説明

シート材識別装置及びこれを備えた画像形成装置

【課題】シート材にマーキングを施すことなく、かつ簡単な構造でシート材の種類の識別を行うことのできるシート材識別装置及びこれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】駆動手段51により、下方に突出した状態でダンパー55に取り付けられている衝撃印加部材56をシート材Sに衝撃を加える方向に移動させてシート材Sに衝撃を加えると共に、シート材Sに衝撃を加えた後、反跳運動する衝撃印加部材61の反跳運動の量に応じた大きさの電気信号を出力する。そして、シート材識別手段60により、信号出力手段51からの電気信号に基づいてシート材Sの種類を識別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート材識別装置及びこれを備えた画像形成装置に関し、特にシート材に衝撃を加えることによりシート材の種類を識別するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、プリンタ、あるいはFAX等の画像形成装置においては、通常のコピー紙の他、光沢紙、コート紙、フィルム状の透明樹脂等のシート材に画像を形成するようにしたものがある。
【0003】
そして、このようなさまざまな種類のシート材に画像を形成するようにした画像形成装置においては、シート材の種類を識別するためのシート材識別装置を備え、このシート材識別装置によってシート材の種類を識別した後、シート材に応じた搬送速度、定着温度等の条件で画像を形成するようにしたものがある。
【0004】
ここで、このようなシート材識別装置としては、例えば図4に示すように、予めシート材自体に何らかの数字コードまたは記号等のマーキングMを施しておき、このマーキングMを画像形成装置内に設けられたセンサにより読み取ることにより、シート材Sの種類を識別して画像形成モードの最適化を図るというマーキング方式のものがある(特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開平11−314443号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、このような従来のマーキング方式のシート材識別装置においては、シート材Sの種類が識別できるのはマーキングMが施されたシート材Sのみであり、マーキングMが施されていないシート材Sは種類を識別することができないという問題があった。
【0007】
なお、シート材SにマーキングMを施すためには、専用の装置が必要となるばかりでなく、マーキングMを施すための手間も必要となるため、コストも増える。
【0008】
そこで、本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、シート材にマーキングを施すことなく、かつ簡単な構造でシート材の種類の識別を行うことのできるシート材識別装置及びこれを備えた画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、シート材に衝撃を加えると共に、前記シート材に衝撃を加えた後、反跳運動する衝撃印加手段と、前記衝撃印加手段を前記シート材に衝撃を加える方向に移動させるための駆動手段と、前記シート材に衝撃を加えた後の電気信号を出力する信号出力手段と、前記信号出力手段から出力された電気信号に基づき前記シート材の種類を識別するためのシート材識別手段と、を備えたシート材識別装置において、前記衝撃印加手段は、衝撃印加部材を含み、該衝撃印加部材は下方に突出した状態でダンパーに取り付けられていることを特徴とするものである。
【0010】
また本発明は、画像形成装置であって、画像形成部と、上記のいずれかに記載のシート材識別装置を備え、前記画像形成部は、前記シート材識別装置により識別されたシート材の種類に応じた条件で画像を形成することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、駆動手段により、下方に突出した状態でダンパーに取り付けられている衝撃印加部材を移動させてシート材に衝撃を加えると共に、シート材に衝撃を加えた後、信号出力手段により反跳運動する衝撃印加部材の反跳運動の量に応じた大きさの電気信号を出力することにより、シート材にマーキングを施すことなく、かつ簡単な構成でシート材の種類の識別を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態に係るシート材識別装置を備えた画像形成装置の一例であるレーザビームプリンタの概略構成を示す図であり、同図において、100はレーザプリンタ、100Aはプリンタ本体、100Bは画像形成部である。
