説明

シート搬送装置及び画像形成装置

【課題】シートの巻き付きを確実に、かつ第1シート搬送部材に傷を付けることなく回避することのできるシート搬送装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】中間転写ベルト5と、中間転写ベルト5よりもシート搬送方向下流側に設けられ、第1シート搬送部材よりも短い停止時間で停止する搬送ベルト98との間に巻き付き防止部材94を配置する。そして、中間転写ベルト5と搬送ベルト98との間の停止時間の差によってシートに生じるループにより押圧されて巻き付き防止部材94が中間転写ベルト側に移動することにより、中間転写ベルト5にシートが巻き付くのを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート搬送装置及び画像形成装置に関し、特にシート搬送部材におけるシートの巻き付きを防止するための構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置においては、シートを搬送するシート搬送装置を備えている。そして、画像形成装置においては、シート搬送装置により、例えばシートを像担持体上に形成されたトナー像を転写する転写部に搬送した後、定着部に搬送することにより、トナー像をシート上に定着させるようにしている。
【0003】
ところで、従来のシート搬送装置において、シートのジャム等の搬送不良が発生した場合には、搬送ベルトや搬送ローラ等のシート搬送部材を停止させた後、ジャムシートの処理を行う。しかし、シート搬送部材を停止させる際、シート搬送部材は固有の慣性力を有していることから、またシーケンスの順序等の関係から、シート搬送部材が停止するまでの時間(以下、停止時間という)にはバラツキが発生している。
【0004】
ここで、例えば上流側の第1シート搬送部材と下流側の第2シート搬送部材の間にシートが挟持されている状態のときに、他の部分でシートのジャムが発生する場合があり、この場合には、第1シート搬送部材及び第2シート搬送部材を停止させる。このとき、第1シート搬送部材の停止時間が第2シート搬送部材の停止時間に比べて長い場合には、第1シート搬送部材によりシートが第2シート搬送部材に押し込まれるようになる。
【0005】
そして、このようなシートの押し込みが発生すると、シートが大きく撓んでループするようになり、このループが成長すると、やがてシートのループ部分が第1シート搬送部材に巻き付くようになる。さらに、ループ部分が巻き付いた後も、第1シート搬送部材が停止しない場合には、ループ部分が巻き付いた状態でシートが搬送されてしまい、この結果、シートが第1シート搬送部材に近接、或いは当接した支持部材等の部材の隙間に巻き込まれるようになる。なお、この停止時間のバラツキによる問題は近年の画像形成装置の高速化に伴うシートの搬送速度の増大により特に顕著になっている。
【0006】
そこで、従来は分離爪を設け、第1及び第2シート搬送部材の停止時間の差によって生じるシートのループによりシートが第1シート搬送部材に巻き付くのを防ぐようにしている(特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2001−209251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、このような従来のシート搬送装置及び画像形成装置においては、分離爪を第1シート搬送部材に接触させることにより、シートが第1シート搬送部材に巻き付くのを防ぐようにしている。しかし、このように分離爪を第1シート搬送部材に接触させた場合、通常作動時にも分離爪が第1シート搬送部材に接触するようになることから、第1シート搬送部材の表面が接触摩耗等により傷付いてしまう。
【0009】
なお、分離爪を第1シート搬送部材に接触させず、第1シート搬送部材に近接して設置した場合には、第1シート搬送部材が傷付くことはないが、分離爪の配置、シートの剛度及び停止時間差によっては十分に巻き付き防止機能を果たすことができない場合がある。また、シートの停止時間の差を低減させるためにブレーキ機構を設けるようにした場合は、コストが上昇すると共に、装置が大型化する。
【0010】
