説明

シート後処理装置、及び画像形成装置

【課題】 冊子の背部にしわといったダメージを与えることなく折り頂部を見栄え良く角付け処理するシート後処理装置およびこれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 圧接部材回転駆動モータSM9により回転駆動される第1、第2圧接部材650,651の冊子2aの折り頂部2a1に圧接する回転面の周速度V1,V2が、移動ユニット656aの移動速度Wよりも速くなるように設定されたことを特徴とするシート後処理装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重ねて折り畳まれたシート束の折り頂部に後処理を施すシート後処理装置、及びそれを備えた画像形成装置に関するものである。詳しくは、中綴じ製本された冊子の背表紙の折り頂部を角付け処理することで、冊子の見栄えを良くするシート後処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、概略20枚以上の一組のシートを一括で折り畳むと、背表紙の折り頂部付近が明らかに湾曲を有するような仕上がりの冊子となる。こうした冊子は折り畳んでも折り頂部と反対側の端部がすぐに開いてしまい、見栄えのしない外観を呈する。また、この様な冊子では平担な状態で載置することができないため、多数の冊子を積み重ねることが困難となっていた。
【0003】
こうした課題に対応すべく、上記のような冊子に対し、湾曲した冊子の折り頂部を圧接し、折り頂部2a1を四角く変形させて角付けさせる技術が特許文献1に提供されている。特許文献1の技術を図17及び図18を用いて説明する。図17(a)に示すように、冊子2aの折り頂部2a1を先頭にして搬送手段706,707で搬送し、位置決め手段705で冊子2aの折り頂部2a1を突き当て位置決めする。その後、保持手段702,703で冊子2aを挟みこんで固定し、位置決め手段705を退避させ、圧接ローラ704を回転させ、冊子2aの折り頂部2a1に圧力をかけながら折り頂部2a1に沿って図17(b)のA方向に走行させる。こうして湾曲していた折り頂部2a1に角付け処理を施すものである。図17(b)は圧接ローラ704の走行方向を示す模式図であり、圧接ローラ704は保持手段702,703によって冊子2aを挟み込むまでは、冊子2aとは接触しない領域に退避している。そして冊子2aを挟んで固定すると、冊子2aの一端から他端へ折り頂部2a1に圧力をかけながら移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−260564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、保持手段702,703によって保持された冊子2aの折り頂部2a1を圧接ローラ704が従動回転しながら移動することで圧接して変形させる。このため、図18に示す圧接ローラ704の冊子2aの折り頂部2a1に圧接する回転面の周速度Vと、該圧接ローラ704の折り頂部2a1に沿って移動する移動速度Wとが等速度である。また、このとき、冊子2aの折り頂部2a1と圧接ローラ704との圧接面では折り頂部2a1が圧接ローラ704によって移動方向(図18のWの方向)の下流に押し出される。このように、圧接ローラ704が回転圧接することで圧接ローラ704が通過した冊子2aの折り頂部2a1が変形し、角付け処理される。圧接ローラ704が折り頂部2a1に圧接する際、冊子2aが保持手段702,703によって保持されている点に対して、冊子2aの折り頂部2a1の圧接面が圧接ローラ704の移動方向(W方向)の下流に押し出される。このため、図18に示すように、冊子2aの折り頂部2a1の、保持手段702,703によって保持されている点と圧接ローラ704によって下流に押し出された圧接面との間には斜めの方向にしわCが発生してしまい、見栄えが低下することがあった。薄紙からなる冊子2aの場合には、しわCの発生が顕著に確認でき、さらに、冊子2aの折り頂部2a1付近の表面に文字や絵が印刷されている場合は、しわCの発生により冊子2aの表面に定着されたトナーが剥離する。そして、冊子2aの見栄えがさらに低下することがあった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、冊子の背部にしわといったダメージを与えることなく折り頂部を見栄え良く角付け処理することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るシート後処理装置の代表的な構成は、折り畳まれた冊子を保持する保持手段と、前記保持手段により保持された冊子の折り頂部を回転しながら圧接する回転圧接部材と、前記回転圧接部材を回転駆動させる回転駆動手段と、前記回転圧接部材を冊子の折り頂部に沿って走行移動させる走行移動手段と、前記回転駆動手段により回転駆動される前記回転圧接部材の冊子の折り頂部に圧接する回転面の周速度が、前記走行移動手段の移動速度よりも速くなるように設定する制御手段とを有することを特徴とするシート後処理装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、回転圧接部材の冊子の折り頂部に圧接する回転面の周速度が、走行移動手段の移動速度よりも速い。このため、冊子の折り頂部と回転圧接部材との圧接面で、該回転圧接部材によって冊子の折り頂部を回転圧接部材の走行移動方向の下流に押し出すことがない。そして、冊子の折り頂部の変形部分を回転圧接部材の走行移動方向の上流へ戻しながら圧接し、角付け処理することができる。そのため、冊子の背部にしわが発生することがなく、冊子の品位を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係るシート後処理装置を備えた複写装置の構成を示す断面説明図である。
【図2】本発明に係るシート後処理装置を備えた製本装置の構成を示す断面説明図である。
【図3】本発明に係るシート後処理装置の構成を示す断面説明図である。
【図4】角付けユニットの構成を示す平面説明図である。
【図5】角付けユニットの構成を示す側面説明図である。
【図6】ストッパ部材と回転圧接部材の構成を説明する図である。
【図7】ストッパ部材の動作を説明する平面説明図である。
