説明

シーリング材施工方法

【課題】プライマーを使用するシーリング材の施工において、経年後でもプライマーの施工の有無を容易に確認することを可能とすることで、防水性能の長期保証に応えられる建築用シーリング材の施工方法を提供する。
【解決手段】本発明の建築用シーリング材の施工方法は、プライマーを使用するシーリング材の施工において、プライマーに紫外線で発光する化学薬品を必須成分として、特に溶剤不溶で粒子径が0.001mm以下のものを選択し、プライマーの0.001〜0.5重量%で添加しておくことが適当であり、必要時に紫外線を照射することで施工の有無を容易に判定することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築産業において戸建て住宅などでサイデイングボードと称される窯業建材や金属パネルにて建築物の外装を行う場合の接合部の目地の防水に使用される建築用シーリング材の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の建築防水工法において、サイデイングボードなどの取り付けでは、施工後のボード自体の乾燥による収縮や、昼夜の寒暖差や季節による乾湿差、風雨による応力により、接合部の目地幅は動くので、防水に使用される建築用シーリング材には変成シリコーン系やポリウレタン系と呼ばれる低モジュラスの弾性タイプが使用される。この施工においては、以下の機能が要求されている。
【0003】
防水を企図しているので上記物性の他に目地部への耐水密着性と長期に渡る耐候性が要求され、特に近年は10年、20年の防水機能の保証を要求されるケースが増えて来ている。
【0004】
上記の機能を確保するため、建築用シーリング材の施工方法では、シーリング材自体の耐久性、耐候性の向上を図っているが、接着力とその耐久性を確保する為にプライマーと称する接着付与成分を付与した溶剤希釈された樹脂を目地に予め塗布する事が行われる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
建築用シーリング材の施工における防水機能の不備、欠陥は、外観が悪いとか硬化しないとか施工後直ぐに判明する場合もあるが、数年後に目地との付着部分で剥がれて漏水が発生しプライマーの塗り忘れなど施工の問題なのか、シーリング材の材質自体の耐久性不足の問題なのかをめぐってトラブルになる場合が多い。
【0006】
施工記録がはっきりせず、現場からシーリング材の硬化物を切り取って持ち帰り、剥がれ部分に0.05mm程度の厚みのプライマーが付着してるかを赤外線分光光度計などの分析機器を駆使しても明快な判別は容易ではない。数年を経過しても、出来れば現場にて直ぐにプライマーが塗布されているかが判明するのが望ましい。着色プライマーの使用は、付着性の確保の為に目地一杯に塗布する必要があるので、僅かのハミダシも目立つ事になり採用できない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明は、従来のプライマーを使用するシーリング材の施工において、外観に変化を与えることなく、数年を経た施工物件でも容易にプライマー使用状態の有無を判定できる建築用シーリング材の施工方法を提供することを目的とする。
【0008】
本発明者らは、紫外線で発光する化学薬品の知見を利用することにより、上記のプライマーを使用する建築用シーリング材の施工において、外観に変化を与えることなく、数年を経た施工物件でも容易にプライマー使用状態の有無を判定できる施工方法を提供する事を可能とした。すなわち本発明の建築用シーリング材の施工方法はプライマーを使用するシーリング材の施工において、プライマーに紫外線で発光する化学薬品を必須成分として添加するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明はプライマーを使用するシーリング材の施工において、プライマーに紫外線で発光する化学薬品を必須成分として添加した建築用シーリング材の施工方法であり、従来の施工方法と同様に実施しても外観に変化を与えることなく、クレーム発生時などプライマー塗布の有無を知る必要が生じた場合において、現場へ携帯可能なブラックライトや小型LEDの紫外線照射装置により、この必須成分が紫外線で発光することにより、容易に判定することを得る施工方法に関する物である。
【0010】
必須成分である紫外線で発光する化学薬品としては、スチルベン系、ベンゾオキサゾール系(UVITEX−OB チバ社製 など)、スチリル・オキサゾール系、ピレン・オキサゾール系、クマリン系(COUMARIN 豊玉香料社製 など)、イミダゾール系、ベンゾイミダゾール系、ピラゾリン系、アミノクマリン系、ジスチリル・ビフェニル系の蛍光増白剤やこれらで処理した特殊顔料がある。
【0011】
プライマーはシーリング材で覆われるものではあるが、屋外で使用されるのでハミダシ部分が日光に含まれる紫外線で余りにも鮮やかに発光して目立つことは建築物の外観上は好ましくない。また基材のアルカリ性やシーリング材の化学成分や酸性雨などで長時間晒されても紫外線による発光機能が低下しないことが重要である。この目的で化学薬品の種類や添加量は選択される。添加量は通常の発光機能を有する化学薬品の場合プライマー全体の0.001〜0.5重量%が適当である。これ以下では後日紫外線を使用しての塗布の有無の判定が難しく、これ以上であれば通常の日光の下でも鮮やかに輝き目立ち過ぎてしまう。これらの目的には、先のUVITEX−OBやHakkol RF(昭和化学工業株式会社製)などが適している。
【0012】
また塗布の有無の判定を容易にするには、カッターなどで切り取り易いシーリング材の付着界面に多く残っている方が有利である。窯業系サイデイングボードは多孔質でプライマーの大部分は吸い込まれるので溶剤系プライマーや水性のポリマーデイスパージョン系プライマーでは溶剤や水に溶解するものより、不溶なもので分散が良く、比較的に低粘度のプライマー中でも沈降しにくい微細なものが望ましい。粒子径が0.001mm以下であるものが好ましく、これ以上の大きさでは沈降や塗布面に吸い込まれた後に粉が残ってザラツキがでる。この目的に合った物としては、メラミン系樹脂と蛍光染料を化学反応した微粉末の蛍光顔料であるSINLOIHI COLOR FZ−5009 WHITE(シンロイヒ株式会社製)やA−594−5 INVISIBLE BLUE(DAY−GLO COLOR社製)などがある。
【0013】
本発明はプライマーを使用するシーリング材の施工において、プライマーに紫外線で発光する化学薬品を必須成分として添加した建築用シーリング材の施工方法であるが、実際上のこれらのシーリング材の主成分が、主鎖が分子量1000〜10000のポリオキシプロピレンで末端にアルコキシシリル基を有する構造のオリゴマーである変成シリコーン系やウレタン系の建築用シーリング材の施工方法において有用である。変成シリコーン系ではSRシール S70、ウレタン系では U73(ともに サンライズMSI株式会社製)があり各々に専用のプライマーが使用されている。
【実施例と比較例】
【0014】
実施例と比較例に利用する建築用シーリング材では先の変成シリコーン系のSRシールS70およびをウレタン系のSRシールU73を使用し、プライマーとしてアクリルシリコン樹脂ワニスであるゼムラックYP1915B(カネカ株式会社製)50重量部と酢酸エチルを50重量部を混合して使用した。水性プライマーとして NKポリマー DK−9000(新中村化学工業株式会社製)に造膜助剤として ダワノール DPNB(ダウ社製)を3重量%添加して使用した。下地として窯業系サイデイングボード(旭トステム外装株式会社製)の目地部分を使用した。 試験方法として、プライマーに各実施例の化学薬品を添加混合してサイデイングボードに刷毛で塗布し、屋外で1時間放置し乾燥後発光して建築物の外観を損なうかを目視で判断する。目立たないものから問題視されるほど着色するまでをその程度に応じて◎、○、○〜△、△、×の5段階で評価して 表1に記載した。その上にSRシールS70を塗布して7日間放置して硬化させた後に、カッターで接着界面を切り取り暗室で携帯型LEDの紫外線照射機NITRIDE(SEMICONDUCTORS社製)でシーラー側とサイデイングボード側の界面に紫外線を照射し界面が有効に発光しプライマーの有無を判定出来るかをその程度に応じて◎、○、○〜△、△、×の5段階で評価して 表1に記載した。60℃の温水に7日間浸漬して引揚げた後に、同様の評価を実施し 表1に記載した。
【0015】
(実施例1)
プライマー100重量部に対し、先のFZ−5009 WHITEを0.1重量部添加 したもの。建築用シーリング材はSRシール S70を使用。
(実施例2)
プライマー100重量部に対し、先のA−594−5 INVISIBLE BLUE を0.2重量部添加したもの。建築用シーリング材はSRシール S70を使用。
(実施例3)
もの。建築用シーリング材はSRシール S70を使用。
(実施例4)
プライマー100重量部に対し、先のHakkol RFを 0.1重量部添加したも の。建築用シーリング材はSRシール S70を使用。
(実施例5)
プライマー100重量部に対し、先のCOUMARINを 0.5重量部添加したもの 。建築用シーリング材はSRシール S70を使用。
(実施例6)
実施例1で建築用シーリング材にウレタン系のSRシールU73を使用したもの。
(実施例7)
水性プライマー100重量部に対し、先のHakkol RFを 0.5重量部添加したもの。建築用シーリング材はSRシール S70を使用。
【0016】
(比較例1)
プライマーを無添加で使用した。建築用シーリング材はSRシール S70を使用。
(比較例2)
プライマー100重量部に対し、先のUVITEX−OBを 1重量部添加したもの。 建築用シーリング材はSRシール S70を使用。
(比較例3)
プライマー100重量部に対し、先のCOUMARINを 0.005重量部添加した もの。建築用シーリング材はSRシール S70を使用。
(比較例4)
水性プライマーを無添加で使用した。建築用シーリング材はSRシール S70を使用。
【0017】
【表1】

【発明の効果】
【0018】
表1に実施例1〜7と比較例1〜4の結果を示す。
比較例2については 発光機能は十分だがプライマー塗布面が 青色に光り輝く為に、実際の建築施工に於いてはシーリング材で覆いきれないハミダシ部分が建築物の外観を損なうので採用できない。比較例3では発光による識別が長期経過後は困難である。
比較例に対し実施例1〜7は 効果の差はあるが、いずれも本来の目的を達している事が判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プライマーを使用するシーリング材の施工において、プライマーに紫外線で発光する化学薬品を必須成分として添加した建築用シーリング材の施工方法。
【請求項2】
請求項1におけるプライマーが溶剤可溶型であり、紫外線で発光する化学薬品が溶剤不溶で粒子径が0.001mm以下である建築用シーリング剤の施工方法。
【請求項3】
請求項1におけるプライマーが水性のポリマーデイスパージョン型であり、紫外線で発光する化学薬品が水不溶型である建築用シーリング剤の施工方法。
【請求項4】
請求項1における紫外線で発光する化学薬品の添加量がプライマーの0.001〜0.5重量%であり、シーリング材の主成分が、主鎖が分子量1000〜10000のポリオキシプロピレンで末端にアルコキシシリル基を有する構造のオリゴマーである建築用シーリング材の施工方法。

【公開番号】特開2009−114832(P2009−114832A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−315224(P2007−315224)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(591084207)サンライズ・エム・エス・アイ株式会社 (9)
【Fターム(参考)】