説明

シート検出装置および印刷機

【課題】シートの正確な給紙状態を検出すること。
【解決手段】シートに当接しつつ該シートSの厚さに応じて変位する検出ローラ32と、検出ローラ32の変位に対応してシートの厚さを検知する検出手段33とを備えたシート検出装置において、無端状のベルト22を少なくとも2つのローラ21に掛け回しベルト22の循環によりシートを搬送する搬送手段20に対し、2つのローラ21の間でベルト22に沿う平坦部24aを設けると共に、平坦部24a上を搬送されるシートに当接する態様で検出ローラ32を配置する。このため、シートが平坦部24a上で安定して搬送され、この安定して搬送されるシートに応じて検出ローラ32が変位するので、シートの正確な給紙状態を検出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート検出装置および印刷機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、通常用途の紙の他、フィルム、アート紙やコート紙などのシートに印刷を施す枚葉印刷機では、シートを一枚ずつ繰り出して給紙する給紙部と、給紙・搬送されるシートに印刷を施す印刷部と、印刷が施されたシートを排紙する排紙部とを備えている。この枚葉印刷機では、給紙部と印刷部との間を通過するシートの供給状態を検出するシート検出装置が設けられている。
【0003】
従来、この種のシート検出装置は、シートを送るための送りローラと、この送りローラ上のシートに当接し該シートの厚さに応じて変位する検出ローラと、検出ローラの変位からシートの厚さに対応する変位を検知するセンサと、センサからの出力信号を入力することにより予め設定された判定基準値に基づいてシートが正常な供給状態にあるか(例えば、一枚ずつ送られているか)、あるいは異常な供給状態にあるか(例えば、重送されているか)を判断する制御回路とを備えている。このようなシート検出装置において、検出ローラは、ばねによって送りローラ側に常に押し付ける方向に付勢され、この付勢力によって送りローラとの間を通過するシートの厚みの変化に従って変位するように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特許第3924057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の印刷機は、給紙部では、ほぼ水平に積み上げて載置されたシートを上から繰り出して給紙し、印刷部では、その下方に設けた圧胴でシートを受け取って印刷を施す。このため、シートは、給紙部の上方から印刷部の下方に向けて斜め下向きに設けられた搬送路に沿って送られる。そして、シート検出装置は、ほぼ水平から斜めにシートの方向を変えるための搬送ローラを送りローラとして用いている。
【0006】
しかし、送りローラは、給紙部にてほぼ水平に積み上げて載置された状態から斜め下向きにシートの向きが変わる位置に配設されることから、送りローラと検出ローラとの間を通過するシートは、その送り方向先端側が斜め下方に向きながら、送り方向後端側がほぼ水平な状態から上方に跳ね上がる。このため、検出ローラがシートの厚み以上に移動してしまい、シートの正確な供給状態を検出することができない虞がある。
【0007】
本発明は上述した課題を解決するものであり、シートの正確な給紙状態を検出することのできるシート検出装置および印刷機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明のシート検出装置では、シートに当接しつつ該シートの厚さに応じて変位する検出ローラと、前記検出ローラの変位に対応してシートの厚さを検知する検出手段とを備えたシート検出装置において、無端状のベルトを少なくとも2つのローラに掛け回し前記ベルトの循環によりシートを搬送する搬送手段に対し、前記2つのローラの間で前記ベルトに沿う平坦部を設けると共に、前記平坦部上を搬送されるシートに当接する態様で前記検出ローラを配置したことを特徴とする。
【0009】
このシート検出装置は、シートが平坦部上で安定して搬送され、この安定して搬送されるシートに応じて検出ローラが変位するので、シートの正確な給紙状態を検出できる。
【0010】
また、本発明のシート検出装置では、一端部に前記検出ローラを回転可能に支持すると共に、前記平坦部に対して前記検出ローラが当接または離隔する態様で揺動可能に中央部が軸支された支持部材を有し、前記支持部材の他端部の変位を検知するように前記検出手段を配置したことを特徴とする。
【0011】
このシート検出装置は、検出ローラの変位に応じた可動部の他端部の変位量が比較的大きい位置で検出を行える。
