説明

シート押出成形機およびシート押出製造方法

【課題】シート製造条件の吐出が押出機の仕様範囲外である場合でも安定して押出機を運転しシート製造が可能なシート押出成形機およびシート押出製造方法を提供する。
【解決手段】シート製造条件の吐出が押出機の仕様範囲外である場合に、押出機の安定に必要なポリマー流量確保し、そのポリマー流量をシート製造に必要な分13と排出分14とに分け、吐出することで安定して押出機を運転しシート製造を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート押出成形機およびシート押出製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリオレフィン、アクリル系樹脂等を用いて製造されるシートは、一般的に図7に示すような工程により製造されている。
【0003】
図7は、シート押出成形機の一例を示す概略図である。
【0004】
図7において、シート押出成形機30は、ポリマーの流れ方向における上流側から順に、押出機1、ギアポンプ2、フィルター3、口金4、冷却ロール5、延伸装置6、ワインダー7が配置されている。また、延伸装置6とワインダー7との間には、厚み計8が設置され、厚み制御器9が、厚み計8と口金4とに電気的に接続されている。
【0005】
上記装置において、原料となるポリマーは押出機1に供給され、溶融された後、ギアポンプ2へ押し出される。ギアポンプ2は吐出量(送出量)を一定にする機能を有しており、一定量吐出されたポリマーは、フィルター3を通じて異物等が除去され、次いで口金4へ供給される。口金4には所定の間隙を有するスリットが設けられており、このスリットからポリマーがシート状に押し出され、回転する冷却ロール5上にて冷却・固化された後、固化シート10を得る。この固化シート10は、引き続き延伸装置6により延伸され、ワインダー7によりシートとして巻き取られる。その際、厚み計8により、シートの幅方向(紙面に直交する方向)における厚みが測定され、得られた厚みデータをもとに厚み制御器9により口金4のスリット間隙が調整され、一定範囲内の厚みを有する(厚みのバラツキが小さい)製品シートが得られる。
【0006】
一般的に、シート押出成形機は所定の範囲の品種や厚みを製造できるように、例えば、ポリエチレン、厚み50μの未延伸シート、ポリプロピレン、厚み15μの2軸延伸シートなど、使用するポリマーの特性に応じて設計される。しかしながらシート製造事業を長年継続して行く中で、新製品開発や事業の切り替わりなど機会は頻繁にあり、その際新規に設備投資して新たに専用機を設ける場合もあるが、費用削減や工期短縮のために、既存設備を新規のポリマーや厚みの品種に転用しようとすることは、ごく一般的に実施していることである。
【0007】
本発明者らの知見によれば、この既設設備を新規品種に現在のままの仕様で使うことができれば良いが、多くの場合は仕様範囲が合わないために機械の改造が必要なケースがしばしばあった。その中でも特に押出機はポリマーの吐出量の範囲が合致しないことがあり、必要に応じてスクリューを再設計、再製作して対応することがあった。
【0008】
しかしながら、スクリューの改造は時間が数ヶ月単位でかかり、費用ともに負担が大きいため、変更要件において新規品種に対し吐出量が多い場合には、無改造で条件的に回転数、すなわち吐出量を下げるだけで転用するケースがしばしばあった。一見、このような運用でも問題なく適用できるように見えるが、実際にはスクリューの回転が不安定になり、吐出変動が発生し、シートの吐出方向や巾方向の厚みムラになることがあった。また、厚み調整をしようとしても、吐出変動により現在の厚みが定まらずに、調整もできないという不具合もあった。さらには、スクリュー回転の変動に伴い、ポリマーの溶融が不安定になり未溶融物の流出や、粒子含有や複成分系のポリマーでは混練性不良を引き起こすことがあり、製膜が安定しないことが問題となっていた。
【0009】
