説明

シート材のロック機構

【課題】シート材の端部を確実に係止するとともに、組み立て及び分解作業時の工数も少ないシート材のロック機構を提供する。
【解決手段】段ボールスペーサ1を組み立てる際、折り線L9及びL10に沿って支持部4の第2支持面4bを直角に折り曲げる。そして、折り線L2に沿って支持部4を底面部3側に回動させ、第2支持面4bを下端部からスリット7a、7bに挿入していく。このとき、第2支持面4bのフラップ17を折り線L11に沿って指で内側(矢印Y方向)に略180°折り曲げ、その状態で係合穴9a、9bに挿入する。そして、フラップ17が係合穴9a、9bを通過した後にフラップ17を押さえていた指を離すと、フラップ17は復元力により略水平付近まで回動して係合穴9a、9bの開口縁に係合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段ボールシート等のシート材を着脱可能に連結するためのロック機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、安価で高い強度を有し、リサイクルも可能で加工性にも優れた段ボールシート製の包装容器や梱包用スペーサ等の梱包材料が広く用いられている。このような段ボールシート製の包装材料は、段ボールシートを所定の形状に折り曲げて形成されるが、折り曲げられた包装材料の形状を維持するためには端部を固定しておく必要がある。
【0003】
しかし、粘着テープ等の固定部材を用いると固定作業が煩雑となる上、固定部材の分だけコストアップに繋がるという問題点があった。そこで、段ボールの端部を簡単にロックする方法が提案されており、例えば特許文献1には、開閉可能な蓋部の一端に差し込み片を設けるとともに、本体側に設けられた係止片を差し込み片に形成されたスリットに差し込むことにより蓋部をロックするようにした包装箱が開示されている。
【特許文献1】特開平7−112737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の方法では、段ボールの端部を固定する際に差し込み片及び係止片の2つを順次差し込む必要があり、包装箱を分解する際にも2段階の取り外しが必要となるため、組み立て作業及び分解作業時の工数が多くなり作業性が悪くなっていた。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑み、シート材の端部を確実に係止するとともに、組み立て及び分解作業時の工数も少ないシート材のロック機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、第1シート材と、該第1シート材に形成されたスリットに挿入される第2シート材とを着脱可能に連結するシート材のロック機構であって、前記第2シート材には折り曲げ可能なフラップが設けられ、前記第1シート材には前記スリットの長手方向に沿って前記フラップが係合する係合穴が一体形成されており、前記フラップに押圧力を加えて折り曲げた状態で前記係合穴を通過させた後、前記押圧力を解除することにより、前記フラップが復元力により回動して前記係合穴の開口縁に係合することを特徴としている。
【0007】
また本発明は、上記構成のシート材のロック機構において、前記フラップは、前記第2シート材の挿入側上端の角部において挿入方向を頂点とする略三角形状に形成されており、前記係合穴は、前記スリットの上端を頂点とする略くさび形に形成されることを特徴としている。
【0008】
また本発明は、上記構成のシート材のロック機構において、前記第1シート材を含むシート成形品には、前記フラップと前記係合穴との係合を解除するための開口部が設けられることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1の構成によれば、第2シート材の一部に設けられた折り曲げ可能なフラップが復元力により回動して係合穴の開口縁に係合するため、フラップを押圧して係合穴を通過させるだけで第1シート材と第2シート材とを簡単に連結し、さらに連結を解除することができる。
【0010】
また、本発明の第2の構成によれば、上記第1の構成のシート材のロック機構において、フラップを第2シート材の挿入側上端の角部において挿入方向を頂点とする略三角形状に形成し、係合穴をスリットの上端を頂点とする略くさび形に形成することにより、フラップと係合穴との係合及び解除操作がより簡単なものとなる。
【0011】
また、本発明の第3の構成によれば、上記第1又は第2の構成のシート材のロック機構において、シート成形品にフラップと係合穴との係合を解除するための開口部を設けることにより、シート成形品の分解や廃棄時における作業性が一層向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明のロック機構を備えた段ボールスペーサの展開図である。なお、図1中、抜き部分をハッチングで表示し、切り込みを実線、折り線(谷折り線)を破線で表示している。段ボールスペーサ1は、包装容器と製品(被梱包物)との隙間に配置することにより製品の容器内での移動を規制して衝撃や振動による破損や傷付きから保護するものである。本発明の段ボールスペーサ1は、図1に示すような一枚のシート材を所定の形状に打ち抜いたものを組み立てて形成されており、大まかには平行な折り線L1、L2を介して連続する側面部2、底面部3、及び支持部4から構成されている。
【0013】