そこで、本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、シートの巻き付きを確実に、かつ第1シート搬送部材に傷を付けることなく回避することのできるシート搬送装置及び画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、シートを搬送するシート搬送装置において、シートを搬送する第1シート搬送部材と、前記第1シート搬送部材のシート搬送方向下流側に配置され、前記第1シート搬送部材よりも短い停止時間で停止する第2シート搬送部材と、前記第1シート搬送部材と前記第2シート搬送部材の間に配置され、前記第1シート搬送部材及び前記第2シート搬送部材が停止した際、前記第1シート搬送部材にシートが巻き付くのを防止する巻き付き防止部材と、を備え、前記巻き付き防止部材は、前記第1シート搬送部材及び前記第2シート搬送部材が停止した際、前記第1シート搬送部材と前記第2シート搬送部材との間の停止時間の差によってシートに生じるループにより押圧されて第1シート搬送部材側に移動するように移動可能に設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のように、巻き付き防止部材を停止時間の差によってシートに生じるループにより第1シート搬送部材側に移動させることにより、シートの巻き付きを確実に、かつ第1シート搬送部材に傷を付けることなく回避することができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の最良な実施の形態について、図面を参照して詳しく説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係るシート搬送装置を備えた画像形成装置の一例であるカラー複写機の概略構成を示す図である。
【0015】
図1において、200はカラー複写機、201はカラー複写機本体(以下、装置本体という)である。この装置本体201には画像形成部202、シートSを給送する給紙部203、給紙部203から給送されたシートSを搬送するシート搬送装置204が設けられている。また、装置本体201の上部にはリーダ部205が設けられている。
【0016】
ここで、リーダ部205は、原稿台ガラス31と、原稿台ガラス31に対して開閉可能な原稿圧着板32と、原稿Oの画像面を照射する光源等を備え、原稿を走査する移動光学系33と、光電変換素子(固体撮像素子)であるCCD34を備えている。なお、原稿圧着板32を原稿自動送り装置(ADF、RDF)にして、原稿台ガラス31上に原稿Oを自動的に送る構成にすることもできる。
【0017】
また、画像形成部202には、不図示のモータにより矢印A方向に回転する像担持体としての電子写真感光体ドラム(以下、感光ドラムという)1、帯電器2、レーザスキャナ3が配設されている。また、画像形成部202には、感光ドラム上の残トナーをクリーニングするクリーナ装置7、現像ユニット4等が配設されている。
【0018】
感光ドラム1は矢印A方向に所定の速度で回転駆動され、その表面が帯電手段としての帯電器2により所定の極性・電位に一様に帯電される。また、レーザスキャナ3は、レーザ出力部、ポリゴンミラー、結像レンズ、折り返しミラー等を有し、不図示の画像処理部から入力される画像情報信号に対応して変調されたレーザ光(光信号)を出力し、回転する感光ドラム1の帯電処理面を走査露光する。
【0019】
そして、このようにレーザスキャナ3によって走査露光することにより、感光ドラム1の表面に静電潜像が形成される。なお、画像情報信号は、既述したリーダ部205から読み込まれた画像情報以外にも、パソコンなどの外部機器より電送される画像情報より合成、形成されたものでももちろん構わない。
【0020】
現像ユニット4は、矢印Bで示す反時計方向に回転するロータリー41と、ロータリー41に装着されたフルカラー現像のためのブラック用現像器4a及び不図示のイエロー用、マゼンタ用、シアン用現像器の4色の現像器を有している。
【0021】
また、この現像ユニット4は、ロータリー41が所定の制御タイミングにて所定の角度、矢印方向に回転することにより、各色現像器が感光ドラム1と対向する現像位置に切り換えられて配置される。そして、この現像位置において、感光ドラム1と、現像器側の現像スリーブとの距離(SD距離)が或る決められた範囲内に保たれると共に、各色現像器により、1色毎、静電潜像を現像することにより感光ドラム上にトナー像が順次形成される。なお、この現像ユニット4は、不図示のトナーカートリッジ部より現像剤としてのトナーを必要時随時補給されるべく、補給パイプ400を備えている。
【0022】
8は4色のトナー像を重ねて転写作像した後、シートSへ多色画像を転写する無端状の中間転写ベルト5、感光ドラム1上に現像された各色のトナー像を中間転写ベルト5に転写するための1次転写ローラ6等を備えた中間転写ベルトユニットである。
【0023】