一般的に単軸の押出機はポリマー吐出量とスクリュー回転数は比例関係にあり、安定運転のためにスクリュー回転を上げようとすると必然的にポリマー吐出量まで増えてしまう弊害があった。先行技術文献1にはフィルターハウジングの底部においてポリマーを排出する構造が記載されている。元々この発明はハウジング内における長期滞留部のポリマーを排出し、製品シートへのポリマー滞留劣化物の混入を低減するのが目的であるが、同様の構造を取ることで、押出機安定に必要なポリマー流量をシート製造に必要な分と排出分とに分けることができる。しかしながら、フィルターハウジングの底部でポリマーを排出することによりハウジング内部のポリマーの流量分布が不安定になり、フィルター濾過寿命の低減につながることや、フィルター内部の圧力変動などにより、かえって吐出変動の発生に影響したりすることがあり、また、滞留劣化物がシート側への流出につながることがあった。さらには特許文献1の[0017]段落にポリマーのパージ率(排出率)が0.1〜10%が好ましく、より好ましくは0.2〜5%と記載があるが、押出機の選定によっては50%以上排出せざるを得ないこともあり、その場合フィルターに排出口があると、先述のとおり安定しないことが多かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−284832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、シート製造条件の吐出が押出機の仕様範囲外である場合に、押出機の安定に必要なポリマー流量確保し、そのポリマー流量をシート製造に必要な分と排出分とに分け、安定して押出機を運転しシート製造が可能なシート押出成形機およびシート押出製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、熱可塑性ポリマーを加熱、溶融させて吐出する押出機と、溶融したポリマーをシート状に拡幅する口金と、前記押出機および前記口金をつなぎ、前記溶融ポリマーを輸送させるためのポリマー輸送管とを備えたシート押出成形機において、前記ポリマー輸送管に、前記押出機から輸送される前記溶融ポリマーを前記口金の方向に導く流路と前記溶融ポリマーを系外に排出する方向に導く流路との二経路を備えたことを特徴とする、シート押出成形機を提供する。
【0013】
また、熱可塑性ポリマーを加熱、溶融させて吐出する押出機と、溶融したポリマーをシート状に拡幅する口金と、前記押出機および前記口金をつなぎ、前記溶融ポリマーを輸送させるためのポリマー輸送管とを備えたシート押出成形機において、前記ポリマー輸送管に、管壁を流れる前記溶融ポリマーと管中心を流れる前記溶融ポリマーを分流する分流器を備え、前記分流器で分流した管壁を流れる前記溶融ポリマーを系外に排出する流路を備えたことを特徴とする、シート押出成形機も好ましい形態である。
【0014】
さらに、熱可塑性ポリマーを加熱、溶融させて吐出する押出機を少なくとも2つ以上備え、2つの押出機から流れるポリマーを合流させるフィードブロックと、溶融したポリマーをシート状に拡幅する口金と、前記押出機、前記フィードブロックおよび前記口金をつなぎ、前記溶融ポリマーを輸送させるためのポリマー輸送管とを備えたシート押出成形機において、前記ポリマー輸送管に、前記押出機から輸送される前記溶融ポリマーを前記口金の方向に導く流路と前記溶融ポリマーを系外に排出する方向に導く流路の分岐路を備え、前記分岐路から排出した前記溶融ポリマーを少なくとも一つの押出機に再度戻す流路を備えたことを特徴とする、シート押出成形機も提供する。
【0015】
また、前述のいずれかに記載のポリマー流路で構成したシート押出成形機において、前記押出機の吐出口に流路管径を狭める絞り管または圧力を調整可能なバルブを備えたことを特徴とする、シート押出成形機も好ましく、
さらに前述のいずれかに記載のシート押出成形機を用い、シートを製造することを特徴とするシート押出製造方法も提供する。
【0016】
本発明において、系外とは、押出機から口金までつながるシート押出成形機の外であり、系外に排出とはポリマーを口金以外の場所から吐出させることをいう。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、以下に示すとおり、押出機からのポリマーをシート製造に必要な分と排出分とに分けることで、シート製造条件の吐出が押出機単体の仕様範囲外である場合でも安定して押出機を運転しシート製造ができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態を示す、ポリマーを系外に排出する流路を備えたシート押出成形機の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施形態を示す、分流器と分流器に排出流路を備えたシート押出成形機の概略構成図である。
【図3】本発明の一実施形態を示す、排出したポリマーを再度押出機に戻す流路を備えたシート押出成形機の概略構成図である。
【図4】本発明の一実施形態を示す、排出したポリマーを再度押出機に戻す流路を備えたシート押出成形機の概略構成図である。
