説明

シート成形品の製造方法

【課題】図案のズレが抑制された良好な製品を効率よく製造することができるシート成形品の製造方法を提供すること。
【解決手段】長手方向に所定間隔で図案が備えられている帯状の熱可塑性樹脂シートを前記長手方向への移動と停止とを交互に行う間欠送りによって熱成形機に供給し、前記停止における前記図案の停止位置が前記熱成形機の成形型に対する所定位置となるように位置調整しつつ前記間欠送りを実施して前記成形型で前記熱可塑性樹脂シートを熱成形することにより前記図案が所定位置に備えられたシート成形品を製造するシート成形品の製造方法であって、前記図案の間隔に相当する間隔を設けて長手方向に沿って位置検出マークが備えられている熱可塑性樹脂シートを用い、前記間欠送りにおける前記位置検出マークの移動経路に該位置検出マークを検出可能な位置検出手段を配して前記間欠送りを実施し、図案の前記位置調整を所定の方法で実施するシート成形品の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート成形品の製造方法に関し、より詳しくは、長手方向に所定間隔で図案が備えられている帯状の熱可塑性樹脂シートを前記長手方向への移動と停止とを交互に行う間欠送りによって熱成形機に供給し、前記停止における前記図案の停止位置が前記熱成形機の成形型に対する所定位置となるように位置調整しつつ前記間欠送りを実施して前記成形型で前記熱可塑性樹脂シートを熱成形することにより前記図案が所定位置に備えられたシート成形品を製造するシート成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可塑性樹脂シートを熱成形して平皿や丼容器といったシート成形品を製造することが広く行われており、このようなシート成形品の製造に用いられる熱可塑性樹脂シートとしては、熱可塑性樹脂が用いられてなる樹脂フィルム、熱可塑性樹脂が用いられてなる樹脂発泡シート、或いは、前記樹脂発泡シートの片面や両面に前記樹脂フィルムが積層されてなる積層発泡シートなどが知られている。
この種のシート成形品を作製するのに際しては、製造効率の観点から、通常、数十cmから1mを超えるような広幅な帯状の熱可塑性樹脂シートが用いられており、該熱可塑性樹脂シートが巻き取られてなるシートロールを用いた連続的な製造方法が採用されている。
【0003】
例えば、従来のシート成形品の製造方法においては、熱可塑性樹脂シートを加熱する加熱ゾーンと、該加熱ゾーンの熱気を遮断するためのシャッターを介して前記加熱ゾーンに隣接する成形ゾーンとを有し、前記加熱ゾーンで加熱されて軟化された熱可塑性樹脂シートを前記成形ゾーンに供給し、該成形ゾーンに備えられた成形型で熱成形させ得るように構成された熱成形機がシート成形品の連続生産に広く用いられている。
この種の熱成形機には、通常、前記成形型による一度の熱成形に必要な長さだけ帯状の熱可塑性樹脂シートを長手方向に移動させる動作と該熱可塑性樹脂シートを前記成形型での熱成形のために一定期間停止させる動作とを交互に実施する間欠送りと呼ばれる搬送方法で熱可塑性樹脂シートを搬送するためのシート搬送手段がさらに備えられており、該熱成形機は、該シート搬送手段で熱可塑性樹脂シートを成形ゾーンに供給するとともに、該シート搬送手段で熱成形後の熱可塑性樹脂シートを前記成形ゾーンから排出させ得るように構成されている。
【0004】
ところで、このようなシート成形品を作製するのに際しては、装飾性を付与することなどを目的として文字や模様などの図案を備えさせることが行われている。
このとき、熱成形後の熱可塑性樹脂シートをトムソン刃型などで打抜いた打抜品などに対して曲面印刷等を施して図案を備えさせる方法が採用されたりしているが、一般的に曲面印刷は比較的高度な技術を要するためにその利用範囲が限定されている。
この曲面印刷に比べて簡便な方法としては、予め図案が備えられている熱可塑性樹脂シートを熱成形して当該図案をシート成形品に備えさせる方法が広く知られている。
一方でこのような方法においては、成形型の所定位置に図案を停止させて熱成形を実施しないとシート成形品の所定位置から図案がずれてしまうおそれを有する。
例えば、このような方法においては、間欠送りにおける熱可塑性樹脂シートの一回の移動量と熱可塑性樹脂シートの図案の間隔とを正確に一致させることが出来れば、最初の熱成形時において十分な位置合わせを行うことで以降作製されるシート成形品を最初に熱成形を行ったものと同等のものとすることができるが、間欠送りにおける移動量が図案の間隔と僅かにでも異なると、この誤差が熱成形の回数を重ねるに従って累積されてしまい成形型と図案との位置ズレが大きくなってシート成形品が不良品となってしまうおそれを有する。
【0005】
しかし、このような問題を防止しようとしても、成形ゾーンに実際に導入される図案の間隔は、間欠送りにおいて熱可塑性樹脂シートに加わる張力等によって影響されるためこの間隔を予め正確に把握しておくことが困難で、熱可塑性樹脂シートの一度の移動量と図案の間隔とを一致させることは困難である。
また、従来、原材料の保管スペースの削減を図りつつ多品種少量生産への対応が容易であることから図案の施された帯状の樹脂フィルムを帯状の樹脂発泡シートに貼り合わせて積層発泡シートを作製しつつ該積層発泡シートを熱成形し、必要な数のシート成形品を得た後で、樹脂発泡シートをそのままにして前記樹脂フィルムのみを切り替えてデザインの異なるシート成形品を引き続き製造するようなことが行われているが、このような場合においては、樹脂フィルムを樹脂発泡シートに貼り合わせる際にも該樹脂フィルムが伸長されて図案の間隔が予定していた間隔と異なる状態になる場合があるために上記のような問題を抑制することがより一層困難である。
【0006】
