説明

シート成形方法および模型製造方法

【課題】 逆テーパーが付いている物体の模型であっても、軽量の模型を簡単にかつ安価に作成する。
【解決手段】 基台2の上面に原型3を固着すると共に基台2の上面の原型3の固着領域の周辺に開口する空気吸引通路を形成した原型組付体を用意し、該原型組付体の上に原型3および上記空気吸引通路の開口を覆う状態で加熱されて軟化した熱可塑性樹脂シート10を位置させ、上記空気吸引通路を介して上記開口から空気を吸引しながらシート10を原型3の表面に密着させ、その後シート10が半冷却の状態で該シート10を原型3から離脱させて模型を作成する。離型時には原型3とシート10との間に空気を吹き込む(矢印C,D参照)および/またはシート10に冷気吹付手段13から冷気を吹き付けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂シートを原型に密着させて該原型の表面形状に沿った形状に成形するシート成形方法および模型製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種物体の模型(外観を実物と同様に作成したもの、サンプルあるいはサンプル模型とも称される)、例えばチョコレート等の菓子その他の各種食品の模型として、模型の元となる実物と同形状の内部空間を有する型を用い、その型内にシリコン、塩化ビニールその他の樹脂を注入して固化させることにより作成する方法が知られている。
【0003】
また、例えばスーパーマーケット等で販売されている豆腐や卵は薄いプラスチックシート製のケースに入れられているがそのプラスチックシート製のケース、あるいは縁日で販売される薄いプラスチックシート製のお面等を作成する技術として、原型の上に加熱して柔らかくした熱可塑性樹脂シートを位置させ、このシートと原型との間の空気を吸引して減圧しながらシートを原型の上にかぶせることによりシートを原型に密着させ、その後シートが冷えて固化した後にシートを原型から離脱させて作成する真空成形の技術が知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来の型に樹脂を注入して固化させる方法で作成した模型は、シリコン等の樹脂から成るものであり、内部にも樹脂が充填されているので、重くて取り扱いに不便である、例えばチョコレートの模型を複数個箱に入れた状態で商品陳列ケースの中に見本として陳列する場合、多数のチョコレートの模型が箱の中に入っていると箱全体が重くなり、陳列ケースから出し入れする際に不便を感じる、あるいは樹脂を多く使用するのでコストが嵩む、あるいは外観のリアルさを出しにくい等の問題がある。
【0005】
これに対し、上述のようなプラスチックシートの真空成形技術を利用してチョコレート等の物体の模型を作ることが考えられる。そのようなプラスチックシートの真空成形技術により模型を作ると、薄いプラスチックシートのみで模型が作れるので簡単にかつ安価に作成でき、また内部は空洞であるので極めて軽く、外観のリアルさも出しやすいという利点がある。
【0006】
しかしながら、このプラスチックシートの真空成形技術は、プラスチックシートが原型の表面に密着した後該シートが冷却して固化した後離型させるものであるので、原型に逆テーパーが存在する場合、あるいは原型の表面が複雑な形状をしていてシートが原型の表面に食い込んだ状態で固化してしまった場合等に、シートを原型から取り外すことが出来ない、あるいは無理やり原型から取り外そうとすると成形されたシートが変形してしまう等の問題があり、逆テーパーや複雑な表面形状を有することの多い食品等の模型作成には不向きであった。
【0007】
本発明の目的は、上記事情に鑑み、原型が逆テーパーや複雑な表面形状を有している場合であっても容易に離型できるシートの成形方法、および、原型が逆テーパーや複雑な表面形状を有している場合でも安価にかつ軽量の模型を作成することが可能な模型の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るシートの成形方法は、上記目的を達成するため、
基台の上面に原型を固着すると共に該基台の上面の上記原型の固着領域の周辺に開口する空気吸引通路を形成した原型組付体を用意し、該原型組付体の上に上記原型および上記空気吸引通路の開口を覆う状態で加熱されて軟化した熱可塑性樹脂シートを位置させ、上記空気吸引通路を介して上記開口から空気を吸引しながら上記熱可塑性樹脂シートを上記原型の表面に密着させ、次いで上記熱可塑性樹脂シートが半冷却の状態で該熱可塑性樹脂シートを上記原型から離脱させることを特徴とする。
【0009】
上記シートの成形方法においては、上記原型組付体として、上記原型の表面に開口する空気吸引通路も形成されているものを用いることができる。
【0010】
