説明

シールドケース

【課題】軽量化を図ることができ、しかも、製造工程の低減により生産性を向上させることができるシールドケースを提供すること。
【解決手段】電気部品等を収容する筐体11,13が植物繊維の加圧成形により形成されると共に、筐体11,13の収容空間17を画成している壁部11a,13aの内面及び外面のうち少なくとも一方には、メッキ処理により導電体層を形成する。収容空間17の電磁遮蔽機能を確保することによって、軽量化を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気部品を収容する収容空間を画成する筐体に、前記収容空間を外部の電磁波から遮蔽する電磁遮蔽機能を備えたシールドケースに関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、車載の電装部品等の動作を制御する電気部品や制御基板を収容した電装ユニット(ECU)が搭載されている。このような電装ユニットでは、電気部品や制御基板を収容する筐体に、収容空間を外部から電磁遮蔽する電磁遮蔽機能を備えたシールドケースが採用される。
【0003】
これは、収容した電気部品や回路の動作が外部からの電磁波の影響で誤作動することを防止すると同時に、収容している部品や基板が発生する電磁波が外部に漏洩して外部の電子機器等に影響を及ぼすことを防止するためである。
【0004】
図5は、このようなシールドケースの従来例を示したものである。
ここに示したシールドケース101は、電気部品が搭載された制御基板103を収容する収容空間を、下部ケース105と、該下部ケース105の上を覆う上部ケース107とで画成している。
【0005】
従来では、下部ケース105及び上部ケース107を金属板で形成することによって、収容空間を外部から電磁遮蔽する電磁遮蔽機能を得ている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2007−214356号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記のような金属板製のシールドケース101は、重量がかさみ、軽量化が重要課題とされる車載用電装ユニットの筐体としては、問題があった。
【0008】
また、金属板製のシールドケース101は、通常、金属板のプレス成形により所定の形状に成形するが、プレス成形では形成できる構造に制限があり、車体に取り付けるために突出形成するブラケット部等は、別体のブラケット部品を溶接やねじ止めにより設ける必要があり、製造工程が増えるため生産性の向上が難しいという問題も生じた。
【0009】
本発明の目的は上記課題を解消することに係り、軽量化を図ることができ、しかも、板金製のシールドケースと比較すると、溶接等の手間をかけずに取り付け用のブラケット部を形成できて、製造工程数の低減により生産性を向上させることができるシールドケースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の前述した目的は、下記の構成により達成される。
(1) 電気部品を収容する収容空間を画成する筐体に、前記収容空間を外部の電磁波から遮蔽する電磁遮蔽機能を備えたシールドケースであって、
前記筐体は、植物繊維を加圧成形することにより形成され、
前記筐体を構成する壁部の内面及び外面のうち少なくとも一方に、メッキ処理により導電体層が形成されることで、前記収容空間の電磁遮蔽機能を確保したことを特徴とするシールドケース。
【0011】
(2) 電気部品を収容する収容空間を画成する筐体に、前記収容空間を外部の電磁波から遮蔽する電磁遮蔽機能を備えたシールドケースであって、
前記筐体は、植物繊維を加圧成形することにより形成され、
前記筐体を構成する壁部の内面及び外面のうち少なくとも一方に、金属薄膜が固着されることで、前記収容空間の電磁遮蔽機能を確保したことを特徴とするシールドケース。
【0012】
(3) 電気部品を収容する収容空間を画成する筐体に、前記収容空間を外部の電磁波から遮蔽する電磁遮蔽機能を備えたシールドケースであって、
前記筐体は、植物繊維に導電体を含浸させた導電性植物繊維材を加圧成形することにより形成されたことを特徴とするシールドケース。
【0013】
(4) 前記筐体には、該筐体自体を車両に固定するためのブラケット部が一体成形されていることを特徴とする前記(1)〜(3)の何れか一項に記載のシールドケース。
【0014】
(5) 前記筐体は、該筐体を装備する車両の構造物に一体成形されていることを特徴とする前記(1)〜(3)の何れか一項に記載のシールドケース。
【0015】
上記(1)〜(3)の構成によれば、筐体素材が植物繊維であるため、金属板製の従来のシールドケースと比較すると、大幅な軽量化を図ることができ、軽量化が重要課題とされる車載用電装ユニットの筐体に利用することによって、軽量な車載用電装ユニットの提供を実現することができる。
