説明

シート材搬送装置及び記録装置

【課題】遊星歯車が伝達歯車から離間しようとする際に、伝達歯車がその回転により遊星歯車を引き留めてしまうことを防止する。
【解決手段】伝達歯車と噛合するとともに該伝達歯車の周囲を遊星運動可能に設けられ、前記伝達歯車が第1遊星歯車と噛合して該伝達歯車が第2搬送ローラーを順送方向に回転させる方向に回転する順方向回転時には前記第1遊星歯車と噛合不可な第2離間位置に位置し、前記第2搬送ローラーから前記伝達歯車に負荷が加わり、前記伝達歯車が前記順方向回転と逆に回転する逆方向回転時には第1噛合位置に位置する前記第1遊星歯車と噛合可能な第2噛合位置に位置し、該第2噛合位置での回転により前記第1遊星歯車に前記伝達歯車から離間する方向の力を付与する第2遊星歯車とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート材搬送装置及び記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体に記録処理を実施する記録装置として、例えば下記特許文献1に記載のインクジェットプリンターが知られている。
紙、布、フィルム等の各種のシート材を搬送するシート材搬送装置において、特許文献1に記載されているように、遊星運動することにより伝達歯車に対して噛合及び噛合解除可能な遊星歯車を備え、当該遊星歯車の遊星運動を介して、前記伝達歯車への動力伝達のオンオフ切り換えを行う輪列機構は、従来から広く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−74582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら遊星歯車と伝達歯車との位置関係によって、遊星歯車が伝達歯車から離間しようとする際の伝達歯車の回転方向が、遊星歯車の前記離間を阻害する方向となる場合があり、その結果遊星歯車の歯が伝達歯車の歯に噛み込んでしまい、遊星歯車が伝達歯車から離間できない場合がある。特に、遊星歯車が伝達歯車から離間しようとするとき、伝達歯車が遊星歯車から受ける回転作用とは別の理由によって逆の方向に回されてしまうと、より一層遊星歯車が伝達歯車から離間できなくなる。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、遊星歯車が伝達歯車から離間しようとする際に、伝達歯車がその回転により遊星歯車を引き留めてしまうことを防止することにあり、特に伝達歯車が前記引き留めを助長する回転方向に回された場合であっても、遊星歯車を伝達歯車から確実に離間させるシート材搬送装置及び記録装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、シート材を搬送する第1搬送ローラー及び第2搬送ローラーと、上記第1搬送ローラーの順送方向の回転時及び逆送方向の回転時に、その回転駆動力を伝達して上記第2搬送ローラーを順送方向に従動回転させる輪列機構と、を備え、上記輪列機構は、上記第2搬送ローラーに上記回転駆動力を伝達する伝達歯車と、上記第1搬送ローラーの上記回転駆動に応じて順方向及び逆方向のいずれか一方に回転する太陽歯車と、上記太陽歯車と噛合するとともに該太陽歯車の周囲を遊星運動可能に設けられ、上記太陽歯車の順方向回転時に上記伝達歯車と噛合可能な第1噛合位置に位置し、上記太陽歯車の逆方向回転時に上記伝達歯車と噛合不可な第1離間位置に位置する第1遊星歯車と、上記伝達歯車と噛合するとともに該伝達歯車の周囲を遊星運動可能に設けられ、上記伝達歯車が上記第1遊星歯車と噛合して該伝達歯車が上記第2搬送ローラーを順送方向に回転させる方向に回転する順方向回転時には上記第1遊星歯車と噛合不可な第2離間位置に位置し、上記第2搬送ローラーから上記伝達歯車に負荷が加わり、上記伝達歯車が上記順方向回転と逆に回転する逆方向回転時には上記第1噛合位置に位置する上記第1遊星歯車と噛合可能な第2噛合位置に位置し、該第2噛合位置での回転により上記第1遊星歯車に上記伝達歯車から離間する方向の力を付与する第2遊星歯車と、を有するという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、太陽歯車の順方向回転から逆方向回転への切り換えに伴い第1遊星歯車と噛合して当該第2遊星歯車に伝達歯車から離間する方向の力を付与する第2遊星歯車を備えているので、第1遊星歯車が伝達歯車から離間しようとする際に、伝達歯車がその回転により第1遊星歯車を引き留めてしまうことを防止することができ、特に伝達歯車が前記引き留めを助長する回転方向に回された場合であっても、第1遊星歯車を伝達歯車から確実に離間させることができる。
【0007】
また、本発明においては、上記輪列機構は、上記伝達歯車の回転軸を支点として回転自在に設けられて、上記第2遊星歯車を回転自在に支持するアーム部材と、上記アーム部材に向けて上記第2遊星歯車を付勢して、上記アーム部材に対する回転抵抗を付与するバネ部材と、を有するという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、伝達歯車の回転軸を支点として回転自在なアーム部材を設けて、アーム部材に第2遊星歯車を回転自在に支持させる。そして、アーム部材に向けて第2遊星歯車を付勢するようにバネ部材を設けて、アーム部材に対する回転抵抗を与えるように構成すると、伝達歯車の回転時に、その回転方向と同一の方向にアーム部材が変位してその方向へと第2遊星歯車を移動させることが可能となる。したがって、伝達歯車の回転方向に応じて第2遊星歯車を、第2離間位置あるいは第2噛合位置へと移動させることができる。