このような問題に対して、下記特許文献1では、熱可塑性樹脂シートに設けられた図案を間欠送りの停止期間中に撮像し、得られた画像を解析して、本来、図案が停止すべき位置と実際に図案が停止した位置とのズレ量を熱可塑性樹脂シートの長手方向のみならず幅方向についても求め、この画像解析した領域を成形ゾーンに導入させた際に前記ズレ量に基づく成形型の位置補正をしてから熱成形を行うことが検討されている。
【0007】
この特許文献1の方法においては、成形型の位置補正によって、前記図案の停止位置が前記成形型に対する所定位置となるように位置調整されるために出来上がるシート成形品に対する図案の位置ズレを抑制させることができるもののシート成形品の製造を開始した後に熱可塑性樹脂シートが幅方向に大きく位置ズレすることは通常生じないために、この特許文献1のように幅方向の位置調整までをも行うのは位置合わせが過度に厳格になるばかりで熱成形に要する時間を増大させてしまうおそれを有する。
しかも、成形型の位置補正を行うためには大掛かりな制御機構が必要になり、位置補正のために成形型を移動させるのに多大な動力を必要とさせるおそれを有する。
【0008】
即ち、従来のシート成形品の製造方法においては、図案のズレが抑制された良好な製品を効率よく製造することが困難な状況となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−081605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり図案のズレが抑制された良好な製品を効率よく製造することができるシート成形品の製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するためのシート成形品の製造方法に係る本発明は、長手方向に所定間隔で図案が備えられている帯状の熱可塑性樹脂シートを前記長手方向への移動と停止とを交互に行う間欠送りによって熱成形機に供給し、前記停止における前記図案の停止位置が前記熱成形機の成形型に対する所定位置となるように位置調整しつつ前記間欠送りを実施して前記成形型で前記熱可塑性樹脂シートを熱成形することにより前記図案が所定位置に備えられたシート成形品を製造するシート成形品の製造方法であって、前記図案の間隔に相当する間隔を設けて長手方向に沿って位置検出マークが備えられている熱可塑性樹脂シートを用い、前記間欠送りにおける前記位置検出マークの移動経路に該位置検出マークを検出可能な位置検出手段を配して前記間欠送りを実施し、該間欠送りにおける熱可塑性樹脂シートの各移動に際しては、前記位置検出手段が配されている位置を通過する前記位置検出マークを前記位置検出手段によって検出させるとともに前記位置検出マークを検出した後の前記熱可塑性樹脂シートの移動量を一定させることによって図案の前記位置調整を実施し、且つ、前記位置検出マークを検出した後の移動を予め定められた速度で実施させて該移動に要する時間を一定させることを特徴としている。
【0012】
なお、“帯状の熱可塑性樹脂シートの長手方向における図案の間隔”とは、ワンショットの熱成形で複数の製品が形成される多数個取りの成形型を用いるような場合においては、この成形型の複数の成形面の内の隣り合う成形面に導入される図案間の距離を意味するものではなく、単に長手方向において隣接する図案間の距離を意味するものではない。
即ち、本明細書における“帯状の熱可塑性樹脂シートの長手方向における図案の間隔”とは、成形型の同じ成形面に導入されるべき図案が熱可塑性樹脂シートの長手方向において保っている間隔を意味している。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、図案の間隔に相当する間隔を設けて長手方向に沿って位置検出マークが設けられている熱可塑性樹脂シートが用いられ、前記熱可塑性樹脂シートの前記移動に際して前記位置検出マークが通過する経路に配された位置検出手段によって前記位置検出マークの位置検出を実施しつつ熱可塑性樹脂シートの間欠送りが実施される。
そして、前記熱可塑性樹脂シートの移動量を調整して図案の前記位置調整が行われることからシート成形品に対する図案のズレが抑制される。
即ち、熱可塑性樹脂シートの移動量を調整して図案の位置調整を行う本発明は、成形型自体を移動させて図案との位置調整を行っている従来の方法に比べて大掛かりな制御を必要とせずシート成形品に対する図案のズレを簡便に抑制させ得る。
【0014】
しかも、本発明においては、位置検出マーク検出後の前記熱可塑性樹脂シートの移動量を一定させており、且つ、予め設定された速度で前記熱可塑性樹脂シートを移動させて位置検出マークの検出後から次に停止するまでの移動時間を一定させることから前記位置検出手段が前記位置検出マークの検出を行った時点で該熱可塑性樹脂シートが停止するタイミングを予め把握することができる。
従って、該熱可塑性樹脂シートが動いている最中にシャッターや成形型が熱可塑性樹脂シートに接触して熱可塑性樹脂シートを破損させる等の問題を生じさせるおそれを低減しつつ当該熱可塑性樹脂シートの停止前にシャッターや成形型の動作準備をさせておくことができる。
即ち、停止期間の時間短縮を図ることができ効率よくシート成形品を製造することができる。
【0015】
なお、上記の効果について、より具体的に説明すると、熱可塑性樹脂シートの長手方向において本来保たれているべき図案の間隔(以下「設計値」ともいう)が1000mmで、実際に成形型に供給される際の図案の間隔(以下「実間隔」ともいう)が1000.1mmとなっている場合には、設計値通りの移動量で間欠送りを実施させると、10回の移動後には、累積のズレ量が1mmとなって通常のシート成形品においては無視できないズレ量となる。
一方で、本発明においては、図案の間隔に対応した位置検出マークを利用して、該位置検出マークの位置検出後の移動距離を一定にして熱成形を実施する。
即ち、位置検出マークは図案の実間隔に対応しているため、例えば、位置検出後の移動量を990mmに設定した場合には、間欠送りの各停止において、次に位置検出させる位置検出マークを位置検出手段の10.1mm上流側に位置させることになる。
