説明

シールされたインペラクラッチ提供チャンバを備えた多機能トルクコンバータ及び多機能トルクコンバータを形成及び操作する方法

【課題】ピストンプレートの操作による軸方向の力をハウジング構成部材及び軸受から隔離する多機能トルクコンバータを提供する。
【解決手段】トルクをトルクコンバータ100のためのトルク入力部からトルクコンバータのためのインペラ112へ伝達するように配置されたインペラクラッチ102が設けられており、インペラクラッチのための少なくとも1つのインペラピストンプレート104が設けられており、シールされた流体含有チャンバ133が設けられており、該シールされたチャンバが、ポンプへの結合のために配置されたチャネル116を除いて液密であり、少なくとも1つのインペラピストンプレート104がシールされたチャンバ133の第1の部分を形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転駆動ユニット(例えば、自動車のエンジン)と、回転被駆動ユニット(例えば、自動車における変速トランスミッション)との間で力を伝達するための装置の改良に関する。特に、本発明は、トルクコンバータクラッチのためのシールされたピストンと、インペラクラッチのためのシールされたピストンとの一方又は両方を備えた多機能トルクコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、典型的な車両における、エンジン7と、トルクコンバータ10と、トランスミッション8と、ディファレンシャル/車軸アセンブリ9との関係を示す概略的なブロック線図を示している。自動車のエンジンからトランスミッションへトルクを伝達するためにトルクコンバータが使用されることがよく知られている。
【0003】
トルクコンバータの3つの主要な構成要素は、ポンプ37と、タービン38と、ステータ39とである。トルクコンバータは、ポンプがカバー11に溶接されると、シールされたチャンバとなる。カバーはフレックスプレート41に結合されており、このフレックスプレート41自体はエンジン7のクランクシャフト42にボルト留めされている。カバーは、カバーに溶接されたラグ又はスタッドを用いてフレックスプレートに結合されることができる。ポンプとカバーとの間の溶接された結合はエンジントルクをポンプに伝達する。したがって、ポンプは常にエンジン速度で回転する。ポンプの機能は、この回転運動を利用し、流体を半径方向外方及び軸方向へタービンに向かって送ることである。したがって、ポンプは、流体を小さな半径の入口から大きな半径の出口へ推進する遠心ポンプであり、流体のエネルギを増大させる。トランスミッションクラッチとトルクコンバータクラッチとを係合させるための圧力は、ポンプハブによって駆動される、トランスミッションにおける付加的なポンプによって提供される。
【0004】
トルクコンバータ10において、流体回路は、ポンプ(インペラと呼ばれる場合もある)と、タービンと、ステータ(リアクタと呼ばれる場合もある)とによって構成されている。流体回路は、車両が停止させられている場合にエンジンを回転させ続け、運転手によって望まれた場合に車両を加速する。トルクコンバータは、減速歯車装置と同様に、トルク比を介してエンジントルクを補足する。トルク比は、入力トルクに対する出力トルクの比である。トルク比は、タービン回転速度が低い又はゼロである(ストールとも呼ばれる)場合に最も高くなる。ストールトルク比は通常1.8〜2.2の範囲である。これは、トルクコンバータの出力トルクが入力トルクよりも1.8〜2.2倍だけ大きいことを意味する。しかしながら、出力速度は入力速度よりも著しく低い。なぜならば、タービンは出力部に結合されておりかつ回転していないが、入力部はエンジン速度で回転しているからである。
【0005】
タービン38は、車両を推進するために、ポンプ37から受け取る流体エネルギを利用する。タービンシェル22はタービンハブ19に結合されている。タービンハブ19は、タービントルクをトランスミッションシャフト43に伝達するためにスプライン結合を利用する。入力軸は、トランスミッション8における歯車及び軸と、車軸ディファレンシャル9とを介して、車輪に結合されている。タービンブレードに衝突する流体の力は、トルクとしてタービンから出力される。軸方向スラスト軸受31は、構成要素を、流体によって与えられる軸方向の力から支持する。出力トルクが、静止中の車両の慣性を克服するのに十分であると、車両は動き始める。
【0006】
流体エネルギはタービンによってトルクに変換された後、依然として流体には僅かなエネルギが残されている。小さな半径の出口44から出てくる流体は、通常は、ポンプの回転に対抗するような形式でポンプに進入する。ステータ39は、ポンプの加速を助けるために流体を方向転換させるために使用され、これにより、トルク比を増大させる。ステータ39は一方向クラッチ46を介してステータシャフト45に結合されている。ステータシャフトはトランスミッションハウジング47に結合されており、回転しない。一方向クラッチ46は、ステータ39が低速比(ポンプがタービンよりも速く回転している)において回転するのを阻止する。タービン出口44からステータ39に進入する流体は、ステータブレード48によって方向転換させられ、回転方向でポンプ37に進入する。
【0007】
ブレードの入口角度及び出口角度、ポンプ及びタービンシェルの形状、トルクコンバータの総直径とが、その性能に影響する。設計パラメータは、トルク比と、効率と、エンジンを"ランアウェイ"させることなくエンジントルクを吸収するためのトルクコンバータの能力とを含む。これは、トルクコンバータが小さすぎ、ポンプがエンジンを減速させることができない場合に起こる。
【0008】
低速比においては、トルクコンバータは正常に機能し、車両が静止した状態でエンジンを回転させ、増大した性能のためにエンジントルクを補足する。1よりも小さな速度比では、トルクコンバータの効率は100%に満たない。タービンの回転速度がポンプの回転速度に近づくにしたがって、トルクコンバータのトルク比は、約1.8〜2.2から、約1のトルク比まで次第に減少する。トルク比が1に達したときの速度比はカップリングポイントと呼ばれる。このポイントにおいては、ステータに進入する流体はもはや方向転換される必要はなく、ステータにおける一方向クラッチが、流体を、ポンプ及びタービンと同じ方向に回転させる。ステータが流体を方向転換していないので、トルクコンバータから出力されるトルクは、トルク入力と同じである。流体回路全体はユニットとして回転する。
【0009】
最大トルクコンバータ効率は、流体における損失に基づき92〜93%に限定される。したがって、トルクコンバータクラッチ49は、トルクコンバータ入力部を出力部に機械的に結合するために使用され、効率を100%に改善する。クラッチピストンプレート17は、トランスミッションコントローラによって命令されると、液圧によって作動させられる。ピストンプレート17は、内径においてOリング18によってタービンハブ19に対してシールされており、外径において摩擦材料リング51によってカバー11に対してシールされている。これらのシールは、圧力チャンバを形成し、ピストンプレート17をカバー11と係合させる。この機械的な結合は、トルクコンバータ流体回路をバイパスする。
【0010】
トルクコンバータクラッチ49の機械的結合は、ドライブトレーンに、より多くのエンジンねじれ変動を伝達する。ドライブトレーンが基本的にばね質量系であるので、エンジンからのねじれ変動は、系の固有振動数を励起することができる。ダンパは、ドライブトレーンの固有振動数を、駆動範囲から外れさせるように使用される。ダンパは、エンジン7及びトランスミッション8と直列に配置されたばね15を有しており、これにより、系の有効ばね定数を減衰させ、固有振動数を低下させる。
【0011】
トルクコンバータクラッチ49は、4つの構成要素、すなわちピストンプレート17と、カバープレート12及び16と、ばね15と、フランジ13とを有している。カバープレート12及び16はトルクをピストンプレート17から圧縮ばね15に伝達する。カバープレートウィング52は、軸方向保持のためにばね15の周囲に形成されている。ピストンプレート17からのトルクは、リベット結合部を介してカバープレート12及び16に伝達される。カバープレート12及び16は、ばね窓の縁部と接触することによって、トルクを圧縮ばね15に提供する。両カバープレートは、ばねの中心軸線の両側においてばねを支持するように協働する。ばね力は、フランジばね窓縁部との接触によって、フランジ13に伝達される。時には、フランジは、高トルク時にばねの過剰圧縮を回避するために、カバープレートの一部に係合する回転タブ又はスロットも有している。
フランジ13からのトルクは、タービンハブ19と、トランスミッション入力軸43とに伝達される。
【0012】
エネルギ吸収は、望まれるならば、時にはヒステリシスと呼ばれる摩擦によって達せられることができる。ヒステリシスは、ダンパプレートの巻き上げ及び巻出しからの摩擦を含み、したがって実際の摩擦トルクの2倍である。ヒステリシスパッケージは、概して、ダイアフラムばね(又は皿ばね)14から成り、このダイアフラムばね(又は皿ばね)は、フランジ13と、カバープレート16の一方との間に配置されており、フランジ13を他方のカバープレート12と接触させる。ダイアフラムばね14によって加えられる力の大きさを制御することによって、摩擦トルクの大きさも制御されることができる。典型的なヒステリシスの値は、10〜30Nmの範囲である。