【0008】
また、本発明においては、上記輪列機構は、上記アーム部材の上記伝達歯車の回転軸を支点とする回転を、上記第2離間位置と上記第2噛合位置との間において規制する規制部材を有するという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、アーム部材の回転範囲を第2離間位置と第2噛合位置との間の必要限に規制することで、他の構成要素との接触を防止するとともに第2離間位置から第2噛合位置への第2遊星歯車の移動時間を短縮できる。
【0009】
また、本発明においては、上記輪列機構は、上記伝達歯車に噛合するとともに上記第2搬送ローラーに上記回転駆動力を伝達する第2伝達歯車と、上記太陽歯車と噛合するとともに該太陽歯車の周囲を遊星運動可能に設けられ、上記太陽歯車の順方向回転時に上記第2伝達歯車と噛合不可な第3離間位置に位置し、上記太陽歯車の逆方向回転時に上記第2伝達歯車と噛合可能な第3噛合位置に位置する第3遊星歯車と、を有するという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、太陽歯車が逆方向回転時には第1遊星歯車が第1離間位置に位置して、第1遊星歯車の伝達歯車への回転駆動力の伝達を解除するが、この時、第3遊星歯車は第3噛合位置に位置するため、第2伝達歯車へ回転駆動力が伝達される。一方、太陽歯車が順方向回転時には第1遊星歯車が第1噛合位置に位置して伝達歯車へ回転駆動力を伝達するが、この時、第3遊星歯車は第3離間位置に位置するため、第3遊星歯車の第2伝達歯車への回転駆動力の伝達が解除される。このため、太陽歯車が、第1搬送ローラーの回転駆動に応じて順方向及び逆方向のいずれか一方に回転しても、第2搬送ローラーを順送方向に従動回転させることができる。
【0010】
また、本発明においては、上記輪列機構は、上記太陽歯車の回転軸を支点として回転自在に設けられて、上記第1遊星歯車を回転自在に支持するとともに上記第3遊星歯車を回転自在に支持する第2アーム部材と、上記第2アーム部材に向けて上記第1遊星歯車あるいは上記第3遊星歯車を付勢して、上記第2アーム部材に対する回転抵抗を付与する第2バネ部材とを有し、上記第2アーム部材は、上記第1遊星歯車が上記第1噛合位置に位置して、上記第3遊星歯車が上記第3離間位置に位置する順方向回転位置と、上記第1遊星歯車が上記第1離間位置に位置して、上記第3遊星歯車が上記第3噛合位置に位置する逆方向回転位置との間で回転自在に設けられているという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、太陽歯車の回転軸を支点として回転自在な第2アーム部材を設けて、第2アーム部材に第1遊星歯車と第2遊星歯車とを回転自在に支持させて、両者の相対距離を一定に維持させる。また、第2アーム部材は、太陽歯車が順方向回転時には、第1遊星歯車を第1噛合位置に、第3遊星歯車を第3離間位置に位置させて、太陽歯車が逆方向回転時には、第1遊星歯車を第1離間位置に、第3遊星歯車を第3噛合位置に位置させて、両者の遊星運動を連動させることができる。さらに、第2アーム部材に向けて第1遊星歯車あるいは第3遊星歯車を付勢するように第2バネ部材を設けて回転抵抗を与えると、両者は第2アーム部材で連結されているため、他方にバネ部材を設けずとも、太陽歯車の回転方向に応じて、その回転方向と同一の方向に第2アーム部材を変位させることができる。
【0011】
また、本発明においては、先に記載のシート材搬送装置と、上記シート材搬送装置により搬送される上記シート材に対し記録処理を行う記録部と、を有する記録装置を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、第1遊星歯車が伝達歯車から離間しようとする際に、伝達歯車がその回転により第1遊星歯車を引き留めてしまうことを防止するシート材搬送装置を備えるので、第1搬送ローラーと第2搬送ローラーとを利用した食い付き吐き出し方式スキュー取りの円滑な実行が可能となり、スキューを矯正したシート材に対する記録処理を精度良く実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態におけるプリンターの用紙搬送経路を示す側断面図である。
【図2】本発明の実施形態における輪列機構の構成を示す側面図である。
【図3】本発明の実施形態における輪列機構の構成を示す平面図である。
【図4】本発明の実施形態における遊星歯車機構の構成を示す断面図である。
【図5】本発明の実施形態における遊星歯車ロック解除機構の構成を示す断面図である。
【図6】本発明の実施形態における遊星歯車ロック解除機構の構成を示す側面図である。
【図7】本発明の実施形態における搬送駆動ローラーの順送方向の回転状態を示す図である。
【図8】本発明の実施形態における搬送駆動ローラーの逆送方向の回転状態を示す図である。
【図9】本発明の実施形態における遊星歯車機構のロック状態を説明するための図である。
【図10】本発明の実施形態における遊星歯車機構のロック状態を説明するための図である。