【0012】
また、本発明のシート検出装置では、前記支持部材の軸支部分に対して前記検出手段を近接または離隔する態様で移動させる調整手段を備えたことを特徴とする。
【0013】
このシート検出装置は、例えば、比較的薄いシートの場合は、軸支部分に対して検出手段を離隔させることで、検出ローラの変位に応じて支持部材の他端部の変位量が大きい位置で薄いシートの変位を検出できる。一方、比較的厚いシートの場合は、軸支部分に対して検出手段を近接させることで、検出ローラの変位に応じて支持部材の他端部の変位量が小さい位置で厚いシートの変位を検出できる。このように、シートの厚さの異なりに対応して検出手段で検知する変位量を調整できる。
【0014】
また、本発明のシート検出装置では、前記検出ローラを回転可能に支持すると共に、前記平坦部に対して前記検出ローラが当接または離隔する態様で前記平坦部に直交する方向にスライド移動可能に案内された支持部材を有し、前記支持部材の変位を検知するように前記検出手段を配置したことを特徴とする。
【0015】
このシート検出装置は、案内手段により検出ローラが平坦部に直交する方向にスライド移動するため、検出ローラの変位量がそのままシートの厚さとして検出できる。
【0016】
また、本発明のシート検出装置では、前記検出ローラが前記平坦部に対して当接する方向に前記支持部材を付勢する付勢手段と、前記付勢手段の付勢力を調整する付勢力調整手段とを備えたことを特徴とする。
【0017】
このシート検出装置は、付勢力を調整することによりシートの厚さの異なりに応じた検出が行える。
【0018】
また、本発明のシート検出装置では、前記付勢力調整手段により調整された付勢力を維持する付勢力維持手段を備えたことを特徴とする。
【0019】
このシート検出装置は、調整した付勢力が変化しないように維持するので、シートの正確な給紙状態を検出できる。
【0020】
また、本発明のシート検出装置では、前記検出ローラを前記シートよりも硬質な材料で形成したことを特徴とする。
【0021】
例えば、検出ローラにゴムローラが適用されている場合、ゴムローラがシートに当接した際に変形することで、正確な変位が行えず、シートの正確な給紙状態を検出できない。これに対し、このシート検出装置は、検出ローラをシートよりも硬質な材料で形成すれば、シートに当接した際に変形がないので、正確な変位を行い、シートの正確な給紙状態を検出できる。
【0022】
上述の目的を達成するために、本発明の印刷機では、シートを供給する供給部と、版胴に巻着された刷版にインキを供給すると共に前記供給部から供給された前記シートに印刷を施す印刷部と、前記印刷部で印刷が施された前記シートを排出する排出部とを備えた印刷機において、請求項1〜7の何れか一つに記載のシート検出装置を、前記供給部と前記印刷部との間で前記シートを搬送する位置に配設したことを特徴とする。
【0023】
この印刷機は、シートの正確な給紙状態を検出でき、検出手段の配置により検出ローラの変位に応じて支持部材の他端部の変位量が比較的大きい位置で検出を行え、検出手段の位置を調整する調整手段によりシートの厚さの異なりに対応して検出手段で検知する変位量を調整でき、案内手段により検出ローラが平坦部に直交する方向にスライド移動するため、検出ローラの変位量がそのままシートの厚さとして検出でき、付勢力調整手段により付勢手段の付勢力を調整してシートが通過した際に検出ローラが変位する負荷を低減でき、付勢力維持手段により調整した付勢力が変化しないように維持でき、硬質な検出ローラにより正確な変位を行える。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、シートの正確な給紙状態を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、本発明に係るシート検出装置および印刷機の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0026】
図1は、本発明の実施例に係る印刷機の概略図である。本発明の実施例に係る印刷機は、図1に示すように、通常用途の紙の他、フィルム、アート紙やコート紙などのシートSに印刷を施す枚葉印刷機1であり、版胴9と、ブランケット胴10と、圧胴11とを備えた、いわゆるオフセット枚葉印刷機である。
【0027】
枚葉印刷機1は、印刷用のシートSを一枚ずつ繰り出して給紙する給紙部2と、進行方向Rに沿って搬送されるシートSに印刷を施す印刷部3と、印刷が施されたシートSを排紙する排紙部4を備える。
【0028】
給紙部2は、給紙台5と、給紙機構6とを備える。給紙台5は、シートSを積層して載置するものである。給紙機構6は、給紙台5の上に積層されたシートSを上から順に一枚ずつ取り上げて供給するものであり、図には明示しないセパレータ(紙吸)、カム、スインググリッパなどにより構成されている。なお、給紙台5は、給紙機構6がシートSと略一定の位置関係を保つようにシートSの供給に対応して鉛直方向上側に移動するように制御される。また、給紙部2には、後述する搬送手段20と、給紙台5からシートSを搬送手段20に受け渡す一対の給紙ローラ7とが配設されている。給紙ローラ7は、一方が回転駆動されてシートSを送り出すフィードローラを成し、他方がフィードローラとの間でシートSをくわえるくわえローラを成している。
【0029】
印刷部3は、異なる色を印刷してカラー印刷を実現する複数の印刷ユニット8を備える。印刷ユニット8は、印刷する色ごとにシートSの進行方向Rに沿って複数並んで設けられている。この枚葉印刷機1では、例えば、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)およびBL(ブラック)などの4つの異なる色に各々対応した4つの印刷ユニット8が並んで設けられている。
【0030】
各印刷ユニット8は、版胴9と、ブランケット胴10と、圧胴11とを備える。版胴9、ブランケット胴10および圧胴11は、円筒状に形成され、それぞれの中心軸線が水平で進行方向Rと交差して設けられている。また、版胴9、ブランケット胴10および圧胴11は、鉛直方向上側から下側にこの順で配置され、版胴9とブランケット胴10との外周面が相互に接し、かつブランケット胴10と圧胴11との外周面が相互に接するように設けられている。これら版胴9、ブランケット胴10および圧胴11は、それぞれの中心軸線を中心として回転可能に設けられている。
【0031】
版胴9は、その周面に印刷画像を形成するための刷版が装着される。各印刷ユニット8では、刷版の画線部にインキを供給するためのローラ群からなるインキ供給装置(図示せず)、および刷版の非画線部に湿し水を供給するための水ローラ群からなる湿し装置(図示せず)を版胴9の周囲に備える。ブランケット胴10は、その周面に弾性材料で形成されたブランケット(図示せず)が装着されている。このブランケットの外周面には、版胴9の画線部に供給されたインキが転写される。そして、ブランケット胴10は、刷版の印刷画像を絵柄としてシートSにインキを転写する。圧胴11は、ブランケット胴10と協働してシートSに所定の印圧をかける。なお、圧胴11は、版胴9およびブランケット胴10の直径の2倍の直径を有する、いわゆる倍胴であり、その周囲にシートSの先端を挟持する挟持機構(図示せず)が、圧胴11の中心軸線を基準としたほぼ対称位置の周面の2箇所に設けられている。
【0032】
各印刷ユニット8は、さらに中間胴12を備える。中間胴12は、版胴9、ブランケット胴10および圧胴11と同様に、円筒状に形成され、その中心軸線が水平で進行方向Rと交差して設けられていると共に、自身の中心軸線を中心として回転可能に設けられている。この中間胴12は、シートSの進行方向Rに対して圧胴11の上流側に配置され、圧胴11の外周面に接するように設けられている。また、中間胴12は、圧胴11と同様に、版胴9およびブランケット胴10の直径の2倍の直径を有する倍胴であり、その周囲にシートSの先端を挟持する挟持機構(図示せず)が、中間胴12の中心軸線を基準としたほぼ対称位置の周面の2箇所に設けられている。
【0033】
各印刷ユニット8では、中間胴12が、シートSの進行方向Rに対して上流側に隣接する印刷ユニット8の圧胴11と接するように配置されている。なお、本実施例では、図1に示すように、進行方向Rに対して最上流側に位置する印刷ユニット8だけは、倍胴サイズの中間胴12を紙搬送上流側に有しておらず、圧胴11が単胴タイプの中間胴を介して給紙部2から紙が搬送される構成を採用している。そして、給紙部2から供給されるシートSは、先ず、この最上流側に位置する印刷ユニット8のブランケット胴10と圧胴11との間に供給され、その後、下流側の印刷ユニット8の中間胴12から圧胴11へそれぞれの挟持機構にくわえ替えされることによって、各印刷ユニット8を通して搬送され、その途上において次々とインキが転写される。なお、圧胴11や中間胴12のタイプおよび配置は、これに限られるものではなく、適宜、要求される搬送経路設計に応じて変更できる。
【0034】
排紙部4は、印刷部3で印刷されたシートSを搬送し整列した状態で積み重ねるものである。排紙部4は、シートSを搬送するチェングリッパ13と、印刷されたシートSが積層される排紙台14と、排紙台14近傍で下降気流を形成するファン装置15と、紙当て16と、真空吸引車装置17と、後方紙揃え装置18と、幅方向紙揃え装置19とを備える。