【0013】
トルクコンバータにおけるシールされていないインペラピストンの使用が知られている。しかしながら、このようなピストンの制御性及び反応性は、ピストンと流体接続されたトルクコンバータにおける包囲する構成部材からの流体力学的効果により、低下させられる。
【0014】
軸方向の力は、インペラ又はトルクコンバータクラッチの操作のためのチャンバの加圧によってトルクコンバータにおいて生ぜしめられる。あいにく、これらの軸方向の力はトルクコンバータにおけるハウジング構成部材又は軸受にかかり、構成部材及び軸受の定格能力又は荷重支持キャパシティの増大を要求し、このことは、望ましくないことにトルクコンバータのコスト、重量及び複雑さを増大する。
【0015】
インペラクラッチ及びトルクコンバータクラッチを備えたトルクコンバータのためのトルクコンバータモードにおける動作の間に、クラッチのための所望のトルク支持キャパシティを維持するためにインペラクラッチのためのピストンにおいて最小差圧を維持することが必要である。さらに、トーラスの冷却を増大することが望ましい。あいにく、トーラスのための冷却を増大することは、差圧の減少につながる可能性がある。
【0016】
したがって、インペラクラッチ及びトルクコンバータクラッチを有するトルクコンバータにおいて、インペラクラッチのためのピストンプレートのための制御性及び応答性を増大する手段と、ハウジング構成部材及び軸受を、ピストンプレートを操作することに関連した軸方向荷重から保護するための手段と、トルクコンバータモードにおいてインペラピストンプレートのための十分な差圧を維持しながらトーラスのための冷却流を増大するための手段とが、長い間必要とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の全体的な目的は、シールされたインペラピストンプレートを備えた多機能トルクコンバータを提供することである。
【0018】
本発明の別の全体的な目的は、ピストンプレートの操作による軸方向の力をハウジング構成部材及び軸受から隔離する多機能トルクコンバータを提供することである。
【0019】
本発明のさらに別の全体的な目的は、トルクコンバータモードにおいて、トーラスのための増大した冷却流れを提供しながらインペラピストンプレートのための十分な差圧を維持する、多機能トルクコンバータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
発明の概要
本発明は、広くは、トルクをトルクコンバータのためのトルク入力部からトルクコンバータのためのインペラへ伝達するために配置されたインペラクラッチと、インペラクラッチのための少なくとも1つのインペラピストンプレートと、シールされた流体含有チャンバとを有する多機能トルクコンバータを含み、シールされたチャンバは、ポンプへの接続のために配置されたチャネルを除いて液密である。少なくとも1つのインペラピストンプレートはシールされたチャンバの第1の部分を形成している。幾つかの態様において、トルクコンバータは、シールされたチャンバの加圧によって生ぜしめられる第1の軸方向の力と第2の軸方向の力とをそれぞれ平衡させるように配置されている。幾つかの態様において、多機能トルクコンバータはプレートを有しており、プレートは、シールされたチャンバの第2の部分を形成しており、プレートと少なくとも1つのインペラプレートとは、第1の軸方向の力と第2の軸方向の力とをそれぞれ平衡させるように配置されている。幾つかの態様において、多機能トルクコンバータは結合エレメントを有しており、プレートは結合エレメントに結合されており、少なくとも1つのインペラプレートは、第2の軸方向の力をインペラクラッチを介して結合エレメントに伝達するように配置されている。幾つかの態様において、少なくとも1つのインペラプレートは、第1の軸方向の力と第2の軸方向の力とをそれぞれ平衡させるように配置された、第1のインペラプレートと第2のインペラプレートとを含む。幾つかの態様において、多機能トルクコンバータは、個々の複数のハウジング構成部材と軸受とを有しており、チャンバは、個々の複数のハウジング構成部材と軸受とを、チャンバにおける圧力によって生ぜしめられる軸方向の力から隔離するように配置されている。
【0021】
幾つかの態様において、多機能トルクコンバータは、トーラスと、少なくとも1つの流体含有チャンバと、トーラス及び少なくとも1つの流体含有チャンバを通過する流体循環経路とを有している。トルクコンバータのためのトルクコンバータモードにおいて、シールされたチャンバと少なくとも1つの流体含有チャンバとの差圧は、特定のトルク支持キャパシティを備えるインペラクラッチを閉じるように働き、トルクコンバータは、流体が流体循環経路を流過するときに差圧を維持するように配置されている。幾つかの態様において、多機能トルクコンバータは、トーラスと、トーラスを通過する流体循環経路とを有しており、流体循環経路は、シールされたチャンバから隔離されている。
【0022】
本発明は広くは、トルクをトルクコンバータ入力部からトルクコンバータのためのタービンへ伝達するように配置されたトルクコンバータクラッチと、トルクコンバータクラッチのためのロックアップピストンプレートとを有し、ロックアップピストンプレートが一方向開口を有し、第1の流体含有チャンバと、少なくとも1つの第2の流体含有チャンバとを有する、多機能トルクコンバータをも含む。第1のチャンバは、ポンプとの流体接続のために配置されたチャネルを除いて、少なくとも1つの第2のチャンバにおける圧力レベルよりも高い第1のチャンバにおける圧力レベルのために液密である。ロックアップピストンプレートは第1の流体含有チャンバの第1の部分を形成しており、トルクコンバータモードにおけるトルクコンバータの作動中、流体は、トルクコンバータのためのトーラスから少なくとも1つの第2のチャンバと一方向開口とを通って第1のチャンバ内へ流れる。幾つかの態様において、一方向開口は逆止め弁である。
【0023】
幾つかの態様において、多機能トルクコンバータは、トルクをトルク入力部からトルクコンバータのためのインペラへ伝達するように配置されたインペラクラッチを有しており、トルクコンバータクラッチの半径方向範囲の少なくとも一部は軸方向でインペラクラッチと整合させられている。幾つかの態様において、トルクコンバータは、インペラクラッチのためのインペラピストンプレートを有しており、第1のチャンバは、加圧されるとインペラプレートに軸方向の力を生ぜしめるように配置されており、第1のチャンバと少なくとも1つの第2のチャンバとの差圧が軸方向の力を平衡させる。概して、多機能トルクコンバータは個々の複数のハウジング構成部材と軸受とを有しており、幾つかの態様において、トルクコンバータは、差圧によって軸方向の力を平衡させることが個々の複数のハウジング構成部材及び軸受を軸方向の力から隔離するように配置されている。
【0024】
本発明はさらに広くは、トルクをトルクコンバータのためのカバーからトルクコンバータのためのインペラへ伝達するように配置されたインペラクラッチと、インペラクラッチのための少なくとも1つのインペラピストンプレートと、プレートと、流体含有チャンバとを有する多機能トルクコンバータを含む。チャンバは少なくとも部分的に少なくとも1つのインペラプレート及びプレートのうちの1つ又は2つ以上の組合せによって形成されており、チャンバはインペラクラッチと係合するように加圧されるように配置されており、少なくとも1つのインペラプレート及びプレートの1つ又は2つ以上の組合せはチャンバの加圧によって生ぜしめられる軸方向の力を平衡させるように少なくとも間接的に結合されている。
【0025】
本発明は、広くは、多機能トルクコンバータを形成及び操作するための方法を含む。
【0026】
本発明のこれらの目的及び利点並びにその他の目的及び利点は、本発明の好適な実施形態の以下の説明と、添付の図面及び請求項とから容易に認められるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の性質及び態様がここで、添付の図面を参照した発明の以下の詳細な説明により完全に説明される。
【0028】
まず、異なる図面における同じ参照符号は、発明の同じ又は機能的に類似の構造エレメントを表していることが認識されるべきである。本発明は、現時点で好適な態様であると考えられるものに関して説明されるが、請求項に記載の発明は開示された態様に限定されないと理解されるべきである。
【0029】
さらに、発明は、記載された特定の方法、材料及び変化態様に限定されず、もちろん変更することができる。ここで使用されている用語は、特定の態様だけを説明するためのものであり、本発明の範囲を限定しようとするものではなく、発明の範囲は、添付の請求項によってのみ限定される。
【0030】
特に定義されない限りは、ここで使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野における当業者にとって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。ここに説明されたものと同じ又は均等のあらゆる方法、装置又は材料が発明の実施又は試験において使用されることができるが、好適な方法、装置及び材料がここでは説明されている。
【0031】