【0014】
ここで、このレーザプリンタ100においては、不図示のパーソナルコンピュータやワードプロセッサ等の外部情報機器から情報が送信されると、まずこの情報に基づいて不図示のビデオコントローラボードが画像信号を作成し、この後、ビデオコントローラボードで作成された画像信号に応じたレーザ光Lをレーザスキャナ105が時計方向に回転している感光ドラム106A上に照射する。これにより、感光ドラム106A上に静電潜像が形成される。
【0015】
次に、このように感光ドラム106A上に静電潜像を形成した後、この静電潜像を、プロセスユニット106内の不図示の現像器から供給されるトナーによって順次トナー像として顕画化した後、このトナー像を感光ドラム106Aと転写ローラ107とにより構成される転写部107Aへ搬送する。
【0016】
一方、このようなトナー像形成動作に並行して給紙カセット108内に積載収納されているシート材Sの最上位のシートを反時計方向に1回転する半月状の給紙ローラ109によって順次給紙パス110Aへ送り出し、この後、搬送ローラ111によって回転停止中のレジストローラ112に搬送する。
【0017】
ここで、このようにレジストローラ112に到達したシート材Sは、先端がレジストローラ112のニップに突き当たった後、所定のループを形成するまで搬送が続けられることにより、斜行状態の矯正がなされる。
【0018】
そして、このように斜行状態の矯正を終えたシート材Sは、感光ドラム106A上のトナー像と位置を合わせるタイミングをとって回転を開始するレジストローラ112によって転写部107Aへ搬送され、この転写部107Aにおいて、転写ローラ107により感光ドラム106A上のトナー像がシート面上に転写される。
【0019】
次に、このようにトナー像の転写を終えたシート材Sは搬送ガイド113上を通って定着装置14へ搬送され、この定着装置14において加熱及び加圧されることにより、転写されたトナー像がシート上に定着される。
【0020】
なお、トナー像の定着処理を終えたシート材Sは、印字面を下向きに積載(フェイスダウン積載)する場合には、搬送面116とそれに対向するフェイスアップトレイ122によって形成される搬送路を通って、不図示の駆動源を備えたフェイスダウン排紙ローラ119と、フェイスダウン排紙ローラ119と圧接して従動する従動コロ125とによってプリンタ本体100Aの上部のフェイスダウン排紙トレイ117上へ排紙される。
【0021】
ところで、同図において、50は画像形成部100Bの下流、本実施の形態おいては、搬送ローラ111とレジストローラ112との間に設けられたシート材識別装置であり、このシート材識別装置50は、シート材Sに衝撃印加部材を衝突させ、衝撃印加部材の反跳運動に基づいてシートの種類を識別するように構成されたものである。また、80は、レーザプリンタ100の画像形成動作を制御する制御部であり、この制御部80は、このシート材識別装置50からのシート材識別信号に基づき、シート材Sに応じた搬送速度、定着温度等の条件で画像を形成するよう画像形成部100Bを制御するようにしている。
【0022】
図2は、このようなシート材識別装置50の構成を説明する図である。
【0023】
同図において、51は、電気エネルギーを機械エネルギーに、また機械エネルギーを電気エネルギーに変換可能な、電気−機械エネルギー変換の可逆性を有する素子としてのシート材識別用手段であるリニアモータであり、このリニアモータ51は、筐体52に固定された永久磁石53と、永久磁石53の周りに配されたコイル(ボイスコイル)54とを備えている。
【0024】
また、55は、コイル54の下端に取り付けられると共に、バネ55aにより上下方向に振動可能に保持されているダンパーであり、ダンパー55にはシート材Sに衝撃を加える衝撃印加部材56が下方に突出した状態で取り付けられている。
【0025】
また、61は衝撃印加部材56の衝撃力を確実にシート材Sに与えるためのシート材固定具、57はスイッチであり、このスイッチ57をb側に切り替えると、電源58からコイル54に電流が流れ、コイル54には磁力が発生するようになっている。なお、このシート材固定具61と、衝撃印加部材56とにより衝撃印加手段が構成される。そして、この磁力によりコイル54と固定された永久磁石53との間に反発力が発生し、これによりコイル54は下方に1回移動する。
【0026】
ここで、このようにコイル54が下方に1回移動すると、ダンパー55も移動し、この結果、ダンパー55に取り付けられた衝撃印加部材56が、シート材固定具61上にあるシート材Sに衝突する。そして、このようにシート材Sに衝突した後、衝撃印加部材56は、シート材Sとの衝撃−反発力により、コイル54及びダンパー55と一体に反跳運動する。
【0027】