【図8】回転圧接部材の動作を説明する平面説明図である。
【図9】冊子の排出動作を説明する平面説明図である。
【図10】本発明に係るシート後処理装置を備えた複写装置の制御系のブロック図である。
【図11】本発明に係るシート後処理装置の駆動系のブロック図である。
【図12】本発明に係るシート後処理装置の動作を説明するフローチャートである。
【図13】冊子の折り頂部をストッパ部材に当接させた様子を示す断面説明図である。
【図14】冊子の折り頂部をローラからなる第1の回転圧接部材により回転圧接する様子を示す断面説明図である。
【図15】冊子の折り頂部をローラからなる第2の回転圧接部材により回転圧接する様子を示す断面説明図である。
【図16】冊子の折り頂部をベルトからなる回転圧接部材により回転圧接する様子を示す断面説明図である。
【図17】従来例を説明する図である。
【図18】従来例の課題を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を用いて詳細に説明する。なお、シート後処理装置の本発明に係る要部は、図2に記載されている。図1は、本発明のシート後処理装置が適用可能な画像形成装置としての複写装置1000の内部構造を示す断面図である。複写装置1000は、原稿給送部100、イメージリーダ部200及びプリンタ部300、折り処理部400、フィニッシャ500、中綴じ製本部800、角付け処理部600、インサータ900等を有する。上記折り処理部400、中綴じ製本部800、角付け処理部600、インサータ900等は、オプションとして装備することができる。
【0011】
図1を参照して、原稿給送部100の原稿トレイ1001上にセットされた原稿4は、原稿給送部100により先頭頁から順に1枚ずつ図1の左方向(図1の矢印方向)に搬送される。そして、更に該原稿4は、湾曲した搬送パスを介してプラテンガラス102上を図1の左方向から右方向へ搬送され、その後、排出トレイ112上に排出される。なお、この際、スキャナユニット104は、所定の位置に保持された状態にあり、該スキャナユニット104上を原稿4が図1の左から右へと通過することにより原稿4の読取処理が行われる。原稿4がプラテンガラス102上を通過する際、該原稿4は、スキャナユニット104のランプ103により照射され、その原稿4からの反射光がミラー105,106,107、レンズ108を介してイメージセンサ109に導かれる。
【0012】
イメージセンサ109により読み取られた原稿4の画像データは、所定の画像処理が施されて露光制御部110へ送られる。露光制御部110は、画像信号に応じたレーザ光を出力する。該レーザ光は、ポリゴンミラー110aにより走査されながら感光体ドラム111上に照射される。感光体ドラム111上には走査されたレーザ光に応じた静電潜像が形成される。
【0013】
感光体ドラム111上に形成された静電潜像は、現像器113により現像され、トナー像として可視化される。一方、記録シート(以下、単に「シート」という)2は、シートカセット114,115、手差し給送部125、両面搬送パス124の何れかから感光体ドラム111及び現像器113とともに画像形成部を構成する転写部116へ搬送される。そして、可視化されたトナー像が転写部116においてシート2に転写される。転写後のシート2は、定着部117にて定着処理が施される。
【0014】
そして、定着部117を通過したシート2を切替フラッパ121により一旦、搬送パス122に導き、シート2の後端が切替フラッパ121を抜けた後に、スイッチバックさせ、切替フラッパ121により排出ローラ118へ搬送する。そして、排出ローラ118により該シート2をプリンタ部300から排出する。これによりシート2のトナー像が形成された面を下向きの状態(フェイスダウン)でプリンタ部300から排出できる。これを反転排出と称する。
【0015】
上述したようにフェイスダウンでシート2を機外に排出する。これにより、先頭頁から順に画像形成処理を行う場合、例えば、原稿給送部100を使用して画像形成処理を行う場合や、コンピュータからの画像データに対する画像形成処理を行う場合に頁順序を揃えることができる。
【0016】
次に、フィニッシャ500の構成について、図1及び図2を参照ながら説明する。折り処理部400は、プリンタ部300から排出されたシート2を導入し、フィニッシャ500側に導くための搬送パス131を有する。搬送パス131上には、搬送ローラ対130,133が設けられている。また、搬送ローラ対133の近傍に設けられた切替フラッパ135は、搬送ローラ対130により搬送されたシート2を折りパス136またはフィニッシャ500側に導くためのものである。
【0017】
フィニッシャ500は、折り処理部400を介して搬送されたプリンタ部300からのシート2を取り込む。そして、取り込んだ複数枚のシート2を整合して、1つのシート2の束として束ねる処理、シート2の束の後端側をステイプルするステイプル処理(綴じ処理)、ソート処理、ノンソート処理等のシート2の処理を行うためのものである。即ち、折り処理部400はシート2を複数枚重ねて二つ折りする。
【0018】
図2に示すように、フィニッシャ500は、折り処理部400を介して搬送されたシート2を装置内部に取り込むための搬送パス520が有り、搬送パス520には、複数の搬送ローラ対が設けられている。搬送パス520の途中にはパンチユニット530が設けられており、パンチユニット530は必要に応じて動作を行い、搬送されるシート2の後端部に穴あけ(穿孔)処理を行う。
【0019】
搬送パス520の終端に設けられた切替フラッパ513は、更に下流側に繋がれた上排出パス521と下排出パス522とに搬送経路を切り替えるものである。上排出パス521は、上スタックトレイ592への排出を行う。一方、下排出パス522は、処理トレイ550への排出を行う。処理トレイ550に排出されるシート2は順次整合処理されながら束状に収容され、図10に示す操作部1からの設定に応じて、仕分け処理やステイプル処理が行われ、その後、束排出ローラ対551により下スタックトレイ591に排出される。
【0020】