図7Aは、本願において用いられる空間に関する用語を説明する円筒座標系80の斜視図である。本発明は、少なくとも部分的に円筒座標系に関連して説明される。系80は長手方向軸線81を有しており、この長手方向軸線は、以下の方向及び空間の用語のための基準として使用される。"軸方向"、"半径方向"及び"周方向"という形容詞は、軸線81、半径82(軸線81に対して直交する)又は円周83のそれぞれに対して平行な方向に関する。"軸方向"、"半径方向"及び"周方向"という形容詞は、個々の平面に対して平行な方向をいう。様々な平面の配置を明らかにするために、物体84,85及び86が用いられている。物体84の面87は軸方向平面を形成している。すなわち、軸線81はこの面に沿った線を形成している。物体85の面88は半径方向平面を形成している。すなわち、軸線82はこの面に沿った線を形成している。物体86の面89は周方向平面を形成している。すなわち、軸線83はこの面に沿った線を形成している。別の例として、軸方向の移動又は配置は軸線81に対して平行であり、半径方向の移動又は配置は半径82に対して平行であり、周方向の移動又は配置は円周83に対して平行である。
【0032】
"軸方向"、"半径方向"及び"周方向"という副詞はそれぞれ、軸線81、半径82又は円周83に対して平行な方向をいう。"軸方向"、"半径方向"及び"周方向"という副詞は、個々の平面に対して平行な方向をいう。
【0033】
図7Bは、本願において用いられる空間に関する用語を説明する図7Aの円筒座標系における物体90の斜視図である。円筒状物体90は、円筒座標系における円筒状物体を表しており、本願発明をどのようにも限定しようとするものではない。物体90は、軸方向の面91と、半径方向の面92と、周方向の面93とを有している。面91は軸方向平面の一部であり、面92は半径方向平面の一部であり、面93は周方向平面の一部である。
【0034】
"ロックするように"及び"摺動するように"という用語は、2つの物体の間の相対移動を表し、この場合、"ロックするように"は、互いに対する移動を阻止するために2つの物体が互いに係合させられている条件を表すために使用される。"摺動するように"は、2つの物体が互いに係合させられ、物体が互いに対して移動しかつ相対移動の間接触している状況を表すために使用される。"回転方向でロックする"という用語は、相対回動を指し、2つの物体の相対回動は、2つの物体の間の接触のために妨げられる。
【0035】
図8は、シールされたインペラクラッチピストンを備えた本発明のトルクコンバータ100の部分的な断面図である。トルクコンバータ100は、インペラクラッチ102と、インペラピストンプレート104と、トルクコンバータクラッチ106と、ロックアップピストンプレート108とを有している。クラッチ102は、トルクをコンバータのための入力部、例えば外側カバーアセンブリ110からインペラ112へ伝達するように配置されている。トルクは、技術上知られたあらゆる手段によってコンバータ100へ入力されることができることが理解されるべきである。例えば、幾つかの態様(図示せず)において、フレックスプレートがトルクコンバータのためのカバーに結合されており、トルクはフレックスプレートを介してカバーに伝達される。
【0036】
コンバータ100はチャンバ114をも有しており、チャンバ114の一部はプレート104によって形成されている。チャンバ114は、流体チャネル116を除いては、シールされたチャンバである。すなわち、チャンバ114は、流体のチャンバへの流入及びチャンバからの流出(チャンバの充填及び排出)を提供するために使用されるチャネル116を除いては、液密である。チャンバ114は、プレート120と外側カバーアセンブリ110との間のシール118と、プレート104とハブ126との間のシール124と、プレート104と130との間のシール128とによってシールされている。プレート130は、技術上知られたあらゆる手段、例えば溶接又はリベット留めによってプレート120に固定されている。チャネル116は、ポンプ(図示せず)、例えばコンバータが接続されたトランスミッションにおけるポンプへの接続のために配置されたチャネル132に接続されている。プレート104は前記シールされたチャンバの一部を形成している。本発明のトルクコンバータのためのシールされたインペラピストンは、図示された構成に限定されず、記載された機能を可能にするその他の構成が、請求項に記載の発明の精神及び範囲に含まれることが理解されるべきである。
【0037】
チャンバ133は部分的にプレート104及び108によって形成されている。チャンバ133は、主としてクラッチ106を介したチャンバ134との流体接続を介して排出及び充填される。例えば、さらに以下に説明されるように、トルクコンバータモードにおいて、クラッチ106は開いており、チャンバ133と134との間の比較的無制限の流体接続を提供する。流体のチャンバ133への流入及びチャンバ133からの流出は、さらに以下で説明するように、チャネル135によっても提供される。チャンバ134への及びチャンバ134からの流体は部分的にチャネル136を介して提供され、このチャネルは、上述のポンプに接続されるように配置されたチャネル138に接続されている。
【0038】
以下は、トルクコンバータモードにおけるコンバータ100の作動の説明である。トルクコンバータモードにおいて、クラッチ102は係合され、クラッチ106は解離される。インペラピストンプレート104は、インペラクラッチを作動するように配置されている。チャンバ114は、チャネル116を介して所望の圧力レベルに充填又は加圧され、チャンバ133の圧力は、チャンバ114が軸方向の力を方向139にプレート104に対して加えるように調整され、チャンバ144と133との圧力差は、方向139でのプレート104に対する正味の軸方向の力が、クラッチ102に所望のトルク支持キャパシティを付与するのに十分であるようになっている。すなわち、プレート104は、プレート104のセグメント142と、プレート140,144及び146と、プレート104,140,144及び146の間に配置された摩擦材料148とを係合させるように方向139に変位させられる。摩擦材料148は、技術上知られたあらゆるタイプであることができ、技術上知られたあらゆる形式でプレート104,140,144及び146の間に配置されることができる。トルクは、アセンブリ110から、ダンパ149へ、プレート104へ、クラッチ102を介してインペラリング150へ、インペラシェル152へ伝達され、インペラシェルがインペラ112を回転させる。さらに以下に説明されるように、クラッチ106は開いたままである。クラッチ102は図示された構成部材の数及び構成に限定されず、構成部材のその他の数及び構成は請求された発明の精神及び範囲に含まれることが理解されるべきである。
【0039】
有利には、トルクコンバータ100は、チャンバ114の加圧に関連した軸方向の力、例えば方向139でのプレート104への軸方向の力と方向154でのプレート120への軸方向の力とを平衡させるように構成されている。すなわち、概して、プレート104と120とは、軸方向の力を平衡させるために、インターロックされているか、少なくとも間接的に結合されているか、又は相互結合されている。幾つかの態様において、プレートは、溶接156を含むがこれに限定されない技術上知られたあらゆる手段によってインペラリング150に結合されている。リング150自体は、溶接158を含むがこれに限定されない技術上知られたあらゆる手段によってインペラシェル152に結合されている。したがって、方向154でプレート120に加えられる軸方向の力はリングに伝達される。方向139でプレート104に加えられる軸方向の力はクラッチ102を介してリングに伝達される。知られているように、チャンバ114の加圧は、プレート104及び120における実質的に等しい、反対向きの軸方向の力を生ぜしめる。したがって、これらの等しい、反対向きの力は、両方ともインペラリングに作用し、リングにおいて互いに実質的に相殺し、力を平衡させる。したがって、トルクコンバータにおける構成部材の構造への軸方向の力の効果は、チャンバ114のバルーニング条件に限定される。
【0040】
コンバータ100は、個々の複数のハウジング構成部材及び軸受を有する。例えば、幾つかの態様において、ハウジング構成部材はカバー110及び160を含み、軸受は軸受162,164,166を含む。有利には、ハウジング構成部材及び軸受は、上述の軸方向の力を平衡させることによって、チャンバ114を充填することによって生ぜしめられる軸方向の力から隔離されている。したがって、ハウジング構成部材の構成は、構成部材が上述の軸方向の力を受けないのでより頑丈でなく形成されることができ、構成部材のコスト及び複雑さを低減する。さらに、軸受は、軸方向の力によって課せられるであろう付加的なスラスト荷重を受けないので、軸受のコスト及び複雑さが低減されることができる。すなわち、軸受の定格荷重が低減されることができる。さらに、軸方向の荷重はプレートの両側で平衡されるので、荷重は、トルクコンバータのダイナミックスに影響するおそれのある望ましくない力ベクトルを与えない。
【0041】