側面部2は、折り線L1及びL2に平行な折り線L3〜L5を介して連なる第1側面2a、第2側面2b、第3側面2c、及び第4側面2dに分割されており、第1側面2aにはコ字状の切り込みS1が形成され、第4側面2dの先端には差し込み片5aが形成されている。また、折り線L5から第2側面2bの中ほどに亘って折り線L4及びL5に垂直な2本のスリット7a、7bが形成されており、各スリット7a、7bの第2側面2b側の端部には略くさび形の係合穴9a、9bが対称に形成されている。
【0014】
各スリット7a、7bの折り線L5側の端部は切り込みS2で連結され、スリット7a、7b及び切り込みS2で囲まれた部分が内曲げ部11となっている。内曲げ部11は折り線L3〜L5と平行な2本の折り線L6、L7で独立して折り曲げ可能となっており、先端には差し込み片5bが形成されている。折り線L6の中央には略U字状の切り込みS3が形成されている。
【0015】
底面部3の略中央部には略コ字状の切り込みS4及び折り線L8で囲まれた略台形状の差し込み片5cが形成されている。側面部2及び底面部3の所定の位置には開口部13a、13b、13c、及び13dが形成されている。第1側面2aと底面部3とに跨って形成された開口部13aは、被梱包物である製品の凸部との干渉を回避するための逃げ穴であり、第1側面2aと第2側面2bに跨って形成された開口部13bは、組み立て後の段ボールスペーサ1のロック機構(後述)を解除する際に指を挿入する穴であり、段ボールスペーサ1の把持部を兼ねている。
【0016】
第2側面2bに形成された三角形の開口部13cは段ボールスペーサ1の配置方向を確認するための方向指示マークである。内曲げ部11の中央部に形成された開口部13dは底面部3の差し込み片5cが挿入される差し込み穴であり、差し込み片5cの形状に合わせて形成されている。第4側面2dにはU字状の切り欠き15aが形成されており、側面部2が折り線L1及びL3〜L5に沿って角筒状に折り曲げられたとき開口部13aを封鎖しない構成とされている。
【0017】
支持部4は、折り線L2を介して底面部3に連続する第1支持面4aと、連結面4aの左右に折り線L9、L10を介して連続する第2支持面4bから成り、第1支持面4aには半円状の切り欠き15bが形成されている。第2支持面4bの外側角部には折り線L11及び切り込みS5で囲まれた略三角形のフラップ17が形成されている。
【0018】
次に、本発明の段ボールスペーサ1の組み立て手順について説明する。先ず、図1の状態から折り線L1及びL3〜L5に沿って側面部2を角筒状に折り曲げ、第4側面2dを底面部3上に重ね合わせる。このとき、折り線L1の折り曲げによって切り込みS1の内側が切り起こされて差し込み穴19(図3参照)が形成される。そして、第4側面2dの差し込み片5aを差し込み穴19に差し込んで固定する。
【0019】
次いで、折り線L6及びL7に沿って内曲げ部11を折り曲げた後、差し込み片5bを差し込み穴19に差し込んで固定する。さらに、折り線L8に沿って底面部3の差し込み片5cを起こし、内曲げ部11に形成された開口部13dに差し込んで固定する。これにより、図3に示すように、側面部2の中央部(内曲げ部11)が断面矩形状に折り曲げられ、両端部が断面逆台形状に折り曲げられる。
【0020】
次に、図4及び図5に示すように、折り線L9及びL10に沿って支持部4の第2支持面4bを直角に折り曲げる。そして、折り線L2に沿って支持部4を底面部3側(図5の矢印X方向)に回動させ、図6に示すように、第2支持面4bを下端部からスリット7a、7bに挿入していく。
【0021】
このとき、図7(a)のように、第2支持面4bのフラップ17を折り線L11(図5参照)に沿って指で内側(図6の矢印Y方向)に略180°折り曲げ、その状態で係合穴9a、9bに挿入する。そして、フラップ17が係合穴9a、9bを通過した後にフラップ17を押さえていた指を離すと、図7(b)のように、フラップ17は復元力により略水平付近まで回動して係合穴9a、9bの開口縁に係合する。
【0022】
つまり、係合穴9a、9bとフラップ17は支持部4のロック機構を構成しており、このロック機構により、第1支持面4a及び第2支持面4bがコ字状に折り曲げられた状態で側面部2に確実に係止されるため、支持部4は側面部2の形状を維持することができる。なお、図6及び図7では係合穴9b側の構成についてのみ示したが、係合穴9a側についても全く同様に説明される。
【0023】
係合穴9a、9b及びフラップ17の形状や配置については、第2支持面4bと側面部2とを確実に係合できるものであれば特に制限はないが、組み立て作業性の観点からは、フラップ17を指で折り曲げ易い第2支持面4の挿入側上端の角部に設けることが好ましい。また、フラップ17を大きく折り曲げずに係合穴9a、9bを通過させ、通過後はフラップ17と係合穴9a、9bの端縁とを確実に係合させるためには、上記実施形態のようにフラップ17は挿入方向を頂点とする略三角形状に形成し、係合穴9a、9bはスリット7a、7bの上端を頂点とする略くさび形に形成することが好ましい。
【0024】
図8は、組み立てられた段ボールスペーサ1の平面図であり、図9は、図8の左方向から見た側面図である。図8に示すように、第1支持面4a、第2支持面4b、及び内曲げ部11で囲まれた空間が付属品等を収納する収納部20となる。また、折り線L6の折り曲げによって切り込みS3の内側が切り起こされ、突出部21となる。突出部21は収納部20内に収納された付属品等の移動を制限するストッパとして機能する。第1支持面4aの上端部には半円状の切り欠き15bが形成されているため、収納部20内の付属品等を容易に取り出すことができる。
【0025】
