説明

シール、そのようなシールを備えるタンク、およびそのようなシールの使用

【課題】本発明の主題は、締め付け時の滑りおよび/または傾きを防止したリングシールである。
【解決手段】本発明は、回転軸(R)と中央の横軸(T)とを有し、横断面において、D字の背部を形成する壁(11)と、D字のふくれた腹部を形成する壁(12)と、2つの側壁(13)とによって定められる概ねD字の形状を有しているシール(10)を提案する。シールは、高さ(H)および厚さ(E)を有しており、高さ(H)に対する厚さ(E)の比(E/H)が、0.7〜0.85の間であり、好ましくは0.8である。背部側の壁(11)は、圧縮されていない状態において、2つの頂部(14)の間にくぼみ(11a)を定める凹面を含んでおり、このくぼみが、シールの高さ(H)の50%〜60%の間の高さ(h)と、シールの厚さ(E)の4%〜8%の間の深さ(p)とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾かないリングシール、そのようなシールを備えたタンク、およびそのようなシールの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車産業は、シールに関するいくつかの技術的課題に立ち向かわなければならない。
【0003】
第1の課題は、例えば流体回路やタンクなどにおける漏れの程度の著しい削減を要求する新規な環境基準の導入によってもたらされる。いくつかの用途は、測定される漏れが本質的にシールの浸透性に起因するため、特に問題とされる。例えば、問題となる用途は、燃料回路(タンクや接続部などのシール)、尿素回路、空調、または流体が気相であり得る他のあらゆる用途である。タンクのシールまたはタンクの注入パイプのシールなど、いくつかの用途は、コネクタの寸法ゆえにより重要である。
【0004】
通常は、タンクは、軸を有する首部を備えるタンク本体と、燃料ポンプおよび計器を支持する管状のフランジと、フランジを保持すべくタンクの首部に螺合するナットとを含んでおり、首部は、首部の断面よりも小さい断面を有し、注ぎ口を形成している管状部分によって延長されている。
【0005】
首部の上面、プレートの下面、注ぎ口の外側円筒面、およびナットの内側円筒面が、シールを軸方向に締め付け、すなわち回転軸Rに平行な方向に締め付ける環状の溝を定めている。通常は、タンクはプラスチック製である。
【0006】
車両のシールを改善するという文脈において、いくつかの製造者は、Oリングを注ぎ口のシールとして使用することに取り組んでいる。
【0007】
通常、使用されるOリングは、円形の断面を有している。この種のシールは、製造が容易であり、極めて安価である。
【0008】
しかしながら、そのようなシールの使用は、特にプラスチック(例えば、ポリエチレン)で作られたタンク本体を有するタンクの場合に、2種類の問題につながる:
a)プラスチック部品の公差ゆえ、少なくとも約5mmに等しい直径を有するシールが必要になり、結果としてシールの溝に必要な空間およびタンクの首部の変形という問題が生じる。
b)注ぎ口の組み付け前にシールをタンクの縁に保持することが面倒である。
【0009】
いくつかの車両は、変形可能なリップを有する注ぎ口シールが備えられており、リップが、変形時にすき間を占める機能を果たす。しかしながら、そのようなリップシールは、製造および使用に関して複雑であり、この分野において一般的な価格に適合させることが難しいコストを生じさせる。
【0010】
円形断面のOリングの欠点を取り除くために、EP 0 811 519が、いわゆる「D字」の外形を有するシールの製造を既に提案している。
【0011】
このリングシールは、断面において、シールの回転軸に平行に細長い外形を有している。より詳しくは、このシールは、断面において、D字の背部を形成している平坦な壁と、この壁に向かい合い、D字のふくれた腹部を形成している凸状の壁と、背部側の壁と腹部側の壁とを接続している2つの側壁とを備えている。
【0012】
このシールには、2つの利点が存在する。円形断面のOリングと比べて材料の量を減らすことが可能になる一方で、D字の背部側の平坦な壁ゆえに、「ロールバック」現象に起因するシールの組み込み時の抜け出しが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】EP 0 811 519