【図11】本発明の実施形態における遊星歯車機構のロック状態を解除する遊星歯車ロック解除機構の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るシート材搬送装置及び記録装置の実施形態について、図を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。本実施形態では、本発明に係る記録装置として、インクジェット式プリンター(以下、プリンターと称する)を例示する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態におけるプリンター1の用紙搬送経路を示す側断面図である。
なお、以下の説明においては、図1に示すように、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明することがある。水平面内の所定方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれと直交する方向(すなわち鉛直方向)をZ軸方向とする。
【0015】
以下、図1を参照しつつプリンター1の全体構成について概説する。尚、図1はプリンター1の用紙搬送経路上に配置されるローラーを図示する為に、ほぼ全てのローラーを同一面上に描いているが、その奥行き方向(Y軸方向)の位置は必ずしも一致しているとは限らない(一致している場合もある)。
【0016】
プリンター1は、給送装置(シート材搬送装置)2を備え、当該給送装置2から被記録媒体としての用紙(シート材)Pを1枚ずつ給送し、記録手段(記録部)4においてインクジェット記録を行い、装置前方側(+X側)に設けられた図示しない排紙スタッカへ向けて排出する構成を備えている。またプリンター1は装置後部に両面ユニット7を着脱自在に備えており、最初に記録の行われた用紙Pの第1面に対し反対側の第2面が記録ヘッド42と対向するよう湾曲反転させ、これにより用紙Pの両面に記録が実行可能となっている。
【0017】
給送装置2は、用紙カセット11と、ピックアップローラー16と、分離手段21と、を備えている。複数枚の用紙Pを積層状態で収容可能な用紙カセット11は、給送装置2の装置本体に対し、装置前方側から装着及び取り外し可能に構成されており、図示しないモータによって回転駆動されるピックアップローラー16は、揺動軸18を中心に揺動する揺動部材17に設けられ、用紙カセット11に収容された用紙と接して回転することにより、当該最上位の用紙Pを用紙カセット11から−X方向(送出方向)に送り出す構成となっている。
【0018】
用紙カセット11に収容された用紙先端と対向する位置には分離部材12が設けられており、給送されるべき最上位の用紙Pの先端が分離部材12に摺接しつつ下流側に進むことで、次位以降の用紙Pとの第1段階分離が行われる。分離部材12の下流側には、分離ローラー22と中間ローラー23とを備えて構成された、用紙Pの第2段階分離を行う分離手段21が設けられている。また、分離手段21の下流側には、中間ローラー23との間で用紙Pをニップして従動回転するアシストローラー27が設けられている。
【0019】
また、給送装置2は、搬送手段5と、排出手段6と、を備えている。搬送手段5は、図示を省略するモータによって回転駆動される搬送駆動ローラー35と、該搬送駆動ローラー35に圧接して従動回転するようガイド対向部37に軸支される搬送従動ローラー36とを備えて構成され、この搬送手段5により用紙Pが記録ヘッド42と対向する位置に向けて精密送りされる。
【0020】
搬送手段5より上流側のガイド対向部37には、用紙端検知センサ13が設けられる。用紙端検知センサ13は、用紙Pの先端及び後端の位置を検出するセンサであり、本実施形態では、機械的な機構によって用紙Pの端を検知するメカニカルセンサを用いている。より詳しくは、用紙端検知センサ13は、ガイド対向部37から第2搬送経路9(後述)上に突出すると共にY軸方向に延びる軸周りに回動可能なレバーを備えて、このレバーが用紙Pと接触したときの回動を検知することにより、用紙Pの端を検知する構成となっている。
【0021】
尚、給送装置2により給送される用紙Pのスキューは、搬送駆動ローラー35(第1搬送ローラー)と、その上流側の中間ローラー23(第2搬送ローラー)とを利用した食い付き吐き出し方式のスキュー取り制御により除去される。
【0022】
具体的には、用紙Pの先端を搬送駆動ローラー35と搬送従動ローラー36との間に食い付かせて順送方向(下流側)に所定量に送り出した後、上流側の中間ローラー23を順送方向に回転させている状態で搬送駆動ローラー35を逆転させ、用紙先端を搬送駆動ローラー35の逆送方向(上流側)に吐き出す。これにより用紙Pは中間ローラー23と搬送駆動ローラー35との間で撓んで、用紙P先端が搬送駆動ローラー35と搬送従動ローラー36とのニップ点に倣い、スキューが矯正される。
【0023】
続いて記録ヘッド42はキャリッジ40の底部に設けられ、当該キャリッジ40は主走査方向(Y軸方向)に延びるキャリッジガイド軸41にガイドされながら、図示を省略するモータによって主走査方向に往復動する様に駆動される。この記録ヘッド42は、例えば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色に応じたインクを噴射可能な構成となっている。
【0024】
記録ヘッド42の下流側に設けられた排出手段6は、図示を省略するモータによって回転駆動される排出駆動ローラー44と、当該排出駆動ローラー44に接して従動回転する排出従動ローラー45とを備えて構成され、記録手段4によって記録の行われた用紙Pは、排出手段6により、装置前方側に設けられた図示を省略するスタッカへと排出される。