インペラとタービン170とは異なる速度で回転するので、トルクコンバータモードの間にコンバータのトーラス168に著しい熱が生ぜしめられる。有利には、インペラクラッチのための所望のトルク支持キャパシティを維持しながら、トルクコンバータモードにおける動作中にトーラスの冷却を最適化するようにコンバータ100は配置されている。幾つかの態様において、流体循環路172は、チャンバ133を通り、(開いている)クラッチ106を横切り、チャンバ134及びトーラスの内部へ通じている。トーラスから、経路はチャネル136及び138を通って冷却装置(図示せず)へ通じている。流体は、チャネル136及び174を通ってチャンバ133内に供給される。上述のように、クラッチ102のための所望のトルク支持キャパシティを得るためにチャンバ144と133との間に最小圧力差が必要とされる。有利には、経路172は、所望の圧力差を維持しながらトーラスに冷却流れを提供する。特に、経路の構成は、チャンバ133に、望ましくないことに上述の圧力差を低減する背圧がチャンバ133に形成されるのを妨げる。実際には、チャンバ133からトーラス内への流れは、チャンバ133における真空効果を形成する傾向があり、チャンバ133における圧力を低下させ、上述の差圧を増大させる。同時に、チャンバ134における圧力は、クラッチ106を開いておくために十分に低く保たれる。
【0042】
幾つかの態様において、経路172のための付加的な流れが望まれるか又はチャンバ133における付加的な吸引効果が望まれるならば、経路172は、摩擦材料148、通路176、チャンバ178及び逆止め弁180における通路又は溝(図示せず)によって増大される。すなわち、流体は、チャンバ133から、摩擦材料における溝を通り、通路176を通り、チャンバ178を通り、逆止め弁を通り、チャンバ134へ流れる。トーラスの内側において、流体流れは、上述された経路を結合する。有利には、クラッチ102を通る流れはクラッチを冷却し、クラッチの作動条件及び寿命を改善する。
【0043】
トルクコンバータ100をロックアップモードで作動させるために、チャンバ114における圧力は、クラッチ102をつないだままにしておくために維持され、チャンバ134における圧力は、チャンバ133における圧力を抜きながら増大される。すなわち、クラッチ102をつなぐ差圧はさらに増大され、チャンバ133及び134の間の差圧はプレート108に方向154で軸方向に力を加え、クラッチ106をつなぐ。チャンバ134は部分的にシール182によってシールされている。幾つかの態様において、(リング150又はプレート108に結合されることができる)摩擦インターフェース184に溝が設けられており、これにより、冷却流れを摩擦インターフェースに流過させ、クラッチの作動条件及び寿命を改善する。チャンバ135及び174を介して冷却装置へチャンバ133を排出することにより、流体はチャンバ134からクラッチ106を通ってチャンバ133へ抜き出される。
【0044】
トルクコンバータ100をアイドリング切断モードにおいて作動させるために、チャンバ114における流体はチャネル116及び132を介して排出され、チャンバ133における圧力を高く保ちながら、チャンバにおける圧力を減じる。チャンバ134はチャネル136及び138を介して排出される。したがって、プレート104は方向154に移動させられ、プレート108は方向139に移動させられ、クラッチ102及び106を開く。
【0045】
図9は、シールされたインペラクラッチピストンを備えた本発明のトルクコンバータ200の部分的な断面図である。トルクコンバータ200は、インペラクラッチ202と、インペラピストンプレート204及び205と、トルクコンバータクラッチ206と、ロックアップピストンプレート208とを有している。クラッチ202は、トルクをコンバータのための入力部、例えば外側カバーアセンブリ210からインペラ212へ伝達するように配置されている。トルクは、技術上知られたあらゆる手段によってコンバータ200へ入力されることができることが理解されるべきである。例えば、幾つかの態様(図示せず)において、トルクコンバータのためのフレックスプレートがカバーに結合されており、トルクはフレックスプレートを介してカバーに伝達される。
【0046】
コンバータ200はチャンバ214をも有しており、チャンバ214の一部はプレート204及び205によって形成されている。チャンバ214は、流体チャネル216を除いては、シールされたチャンバである。すなわち、チャンバ214は、流体のチャンバへの流入及びチャンバからの流出(チャンバの充填及び排出)を提供するために使用されるチャネル216を除いては、液密である。チャンバ214は、プレート204と外側カバーアセンブリ210との間のシール218と、プレート205とハブ226との間のシール219と、プレート204と230との間のシール228とによってシールされている。プレート230は、技術上知られたあらゆる手段、例えば溶接又はリベット留めによってプレート205に固定されている。チャネル216は、ポンプ(図示せず)、例えばコンバータが接続されたトランスミッションにおけるポンプへの接続のために配置されたチャネル282に接続されている。プレート204及び205は、シールされたチャンバの一部を形成している。本発明のトルクコンバータのためのシールされたインペラピストンは、図示された構成に限定されず、記載された機能を可能にするその他の構成が、請求項に記載の発明の精神及び範囲に含まれることが理解されるべきである。
【0047】
チャンバ233は部分的にプレート205及び208によって形成されている。チャンバ233は排出され、主としてクラッチ206を介したチャンバ234との流体接続を介して充填される。例えば、さらに以下に説明されるように、トルクコンバータモードにおいて、クラッチ206は開いており、チャンバ233と234との間の比較的無制限の流体接続を提供する。チャンバ234への及びチャンバ134からの流体は部分的にチャネル236を介して提供され、このチャネルは、上述のようなポンプに接続されるように配置されたチャネル238に接続されている。チャンバ239は少なくとも部分的にプレート204及びカバー240によって形成されており、チャネル232に接続されたチャネル241を介して充填及び排出される。
【0048】
以下は、トルクコンバータモードにおけるコンバータ200の作動の説明である。トルクコンバータモードにおいて、クラッチ202は係合され、クラッチ206は解離される。インペラピストンプレート204及び205は、インペラクラッチを作動するように配置されている。チャンバ214はチャネル216を介して所望の圧力レベルまで充填若しくは加圧される。チャンバ233及び239における個々の圧力は、チャンバ214が方向242での軸方向の力をプレート204に加え、プレート205に方向243で反対の軸方向の力を加えるように調節される。チャンバ214と、チャンバ233及び239とのそれぞれの差圧は、方向242及び243でのプレート204及び205における正味の軸方向の力がそれぞれ、クラッチ202に所望のトルク支持キャパシティを与えるようになっている。すなわち、プレート204及び205はインペラリング244及び246それぞれと、プレート204と205との間に配置された摩擦材料248と、リング244及び246とに係合するように移動させられる。摩擦材料は、技術上知られたあらゆるタイプであることができ、技術上知られたあらゆる形式でプレート204及び205、及びリング244及び246の間に配置されることができる。トルクは、アセンブリ210から、ダンパ249、(プレートの外周においてプレート204に接続された)プレート205へ伝達され、クラッチ202を介して、インペラリング、インペラシェル252へ伝達され、インペラシェルがインペラ212を回転させる。さらに以下に説明されるように、クラッチ206は開いたままである。クラッチ202は図示された構成部材の数及び構成に限定されず、構成部材のその他の数及び構成は請求された発明の精神及び範囲に含まれることが理解されるべきである。
【0049】
有利には、トルクコンバータ200は、チャンバ214の加圧に関連した軸方向の力、例えば方向242でのプレート204への軸方向の力と方向243でのプレート205への軸方向の力とを平衡させるように構成されている。すなわち、概して、プレート204と205とは、軸方向の力を平衡させるために、インターロックされているか、相互結合されているか、又は少なくとも間接的に結合されている。インペラリング244は、溶接256を含むがこれに限定されない技術上知られたあらゆる手段によってリング246に結合されている。リング246自体は、溶接258を含むがこれに限定されない技術上知られたあらゆる手段によってインペラシェル252に結合されている。したがって、リング244及び246は中実な結合されたユニットを形成している。方向243でプレート205に加えられる軸方向の力は、リング246に伝達され、方向242でプレート204に加えられる軸方向の力は、リング244に伝達される。知られているように、チャンバ214の加圧は、プレート204及び205における実質的に等しい、反対向きの軸方向の力を生ぜしめる。したがって、これらの等しい、反対向きの力は、両方ともインペラリングに作用し、リングにおいて互いに実質的に相殺し、力を平衡させる。したがって、トルクコンバータにおける構成部材の構造への軸方向の力の効果は、チャンバ214のバルーニング条件に限定される。
【0050】
コンバータ200は、個々の複数のハウジング構成部材及び軸受を有する。例えば、幾つかの態様において、ハウジング構成部材はカバー240及び260を含み、軸受は軸受262,264及び266を含む。有利には、チャンバ214を充填することによって生ぜしめられる軸方向の力は、上述の軸方向の力を平衡させることによって、ハウジング構成部材及び軸受から隔離されている。したがって、ハウジング構成部材の構成は、構成部材が上述の軸方向の力を受けないのでより頑丈でなく形成されることができ、構成部材のコスト及び複雑さを低減する。さらに、軸受は、軸方向の力によって課せられるであろう付加的なスラスト荷重を受けないので、軸受のコスト及び複雑さが低減されることができる。すなわち、軸受の定格荷重が低減されることができる。さらに、軸方向の荷重はプレートの両側で平衡されるので、荷重は、トルクコンバータのダイナミックスに影響するおそれのある望ましくない力ベクトルを与えない。