【図5】本発明の一実施形態を示す、排出流路と絞り管を備えたシート押出成形機の概略構成図である。
【図6】本発明の一実施形態を示す、排出流路と圧力調整バルブを備えたシート押出成形機の概略構成図である。
【図7】一般的なシート押出成形機の概略構成図である。
【図8】一般的なフィードブロックの内部流路を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の最良の実施形態の例を、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態を示すものであって、ポリマーを系外に排出する流路を設けたシート押出成形機の概略図である。ここで11aは押出機、15は口金であり、その間をポリマー輸送管がつないでいる。ポリマー輸送管において12aはポリマー流れを2方向に分ける分岐路であり、ポリマーを口金方向に導く流路13と系外に排出流路の14を設けている。口金15以降の冷却ロール5や延伸装置6、ワインダー7などは図7の構成と同様である。
【0021】
図1の構成で押出機11aを運転すると、押出機11aから吐出されたポリマーは口金15方向と系外に分けられることになる。こうすることで、押出機11aの吐出範囲よりも低い吐出量でシートを製造したい場合でも、見かけの吐出を増やすことができるので押出機11aを安定して運転できるようになり、好ましい形態となる。
【0022】
分離されるポリマーの量は口金方向に導く流路13と系外に排出する流路14の圧損バランスによって決まるので、必要な分離量に応じてポリマー輸送管の径や長さを決めるのが良いが、長さなどは、一般的には設備を設置する建物の大きさなどで制限されることが多く、それによって口金方向への圧損が大きくなるため、系外に排出する流路14側の圧力を調整することが好ましい。その際ポリマー輸送管径や長さを変えても良いし、図示はしていないが、ポリマーを系外に排出する流路14の出口近傍に圧力を調整するバルブを設けても良い。
【0023】
分岐路12aは内部で滞留部が発生しないよう流路を鋭角に分岐せずに滑らかにするのが良い。また分岐路12aの位置は押出機11aと口金15の間のどの位置においても良いが、冷却ロール5や押出機11aと位置的に干渉しない場所で、作業しやすい場所に設置するのが好ましい。図1には押出機11aと口金15の間にフィルターの図示はしていないが、フィルターを設置する場合も、その位置関係はいかようにも設定できる。
【0024】
図2は、本発明の一実施形態を示すものであって、分流器によって管壁のポリマーを系外に排出する流路を設けたシート押出成形機の概略図である。ここで11aは押出機、15は口金であり、その間をポリマー輸送管がつないでいる。ポリマー輸送管において16は管の断面方向において、管壁を流れるポリマーと管中心を流れるポリマーを分流する分流器であり、管中央のポリマーを口金方向に導く流路13と、管壁のポリマーを系外に排出する流路の14を設けている。口金15以降の冷却ロール5や延伸装置6、ワインダー7などは図7の構成と同様である。
【0025】
図2の構成も図1同様、押出機11aの吐出範囲よりも低い吐出量でシートを製造したい場合でも、見かけの吐出を増やすことができるので押出機11aを安定して運転できるようになり、好ましい形態となる。
【0026】
さらに図2の場合、管壁を流れてきたポリマーを排出する構成であるが、一般的に管壁はポリマーの流速が遅く、系内の滞留時間が長くなるために、ポリマーの種類と吐出量、管の径、長さの条件によっては酸化劣化、熱劣化することがあり、この劣化したポリマーを系外に排出できるので、シートの表面欠点などの品質上も良くなり、吐出安定化とあわせて、より好ましい形態となる。
【0027】
さらに、従来、この分流器16で分流された管壁のポリマーは、口金15の巾方向端部に相当する位置に流れるようにしており、管壁の劣化したポリマーが製品部に入らないように構成していたが、分離する量が多い場合、シート端部の劣化ポリマー混入部の巾が広くなるため製品として採用できる巾が狭くなることがあったが、図2の構成とすることで、相対的に劣化したポリマーは系外に排出し、相対的にきれいなポリマーを口金に流すことがきできるようになり、従来の分流器単体を使用する場合よりも好ましい形態となる。
【0028】
図2の構成も図1同様に、分離されるポリマーの量は口金方向に導く流路13と系外に排出する流路14の圧損バランスによって決まるので、必要な分離量に応じてポリマー輸送管の径や長さを決めるのが良いが、長さなどは、一般的には設備を設置する建物の大きさなどで制限されることが多く、それによって口金方向への圧損が大きくなるため、系外に排出する流路14側の圧力を調整することが好ましい。その際ポリマー輸送管径や長さを変えても良いし、図示はしていないが、ポリマーを系外に排出する流路14の出口近傍に圧力を調整するバルブを設けても良い。
【0029】
分流器16も内部で滞留部が発生しないようにするのが好ましい。また分流器16の位置は押出機11aと口金15の間のどの位置においても良いが、冷却ロール5や押出機11aと位置的に干渉しない場所で、作業しやすい場所に設置し、なおかつ、口金15の直前に設置するのが好ましい。口金15直前に設置することで、ポリマー輸送管壁近傍の劣化したポリマーがシートに混入する割合を低減できるために、好ましい形態となる。
【0030】
図1、2の構成共にシート押出成形機の系外にポリマーが排出されるが、排出されたポリマーは廃棄処分しても良いし、回収して再度原料投入しても良い。回収する場合は、ブロック塊状で回収したのちクラッシャーにかけてフレーク状のまま利用しても良いし、造粒機などでペレット状にして利用しても良い。また、排出する流路14の出口にポリマーをストランド状に吐出するダイと冷却設備、切断設備を設置し、直接ペレット化して、再度原料投入しても良い。コストと手間の試算から運用方法を決めることができるが、廃棄するよりも再度原料投入することはポリマー価格が高い場合は有効な手段となるので良い形態となる。
【0031】
図3、4は、本発明の一実施形態を示すものであって、系外に排出したポリマーを再度押出機に戻す流路を設けたシート押出成形機の概略図である。ここで11aは第1の押出機、11bは第2の押出機であり、口金15とフィードブロック18を介して接続されている。図8に一般的なフィードブロック18の内部流路の構造を示す。図8では第1の押出機11aから流れてきたポリマーが中層流路22に流れ、第2の押出機11bから流れてきたポリマーが表層流路23に流れ、合流部24で二つの流れが合流することによりフィードブロック18ではポリマーが厚み方向に積層され、口金内部のマニホールド25を経て、スリット26から厚み方向にポリマーが積層されたシートとして押し出される。口金15以降の冷却ロール5や延伸装置6、ワインダー7などは図7の構成と同様である。
【0032】
押出機11a、11bとフィードブロック18の間をポリマー輸送管がつないでいるが、ポリマー輸送管において12aはポリマー流れを2方向に分ける分岐路であり、ポリマーを口金方向に導く流路13と系外に排出流路の14を設けている。14を経由したポリマーはギアポンプ17で押し出され、ポリマーを再度系内に戻す流路21を流れ、第1の押出機11aに戻ってくる。
【0033】
図4の構成は第2の押出機11bからも同様に分岐し、合流路12bを流れて、再度第1の押出機11aに戻ってくる例である。
【0034】
図3、4の構成でシート製造を行うことで、一旦系外に排出したポリマーを溶融状態で再利用でき、かつ押出機の吐出範囲よりも低い吐出量でシートを製造したい場合でも、見かけの吐出を増やすことができるので押出機を安定して運転できるようになるため、好ましい形態となる。
【0035】
分離されるポリマーの量は口金方向に導く流路13と系外に排出する流路14の先に設けられたギアポンプ17の能力によって決まるので、必要な分離量に応じてポリマー輸送管の径や長さ、ギアポンプの能力を決めるのが良い。ギアポンプ17は押出機11aに再度ポリマーを戻すだけの昇圧能力を備えているのが良い。
【0036】
押出機に戻す際、ポリマーを再投入する位置は好ましくはポリマーが溶融している状態の部分、すなわち先端近傍の計量部が良いが、さらに好ましくは計量部手前の可塑化部に戻すのが良い、この位置に戻すことで計量を乱すことがなくなるため、良い形態となる。
【0037】
また、図3、4では第1の押出機11aに戻した例示をしたが、11bの両方に戻しても良い。シートの品質が表面欠点などの基準が高い場合は、図3、4の形態は一部のポリマーが常に循環することになるので、ポリマーの劣化が進行する場合があるが、その際循環する側のポリマーを積層シートの中層に流れるようにすることで、シートの表面欠点や特性劣化などを低減できるため良い形態となる。滑り性や粗さなどシート表面の特性が重要なシートの場合、同種のポリマーを積層構成にし、中層に回収原料を流し、表層に新しい原料を流すことがしばしばあり、これは原料コストを抑えるために有効な手段となる。このような場合にも排出し循環させるポリマーを中層に流すことで同様の効果が得られることになり、好ましい形態となる。
【0038】
また定期的に運転を止め、循環系のポリマーを清掃することも良い。使用するポリマーの種類にもよるが、好ましくは1週間に一度、さらに好ましくは3日に一度洗浄するのが良い。
【0039】
また、清掃頻度を少なくするために、ポリマーの劣化速度を遅くするため押出機の原料投入口の酸素濃度を低減させることが好ましく、窒素ガスなどを吹き込むことも良い形態である。
【0040】
図5、6は、本発明の一実施形態を示すものであって、さらに押出機の安定化を図るために押出機先端の圧力調整手段を設けたシート押出成形機の概略図である。ここで11aは押出機、15は口金であり、その間をポリマー輸送管がつないでいる。ポリマー輸送管において12aはポリマー流れを2方向に分ける分岐路であり、ポリマーを口金方向に導く流路13と系外に排出流路の14を設けている。押出機11aと分岐路12aの間に図5の場合は絞り管19、図6の場合は圧力調整バルブ20を設置した構成である。口金15以降の冷却ロール5や延伸装置6、ワインダー7などは図7の構成と同様である。
【0041】
図5、6の構成では押出機11aを運転すると、押出機11aから吐出されたポリマーは口金15方向と系外に分けられることになる。こうすることで、押出機11aの吐出範囲よりも低い吐出量でシートを製造したい場合でも、見かけの吐出を増やすことができるので押出機11aを安定して運転できるようになり、好ましい形態となる。さらに、吐出量や分離量、分岐路12aの位置などによっては、押出機先端の圧力が変動し、吐出変動に影響することもあるが、絞り管19や圧力調整バルブ20の効果により押出機先端の圧力を高めることができ、さらに押出機を安定して運転できるようになり、好ましい形態となる。
【0042】
分離されるポリマーの量は口金方向に導く流路13と系外に排出する流路14の圧損バランスによって決まるので、必要な分離量に応じてポリマー輸送管の径や長さを決めるのが良いが、長さなどは、一般的には設備を設置する建物の大きさなどで制限されることが多く、それによって口金方向への圧損が大きくなるため、系外に排出する流路14側の圧力を調整することが好ましい。その際ポリマー輸送管径や長さを変えても良いし、図示はしていないが、ポリマーを系外に排出する流路14の出口近傍に圧力を調整するバルブを設けても良い。
【0043】
運転条件が狭い範囲で決まっている場合は、絞り管19が滞留部など少ないため運用に好ましいが、多品種に対応するには圧力調整バルブ20を設けていることが様々な条件に適用しやすく、好ましい形態となる。
【0044】
これまで説明したいずれの構成の場合も、ポリマーを分離する割合は使用する押出機と製造したいシート仕様、生産量に依存するが、大きい場合は50%以上、小さい場合は15%程度が良い。さらに好ましくは分離量を30%程度にしておくのが運用上好ましい。
【0045】
以上の好ましい形態は、新規品種に対して現行押出機の吐出が低い場合を事例に示したが、吐出が大きい場合でもポリマーを系外に分離することが良い形態となる場合がある。例えば、シートの製造に必要なポリマー吐出量が200kg/hrであり、押出機の最大吐出範囲が150kg/hrの場合、50kg/hr分のポリマーが不足することになるが、押出機のスクリュー回転数を能力範囲以上にあげて対応しようとすれば、押出機の耐久性などによっては可能な場合がある。しかしながら、一般的に高吐出にすることで、ポリマーに強いせん断がかかるため、ポリマーの分子の状態やせん断発熱などにより温度の状態が変わることがあり、その際、強いせん断がかかった部分や温度が高くなりすぎた部分を排出するためにも、一部や管壁のポリマーを系外に流すことは好ましく作用する。
【0046】
本発明に適用可能なポリマーとしては、例えば、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリ乳酸、アクリル系ポリマー、など特に限定されず、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でもよい。
【0047】
ポリマーフィルムの構成は、単層構成でもよいし、2層以上の積層構成を有していてもよい。また、延伸工程を採用する場合は、縦延伸と横延伸を順次組み合わせた逐次二軸延伸機を用いて行なってもよいし、縦延伸と横延伸を同時に行なう同時二軸延伸機を用いて行なってもよい。もちろん、延伸工程を経ない未延伸フィルムとしても構わない。
