説明

シート表面の温調装置

【課題】車室内のシートに乗員が座った際に不快に感じることを防止でき、車室内を快適な状態に保つことができるシート表面の温調装置を得る。
【解決手段】可動式シート5の姿勢を変更するスライド位置制御部9および傾き制御部10と、これらの制御部9、10を制御する制御回路11と、日射を検出する日射センサ12と、シート5の表面温度の代用温度を検出する温度センサ13とを備えた。これにより、日射センサ12で日射を検出するとともに、温度センサ13でシート5の表面温度の代用温度を検出し、これらのセンサ12,13からの検出信号に基づいて制御回路11から制御指令を出力し、制御部9,10でシート5への日射量が多くなるようにシート5の姿勢を変更することによって、冬季などに日射によりシート表面を温めて温度調節を行なうことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内のシート表面の温度調節を行なうシート表面の温調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両を炎天下で駐車した場合、車室前部の前面窓を介して車室内に日射され、シート表面の温度が上昇して高温となるので、車室に乗員が乗り込んでシートに座ったときシート表面の熱で不快に感じるという問題があった。そこで従来、例えば夏季などに車室内への日射量(すなわち単位面積あたりの日射強度)が多い場合には、シートの背もたれ部を車両前方へ倒すことにより、上記の日射を遮ってシート表面に日射が当たらないようにしたものが提案されている。
【特許文献1】特開2002−67755号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した特許文献1に開示される技術では、夏季などに車室内のシート表面が高温にならないように温度調節を行なうことができるが、逆に冬季などの気温が低くシート表面が冷えた場合、シート表面を温めることができないため、車室内のシートに乗員が座った際に不快に感じるという問題があった。
【0004】
そこで、本発明は、車室内のシートに乗員が座った際に不快に感じることを防止でき、車室内を快適な状態に保つことのできるシート表面の温調装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1にかかる発明にあっては、可動式シート(5)の姿勢を変更するシート姿勢変更機構(9,10)と、上記シート姿勢変更機構(9,10)を制御する制御回路(11)と、上記シート(5)の表面温度かまたはその代用温度を検出する温度センサ(13)と、日射を検出する日射センサ(12)と、を備え、上記シート姿勢変更機構(9,10)は、日射センサ(12)および上記温度センサ(13)からの検出信号に基づいて、上記シート(5)表面への日射量が多くなるように上記シート(5)の姿勢を変更することを特徴とする。
【0006】
請求項2にかかる発明にあっては、請求項1にかかる発明において、上記シート姿勢変更機構(9,10)は、上記シート(5)表面への日射量が多くなるように上記シート(5)の背もたれ部(5b)を後傾させることを特徴とする。
【0007】
請求項3にかかる発明にあっては、請求項1または2にかかる発明において、上記シート姿勢変更機構(9,10)は、上記シート(5)表面への日射量が少なくなるように上記シート(5)の姿勢を変更可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1にかかる発明によれば、温度センサにより可動式シートの表面温度かまたはその代用温度を検出するとともに、日射センサで日射を検出し、これらの日射センサおよび温度センサからの検出信号に基づいて制御回路から制御指令を出力し、シート姿勢変更機構でシート表面への日射量が多くなるようにシートの姿勢を変更する。これによって、冬季などにシート表面が冷えた場合、日射によりシート表面を温めて温度調節を行なうことができるので、車室内のシートに乗員が座った際に不快に感じることを防止でき、車室内を快適な状態に保つことができる。
【0009】
請求項2にかかる発明によれば、冬季などに日射センサおよび温度センサからの検出信号に基づいてシートの背もたれ部を後傾することにより、日射量が多くなるようにシートの姿勢を変更することができる。
【0010】
請求項3にかかる発明によれば、日射センサおよび温度センサからの検出信号に基づいてシート表面への日射量が少なくなるようにシートの姿勢を変更することにより、夏季などにシート表面が高温にならないように温度調節を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかるシート表面の温調装置を示す説明図、図2は、乗車時と降車時におけるシート姿勢およびステアリング姿勢を示す説明図、図3は、日射量が少なくなるようにシート姿勢およびステアリング姿勢を変更した状態を示す説明図、図4は、本実施形態の温調装置によりシートおよびステアリングの各表面の温度調節を行なう際の処理手順を示すフローチャートである。なお、図1〜図3では説明を分かりやすくするため車両のドアなどを省いてある。
【0012】
図1〜図3に示すように、車両1に形成される車室2の前部には、インストルメントパネル3が備えられ、このインストルメントパネル3に、車両1を操縦するステアリング4が装着され、車室2内に、前部の可動式シート5および後部シート6が設けられている。