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
実際には、「D字」シールが締め付けられ、結果として圧縮される際に、「D字」シールが、事例の約25%において、環状の溝内で或る程度顕著な傾きを生じることが明らかになっている。この傾きは、シールの背部側の平坦な壁と注ぎ口の外側円筒面との間に形成される角度を測定することによって測定可能である。
【0015】
実際には、締め付けは、基本的に軸方向の成分を含んでおり、すなわち回転軸Rに実質的に平行な方向の成分を含んでいる。かなりの大きさになることもある寸法公差ゆえに、締め付けが、有意な半径方向成分も含む可能性がある。換言すると、コネクタの2つの部位が軸方向に合わせられるときに、互いに半径方向に、すなわち横軸Tに実質的に平行な方向にずれる可能性がある。
【0016】
さらに、締め付けの段階において、シールは、ナットが首部へとねじ込まれるときにシールに横軸に平行な方向のせん断力を作用させるため、有意な周方向成分も受ける。圧縮およびせん断の結果として、D字シールが、平坦部がフランジに面するように溝において傾き、シールへの圧力が減少し、結果としてアセンブリのシールが弱くなる可能性がある。
【0017】
この傾きは、せん断による滑りおよび回転による滑りという2つの形態をとる可能性がある。極端な場合には、回転による滑りが、シールが90°の回転の後に完全に傾くほどに大きい。これらの滑りの作用が、タンクからの流体の漏れにつながる可能性がある。
【0018】
これらの回路の多くの部品、とりわけシールを受け止めるように設計された部品が、プラスチックで作られている。したがって、これらの回路のシールをこれらのプラスチック部品の変形または破損の恐れなくシールの圧縮を増すことによって改善することは、不可能である。そのような圧縮は、シールの喪失につながり、すなわち浸透性(漏洩度)の増加につながると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の主題は、締め付けの際のシールの如何なる小さな滑りおよび/または傾きをも実質的にあらゆる場合において防止することによってシール作用の改善を可能にするシールおよびタンクである。
【0020】
この目的のために、本発明は、圧縮時にシールの材料の一部分について案内されたクリープを可能にするシールを提案する。
【0021】
より正確には、本発明の主題は、弾性変形可能な材料で製作され、回転軸と中央の横軸とを有しており、横断面において、D字の背部を形成する壁と、この壁に向かい合い、D字のふくれた腹部を形成する壁と、前記背部側の壁および前記腹部側の壁を接続する2つの側壁とによって定められる概ねD字の形状を有しているリングシールである。このリングシールが:
・前記回転軸上に投影された前記側壁の間の高さ、および前記横軸上に投影された前記背部側の壁と前記腹部側の壁との間の厚さを有しており、前記高さに対する前記厚さの比が、0.7〜0.85の間であり、好ましくは0.8であり、
・前記背部側の壁が、圧縮されていない状態において、2つの頂部の間にくぼみを定める凹面を含んでおり、このくぼみが、前記高さの50%〜60%の間の高さと、前記厚さの4%〜8%の間の深さとを有している。
【0022】
そのようなシールを使用することで、シールの最適な配置が可能になるとともに、締め付けの際のシールの傾きが防止され、したがってシール作用が改善される。この安定性は、圧縮の作用のもとでのシールの変形を「案内」することによって得られる。
【0023】
そのようなシールの使用は、従来からのD字シールに比べて材料の節約も可能にし、コストの削減をもたらす。
【0024】
好ましい実施の形態によれば:
・側壁の各々が、圧縮されていない状態において、平坦かつ前記横軸に実質的に平行な面を含むことができ、この面が、シールの前記厚さの18%〜35%の間の幅を有しており、
・前記くぼみを前記平坦な面へと接続する前記2つの頂部を、シールの前記高さの20%〜25%の間の曲率半径をそれぞれ有する丸みを帯びた縁で構成することができ、
・前記腹部側の壁が、少なくとも1つの曲率半径を有することができ、
・前記凹面が、少なくとも1つの曲率半径を有することができ、さらには/あるいは
・前記腹部側の壁を、隣接した継ぎ目(flush join)または放射状の継ぎ目(radiated join)によって前記平坦な側壁へと接続することができる。