【0048】
上記した製法により得られるポリマーシートは、例えば、パッケージやラミネートなどの包装用途、デジタルビデオカメラなどの磁気記録媒体用途、ディスプレイなどの光学用途、フレキシブル基板などの半導体用途など各種産業、用途に好適に用いることができる。
【実施例】
【0049】
[実施例1]
図1に示す構成を有するシート押出成形機を用い、口金以降の冷却ロール、延伸装置、ワインダー等の工程は図7に示す構成でシートの製造を行った。ポリマーはポリエチレンテレフタレートを用い、押出温度は280℃とした。シートの製造に必要な吐出量は500kg/hrであったが、押出機の吐出範囲は700kg/hr〜2500kg/hrの仕様範囲であったため、分岐路12aから口金15方向の総圧損が3.6MPa、分岐路12aから排出流路方向への総圧損が1.4MPaになるように配管径と長さを決定し、押出機の運転は700kg/hrの吐出量が出るようにし、系外へ200kg/hr排出するようにした。
【0050】
口金は巾1800mm、スリット間隙2.8mmに設定したTダイを用い、径が1000mmの冷却ロールを用い、20m/分の速度にてシートの製造を1週間実施した。その結果、押出機が使用範囲内に入ったため安定した運転状態が得られ、吐出変動による厚みムラや未溶融物の流出などなく、良好な品質のフィルムが得られた。
【0051】
系外に排出したポリマーはブロック塊状にして回収した後、クラッシャーにかけ造粒機でペレット化し、後日別の製造機会に適用した。
[実施例2]
図2に示す構成を有するシート押出成形機を用い、口金以降の冷却ロール、延伸装置、ワインダー等の工程は図7に示す構成でシートの製造を行った。ポリマーは低密度ポリエチレンを用い、押出温度は220℃とした。シートの製造に必要な吐出量は100kg/hrであったが、押出機の吐出範囲は150kg/hr〜500kg/hrの仕様範囲であったため、分流器16から口金15方向の総圧損が6.7MPa、分流器16から排出流路方向への総圧損が3.3MPaになるように配管径と長さを決定し、押出機の運転は150kg/hrの吐出量が出るようにし、系外へ50kg/hr排出するようにした。分流器は径25mmの配管径に対し表層3mmの範囲を分流する設計とした。
【0052】
口金は巾900mm、スリット間隙1.5mmに設定したTダイを用い、径が600mmの冷却ロールを用い、12m/分の速度にてシートの製造を5日間実施した。その結果、押出機が使用範囲内に入ったため安定した運転状態が得られ、吐出変動による厚みムラや未溶融物の流出などなく、良好な品質のフィルムが得られた。
【0053】
系外に排出したポリマーはブロック状の塊として回収し、廃棄した。
[実施例3]
図3に示す構成を有するシート押出成形機を用い、口金以降の冷却ロール、延伸装置、ワインダー等の工程は図7に示す構成でシートの製造を行った。ポリマーはポリプロピレンを用い、押出温度は230℃とした。シートの製造に必要な吐出量は260kg/hrであったが、押出機の吐出範囲は300kg/hr〜800kg/hrの仕様範囲であったため、押出機の吐出量は300kg/hrとし、分岐路12aからギアポンプ17を経て押出機11aに戻す量を40kg/hrとした。押出機11aの原料投入口では窒素ガスを流し、ギアポンプ17からのポリマーを押出機の可塑化部に戻るようにした。フィードブロック18は11aからのポリマーを中層に、11bからのポリマーを表裏の層に配置する3層構造とし、口金は巾1200mm、スリット間隙1.8mmに設定したTダイを用い、径が1000mmの冷却ロールを用い、15m/分の速度にてシートの製造を3日間実施した。その結果、押出機が使用範囲内に入ったため安定した運転状態が得られ、吐出変動による厚みムラや未溶融物の流出などなく、良好な品質のフィルムが得られた。
[実施例4]
図6に示す構成を有するシート押出成形機を用い、口金以降の冷却ロール、延伸装置、ワインダー等の工程は図7に示す構成でシートの製造を行った。ポリマーはポリプロピレンを用い、押出温度は230℃とした。シートの製造に必要な吐出量は260kg/hrであったが、押出機の吐出範囲は300kg/hr〜800kg/hrの仕様範囲であったため、分岐路12aから口金15方向の総圧損が10.4MPa、分岐路12aから排出流路方向への総圧損が1.6MPaになるように配管径と長さを決定し、押出機の運転は300kg/hrの吐出量が出るようにし、系外へ40kg/hr排出するようにした。押出機11aの原料投入口では窒素ガスを流した。口金は巾1000mm、スリット間隙1.8mmに設定したTダイを用い、径が1000mmの冷却ロールを用い、15m/分の速度にてシートの製造を3日間実施した。その結果、押出機が使用範囲内に入ったため安定した運転状態が得られ、吐出変動による厚みムラや未溶融物の流出などなく、良好な品質のフィルムが得られた。
