説明

シート状化粧料

【課題】袋に包装された複数枚のシート状基材に容易に含浸させることができ、しかもシート状基材から垂れ落ちがなく、保湿効果の高い化粧料を用いたシート状化粧料を提供すること。
【解決手段】複数枚のシート状基材が袋に包装されたシート状化粧料であって、粘度が800〜1500mPa・s(20℃)の化粧料が上記複数枚のシート状基材に含浸されたシート状化粧料。上記化粧料は水溶性高分子の1種または2種以上を0.01〜1.0質量%含有するものが好ましく、上記シート状基材はコットンの不織布からなるものが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は袋に包装されたシート状化粧料に関する。詳しくは、シート状基材から垂れ落ちがなく、袋に包装された複数枚のシート状基材に容易に含浸させることができる保湿効果の高い化粧料を用いたシート状化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧料を不織布などのシート状基材に含浸し、顔全体もしくは目元、首筋の肌に密着させて使用するシート状化粧料において、一枚ずつ個別にアルミシートで包装したものある。近年は、シート状化粧料を毎日使用するユーザー向けに、複数枚をアルミシートで包装し、コストの低減や使用時の簡便性を向上させたものもある。しかしながら、化粧料としてシート状基材に含浸させやすいローションを用いたものは、貼付するとすぐに垂れ落ちてしまい十分な保湿効果が発揮されない。これを改善するために、カルボキシビニルポリマー等の水溶性高分子で増粘した化粧料や乳液を含浸させたものがある。ところが、これらのシート状化粧料は、一枚ずつの個別包装であれば問題はないが、複数枚をアルミシートに包装したものだと、増粘した化粧料をシート状基材全体に均一に含浸させることが難しい。
【0003】
上述したシート状化粧料の技術としては、例えば、カルボキシビニルポリマーなどの水溶性高分子と多価アルコールを含浸させたシート状化粧料の技術(特許文献1参照)や、乳液を含浸させたシート状化粧料の技術(特許文献2参照)、複数枚の折り畳んだシート状基材に化粧水や洗浄剤等の化粧料を含浸させたシート状化粧料の技術(特許文献3参照)などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−279429号公報
【特許文献2】特開2003−342125号公報
【特許文献3】特開2000−256117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、シート状化粧料を顔などから剥がした後にぬるつきを感じる傾向があり、特許文献2の技術では、シート状化粧料を顔などから剥がした後にべた付きを感じ、使用した部分が不自然なテカリを生じる。特許文献3の技術は、複数枚入ったシート状基材の取り出し易さに関する技術であり、保湿効果に関する技術的な思想はなかった。
【0006】
上記の状況に鑑み、本発明は、袋に包装された複数枚のシート状基材に容易に含浸させることができ、しかもシート状基材から垂れ落ちがなく、保湿効果の高い化粧料を用いたシート状化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の粘度を有する化粧料を複数枚のシート状基材に含浸させたシート状化粧料が上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明のシート状化粧料は、複数枚のシート状基材が袋に包装されたシート状
化粧料であって、粘度が800〜1500mPa・s(20℃)の化粧料が上記複数枚のシート状基材に含浸されていることを特徴とするものである。そして、上記化粧料は水溶性高分子の1種または2種以上を0.01〜1.0質量%含有するものが好ましい。また、上記シート状基材はコットンの不織布からなるものが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のシート状化粧料は、複数枚のシート状基材が袋に包装されたものであっても、化粧料を容易に含浸させることができ、しかもシート状基材から垂れ落ちがなく、保湿効果の高い化粧料を用いたシート状化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のシート状化粧料で用いる化粧料は、例えばブルックフィールド型粘度計を用い、20℃での粘度800〜1500mPa・sの化粧料である。800mPa・s未満ではシート状化粧料の使用時に液が垂れ落ちてくるため好ましくない。また、1500mPa・sを超えると化粧料が複数枚のシート状基材に均一に含浸せず、シート状基材全体に化粧料を含浸させるのに時間がかかったり、シート状基材に含浸されなかった化粧料が袋から溢れ出て包装できなくなるため好ましくない。
