に到達する前に、1枚目のシートを下流側に搬送して、1枚目のシートの後端が前記第1搬送ローラ対のニップ部を通過するように前記第1搬送ローラ対及び前記第2搬送ローラ対の回転を制御することを特徴とする請求項2に記載のシート処理装置。
【請求項4】
前記重ね合わせ手段は、前記搬送手段と前記第1搬送ローラ対の間の搬送路に設けられた段差を有し、
前記搬送手段により搬送される後続シートが前記段差の上で先行シートの上に重ねられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシート処理装置。
【請求項5】
前記第1搬送ローラ対は、上ローラと下ローラを有し、
前記制御手段は、前記第1搬送ローラ対が2枚のシートを挟持している場合に、前記上ローラまたは前記下ローラの一方を回転させて、前記第1搬送ローラ対が挟持している上側のシートまたは下側のシートの一方を搬送するように駆動手段の駆動を制御することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシート処理装置。
【請求項6】
前記上ローラまたは前記下ローラの一方が回転している際に、前記上ローラまたは前記下ローラの他方の回転を減速または停止させるブレーキ手段を有する請求項5に記載のシート処理装置。
【請求項7】
前記第1搬送ローラ対の下流側に設けられ、シートの端部を整合する整合壁と、
前記第1搬送ローラ対と前記整合壁の間に設けられ、シートを搬送して整合壁へ突き当てる整合ローラと、
を備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のシート処理装置。
【請求項8】
前記整合壁の当接面と前記整合ローラのニップとのシート搬送方向の距離をDとし、
先行シートのシート搬送方向の下流端と後続シートのシート搬送方向の下流端とのシート搬送方向のずらし量をLとした場合に、
DとLの関係がD≦Lである。
ことを特徴とする請求項7に記載のシート処理装置。
【請求項9】
シートに画像を形成する画像形成部と、
画像形成されたシートを処理する請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のシート処理装置と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−91567(P2013−91567A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−220309(P2012−220309)
【出願日】平成24年10月2日(2012.10.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】