説明

シート用クッションパッドの製造方法

【課題】ポリウレタンスラブやシートカバーなどの表層材をパッド本体の両面に接着してなるシート用クッションパッドにおいて、揮発性有機化合物(VOC)の放散が極力低減されたものを製造する。
【解決手段】発泡成形されたパッド本体(2)の表面に表層材(3)を貼り付けてなるシート用クッションパッド(1)の製造方法であって、パッド本体(2)の表面と表層材(3)の裏面の少なくとも一方に、有機溶剤として酢酸エチルを使用したクロロプレンゴム系接着剤(4)を塗布して、パッド本体(2)と表層材(3)を接着剤(4)を介して貼り合わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として自動車等の車両のシート用クッションパッド、特にパッド本体の表面に表層材を接着してなるシート用クッションパッドの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車等の車両のシート用クッションパッドには、軟質のポリウレタンフォームなどの発泡樹脂成形体が用いられている。かかるクッションパッドにおいては、座り心地や着座感の改善等のために、軟質ポリウレタンフォームの発泡成形体からなるパッド本体の表面に、更にソフトなポリウレタンスラブを接着剤で貼り付ける場合がある。また、パッド表面のシートカバーを接着する場合もある(下記特許文献1参照)。これらのポリウレタンスラブやシートカバーなどの表層材をパッド本体の表面に接着するための接着剤としては、従来、溶剤の主成分をトルエンとしたクロロプレンゴム系接着剤が使用されている。
【特許文献1】特開2003−116672号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレンなどの揮発性有機化合物(VOC)は、シックハウス症候群や化学物質過敏症を引き起こす原因になることから、住宅分野においては室内に使用される各種資材にはこれらの化合物を極力放散しないことが要求されており、自動車分野においてもVOC対策が必要になってきている。
【0004】
このような状況下、ポリウレタンスラブやシートカバーなどの表層材をパッド本体の両面に接着してなるシート用クッションパッドにおいて、揮発性有機化合物(VOC)の放散が極力低減されたものを製造することができる、シート用クッションパッドの製造方法を提供することが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るシート用クッションパッドの製造方法は、発泡成形されたパッド本体の表面に表層材を貼り付けてなるシート用クッションパッドの製造方法であって、前記パッド本体の表面と前記表層材の裏面の少なくとも一方に、酢酸エチルを溶剤の主成分としたクロロプレンゴム系接着剤を塗布して、前記パッド本体と前記表層材を前記接着剤を介して貼り合わせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、クロロプレンゴム系接着剤における有機溶剤の主成分をトルエンから酢酸エチルに変更し、かかる接着剤を用いてパッド本体の表面に表層材を貼り合わせるようにしたので、揮発性有機化合物(VOC)の放散を極力低減したシート用クッションパッドを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0008】
図1は、本発明の実施形態における製造対象のクッションパッドの斜視図であり、図2は、同実施形態の製造工程を示す図である。
【0009】
この実施形態の製造対象のシート用クッションパッド(1)は、自動車等の座席のシートに用いられるクッションパッドであり、軟質ポリウレタンフォームの発泡成形体であるパッド本体(2)と、その着座面となる表面の一部に貼り付けられたパッド本体(2)よりもソフトなポリウレタンスラブからなる表層材(3)とを備えてなる。パッド本体(2)は、より詳細には、幅方向中央部のメイン部(21)と、その両側において上方に隆起したサイド部(22)(22)とからなり、上記メイン部(21)の表面に薄板状の表層材(3)が接合一体化されている。なお、符号(23)は、パッド本体(2)の表面に設けられたシートカバー吊り込み用の溝である。
【0010】
表層材(3)の貼り付け位置は、図1に示すようなメイン部(21)だけでなく、サイド部(22)の表面に接合してもよい。また、本発明においてパッド本体に接着する表層材としては、図1に示すような略板状やシート状をなすポリウレタンスラブには限られず、パッド本体(2)の表面全体を覆う不織布や織編物、皮革等のシートカバーであってもよい。
【0011】
このクッションパッド(1)を製造する際には、まず、パッド本体(2)を、不図示の発泡成形型を用いたポリウレタンフォームの発泡成形により所定形状に作製する。また、ポリウレタンスラブからの切り出しにより所定形状の表層材(3)を用意する。そして、パッド本体(2)の表面と表層材(3)の裏面の少なくとも一方に、クロロプレンゴム系接着剤を塗布して、パッド本体(2)と表層材(3)を接着剤を介して貼り合わせる。
【0012】