ここで、中間転写ベルト5は可撓性を有する誘電材製のエンドレスベルトであり、複数のローラ5a〜5g間に懸回張設されている。なお、この中間転写ベルト5は、例えばローラ5aを駆動ローラとして、感光ドラム1の回転速度とほぼ同じ速度で矢印に示す時計方向に回転駆動される。
【0024】
また、この中間転写ベルト5の外面はローラ5b,5c間において感光ドラム1に接触しており、この接触部が1次転写ニップ部T1である。そして、この1次転写ニップ部T1において、中間転写ベルト5の感光ドラム1側と反対側に1次転写ローラ6が、中間転写ベルト5の内面に接して配設されている。
【0025】
この1次転写ローラ6には、所定の制御タイミングにて、トナーと逆極性の1次転写電圧が印加されるようになっており、この1次転写電圧の印加により、感光ドラム1上に現像された各色のトナー像が中間転写ベルト5に転写される。なお、この中間転写ベルト5上の残留トナーは、後述する中間転写ベルト5を挟んで設けられ、中間転写ベルト5を清掃する清掃部であるベルトクリーニングユニットにより掻き落とされるようになっている。
【0026】
また、15は中間転写ベルト5からシートSへトナー画像を転写する2次転写外ローラであり、この2次転写外ローラ15は中間転写ベルト5に対して不図示の加圧制御機構により接離可能に設けられている。
【0027】
この2次転写外ローラ15は、シートSへトナー画像を転写する際には、中間転写ベルト5が懸回張設されているローラ5a〜5gの内の1つのローラ5gに対して中間転写ベルト5を挟んで圧接する第1の位置に移動する。そして、このように第1位置に移動することにより、中間転写ベルト5の外面との間に2次転写ニップ部T2が形成される。また、2次転写外ローラ15は、シートSへのトナー画像の転写を行わない待機時には、中間転写ベルト5の外面から離間した第2位置に移動する。
【0028】
なお、2次転写ニップ部T2の下流側には、定着ローラ101及び定着ローラ101に圧接する加圧ベルト102を備え、シート上の未定着画像を定着する定着器18が設けられている。
【0029】
給紙部203には、シートSを収容して装置本体201に着脱自在なカセット81が設けられている。このカセット81に収納されたシートSはピックアップローラ11及び分離ローラ対11aにより送り出されるようになっている。また、この給紙部203は、マルチ手差しトレイ85を備えており、このマルチ手差しトレイ85に収納されたシートはピックアップローラ11等により送り出されるようになっている。
【0030】
また、シート搬送装置204は、レジストローラ14と、後述するようにトナー像が転写されたシートを定着器18に搬送する搬送ベルトユニット17を備えている。ここで、レジストローラ14は、シートSの姿勢位置精度を高め、中間転写ベルト上のトナー像に合わせてシートSをタイミングよく送り出すためのものであり、2次転写ニップ部T2の上流側に設けられている。
【0031】
次に、このような構成のカラー複写機200の画像形成動作について説明する。
【0032】
まず原稿Oが、画像面が下方を向くようにして原稿台ガラス31に積載され、その上から原稿圧着板32により原稿Oが原稿台ガラス31に押え付けられると、移動光学系33が原稿を照らしながら移動し、原稿の画像面を走査する。そして、この原稿走査光がCCD34に結像されてRGB(レッド・グリーン・ブルー)の三原色で色分解読取りされる。
【0033】
この後、読取られたRGBの各信号は不図示の画像処理部に入力され、画像処理部において種々の画像処理が施された後、レーザスキャナ3に画像情報信号として出力される。そして、レーザスキャナ3は、この画像情報信号を光信号に変調し、この変調した光信号を1色目の光信号としてレンズ及び各反射ミラーを経て感光ドラム上に照射する。なお、このとき感光ドラム1は、予め帯電器2により所定の極性・電位に一様に帯電されており、光信号が照射されることによって静電潜像が形成される。
【0034】
次に、現像ユニット4内に配された複数の現像器のうち選択された1色目の色に対応した現像器により静電潜像が現像され、1色目のトナー像が形成される。この後、感光ドラム上に形成されたトナー像は1次転写ニップ部T1において1次転写ローラ6により中間転写ベルト5上に転写される。
【0035】
ここで、カラーモードの場合には、トナー像が転写された中間転写ベルト5は次のトナー像が形成転写されるよう更に回転する。なお、この間、現像ユニット4は次の指定カラーの現像器を感光ドラム1に対向するよう矢印B方向に90°回転し、次の静電潜像を現像する準備をする。
【0036】