上記シートの成形方法においては、上記熱可塑性樹脂シートを上記原型から離脱させる際に、上記原型と上記熱可塑性樹脂シートの上記原型に密着している部分との間に気体を供給して離脱させる方法を用いることができる。
【0011】
上記シートの成形方法においては、上記熱可塑性樹脂シートを上記原型から離脱させる際に、上記熱可塑性樹脂シートの上記原型に密着している部分の表面に冷気を吹き付けて離脱させる方法を採用することが出来る。
【0012】
本発明に係る模型の製造方法においては、上記目的を達成するため、
基台の上面に原型を固着すると共に該基台の上面の上記原型の固着領域の周辺に開口する空気吸引通路を形成した原型組付体を用意し、該原型組付体の上に上記原型および上記空気吸引通路の開口を覆う状態で加熱されて軟化した熱可塑性樹脂シートを位置させ、上記空気吸引通路を介して上記開口から空気を吸引しながら上記熱可塑性樹脂シートを上記原型の表面に密着させ、次いで上記熱可塑性樹脂シートが半冷却の状態で該熱可塑性樹脂シートを上記原型から離脱させることを特徴とする。
【0013】
なお、上記「加熱されて軟化した熱可塑性樹脂シート」とは、加熱により軟化してその状態で上記空気吸引通路を介しての空気吸引により上記原型の表面に沿って変形可能な状態になった熱可塑性樹脂シートを意味する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のシート成形方法は、上記のように、加熱により軟化した熱可塑性樹脂シートを空気吸引により原型の表面に密着させた後、半冷却の状態即ち未だ軟化している状態で原型から離脱させるので、多少の逆テーパーや複雑な表面形状が存在しても離型可能であるとともに離型時の変形は一瞬でありシートは元の形状に復元しようとする復元力により離型後直ちに元の原型に沿った形状に復元して固化するので、原型に沿った正確な成形が可能である。
【0015】
また、逆テーパーの程度や表面形状の複雑さがやや大きくなると、離型時の変形が大きく、半冷却シート自体の復元力のみではなかなか元の形に復元しえなくなるが、その場合、離型時にシートと原型との間に気体例えば空気を吹き込んで空気圧により離型を助けるようにすると、空気圧が原型とシートの間に均等に作用して瞬時にスムーズに最小限の変形で離型できると共に局部的に大きな力が作用することも回避でき、また空気の温度によっては多少の冷却効果も伴って離型後の復元が助長されるので、そのような場合でも原型に沿った正確な成形が可能である。
【0016】
あるいは、同じく逆テーパーの程度や表面形状の複雑さがやや大きい場合、離型時に原型に密着しているシート部分に冷気を吹き付けて離型させると、離型時の変形の程度が抑制されると共に、離型時のシート冷却によりシートに収縮作用が生じて離型後の復元力が助長されるので、そのような場合でも原型に沿った正確な成形が可能である。
【0017】
また、逆テーパーの程度や表面形状の複雑さが更に大きくなると、離型時の変形がさらに大きくなり、上記の空気吹き込みや冷気の吹き付けではのみではなかなかもとの形に復元しえなくなるが、その場合でも、空気の吹き込みと冷気の吹き付けとを併用することにより、それらの作用があいまってそのようにかなり大きな逆テーパーや表面形状の複雑さを有する場合であっても、離型および良好な復元が可能となり、原型に沿った正確な成形が可能である。
【0018】
また、上述のような方法で模型を製造すれば、原型が逆テーパーや表面に複雑形状を有している場合でも安価にかつ軽量の模型を作成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る模型の製造方法ひいてはシートの成形方法の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、本発明に係る模型の製造方法に使用される原型組付体を示す断面図(図2のI−I線断面図)、図2は図1に示す原型組付体の平面図である。
【0021】
図示のように、この原型組付体1は、ベニヤ板等からなる基台2と、該基台2の上面に接着剤やネジあるいはその他の固定手段により固着された原型3とで構成されている。原型3は、ある物体の模型を作成しようとしている場合におけるその実物もしくは実物と同一形状(実物の形状のうち少なくとも模型に表したい形状部分が同一)を有する型であり、金属、樹脂、木等各種の材料で作成されたものを使用することができる。
【0022】
上記原型組付体1には多数の空気吸引通路4が形成されている。空気吸引通路4は、基台2の上面に開口する基台開口通路4aと、原型の表面に開口する原型開口通路4bとで構成されている。基台開口通路4aおよび原型開口通路4bはいずれも基台の下面にも開口し、そこから真空ポンプ等の空気吸引手段5に接続されている。
【0023】