ここで、本発明で使用する接着剤としては、溶剤の主成分が酢酸エチルである有機溶剤系のクロロプレンゴム系接着剤を使用する。ここで、酢酸エチルは、溶剤全体に占める割合として25重量%以上であることが好ましく、より好ましくは25〜40重量%である。該接着剤において、溶剤としては、酢酸エチルの他に、n−ヘキサンやメチルシクロヘキサン、アセトンなどの他の有機溶剤を含有してもよいが、トルエンは含有しないことが好ましい。また、接着剤成分としては、クロロプレンゴムを含有しており、更に、接着性を改良するためにフェノール樹脂やロジンエステル、石油樹脂などを含有してもよい。フェノール樹脂を含有させる場合、その原料であるホルムアルデヒドが含まれている場合が多いが、かかるホルムアルデヒドの含有量の少ないフェノール樹脂を用いて、また製造工程においてホルムアルデヒドを除去した接着剤を用いることが好ましい。このようなクロロプレンゴム系接着剤として、アイカ工業製「RQ−752」が挙げられ、その使用が推奨される。
【0013】
パッド本体(2)に表層材(3)を貼り合わせる工程の具体例としては図2に示す通りである。この例では、図2(a)に示すように、パッド本体(2)の表面の所定の一部、即ち接着すべきメイン部(21)の表面に、上記接着剤(4)をスプレー(5)で塗布する。また、図2(b)に示すように、表層材(3)の裏面に、上記接着剤(4)をロールコーター(6)で塗布する。このようにしてパッド本体(2)と表層材(3)の双方に接着剤を塗布した後、両者を貼り合わせ、更に、図2(c)に示すように、接着用のプレス機(7)を用いて、その下型(71)と上型(72)との間でパッド本体(2)と表層材(3)とを圧着する。これにより、パッド本体(2)と表層材(3)との接着がなされる。
【0014】
なお、図2に示す接着工程は一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、パッド本体(2)と表層材(3)のいずれか一方のみに接着剤を塗布するようにしてもよい。また、塗布方法としても、スプレーやロールコーターによる代わりに、刷毛などを用いて塗布することもできる。
【実施例】
【0015】
上記した図1に示すポリウレタンフォームからなるパッド本体(2)の表面に、図2(a)に示すようにスプレー(5)により接着剤を不揮発分で10g/m塗布した。また、ポリウレタンスラブからなる表層材(3)の裏面に、図2(b)に示すようにロールコーター(6)により接着剤を不揮発分で5g/m塗布した。そして、塗布してから2分後に両者を貼り合わせ、図2(c)に示すプレス機(7)を用いて両者を圧着させ、これによりパッド本体(2)の表面に表層材(3)が接合されたシート用クッションパッド(1)を作製した。
【0016】
上記接着剤としては、実施例では、アイカ工業製「RQ−752」(溶剤主成分が酢酸エチルであり、接着剤成分がクロロプレンゴム/フェノール樹脂であるクロロプレンゴム系接着剤。不揮発分:15重量%、粘度(25℃):240mPa・s)を用い、比較例では、アロンエバーグリップ製「1502」(溶剤主成分がトルエンであり、接着剤成分がクロロプレンゴム/合成樹脂であるクロロプレンゴム系接着剤。不揮発分:16〜18重量%、粘度(25℃):300〜350mPa・s)を用いた。
【0017】
得られた実施例と比較例のクッションパッドについて、ホルムアルデヒドとトルエンの放散量を測定した。測定は、各クッションパッドの表層材が接合された箇所から、縦100mm×横80mm×厚み70mmのサンプルを切り出し、このサンプルをサンプリングバッグ内に封入して、サンプリングバッグを65℃で2時間加熱し、専用の捕集管(Waters社製「DNPHカートリッジ」)に揮発成分を捕集し、高速液体クロマトグラフィ(島津製作所社製)にて分析することで、ホルムアルデヒドとトルエンの放散量を測定した。そして、ホルムアルデヒドについては、検出量が0.5μg以下の場合を「○」、0.5μgを越える場合を「×」と評価した。また、トルエンについては、検出量が3.0μg以下の場合を「○」、3.0μgを越える場合を「×」と評価した。結果を表1に示す。
【表1】

【0018】
表1に示すように、溶剤の主成分をトルエンから酢酸エチルに変更したクロロプレンゴム系接着剤を用いた実施例では、トルエンとホルムアルデヒドの放散量が低減しており、揮発性有機化合物(VOC)の放散を低減したシート用クッションパッドが得られた。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態における製造対象のシート用クッションパッドの斜視図である。
【図2】同実施形態の製造工程を示す図であり、(a)はパッド本体への塗布工程、(b)は表層材への塗布工程、(c)はパッド本体と表層材の圧着工程を示す。
【符号の説明】
【0020】
1…シート用クッションパッド
2…パッド本体
3…表層材
4…接着剤
5…スプレー
6…ロールコーター
7…接着用のプレス機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡成形されたパッド本体の表面に表層材を貼り付けてなるシート用クッションパッドの製造方法であって、前記パッド本体の表面と前記表層材の裏面の少なくとも一方に、酢酸エチルを溶剤の主成分としたクロロプレンゴム系接着剤を塗布して、前記パッド本体と前記表層材を前記接着剤を介して貼り合わせることを特徴とするシート用クッションパッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−95101(P2006−95101A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−285210(P2004−285210)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】