【0025】
また、給送装置2は、所定高さで用紙Pを搬送する第1搬送経路8と、第1搬送経路8よりも低い高さで用紙Pを搬送する第2搬送経路9と、第1搬送経路8と第2搬送経路9とが合流する合流部10と、を備えている。第1搬送経路8において用紙Pは、分離ローラー22、中間ローラー23、アシストローラー27によって搬送される。また、第2搬送経路9において用紙Pは、搬送駆動ローラー35、搬送従動ローラー36、排出駆動ローラー44、排出従動ローラー45によって搬送される。
【0026】
合流部10よりも下流側の第2搬送経路9(9A)は、記録ヘッド42に用紙Pを導く共通搬送経路を構成する。一方、合流部10よりも上流側の第2搬送経路9(9B)は、合流部10よりも上流側の第1搬送経路8と合流する用紙反転用搬送経路を構成する。
両面印刷の場合、第2搬送経路9Aを搬送されて第1面に記録の行われた用紙Pは、搬送手段5、排出手段6、のこれらによる逆送り動作によって、第1面に記録が実行された際に用紙後端となっていた側が先端となって、第2搬送経路9Bに誘い込まれ、分離ローラー22、中間ローラー23との間に誘導される。
【0027】
中間ローラー23は図示を省略するモータにより図1の時計回り方向に回転駆動されており、分離ローラー22、中間ローラー23との間に誘い込まれた用紙は、中間ローラー23とアシストローラー27との間を通って再び合流部10に到達し、第2搬送経路9Aを介して記録手段4に導かれ、以降同様に記録が実行される。
【0028】
尚、以上説明した用紙搬送経路中に設けられるピックアップローラー16、中間ローラー23、搬送駆動ローラー35、排出駆動ローラー44、のこれら回転駆動されるローラーは、全て共通の駆動モータにより回転駆動されるよう構成されている。
この中で中間ローラー23と搬送駆動ローラー35との間に、本発明に係る輪列機構50が設けられる。
【0029】
以下、図2〜図11を参照しながら本発明の一実施形態に係る輪列機構50について説明する。
図2は、本発明の実施形態における輪列機構50の構成を示す側面図である。図3は、本発明の実施形態における輪列機構50の構成を示す平面図である。
図2において符号61は搬送経路の−Y側側面を構成するサイドフレームの一部を示しており、輪列機構50の一部はこのサイドフレーム61に設けられ、輪列機構50の残りはプリンター1の基体を構成する他のサイドフレームや両面ユニット7に設けられる。
【0030】
搬送駆動ローラー35の−Y側の軸端には、該ローラーと一体で回転する駆動歯車51が設けられる。駆動歯車51は、不図示の駆動モータの駆動によって、時計回りに回転して用紙Pを順送方向(+X方向)に送る回転(順送方向の回転)、あるいは、反時計回りに回転して用紙Pを逆送方向(−X方向)に送る回転(逆送方向の回転)が可能な構成となっている。
【0031】
中間ローラー23の−Y側の軸端には、該ローラーと一体で回転する中間歯車52が設けられる。中間歯車52は、搬送駆動ローラー35の順送方向の回転時及び逆送方向の回転時に、輪列機構50によって駆動歯車51の回転駆動力を伝達されて、時計回りに回転して用紙Pを順送方向(+X方向)に送る従動回転(順送方向の従動回転)が可能な構成となっている。
【0032】
輪列機構50は、中間歯車52へ回転駆動力を伝達する伝達歯車機構70と、伝達歯車機構70へ回転駆動力を伝達する遊星歯車機構80と、遊星歯車機構80のロック状態(後述)を解除する遊星歯車ロック解除機構90とを有する。
伝達歯車機構70は、伝達歯車71と、伝達歯車(第2伝達歯車)72と、伝達歯車73と、伝達歯車74とを有する。伝達歯車71,72,73,74は、サイドフレーム61等から立設した複数の回転軸にそれぞれ回転自在に軸支されている。この伝達歯車機構70は、伝達歯車71と伝達歯車72とが噛合し、伝達歯車72と伝達歯車73とが噛合し、伝達歯車73と伝達歯車74とが噛合し、伝達歯車74と中間歯車52とが噛合する構成となっている。
【0033】
本実施形態では、伝達歯車71と伝達歯車74とが、平歯車で構成され、伝達歯車72と伝達歯車73とが、大径歯車と小径歯車とが一体で組み合わされた複合歯車で構成されている。また、伝達歯車71の径は、他の伝達歯車の径よりも小さく構成されている。この伝達歯車機構70は、図3に示すような噛合関係により減速比(ギア比)を調節する構成となっている。
尚、伝達歯車71は、後述する遊星歯車ロック解除機構90の一部を構成する。
【0034】
遊星歯車機構80は、太陽歯車81と、遊星歯車(第1遊星歯車)82と、遊星歯車(第3遊星歯車)83とを有する。
太陽歯車81は、駆動歯車51と噛合して、駆動歯車51の回転駆動に応じて第1方向及び第2方向のいずれか一方に回転する構成となっている。
以下、駆動歯車51が時計回りの回転(順送方向の回転)をしたときの太陽歯車81の反時計回りの回転を第1方向回転(逆方向回転)と称する。また、駆動歯車51が反時計回りの回転(逆送方向の回転)をしたときの太陽歯車81の時計回りの回転を第2方向回転(順方向回転)と称する。
【0035】
遊星歯車82は、太陽歯車81と噛合するとともに該太陽歯車81の周囲を遊星運動可能に設けられ、太陽歯車81の第2方向回転(時計回り回転)時に伝達歯車71と噛合可能な噛合位置(第1噛合位置)に位置し(図8参照)、太陽歯車81の第1方向回転(反時計回り回転)時に伝達歯車71と噛合不可な離間位置(第1離間位置)に位置する構成となっている(図7参照)。