【0011】
本発明のシート状化粧料で用いる上記化粧料には水溶性高分子を1種または2種以上を配合することが好ましい。この水溶性高分子としては、化粧品用として一般に使用されているものであれば、天然水溶性高分子、半合成水溶性高分子及び合成水溶性高分子のうち、いずれを用いてもよい。
【0012】
天然水溶性高分子としては、例えばキサンタンガム、カラギナン、グアーガム、ローカストビーンガム、クインズシード、ヒアルロン酸、コラーゲン等が挙げられる。これらの中でも使用性等の点でカラギナン、キサンタンガムが好ましい。
【0013】
半合成水溶性高分子としては、例えばメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースまたはその塩、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系高分子や、可溶性デンプン、カルボキシメチルデンブン、メチルデンプン等のデンプン系高分子や、アルギン酸塩等のアルギン酸系高分子等が挙げられる。これらの中でも使用性等の点でアルギン酸塩、メチルセルロースが好ましい。
【0014】
合成水溶性高分子としては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボマー、ポリアクリル酸ナトリウム等が挙げられる。これらの中でも使用性の点でカルボマーが好ましい。
【0015】
上記水溶性高分子は単独で用いても良く、あるいは2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0016】
本発明のシート状化粧料で用いる水溶性高分子の配合量は、シート状基材に含浸させる化粧料に対して0.01〜1質量%の範囲にあることが好ましく、さらに好ましくは0.05〜0.5質量%の範囲である。1質量%以上であると、使用時にべた付きが強くなるため好ましくない。また、0.01質量%未満では、充分な保湿効果を得ることができない。
【0017】
シート状基材に含浸させる化粧料組成物中には、上記成分の他、一般に化粧料に適用される各種の原料や成分を、本発明の効果を損ねない範囲で適宜配合することができる。このような原料・成分としては、多価アルコール、水、界面活性剤、紫外線吸収剤、香料、防
腐剤、殺菌剤、酸化防止剤、キレート剤、薬剤、植物エキス、色素等が挙げられる。
【0018】
化粧料を含浸するシート状基材としては、織布、不織布、不織布積層体、多孔性シート等のものが使用できるが、含浸性、使用感等で不織布が好ましい。
【0019】
化粧料を含浸するシート状基材の材質としては、コットン、パルプ、麻、絹、羊毛、レーヨン、ポリエステル、ポリオレフイン等を必要に応じて単独若しくは混合して使用できる。高い保湿効果を得るためには、特にコットン単独で用いるのが好ましい。
【0020】
化粧料を含浸するシート状基材の目付けは30〜120g/mが好ましい。シート状基材の形状、大きさは特に限定されない。
【0021】
シート状基材に含浸させる化粧料の含浸量は、シート状基材1cmあたり0.02〜0.08gが好ましい。
【0022】
化粧料を含浸するシート状基材の枚数としては、特に限定されるものではないが、5枚から30枚が好ましい。5枚以下では、使用時の簡便性が1枚入りの場合とほとんど変わらず、30枚以上であると、開封後の保存期間が長くなるため、含浸させた化粧料が保存中に蒸発してしまう恐れがある。
【0023】
本発明のシート状化粧料は、所定の大きさに折り畳んだ状態のシート状基材を複数枚積層して袋(包装具)に収納して使用する。包装具には、シート状基材を一枚ずつ取り出せるように取り出し口を設け、この取り出し口の蓋部分は、気密性フィルムなどによって包装具の表面を被覆し、シート状基材に含浸させた化粧料の蒸発を防止する。
【実施例】
【0024】
以下、実施例をもって本発明をさらに詳しく説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例を含め、本発明の全説明において、配合割合は全て質量%である。
【0025】
(化粧料の製法)