基台開口通路4aの開口は、特に図2中に破線で示すように、基台2の上面の原型固着領域(原型3の下面が基台2の上面に接触して固着されている領域)の近傍に全周に亘って均等に設けられており、原型開口通路4bの開口も、原型3の表面の上面側に均等に設けられている。なお、図示の実施例では原型開口通路4bの開口は原型3の表面の上面側にのみ設けられているが、勿論、表面の側面側にも設けることができる。
【0024】
次に、上記原型組付体1を使用した模型の製造手順について説明する。まず、図3に示すように、熱可塑性樹脂シート10(以下単にシート10とも言う)を把持手段11で把持し、原型組付体1の上方に位置させる。
【0025】
シート10は、熱可塑性樹脂のシートであればどのようなものでも使用可能であるが、例えば、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PPO(ポリプロピレンオキシド)等を好適に使用できる。また、このシート10は、加熱により軟化して後述する空気吸引通路4からの空気吸引により原型3に密着可能な状態になることが必要であると共に、その後冷却して固化すると原型3に沿って変形した形状を維持可能な程度の剛性を有することが必要であり、従ってそのような条件を満たすようなシート厚みを有することが必要である。
【0026】
上述のようにシート10を原型組付体1の上方に位置させた状態で、上から遠赤外線ヒータ等の加熱手段12によりシート10を加熱して軟化させる。シート10が加熱されて柔らかくなったら、つまり柔らかくなって伸びやすくなり自重で図示のようにたるんできたら、このシート10を矢印Aの方向に下げて行き、図4に示すように、シート10のうち原型3の上面の近接位置まできたら、その時点から空気吸引手段5を作動させて各空気吸引通路4a,4bを介してそれらの開口(基台上面の開口および原型表面の開口)から空気の吸引を開始すると共に、シート10を下げ続け、把持手段11が図4中の破線で示す最下端位置まで下がったらシートの下降を停止させる。
【0027】
上記シート10の下降過程において、シート10が原型3の上面近傍まで下がった時点で空気吸引を開始し以後空気を吸引しながらシート10を下げていくので、シート10は空気吸引による真空圧で原型表面に引き寄せられて原型3の表面の頂上から順に下方に向けて密着していき、原型とシート10との間に空気の残留が発生することなくまたしわが発生することなく良好に密着が行なわれ、最終的に、シート10は図4において破線で示すように原型3の表面に完全密着する。
【0028】
次に、原型3に密着したシート10の原型3からの離脱の手順について説明する。上述のシート10の下降および原型3への密着はきわめて短時間に行なわれ、シート10の下降が終了し原型3に密着した状態では、シート10は未だ加熱されて軟化した状態を持続している。
【0029】
そこで、従来の真空成形ではシートが完全冷却されて硬化した後(引っ張っても伸びない元の状態、つまり非軟化状態に戻った後)に離型していたが、本発明では、完全冷却に至る前に、つまり半冷却状態(未だ軟化状態を維持している状態)で離型を行なう。
【0030】
この場合、原型における逆テーパーや表面形状の複雑さの程度が小さければ、半冷却の程度を適宜に選ぶことにより、離型時に少し変形しながら離型すると共に、シート10が有する復元力により直ちに復元して固化し、原型の表面に正確に沿った形状に成形することができる。
【0031】
この場合の離型は、例えば図5に示すように、シート10を把持手段11で把持したままの状態で、原型組付体1を矢印B方向へ向けて下方に移動させることにより行なうことができる。下方への移動による離型は1秒未満のきわめて短時間に瞬時に行なわれる。
【0032】
原型3の逆テーパーや表面形状の複雑さの程度がやや大きい場合には、離型時のシート10の変形がそれに伴って大きくなり、その変形を可能にするためには先ほどの場合よりもより軟化の程度が大きい半冷却状態(冷却があまり進んでいない状態)で離型する必要があり、そのように未だ軟化の程度がやや大きい状態である程度大きく変形させながら離型させると、シート10の復元力のみでは十分に復元しないまま、つまり変形したまま固化して成形不良が生じる恐れがある。
【0033】
従って、そのような場合には、半冷却状態での離型時に、シート10と原型3との間に空気を吹き込んで空気圧を作用させながら離型を行なう。この場合、空気圧を作用させるだけで離型しても良いし、空気圧を作用させると共に原型組付体1を下降させて離型を行なっても良い。
【0034】
空気の吹き込みは、図5に示すように、空気供給ポンプ等の適宜の空気供給手段により空気を吹き込むことができる。この空気の吹き込みは、例えばシート10の端部と基台2との間から吹き込む(矢印C参照)方法でも良いし、原型組付体1に形成されている空気吸引通路4を介して吹き込む(矢印D参照)方法でも良いし、あるいはそれらの両方を使用して吹き込んでも良い。空気吸引通路を介して吹き込む場合には、例えば空気吸引手段5として吸引と吐出を切り換え可能なポンプを用いている場合は該ポンプを切り換えることにより容易に実行できる。
【0035】
この空気の吹き込みによる離型も例えば1秒未満のきわめて短い時間に瞬時に行なわれ、勿論空気の吹き込みも例えば1秒未満のきわめて短い時間だけ瞬時に行なわれる。空気の吹き込みの時間が長いと、つまり空気圧を作用させる時間が長いと原型3に密着したシート10の変形量が大きくなり復元が困難になる。
【0036】
また、この空気の吹き込みの際の空気圧は1平方メートル当たり3kg〜10kgが適当である。吹き込む空気の温度は特定のものに限定されないが、例えば摂氏15度〜30度程度の空気を使用することができる。本実施形態では常温(室温)の空気を使用している。
【0037】
上記のように逆テーパーや表面形状の複雑さがある程度大きい場合、空気の吹き込みに代えて、半冷却状態での離型開始の直前に冷気を吹き付けて離型させることもできる。この場合は、例えば図6に示すように、シート10のうち原型に密着している部分の表面に冷気を吹き出す冷気吹付手段13により冷気を吹き付けて原型組付体1を矢印A方向に下げることにより離型させる。
【0038】
この場合の冷気としては、例えば常温以下、例えば摂氏27度〜17度程度の空気を使用することができる。また、空気の吹き付けは、離型開始、つまり本実施形態では原型組付体1の下降開始前に行なう必要がある。離型開始前に冷気の吹き付けが行なわれれば、冷気の吹き付け終了は、離型開始前であっても、開始と同時であっても、あるいは開始後であっても良い。ただし、離型開始前に吹き付けを終了する場合には、終了時から離型開始までの間はなるべく短いことが好ましく、例えば1秒以内であることが望ましい。また、冷気の吹き付け時間は、2〜3秒が適当である。なお、この場合も、離型は例えば1秒未満のきわめて短い時間に行なわれる。
【0039】
さらに逆テーパーや表面形状の複雑さの程度が大きい場合には、上述の、半冷却状態での離型に加えて、さらに上述の空気の吹き込みと冷気の吹き付けとを併用して離型を行なうことができる(図6参照)。そうすることにより、従来では実現できなかったかなりの程度の逆テーパーや複雑な表面形状を有している原型3の場合でも、十分な復元を確保でき原型3の表面形状に沿った型崩れの無い良好な成形が可能となる。
【0040】
上述のようにしてシート10の成形が終了したら、原型3の表面に沿って成形した部分を残してその周囲を切り落とし、必要に応じて着色あるいは模様を付与することにより模型を完成させる。
【0041】
例えばチョコレートの模型であれば、周囲を切り落として残した原形の表面に沿って成形された部分の表面に、塗料を塗布することによりチョコレート色に着色する。この場合、塗料の塗布はどのような方法で行っても良い。例えばスプレーガンを用いても良いし、筆で塗布しても良いし、更には塗料の中につけ込んで着色してもよい。また、着色は成形前に行っても良い。つまり、シート10の原型3に沿って成形される部分に予め塗料を塗布しておき、その後上述の空気吸引による密着成形を行っても良い。
【0042】
あるいは、成形前に、シート10の原型に沿って成形される部分に予め模様を印刷しておく、あるいは模様を印刷したシールを貼り付けておき、その後上述の空気吸引による密着成形を行うようにしても良い。模様の印刷は、例えば模型の元になる実物を写真に取り、その写真を例えばパソコンで適宜加工して、あるいは例えばパソコンで実物の絵を描いてその絵を適宜加工してシート10に印刷することができる。勿論この場合には、成形に伴うシートの伸びを考慮して実物の写真や絵を適宜変形加工して印刷する必要があり、どのように変形加工すればよいかは例えば試作を繰り返すことにより求めることができる。シールを貼り付ける際のシールの模様についても同様である。
【0043】
上述の実施形態は、作成した模型の底部が開口状態になるものであったが、例えば図7に示すように、実物の上側部分に対応する上側原型3aと下側部分に対応する下側原型3bの2つを用い、これらの原型3a,3bを基台2の上面に隣接させて固着し、上述と同様に原型3a,3bの表面および基台2の上面の原型固着領域の周辺に開口する空気吸引通路4を形成し、前述と同様の方法によりシート10を加熱して軟化させた上で空気吸引しながらシート10を降下させて原型3a,3bの表面に密着させ、完全冷却に至る前の半冷却の状態でシート10と原型組付体1とを引き離す、あるいはその際上述の空気の吹き込および/または冷気の吹き付けを併用して離型する。離型すると図8において実線で示す形状の成形済みシート10が得られるので、このシート10のうち上側原型3aに沿って成形された部分と下側原型3bに沿って成形された部分との接続部分で下側原形3aに沿って成形された部分を矢印Eのように折り返して両者を重ねあわせ、両者の周縁部分で接着することにより模型を完成する。この場合の模型の着色や模様の印刷についても前述の実施形態と同様に行なうことができる。