そのことによって、一度の移動における移動距離を1000.1mm(10.1mm+990mm)とすることができ、前記距離を実間隔に一致させることができる。
【0016】
また、この実間隔が熱可塑性樹脂シートに加わる張力の変化等によってシート成形品の製造中に変化した場合にも、熱可塑性樹脂シートが移動を開始してから位置検出マークを検出するまでの移動量が実間隔の変化に伴って変化することで一回の移動量が自動的に調整され、図案の実間隔に相当する距離で毎回の移動動作が実施されることになる。
【0017】
このように本発明によれば、熱可塑性樹脂シートの破損などを防止しつつも停止動作の短期化を図ることができ、図案のズレが抑制された良好なシート成形品を効率よく製造し得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の製造方法によって製造されるシート成形品である丸皿容器を示す概略斜視図。
【図2】本発明のシート成形品の製造方法に使用する設備構成を示す概略図((a)平面図、(b)正面図)。
【図3】図2において破線Xで示されている領域の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図案を備えた熱可塑性樹脂フィルム(以下、単に「樹脂フィルム」ともいう)が熱可塑性樹脂発泡シート(以下、単に「樹脂発泡シート」ともいう)の片面に積層された積層発泡シートを熱成形機に供給して、該熱成形機によって前記樹脂フィルムで容器内面側が形成された丸皿容器を製造する方法を例にして本発明のシート成形品の製造方法を説明する。
【0020】
なお、図1は、本実施形態の製造方法によって作製する前記丸皿容器を示す概略斜視図であり、この図において示されているように本実施形態においては、シート成形品として内面に市松模様の図案を備えた丸皿容器1を製造する場合を例にしてシート成形品の製造方法について説明する。
前記丸皿容器1は、この丸皿容器1に備えさせる図案が施された樹脂フィルム2を白色無地の樹脂発泡シート3に積層させた積層発泡シート4によって形成されており、内面側が前記樹脂フィルム2で形成され、外表面側が樹脂発泡シート3で形成されている。
該丸皿容器1は、平面視円形の底面部11と該底面部11の外縁11eから外向きに広がって立ち上がる側壁部12と該側壁部12の上端縁12eから外向きに短く延びる鍔部13とを有し、前記側壁部12の上端縁12eによって円形の開口が上部に形成されている。
そして、前記丸皿容器1は、前記底面部11と鍔部13とを除く側壁部12の内面部分のみに前記市松模様による装飾が施されている。
【0021】
本実施形態においては、このような丸皿容器1を形成させるためのドーナッツ形の図案22が長手方向に所定間隔で設けられている長尺帯状の積層発泡シート2を前記長手方向への移動と停止とを繰り返す間欠送りによって熱成形機5に供給し、前記間欠送りにおける前記熱可塑性樹脂シートの移動量を調整することにより前記熱成形機5に備えられた成形型51に対する所定位置に前記図案22を停止させる図案の位置調整を実施し、該停止時において前記積層発泡シート2に前記成形型51を当接させて熱成形を実施し、前記図案22が所定位置に設けられた丸皿容器1を製造する。
【0022】
しかも、本実施形態においては、前記積層発泡シート2として前記図案22の間隔に相当する間隔を設けて長手方向に沿って位置検出マーク21が複数設けられている積層発泡シート2を用いるとともに該位置検出マーク21を検出可能な位置検出手段7を備えた製造設備を用い、前記位置検出手段7を前記位置検出マークの移動経路となる位置に配して該位置検出手段7による前記位置検出マーク21の位置検出を熱可塑性樹脂シートの各移動において実施し、前記図案の間隔に相当する移動量となるように熱可塑性樹脂シートの移動量を調整して図案22の前記位置調整を実施して丸皿容器1を作製する。
なお、図においては、この積層発泡シート2(位置検出マーク21)の移動方向を矢印「D」で示している。
【0023】
そして、本実施形態においては、間欠送りにおける積層発泡シート2の各移動において、前記位置検出マーク21を下流側に移動させて前記位置検出手段7によって位置検出させた後の前記積層発泡シート2の移動距離を位置検出マークの前記間隔未満の一定距離として次の位置検出マークを前記位置検出手段の上流側で停止させ、且つ、該位置検出後の前記移動距離を予め設定した速度で実施させることにより前記位置検出後の移動に要する時間を一定させて丸皿容器1を作製する。
【0024】
まず、丸皿容器1の製造設備ならびに部材について図2、3を参照しつつ説明する。
図2は前記丸皿容器を製造するのに使用する製造設備の構成を示す概略図で、正面視左側から右側に向けた方向が製造ラインの流れ方向となっている。
なお、図2(a)は平面図であり、(b)は正面図である。
また、図3は、図2において破線Xで示されている領域を拡大した図であり、樹脂発泡シート3に樹脂フィルム4が積層された直後の積層発泡シート2と、熱成形機5の導入部分に設けられた加熱ゾーンにおける前記積層発泡シート2の様子を示した概略平面図である。
【0025】
本実施形態において用いる製造設備には、互いに略同幅となる長尺帯状の前記樹脂発泡シート3と長尺帯状の前記樹脂フィルム4とを長さ方向に順次積層一体化させて積層発泡シート2を連続的に作製するラミネート装置6と、該ラミネート装置6によって作製された積層発泡シート2を熱成形する熱成形機5とを有している。
即ち、本実施形態の製造設備は、前記樹脂発泡シート3と前記樹脂フィルム4とを熱ラミネートによって積層一体化させて前記積層発泡シート2を作製しつつ該積層発泡シート2を前記熱成形機5に供給して前記丸皿容器1を製造し得るように構成されている。
【0026】