なお、このスイッチ57は、通常は、a側に切り替わっており、この場合、コイル54に流れる電流は増幅器59を通ってシート材識別手段であるシート材識別部60に入力される。
【0028】
次に、このような構成のシート材識別装置50におけるシート材識別動作について図3に示すタイミングチャートを用いて説明する。
【0029】
ユーザーの要求により、レーザプリンタ100が画像形成動作を開始(ON)すると、給紙カセット108(図1参照)から給紙されたシート材Sは、搬送ローラ111によって回転停止中のレジストローラ112に搬送され、斜行補正及び先端位置合わせのために一時停止する。
【0030】
そして、このようにシート材Sが一時停止すると、衝撃印加と反跳運動検出とを切り替えるためのスイッチ57は、制御部80により、通常、図2に示すように反跳運動検出側の「a」接点と接続されているコモン接点「c」を、瞬時に、衝撃印加側の「b」接点に接続するよう切り替わる。なお、このスイッチ57は、またすぐに、元の「a」接点に接続するように切り替わる。
【0031】
ここで、コモン接点「c」が、瞬時に「b」接点に接続されると、この場合には、衝撃印加部材56をシート材Sに衝撃を加える方向に移動させるための駆動手段として作用するリニアモータ51において、コイル54は、衝撃の印加のための電源58に瞬間的に接続され、図3の(d)に示すようにコイル54には瞬時に電流(コイル電流)が流れる。これにより、コイル54には磁力が発生して永久磁石53との間に反発力が発生し、この反発力によりコイル54が下方に瞬時に移動し、これに伴ってダンパー55も瞬時に移動し、この結果、ダンパー55に取り付けられた衝撃印加部材56が、シート材固定具61上にあるシート材Sに衝突する。
【0032】
そして、このような衝撃印加工程により、シート材Sに衝突した後、衝撃印加部材56は、シート材Sとの衝撃−反発力により、コイル54及びダンパー55と一体に図3の(e)に示すように反跳運動を行う。なお、このような衝撃印加工程において、シート材Sに対して衝撃印加部材56による衝撃力を一定に安定的に加えることができるよう、シート材Sの無い状態で衝撃印加の動作を行い、衝撃印加部材56とシート材固定具61による反跳運動が一定となるように、電源電圧58をコントロールすることが好ましい。
【0033】
ここで、このように衝撃印加部材56が反跳運動すると、この反跳運動に伴い、この場合にはシート材Sに衝撃を加えた後の衝撃印加部材56の反跳運動の量に応じた大きさの電気信号を出力する信号出力手段として作用するリニアモータ51において、コイル54と永久磁石53とにより起電力が発生し、コイル54の両端には電圧が発生する。
【0034】
なお、この時、既にスイッチ57は、コモン接点「c」と「a」接点とを接続する状態に戻っているので、コイルに54の両端に発生した電圧は、増幅器106にて所望の大きさまで増幅され、この後、この増幅器106から電圧出力信号は、シート材識別部60に入力される。つまり、衝撃印加部材56がシート材Sに衝突した後、反跳運動すると、この反跳運動の量に応じた大きさの起電力(電圧)が発生し、この起電力が、図3の(f)に示すように電圧出力信号としてシート材識別部60に入力される。
【0035】
ここで、この反跳運動は、衝撃印加部材56によりシート材Sに加えられる衝撃力が一定であれば、シート材固定具61上にあるシート材Sの種類に依存する。即ち、この反跳運動時における衝撃印加部材56の上下方向の移動量(反跳運動量)は、シート材Sの種類に応じて変化する。
【0036】
次に、このような電気信号出力工程により、反跳運動の量に応じて発生した起電力が電圧出力信号として入力されると、シート材識別部60は、この電圧出力信号に基づいてシート材Sの種類を識別する。なお、このシート材識別部60は、シート材Sの種類を識別するため、予めシート材Sの種類に応じたデータを不図示のメモリーに記憶しておき、このデータと入力された電圧出力信号とを比較分析(解析)することにより、シート材Sの種類を識別することができる。
【0037】
そして、このような図3の(g)に示すシート材識別工程において、シート材Sの種類を識別した後、シート材識別部60から制御部80にシート材識別信号が出力されるようになっており、制御部80は、このシート材識別信号に応じ、図の(h)に示す画像形成モード期間において、シート材Sに応じた搬送速度や定着温度、インクの吐出量等を制御し、画像形成モードの最適化を図るようにしている。
【0038】
このように、衝撃印加機能と信号出力機能とを備えたリニアモータ51によりシート材Sに衝撃を加えると共に、シート材Sに衝撃を加えた後、反跳運動する衝撃印加部材56の反跳運動の量に応じた大きさの電気信号をシート材識別部60に出力することにより、シート材Sにマーキングを施すことなく、かつ簡単な構成でシート材Sの種類の識別を行うことができる。