[比較例1]
図1に示す分岐路12a、排出方向の流路14を設けていない構成のシート押出成形機を用い、口金以降の工程は図7に示す構成でシートの製造を行った。実施例1に記載の条件と同様の条件で押し出した結果、押出機の吐出範囲下限700kg/hrに対し、500kg/hrで運転せざるを得ず、1〜2秒から数分単位の吐出変動が発生し、厚みムラが大きく、安定してシート製造をすることができなかった。またスクリューがスリップするような異音が発生し、シート上に未溶融物が見られた。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、熱可塑性の溶融ポリマーを用いたシート押出成形機装置に応用できるが、その応用範囲が、これらに限られるものではない。
【符号の説明】
【0055】
1 押出機
2 ギアポンプ
3 フィルター
4 口金
5 冷却ロール
6 延伸装置
7 ワインダー
8 厚み計
9 厚み制御器
10 固化シート
11a第1の押出機
11b第2の押出機
12a分岐路
12b合流路
13 口金方向に導く流路
14 系外に排出する流路
15 口金
16 分流器
17 ギアポンプ
18 フィードブロック
19 絞り管
20 圧力調整バルブ
21 ポリマーを再度系内に戻す流路
22 フィードブロックの中層流路
23 フィードブロックの表層流路
24 フィードブロックの合流部
25 口金マニホールド
26 口金スリット
30 シート押出成形機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリマーを加熱、溶融させて吐出する押出機と、溶融したポリマーをシート状に拡幅する口金と、前記押出機および前記口金をつなぎ、前記溶融ポリマーを輸送させるためのポリマー輸送管とを備えたシート押出成形機において、前記ポリマー輸送管に、前記押出機から輸送される前記溶融ポリマーを前記口金の方向に導く流路と前記溶融ポリマーを系外に排出する方向に導く流路との二経路を備えたことを特徴とする、シート押出成形機。
【請求項2】
熱可塑性ポリマーを加熱、溶融させて吐出する押出機と、溶融したポリマーをシート状に拡幅する口金と、前記押出機および前記口金をつなぎ、前記溶融ポリマーを輸送させるためのポリマー輸送管とを備えたシート押出成形機において、前記ポリマー輸送管に、管壁を流れる前記溶融ポリマーと管中心を流れる前記溶融ポリマーを分流する分流器を備え、前記分流器で分流した管壁を流れる前記溶融ポリマーを系外に排出する流路を備えたことを特徴とする、シート押出成形機。
【請求項3】
熱可塑性ポリマーを加熱、溶融させて吐出する押出機を少なくとも2つ以上備え、2つの押出機から流れるポリマーを合流させるフィードブロックと、溶融したポリマーをシート状に拡幅する口金と、前記押出機、前記フィードブロックおよび前記口金をつなぎ、前記溶融ポリマーを輸送させるためのポリマー輸送管とを備えたシート押出成形機において、前記ポリマー輸送管に、前記押出機から輸送される前記溶融ポリマーを前記口金の方向に導く流路と前記溶融ポリマーを系外に排出する方向に導く流路の分岐路を備え、前記分岐路から排出した前記溶融ポリマーを少なくとも一つの押出機に再度戻す流路を備えたことを特徴とする、シート押出成形機。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリマー流路で構成したシート押出成形機において、前記押出機の吐出口に流路管径を狭める絞り管または圧力を調整可能なバルブを備えたことを特徴とする、シート押出成形機。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のシート押出成形機を用い、シートを製造することを特徴とするシート押出製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−183691(P2012−183691A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47404(P2011−47404)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】