前記ラミネート装置6には、最も上流側となる位置に前記樹脂発泡シート3が巻回されてなる原反ロール30が配されており、該原反ロール30の下流側上方に長尺帯状の樹脂フィルム4が巻回されてなるフィルムロール40が配されている。
そして、本実施形態において用いる前記ラミネート装置6は、前記原反ロール30から繰り出される樹脂発泡シート3と、前記フィルムロール40から繰り出される樹脂フィルム4とを熱ラミネートさせるべく構成されており、水平に配した前記樹脂発泡シート3の上面に前記樹脂フィルム4を重なり合わせて、これを上下に対をなすローラ61,62の間を通過させて積層一体化させ得るように構成されている。
即ち、この一対のローラ61,62は、樹脂フィルム4に当接される上側のローラが所定温度に設定可能な加熱ローラ61となっており、下側のローラは、通常、加熱を実施しない単なるバックアップローラ62として備えられている。
しかも、これらのローラ61,62は、その間のクリアランスを調整して樹脂発泡シート3に樹脂フィルム4を積層する際の圧力を調整し得るようにラミネート装置6に備えられている。
【0027】
前記ラミネート装置6は、前記樹脂フィルム側を上方に向けて略水平に支持させた状態で前記積層シート2を熱成形機5に供給し得るように前記製造設備に備えられており、前記熱成形機5には、該ラミネート装置6から供給された前記積層発泡シート2を略水平に保持した状態で内部を通過させ得るようにシート搬送手段が備えられている。
なお、前記熱成形機5には、積層発泡シート2の移動方向上流側から順に、積層発泡シート2を熱成形可能な軟化状態に加熱するための加熱ゾーン50a,50b,50cと前記成形型51の設置された成形ゾーン50dとが備えられており、前記成形ゾーン52dには、真空成形によって一度に複数の製品形状を積層発泡シート2に形成させ得る多数個取り金型が前記成形型51として備えられている。
【0028】
前記加熱ゾーン50a,50b,50cは、その合計スペースが前記成形型51の約3面分の広さを有しており、最も上流側の領域(以下「第一加熱ゾーン50a」ともいう)、中段の領域(以下「第二加熱ゾーン50b」ともいう)、最下流側の領域(以下「第三加熱ゾーン50c」ともいう)の3つの領域を個別に温度設定させ得るように形成されている。
即ち、本実施形態における前記熱成形機5は、前記成形型51による一度の熱成形に必要な分の積層発泡シート2を間欠送りによって第一加熱ゾーン50aから第三加熱ゾーン50cまでの間を順次滞留させて通過させ得るように形成されており、これらの領域を通過して軟化され且つ二次発泡した積層発泡シート2を前記成形ゾーン50dに導入させて前記成形型51で真空成形を行い得るように形成されている。
【0029】
なお、本実施形態における前記熱成形機5は、加熱ゾーン50a,50b,50cで加熱されて軟化された積層発泡シート2を成形ゾーン50dにおいて前記成形型51の成形面に沿わせて変形させ、製品形状を付与するとともに前記成形型によって冷却し、前記製品形状を保った状態で硬化させ得るように形成されている。
そして、この熱成形機5には、該成形ゾーン50dに隣接する前記第三加熱ゾーン50cから熱気が入り込んで成形型51が加熱されてしまうことを抑制すべく該成形ゾーン50dと前記第三加熱ゾーン50cとの間を仕切るシャッター55が設けられており、該シャッター55は、前記積層発泡シート2を停止させて熱成形を行う際には閉止状態となり、成形後の積層発泡シート2の移動時には開放状態となるように設けられている。
即ち、前記シャッター55は、シート搬送手段の動き(積層シートの間欠送り)に連動して開閉し得るように備えられている。
【0030】
なお、前記成形ゾーン50dには、積層発泡シート2の幅方向に4個、長手方向に3個の合計12個の製品形状を一度の熱成形で形成させ得るように前記丸皿容器1の形状に対応した成形面をなす凹部51aが12個配列された成形型51が備えられており、本実施形態における前記成形型51は、前記凹部51aを上方に向けて開口させ、前記積層発泡シート2に下面側から当接させ得るように上下可動な状態となって熱成形機5に配されている。
即ち、前記成形型51は、積層発泡シート2の間欠送りに連動して上下に移動するように熱成形機5に備えられており、積層発泡シート2の移動時には積層発泡シート2の下方において待機した状態となるように備えられている。
そして、前記成形型51は、積層発泡シート2が停止するのにあわせて上昇し、積層発泡シート2が停止した際には略同時に該積層発泡シート2の下面側に当接されるようにシート搬送手段の動きに連動した設定がなされて備えられている。
【0031】
また、本実施形態における熱成形機5には、前記成形型51による真空成形をアシストするためのプラグアシスト機構52が設けられており、該プラグアシスト機構52には、前記成形型51の上方において該成形型51と対面するように設けられた基板52aと該基板52aの下面側において前記成形型51の凹部51aに対応するように突出した突出部52bとが備えられている。
そして、該プラグアシスト機構52は、前記基板52aを上下動させ得るように構成されており、該上下動によって基板52aの下面に設けられた前記突出部52bを前記成形型51の凹部51aに対して進退させ得るように構成されている。
即ち、前記プラグアシスト機構52も、前記成形型51と同様に積層発泡シート2の間欠送りに連動して上下に移動するように熱成形機5に備えられており、積層発泡シート2の移動時には積層発泡シート2の上方において待機状態となるように備えられている。
そして、前記プラグアシスト機構52は、積層発泡シート2が停止するのにあわせて下降し、積層発泡シート2が停止した際には略同時に該積層発泡シート2の上面側に突出部52bの先端が当接されるようにシート搬送手段の動きに連動した設定がなされて備えられている。
なお、このプラグアシスト機構52は、積層発泡シート2の停止後も下降を継続し前記積層発泡シート2の上面側に当接させた突出部52bをさらに成形型51の凹部51aに侵入させ、前記積層発泡シート2の真空成形を補助させ得るように形成されている。
【0032】
また、前記シート搬送手段は、前記加熱ゾーン50a,50b,50cから前記成形ゾーン50dまでの間を前記積層発泡シート2の側方において周回する左右一対の金属チェーン54と、該金属チェーン54に所定間隔を設けて取り付けられ、前記金属チェーン54よりも内側に突出した把持具(クランプ)54aと、前記金属チェーン54に所定の動作をさせるためのモーター及び制御装置(図示せず)などから構成されている。
即ち、前記シート搬送手段は、積層発泡シート2の幅方向両端部(両側縁部)を前記クランプ54aによって把持させて該積層発泡シート2を前記加熱ゾーン50a,50b,50cから前記成形ゾーン50dまで搬送し得るように構成されている。
【0033】
なお、該シート搬送手段は、前記成形ゾーン50dでの一度の熱成形に必要な長さの積層発泡シート2を成形ゾーン50dに搬送した後、該成形ゾーン50dでの熱成形が終了するまでの間積層発泡シート2を停止させ、該熱成形完了後、再び、成形型一面分の積層発泡シート2を下流側に移動させて成形ゾーン50dで熱成形させ得るように構成されており、移動と停止とを交互に繰り返す間欠送りによって積層発泡シート2を熱成形機に導入させ得るように構成されている。
【0034】
本実施形態において用いる積層発泡シート2には、前記側壁部12に設けるための市松模様によってドーナッツ型の図案22が前記成形型51の凹部51aの配置に対応して配列され、且つ、この配列された図案22が積層発泡シート2の長手方向に所定の間隔を保って備えられているとともに前記間欠送りにおける毎回の移動距離を決定するために、前記クランプ54aによって把持される幅方向端部(側縁部)に前記位置検出マーク21が設けられている。
そして、前記位置検出マーク21は、積層発泡シート2の長手方向における図案の前記間隔(図2「P1」)に相当する間隔で当該積層発泡シート2の側縁部に沿って複数設けられている。
この位置検出マーク21は、積層発泡シート2の移動方向に対して横長となる長方形の黒ベタ印刷によって周囲とのコントラストを際立たせる形で設けられており、積層発泡シート2の長手方向に沿って前記図案22の間隔(P1)と同じ間隔(図2「P2」)を保って設けられている。
【0035】
そして、本実施形態の製造設備には、この位置検出マーク21の位置(長方形の長辺側の片方のエッジ)を前記位置検出手段7で検出して、該位置検出マーク21の間隔に基づいて前記シート搬送手段による積層発泡シート2の移動量を調整し、このことによって成形型51の所定位置に前記図案22を停止させるべく図案の位置調整を行う位置調整手段が備えられている。
本実施形態においては、前記位置検出手段7として前記位置検出マーク21の移動経路に2台の光電管70a,70bが用いられており、該光電管70a,70bの内の一台は、前記第一加熱ゾーン50aの上流側に備えられ、残りの一台は前記成形ゾーン50dの下流側に備えられている。
なお、以下においては、第一加熱ゾーン50aの上流側のものを第一光電管70aともいい、該第一光電管70aによる位置検出手段7を第一位置検出手段7aともいう。
また、以下においては、成形ゾーン50dの下流側のものを第二光電管70bともいい、該第二光電管70bによる位置検出手段7を第二位置検出手段7bともいう。
前記光電管70a,70bは、積層発泡シート2の上面に対して光を照射し、且つ、該上面からの反射光を受光し得るように積層発泡シート2の上方に備えられておりその下方を通過する位置検出マーク21を検出し得るように備えられている。
【0036】
このような製造設備を用いて前記丸皿容器1を製造する方法を以下に説明すると、まずは、前記原反ロール30から樹脂発泡シート3を繰り出してラミネート装置6の加熱ローラ61とバックアップローラ62との間を通過させるとともに前記フィルムロール2からも樹脂フィルム21を繰り出して樹脂発泡シート3と同様にラミネート装置6を通過させる。
このときラミネート装置6の加熱ローラ61とバックアップローラ62との間をあけた状態にしておき、加熱ローラ61が樹脂フィルム21に接触しないようにして熱成形機5の加熱ゾーンに設けられたヒーターの電源、並びに、加熱ローラ61の電源を入れ、それぞれが所定の温度となるまで待機する。
【0037】
その後、熱成形機5の加熱ゾーン、及び、加熱ローラ61が所定の温度に安定した時点でラミネート装置6をスタートさせ、加熱ローラ61とバックアップローラ62との間を所定の間隔に狭めてこれらの間で樹脂発泡シート3と樹脂フィルム4とが圧接される状態にし、且つ、加熱ローラ61とバックアップローラ62とを所定の周速で回転させる。
このことによって樹脂発泡シート3と樹脂フィルム4とを引取らせ一定のスピードで加熱ローラ61の下流側に積層発泡シート2を連続的に供給させることができる。
【0038】
そして、前記ラミネート装置6の運転状態が安定して良好なる積層発泡シート2が安定供給されるようになった時点で前記シート搬送手段を使って前記積層発泡シート2を熱成形機5に通し、前記熱成形機5の成形型51と積層発泡シート2の図案22とを位置合せし、丸皿容器1に対する図案22の位置ズレがない丸皿容器1を試し成形によって作製する。
【0039】
なお、図案22の間隔の設計値を「P0」とした際に、実際の図案の間隔(P1)がこの設計値(P0)に完全に一致していれば、図案の位置ズレがない良好な丸皿容器1が形成される積層発泡シート2の位置が特定された時点で、その後の積層発泡シート2の移動量を設計値通りの移動量を設定して丸皿容器1の本生産を開始すればよいが、通常、この図案の間隔(P1)は、ラミネート装置6において樹脂フィルム4に加わる張力等によって設計値(P0)から僅かにずれた値となる。
この実際の図案の間隔と設計値とのズレ量を「ΔP」とすると、積層発泡シートを間欠送りして熱成形をn回繰り返した際には、ズレ量の累積値が「ΔP×n」となる。