一方、遊星歯車83は、太陽歯車81と噛合するとともに該太陽歯車81の周囲を遊星運動可能に設けられ、太陽歯車81の第2方向回転(時計回り回転)時に伝達歯車72と噛合不可な離間位置(第3離間位置)に位置し(図8参照)、太陽歯車81の第1方向回転(反時計回り回転)時に伝達歯車72と噛合可能な噛合位置(第3噛合位置)に位置する構成となっている(図7参照)。
【0036】
この構成によれば、太陽歯車81が第1方向回転時には遊星歯車82が第1離間位置に位置して、遊星歯車82の伝達歯車71への回転駆動力の伝達を解除するが、この時、遊星歯車83は第3噛合位置に位置するため、伝達歯車72へ回転駆動力が伝達される。一方、太陽歯車81が第2方向回転時には遊星歯車82が第1噛合位置に位置して伝達歯車71へ回転駆動力を伝達するが、この時、遊星歯車83は第3離間位置に位置するため、遊星歯車83の伝達歯車72への回転駆動力の伝達が解除される。このため、太陽歯車81が、搬送駆動ローラー35の回転駆動に応じて第1方向及び第2方向のいずれか一方に回転しても、中間ローラー23に順送方向の従動回転をさせることができる(図7及び図8参照)。
【0037】
遊星歯車82及び遊星歯車83は、太陽歯車81の回転中心を中心にして揺動可能なアーム部材(第2アーム部材)84に、それぞれ回転自在に軸支されている。アーム部材84は、遊星歯車82と遊星歯車83とを機械的に連結させて、両者の太陽歯車81の周方向における相対距離を一定に、本実施形態では180度位相をずらして維持することで、両者の遊星運動を連動させると共に、両者の衝突等を回避させる。このアーム部材84は、遊星歯車82が第1噛合位置に位置して、遊星歯車83が第3離間位置に位置する第2方向回転位置(順方向回転位置:図8参照)と、遊星歯車82が第1離間位置に位置して、遊星歯車83が第3噛合位置に位置する第1方向回転位置(逆方向回転位置:図7参照)との間で回転自在に設けられている。
【0038】
第2方向回転位置にアーム部材84が位置するとき、遊星歯車82と伝達歯車71とが噛合することでアーム部材84の反時計回りの回転が規制される。またこの時、アーム部材84の他方に設けられる遊星歯車83は、伝達歯車72及び駆動歯車51と噛合不可な位置で空転する(図8参照)。
第1方向回転位置にアーム部材84が位置するとき、遊星歯車83と伝達歯車72とが噛合することでアーム部材84の時計回りの回転が規制される。またこの時、アーム部材84の他方に設けられる遊星歯車82は、伝達歯車71及び駆動歯車51と噛合不可な位置で空転する(図7参照)。
【0039】
図4は、本発明の実施形態における遊星歯車機構80の構成を示す断面図である。
アーム部材84は、一方向に直線的に延びる長尺形状を有し、その中央部85が太陽歯車81の回転中心を通る回転軸62に軸支されている。回転軸62は、サイドフレーム61に立設されている。アーム部材84の中央部85は回転軸62の形状に沿って略円筒状に形成される。この中央部85には、太陽歯車81が回転自在に軸支される。したがって、アーム部材84と太陽歯車81とは、回転軸62周りにそれぞれ回転自在な構成となっている。
【0040】
アーム部材84の一端部(図2において+Z側の端部)は、遊星歯車83を回転自在に軸支する回転軸86を有する。回転軸86の先端部には、−Y方向への遊星歯車83の抜けを防止するストッパー86aが一体で設けられる。
一方、アーム部材84の他端部(中央部85を挟んで一端部と逆側の端部:図2において−Z側の端部)には、遊星歯車82を回転自在に軸支する回転軸87を有する。回転軸87の先端部には、−Y方向への遊星歯車82の抜けを防止するストッパー87aが一体で設けられる。
【0041】
アーム部材84の一端部には、遊星歯車83をストッパー86aに向けて付勢して、アーム部材84に対する回転抵抗(摩擦力)を付与する圧縮バネ(第2バネ部材)88が設けられている。
回転軸62を支点として回転自在なアーム部材84を設けて、アーム部材84に遊星歯車83を回転自在に支持させ、アーム部材84に向けて遊星歯車83を付勢するように圧縮バネ88を設けると、太陽歯車81の回転時に、その回転方向と同一の方向にアーム部材84を変位させることが可能となる。
【0042】
すなわち、太陽歯車81が反時計回りに回転すると、それと噛合する遊星歯車83は時計回りに回転するが、その時の回転反力が、アーム部材84を反時計回りに回転させる力として作用するため、太陽歯車81とアーム部材84とが同一の方向(反時計回り)に回転する(図7参照)。また、太陽歯車81が時計回りに回転すると、それと噛合する遊星歯車83は反時計回りに回転するが、その時の回転反力が、アーム部材84を時計回りに回転させる力として作用するため、太陽歯車81とアーム部材84とが同一の方向(時計回り)に回転する(図8参照)。
なお、アーム部材84に向けて遊星歯車83のみに圧縮バネ88を設けて回転抵抗を与えると、他方の遊星歯車82はアーム部材84で機械的に連結されているため、その他方に圧縮バネを設けずとも、太陽歯車81の回転方向と同一の方向にアーム部材84を変位させることができる。
【0043】
図2に戻り、遊星歯車ロック解除機構90は、伝達歯車71と、遊星歯車(第2遊星歯車)91とを有する。
遊星歯車91は、伝達歯車71と噛合するとともに該伝達歯車71の周囲を遊星運動可能に設けられている。この遊星歯車91は、伝達歯車71が遊星歯車82と噛合して該伝達歯車71が中間ローラー23を順送方向に回転させる方向に回転する順方向回転(時計回り回転)時には遊星歯車82と噛合不可な第2離間位置(図8参照)に位置する構成となっている。また、遊星歯車91は、中間ローラー23から伝達歯車71に負荷が加わり(後述)、伝達歯車71が順方向回転と逆に回転する逆方向回転(反時計回り回転)時には第1噛合位置に位置する上記第1遊星歯車と噛合可能な第2噛合位置(図10参照)に位置し、該第2噛合位置での回転により遊星歯車82に伝達歯車71から離間する方向の力を付与する構成となっている。
【0044】
遊星歯車91は、伝達歯車71の回転中心を中心にして揺動可能なアーム部材92に回転自在に軸支されている。
図5は、本発明の実施形態における遊星歯車ロック解除機構90の構成を示す断面図である。図6は、本発明の実施形態における遊星歯車ロック解除機構90の構成を示す側面図である。
【0045】
アーム部材92は、一方向に直線的に延びる長尺形状を有し、図5に示すように、その基端部93が伝達歯車71の回転中心を通る回転軸63に軸支されている。回転軸63は、サイドフレーム61に立設されている。アーム部材92の先端部は、遊星歯車91を回転自在に軸支する回転軸94を有する。回転軸94の先端部には、+Y方向への遊星歯車91の抜けを防止するストッパー94aが一体で設けられる。
【0046】
アーム部材92の先端部には、遊星歯車91をストッパー94aに向けて付勢して、アーム部材92に対する回転抵抗(摩擦力)を付与する圧縮バネ(バネ部材)95が設けられている。
回転軸63を支点として回転自在なアーム部材92を設けて、アーム部材92に遊星歯車91を回転自在に支持させ、アーム部材92に向けて遊星歯車91を付勢するように圧縮バネ95を設けると、伝達歯車71の回転時に、その回転方向と同一の方向にアーム部材92を変位させることが可能となる。
【0047】
すなわち、伝達歯車71が時計回りに回転すると、それと噛合する遊星歯車91は反時計回りに回転するが、その時の回転反力が、アーム部材92を時計回りに回転させる力として作用するため、伝達歯車71とアーム部材92とが同一の方向(時計回り)に回転する(図7及び図8参照)。また、伝達歯車71が反時計回りに回転すると、それと噛合する遊星歯車83は時計回りに回転するが、その時の回転反力が、アーム部材92を反時計回りに回転させる力として作用するため、伝達歯車71とアーム部材92とが同一の方向(反時計回り)に回転する(図11参照)。
【0048】
遊星歯車ロック解除機構90は、図6に示すように、アーム部材92の伝達歯車71の回転軸を支点とする回転を、第2離間位置と第2噛合位置との間において規制する規制部(規制部材)96を有する。
規制部96は、回転軸63の天部から凸設される凸部97と、アーム部材92の基端部93に形成されて凸部97が遊挿される凹部98とから構成される。凸部97は、図6に示す側面視で略扇形状を有している。また、凹部98は、図6に示す側面視で、凸部97の扇形状よりも一回り大きな略扇形状を有する。
【0049】
規制部96は、伝達歯車71が時計回りに回転するときに、凸部97の側部97aに凹部98の側部98aが係止することによって、アーム部材92の回転を第2離間位置において規制する。また、規制部96は、伝達歯車71が反時計回りに回転するときに、その回転方向と逆側において凸部97の側部97bに凹部98の側部98bが係止することによって、アーム部材92の回転を第2噛合位置において規制する。
【0050】
すなわち、第2離間位置にアーム部材92が位置するとき、凸部97の側部97aに凹部98の側部98bが係止することでアーム部材92の時計回りの回転が規制される。この時、遊星歯車91は、伝達歯車72及び遊星歯車82と噛合不可な位置で空転する(図7及び図8参照)。
【0051】
続いて、上記構成の輪列機構50の全体的な動作について、図7〜図11を参照して説明する。
【0052】
図7は、搬送駆動ローラー35の順送方向の回転状態を示している。
この状態では、駆動歯車51は、不図示の駆動モータの駆動によって時計回りの回転(順送方向の回転)をする。駆動歯車51が順送方向の回転をすると、それと噛合する太陽歯車81は、反時計回りの回転(第1方向回転)をする。太陽歯車81が第1方向回転すると、アーム部材84が反時計回りに回転して第1方向回転位置に位置する。第1方向回転位置にアーム部材84が位置するとき、遊星歯車83は、伝達歯車72と噛合する第3噛合位置に位置する。第3噛合位置において遊星歯車83が時計回りに回転すると、それと噛合する伝達歯車72が反時計回りに回転する。伝達歯車72が反時計回りに回転すると、伝達歯車73及び伝達歯車74が回転し、伝達歯車74と噛合する中間歯車52が時計回りの従動回転(順送方向の従動回転)をする。
なお、伝達歯車72が反時計回りに回転すると、それと噛合する伝達歯車71は、時計回りの回転(順方向回転)をする。伝達歯車71が時計回りに回転すると、アーム部材92は、時計回りに回転して第2離間位置に位置する。第2離間位置にアーム部材92が位置するとき、規制部96は、アーム部材92の時計回りの回転を規制する。
すなわち、この状態では、用紙Pが搬送経路に沿って上流側から下流側に向かって搬送され得る状態となっている。
【0053】
図8は、搬送駆動ローラー35の逆送方向の回転状態を示している。
この状態では、駆動歯車51は、不図示の駆動モータの駆動によって反時計回りの回転(逆送方向の回転)をする。駆動歯車51が逆送方向の回転をすると、それと噛合する太陽歯車81は、時計回りの回転(第2方向回転)をする。太陽歯車81が第2方向回転すると、アーム部材84が時計回りに回転して第2方向回転位置に位置する。第2方向回転位置にアーム部材84が位置するとき、遊星歯車82は、伝達歯車71と噛合する第1噛合位置に位置する。第1噛合位置において遊星歯車82が反時計回りに回転すると、それと噛合する伝達歯車71が時計回りに回転(順方向回転)する。伝達歯車71が時計回りに回転すると、伝達歯車72が反時計回りに回転する。伝達歯車72が反時計回りに回転すると、伝達歯車73及び伝達歯車74が回転し、伝達歯車74と噛合する中間歯車52が時計回りの従動回転(順送方向の従動回転)をする。
なお、伝達歯車71が時計回りに回転すると、アーム部材92は、時計回りに回転して第2離間位置に位置する。第2離間位置にアーム部材92が位置するとき、規制部96は、アーム部材92の時計回りの回転を規制する。
【0054】
図8の状態では、上述した食い付き吐き出し方式のスキュー取り制御を行う為に搬送駆動ローラー35(駆動歯車51)が、図7の状態から逆転駆動されると、遊星歯車83が伝達歯車72から離れ、代わりに遊星歯車82が伝達歯車71に噛合して、伝達歯車機構70に回転駆動力が伝達される状態となる。
【0055】
このとき、下流側の搬送駆動ローラー35は、逆送方向の回転をしているが、上流側の中間ローラー23はひきつづき順送方向の回転をするので、用紙Pは中間ローラー23と搬送駆動ローラー35との間で撓み、用紙先端が搬送駆動ローラー35の上流側に吐き出され、スキューが除去される。
【0056】
尚、図8に示す食い付き吐き出し方式のスキュー取りの状態から再び搬送駆動ローラー35(駆動歯車51)が順送方向の回転駆動に切り換えられたとき、遊星歯車82が伝達歯車71から離間しようとするが、遊星歯車82の歯が伝達歯車71の歯に噛み込んでしまい遊星歯車82を引き留めてしまう現象が生じる場合がある。
以下、図9及び図10を参照してこの噛み込み現象(ロック状態)について説明する。なお、図9及び図10においては、説明のため遊星歯車ロック解除機構90を設けていない状態の輪列機構50を示す。
【0057】
食い付き吐き出し方式のスキュー取りの状態においては、中間ローラー23が順送方向の従動回転をしているので、用紙Pを撓ませることができるが、この時、中間ローラー23は、図9に示す用紙反力を受けて、本体の回転方向(時計回り)とは逆方向(反時計回り)にトルク(負荷)が掛かっている。したがって、搬送駆動ローラー35(駆動歯車51)が順送方向の回転駆動に切り換えられたとき(回転駆動力が一時遮断されたとき)に、そのトルクによって、伝達歯車機構70に回転駆動力が伝達され、伝達歯車71が反時計回りに回転(逆方向回転)する場合がある。そうすると、図10に示すように、伝達歯車71に噛合している遊星歯車82が噛み込む側に力が作用し、アーム部材84の時計回り回転側に向かうようなモーメントが生じて、遊星歯車機構80が切り替わらなくなってしまう。
【0058】
しかしながら、輪列機構50においては上記の通り、遊星歯車機構80のロック状態を解除する遊星歯車ロック解除機構90を有する。以下、図11を参照して遊星歯車機構80のロック状態を解除する動作について説明する。
【0059】
中間ローラー23から伝達歯車71にトルクが加わり、伝達歯車71が反時計回りに回転(逆方向回転)すると、アーム部材92は、反時計回りに回転して、遊星歯車91を第2噛合位置に位置させる。尚、アーム部材92の回転範囲は、規制部96によって第2離間位置と第2噛合位置との間の必要限に規制されて変位量を小さく設定されているため、第2離間位置から第2噛合位置への遊星歯車91の移動時間を短縮して、搬送駆動ローラー35の駆動の切り換え時、大きなタイムラグが生じることなく、速やかに遊星歯車91の遊星運動を開始することができる。
【0060】
第2噛合位置には、伝達歯車71がトルクを受けて反時計回り回転するので、遊星歯車91は時計回りに回転しながら移動する。第2噛合位置に遊星歯車91が位置すると、ロック状態にある第1噛合位置に位置する遊星歯車82と接触して噛合する。このとき、遊星歯車91の時計回りの回転により、遊星歯車82に対し噛み込みを解除する側に力が作用する。そうすると、遊星歯車82が噛み込む側に作用する力が相殺され、打ち勝つことで、アーム部材84の反時計回り回転側に向かうようなモーメントが生じて、遊星歯車機構80を強制的に切り替えることができる。尚、この遊星歯車82に対し噛み込みを解除する側に作用する力は、遊星歯車91をストッパー94aに向けて付勢して、アーム部材92に対する回転抵抗を付与する圧縮バネ95の付勢力により管理することができるため、遊星歯車82が外れなくなる現象を確実に回避することができる。
【0061】
したがって、上述の実施形態によれば、スキュー取り時の用紙反力により駆動伝達方向とは逆方向にトルクが発生することによって、伝達歯車71から遊星歯車82が外れなくなるロック状態を、伝達歯車71と噛み合う第2の遊星歯車91を有する遊星歯車ロック解除機構90を設けて強制的に遊星歯車82を切り離す構造を採用することで、遊星歯車82が外れなくなる現象を回避することが可能となる。