【0035】
チェングリッパ13は、最下流側印刷ユニット8の圧胴11からシートSを受け取って排紙台14の上方位置の所定位置まで搬送するものである。このチェングリッパ13は、最下流側印刷ユニット8の圧胴11の隣接位置と排紙台14の上方位置との間を循環軌道で移動する無端状のエンドレスチェン131を対向配置し、各エンドレスチェン131の間に、くわえ棒、およびくわえ棒とでシートSを挟持・解放する爪部を有したグリッパ132を支持している。
【0036】
排紙台14は、チェーンに懸吊され、鉛直方向に移動可能に構成されている。排紙台14は、チェングリッパ13から排出されるシートSを積層して載置する。この排紙台14は、シートSが積み重ねられることによって最上段の上面部高さが上昇すると、シートSの落下距離が略一定となるように連続的、あるいは、段階的に徐々に鉛直方向下側に移動するように制御される。
【0037】
ファン装置15は、略矩形状に配置された複数のファンを有し、排紙台14の上方でチェングリッパ13から排出されるシートSを気流制御によって鉛直方向下方へ移動させる。真空吸引車装置17は、シートSの落下に際して進行速度を減少させると共に落下姿勢を制御するものである。真空吸引車装置17は、シートSの進行方向Rにおける上流側(後)の端部に吸引力を作用させてシートSを制動する。
【0038】
紙当て16、後方紙揃え装置18、幅方向紙揃え装置19は、チェングリッパ13の下方で、かつ排紙台14の上方の位置、すなわちチェングリッパ13と排紙台14との間に設けられている。紙当て16は、シートSの進行方向Rにおける下流側(前)位置を規制するものであり、シートSの幅方向に沿って複数個設けられている。後方紙揃え装置18は、シートSの進行方向Rにおける上流側(後)位置を規制するものであり、鉛直方向に延在する複数の板状体で構成され、それぞれ真空吸引車装置17に取り付けられている。幅方向紙揃え装置19は、シートSの幅方向の位置を揃えるものである。
【0039】
上述した構成の枚葉印刷機1では、給紙部2の給紙台5に積載されたシートSは、給紙機構6によって最上部から1枚ずつ取り出され、印刷部3の印刷ユニット8に供給される。印刷ユニット8に供給されたシートSは、各印刷ユニット8の圧胴11および中間胴12の挟持機構により順次くわえ替えされることによって、各印刷ユニット8を通して搬送され、その途上において次々とインキが転写される。各印刷ユニット8では、版胴9の周面に取付けられた刷版の非画線部に湿し装置から水が供給され、次いで刷版の画線部にインキ供給装置からインキが供給される。これにより得られる刷版上の印刷画像がブランケット胴10に転写される。ブランケット胴10に転写された印刷画像は、圧胴11によって運ばれるシートSに転写され、1色の印刷が行われる。これが各印刷ユニット8で繰り返されカラー印刷される。カラー印刷されたシートSは、最後(最下流側)の印刷ユニット8の圧胴11からチェングリッパ13のグリッパ132にくわえ替えされる。チェングリッパ13で搬送されるシートSは、排紙台14の上方でくわえを外されて落下し、排紙台14上に積み上げられる。このとき、未乾燥のインキが上側のシートSの裏に写るのを防止するため、チェングリッパ13で搬送される際にシートSの上にはあらかじめパウダが噴霧される。また、排紙台14上に積み上げられるシートSは、ファン装置15、真空吸引車装置17、紙当て16、後方紙揃え装置18および幅方向紙揃え装置19により整列されて排紙台14上で積層される。
【0040】
このように構成された本実施例の印刷機では、給紙部2から印刷部3にシートSを搬送する搬送手段20と、該搬送手段20で搬送されるシートSを検出するシート検出装置30とが設けられている。図2は、搬送手段の平面視概略図、図3は、シート検出装置の側面視概略図である。
【0041】
図1および図2に示すように、搬送手段20は、複数(少なくとも2つ)のローラ21に、無端状のベルト22を掛け回して構成されている。ローラ21は、その中心軸線が水平で進行方向Rと交差して設けられていると共に、自身の中心軸線を中心として回転可能に設けられている。ベルト22は、ローラ21の中心軸線の方向に所定間隔をおいて複数設けられている。そして、図示しない駆動機構によってローラ21を回転駆動することで、ベルト22が進行方向Rに沿って循環される。また、ローラ21に掛け回されたベルト22の内側には、吸引装置23が設けられている。さらに、複数のベルト22のうちの幾つか(本実施例では2つ)は、吸引装置23の吸引力をシートSに作用させるように孔22aが設けられている。すなわち、搬送手段20は、吸引装置23によりシートSをベルト22に吸着させつつ、ベルト22の循環により該シートSを搬送する。このような搬送手段20には、ローラ21の間であって、ローラ21に掛け回されたベルト22の内側にて該ベルト22に沿う平坦部24aをなす平板状の平坦部材24が配置されている。