【0051】
インペラとタービン270とは異なる速度で回転するので、トルクコンバータモードの間にコンバータのトーラス268に著しい熱が生ぜしめられる。有利には、コンバータ200は、トルクコンバータモードにおける作動中にトーラスの冷却を最適化するように配置されている。幾つかの態様において、流体循環経路272は、チャンバ239を通り、通路273を通り、クラッチ202を横切り、摩擦材料248における溝(図示せず)を通り、通路274を通り、(開いた)クラッチ206を通り、チャンバ234及びトーラス内へ進入する。有利には、クラッチ202を通る流れはクラッチを冷却し、クラッチの作動条件及び寿命を改善する。
【0052】
トーラスから、経路はチャネル236及び238を通って冷却装置(図示せず)へ通じている。流体は、チャネル241及び232を通ってチャンバ239内に供給される。上述のように、クラッチ202のための所望のトルク支持キャパシティを得るためにチャンバ214とチャンバ233及び239との間に最小差圧が必要とされる。有利には、経路272は、所望の差圧を維持しながらトーラスに冷却流れを提供する。特に、経路の構成は、チャンバ233及び239に、望ましくないことに上述の差圧を低減する背圧がチャンバ133に形成されるのを妨げる。実際には、チャンバ233及び239からトーラス内への流れは、チャンバ233及び239における真空効果を形成する傾向があり、チャンバ233及び239における圧力を低下させ、上述の差圧を増大させる。同時に、チャンバ234における圧力は、クラッチ206を開いておくために十分に低く保たれる。
幾つかの態様において、通路273及び274は含まれておらず、流体は、チャンバ239から、摩擦材料248における溝を通ってチャンバ233へ流れる。
【0053】
トルクコンバータ200をロックアップモードで作動させるために、チャンバ214における圧力は、クラッチ202をつないだままにしておくために維持され、チャンバ234における圧力は、(クラッチ202、チャンバ239及びチャネル241を介して)チャンバ233における圧力を抜きながら増大される。すなわち、クラッチ202をつなぐ差圧はさらに増大され、チャンバ233及び234の間の差圧はプレート208に方向242で軸方向に力を加え、クラッチ206をつなぐ。チャンバ234は部分的にシール276によってシールされている。幾つかの態様において、(リング246又はプレート208に結合されることができる)摩擦インターフェース284に溝が設けられており、これにより、冷却流れを摩擦インターフェースに流過させ、クラッチの作動条件及び寿命を改善する。チャンバ233の排出により、流体は、チャンバ234からクラッチ206を通ってチャンバ233へ引き出される。
【0054】
トルクコンバータ200をアイドリング切断モードにおいて作動させるために、チャンバ214における流体はチャネル216を介して排出され、チャンバにおける圧力を減じる。チャンバ239は、チャンバにおける圧力を上昇させるためにチャネル241及び232を介して充填される。流体は、クラッチ202(及び存在するならば開口273及び274)を介して、チャンバ233も充填する。流体は、チャネル236及び238を通ってチャンバ234から排出される。したがって、プレート204及び205はそれぞれ方向243及び242に移動させられ、クラッチ202を開き、プレート208は方向243に移動させられ、クラッチ206を開く。
【0055】
図10は、シールされたトルクコンバータクラッチピストンを備えた本発明のトルクコンバータ300の部分的な断面図である。トルクコンバータ300は、インペラクラッチ302と、インペラピストンプレート304と、トルクコンバータクラッチ306と、ロックアップピストンプレート308とを有している。クラッチ302は、トルクをコンバータのための入力部、例えば外側カバーアセンブリ310からインペラ312へ伝達するように配置されている。トルクは、技術上知られたあらゆる手段によってコンバータ300へ入力されることができることが理解されるべきである。例えば、幾つかの態様(図示せず)において、トルクコンバータのためのフレックスプレートがカバーに結合されており、トルクはフレックスプレートを介してカバーに伝達される。
【0056】
コンバータ300はチャンバ314をも有しており、チャンバの一部はプレート304及び308によって形成されている。チャンバ314は、流体チャネル316を除いては、シールされたチャンバである。すなわち、チャンバ314は、流体のチャンバへの流入及びチャンバからの流出(チャンバの充填及び排出)を提供するために使用されるチャネル316を除いては、液密である。チャンバ314は、プレート304と外側カバーアセンブリ310との間のシール318と、プレート308とハブ326との間のシール319と、プレート304と308との間のシール328とによってシールされている。チャネル316は、ポンプ(図示せず)、例えばコンバータが接続されたトランスミッションにおけるポンプへの接続のために配置されたチャネル332に接続されている。プレート304及び308は、シールされたチャンバの一部を形成している。本発明のトルクコンバータのためのシールされたインペラ又はトルクコンバータピストンは、図示された構成に限定されず、記載された機能を可能にするその他の構成が、請求項に記載の発明の精神及び範囲に含まれることが理解されるべきである。
【0057】
チャンバ333は部分的にプレート308及びタービンカバー335によって形成されている。チャンバ333は、主としてクラッチ306を介したチャンバ334との流体接続を介して排出及び充填される。チャンバ333と334とは流体接続されている。チャンバ334への及びチャンバ334からの流体は部分的にチャネル336を介して提供され、このチャネルは、上述のようなポンプに接続されるように配置されたチャネル338に接続されている。チャンバ339は少なくとも部分的にプレート304及びカバー340によって形成されており、チャネル342に接続されたチャネル341を介して充填及び排出される。
【0058】
以下は、トルクコンバータモードにおけるコンバータ300の作動の説明である。トルクコンバータモードにおいて、クラッチ302は係合され、クラッチ306は解離される。プレート304は、インペラクラッチを作動するように配置されている。チャンバ314はチャネル316を介して所望の圧力レベルまで充填若しくは加圧される。チャンバ339における圧力は、チャンバ314がプレート304に方向343で軸方向の力を加えるように逃がされる。チャンバ333及び334における圧力はより高く保たれ、チャンバ333における圧力は、チャンバ314における圧力と実質的に等しく、クラッチ306を開いたまま保つ。チャンバ314とチャンバ339との個々の差圧は、方向343でのプレート304への正味の軸方向の力がそれぞれ、クラッチ302に所望のトルク支持キャパシティを与えるのに十分である。すなわち、プレート304は、インペラリング344と、プレート345及び346と、プレート304、345及び346の間に配置された摩擦材料348と、リング344とに係合するように移動させられる。摩擦材料は、技術上知られたあらゆるタイプであることができ、技術上知られたあらゆる形式でプレート304,345及び346と、リング344の間に配置されることができる。トルクは、アセンブリ310から、ダンパ349、クラッチ302及びリング344、インペラシェル352へ伝達され、インペラシェルはインペラ312を回転させる。インペラリング344は、溶接354を含むがこれに限定されない技術上知られたあらゆる手段によってリング352に結合されている。さらに以下に説明されるように、クラッチ306は開いたままである。クラッチ302は図示された構成部材の数及び構成に限定されず、構成部材のその他の数及び構成は請求された発明の精神及び範囲に含まれることが理解されるべきである。
【0059】
有利には、トルクコンバータ300は、トルクコンバータモードにおけるトルクコンバータの作動に関連した軸方向の力を平衡させるように構成されている。例えば、チャンバ314を加圧することにより、方向343でプレート304に軸方向の力が生ぜしめられる。さらに、上述のように、チャンバ339は排出され、チャンバ333及び334における圧力が高く保たれる。したがって、チャンバ333及び334とチャンバ339との差圧がインペラシェル352を方向353へ押圧する。インペラリング344は、技術上知られたあらゆる手段、例えば溶接354によってシェル352に結合されている。したがって、プレート304における軸方向の力はクラッチ302を介してリング344に伝達される。上述のように、チャンバ333及び334とチャンバ339との差圧はシェル352を方向353に押圧し、リング352に(プレート304に課せられた軸方向の力に関して)等しく反対向きの力を生じる。したがって、プレート305における力と、チャンバ333及び334とチャンバ339との差圧によって生ぜしめられた力とは、両方ともリング352に作用させられ、リングの両側において互いに平衡する。
【0060】
幾つかの態様において、プレート308はプレート304と軸方向にかつ摺動するように係合させられ、例えば、プレート308のセグメント356は、プレート304のセグメント357と軸方向にかつ摺動するように係合させられる。したがって、プレートは、チャンバ314における圧力が変化させられると互いに対して軸方向に移動することができる。しかしながら、プレートの個々の軸方向移動は制限されている。幾つかの態様において、トルクコンバータ300はプレート304にスナップリング358を有する。リング358は方向353でのプレート308の移動を妨害する。
【0061】
コンバータ300は、個々の複数のハウジング構成部材及び軸受を有する。例えば、幾つかの態様において、ハウジング構成部材はカバー340及び360を含み、軸受は軸受362,364,366及び367を含む。有利には、チャンバ314を充填することによって生ぜしめられる軸方向の力は、上述の軸方向の力を平衡させることによって、ハウジング構成部材及び軸受から隔離されている。したがって、ハウジング構成部材の構成は、構成部材が上述の軸方向の力を受けないのでより頑丈でなく形成されることができ、構成部材のコスト及び複雑さを低減する。さらに、軸受は、軸方向の力によって課せられるであろう付加的なスラスト荷重を受けないので、軸受のコスト及び複雑さが低減されることができる。すなわち、軸受の定格荷重が低減されることができる。さらに、軸方向の荷重はプレートの両側で平衡されるので、荷重は、トルクコンバータのダイナミックスに影響するおそれのある望ましくない力ベクトルを与えない。
【0062】
インペラとタービン370とは異なる速度で回転するので、トルクコンバータモードの間にコンバータのトーラス368に著しい熱が生ぜしめられる。有利には、コンバータ300は、トルクコンバータモードにおける作動中にトーラスの冷却を最適化するように配置されている。幾つかの態様において、流体循環経路372はトーラスからチャンバ333を通り、クラッチ一方向開口374を通り、チャンバ314に流入する。開口374はチャンバ334からチャンバ314へのみ流れさせ、チャンバ314からチャンバ334への流れを遮断する。経路372は、チャンバ338及び336からトーラスに進入し、経路は、チャネル316及び332を通ってチャンバ314から排出される。開口374は技術上知られたあらゆる一方向開口であることができる。幾つかの態様において、開口374は逆止め弁である。
【0063】
上述のように、クラッチ302のための所望のトルク支持キャパシティを得るためにチャンバ314と339との間に最小圧力差が必要とされる。有利には、経路372は、所望の差圧を維持しながらトーラスに冷却流れを提供する。同時に、チャンバ334における圧力は、クラッチ306を開いておくために十分に低く保たれる。
【0064】
トルクコンバータ300をロックアップモードにおいて作動させるために、チャンバ314における圧力が増大され、チャンバ339における圧力が抜かれ、チャンバ334における圧力は、チャンバ339における圧力よりも高く、チャンバ314における圧力よりも低い。すなわち、クラッチ302をつなぐ差圧はさらに増大され、チャンバ314及び334の間の差圧はプレート306に方向353で軸方向に力を加え、クラッチ306をつなぐ。幾つかの態様において、摩擦インターフェースは、摩擦インターフェースに冷却流を流過させるように溝が形成されており、クラッチの作動条件及び寿命を改善する。チャンバ339の排出により、流体は、チャンバ334からクラッチ302を通ってチャンバ339へ引き出される。
【0065】
トルクコンバータ300をアイドリング切断モードにおいて作動させるために、チャンバ314における流体はチャネル316及び332を介して排出され、チャンバにおける圧力を減じる。チャンバ339は、チャンバにおける圧力を上昇させるためにチャネル341及び342を介して充填され、チャンバ334は、チャンバにおける圧力を上昇させるためにチャネル336及び338を介して充填される。したがって、プレート304及び308はそれぞれ方向353及び343に移動させられ、クラッチ302及び306を開く。幾つかの態様において、ピストン304における軸方向ストッパ(図示せず)は、アイドリング切断モードにおいてプレート304がクラッチ306に当接するのを妨げる。
【0066】
以下の説明は図8から図10までに適用可能である。上述のように、トルクコンバータにおけるクラッチのためのシールされていないピストンは制御性問題を示すことができる。有利には、シールされたチャンバは、個々のクラッチのより正確な、反復可能な制御を提供するために本発明のトルクコンバータにおいて使用されている。例えば、図8、図9及び図10におけるチャンバ114,214及び314はそれぞれ、シールされており、クラッチ102,202及び302それぞれのより正確な制御を可能にする。特に、シールされたチャンバの容積が知られているので、特定の圧力及び温度における特定容積流体によるチャンバの圧力変化は、正確に予測されることができる。さらに、有利には、チャンバがシールされていない場合にチャンバと流体接続されるであろう、包囲する構成部材の液圧効果が排除されることができる。例えば、これらの効果は容易に予測可能ではなく、適切な流体制御の実行を妨げ、予測可能であるとしても、これらの効果は望ましくないことにクラッチの作動を減速させる。
【0067】
クラッチ102,202及び302のための上述の冷却は、クラッチのスリッピング又は部分係合を伴う発進時又はクラッチ制御シーケンス時に特に有利であることができる。例えば、このようなイベント又は制御シーケンスは、2006年12月12日に出願された、共同で所有されており、ひいては引用不能な米国特許出願第11/637639号明細書、"METHOD ANS SYSTEM FOR CONTROLLING ENGINE SPEED, ENGINE TORQUE AND OUTPUT FROM A TORQUE CONVERTER"、及び2006年12月22日に出願された、共同で所有された、ひいては引用不能な米国特許仮出願第60/876650号明細書、"METHOD OF OPERATING A CLUTCH DURING A VEHICLE LAUNCH"に記載されている。
【0068】
本発明は、多機能トルクコンバータを形成及び操作する方法を含む。第1のステップは、インペラクラッチのための少なくとも1つのインペラピストンを備えたシールされた流体含有チャンバの第1の部分を形成し、第2のステップは、インペラクラッチをつなぐために、シールされたチャンバを加圧する。概して、トルクコンバータは、個々の複数のハウジング構成部材及び軸受を有しており、第2のステップは複数の軸方向の力を生ぜしめる。次いで、第3のステップは、個々の複数のハウジング構成部材及び軸受を複数の軸方向の力から隔離するか、又は第4のステップは複数の軸方向の力を平衡させる。幾つかの態様において、トルクコンバータはプレートを有し、第5のステップは、プレートを備えたシールされたチャンバの第2の部分を形成し、第2のステップが、プレート及び少なくとも1つのインペラプレートそれぞれにおける第1及び第2の軸方向で反対向きの力を生ぜしめ、第4のステップが、プレート及び少なくとも1つのインペラプレートの両側の第1及び第2の軸方向の力を平衡させることを含む。
【0069】
幾つかの態様において、トルクコンバータは結合エレメントを有し、第6のステップはプレートを結合エレメントに結合し、第4のステップは、第2の軸方向の力をインペラクラッチを介して結合エレメントに伝達することを含む。
【0070】
幾つかの態様において、少なくとも1つのインペラプレートは第1及び第2のインペラプレートを含み、第7のステップが、第1及び第2のインペラプレートを備えたシールされたチャンバの第3の部分を形成し、第4のステップが、第1及び第2のインペラプレートの両側の第1及び第2の軸方向の力を平衡させる。
【0071】
概して、トルクコンバータはトーラスを有しており、幾つかの態様において、少なくとも1つの流体含有チャンバをも有している。次いで、第8のステップは、シールされたチャンバ及び少なくとも1つの流体含有チャンバを加圧し、シールされたチャンバと少なくとも1つの流体含有チャンバとの間の差圧を生ぜしめ、差圧が、所望のトルク支持キャパシティでインペラクラッチを作動させるのに必要な値又はレベルを有しており、第9のステップが、流体をトーラスに循環させ、差圧を維持しながら少なくとも1つの流体含有チャンバにトーラスを冷却させる。幾つかの態様において、第9のステップは循環流体をシールされたチャンバから隔離する。
【0072】
本発明は、多機能トルクコンバータを形成及び操作する別の方法を含む。第1のステップは、トルクコンバータクラッチのためのロックアップピストンプレートから第1の流体含有チャンバの第1の部分を形成する。第2のステップは、ロックアッププレートを備えた第2の流体含有チャンバの部分を形成する。第3のステップは、ポンプとの流体接続のために配置されたチャネルを除いて、第2のチャンバにおける第2の圧力レベルよりも高い第1のチャンバ内の第1の圧力レベルのために液密であるように第1のチャンバをシールする。第4のステップは、トルクコンバータモードにおけるトルクコンバータの作動に関連して第1のチャンバ内の圧力を第3の圧力レベルに調節する。第5のステップは、流体をトルクコンバータのためのトーラスから第2のチャンバ及びロックアッププレートを介して第1のチャンバへ循環させる。第6のステップは第1のチャンバ内の圧力を第3の圧力レベルに維持する。
【0073】
幾つかの態様において、トルクコンバータはインペラクラッチを有しており、第7のステップは、トルクコンバータクラッチがインペラクラッチと少なくとも部分的に軸方向で整合させられるように、トルクコンバータクラッチ及びインペラクラッチの少なくとも1つを半径方向で整合させる。幾つかの態様において、インペラクラッチはインペラピストンプレートを有しており、第8のステップは、インペラピストンプレートを備えた第1のチャンバの第2の部分を形成し、第9のステップは、第1のチャンバにおける圧力を調節することによってインペラピストンに軸方向に力を加え、第10のステップは、第1のチャンバと少なくとも1つの第2のチャンバとの間の差圧を生ぜしめるように少なくとも1つの第2のチャンバにおける圧力を調節し、第10のステップは差圧によって軸方向の力を平衡させる。概して、トルクコンバータは、個々の複数のハウジング構成部材及び軸受を有し、ステップ10は、個々の複数のハウジング構成部材及び軸受を軸方向の力から隔離することを含む。
【0074】
本発明は、多機能トルクコンバータを形成及び操作する別の方法を含む。第1のステップは、インペラクラッチのための少なくとも1つのピストンプレートとプレートとのうちの1つ又は2つ以上の組合せによって、流体含有チャンバの少なくとも一部を形成する。第2のステップは、インペラクラッチをつなぐためにチャンバを加圧する。第3のステップは、少なくとも1つのインペラプレートとプレートとのうちの1つ又は2つ以上の組合せを少なくとも間接的に結合する。第4のステップは、チャンバの加圧によって生ぜしめられる、少なくとも1つのインペラプレート及びプレートの1つ又は2つ以上の組合せの中で、軸方向の力を平衡させる。
【0075】
したがって、本発明の目的は効率的に達成されるが、発明に対する修正及び変更が当業者に容易に明らかであるべきであり、これらの修正は、請求項に記載された発明の精神及び範囲に含まれるものである。前記説明は、本発明の例を示しており、限定するものと考えられるべきでないことも理解される。したがって、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本発明のその他の実施形態が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】図1は、ドライブトレーンにおけるトルクコンバータの関係及び機能を説明することを助けるための、自動車における動力伝達経路の概略的なブロック線図である。
【図2】自動車のエンジンに固定されて示されている、従来のトルクコンバータの断面図である。
【図3】図2に示された線3−3に沿って見た、図2に示されたトルクコンバータの平面図である。
【図4】概して図3に示された線4−4に沿って見た、図2及び図3に示されたトルクコンバータの断面図である。
【図5】図2に示されたトルクコンバータの第1の分解図であり、分解されたトルクコンバータを左から見たものとして示されている。
【図6】図2に示されたトルクコンバータの第2の分解図であり、分解されたトルクコンバータを右から見たものとして示されている。
【図7A】本願において用いられた空間的な用語を示している、円筒座標系の斜視図である。
【図7B】本願において用いられる空間に関する用語を説明する図7Aの円筒座標系における物体の斜視図である。
【図8】シールされたインペラクラッチピストンを備えた本発明のトルクコンバータの部分的な断面図である。
【図9】シールされたインペラクラッチピストンを備えた本発明のトルクコンバータの部分的な断面図である。
【図10】シールされたトルクコンバータクラッチピストンを備えた本発明のトルクコンバータの部分的な断面図である。
【符号の説明】
【0077】
100,200,300 トルクコンバータ、 102,202,302 インペラクラッチ、 104,204,205,304 インペラピストンプレート、 106,206,306 トルクコンバータクラッチ、 108,208,308 ロックアップピストンプレート、 110,210,310 外側カバーアセンブリ、 112,212,312 インペラ、 114,214,314 チャンバ、 116,216,316 チャネル、 118,218,318 シール、 120 プレート、 124 シール、 126,226 ハブ、 128,228 シール、 132,232,332 チャネル、 133,134,333,334 チャンバ、 135,136,138,236,238,336,338 チャネル、 140,144,146 プレート、 148 摩擦材料、 150 インペラリング、 152 インペラシェル、 156,158 溶接、 160 カバー、 162,164,166 軸受、 168,268,368 トーラス、 170,270,370 タービン、 172 流体循環経路、 174,274 チャネル、 176 通路、 178 チャンバ、 180 逆止め弁、 182 シール、 184 摩擦インタフェース、 233,239,339 チャンバ、 240,260 カバー、 244,246 リング、 249 ダンパ、 252 インペラシェル、 262,264,266 軸受、 273 通路、 372 流体循環経路、 374 クラッチ一方向開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多機能トルクコンバータにおいて、
トルクをトルクコンバータのためのトルク入力部から前記トルクコンバータのためのインペラへ伝達するように配置されたインペラクラッチが設けられており、
前記インペラクラッチのための少なくとも1つのインペラピストンプレートが設けられており、
シールされた流体含有チャンバが設けられており、該シールされたチャンバが、ポンプへの結合のために配置されたチャネルを除いて液密であり、前記少なくとも1つのインペラピストンプレートが前記シールされたチャンバの第1の部分を形成していることを特徴とする、多機能トルクコンバータ。
【請求項2】
前記トルクコンバータが、前記シールされたチャンバの加圧によって生ぜしめられる第1の軸方向の力と第2の軸方向の力とをそれぞれ平衡させるように配置されている、請求項1記載の多機能トルクコンバータ。
【請求項3】
プレートが設けられており、該プレートが前記シールされたチャンバの第2の部分を形成しており、前記プレートと前記少なくとも1つのインペラプレートとが、前記第1の軸方向の力と前記第2の軸方向の力とをそれぞれ平衡させるように配置されている、請求項2記載の多機能トルクコンバータ。
【請求項4】
結合エレメントが設けられており、前記プレートが前記結合エレメントに結合されており、前記少なくとも1つのインペラプレートが、前記第2の軸方向の力を前記インペラクラッチを介して前記結合エレメントに伝達するように配置されている、請求項3記載の多機能トルクコンバータ。
【請求項5】
前記少なくとも1つのインペラプレートが、前記第1の軸方向の力と第2の軸方向の力とをそれぞれ平衡させるように配置された第1のインペラプレートと第2のインペラプレートとを含む、請求項2記載の多機能トルクコンバータ。
【請求項6】
個々の複数のハウジング構成部材及び軸受が設けられており、前記チャンバが、前記個々の複数のハウジング構成部材及び軸受を、前記チャンバにおける圧力によって生ぜしめられる軸方向の力から隔離するように配置されている、請求項1記載の多機能トルクコンバータ。
【請求項7】
トーラスと、少なくとも1つの流体含有チャンバと、前記トーラスと前記少なくとも1つの流体含有チャンバとを通過する流体循環経路とが設けられており、前記トルクコンバータのためのトルクコンバータモードにおいて、前記シールされたチャンバと前記少なくとも1つの流体含有チャンバとの間の差圧が、所定のトルク支持キャパシティを備える前記インペラクラッチをつなぐように働き、前記トルクコンバータが、流体が前記流体循環経路を流過する時に前記差圧を維持するように配置されている、請求項1記載の多機能トルクコンバータ。
【請求項8】
トーラスと、該トーラスを通過する流体循環経路とが設けられており、該流体循環経路が前記シールされたチャンバから隔離されている、請求項1記載の多機能トルクコンバータ。
【請求項9】
多機能トルクコンバータにおいて、
トルクを前記トルク入力部から前記トルクコンバータのためのタービンへ伝達するように配置されたトルクコンバータクラッチが設けられており、
該トルクコンバータクラッチのためのロックアップピストンプレートが設けられており、該ロックアップピストンプレートが一方向開口を有しており、
トルクを前記トルク入力部から前記トルクコンバータのためのインペラに伝達するように配置されたインペラクラッチが設けられており、
第1の流体含有チャンバが設けられており、
少なくとも1つの第2の流体含有チャンバが設けられており、前記第1のチャンバが、ポンプとの流体接続のために配置されたチャネルを除いて、前記少なくとも1つの第2のチャンバよりも高い前記第1のチャンバにおける圧力レベルのために液密であり、前記ロックアップピストンプレートが前記第1の流体含有チャンバの第1の部分を形成しており、トルクコンバータモードにおける前記トルクコンバータの作動時に、流体が前記トルクコンバータのためのトーラスから前記少なくとも1つの第2のチャンバと一方向開口とを通って前記第1のチャンバへ流れることを特徴とする、多機能トルクコンバータ。
【請求項10】
前記一方向開口が逆止め弁である、請求項9記載の多機能トルクコンバータ。
【請求項11】
前記トルクコンバータクラッチの半径方向範囲の少なくとも一部が前記インペラクラッチと軸方向で整合させられている、請求項9記載の多機能トルクコンバータ。
【請求項12】
前記インペラクラッチのためのインペラピストンプレートが設けられており、該インペラプレートが前記第1のチャンバの第2の部分を形成しており、前記チャンバが、加圧された場合に前記インペラプレートに軸方向の力を生ぜしめるように配置されており、前記第1のチャンバと前記少なくとも1つの第2のチャンバとの差圧が前記軸方向の力を平衡させるようになっている、請求項11記載の多機能トルクコンバータ。
【請求項13】
個々の複数のハウジング構成部材及び軸受が設けられており、前記トルクコンバータが、前記差圧による前記軸方向の力の前記平衡が前記個々の複数のハウジング構成部材及び軸受を前記軸方向の力から隔離するように配置されている、請求項12記載の多機能トルクコンバータ。
【請求項14】
多機能トルクコンバータを形成及び操作する方法において、
インペラクラッチのための少なくとも1つのインペラピストンプレートを備えたシールされた流体含有チャンバの第1の部分を形成するステップと、
前記インペラクラッチをつなぐように、前記シールされたチャンバを加圧するステップとを含むことを特徴とする、多機能トルクコンバータを形成及び操作する方法。
【請求項15】
前記トルクコンバータがさらに個々の複数のハウジング構成部材及び軸受を含み、前記シールされたチャンバを加圧することがさらに複数の軸方向の力を生ぜしめることを含み、前記方法がさらに、前記個々の複数のハウジング構成部材及び軸受を前記複数の軸方向の力から隔離することを含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記シールされたチャンバがさらに複数の軸方向の力を生ぜしめることを含み、前記方法がさらに前記複数の軸方向の力を平衡させることを含む、請求項14記載の方法。
【請求項17】
前記トルクコンバータがさらにプレートを含み、前記方法がさらに、前記プレートを備えた前記シールされたチャンバの第2の部分を形成することを含み、軸方向の力を生ぜしめることがさらに前記プレート及び前記少なくとも1つのインペラプレートにそれぞれ第1及び第2の軸方向で反対向きの力を生ぜしめることを含み、前記複数の軸方向の力を平衡させることがさらに、前記プレート及び前記少なくとも1つのインペラプレートとの両側において前記第1及び第2の軸方向の力を平衡させることを含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記トルクコンバータがさらに結合エレメントを含み、前記方法がさらに、前記プレートを前記結合エレメントに結合することを含み、前記プレート及び前記少なくとも1つのインペラプレートの両側において前記第1及び第2の軸方向の力平衡させることがさらに前記第2の軸方向の力を前記インペラクラッチを介して前記結合エレメントに伝達することを含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つのインペラプレートがさらに第1のインペラプレート及び第2のインペラプレートを含み、前記方法がさらに前記第1のインペラプレート及び第2のインペラプレートによって、前記シールされたチャンバの第3の部分を形成することを含み、前記複数の軸方向の力を平衡させることが、前記第1及び第2のインペラプレートの両側における前記第1及び第2の軸方向の力を平衡させることを含む、請求項16記載の方法。
【請求項20】
前記トルクコンバータがさらにトーラス及び少なくとも1つの流体含有チャンバを含み、前記方法がさらに、
前記シールされたチャンバと前記少なくとも1つの流体含有チャンバとの差圧を生ぜしめるために前記シールされたチャンバと前記少なくとも1つの流体含有チャンバとを加圧することを含み、前記差圧が、所望のトルク支持キャパシティで前記インペラクラッチを作動させるのに必要な値を有し、
前記差圧を維持しながら前記トーラスを冷却するために前記トーラス及び前記少なくとも1つの流体含有チャンバに流体を循環させることを含む、請求項14記載の方法。
【請求項21】
前記トーラス及び前記少なくとも1つのチャンバに流体を循環させることがさらに前記循環する流体を前記シールされたチャンバから隔離することを含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
多機能トルクコンバータを形成及び操作する方法において、
トルクコンバータクラッチのためのロックアップピストンから第1の流体含有チャンバの第1の部分を形成するステップと、
前記ロックアッププレートによって、少なくとも1つの第2の流体含有チャンバを形成するステップと、
ポンプとの流体接続のために配置されたチャネルを除いて、前記少なくとも1つの第2のチャンバにおける第2の圧力レベルよりも高い前記第1のチャンバ内の第1の圧力レベルのために液密であるように、前記第1のチャンバをシールするステップと、
トルクコンバータモードにおける前記トルクコンバータの作動に関連した第3の圧力レベルに前記第1のチャンバ内の圧力を調節するステップと、
前記トルクコンバータのためのトーラスから前記少なくとも1つの第2のチャンバ及び前記ロックアッププレートを介して前記第1のチャンバへ流体を循環させるステップと、
前記第1のチャンバ内の圧力を前記第3の圧力レベルに維持するステップとを含み、前記トルクコンバータがさらにインペラクラッチを含むことを特徴とする、多機能トルクコンバータを形成及び操作する方法。
【請求項23】
前記トルクコンバータクラッチの半径方向範囲の少なくとも一部が前記インペラクラッチと軸方向で整合させられるように、前記トルクコンバータクラッチ又は前記インペラクラッチの少なくとも一方を半径方向で整合させることを含む、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記インペラクラッチがさらにインペラピストンプレートを含み、前記方法がさらに、前記インペラピストンプレートによって前記第1のチャンバの第2の部分を形成することを含み、前記第1のチャンバ内の前記圧力を調整することが、前記インペラピストンプレートに軸方向の力を加えることを含み、
前記方法がさらに、
前記第1のチャンバと前記少なくとも1つの第2のチャンバとの間に差圧を形成するために前記少なくとも1つの第2のチャンバにおける圧力を調節し、
前記差圧によって前記軸方向の力を平衡させることを含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記トルクコンバータがさらに個々の複数のハウジング構成部材及び軸受を含み、前記差圧によって前記軸方向の力を平衡させることがさらに前記個々の複数のハウジング構成部材及び軸受を前記軸方向の力から隔離することを含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
多機能トルクコンバータにおいて、
トルクをトルクコンバータのためのカバーから前記トルクコンバータのためのインペラへ伝達するように配置されたインペラクラッチが設けられており、
前記インペラクラッチのための少なくとも1つのインペラクラッチピストンプレートが設けられており、
プレートが設けられており、
流体含有チャンバが設けられており、前記チャンバが少なくとも部分的に前記少なくとも1つのインペラプレート又は前記プレートのうちの1つ又は2つ以上の組合せによって形成されており、前記チャンバが、前記インペラクラッチをつなぐように加圧されるように配置されており、前記少なくと1つのインペラプレート又は前記プレートのうちの1つ又は2つ以上の組合せが、前記チャンバの加圧によって生ぜしめられる軸方向の力を平衡させるために少なくとも間接的に結合されていることを特徴とする、多機能トルクコンバータ。
【請求項27】
多機能トルクコンバータを形成及び操作する方法において、
インペラクラッチのための少なくとも1つのピストンプレート又はプレートのうちの1つ又は2つ以上の組合せによって、流体含有チャンバの少なくとも一部を形成するステップと、
前記インペラクラッチをつなぐために前記チャンバを加圧するステップと、
前記少なくとも1つのインペラプレート又は前記プレートのうちの1つ又は2つ以上の前記組合せを少なくとも間接的に結合するステップと、
前記チャンバの加圧によって生ぜしめられた、前記少なくとも1つのインペラプレート又は前記プレートのうちの1つ又は2つ以上の前記組合せの中で、軸方向の力を平衡させるステップとを含むことを特徴とする、多機能トルクコンバータを形成及び操作する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−209005(P2008−209005A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−46107(P2008−46107)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(390009070)ルーク ラメレン ウント クツプルングスバウ ベタイリグングス コマンディートゲゼルシャフト (236)
【氏名又は名称原語表記】LuK Lamellen und Kupplungsbau  Beteiligungs KG
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 3, D−77815 Buehl, Germany
【Fターム(参考)】