そして、このようにして1色目の1次転写が終わった後、以降、1色目同様、2色目、3色目、4色目と潜像、現像、1次転写を繰り返すことにより中間転写ベルト5上に各色のトナー画像が順次重ねられていく。なお、中間転写ベルト5に転写されないで感光ドラム1の面に残った1次転写残トナーはクリーナ装置7により感光ドラム表面から除去される。そして、このようにクリーナ装置7により表面が清掃された感光ドラム1は繰り返して画像形成に供される。
【0037】
一方、このような画像形成動作に並行して所定の制御タイミングで、給紙カセット81、或いはマルチ手差しトレイ85のうち、予め選択された、例えば給紙カセット81の給紙ローラ11が駆動される。これにより、その給紙カセット81に収容されたシートSが1枚分離されて送り出されてシートパス13から、レジストローラ14へ送られる。
【0038】
このときレジストローラ14は停止しており、停止した状態のレジストローラ14に当接することにより、シートSの斜行が補正される。この後、レジストローラ14により、タイミングが合わされて中間転写ベルト5と2次転写外ローラ15とにより構成される2次転写ニップ部T2に送られる。なお、このとき、2次転写外ローラ15は所定の制御タイミングで第1位置に移動している。
【0039】
次に、シートSは、この2次転写ニップ部T2を挟持搬送される。そして、この間、2次転写外ローラ15に所定の2次転写電圧が印加されることにより中間転写ベルト5上の複数色からなるトナー像がシートS上に静電的に一括転写され、シートS上には未定着のトナー像が形成(転写)される。
【0040】
なお、シートSに転写されずに中間転写ベルト5の面に残った2次転写残トナーは、後述する図2に示すベルトクリーニングユニット16によりベルト面から除去される。このベルトクリーニングユニット16により清掃された中間転写ベルト5は繰り返して画像形成に供される。
【0041】
次に、このように2次転写ニップ部T2に送られ、2次転写外ローラ15によりトナー像が転写されたシートSは、中間転写ベルト5の面から分離して搬送ベルトユニット17によって定着器18へ搬送される。そして、この定着器18において加熱及び加圧されることにより、未定着トナー像がシートS上に融着されて定着画像となる。この後、トナー像が定着されたシートSはシートパス19を通って内排紙ローラ100及び外排紙ローラ110により排紙トレイ20上に排出される。
【0042】
なお、本カラー複写機200は両面画像形成機能を有しており、シートSの両面に画像を形成する場合は、定着器18による第1面の定着処理が終了した後、シートSを不図示の切換部材の切り換えにより両面パス120の方向へ搬送する。この後、シートSは、両面パス120を経てシートパス13へと搬送され、レジストローラ14を経て2次転写ニップ部T2に送られ、2次転写ニップ部T2を通過する際、トナー像がシートSの第2面に転写される。そして、このようにトナー像が転写されたシートSは、定着器18においてトナー像が熱定着された後、排紙トレイ20上に排出される。
【0043】
ところで、図2は2次転写ニップ部T2近傍の構成を示した図である。図2に示すように、2次転写ニップ部T2の下流には2次転写後ガイド99が配置され、さらに2次転写後ガイド99の下流には搬送ベルトユニット17が配置される。ここで、搬送ベルトユニット17の表面には、無端形状の搬送ベルト98が巻きつけられており、また搬送ベルト98の内側には吸引ファン97がシートSのパスの方向を向いて配置されている。
【0044】
図2において、16はベルトクリーニングユニットであり、このベルトクリーニングユニット16は中間転写ベルト5を挟んで、ローラ5aに対向した位置に配置されている。このベルトクリーニングユニット16は、常時は中間転写ベルト5の回転の妨げにならないように中間転写ベルト5の外面から離間した状態に保持されている。また、2次転写ニップ部T2にて中間転写ベルト5からシートSに対するトナー像の2次転写がなされるときに、所定の制御タイミングにて中間転写ベルト5の外面に接触した状態に切り換えられる。
【0045】
ところで、このベルトクリーニングユニット16には、シートSの巻き付きを防止するための巻き付き防止部93が設けられている。つまり、巻き付き防止部93は、シートSを搬送する第1シート搬送部材である中間転写ベルト5と、中間転写ベルト5のシート搬送方向下流側に配置された第2シート搬送部材である搬送ベルト98との間に設けられている。
【0046】
そして、この巻き付き防止部93は、中間転写ベルト5と一定の間隔を維持された巻き付き防止部材94と、巻き付き防止部材94を支持する固定部材95とを備えている。なお、本実施の形態において、この巻き付き防止部材94は、例えばPETフィルムで形成された可撓性を有する厚さ130μmのシート状の部材であり、巻き付き防止部材94の先端は中間転写ベルト5から3mm(所定距離)離間した位置に配置されている。また、固定部材95は板金で製作されている。
【0047】
ここで、図3に示すように、この固定部材95の端部95aに、巻き付き防止部材94が両面テープ96により貼り付けられている。そして、このように両面テープ96によって巻き付き防止部材94を固定部材95に貼り付けるようにすることにより、簡単な構成で巻き付き防止部材94を固定することができ、低コスト化が可能となる。
【0048】
なお、この固定部材95の端部95aには曲げ加工が施されている。この端部95aの曲げ角度は固定部材95に巻き付き防止部材94を両面テープ96で貼り付けた際に、巻き付き防止部材94の先端が中間転写ベルト5から3mmオフセットしたところに配置されるように設定されている。また、固定部材95は、ユニットのメンテナンス時には中間転写ベルトユニット8及びベルトクリーニングユニット16の仮置き台として使用される。
【0049】
ここで、固定部材95に貼り付けられた巻き付き防止部材94は、シートSに発生したループにより圧力が加わると、中間転写ベルト5とのクリアランスを縮める方向である中間転写ベルト側(第1シート搬送部材側)に撓む構成(移動可能な構成)となっている。
【0050】
次に、このように構成された巻き付き防止部材94を備えた巻き付き防止部93の巻き付き防止動作について説明する。
【0051】
通常、既述したようにシートSは2次転写ニップ部T2を挟持搬送されてトナー像が転写され、この後、搬送ベルトユニット17内に設置された吸引ファン97に裏面を吸着されながら搬送ベルト98にガイドされ、定着器18へ搬送されていく。
【0052】
ところで、このようにシートSが2次転写ニップ部T2〜搬送ベルトユニット17内に存在する時に装置本体内でシートのジャムが発生すると、不図示のコントローラから搬送ベルト98及び中間転写ベルト5を停止する信号が出力される。
【0053】
ここで、搬送ベルト98及び中間転写ベルト5の駆動信号をOFFにするように命令が送られると、図4に示すように、搬送ベルト98及び中間転写ベルト(ITB)5は停止しようとし、速度が徐々に下がっていく。
【0054】
なお、本実施の形態においては、搬送ベルト98の方が慣性力が小さいので、搬送ベルト98は中間転写ベルト5に先んじて停止し、続いて慣性力の大きい中間転写ベルト5が遅れて停止する。このため、搬送ベルト98と中間転写ベルト5とを停止させる際、停止までの間に搬送ベルト98及び中間転写ベルト5には速度差が発生すると共に、搬送ベルト98と中間転写ベルト5との間に停止時間の差が発生する。
【0055】
一方、搬送ベルト98と中間転写ベルト5とはシートのシート搬送方向長さよりも短い間隔で設けて配置されると共に、シートSの下流側は吸引ファン97によって搬送ベルト98に吸着されている。
【0056】
このため、図5の(a)に示すように上流側の中間転写ベルト5によるシートSの押し込みが発生し、この結果、シートSにループが発生する。この後、さらに搬送ベルト98及び中間転写ベルト5の速度差及び停止時間の差によってループが成長し、やがてシートのループ部分Srが巻き付き防止部材94に下方から当接する。なお、このようにループ部分Srが当接するまでは、巻き付き防止部材94の先端と中間転写ベルト5とのクリアランスbは設置時の状態である3mmとなっている。
【0057】
ここで、この後、ループがさらに成長すると、ループ部分Srが図5の(b)に示すように巻き付き防止部材94を押し上げ、巻き付き防止部材94を中間転写ベルト5との間隔を狭める方向に押圧するようになる。そして、このようにループ部分Srにより押圧されると、巻き付き防止部材94は、可撓性を有していることから、中間転写ベルト5とのクリアランスbを狭める方向に撓む。
【0058】
これにより、クリアランスb’は図5の(a)に示す設置時のクリアランスbよりも小さくなるか、或いは0となり、シートSが中間転写ベルト5によって巻き込まれるパスを細くする或いは塞ぐことができる。そして、このようにクリアランスb’が小さくなるか、或いは0となると、図5の(c)に示すようにシートSは座屈するので、シートSが中間転写ベルト5に巻き付いた状態でベルトクリーニングユニット16に進入するのを防ぐことができる。
【0059】
なお、この巻き付き防止部材94は、通常作動時には中間転写ベルト5とは非接触であり、かつ巻き付き防止部材94は可撓性を有すると共に柔らかい材質であることから中間転写ベルト5に傷をつけることは無い。また、巻き付き防止部材94は柔らかい材質なので組立の際に巻き付き防止部材94と中間転写ベルト5が接触した場合にも、中間転写ベルト5に傷を付けてしまう危険も小さくなる。