【0042】
図2および図3に示すように、シート検出装置30は、上記搬送手段20に対して設けられ、主に、支持部材31と、検出ローラ32と、検出手段33と、制御回路40とを備えている。
【0043】
支持部材31は、固定部311および可動部312により構成されている。固定部311は、固定アーム313に対して固定されている。固定アーム313は、水平で進行方向Rと交差するように、搬送手段20の左右フレーム25に架設され搬送手段20の上方に配置された棒状部材である。すなわち、この固定アーム313に固定された固定部311は、搬送手段20の上方に配置されている。可動部312は、固定部311に対して回転軸34を介して取り付けられている。回転軸34は、その中心軸線が水平で進行方向Rと交差して設けられている。可動部312は、回転軸34に対し、自身の中央部が挿通され、回転軸34を中心に回転可能に軸支されている。
【0044】
検出ローラ32は、支持部材31の一端側となる可動部312の一端部に取り付けられている。この検出ローラ32は、その中心軸線が水平で進行方向Rと交差して設けられていると共に、自身の中心軸線を中心として回転可能に設けられている。また、検出ローラ32は、シートSよりも硬質の材料である、金属または合成樹脂によって形成されている。この検出ローラ32は、可動部312の回転により、搬送手段20における平坦部材24の平坦部24aに対して当接または離隔するように移動する。
【0045】
また、検出ローラ32は、付勢手段35により平坦部24aに当接するように付勢されている。付勢手段35は、支持部材31の固定部311に配設されている。付勢手段35は、圧縮バネから成り、回転軸34よりも固定部311の一端側に基端が取り付けられ、自由端が可動部312の一端側に当接していることで、可動部312を平坦部材24側に移動させる付勢力を生じる。これにより、検出ローラ32が、平坦部24aに当接するように付勢される。
【0046】
付勢手段35は、その付勢力が付勢力調整手段351によって調整され、かつ調整された付勢力が付勢力維持手段352によって維持される。付勢力調整手段351は、付勢手段35を成す圧縮バネの基端に当接するように固定部311に螺着されたねじ部材から成る。そして、このねじ部材を締めることにより、該ねじ部材が圧縮バネ側に移動して圧縮バネの基端を可動部312側に押し込み、これにより圧縮バネがねじ部材と可動部312との間で圧縮されて付勢力が増加する。一方、ねじ部材を緩めることにより、該ねじ部材が圧縮バネから離隔して圧縮バネの基端が可動部312から遠ざかり、これにより圧縮バネがねじ部材と可動部312との間で伸びて付勢力が減少する。また、付勢力維持手段352は、付勢力調整手段351を成すねじ部材に螺着されたナットから成る。ねじ部材は、圧縮バネに関わらない端部が固定部311から突出して設けられている。ナットは、このねじ部材の突出部分に螺着されている。そして、このナットを締めることにより、該ナットが固定部311に当接し、これによりねじ部材の回転を規制して圧縮バネの付勢力が変化しないように維持する。一方、ナットを緩めることにより、該ナットが固定部311から離れ、これによりねじ部材の回転を許容して圧縮バネの付勢力が変化できるようにする。
【0047】
検出手段33は、支持部材31の他端側となる固定部311の他端部に取り付けられている。検出手段33は、例えば、渦電流式変位センサ、レーザ式変位センサあるいは超音波式変位センサなどから成る。この検出手段33は、自身と可動部312の他端部との間の距離を検出することにより可動部312の他端部の変位、すなわち可動部312の一端部に設けた検出ローラ32の変位を検知する。
【0048】
検出手段33は、調整手段36によって固定部311に取り付けられる位置を移動可能に設けられている。調整手段36は、検出手段33から延出されたねじ部361と、該ねじ部361に螺着されるナット362と、固定部311の他端部において回転軸34に近接・離隔する方向に延在して設けられた長孔363とから成る。そして、ねじ部361を長孔363に挿通してナット362を締めることで検出手段33が固定部311に固定される。一方、ナット362を緩めることで検出手段33が長孔363に沿い回転軸34(軸支部分)に対して近接または離隔するように移動可能になる。
【0049】