精製水に各成分を室温にて溶解して調製する。
【0026】
《実施例1〜4、比較例1〜2》
(官能評価)
表1に示す配合成分で常法により化粧料を調製し、不織布(5×5cm、コットン100%、目付け50g/m)に1.0gを含浸させた実施例1〜4、比較例1〜2のシート状化粧料を作製した。この6種類のシート状化粧料を、熟練したパネラー20名がそれぞれ使用し、使用感(不織布からの液の垂れ落ち及びべたつきの無さ及び肌のしっとり感)の3項目について官能評価を実施し、表1に示す結果を得た。なお、評価基準は下記に示す。
【0027】
20名中「良い」と答えた人数 評 価
15人以上 ◎
10〜14人 ○
5〜9人 △
0〜4人 ×
【0028】
(保湿効果)
表1に示す配合成分で常法により化粧料を調製し、不織布(5×5cm、コットン100
%、目付け50g/m)に1.0gを含浸させた実施例1〜4、比較例1〜2のシート状化粧料を作製した。この6種類のシート状化粧料を10分間顔面に塗布し、使用1時間後の皮膚水分量をコルネオメーター(CORNEOMETER CM825:CK社製)で測定して保湿効果を評価し、表1に示す結果を得た。なお、評価基準は下記に示す。
【0029】
数値 評 価
60以上 ○
50〜60 △
50未満 ×
【0030】
(不織布への化粧料の含浸)
表1に示す配合成分で常法により調製した実施例1〜4、比較例1〜2の化粧料5.0gを、5枚重ねた不織布(5×5cm、コットン100%、目付け50g/m)に滴下したとき、5枚目まで完全に含浸するのに要する時間を測定して含浸性を評価し、表1に示す結果を得た。なお、評価基準は下記に示す。
【0031】
完全に含浸するのに要する時間 評 価
30秒以内 ◎
30秒〜1分 ○
1分〜3分 △
3分以上 ×
【0032】
(水分蒸散量)
表1に示す配合成分で常法により調製した実施例1〜4、比較例1〜2の化粧料1.0gを、不織布(5×5cm、コットン100%、目付け50g/m)に含浸させ、それぞれアルミ積層フィルムの袋に包装し、45℃の恒温槽に3ヶ月間静置した、各サンプルの質量変化(質量減少率)を調べて水分蒸散量を評価し、表1に示す結果を得た。なお、評価基準は下記に示す。
【0033】
質量減少率 評 価
0.02%未満 ○
0.02〜0.05% △
0.05%以上 ×
【0034】
【表1】

【0035】
《実施例5》
精製水 69.87
ジプロピレングリコール 10.0
1.3ブチレングリコール 5.0
グリセリン 5.0
ポリオキシエチレンメチルグリコシド 1.0
水溶性コラーゲン 0.5
(プロモイスW−52M、(株)成和化成社製)
ヒアルロン酸ナトリウム 0.5
海藻エキス 1.0
(混合海藻抽出液C、香栄興業(株)社製)
海水 5.0
(深層水原水(BG)、五州薬品(株)社製)
セラミド2 1.0
(リキッドクリスタセラミド2、高砂香料(株)社製)
カルボキシビニルポリマー 0.1
キサンタンガム 0.05
ポリアクリル酸ナトリウム 0.05
水酸化カリウム 0.03
PEG−60水添ヒマシ油 0.1
ポリソルベート20 0.1
クエン酸 0.05
EDTA−2Na 0.05
フェノキシエタノール 0.5
メチルパラベン 0.1
香料 適 量
【0036】
実施例5の配合成分で常法により調製した化粧料60gを不織布(コットン100%、目付け50g/m、面積300cm、5枚入り)に含浸させたシート化粧料は、垂れ落ちがなく、保湿効果に優れたものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のシート状基材が袋に包装されたシート状化粧料であって、粘度が800〜1500mPa・s(20℃)の化粧料が上記複数枚のシート状基材に含浸されていることを特徴とするシート状化粧料。
【請求項2】
化粧料が水溶性高分子の1種または2種以上を0.01〜1.0質量%含有するものである請求項1に記載のシート状化粧料。
【請求項3】
シート状基材がコットンの不織布からなる請求項1または請求項2に記載のシート状化粧料。

【公開番号】特開2011−126846(P2011−126846A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289383(P2009−289383)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(306018365)クラシエホームプロダクツ株式会社 (188)
【Fターム(参考)】