【0025】
さらに本発明は、回転軸を有する首部を有しているタンク本体を備えており、前記首部が、この首部の断面よりも小さい断面を有する管状部分によって延長されているタンクに関する。このタンクが、プレートと、前記首部に螺合するように設計されたナットと、本発明によるシールとをさらに備えており、前記首部の上面、前記プレートの下面、前記管状部分の外側円筒面、および前記ナットの内側円筒面が、シールのための環状の溝を定めている。
【0026】
さらに本発明は、本発明による上述のシールの燃料タンクにおける使用に関する。燃料タンクは、軸を有する首部を有しているタンク本体と、プレートと、前記首部に螺合するナットとを備えており、前記首部が、該首部の断面よりも小さい断面を有する管状部分によって延長されており、前記首部の上面、前記プレートの下面、前記管状部分の外側円筒面、および前記ナットの内側円筒面が、シールのための環状の溝を定めている。本発明による前記シールは:
・前記D字の背部を形成する壁が、前記シールの内面が前記管状部分の外側円筒面に接することによって支持され、
・前記背部側の壁および前記腹部側の壁を接続する前記2つの平坦な側壁が、それぞれ前記首部の上面および前記プレートの下面に接触する;
ように使用される。
【0027】
好ましくは、前記D字のふくれた腹部を形成する壁が、前記ナットの内側円筒面から離して、前記溝に配置される。
【0028】
本発明の他の特徴が、添付の図面を参照しつつ行われる以下の詳細な説明から、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1−1a】図1は、本発明によるシールの第1の実施の形態の一部分の横断面の概略図であり、図1aは、図1のシールの一部分を拡大した概略図である。
【図2】図2は、本発明によるシールの第1の実施の形態の一部分の横断面の概略図である。
【図3−3a】図3は、本発明によるシールの第2の実施の形態の一部分の横断面の概略図であり、図3aは、図3のシールの一部分を拡大した概略図である。
【図4】図4は、本発明によるシールの第2の実施の形態の一部分の横断面の概略図である。
【図5】図5は、本発明によるシールの典型的な実施の形態の横断面の概略図である。
【図6】図6は、燃料タンクに取り付けられる本発明によるシールの横断面の概略図である。
【図7】図7は、燃料タンクへと取り付けられて圧縮された後の本発明によるシールの横断面の概略図である。
【図8】図8は、図7の一部分の横断面の概略図であり、シールが被る主たる引張応力を示している。
【図9】図9は、図7の一部分の横断面の概略図であり、シールが被る主たる圧縮応力を示している。
【図10】図10は、図7の一部分の横断面の概略図であり、シールが被る引っ張り変形を示している。
【図11】図11は、図7の一部分の横断面の概略図であり、シールが被る圧縮における変形を示している。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下の説明においては、以下の用語が、下記のように定義される。
【0031】
リングシール:回転体の形状を有するシール。回転は、シールの中心に位置する回転軸を中心にする楕円形、円形、多角形、などであってよい。
回転軸(R)=シールの回転の軸。
中央横軸(T)=回転軸に垂直であり、かつシールの真ん中を通過する軸。したがって、シールを同じ高さの2つの部分へと分割する。
横断面=横軸および回転軸を通過する断面。
「公称」寸法(厚さ、幅、高さ、深さ、半径、など):シールが圧縮されていないときの静止時の寸法(厚さ、幅、高さ、深さ、半径、など)。
シールの厚さは、横軸Tへと投影したシールの最大寸法に等しい。
シールの幅は、シールの背中側の壁の一点と腹側の壁の一点との間の横軸Tに平行な距離に等しい。
圧縮ゾーン:シールのうちの応力の作用のもとで圧縮されることが可能な領域。この圧縮は、結果的に圧縮ゾーンの移動または「クリープ」となってよい。反対に、可撓ゾーンは、圧縮されるよりも前に応力の作用の下で撓むことができる。したがって、本発明の意味において、可撓リップと圧縮可能ゾーンとを混同してはならない。
【0032】