そして、この累積値(ΔP×n)が製品として許容できない値となった時点で製品が不良品になってしまうことになる。
例えば、設計値とのズレ量が0.1mmで丸皿容器においてこの程度の図案のズレを発生させたとしても実質上の問題が生じない場合であっても、本実施形態に示すような位置調整を実施せずに、単に決まったピッチで積層発泡シートを間欠送りして丸皿容器を形成させると10回の熱成形を行った際には1mmのズレとなってしまい、前記側壁部から市松模様がはみ出したような不良品が形成されるおそれを有する。
【0040】
本実施形態においては、丸皿容器1の側壁部12の全面に市松模様が施されており、該側壁部12と底面部11との境界や側壁部12と鍔部13との境界といった曲折部に沿って図案の輪郭線を位置させているために、側壁部の中央部にワンポイントの図案を設ける場合と違って図案のズレが目立ちやすく、1mmものズレを生じてしまうと不良品となってしまうおそれを有する。
このことを防止するために、何回かに一度の割合で、製造ラインを止めて位置修正を行わせることも考え得るが、その場合には、積層発泡シートの一部を通常よりも前記位置修正に要する時間分長く加熱ゾーンに滞留させてしまうことになり、この部分を製品に利用できなくなるおそれを有する。
即ち、このようなラインを止めての位置修正を行ったのでは効率良く製品を作製することが難しい。
【0041】
一方で、本実施形態においては、前記光電管70a,70bによる位置検出マーク21の位置検出に基づいて本生産において実施させる間欠送り条件を設定し、該位置検出後、次に積層発泡シート2を停止させるまでの該積層発泡シート2の移動量を図案22の間隔未満の一定値に設定して本生産を開始させるため位置ずれの抑制された良品を効率良く作製することができる。
【0042】
例えば、所定位置に図案が備えられた丸皿容器1が得られた時点で前記光電管70a,70bから前記位置検出マーク21までの距離を測定し、加熱ゾーンに導入される前の積層発泡シート2における図案の実間隔(P1’)から引いた値を位置検出後の移動距離に設定して本生産を開始させることで位置ずれの抑制された良品を作製することができる。
このとき前記光電管70a,70bから位置検出マーク21までの距離を「D1」とすると、この距離(D1)を前記実間隔(P1’)から引いた値(P1’−D1)を位置検出後の移動距離に設定して本生産を開始させる。
【0043】
そして、この熱成形後には以下のようなプロセスでシート成形品の製造が行われる。
(第一の移動)
前記熱成形後の移動においては、積層発泡シート2が距離「D1」移動した時点で次の位置検出マーク21が光電管70a,70bによって検知されることになる。
そして、前記のように位置検出後の移動量は「P1’−D1」となるように設定されているので合計移動量が「P1’」(「D1」+「P1’−D1」)となった時点で積層発泡シート2が停止し、この第一の移動が終了する。
(第一の停止)
前記のように位置検出後の移動量は「P1’−D1」となるように設定されているので第一の移動後の停止(第一の停止)における位置検出マーク21の停止位置は、光電管70a,70bから距離「D1」上流側となる。
また、この後の各移動については合計移動量が「P1’」となって常に図案の実間隔に相当する移動量で間欠送りが実施されるため丸皿容器1に対する図案のズレが防止されることになる。
【0044】
次いで、積層発泡シート2を作製する際に樹脂フィルム4に加わる張力が変化するなどして図案の実間隔がそれまでに比べて「ΔP’」だけ大きな値に変化した(「P1’」→「P1’+ΔP’」)場合を考えるとこの変化後には以下のようなプロセスで図案の位置調整が自動的に行われる。
(第一の移動)
前記のように熱成形後の移動においては、積層発泡シート2が距離「D1」移動した時点で次の位置検出マーク21が光電管70a,70bによって検知され、位置検出後の移動量は「P1’−D1」となるように設定されているので合計移動量が「P1’」となった時点で積層発泡シート2が停止する。
(第一の停止)
このとき、図案の実間隔が「ΔP’」だけ広がっているのでこの第一の停止における位置検出マーク21の停止位置は、光電管70a,70bから距離「D1」の位置ではなく「D1+ΔP’」離れた位置となる。
(第二の移動)
前記第一の停止後の移動においては、第一の移動とは違って積層発泡シート2が距離「D1+ΔP’」移動した時点で次の位置検出マーク21が光電管70a,70bによって検知される。
そして、前記のように位置検出後の移動量は「P1’−D1」となるように設定されているので合計移動量が「P1’+ΔP’」(「D1+ΔP’」+「P1’−D1」)となった時点で積層発泡シート2が停止し、この第二の移動が終了する。
即ち、第二の移動においては、変化後の図案の間隔に対応した移動量で積層発泡シート2が移動されることになる。
(第二の停止)
前記のように図案の実間隔が「P1’+ΔP’」となっており位置検出後の移動量が「P1’−D1」に設定されているので、第二の移動が完了した後の位置検出マーク21の停止位置と光電管70a,70bとの間の距離は、第一の停止と同じく「D1+ΔP’」(「P1’+ΔP’」−「P1’−D1」)となる。
したがって、これ以降は、変化後の図案の実間隔に相当する移動量で間欠送りが実施されることになり成形型に対する図案の位置調整が自動的に実施されることになる。
【0045】
なお、上記の場合には、図案の実間隔が変化した後の第一の移動だけは、移動量が「P1’+ΔP’」ではなく変化前の「P1’」のままとなる。
そのため図案の実間隔の変化後には、丸皿容器に「ΔP’」の図案の位置ズレを生じるおそれを有する。
しかし、その後、すぐに移動量が「P1’+ΔP’」となる間欠送りが実施されるため、熱成形の回数を重ねるごとにズレが累積されることはなく、それ以降製造される丸皿容器に生じる位置ずれは「ΔP’」の大きさにとどまることになる。
そして、通常、シート成形品の製造途中において図案の間隔が大きく変化することはないために、この位置ズレは、実質上の問題が生じない程度のものとなる可能性が高いため得られる丸皿容器が不良品となるおそれが抑制され得る。
【0046】
仮に、丸皿容器の製造途中において図案の間隔が大きく変化し、「ΔP’」のズレ量が許容範囲を超えるものとなる場合は、図案の位置ズレ量に応じて位置検出手段の配置を位置検出マークの移動経路に沿って前後させてズレを補正させるようにしてもよい。
例えば、本来は第一の移動においても「P1’+ΔP’」の移動量で積層発泡シート2を移動させるべきところ、「P1’」の移動量でしか積層発泡シート2が移動されず、その後の図案の停止位置が成形型51の凹部51aに対して上流側に「ΔP’」ずれる事態となった場合であれば、光電管70a,70bを下流側に「ΔP’」移動させて、次の移動に際して積層発泡シート2を「ΔP’」だけ余分に移動させるようにして成形型51に対して本来停止させるべき所定位置に図案を復帰させるような補正をすることができる。
【0047】
このように本生産を開始した後でズレ量に変化が生じたような場合にも、この変化に応じた調整をして間欠送りを実施させ得ることから、ラインを止めて位置補正を行う必要性がなく材料ロスを低減できるとともに不良品の発生を防止でき歩留り良く丸皿容器を製造することができる。
【0048】
また、本実施形態においては、この位置検出後の移動距離を上記のように一定に設定するとともにこの移動における移動速度を予め設定することにより、前記位置検出後の移動時間を一定させ、前記位置検出された時間を基点にして、シャッター55、成形型51、及び、プラグアシスト機構52の動作タイミングを設定し、効率よく丸皿容器を作製することができる。
【0049】
例えば、位置検出後の移動距離を「D2」(=(P1’−D1))、この位置検出後の移動速度を「V2」とすると、位置検出後に「D2/V2」の時間経過後に積層発泡シート2が停止することが予見できるため、移動中の積層発泡シート2に接触することなく、積層発泡シート2の停止後に、いち早く閉止するようにシャッター55を運転させることができるとともに前記プラグアシスト機構52も突出部52bを積層発泡シート2の停止後速やかに樹脂フィルム面に接触させることができる。
従って、タクトタイムの短縮化を図ることができ、丸皿容器1の製造効率をより一層向上させうる。
【0050】
なお、同様の設備を用いて同様の製品を製造する場合には、図案の設計値に対する実間隔のズレ量は製造ロットによって大きく変わることがないため、一旦、位置検出後の移動距離が求められれば、次回以降の製造に際しては、試し成形等を行うことなく、本生産を開始させることができる。
仮に、過去の実績に基づいて位置検出後の移動距離を設定してシート成形品の製造を開始してシート成形品に図案の位置ズレが生じてしまうような場合には、位置検出後の移動量を設定しなおしてもよく、位置検出後の移動量はそのままにしておいて図案の位置ズレ量に応じて位置検出手段の配置を位置検出マークの移動経路に沿って前後させて修正を図ってもよい。
【0051】
なお、本実施形態においては、前記光電管70a,70bの内、第一加熱ゾーン50aの上流側の第一光電管70a又は、下流側の第二光電管701bだけでも上記のような効果を得ることができる。
即ち、前記光電管は、少なくとも間欠送りによって位置検出マーク21が移動する経路の途中に配置されていれば上記のような製造方法を実施することができる。
しかし、第一加熱ゾーン50aの上流側の第一光電管70a(第一位置検出手段)のみで位置検出マークの位置検出を行ったのでは、加熱ゾーン内に、3ショット分の積層発泡シート2を残したままで丸皿容器1の製造を終了しなければならなくなる。
【0052】
また、成形ゾーン50dの下流側の第二光電管70b(第二位置検出手段)のみで位置検出マークの位置検出を行ったのでは、少なくとも加熱ゾーンと成形ゾーンとの4ショット分の積層発泡シート2を予め熱成形機5に供給した後でなければ本生産を開始することができないため第一光電管70aのみを用い場合と同様に材料のロスを生じることになる。
このことから、作製した積層発泡シート2を出来るだけ使い切り、効率よく丸皿容器1を製造するために成形ゾーン50dの上流側と下流側との両方に光電管を設けて、この光電管で位置検出マークの位置検出を行わせ、本生産の開始時には第一位置検出手段での位置検出マークの位置検出による図案の位置調整を実施し、本生産開始後に第二位置検出手段で図案の位置調整を実施させるように切り替えて丸皿容器1を製造させることが好ましい。
【0053】
また、タクトタイムを短縮するには、積層発泡シート2を成形ゾーンおいて停止させた後、成形完了までに要する時間を短縮させるだけではなく積層発泡シート2の移動時間をも短縮させることが好ましい。
【0054】
なお、本実施形態における積層発泡シートの各移動においては、前記位置検出マーク21を下流側に移動させて前記光電管70a,70bによって位置検出させ、該位置検出後の前記積層発泡シートの移動距離を位置検出マーク21の間隔未満にして次に位置検出させる位置検出マーク21を前記光電管70a,70bの上流側で停止させ、且つ、該位置検出後の前記移動量を予め設定した一定の移動距離とするとともに前記位置検出後の移動を予め設定した速度で実施させている。
そして、積層発泡シート2の移動開始後、位置検出マーク21の検出までの間は、過度に高速で移動させると精度良く位置検出を行うことが難しくなる。
従って、積層発泡シート2の移動時間の短縮を図るには、前記間欠送りにおける位置検出後の積層発泡シート2の移動速度を位置検出前の移動速度に比べて高速にさせることが好ましい。
例えば、位置検出マーク21の検出までの間の積層発泡シート2の移動速度は10m/sec〜20m/secとし、位置検出マーク21を検出した後の積層発泡シート2の移動速度は100m/sec〜120m/secとすることができる。