また、図9に示すように、第3側面2cの端面は、収納部側面20a(図9のハッチング部分)を斜めに略2等分する位置に配置される。これにより、収納部20内に重量物を収納した状態で収納部側面20aを下にして落下した場合でも、第3側面2cが補強部材となって収納部側面20aの潰れを抑制することができる。
【0026】
図10は、段ボールスペーサ1の開口部13b付近の拡大斜視図である。段ボールスペーサ1を分解若しくは廃棄する際は、開口部13bから指を差し入れてフラップ17を下向き(図10の矢印方向)に押し下げ、その状態で係合穴9a、9bを通過させて第2支持面4bをスリット7a、7bから引き出すことにより、係合穴9a、9bとフラップ17との係合を簡単に解除することができる。なお、図10では係合穴9b側の構成についてのみ図示しているが、係合穴9a側についても同様である。
【0027】
その他本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では本発明のロック機構を備えた段ボールスペーサを例示しているが、段ボールシートから形成される段ボールケース等の他のロック機構としても良い。また、段ボールシートのような復元性を有するシート材料であれば、他の材料にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、第1シート材と、該第1シート材に形成されたスリットに挿入される第2シート材とを着脱可能に連結する際に用いられ、第2シート材には折り曲げ可能なフラップが設けられ、第1シート材にはスリットの長手方向に沿ってフラップが係合する係合穴が一体形成されており、フラップに押圧力を加えて折り曲げた状態で係合穴を通過させた後、押圧力を解除することにより、フラップが復元力により回動して係合穴の開口縁に係合するシート材のロック機構である。
【0029】
これにより、フラップを押圧して係合穴を通過させるだけで第1シート材と第2シート材とを簡単に連結し、さらに連結を解除可能となるため、包装容器や梱包用スペーサ等のシート成形品の組み立て及び分解作業性に優れた固定方法として利用することができる。
【0030】
さらに、フラップを第2シート材の挿入側上端の角部において挿入方向を頂点とする略三角形状に形成し、係合穴をスリットの上端を頂点とする略くさび形に形成するとともに、フラップと前記係合穴との係合を解除するための開口部を設けたので、シート成形品の分解や廃棄時における作業性がより一層向上する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】は、本発明のロック機構を備えた段ボールスペーサの展開図である。
【図2】は、図1の状態から側面部2を角筒状に折り曲げた状態を示す平面図である。
【図3】は、図2の左方向から見た側面図である。
【図4】は、図2の状態から第2支持面4bを略垂直に折り曲げた状態を示す平面図である。
【図5】は、図4の左方向から見た側面図である。
【図6】は、第2支持面4bがスリット7bに挿入される様子を示す部分斜視図である。
【図7】は、フラップ17と係合穴9bとの関係を示す拡大図である。
【図8】は、段ボールスペーサを組み立てた状態を示す平面図である。
【図9】は、段ボールスペーサを図8の左方向から見た側面図である。
【図10】は、段ボールスペーサの開口部13b周辺の拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
1 段ボールスペーサ
2 側面部(第1シート材)
2a 第1側面
2b 第2側面
2c 第3側面
2d 第4側面
3 底面部
4 支持部
4a 第1支持面
4b 第2支持面(第2シート材)
5a〜5c 差し込み片
7a、7b スリット
9a、9b 係合穴(ロック機構)
11 内曲げ部
13a〜13d 開口部
17 フラップ(ロック機構)
19 差し込み穴
20 収納部
20a 収納部側面
21 突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1シート材と、該第1シート材に形成されたスリットに挿入される第2シート材とを着脱可能に連結するシート材のロック機構であって、
前記第2シート材には折り曲げ可能なフラップが設けられ、前記第1シート材には前記スリットの長手方向に沿って前記フラップが係合する係合穴が一体形成されており、
前記フラップに押圧力を加えて折り曲げた状態で前記係合穴を通過させた後、前記押圧力を解除することにより、前記フラップが復元力により回動して前記係合穴の開口縁に係合することを特徴とするシート材のロック機構。
【請求項2】
前記フラップは、前記第2シート材の挿入側上端の角部において挿入方向を頂点とする略三角形状に形成されており、前記係合穴は、前記スリットの上端を頂点とする略くさび形に形成されることを特徴とする請求項1に記載のシート材のロック機構。
【請求項3】
前記第1シート材を含むシート成形品には、前記フラップと前記係合穴との係合を解除するための開口部が設けられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシート材のロック機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−83870(P2009−83870A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−253256(P2007−253256)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】