【0013】
そして、図1に示すように、本実施形態の温調装置7は、ステアリング4の姿勢を制御するステアリング制御部8と、シート5の着座部5aの前後スライド位置を制御するスライド位置制御部9と、シート5の背もたれ部5bの傾きを制御する傾き制御部10と、これらの制御部8〜10へ制御指令を出力する制御回路11と、から構成されており、上記のスライド位置制御部9および傾き制御部10により、可動式シート5の姿勢を変更するシート姿勢変更機構が構成されている。なお、図2に示すように、乗車時および降車時には、ステアリング4がシート5に座った乗員に対向する状態であり、シート5の着座部5aの前端がステアリング4の下方に位置するとともに、背もたれ部5bがほぼ直立している。
【0014】
また、制御回路11には、日射を検出する日射センサ12、温度センサ13、外気温センサ14、およびドアロック検出センサ15から各検出信号が入力される。上記の温度センサ13は、例えば車室2内の温度を検出するようになっており、この車室2内の温度は、シート5の表面温度の代用温度(すなわちシート5表面温度との相関性を有し、シート5表面の温度変化(上昇/下降)に伴って同様に変化(上昇/下降)する温度)である。
【0015】
この実施形態にあっては、図4に示す処理手順にしたがって、車室2内のステアリング4およびシート5の各表面の温度調節を行なうようになっている。すなわち、車両1のドアを電子キー(図示せず)でロックすると、ステップ1としてドアロック検出センサ15からドアロック検出信号を制御回路11へ送信し、ステップS2として日射されていることを日射センサ12が検出して日射検出信号を制御回路11へ送信する。次いで、ステップS3として車室2内の温度を温度センサ13により検出して、この温度センサ13からの温度信号に基づいて車室2内の温度が所定の下限温度、例えば10°C以下であるか否かを判定し、車室2内の温度が上記の下限温度以下である場合には、ステップS4として制御回路11より制御指令を出力して、図1に示すように、ステアリング制御部8の作動でステアリング4表面への日射量が多くなるようにステアリング4を上向きにするとともに、スライド位置制御部9の作動でシート5の車両1の前側にスライドするとともに傾き制御部10の作動で背もたれ部5bを後傾させることにより、シート5表面への日射量が多くなるようにシート5の姿勢を変更する。
【0016】
その後、ステップS5として車室2の温度センサ13からの温度信号に基づいて車室2内の温度が、上記の下限温度より高い所定温度以上であるか否かを判定し、車室2内の温度が上記の所定温度より低い場合、ステップS6としてドアロック検出センサ15からドアロック解除信号が制御回路11へ送信されたとき、ステップS7として制御回路11より制御指令を出力して、ステアリング制御部8の作動でステアリング4の姿勢を図2に示す当初の状態に戻すとともに、スライド位置制御部9および傾き制御部10の作動でシート5の姿勢を図2に示す当初の状態に戻す。一方、ステップS5にて車室2内の温度が上記の所定温度以上である場合、ステップS7へ進んでステアリング4およびシート5の姿勢をそれぞれ図2に示す当初の状態に戻す。また、ステップS6にてドアロック検出センサ15からドアロック解除信号が送信されないとき、ステップS4に戻ってステアリング4およびシート5への日射量が少ない状態を維持する。
【0017】
また、ステップS3にて車室2内の温度が所定の下限温度より高い場合には、ステップS8として車室2内の温度が所定の上限温度、例えば45°C以上であるか否かを判定し、車室2内の温度が上記の上限温度以上である場合、ステップS9として制御回路11より制御指令を出力して、図3に示すように、ステアリング制御部8の作動でステアリング4表面への日射量が少なくなるようにステアリング4を下向きにし、同時に、スライド位置制御部9の作動でシート5の車両1の後側にスライドするとともに傾き制御部10の作動で背もたれ部5bを前傾させて折りたたむことにより、シート5表面への日射量が少なくなるようにシート5の姿勢を変更する。
【0018】
その後、ステップS10として車室2の温度センサ13からの温度信号に基づいて車室2内の温度が上記の上限温度より低い所定温度以下であるか否かを判定し、車室2内の温度が上記の所定温度を越えている場合、ステップS11としてドアロック検出センサ15からドアロック解除信号が制御回路11へ送信されたとき、ステップS12として制御回路11より制御指令を出力して、ステアリング制御部8の作動でステアリング4の姿勢を図2に示す当初の状態に戻すとともに、スライド位置制御部9および傾き制御部10の作動でシート5の姿勢を図2に示す当初の状態に戻す。一方、ステップS10にて車室2内の温度が上記の所定温度以下である場合、ステップS12へ進んでステアリング4およびシート5の各姿勢を図2に示す当初の状態に戻す。また、ステップS11にてドアロック検出センサ15からドアロック解除信号が送信されないとき、ステップS9に戻ってステアリング4およびシート5への日射量が少ない状態で維持する。
【0019】
このように構成した実施形態では、冬季などにシート5表面への日射量が多くなるようにシート5の姿勢を変更することで、日射によりシート5の表面を温めて温度調節を行なえるので、乗員がシート5に座った際に不快に感じることを防止できる。同様に、冬季などに日射でステアリング4の表面を温めて温度調節を行なえるので、乗員がステアリング4を握る際に不快に感じることを防止できる。