後述されるシールは、弾性的に変形することができる材料で製作される。好ましくは、シールの材料を、ポリマーから選択することができ、特にFPM(フッ化炭素ゴム)、HNBR(水素化ニトリルブタジエンゴム)、AEM(エチレンおよびメチルアクリレートの共重合体)、ACM(エチルアクリレート(または、他のアクリレート)の共重合体および硬化のための反応点を提供する共重合体)、NBR(ニトリルゴム)、およびEPDM(エチレン、プロピレン、またはジエンの三元重合体)から選択することができる。
【0033】
本発明によるシール10の第1の実施の形態が、図1に示されている。シール10は、回転軸Rおよび横軸Tを有している。
【0034】
シールは、横断面において、概ねD字形を有している。この形状は、D字の背部を形成している壁11と、壁11に向かい合い、D字のふくれた腹部を形成している壁12と、背部側の壁11と腹部側の壁12とを接続している2つの側壁13とによって定められている。
【0035】
図示の実施の形態においては、D字の背部を形成している壁11が、シールの内壁であり、すなわち回転軸Rに最も近い壁である。D字のふくれた腹部を形成している壁が、シールの外壁であり、すなわち回転軸Rから最も遠い壁である。
【0036】
本発明によれば、概ねD字の形状が、シールの公称の高さHとシールの公称の厚さEとの間の比によって定められる。
【0037】
シールの高さHは、回転軸Rに投影したシールの側壁13の間の寸法である。厚さEは、横軸Tへと投影したシールの背部側の壁11と腹部側の壁12との間の寸法である。
【0038】
本発明によるD字形は、0.7〜0.85の間であり、好ましくは0.8に等しいHに対するEの比によって定義される。この比は、シールの厚さおよび高さの公称値によって与えられ、すなわちシールが圧縮されていないときの値によって与えられる。
【0039】
0.7未満の比E/Hは、「豆」の形状をもたらす。そのようなシールは、回転軸Rに平行な軸方向の締め付けが存在する場合に、溝においてほぼ間違いなく傾く。そのような豆形のシールは、回転軸Rに垂直な半径方向の締め付けにおいてのみ使用される。
【0040】
0.85を超える比E/Hは、より多くの材料が必要になるため、製造が高価につく。さらに、傾きの現象の解消を可能にすることがなく、プラスチック部品と両立しないかなりの締め付け力を必要とする。
【0041】
本発明の別の特徴によれば、シールの背部側の壁11が、2つの頂部14の間にくぼみ11aを定める凹面を含んでいる。シールが圧縮されていない状態において、くぼみは、シールの公称の高さHの50%〜60%の間の高さhを有している。さらに、くぼみは、シールの公称の厚さEの4%〜8%の間の深さpを有している。
【0042】
D字の背部を形成している壁11は、くぼみ11aを平坦な面13へと接続する2つの頂部14を含んでいる。好ましくは、これら2つの頂部14が、シールの高さHの20%〜25%の間の曲率半径をそれぞれ有する丸みを帯びた縁で構成されている。したがって、5mmに等しい高さを有するシールにおいては、各々の頂部14の曲率半径が、1mm(シールの高さHの20%)〜1.25mm(シールの高さHの25%)の間である。
【0043】
くぼみの高さhおよび深さpゆえに、くぼみの両側に位置するシールの頂部が、軸方向の締め付けの際に曲がることがなく、したがってリップを構成することがないことを、充分に理解できるであろう。このため、製造が安価なままであり、2つの部分からなる金型で製造を実行することができる。
【0044】
図1aに示されているように、くぼみと頂部との間の継ぎ目は、図3aに示されている放射状の継ぎ目24aと対照的に、隣接した継ぎ目14aであってよい。図1および図2に示されている隣接した継ぎ目の第1の場合においては、くぼみの表面と頂部14の凸面との間の継ぎ目が、角のある点を構成する。他方で、図3および図4に示されている放射状の継ぎ目の場合には、くぼみ21aの表面が、角のある点を介してではなく、円弧24a(図3aを参照)を介して頂部24の表面につながる。
【0045】
驚くべきことに、くぼみが存在することで、締め付け後に傾きを生じるシールの割合が顕著に抑制される。くぼみの存在およびくぼみの深さpによって、シールを形成している材料が、圧縮時に、シールを傾けることなくD字の腹部に向かって案内される様相でクリープすることができる。
【0046】
好都合には、シールの側壁13の各々が、横軸Tに平行であって、D字の背部を形成している壁11の頂部をD字の腹部を形成している壁12へと接続する平坦な面を備えている。これらの平坦な面はそれぞれ、本発明によれば、シールの公称の厚さEの18%〜35%の間の公称の幅lを有している。図1および3は、幅lminがシールの厚さEの18%であるシールを示しており、図2および4は、幅lmaxがシールの厚さEの35%であるシールを表わしている。
【0047】
平坦な表面は、一方では首部41(図6および図7を参照)の上面41aおよびプレート50の下面50aに接触するように設計されている。
【0048】
これらの平坦な表面の寸法が、D字の背部を形成している壁11のくぼみ11aの存在と相俟って、本発明によるシールについては、締め付けの際の傾きが実質的に観察されない。
【0049】
本発明によるシールにおいては、好都合には、中央の横軸Tに沿った公称の幅Lが、中央の横軸Tに平行なあらゆるシールの公称の幅Lよりも大きい。換言すると、背部側の壁上の点および腹部側の壁上の点であって、横軸に平行な互いの距離が最も大きい点が、正確にシールの中央の横軸T上にある。したがって、シールの最大の公称幅は、本発明によるシールの横軸T上に位置する。
【0050】
この構成は、締め付けの際に傾くことがなく、かつ極めて容易に製造することができ、2つの部分からなる金型でも製造することができるシールを生み出すことを可能にする。したがって、従来からのD字シール(平坦な背中を有している)および円形断面のOリングよりも遥かに効果的でありながら、リップシールよりも遥かに安価である。
【0051】
図5が、本発明によるシールの典型的な実施の形態を示している。このシール30は、5mmの高さHおよび4mmの厚さEを有している。シール30は、D字の背部を形成する表面であって、頂部34、くぼみ31a、および第2の頂部34で構成される表面31を有している。くぼみ31aは、0.2mm、すなわち厚さEの5%に等しい深さpを有している。
【0052】
各々の頂部34は、1.1mmに等しい半径R1の円弧で構成されている。この値は、シールの高さHの22%を呈している。したがって、くぼみの高さhは、2.8mmに等しく、すなわちシールの高さH(5mm)から半径R1の2倍(2×1.1=2.2)を引いたものに等しい。この高さhは、シールの高さHの56%を呈している。
【0053】
くぼみ31aは、図5の例では、ただ1つの円弧で構成される曲線によって生成されている。代案として、くぼみを、複数の円弧で構成される曲線によって生成することもできる。図示の例において、曲線がただ1つの円弧によって生成される場合に、円弧の半径の公称値は、好都合には、シールの高さHから頂部の半径R1を引いたものに等しい。したがって、図5において、半径R2は、5−1.1mm、すなわち3.9mmに等しい。半径R2の円弧の中心は、中央の横軸T上に位置している。
【0054】
平坦な側壁33は、1.2mmに等しい幅lを有している。この幅は、厚さEの30%を呈している。
【0055】
D字の腹部を形成している壁32は、図5の例では、互いに接続された3つの円弧で構成されている。さらに詳しくは、壁32は、1.45mmに等しい半径R3の2つの円弧を、3mmに等しい半径R4の円弧に接続して備えている。
【0056】
代案として、壁32を、ただ1つの円弧によって形成することもできる。
【0057】
くぼみと頂部との間の継ぎ目と同様に、壁32を、隣接した継ぎ目または放射状の継ぎ目によって平坦な側壁33へとつなぐことができる。隣接した継ぎ目の使用は、シールの厚さおよび幅を維持しつつ、平坦な側壁の幅を増すことを可能にする。
【0058】
図6および図7が、燃料タンクにおける軸方向の(すなわち、回転軸Rに平行な)締め付けにての本発明によるシールの使用を示している。
【0059】
タンクが、回転軸Rを有する首部41を有しているタンク本体40を備えており、首部41が、首部の断面よりも小さな断面を有する管状部分42によって延長されている。管状部分42は、首部に対して同じ回転軸Rを有するように配置されている。さらにタンクは、燃料ポンプおよび計器を支持するように設計されたプレート50を備えている。プレート50は、燃料の通路51を有している。最後に、タンクは、タンク40の首部41に螺合するように設計されたナット60を備えている。図6および図7に示されているとおり、この螺合は、タンクによって支持されたねじ山61とナット60によって支持された雌ねじ41との相互作用によって得られる。
【0060】
本発明によれば、上述の特徴を有するシールが、このタンクにおいて使用される。
【0061】
特に、この使用は:
・D字の背部を形成している壁31が、シールの内面が管状部分42の外側円筒面42aと接触することによって支持され、
・背部側の壁31を腹部側の壁32に接続している2つの平坦な側壁33が、それぞれ首部41の上面41aおよびプレート50の下面50aに接する;
ように行われる。
【0062】
好都合には、タンクが、D字の腹部を形成している壁が、ナットの内側円筒面から離れて溝内に位置するように、寸法付けられている。
【0063】
図6は、組み立ての最中のタンクを示している。この状態において、シール30は、公称の寸法を有している。シール30が、首部41の上面41aと、プレート50の下面50aと、管状部分42の外側円筒面42aと、ナット60の内側円筒面60aとで構成される溝に配置されている。「外側」が、面が回転軸Rから離れる方を向いていることを意味する一方で、「内側」は、面が回転軸Rの方を向いていることを意味している。
【0064】
図7が、ひとたびプレート50aが首部に対して締め付けられ、ナット60によってこの位置に保持されたときの圧縮されたシールを示している。図6において、図7に示されているようなシールの圧縮後の形状30aが、破線にて示されている。このように、シールが圧縮されていない公称の状態30と、シールが圧縮されている使用時の状態30aとの間で、高さの変化ΔHおよび厚さの変化ΔEが存在する。したがって、圧縮された後に、シールは、公称の高さHよりも小さい高さHと、公称の厚さEよりも大きい厚さEとを有する。
【0065】
図8〜図11は、締め付けの際にシールが被る応力および変形を示している。全体として、本発明によるシールの形状のおかげで、軸方向に締め付けられても、シールの傾きが生じないことを見て取ることができる。換言すると、D字の背部を形成している壁の頂部を通過する直線δが、回転軸Rに完璧に平行である。ほとんどの場合、D字の背部を形成している壁の頂部が、タンクの管状部分の外側円筒面42aに接触したままである。頂部が外側円筒面42aから離れることも生じうる。しかしながら、この場合にも、D字の背部を形成している壁の頂部を通過する直線δは、本発明によるシールの断面形状のおかげで、回転軸Rに実質的に平行なままである。
【0066】
図8は、シールの芯がきわめて高い引張応力を受けており、すなわちシールの芯に位置する単位体積の材料が、平坦な側壁の一方の近くに位置する同じ単位体積の材料よりも、遥かに引き伸ばされていることを示している。
【0067】
さらに、この図は、D字の腹部を形成している壁を構成している部位も、軸方向の締め付けの際の厚さの変化ΔEによって説明される局所的な引き伸ばしを受けていることを示している。
【0068】
図9は、シールが被る主たる圧縮応力を示している。この図は、本発明によるシールの形状が、軸方向の締め付けの際に、回転軸Rに対して垂直にD字の腹部の壁の方へと向かうシールの案内された変形を可能にするがゆえに、材料のうちのD字の腹部を形成している壁の直下に位置する部位が、引き伸ばされる(この図では、負の圧縮)ことを示している。
【0069】
図10および図11は、それぞれ引っ張り(図10)および圧縮(図11)におけるシールの変形の割合を示している。これらの図は、シールが圧縮されていない初期の状態と、シールが圧縮された最終的な状態との間で単位体積が受ける変形を、パーセンテージにて示している。
【0070】
特に、図10および図11は、変形が主としてD字の腹部に局所化されていることを示している。このように、本発明によるシールの形状ゆえに、D字の腹部が、すべての変形を案内された局所的な様相で「吸収」し、シールの残りの部分が最適な位置にあって、すなわち傾きがなく、それぞれの当接面に当接したままであることを可能にする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性変形可能な材料で形成され、回転軸(R)と中央の横軸(T)とを有しており、横断面において、D字の背部を形成する壁(11、21、31)と、前記壁(11、21、31)に向かい合い、D字のふくれた腹部を形成する壁(12、22、32)と、前記背部側の壁(11、21、31)および前記腹部側の壁(12、22、32)を接続する2つの側壁(13、23、33)とによって定められる概ねD字の形状を有しているリングシール(10、20、30)であって、
前記シールは、前記回転軸(R)上に投影された前記側壁の間の高さ(H)、および前記横軸(T)上に投影された前記背部側の壁(11、21、31)と前記腹部側の壁(12、22、32)との間の厚さ(E)を有しており、前記高さ(H)に対する前記厚さ(E)の比(E/H)が、0.7〜0.85の間であり、好ましくは0.8であり、
前記背部側の壁(11、21、31)が、圧縮されていない状態において、2つの頂部(14)の間にくぼみ(11a、21a)を定める凹面を含んでおり、前記くぼみが、前記シールの高さ(H)の50%〜60%の間の高さ(h)と、前記厚さ(E)の4%〜8%の間の深さ(p)とを有している、ことを特徴とするリングシール(10、20、30)。
【請求項2】
前記側壁(13、23、33)の各々が、圧縮されていない状態において、平坦かつ前記横軸(T)に実質的に平行な面を含んでおり、前記面が、前記厚さ(E)の18%〜35%の間の幅(l、l、lmin、lmax)を有している、請求項1に記載のリングシール(10、20、30)。
【請求項3】
前記くぼみを前記平坦な面(13、23、33)へと接続する前記2つの頂部が、前記シールの高さ(H)の20%〜25%の間の曲率半径をそれぞれ有する丸みを帯びた縁で構成されている、請求項1または2に記載のリングシール(10、20、30)。
【請求項4】
前記腹部側の壁が、少なくとも1つの曲率半径を有している、請求項1〜3のいずれかに記載のリングシール(10、20、30)。
【請求項5】
前記凹面が、少なくとも1つの曲率半径を有している、請求項1〜3のいずれかに記載のシール。
【請求項6】
前記腹部側の壁が、隣接した継ぎ目によって前記平坦な側壁(33)へと接続されている、請求項2または4に記載のシール。
【請求項7】
前記腹部側の壁が、放射状の継ぎ目によって前記平坦な側壁(33)へと接続されている、請求項2または4に記載のシール。
【請求項8】
回転軸(R)を有する首部(41)を有しているタンク本体(40)を備え、前記首部が、該首部の断面よりも小さい断面を有する管状部分(42)によって延長されているタンクであって、
プレート(50)と、前記タンク(40)の首部(41)に螺合するように設計されたナット(60)と、請求項1〜7のいずれかに記載のシールとをさらに備えており、
前記首部の上面(41a)、前記プレートの下面(50a)、前記管状部分の外側円筒面(42a)、および前記ナットの内側円筒面(60a)が、シールのための環状の溝を定めるタンク。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載のシールの燃料タンクにおける使用であって、
前記燃料タンクは、軸を有する首部を有しているタンク本体と、プレートと、前記首部に螺合するナットとを備えており、前記首部が、該首部の断面よりも小さい断面を有する管状部分によって延長されており、前記首部の上面、前記プレートの下面、前記管状部分の外側円筒面、および前記ナットの内側円筒面が、シールのための環状の溝を定めており、
前記D字の背部を形成する壁(11、21、31)が、前記シールの内面が前記管状部分の外側円筒面に接することによって支持され、
前記背部側の壁(11、21、31)および前記腹部側の壁(12、22、32)を接続する前記2つの平坦な側壁(13、23、33)が、それぞれ前記首部の上面および前記プレートの下面に接触するような使用。
【請求項10】
前記D字のふくれた腹部を形成する壁が、前記ナットの内側円筒面から離れた状態で前記溝に配置される、請求項9に記載の使用。

【図1−1a】
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【図2】
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【図3−3a】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−231922(P2011−231922A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−58872(P2011−58872)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(511069976)
【氏名又は名称原語表記】LE JOINT FRANCAIS
【住所又は居所原語表記】2 Rue de Balzac 75008 PARIS FRANCE
【Fターム(参考)】