また、本実施形態のプリンター1によれば、遊星歯車82が伝達歯車71から離間しようとする際に、伝達歯車71がその回転により遊星歯車82を引き留めてしまうことを防止する輪列機構50を備えるので、搬送駆動ローラー35と中間ローラー23とを利用した食い付き吐き出し方式スキュー取りの円滑な実行が可能となり、スキューを矯正した用紙Pに対する記録処理を精度良く実施することができる。
【0062】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0063】
例えば、上述の実施形態においては、記録装置がインクジェットプリンターである場合を例にして説明したが、インクジェットプリンターに限られず、複写機及びファクシミリ等の装置であってもよい。
【符号の説明】
【0064】
1…プリンター(記録装置)、2…給送装置(シート材搬送装置)、4…記録手段(記録部)、23…中間ローラー(第2搬送ローラー)、35…搬送駆動ローラー(第1搬送ローラー)、50…輪列機構、51…駆動歯車、52…中間歯車、70…伝達歯車機構、71…伝達歯車、72…伝達歯車(第2伝達歯車)、80…遊星歯車機構、81…太陽歯車、82…遊星歯車(第1遊星歯車)、83…遊星歯車(第3遊星歯車)、84…アーム部材(第2アーム部材)、88…圧縮バネ(第2バネ部材)、90…遊星歯車ロック解除機構、91…遊星歯車(第2遊星歯車)、92…アーム部材、95…圧縮バネ(バネ部材)、96…規制部(規制部材)、P…用紙(シート材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材を搬送する第1搬送ローラー及び第2搬送ローラーと、
前記第1搬送ローラーの順送方向の回転時及び逆送方向の回転時に、その回転駆動力を伝達して前記第2搬送ローラーを順送方向に従動回転させる輪列機構と、を備え、
前記輪列機構は、
前記第2搬送ローラーに前記回転駆動力を伝達する伝達歯車と、
前記第1搬送ローラーの前記回転駆動に応じて順方向及び逆方向のいずれか一方に回転する太陽歯車と、
前記太陽歯車と噛合するとともに該太陽歯車の周囲を遊星運動可能に設けられ、前記太陽歯車の順方向回転時に前記伝達歯車と噛合可能な第1噛合位置に位置し、前記太陽歯車の逆方向回転時に前記伝達歯車と噛合不可な第1離間位置に位置する第1遊星歯車と、
前記伝達歯車と噛合するとともに該伝達歯車の周囲を遊星運動可能に設けられ、前記伝達歯車が前記第1遊星歯車と噛合して該伝達歯車が前記第2搬送ローラーを順送方向に回転させる方向に回転する順方向回転時には前記第1遊星歯車と噛合不可な第2離間位置に位置し、前記第2搬送ローラーから前記伝達歯車に負荷が加わり、前記伝達歯車が前記順方向回転と逆に回転する逆方向回転時には前記第1噛合位置に位置する前記第1遊星歯車と噛合可能な第2噛合位置に位置し、該第2噛合位置での回転により前記第1遊星歯車に前記伝達歯車から離間する方向の力を付与する第2遊星歯車と、を有することを特徴とするシート材搬送装置。
【請求項2】
前記輪列機構は、
前記伝達歯車の回転軸を支点として回転自在に設けられて、前記第2遊星歯車を回転自在に支持するアーム部材と、
前記アーム部材に向けて前記第2遊星歯車を付勢して、前記アーム部材に対する回転抵抗を付与するバネ部材と、を有することを特徴とする請求項1に記載のシート材搬送装置。
【請求項3】
前記輪列機構は、前記アーム部材の前記伝達歯車の回転軸を支点とする回転を、前記第2離間位置と前記第2噛合位置との間において規制する規制部材を有することを特徴とする請求項2に記載のシート材搬送装置。
【請求項4】
前記輪列機構は、
前記伝達歯車に噛合するとともに前記第2搬送ローラーに前記回転駆動力を伝達する第2伝達歯車と、
前記太陽歯車と噛合するとともに該太陽歯車の周囲を遊星運動可能に設けられ、前記太陽歯車の順方向回転時に前記第2伝達歯車と噛合不可な第3離間位置に位置し、前記太陽歯車の逆方向回転時に前記第2伝達歯車と噛合可能な第3噛合位置に位置する第3遊星歯車と、を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のシート材搬送装置。
【請求項5】
前記輪列機構は、前記太陽歯車の回転軸を支点として回転自在に設けられて、前記第1遊星歯車を回転自在に支持するとともに前記第3遊星歯車を回転自在に支持する第2アーム部材と、前記第2アーム部材に向けて前記第1遊星歯車あるいは前記第3遊星歯車を付勢して、前記第2アーム部材に対する回転抵抗を付与する第2バネ部材とを有し、
前記第2アーム部材は、前記第1遊星歯車が前記第1噛合位置に位置して、前記第3遊星歯車が前記第3離間位置に位置する順方向回転位置と、前記第1遊星歯車が前記第1離間位置に位置して、前記第3遊星歯車が前記第3噛合位置に位置する逆方向回転位置との間で回転自在に設けられていることを特徴とする請求項4に記載のシート材搬送装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のシート材搬送装置と、
前記シート材搬送装置により搬送される前記シート材に対し記録処理を行う記録部と、を有することを特徴とする記録装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−156684(P2011−156684A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18143(P2010−18143)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】