次に、中綴じ製本部800の構成を説明する。前記下排出パス522の途中に設けられた切替フラッパ514により、図2の右側に切り替えられたシート2は、サドル排出パス523を通過して、中綴じ製本部800へ送られる。シート2はサドル入口ローラ対801に受け渡され、シートサイズに応じてソレノイドにより動作する切替フラッパ802により搬入口を選択されて、中綴じ製本部800の収納ガイド803内に搬入さる。搬入されたシート2は滑りローラ804により先端が可動式のシート位置決め部材805に接するまで搬送される。サドル入口ローラ対801と滑りローラ804は駆動モータM1により駆動される。
【0021】
また、収納ガイド803の途中位置には、収納ガイド803を挟んで対向配置されたステイプラ820が設けられている。ステイプラ820は、針を突き出すドライバー820aと突き出された針を折り曲げるアンビル820bとに分割されている。なお、前記のシート位置決め部材805は、シート2の搬入時において、シート搬送方向中央部が、このステイプラ820の綴じ位置になる位置で停止する。シート位置決め部材805は、駆動モータM2の駆動を受けて移動自在であり、シートサイズに応じて位置を変える。
【0022】
ステイプラ820の下流側には、折りローラ対810a,810bが設けられており、折りローラ対810a,810bの対向位置には、突き出し部材830が設けられている。この突き出し部材830は、収納ガイド803から退避した位置をホームポジションとしている。そして、駆動モータM3の駆動により収納されたシート2の束に向けて突き出すことにより、シート2の束を、折りローラ対810a,810bのニップに押し込みながら折り畳むものである。突き出し部材830はその後、再びホームポジションに戻る。なお、折りローラ対810a,810b間には、シート2の束に折り目付けをするのに充分な押圧力F1が不図示のバネにより掛けられている。折り目付けされたシート2の束は、第1折搬送ローラ対811a,811b、第2折搬送ローラ対812a,812bを介して、図3に示す冊子受け取り部610の下搬送ベルト611上に排出される。
【0023】
次に、角付け処理部600について説明する。角付け処理部600は、中綴じ製本部800の冊子搬送方向下流側(図3の左側)に位置する。図3は図2の角付け処理部600の拡大図である。図3において、610は冊子受け取り部であり、中綴じ製本部800からシート2の束を製本した冊子2aを受け取り搬送するための、下側のみ冊子搬送方向に伸びる下搬送ベルト611を持つ。冊子2aの受け渡し時、下搬送ベルト611は冊子搬送方向に回転しているので、第2折搬送ローラ対812a,812bから冊子2aが落下しても、冊子2aが回転することなく、搬送されてきた姿勢のまま受け取ることができる。
【0024】
下搬送ベルト611を挟み、その外側にはサイドガイド対612が配設され、これらが冊子2aの幅方向に動作することで、冊子2aの幅方向位置を修正することができる。また、サイドガイド対612の上側は、冊子2aの開きを防止する押えガイド614が形成されており、これは冊子2aを冊子搬送方向下流側へスムーズに受け渡すためのガイドとして機能する。さらに下搬送ベルト611を挟んだ両側には、下搬送ベルト611と平行に移動する搬送爪613が配設されている。搬送爪613は、下搬送ベルト611と略同じ速度で正逆移動をする。下搬送ベルト611と冊子2aとの間にすべりが生じた場合は、この搬送爪613が冊子2aの後端と接触し、確実に冊子2aの後端を冊子搬送方向下流側へと押し込む。なお、前記下搬送ベルト611、サイドガイド対612、搬送爪613は、それぞれ駆動モータSM1,SM2,SM3の駆動を受けて動作する。
【0025】
620は入口搬送部であり、冊子受け取り部610から冊子2aを受け取り、冊子搬送方向下流側へ搬送するための下搬送ベルト621、上搬送ベルト622で構成される。上搬送ベルト622は支点623を中心に冊子2aの上面に接触しながら冊子2aの厚さに応じて回動できるようになっており、下搬送ベルト621に対して不図示のバネにより押圧されている。上下搬送ベルト621,622は駆動モータSM4によって駆動する。615は冊子受け取り入口検知センサで、中綴じ製本部800から冊子2aを受け取り、下搬送ベルト611上に冊子2aがあることを検知する。616は冊子受け取り出口検知センサで、冊子2aを検知することにより該冊子受け取り出口検知センサ616の検知信号がサイドガイド対612、搬送爪613を動作させるための入力信号となる。
【0026】
625は角付け処理部であり、冊子2aの折り頂部2a1の近傍を上下から押さえつける押えユニット630、冊子2aの折り頂部2a1を位置決めし、かつ折り頂部2a1を圧接する角付けユニット640とで構成されている。
【0027】
押えユニット630は、上下動を行う上押え板633と、該上押え板633に対向してフレームに固定される下押え板631とに分けられている。上押え板633と下押え板631とは折り畳まれた冊子2aを保持する保持手段として構成される。押えユニット630の上部は、駆動モータSM5の駆動を受け、リンク636,637,638を介して上下動を行う強固な押えベース632と、スライド連結部材634で連結された上押え板633を有している。スライド連結部材634の外周には圧縮バネ635が配置されている。押えベース632が上位置にあるとき、上下押え板631,633は離間しており、その間に冊子2aが搬送される。
【0028】
また押えベース632が下位置にあるときには、冊子2aの厚さに応じて伸縮する圧縮バネ635によって、冊子2aは上下押え板631,633でしっかりと押圧保持される。上下押え板631,633の冊子2aとの接触面は突起のない角付け面であるので、冊子2aを押圧保持したときに冊子2aに圧接痕をつけるようなことがない。639は上死点検知センサで、押えベース632が上位置にあることを検知する。681は冊子厚さ検知センサで、冊子2aを固定したときの上押え板633の位置を検知することで冊子2aの厚さを検知する。
【0029】
次に、図3〜図5を用いて角付けユニット640を説明する。図4は図3の図中X−Xの矢視図であり、図5は図3の角付けユニット640を図3の右側面から見た図である。角付けユニット640には、移動ユニット656aが設けられている。移動ユニット656aは不図示の枠体に支持されたスライド軸642,643に沿って図4及び図5の各図中A方向に移動可能に支持される。そして、連結部材653aによってタイミングベルト652aに取り付けられ、プーリ654a,655aを介して駆動モータSM6によって駆動される。
【0030】
図5に示す移動ユニット656aは、移動ベース641aを有し、移動ベース641aに固定されたスライド軸646,647に圧接部材の切替を行う切替ユニット657をスライド可能に支持している。切替ユニット657はスライドネジ645、駆動モータSM8によりスライド軸646,647に沿って図5の図中B方向に移動することができる。
【0031】
切替ユニット657には、支持軸648aが切替ベース644に回転自在に取り付けられている。支持軸648aには、ストッパ部材649aが固定されている。更に支持軸648aには、保持手段となる下押え板631と上押え板633とにより挟持して保持された冊子2aの折り頂部2a1を回転しながら圧接する回転圧接部材としてのローラからなる第1圧接部材650、第2圧接部材651が固定されている。本実施形態では、冊子2aの折り頂部2a1の圧接を円盤状のローラで行うことで、折り頂部2a1に均一な圧接力を順々に加えていくことができるので、冊子2aの折り頂部2a1を滑らかに角付けすることができる。本実施形態の角付け処理は、従来例として説明した角付け処理方式と異なり、冊子の厚さ方向の変形を抑えつつ、冊子の折り頂部を四角く変形させるというものである。
【0032】
ストッパ部材649aは後述するストッパ部材649bと協働し、搬送されてくる冊子2aの折り頂部2a1が突き当たることで角付け処理する位置に位置決めする部材である。第1圧接部材650、第2圧接部材651は冊子2aの折り頂部2a1を圧接して角付け処理する部材であり、冊子2aの厚さに応じて切替ユニット657を図5のB方向に移動することで切り替える。
【0033】
切替ユニット657には基準位置検知センサ659があり、図5のB方向に移動するときの基準位置を検知する。切替ベース644に取り付けられた圧接部材回転駆動モータSM9は、支持軸648aに回転駆動力を入力する。支持軸648aを回転させることで、第1圧接部材650、第2圧接部材651が駆動回転する。圧接部材回転駆動モータSM9は回転圧接部材となる第1圧接部材650及び第2圧接部材651を回転駆動させる回転駆動手段として構成される。
【0034】
また、角付けユニット640には、更に移動ユニット656bも設けられている。移動ユニット656bは、不図示の枠体に支持されたスライド軸642,643に沿って図4及び図5の図中A方向に移動可能に支持されている。そして、連結部材653bによってタイミングベルト652bに取り付けられ、プーリ654b,655bを介して駆動モータSM7によって駆動される。
【0035】
回転圧接部材となる第1圧接部材650及び第2圧接部材651を冊子2aの折り頂部2a1に沿って走行移動させる走行移動手段は以下の部材を有して構成される。即ち、駆動モータSM6によって回転駆動されるプーリ654a、該プーリ654aとプーリ655aとに張架されたタイミングベルト652aを有する。更に、該タイミングベルト652aに固定された連結部材653a、該連結部材653aに固定された移動ユニット656aを有して構成される。移動ユニット656bは、移動ベース641bを有し、移動ベース641bには、支持軸648bが回転自在に取り付けられており、支持軸648bにはストッパ部材649bが固定されている。ストッパ部材649bはストッパ部材649aと協働し、搬送されてくる冊子2aの折り頂部2a1が突き当たることで角付け処理する位置に位置決めする部材である。
【0036】
移動ユニット656a,656bには、それぞれ、基準位置検知センサ658a,658bがあり、図5のA方向に移動するときの基準位置となっている。ストッパ部材649a,649b、第1圧接部材650、第2圧接部材651はいずれも円盤状をしており、図6に示すような大きさの関係になっている。図6(a),(b)に示すように、ストッパ部材649a,649bの直径はD1である。そして、ストッパ部材649a,649bは上下押え板631,633間の内部に入り込み、冊子2aが上下押え板631,633の冊子搬送方向下流側端部631a,633aから突出しない位置で位置決めするようになっている。即ち、保持手段となる上下押え板631,633は、折り畳まれた冊子2aの折り頂部2a1を、該上下押え板631,633の冊子保持面から外部に突出させずに保持する。ストッパ部材649a,649bの高さはH1であり、搬送されてくる冊子2aの厚さよりも高くなっていて、厚い冊子2aでも折り頂部2a1がストッパ部材649a,649bを乗り越えずに位置決めできるようになっている。
【0037】
本実施形態における中綴じ製本部800で作成される冊子2aは、1枚のシート2を二つ折りした冊子2aから25枚のシート2の束を二つ折りした冊子2aである。そのうち、1枚から10枚までのシート2を二つ折りした冊子2aは角付け処理せず、11枚から25枚までのシート2の束を二つ折りした冊子2aを角付け処理するように設定している。これは、1枚から10枚までのシート2を二つ折りした冊子2aは冊子2aの厚さが薄く、折り頂部2a1を角付け処理する処理領域(圧接量)を確保し難いこと、角付け処理しても冊子2aの厚さ方向の膨らみが変わらないことによる。11枚から25枚のシート2を二つ折りした冊子2aは角付け処理される。この場合、冊子2aの厚さに幅があるため、冊子2aの厚さを二段階に分けて角付け処理する。即ち、図6(c)〜(f)に示すように、冊子2aの厚さがT2からT3のときは高さH2の第1圧接部材650に切り替えて角付け処理を行う。また、冊子2aの厚さがT4からT5のときは高さH3の第2圧接部材651に切り替えて角付け処理を行うようになっている。尚、ここで、冊子2aの厚さT2〜T5の関係は、T2<T3<T4<T5であり、ストッパ部材649a,649bの高さH1、第1圧接部材650の高さH2、第2圧接部材651の高さH3の関係は、H2<H3<H1である。
【0038】
また、ストッパ部材649a,649bの直径D1、第1圧接部材650の直径D2、第2圧接部材651の直径D3の関係は、D1<D2<D3である。そして、比較的薄めの冊子2aの折り頂部2a1を角付け処理するのに使用する第1圧接部材650のときは、処理領域(圧接量)P2=(D2−D1)/2である。また、厚い冊子2aの折り頂部2a1を角付け処理するのに使用する第2圧接部材651のときは、処理領域(圧接量)P3=(D3−D1)/2である。本実施形態では、薄めの冊子2aに比べて厚い冊子2aの処理領域(圧接量)が大きくなるよう(P2<P3)に設定している。このように、角付け処理する処理領域(圧接量)はストッパ部材649a,649bによる位置決め位置ではなく、第1、第2圧接部材650,651の直径D2,D3の大きさで設定している。
【0039】
ストッパ部材649a,649b、第1圧接部材650、第2圧接部材651は、押えユニット630の上下押え板631,633の間を移動ユニット656a,656bがスライドすることで図4の図中A方向に往復運動できる。そして、移動ユニット656aが上下押え板631,633の間から外れた位置(上下押え板631,633と移動ユニット656aとが干渉しない位置)にあるとき、切替ユニット657をスライドさせる。これにより上下押え板631,633の間に位置するストッパ部材649a,649b、第1圧接部材650、第2圧接部材651を切り替えられるようになっている。
【0040】
入口搬送部620から送られる冊子2aを押えユニット630で位置決めするときは、ストッパ部材649a,649bが上下押え板631,633の間で、冊子2aの幅方向中心を対称とし、冊子2aの幅寸法よりも内側に位置する(図7(a)参照)。これにより、冊子2aの折り頂部2a1をストッパ部材649a,649bに突き当て冊子2aを位置決めすることができる。
【0041】
ストッパ部材649a,649bまで搬送された冊子2aは、図3に示す冊子位置決め検知センサ626で検知される。また、前述のように、ストッパ部材649a,649bの高さ寸法は厚い冊子2aの折り頂部2a1が突き当たって位置決めできるように冊子2aの厚さよりも高くなるように設定されている。これにより、上下押え板631,633の間にストッパ部材649a,649bが位置するときは、上押え板631は冊子2aを保持できない関係となる。このため、図7(b)に示すように、冊子2aの位置決め後、ストッパ部材649a,649bを上下押え板631,633の両脇の位置に外してから、冊子2aの折り頂部2a1近傍を押えユニット630で押圧保持する。このとき、冊子2aの折り頂部2a1は上下押え板631,633の冊子搬送方向下流側端部631a,633aから突出しない。なお、このとき冊子2aは入口搬送部620の上下搬送ベルト621,622により挟持されているので、位置がずれることはない。
【0042】
この後、冊子厚さ検知センサ681で検知された冊子2aの厚さに応じて、図8(a)に示すように切替ユニット657でストッパ部材649aから第1圧接部材650、或いは第2圧接部材651に切り替える。図8(a)では第2圧接部材651に切り替えた状態を示している。そして、図8(b)及び図9(a)に示すように、移動ユニット656aを反対側の冊子2aの側端まで移動することで冊子2aの折り頂部2a1を圧接し、角付け処理するようになっている。このとき、切り替えられた第1圧接部材650または第2圧接部材651の冊子2aの折り頂部2a1に圧接する回転面の各々の周速度V1,V2は走行移動手段となる移動ユニット656aの移動速度Wよりも速い速度となるように設定される。第1圧接部材650の回転方向は、図8(b)に示すように、移動ユニット656aの進行に伴って冊子2aの折り頂部2a1に圧接する第1圧接部材650が従動回転した場合に回転する方向と一致する方向である。同様に、第2圧接部材651の回転方向は、図8(b)に示すように、移動ユニット656aの進行に伴って冊子2aの折り頂部2a1に圧接する第2圧接部材651が従動回転した場合に回転する方向と一致する方向である。この速度関係により、第1圧接部材650または第2圧接部材651の圧接による冊子2aの折り頂部2a1の圧接面の移動方向下流への押出し部分を第1圧接部材650または第2圧接部材651の回転により移動方向上流に引き込む。そして、しわの発生を防止することができる。回転圧接部材となる第1圧接部材650または第2圧接部材651の冊子2aの折り頂部2a1に圧接する回転面の各々の周速度V1,V2は、図11に示す制御手段であって周速度変更手段となる角付け処理制御部601により変更可能に構成されている。角付け処理制御部601は回転駆動手段となる圧接部材回転駆動モータSM9を駆動制御し、回転数を変更することで周速度V1,V2を変更する。
【0043】
冊子2aの厚さや圧接量によって冊子2aの背部のしわの発生状態が異なるため、切り替えられた第1、第2圧接部材650,651に対応させて、角付け処理制御部601は第1、第2圧接部材650,651の回転数をそれぞれ選択して切り替えている。したがって、図6に示すように、第1圧接部材650の場合の圧接面での周速度V1と、第2圧接部材651の場合の圧接面での周速度V2とは異なるようにしている。ここで、圧接量が大きい方が、移動ユニット656aの移動方向下流に冊子2aの圧接面を押し出す負荷が大きくなるため、負荷が大きいほど第1、第2圧接部材650,651の周速度V1,V2を速くさせる必要がある。したがって、図6に示すように、冊子2a厚さ方向の高さ(H2)が小さい第1圧接部材650の場合の圧接面での周速度V1よりも、高さ(H3)が大きい第2圧接部材651の場合の圧接面での周速度V2の方が速くなるように設定される。そして、角付け処理された冊子2aは上下搬送ベルト621,622,661,662の協働により図9(b)に示すように搬送方向下流側に搬送される。
【0044】
ここで、移動ユニット656aが走行移動する移動速度Wと、第1、第2圧接部材650,651の冊子2aの折り頂部2a1に圧接する回転面の周速度V1,V2とが等速である場合、冊子2aの背部にしわが発生してしまう。また、冊子2aの背部のしわの発生状態は、冊子2aの厚さや圧接量だけではなく、冊子2aの紙種、坪量、圧接時の環境状態等に起因する冊子2aの剛性によっても異なる。そのため、冊子2aの剛性が高いほど第1、第2圧接部材650,651の冊子2aの折り頂部2a1に圧接する回転面の周速度V1,V2を速くするよう角付け処理制御部601により調整できるような構成にする。これにより、移動ユニット656aの移動速度Wに対して増加させる周速度V1,V2を調整し、冊子2aの折り頂部2a1を圧接移動するため、圧接処理後の冊子2aにしわが発生することがない。
【0045】
図3において、660は出口搬送部であり、角付け処理され、押えユニット630の押圧保持を解除された冊子2aを受け取り、冊子搬送方向下流側へ搬送するための下搬送ベルト661、上搬送ベルト662で構成される。上搬送ベルト662は支点663を中心に冊子2aの上面に接触しながら冊子2aの厚さに応じて回動できるようになっており、下搬送ベルト661に対して不図示のバネにより押圧されている。上下搬送ベルト661,662は入口搬送部620と駆動連結されており、駆動モータSM4によって駆動する。
【0046】
図3において、670は出口搬送部660から排出される冊子2aを積載するコンベアートレイである。コンベアートレイ670の下面には、駆動モータSM10の駆動を受けて冊子搬送方向に移動するコンベアーベルト671が設けられ、冊子2aが排出される毎に所定量の移動を繰り返し、冊子2aの積載を行う。冊子2aが出口搬送部660から排出されたことの検知は、排出検知センサ664でなされる。
【0047】
図10は、複写装置1000の制御系のブロック図である。CPU(中央演算装置)回路部150は、CPU(不図示)を有する。そして、ROM(リードオンリメモリ)151に格納された制御プログラム及び操作部1の設定に従い以下の各部を制御する。即ち、CPU回路部150は原稿給送制御部101、イメージリーダ制御部201、画像信号制御部202、プリンタ制御部301、折り処理制御部401、フィニッシャ制御部501、外部I/F(インターフェース)203を制御する。そして、原稿給送制御部101は原稿給送部100を制御する。イメージリーダ制御部201はイメージリーダ部200を制御する。プリンタ制御部301はプリンタ部300を制御する。折り処理制御部401は折り処理部400を制御する。フィニッシャ制御部501はフィニッシャ500、中綴じ製本部800、インサータ900を制御する。角付け処理制御部601はフィニッシャ制御部501からの指令に基づき角付け処理部600を制御する。
【0048】
操作部1は、画像形成に関する各種機能を設定するための複数のキー、設定状態を表示するための表示部等を有する。そして、ユーザによる各キーの操作に対応するキー信号をCPU回路部150に出力すると共に、CPU回路部150からの信号に基づき対応する情報を表示部に表示する。
【0049】
RAM(ランダムアクセスメモリ)152は、制御データを一時的に保持するための領域や、制御に伴う演算の作業領域として用いられる。外部I/F203は、複写装置1000と外部のコンピュータ204とのインターフェースであり、コンピュータ204からのプリントデータをビットマップ画像に展開し、画像データとして画像信号制御部202へ出力する。また、イメージリーダ制御部201から画像信号制御部202へは、図1に示すイメージセンサ109で読み取った原稿4の画像が出力される。プリンタ制御部301は、画像信号制御部202からの画像データを図1に示す露光制御部110へ出力する。
【0050】
図11は角付け処理制御部601の駆動系のブロック図であり、図3に示して前述した各駆動モータSM1〜SM10を制御するようになっている。上記構成に基づき、角付け処理部600における角付け処理動作について冊子2aの流れと共に各部の動作を説明する。操作部1において、中綴じモードが選択されると、中綴じ角付け処理モードを設定するか否かを選択できるようになる。
【0051】
中綴じ角付け処理モードが選択されなかった場合は、図2に示す中綴じ製本部800で作成された中綴じ冊子2aは、図3に示す下搬送ベルト611、搬送爪613、入口搬送部620、出口搬送部660によって、コンベアートレイ670に排出される。このとき、サイドガイド対612、上押え板633、図5に示す移動ユニット656a,656bは、冊子搬送路を遮らない位置に待避している。
【0052】
中綴じ角付け処理モードが選択された場合の動作については以下に詳細に説明する。図12は中綴じ角付け処理モードが選択された場合の動作の流れを示すフローチャートである。中綴じ角付け処理モードが選択されると、図12のステップS1において、角付け処理部600はイニシャル動作をする。即ち、図3に示すサイドガイド対612を原点位置へ移動し、搬送爪613を基準位置へ移動し、押えベース632を上位置へ移動し、上死点検知センサ639で押えベース632が上位置にあることを検知する。また、図5に示す移動ユニット656a,656bを基準位置へ移動し、基準位置検知センサ658a,658bで検知し、切替ユニット657を基準位置へ移動し、基準位置検知センサ659で検知する。これらのイニシャル動作が完了すると、冊子2aのシート2の枚数、シートサイズ、作成する冊子2aの数を角付け処理制御部601へ通知する(ステップS2)。その通知は、図2に示す第2折搬送ローラ対812a,812bによって角付け処理部600の冊子受け取り部610に排出される前である。次にステップS3において、角付け処理制御部601は通知された冊子2aのシート2の枚数が10枚以下であった場合は「角付け処理無しモード」を選択する(ステップS4)。また、冊子2aのシート2の枚数が11枚以上であった場合は「角付け処理有りモード」を選択する(ステップS5)。
【0053】
次にステップS6において、図3に示す冊子受け取り部610の冊子搬送経路の両側に配設されたサイドガイド対612が冊子2aのサイズに合わせて待機位置へ移動する。更に、図5に示す切替ユニット657によってストッパ部材649aに切り替えられ、移動ユニット656a,656bが冊子位置決め位置へ移動する。冊子位置決め位置は冊子2aのサイズによって変わる。そして、冊子2aの折り頂部2a1がストッパ部材649a,649bに突き当たったときに回転したりせず、移動ユニット656a,656bの図4に示す走行移動方向Aに対して冊子2aの折り頂部2a1の平行が維持される位置に設定されている。
【0054】
中綴じ製本部800からの冊子2aの排出通知を受けると(ステップS7)、図3に示す下搬送ベルト611が駆動モータSM1によって回転し(ステップS8)、冊子2aを搬送する。そして、冊子受け取り入口検知センサ615、冊子受け取り出口検知センサ616でシート2の束を製本した冊子2aを検知した後(ステップS10)、駆動モータSM1を停止して下搬送ベルト611による冊子2aの搬送を一旦停止する(ステップS11)。
【0055】
その後、サイドガイド対612が駆動モータSM2により整合動作を行う(ステップS12)。その後、駆動モータSM4によって、入口搬送部620および出口搬送部660が駆動され(ステップS13)、冊子受け取り部610の上流に配置された搬送爪613と下搬送ベルト611によって、冊子2aの搬送が再開される(ステップS14)。搬送爪613は駆動モータSM3で駆動される。そして、冊子受け取り出口検知センサ616で冊子2aの排出を検知すると(ステップS15)、搬送爪613は冊子搬送方向上流側に退避する(ステップS16)。
【0056】
入口搬送部620で搬送された冊子2aが冊子位置決め検知センサ626で検知されると(ステップS17)、入口搬送部620の駆動が停止する(ステップS18)。このとき、図13に示すように、冊子2aの折り頂部2a1がストッパ部材649a,649bに突き当たり、上下押え板631,633の冊子搬送方向下流側端部631a,633aから出っ張らない位置に位置決めされている。
【0057】
次に、図5に示す移動ユニット656a,656bが上下押え板631,633の間から外れた位置(移動ユニット656a,656bが上下押え板631,633に干渉しない位置)となる待機位置に移動する(ステップS19)。そして、駆動モータSM5により押えベース632が下位置に移動し(ステップS20)、上下押え板631,633により冊子2aの折り頂部2a1が押圧保持される。
【0058】
次に、冊子2aを押圧保持した状態の上押え板633の位置が冊子厚さ検知センサ681により検知され、これによりステップS21において、冊子2aの厚さが判断される。冊子2aの厚さが図6に示して前述したT2からT3の範囲、つまり冊子2aの厚さがT3以下であった場合は第1圧接部材650に切り替えられる(ステップS22)。
【0059】
また、冊子2aの厚さがT4からT5の範囲、つまり冊子2aの厚さがT3よりも厚い場合は第2圧接部材651に切り替えられる(ステップS23)。そして、圧接部材回転駆動モータSM9により第1、第2圧接部材650,651が回転する(ステップS24)。このとき、切り替えられた第1、第2圧接部材650,651に対応させて、角付け処理制御部601が圧接部材回転駆動モータSM9により回転駆動される第1、第2圧接部材650,651の回転数をそれぞれ選択して切り替える。
【0060】
そして、図5に示す移動ユニット656aを図8(b)に示すように図4の移動方向Aに移動し(ステップS25)、冊子2aの折り頂部2a1の角付け処理がなされる。第1圧接部材650で冊子2aの折り頂部2a1の角付け処理をしている図が図14で、第2圧接部材651で冊子2aの折り頂部2a1の角付け処理をしている図が図15である。
【0061】
このように、切り替えられた第1、第2圧接部材650,651に対応させて、第1、第2圧接部材650,651の回転数をそれぞれ選択して切り替える。このため、冊子2aの厚さや圧接量によって異なるしわの発生状態の違いに対して第1、第2圧接部材650,651の回転数の調整が可能であり、冊子2aにしわが発生することがない。また、冊子2aの背部のしわの発生状態は、冊子2aの厚さや圧接量だけでなく、冊子2aの紙種、坪量、圧接時の環境状態等にも起因して異なる。そのため、それらの条件に応じて、第1、第2圧接部材650,651の圧接面での周速度V1,V2を調整できるような構成を設けて、圧接処理前に調整している。したがって、しわが発生することがなく、見栄えの良い冊子2aが作成される。
【0062】
図5に示す移動ユニット656aの移動が完了すると、圧接部材回転駆動モータSM9による第1、第2圧接部材650,651の回転が停止する(ステップS26)。図3に示す押えベース632が上位置へ移動し(ステップS27)、上下押え板631,633が離間する。そして、出口搬送部660が駆動モータSM4により駆動され(ステップS28)、出口搬送部660で搬送された冊子2aがコンベアートレイ670へ排出され、排出検知センサ664で冊子2aの排出が検知される(ステップS29)。すると、出口搬送部660が駆動を停止する(ステップS30)。コンベアートレイ670へ排出された冊子2aは、順次かわら状に積み重ねられていく。コンベアートレイ670上に排出された冊子2aが最終の冊子2aでなければ前記ステップS6へ戻り、最終の冊子2aであればジョブを終了する(ステップS32)。
【0063】
本実施形態においては、中綴じ製本部800で作成される冊子2aを1枚から25枚までのシート2を二つ折りした冊子2aとして説明したが、中綴じ製本部800の処理能力によって作成される冊子2aのシート2の枚数を変えても良い。また、角付け処理される冊子2aを11枚以上のシート2を二つ折りした冊子2aとして説明したが、シート2の坪量や厚さによってシート2の枚数を変更しても良く、本発明を何ら限定するものではない。本実施形態においては、冊子を形成するシートの枚数が10枚を超えるか否かを、角付け処理の有無の判断基準としたが、これに限らず、シートの坪量、紙種等で変更しても良い。
【0064】
また、本実施形態では、角付け処理される冊子2aの厚さによって2つに場合分けし、2種類の高さH2,H3と直径D2,D3の違う第1、第2圧接部材650,651を使用して角付け処理するように説明したが、1種類の回転圧接部材を使用しても良い。また、更に場合分けを細かくして使用する回転圧接部材の種類を増やしても良く、本発明を何ら限定するものではない。3段階以上に切替できるよう圧接部材を多数設けることで良好な角付け処理が可能となる。
【0065】
また、本実施形態においては、冊子2aの厚さを冊子厚さ検知センサ681で検知して場合分けしたが、シート2の坪量、厚さ、冊子2aのシート2の枚数など、冊子2aの厚さを決め得る条件から場合分けを行っても良い。また、冊子2aの厚さや圧接量によって変化する冊子2aの背部のしわに対処するために、第1圧接部材650の場合の圧接面での周速度V1と、第2圧接部材651の場合の圧接面での周速度V2とが異なる構成とした。しかし、しわの発生状態は他の因子によっても大きく影響を受けるため第1圧接部材650の場合の圧接面での周速度V1と、第2圧接部材651の場合の圧接面での周速度V2とを等しく構成しても良い。
【0066】
また、本実施形態では、圧接部材回転駆動モータSM9によって第1、第2圧接部材650,651を回転させる構成とした。他に、図5に示すスライド軸642,643と平行に図示しないラックを設ける。そして、移動ユニット656aに取り付けた図示しないギアと前記ラックとを噛み合わせる。そして、前記ギアから第1、第2圧接部材650,651の支持軸648aに回転駆動力を伝達させる。このように、駆動モータSM6により駆動される移動ユニット656aの移動と、第1、第2圧接部材650,651の回転を連動させても良い。
【実施例2】
【0067】
前記第1実施形態では、回転圧接部材としてローラ状の第1、第2圧接部材650,651を例示したが、本実施形態では、図16に示すように、回転圧接部材としてベルト665を設けて、冊子2aの折り頂部2a1を圧接移動する構成としたものである。
【0068】
図16に示すベルト665は、回転駆動手段となる圧接部材回転駆動モータSM9により回転駆動される駆動ローラ666と、プーリ667とに張架されている。回転駆動手段となる圧接部材回転駆動モータSM9により回転圧接部材となるベルト665が回転駆動される。そして、ベルト665の冊子2aの折り頂部2a1に圧接する回転面の周速度V3が走行移動手段となる移動ユニット656aの移動速度Wよりも速くなるように制御手段であって周速度変更手段となる角付け処理制御部601により設定される。他の構成は前記第1実施形態と同様に構成され、同様の効果を得ることができるものである。
【0069】
上述した各実施形態では、図7(a)に示すように、ストッパ部材649a,649bは、図3に示す上下押え板631,633間の内部に入り込む。そして、冊子2aの折り頂部2a1が上下押え板631,633の冊子搬送方向下流側端部631a,633aから突出しない位置で位置決めする構成とした。他に、従来例で前述したように、冊子2aの折り頂部2a1を上下押え板631,633の冊子搬送方向下流側端部631a,633aから突出させた構成に本発明を適用しても良い。冊子2aの折り頂部2a1を上下押え板631,633の冊子搬送方向下流側端部631a,633aから突出させた状態で上押え板633を下へ移動することにより、上下押え板631,633で冊子2aを上下から押圧保持する。この場合、冊子2aの折り頂部2a1が上下押え板631,633の冊子搬送方向下流側端部631a,633aから突出している。従来例のように、冊子2aとの圧接面での第1、第2圧接部材650,651、或いはベルト665の周速度V1,V2,V3が移動ユニット656aの移動速度W以下であれば、冊子2aの折り頂部2a1周辺にしわが発生してしまう。しかしながら、前記各実施形態のように、冊子2aの折り頂部2a1との圧接面での第1、第2圧接部材650,651、或いはベルト665の周速度V1,V2,V3が移動ユニット656aの移動速度Wよりも速くなるように設定する。これにより、第1、第2圧接部材650,651、或いはベルト665を冊子2aの折り頂部2a1に圧接移動するときに冊子2aの折り頂部2a1表面付近の紙を移動ユニット656aの進行方向の後方へ戻すことができる。これにより、冊子2aの折り頂部2a1周辺にしわが生じないので同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0070】
SM9 …圧接部材回転駆動モータ(回転駆動手段)
V1,V2 …周速度
W …移動速度
2a …冊子
2a1 …折り頂部
601 …角付け処理制御部(制御手段、周速度変更手段)
650 …第1圧接部材(回転圧接部材)
651 …第2圧接部材(回転圧接部材)
656a …移動ユニット(走行移動手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り畳まれた冊子を保持する保持手段と、
前記保持手段により保持された冊子の折り頂部を回転しながら圧接する回転圧接部材と、
前記回転圧接部材を回転駆動させる回転駆動手段と、
前記回転圧接部材を冊子の折り頂部に沿って走行移動させる走行移動手段と、
前記回転駆動手段により回転駆動される前記回転圧接部材の冊子の折り頂部に圧接する回転面の周速度が、前記走行移動手段の移動速度よりも速くなるように設定する制御手段と、
を有することを特徴とするシート後処理装置。
【請求項2】
前記回転圧接部材はローラまたはベルトであることを特徴とする請求項1に記載のシート後処理装置。
【請求項3】
冊子の厚さが厚いほど前記回転圧接部材の冊子の折り頂部に圧接する回転面の周速度を速くするよう変更する周速度変更手段を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシート後処理装置。
【請求項4】
冊子の剛性が高いほど前記回転圧接部材の冊子の折り頂部に圧接する回転面の周速度を速くするよう変更する周速度変更手段を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシート後処理装置。
【請求項5】
前記保持手段は、折り畳まれた冊子の折り頂部を、該保持手段の冊子保持面から外部に突出させずに保持することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のシート後処理装置。
【請求項6】
シートを複数枚重ねて二つ折りする折り処理部を備えたことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のシート後処理装置。
【請求項7】
シートに画像を形成する画像形成部と、画像形成されたシートを処理する請求項1乃至6の何れか1項に記載のシート後処理装置と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−148134(P2011−148134A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9839(P2010−9839)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】