【0060】
このように、本実施の形態においては、搬送ベルト98と中間転写ベルト5との停止時間の差によってシートに生じるループにより巻き付き防止部材94を中間転写ベルト5側に移動させることができる。これにより、シートSの中間転写ベルト5への巻き付きを確実に、かつ中間転写ベルト5に傷を付けることなく回避することができる。
【0061】
なお、これまでの説明においては、第1シート搬送部材として中間転写ベルト5を例に挙げたが、中間転写ドラムと2次転写外ローラとにより2次転写部が構成される場合には、中間転写ドラムが第1シート搬送部材となる。また、第1シート搬送部材を図1に示す定着ローラ101及び加圧ベルト120とし、第2シート搬送部材を内排紙ローラ100とした場合も、既述した巻き付き防止部材94を用いることにより、定着ローラ101等へのシートの巻き付きを防止できる。
【0062】
また、これまでの説明では電子写真方式の画像形成装置(複写機)を例に説明したが、インクジェット方式、オフセット印刷方式の画像形成装置にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施の形態に係るシート搬送装置を備えた画像形成装置の一例であるカラー複写機の概略構成を示す図。
【図2】上記カラー複写機の2次転写ニップ部近傍の構成を示した図。
【図3】上記2次転写ニップ部近傍に設けられた巻き付き防止部の構成を説明する図。
【図4】上記カラー複写機のジャム時のモータ駆動信号と搬送ベルト及び中間転写ベルト5の速度の時間推移を示す図。
【図5】上記巻き付き防止部の巻き付き防止動作について説明する図。
【符号の説明】
【0064】
5 中間転写ベルト
8 中間転写ベルトユニット
15 2次転写外ローラ
16 ベルトクリーニングユニット
17 搬送ベルトユニット
93 巻き付き防止部
94 巻き付き防止部材
95 固定部材
96 両面テープ
98 搬送ベルト
101 定着ローラ
120 加圧ベルト
200 カラー複写機
202 画像形成部
S シート
T2 2次転写ニップ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを搬送するシート搬送装置において、
シートを搬送する第1シート搬送部材と、
前記第1シート搬送部材のシート搬送方向下流側に配置され、前記第1シート搬送部材よりも短い停止時間で停止する第2シート搬送部材と、
前記第1シート搬送部材と前記第2シート搬送部材の間に配置され、前記第1シート搬送部材及び前記第2シート搬送部材が停止した際、前記第1シート搬送部材にシートが巻き付くのを防止する巻き付き防止部材と、を備え、
前記巻き付き防止部材は、前記第1シート搬送部材及び前記第2シート搬送部材が停止した際、前記第1シート搬送部材と前記第2シート搬送部材との間の停止時間の差によってシートに生じるループにより押圧されて第1シート搬送部材側に移動するように移動可能に設けられていることを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
前記巻き付き防止部材は、前記第1シート搬送部材と所定の間隔を設けて固定部材に取り付けられていることを特徴とする請求項1にシート搬送装置。
【請求項3】
前記巻き付き防止部材を、シートに生じるループによる押圧によって前記第1シート搬送部材側に撓むように可撓性を有するシート状の部材により形成することを特徴とする請求項1または2記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記第1シート搬送部材と当接して前記第1シート搬送部材を清掃する清掃部を備え、前記巻き付き防止手段により、シートのループ部分が前記清掃部と前記第1シート搬送部材との間に進入するのを防ぐことにより前記第1シート搬送部材にシートが巻き付くのを防止するようにしたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のシート搬送装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−286560(P2009−286560A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−139982(P2008−139982)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】