【0055】
しかも、高速で移動させることができる位置検出後の積層発泡シート2の移動を位置検出前の移動に比べて長距離移動となるように間欠送りを実施させることが好ましい。
即ち、積層発泡シートの停止時に、前記光電管70a,70bの上流側の出来るだけ近い位置に位置検出マーク21を停止させることが好ましい。
ただし、過度に位置検出マーク21と光電管70a,70bとを接近させておくと、例えば、積層発泡シートの長手方向における図案の間隔が設計値よりも短くなるような収縮が生じた際に、光電管70a,70bが位置検出マーク21を検出できなくなるおそれを有する。
このようなことから、積層発泡シート2の停止時における位置検出マークと光電管との距離(位置検出前の積層発泡シートの移動距離)は、0mmを超え、50mm以下であることが好ましい。
【0056】
なお、本実施形態においては、光電管を位置検出に用い、黒ベタ印刷によって設けた位置検出マークのエッジ検出を行っているが、位置検出マークを検出するための位置検出手段は光電管に限定されず、各種のセンサーを採用することができる。
例えば、位置検出マークが磁性材料によって描かれた樹脂フィルムを用い、前記位置検出手段として磁気センサーを採用することもできる。
また、位置検出マークを設ける方法としては、印刷等に限定されず、例えば、積層発泡シートの側縁に切欠を設けたり、側縁やや内側に貫通孔を設けたりして、この切欠や貫通孔を位置検出マークとして利用してもよい。
また、本実施形態においては、シート成形品の形成に利用可能な範囲をより広く確保させ得るようにクランプ54aによって把持される領域に位置検出マークを設けているが、例えば、クランプ54aによって把持される領域よりも内側に位置検出マークを設けてもよい。
この場合、位置検出マークがクランプによって隠れた状態になることがないので、例えば、第三加熱ゾーン50cに設置可能な耐熱性を有するセンサーを位置検出手段に用いて成形ゾーン50dの直前で位置検出させるようにしてもよい。
【0057】
また、本実施形態においては、製造条件の変化に伴って図案の長手方向における間隔が変化し易く、本発明の効果をより顕著に発揮させ得る点において前記図案とともに前記位置検出マーク21が設けられた樹脂フィルム4と樹脂発泡シート3とが積層された積層発泡シート20を丸皿容器の形成に用いる場合を例示しているが、本発明においては、用いる熱可塑性樹脂シートを上記のような積層発泡シートに限定するものではない。
即ち、樹脂発泡シートや樹脂フィルム単体に図案を設けた熱可塑性樹脂シートを用いて丸皿容器などのシート成形品を製造する場合も本発明の意図する範囲のものである。
また、本発明においては、製造するシート成形品を上記のような丸皿容器に限定するものでもない。
さらに、シート成形品の製造方法などに関して従来公知の技術事項を、本発明のシート成形品の製造方法に適宜採用しうることは説明するまでもなく当然の事柄である。
【符号の説明】
【0058】
1:丸皿容器(シート成形品)、2:積層発泡シート、3:熱可塑性樹脂フィルム、4:熱可塑性樹脂発泡シート、5:熱成形機、7:位置検出手段、21:位置検出マーク、22:図案、51:成形型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に所定間隔で図案が備えられている帯状の熱可塑性樹脂シートを前記長手方向への移動と停止とを交互に行う間欠送りによって熱成形機に供給し、前記停止における前記図案の停止位置が前記熱成形機の成形型に対する所定位置となるように位置調整しつつ前記間欠送りを実施して前記成形型で前記熱可塑性樹脂シートを熱成形することにより前記図案が所定位置に備えられたシート成形品を製造するシート成形品の製造方法であって、
前記図案の間隔に相当する間隔を設けて長手方向に沿って位置検出マークが備えられている熱可塑性樹脂シートを用い、
前記間欠送りにおける前記位置検出マークの移動経路に該位置検出マークを検出可能な位置検出手段を配して前記間欠送りを実施し、
該間欠送りにおける熱可塑性樹脂シートの各移動に際しては、
前記位置検出手段が配されている位置を通過する前記位置検出マークを前記位置検出手段によって検出させるとともに前記位置検出マークを検出した後の前記熱可塑性樹脂シートの移動量を一定させることによって図案の前記位置調整を実施し、
且つ、前記位置検出マークを検出した後の移動を予め定められた速度で実施させて該移動に要する時間を一定させることを特徴とするシート成形品の製造方法。
【請求項2】
前記位置検出マークを検出した後の熱可塑性樹脂シートの移動速度を検出前の移動速度に比べて高速で実施する請求項1記載のシート成形品の製造方法。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂シートが、前記図案とともに前記位置検出マークが設けられた熱可塑性樹脂フィルムと熱可塑性樹脂発泡シートとが積層された積層発泡シートであり、前記熱可塑性樹脂発泡シートと前記熱可塑性樹脂フィルムとを熱ラミネートによって積層一体化させて前記積層発泡シートを作製しつつ該積層発泡シートを前記熱成形機に供給して前記シート成形品を製造する請求項1又は2記載のシート成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−49235(P2013−49235A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189516(P2011−189516)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000158943)株式会社積水技研 (35)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】