【0044】
上述の実施形態では実物と同様の形状を有するその実物の模型の製造方法であったが、本発明の方法は、成形後のものが必ずしも模型である必要は無く、例えば前述した豆腐や卵を入れるケース、あるいはお面等を成形するものであっても良い。即ち、本発明は、熱可塑性樹脂シートを所望の形状に成形するに際し、その所望の形状を有する原型を用いてシートを成形しその後該シートを原型から離脱させる方法として使用することもできる。
【0045】
なお、上記実施形態では、空気吸引通路は基台の上面あるいは基台の上面および原型の表面に開口するものであったが、原型の表面に開口する空気吸引通路のみを使用して空気吸引しながらシートを原型に密着させることも可能である。
【0046】
また、上記実施形態では原型は基台上に固着されているが、シート成形時に原型が動く恐れがない場合には、原型は基台上載置した状態で上述のシート成形を行なうことも可能である。
【0047】
また、図面では説明の便宜上シートの大きさに比して原型が小さく表されているが、実際には原型に比してシートはもっと大きく、原型の表面全体に十分密着可能な広さを有している。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の模型製造方法に使用する原型組付体の一例を示す断面図
【図2】図1に示す原型組付体の平面図
【図3】原型組付体の上に加熱して軟化した熱可塑性樹脂シートを位置させた状態を示す図
【図4】加熱して軟化した熱可塑性樹脂シートを原型組付体の上に下ろしながら空気吸引してシートを原型の表面に密着させる過程を示す図
【図5】シートを原型から離脱させる過程を説明する図
【図6】シートを原型から離脱させる過程を説明する図
【図7】上側原型と下側原型とを用いてシートを成形する過程を示す図
【図8】図7に示す原型組付体を用いて成形したシート部分から模型を作成する過程を示す図
【符号の説明】
【0049】
1 原型組付体
2 基台
3 原型
4 空気吸引通路
5 空気吸引手段
6 空気供給手段
10 熱可塑性樹脂シート
11 シート把持手段
12 加熱手段
13 冷気吹付手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台の上面に原型を固着すると共に該基台の上面の上記原型の固着領域の周辺に開口する空気吸引通路を形成した原型組付体を用意し、
該原型組付体の上に上記原型および上記空気吸引通路の開口を覆う状態で加熱されて軟化した熱可塑性樹脂シートを位置させ、
上記空気吸引通路を介して上記開口から空気を吸引しながら上記熱可塑性樹脂シートを上記原型の表面に密着させ、
次いで上記熱可塑性樹脂シートが半冷却の状態で該熱可塑性樹脂シートを上記原型から離脱させることを特徴とするシート成形方法。
【請求項2】
上記原型組付体が、上記原型の表面に開口する空気吸引通路も形成されていることを特徴とする請求項1記載のシート成形方法。
【請求項3】
上記熱可塑性樹脂シートを上記原型から離脱させる際に、上記原型と上記熱可塑性樹脂シートの上記原型に密着している部分との間に気体を供給して離脱させることを特徴とする請求項1または2記載のシート成形方法。
【請求項4】
上記熱可塑性樹脂シートを上記原型から離脱させる際に、上記熱可塑性樹脂シートの上記原型に密着している部分の表面に冷気を吹き付けて離脱させることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載のシート成形方法。
【請求項5】
基台の上面に原型を固着すると共に該基台の上面の上記原型の固着領域の周辺に開口する空気吸引通路を形成した原型組付体を用意し、
該原型組付体の上に上記原型および上記空気吸引通路の開口を覆う状態で加熱されて軟化した熱可塑性樹脂シートを位置させ、
上記空気吸引通路を介して上記開口から空気を吸引しながら上記熱可塑性樹脂シートを上記原型の表面に密着させ、
次いで上記熱可塑性樹脂シートが半冷却の状態で該熱可塑性樹脂シートを上記原型から離脱させることを特徴とする模型製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−88378(P2006−88378A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−273693(P2004−273693)
【出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【出願人】(503426695)アイアール株式会社 (1)
【Fターム(参考)】