なお、図2に示すように、上述した検出ローラ32、検出手段33などを配置した支持部材31は、シートSの幅方向の中央に対応して固定アーム313の中央部に少なくとも1つ配置されていればよいが、固定アーム313の延在方向に所定間隔で複数配置されていてもよい。
【0050】
制御回路40は、主に、検出手段33からの信号の扱いを切り換えるモード切換部42と、後述する設定モードで取り込んだデータを補正演算して決めた正常・異常の判定基準値としての正常判定値を記憶する判定値記憶部43と、後述する判定モードで検出手段33からのデータと判定値記憶部43の正常判定値とを比較演算して正常・異常を判定し、異常の際には外部へ異常信号を出力する演算部44と、補正演算やモード切り換え指示を行う上位コンピュータ45とを備えている。
【0051】
検出手段33の出力は、アナログアンプ46で増幅されコントローラ41のA/D変換器47でデジタル信号に変換される。そして、モード切換部42は、「設定モード」と、「判定モード」とに切り換える部分であると共に、A/D変換器47からのデジタル信号をデータ記憶部48に送る。また、モード切り換えは、上位コンピュータ45の指示により行われる。
【0052】
すなわち、「設定モード」の時は、正常・異常の判定基準である正常判定値を得るために、シートSが正常に供給されている状態において、基データとして検出手段33からのデータをデータ記憶部48に取り込み、このデータに上位コンピュータ45で誤差等の補正量を加味し、正常判定値として判定値記憶部43に送り込む。
【0053】
一方、「判定モード」の時は、検出手段33からのデータをデータ記憶部48に取り込み、該データを演算部44により判定値記憶部43の正常判定値と比較することで、シートSの供給状態を判定する。演算部44は、判定モードの際に正常・異常を判定し、その結果を外部に出力する。上位コンピュータ45は、モード切換部42の切り換え指令や、設定モード時に補正量を加味して正常判定値を作成し、判定値記憶部43に送る。なお、表示部49は、正常判定値や、判定中の現在値データを表示するものである。
【0054】
このようなシート検出装置は、枚葉印刷機1によって印刷するシートSが変わる毎、給紙部運転開始時に「設定モード」になるよう自動設定しておく。すると、シートSが変わる毎に、「設定モード」になり、シートSの供給関始後、しばらく検出ロ一ラ32の移動量を検出手段33で検出したデータとしてデータ記憶部48へ取り込む。この取り込んだデータは、上位コンピュータ45で誤差等の補正値を加味して、正常・異常の判定基準値としての正常判定値にして、判定値記憶部43へ送る。これにより、印刷するシートSの厚み、および大きさ(特に進行方向Rの長さ)により変わる重なり枚数に対応した値を正常判定直として自動設定することができる。
【0055】
例えば、図4に示すように、検出ローラ32と平坦部材24の平坦部24aとの間(C位置)を通過するシートSの一枚の厚さがt1であり、シートSの大きさがL1で小さ目である場合、初期には検出ローラ32の移動量がt1、t1×2、t1×3と変化し、その後t1×2、t1×3が繰り返され、この繰り返しで安定する。また、図5に示すように、シートSの厚さがt2であり、シートSの大きさがL2で大き目である場合は、初期にはt2、t2×2、t2×3、t2×4、t2×5と変化し、その後t2×4、t2×5が繰り返され、この繰り返しで安定する。
【0056】
上位コンピュータ45は、これらの安定した状熊の値を正常値の基データとし、この基データを補正したうえで正常値判定の基準値となる正常判定値として判定値記憶部43に記憶させる。また、上位コンピュータ45は、所定の適当な時間経過後、判定モードに切り換え、検出手段33からのデータと、判定値記憶部43の正常判定値とを演算部44で比較させ、正常・異常の判定をしながら運転する。そして、シートSが重送などによる枚数の過剰、またはシートSが供給されない不足による異常があれば、演算部44から外部へ信号(判定出力)を送り出す。また、表示部49には、正常判定値または判定中のデータの表示が行われる。
【0057】
このように構成されたシート検出装置30では、搬送手段20における無端状のベルト22に沿う平坦部24aを設け、この平坦部24a上を搬送されるシートSに当接するように検出ローラ32を配置してある。このため、シートSが平坦部24a上で安定して搬送され、この安定して搬送されるシートSに応じて検出ローラ32が変位するので、シートSの正確な給紙状態を検出できる。
【0058】
また、シート検出装置30は、支持部材31(可動部312)の一端部に検出ローラ32を配置すると共に、可動部312の中央部を回転軸で軸支し、この可動部312の他端部の変位を検知するように検出手段33を配置してある。このため、検出ローラ32の変位に応じて可動部312の他端部の変位量が比較的大きい位置で検出を行える。
【0059】
また、シート検出装置30は、支持部材31(固定部311)の軸支部分に対して検出手段33を近接または離隔するように移動させる調整手段36を備えている。このため、例えば、比較的薄いシートSの場合は、軸支部分に対して検出手段33を離隔させることで、検出ローラ32の変位に応じて可動部312の他端部の変位量が大きい位置で薄いシートSの変位を検出できる。一方、比較的厚いシートSの場合は、軸支部分に対して検出手段33を近接させることで、検出ローラ32の変位に応じて可動部312の他端部の変位量が小さい位置で厚いシートSの変位を検出できる。このように、シートSの厚さの異なりに対応して検出手段33で検知する変位量を調整できる。
【0060】
また、シート検出装置30は、検出ローラ32が平坦部24aに対して当接する方向に支持部材31(可動部312)を付勢する付勢手段35と、該付勢手段35の付勢力を調整する付勢力調整手段351とを備えている。このため、シートSの厚さの異なりに応じた検出が行える。なお、付勢力の調整としては、シートSをシート検出装置30の位置に通過させない状態で、検出ローラ32が平坦部24aに接触する接触圧がほぼ0となるように付勢力を調整することが好ましく、このように調整することでシートSが通過した際に検出ローラ32が変位する負荷を低減しつつ、シートSの正確な給紙状態を検出できる。
【0061】
また、シート検出装置30は、付勢力調整手段351により調整された付勢力を維持する付勢力維持手段352を備えている。このため、調整した付勢力が変化しないように維持するので、シートSの正確な給紙状態を検出できる。
【0062】
また、シート検出装置30は、検出ローラ32をシートSよりも硬質な材料で形成してある。例えば、一般的な検出ローラにはゴムローラが適用されているが、このゴムローラでは、シートSに当接した際に変形することで、正確な変位が行えず、シートSの正確な給紙状態を検出できない。これに対し、検出ローラ32をシートSよりも硬質な材料で形成すれば、シートSに当接した際に変形がないので、正確な変位を行い、シートSの正確な給紙状態を検出できる。
【0063】
また、シート検出装置30が適用された印刷機では、シートSの正確な給紙状態を検出でき、検出手段33の配置により検出ローラ32の変位に応じて可動部312の他端部の変位量が比較的大きい位置で検出を行え、検出手段33の位置を調整する調整手段36によりシートSの厚さの異なりに対応して検出手段33で検知する変位量を調整でき、付勢力調整手段351により付勢手段35の付勢力を調整してシートSが通過した際に検出ローラ32が変位する負荷を低減でき、付勢力維持手段352により調整した付勢力が変化しないように維持でき、硬質な検出ローラ32により正確な変位を行える。
【0064】
以下、シート検出装置の他の実施例について説明する。図6は、他の実施例のシート検出装置の側面視概略図、図7は、他の実施例のシート検出装置の正面視概略図である。なお、以下の実施例において、上述した実施例と同等部分には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0065】
図6および図7に示すように、他の実施例のシート検出装置30’は、上述した実施例のシート検出装置30に対し、支持部材31における可動部312の移動について異なる。具体的には、可動部312が、固定部311に対して案内手段としてのレール37を介して取り付けられている。レール37は、平坦部24aに直交する方向に延在されている。そして、可動部312は、平坦部24aに対して検出ローラ32が当接または離隔するように、レール37の延在方向にスライド移動可能に案内される。
【0066】
このように構成されたシート検出装置30’では、上述したシート検出装置30と同様に、シートSの正確な給紙状態を検出でき、付勢力調整手段351により付勢手段35の付勢力を調整してシートSが通過した際に検出ローラ32が変位する負荷を低減でき、付勢力維持手段352により調整した付勢力が変化しないように維持でき、硬質な検出ローラ32により正確な変位を行える。その上、レール37により検出ローラ32が平坦部24aに直交する方向にスライド移動するため、検出ローラ32の変位量がそのままシートSの厚さとして検出できる。
また、シート検出装置30’が適用された印刷機では、上述したシート検出装置30が適用された印刷機と同様に、シートSの正確な給紙状態を検出でき、付勢力調整手段351により付勢手段35の付勢力を調整してシートSが通過した際に検出ローラ32が変位する負荷を低減でき、付勢力維持手段352により調整した付勢力が変化しないように維持でき、硬質な検出ローラ32により正確な変位を行える。その上、レール37により検出ローラ32が平坦部24aに直交する方向にスライド移動するため、検出ローラ32の変位量がそのままシートSの厚さとして検出できる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上のように、本発明に係るシート検出装置および印刷機は、シートの正確な給紙状態を検出することに適している。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施例に係る印刷機の概略図である。
【図2】搬送手段の平面視概略図である。
【図3】シート検出装置の側面視概略図である。
【図4】シートの供給状態の説明図である。
【図5】シートの供給状態の説明図である。
【図6】他の実施例のシート検出装置の側面視概略図である。
【図7】他の実施例のシート検出装置の正面視概略図である。
【符号の説明】
【0069】
1 枚葉印刷機(印刷機)
2 給紙部
3 印刷部
5 給紙台
6 給紙機構
7 給紙ローラ
20 搬送手段
21 ローラ
22 ベルト
22a 孔
23 吸引装置
24 平坦部材
24a 平坦部
25 フレーム
30 シート検出装置
31 支持部材
311 固定部
312 可動部
313 固定アーム
32 検出ローラ
33 検出手段
34 回転軸
35 付勢手段
351 付勢力調整手段
352 付勢力維持手段
36 調整手段
361 ねじ部
362 ナット
363 長孔
37 レール(案内手段)
40 制御回路
R 進行方向
S シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに当接しつつ該シートの厚さに応じて変位する検出ローラと、前記検出ローラの変位に対応してシートの厚さを検知する検出手段とを備えたシート検出装置において、
無端状のベルトを少なくとも2つのローラに掛け回し前記ベルトの循環によりシートを搬送する搬送手段に対し、前記2つのローラの間で前記ベルトに沿う平坦部を設けると共に、前記平坦部上を搬送されるシートに当接する態様で前記検出ローラを配置したことを特徴とするシート検出装置。
【請求項2】
一端部に前記検出ローラを回転可能に支持すると共に、前記平坦部に対して前記検出ローラが当接または離隔する態様で揺動可能に中央部が軸支された支持部材を有し、前記支持部材の他端部の変位を検知するように前記検出手段を配置したことを特徴とする請求項1に記載のシート検出装置。
【請求項3】
前記支持部材の軸支部分に対して前記検出手段を近接または離隔する態様で移動させる調整手段を備えたことを特徴とする請求項2に記載のシート検出装置。
【請求項4】
前記検出ローラを回転可能に支持すると共に、前記平坦部に対して前記検出ローラが当接または離隔する態様で前記平坦部に直交する方向にスライド移動可能に案内された支持部材を有し、前記支持部材の変位を検知するように前記検出手段を配置したことを特徴とする請求項1に記載のシート検出装置。
【請求項5】
前記検出ローラが前記平坦部に対して当接する方向に前記支持部材を付勢する付勢手段と、
前記付勢手段の付勢力を調整する付勢力調整手段と
を備えたことを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載のシート検出装置。
【請求項6】
前記付勢力調整手段により調整された付勢力を維持する付勢力維持手段を備えたことを特徴とする請求項5に記載のシート検出装置。
【請求項7】
前記検出ローラを前記シートよりも硬質な材料で形成したことを特徴とする請求項1〜6の何れか一つに記載のシート検出装置。
【請求項8】
シートを供給する供給部と、版胴に巻着された刷版にインキを供給すると共に前記供給部から供給された前記シートに印刷を施す印刷部と、前記印刷部で印刷が施された前記シートを排出する排出部とを備えた印刷機において、
請求項1〜7の何れか一つに記載のシート検出装置を、前記供給部と前記印刷部との間で前記シートを搬送する位置に配設したことを特徴とする印刷機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−203001(P2009−203001A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−46695(P2008−46695)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】