【0016】
上記(4)の構成によれば、筐体の成形時に、一緒にブラケット部が形成されるため、例えば板金製のシールドケースと比較すると、溶接等の手間をかけずに取り付け用のブラケット部を形成できて、製造工程数の低減により生産性を向上させることができる。
【0017】
上記(5)の構成によれば、筐体が該筐体を装備する車両のパネル材等の構造物に一体成形されているため、筐体を取り付けるための専用の作業が不要になり、車両等におけるシールドケースの装備を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によるシールドケースによれば、筐体素材が植物繊維であるため、金属板製の従来のシールドケースと比較すると、大幅な軽量化を図ることができ、軽量化が重要課題とされる車載用電装ユニットの筐体に利用することによって、軽量な車載用電装ユニットの提供を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係るシールドケースの好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係るシールドケースの一実施形態が装備される車体上の部位の説明図、図2は図1に示した車体のルーフパネル部のヘッドライナ上におけるシールドケースの配置を示す拡大図、図3は本発明に係るシールドケースの一実施形態の拡大斜視図、図4は図3のA−A断面図である。
【0020】
この一実施形態のシールドケース1は、車載の電装部品の機能を制御する車載用電装ユニット(ECU)の筐体として、図1及び図2に示すように車両3のルーフパネル部において車室側の隔壁となるヘッドライナ5上に配置される。
【0021】
図2において、符合7は、シールドケース1内に収容された電気部品や制御基板に接続されるワイヤハーネスである。
【0022】
本実施形態のシールドケース1は、図3及び図4に示すように、略平板状を成した下部筐体11と、上方に突出した箱形の上部筐体13とで、各種の電気部品を搭載した制御基板15を収容する収容空間17を画成している。
【0023】
本実施形態の場合、下部筐体11及び上部筐体13は、植物繊維材を成形金型内に充填して、加圧成形することで、所定の剛性を持った筐体に形成されている。
【0024】
ここに、植物繊維材を構成する植物繊維としては、例えばケナフが用いられる。
【0025】
植物繊維材は、他の材料を混ぜることなく単体のまま加圧成形してもよく、また植物繊維材に接着剤やプラスチック樹脂を混入したものを加圧成形してもよい。
また、植物繊維材から成形されたものとしては、例えば、ケナフ繊維から成形された、松下電工株式会社製のケナフボードを用いることができる。
【0026】
そして、本実施形態のシールドケース1では、少なくとも各筐体11,13の収容空間17を画成している壁部(図4において、ハッチングを施した部位)11a,13aの内面及び外面のうち少なくとも一方に、メッキ処理により導電体層が形成されており、収容空間17を包む前記導電体層により、収容空間17内を外部から電磁遮蔽する電磁遮蔽機能を確保している。
【0027】
また、本実施形態のシールドケース1では、各筐体11,13には、図4に示すように、加圧成形時に、これらの筐体自体を車両に固定するためのブラケット部11b,13bを、一体成形している。
【0028】
以上に示した一実施形態のシールドケース1では、筐体素材が植物繊維であるため、金属板製の従来のシールドケースと比較すると、大幅な軽量化を図ることができ、軽量化が重要課題とされる車載用電装ユニットの筐体に利用することによって、軽量な車載用電装ユニットの提供を実現することができる。
【0029】
また、上記実施形態のシールドケース1では、筐体11,13の成形時に、一緒にブラケット部11b,13bが形成されるため、例えば別体のブラケット部材が筐体本体に溶接される板金製のシールドケースと比較すると、溶接等の手間をかけずに取り付け用のブラケット部11b,13bを形成できて、製造工程数の低減により生産性を向上させることもできる。
【0030】
なお、本発明に係るシールドケースにおいて、植物繊維の加圧成形により形成される筐体において、収容空間を画成する壁部に電磁遮蔽機能を備える方法は、これらの壁部の内面又は外面にメッキ処理によって導電体層を形成する上記実施形態の方法に限らない。
【0031】
例えば、加圧成形により所定の構造に形成された植物繊維製の筐体の収容空間を画成する壁部の内面及び外面のうち少なくとも一方に、金属薄膜を固着することで、前記収容空間の電磁遮蔽機能を確保するようにしても良い。
【0032】
このように、収容空間を画成する植物繊維製の筐体の壁部の内面又は外面の少なくとも一方に金属薄膜を固着した構成のシールドケースの場合も、上記シールドケース1と同様に、軽量化や、生産性の向上を実現することができる。
【0033】
更に、植物繊維製の筐体に電磁遮蔽機能を確保する別の方法としては、収容空間を画成する筐体を、予め植物繊維に導電体を含浸させた導電性植物繊維の加圧成形により形成するようにしても良い。
この場合も、上記シールドケース1と同様に、軽量化や、生産性の向上を実現することができる。
【0034】
更に、植物繊維製の筐体に電磁遮蔽機能を確保する更に別の方法としては、植物繊維材を成形金型内に充填して、加圧成形する際に、金属箔やメッシュ状の金属箔を植物繊維材の中に挟み込み、加圧成形により植物繊維と金属箔とを一体化してもよい。
この場合も、上記シールドケース1と同様に、軽量化や、生産性の向上を実現することができる。
【0035】
なお、本発明に係るシールドケースは、植物繊維製の筐体が、該筐体を装備する車両のパネル材等の構造物に一体成形された構成としてもよい。
シールドケースを一体形成する車両側の構造物としては、例えば、図1に示した用途の場合は、ヘッドライナあるいはその一部を利用することができる。
【0036】
また、車両では、乗員が座るシートの下方に、シートに内蔵される電装部品を制御する電装ユニットを配置したものがあるが、そのようなシート下に装備される電装ユニットの筐体に本発明にかかるシールドケースを利用する場合には、本発明のシールドケースを構成する植物繊維製の筐体を、シートフレームを補強する板状部材に一体成形するようにしても良い。
【0037】
このようにシールドケースの筐体を、該筐体が装備される車両等の構造物に一体形成する構成の場合には、筐体を取り付けるための専用の作業が不要になり、車両等におけるシールドケースの装備を容易にすることができる。
【0038】
なお、本発明に係るシールドケースの用途は、車載用電装ユニットの筐体に限らず、車載用以外の各種の電装品におけるシールドケースとして利用することが可能である。
【0039】
また、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係るシールドケースの一実施形態が装備される車体上の部位の説明図である。
【図2】図1に示した車体のルーフパネル部におけるシールドケースの配置を示す拡大図である。
【図3】本発明に係るシールドケースの一実施形態の拡大斜視図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】従来のシールドケースの分解斜視図である。
【符号の説明】
【0041】
1 シールドケース
3 車両
5 ヘッドライナ
11 下部筐体
11a 壁部
11b ブラケット部
13 上部筐体
13a 壁部
13b ブラケット部
15 制御基板
17 収容空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気部品を収容する収容空間を画成する筐体に、前記収容空間を外部の電磁波から遮蔽する電磁遮蔽機能を備えたシールドケースであって、
前記筐体は、植物繊維を加圧成形することにより形成され、
前記筐体を構成する壁部の内面及び外面のうち少なくとも一方に、メッキ処理により導電体層が形成されることで、前記収容空間の電磁遮蔽機能を確保したことを特徴とするシールドケース。
【請求項2】
電気部品を収容する収容空間を画成する筐体に、前記収容空間を外部の電磁波から遮蔽する電磁遮蔽機能を備えたシールドケースであって、
前記筐体は、植物繊維を加圧成形することにより形成され、
前記筐体を構成する壁部の内面及び外面のうち少なくとも一方に、金属薄膜が固着されることで、前記収容空間の電磁遮蔽機能を確保したことを特徴とするシールドケース。
【請求項3】
電気部品を収容する収容空間を画成する筐体に、前記収容空間を外部の電磁波から遮蔽する電磁遮蔽機能を備えたシールドケースであって、
前記筐体は、植物繊維に導電体を含浸させた導電性植物繊維材を加圧成形することにより形成されたことを特徴とするシールドケース。
【請求項4】
前記筐体には、該筐体自体を車両に固定するためのブラケット部が一体成形されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のシールドケース。
【請求項5】
前記筐体は、該筐体を装備する車両の構造物に一体成形されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のシールドケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−34299(P2010−34299A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−194984(P2008−194984)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】