【0039】
なお、本実施の形態においては、リニアモータ51を構成するコイル54(ボイスコイル)を一個としたが、衝撃力の印加のためのコイルと、発生した起電力を検出するコイルとの、二個のコイルを用いても良い。また、永久磁石53とコイル54を置き換えて、コイル54を固定し、永久磁石53を移動するようにしても良い。さらに、リニアモータ51を水平に設置する構成を説明したが、垂直に設置するようにしても良い。
【0040】
また、本実施の形態においては、リニアモータ51を設置する個所をレジストローラ112の下流としたが、給紙カセット108から転写部107Aの直前までであれば、これ以外の場所に設置しても良い。また、一連の識別動作はシート材Sが停止している間に行うものとしたが、シート材Sが搬送中(移動中)に行っても良い。
【0041】
さらに、衝撃印加工程は1回に限らず、複数回繰り返して行っても良く、またこのように衝撃印加工程を複数回行う場合には、衝撃印加部材56に与える電源電圧をコントロールすることによりシート材に加える衝撃の大きさを変化させて、強・弱等の複数回の衝撃印加を行い、それぞれの、反跳運動に応じた起電力を信号として得て、それらの信号に基づいてシート材Sの種類を識別しても良い。
【0042】
また、これまでの説明においては、シート材識別用手段としてリニアモータ51を用いた場合について述べてきたが、本発明はこれに限らず、電気−機械エネルギー変換の可逆性を有する素子で有れば、例えば圧電素子を用いても同様な効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施の形態に係るシート材識別装置を備えた画像形成装置の一例であるレーザビームプリンタの概略構成を示す図。
【図2】上記シート材識別装置の構成を説明する図。
【図3】上記シート材識別装置におけるシート材識別動作のタイミングを説明する図。
【図4】従来のシート材識別装置により識別されるマーキングが施されたシート材を示す図。
【符号の説明】
【0044】
50 シート材識別装置
51 リニアモータ
53 永久磁石
54 コイル(ボイスコイル)
55 ダンパー
56 衝撃印加部材
57 スイッチ
60 シート材識別部
80 制御部
100 レーザプリンタ
100A プリンタ本体
100B 画像形成部
107A 転写部
111 搬送ローラ
112 レジストローラ
S シート材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材に衝撃を加えると共に、前記シート材に衝撃を加えた後、反跳運動する衝撃印加手段と、前記衝撃印加手段を前記シート材に衝撃を加える方向に移動させるための駆動手段と、前記シート材に衝撃を加えた後の電気信号を出力する信号出力手段と、前記信号出力手段から出力された電気信号に基づき前記シート材の種類を識別するためのシート材識別手段と、を備えたシート材識別装置において、
前記衝撃印加手段は、衝撃印加部材を含み、該衝撃印加部材は下方に突出した状態でダンパーに取り付けられていることを特徴とするシート材識別装置。
【請求項2】
前記信号出力手段はコイルと永久磁石とを備えたリニアモータからなり、
前記衝撃印加部材の反跳運動に伴う前記コイル又は前記永久磁石の移動により起電力を発生することを特徴とする請求項1に記載のシート材識別装置。
【請求項3】
前記信号出力手段は前記駆動手段を兼ねることを特徴とする請求項1又は2に記載のシート材識別装置。
【請求項4】
画像形成部と、前記請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシート材識別装置を備え、前記画像形成部は、前記シート材識別装置により識別されたシート材の種類に応じた条件で画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
前記シート材識別装置を前記画像形成部の上流に配したことを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−268223(P2008−268223A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−136408(P2008−136408)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【分割の表示】特願2003−408274(P2003−408274)の分割
【原出願日】平成15年12月5日(2003.12.5)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】