【0020】
また、夏季などに高温となった場合、日射量が少なくなるようにステアリング4およびシート5の姿勢を変更することにより、ステアリング4およびシート5の各表面の温度調節を行なうことができ、しかも、従来のように背もたれ部5bを前傾させるのみならず、シート5を車両1の後側にスライドさせるので、シート5表面への日射量がより少なくなるようにシート5を折りたたむことができ、シート5の表面温度の上昇を効果的に抑制できる。
【0021】
また、上記実施形態では、冬季などに所定温度以上になるまで日射でステアリング4およびシート5の各表面を温めるか、あるいは所定時間、ステアリング4およびシート5の各表面を温めた後、ステアリング4およびシート5の姿勢が自動的に当初の状態に戻されるので、この状態で車室2に乗員が乗り込んで車両1の運転を行なうことができる。同様に、夏季などに所定温度以下になるまで日射量が少なくなるようにステアリング4およびシート5の姿勢を変更するか、あるいは所定時間、日射量が少なくなるようにステアリング4およびシート5の姿勢を変更した後、ステアリング4およびシート5の姿勢が自動的に当初の状態に戻されるので、この状態で車室2に乗員が乗り込んで車両1の運転を行なうことができる。
【0022】
例えば、本出願人により、外気温10°C、湿度30%、および日射767W/mhの条件下にて60分車両1を駐車し、車室2内の温度の下限値を10°Cとして当該温調装置7により温度調節実験を行なった結果、ステアリング4の表面温度は10°C、シート5の表面温度は11°Cであり、一方、上記の温度調節を行なわない場合にはステアリング4の表面温度は5°C、シート5の表面温度は7°Cであった。したがって、上記の温度調節によりステアリング4の表面温度が5°C上昇し、シート5の表面温度が4°C上昇したため、上記の温度調節でステアリング4およびシート5の各表面温度を十分に上げる効果があることを確認できた。
【0023】
また、外気温40°C、湿度50%、および日射1045W/mhの条件下にて60分車両1を駐車し、車室2内の温度の上限値を45°Cとして当該温調装置7により温度調節実験を行なった結果、ステアリング4の表面温度は55°C、シート5の表面温度は45°Cであり、一方、上記の温度調節を行なわない場合にはステアリング4の表面温度は70°C、シート5の表面温度は65°Cであった。したがって、上記の温度調節によりステアリング4の表面温度が15°C低下し、シート5の表面温度が20°C低下したため、上記の温度調節でステアリング4およびシート5の各表面温度を十分に下げる効果があることを確認できた。
【0024】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、シート5の表面温度の代用温度としての車室2内の温度を検出するようにしたが、これに限定されるものではなく、他の代用温度、例えば外気温センサ14で検出する外気温を用いることもでき、さらに、シート5の表面温度自体を用いることができるのももちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態にかかるシート表面の温調装置を示す説明図。
【図2】乗車時と降車時におけるシート姿勢およびステアリング姿勢を示す説明図。
【図3】日射量が少なくなるようにシート姿勢およびステアリング姿勢を変更した状態を示す説明図。
【図4】本発明の一実施形態にかかるシート表面の温調装置によりシートおよびステアリングの各表面の温度調節を行なう際の処理手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0026】
1 車両
2 車室
3 インストルメントパネル
4 ステアリング
5 可動式シート
5a 着座部
5b 背もたれ部
7 温調装置
8 ステアリング制御部
9 スライド位置制御部
10 傾き制御部
11 制御回路
12 日射センサ
13 温度センサ
14 外気温センサ
15 ドアロック検出センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動式シート(5)の姿勢を変更するシート姿勢変更機構(9,10)と、
前記シート姿勢変更機構(9,10)を制御する制御回路(11)と、
前記シート(5)の表面温度かまたはその代用温度を検出する温度センサ(13)と、
日射を検出する日射センサ(12)と、
を備え、
前記シート姿勢変更機構(9,10)は、日射センサ(12)および前記温度センサ(13)からの検出信号に基づいて、前記シート(5)表面への日射量が多くなるように前記シート(5)の姿勢を変更することを特徴とするシート表面の温調装置。
【請求項2】
前記シート姿勢変更機構(9,10)は、前記シート(5)表面への日射量が多くなるように前記シート(5)の背もたれ部(5b)を後傾させることを特徴とする請求項1に記載のシート表面の温調装置。
【請求項3】
前記シート姿勢変更機構(9,10)は、前記シート(5)表面への日射量が少なくなるように前記シート(5)の姿勢を変更可能であることを特徴とする請求項1または2に記載のシート表面の温調装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate