説明

シールドマシン

【課題】カッタースポークとカッター駆動部とを容易に解体することができ、かつカッター駆動部を転用し易いシールドマシンを提供する。
【解決手段】カッター3が複数のカッタースポーク9を有し、そのカッター3を駆動するためのカッター駆動部4がバルクヘッド5に回転可能に設けられた中間リング18を有し、その中間リング18に上記カッタースポーク9が中間ビーム16を介して支持されたシールドマシンにおいて、上記中間ビーム16が、上記中間リング18に着脱可能に設けられたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カッタースポークをカッター駆動部に中間ビームを介して支持したシールドマシンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シールドマシンのカッター支持方式として、中間ビーム支持方式が知られており、その中間支持方式では、カッターのカッタースポークが、径方向の中間位置で、中間ビームを介してカッター駆動部に支持される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図5に示すように、中間支持方式のシールドマシン91は、シールドフレーム92の前方に配置されたカッタースポーク95と、そのカッタースポーク95を回転駆動するカッター駆動部94とを備える。カッター駆動部94は、駆動モータ96と、その駆動モータ96により旋回される旋回環97と、その旋回環97に支持された中間リング99とを有する。中間リング99は、シール部材101が取り付けられてバルクヘッド98に収容され、リング取付ボルト102により旋回環97に固定される。
【0004】
これらカッタースポーク95とカッター駆動部94とは、中間ビーム100により連結される。その中間ビーム100は、中間リング99からカッタースポーク95まで延び、前後方向の中間部で分割された2つ部材を接合して形成される。
【0005】
カッタースポーク95とカッター駆動部94の中間リング99との接合は、工場仮組立時には、分割された中間ビーム100をジョイントプレートで接合することで行われ、現地では、分割された中間ビーム100を溶接することで行われる。すなわち、シールドマシン91は、掘進工事時に、カッタースポーク95、カッター駆動部94および中間ビーム100が、溶接構造体として構成される。
【0006】
【特許文献1】特開2005−264497号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、シールドマシンは、掘進工事の終了後に、解体され、カッター駆動部などが他のシールドマシンに転用される場合がある。
【0008】
そのような場合に、上述のシールドマシン91では、解体の際、カッタースポーク95とカッター駆動部94とを容易を切り離せないという問題があった。
【0009】
すなわち、シールドマシン91では、中間ビーム100を溶接により接合しているために、カッタースポーク95と中間リング99とを切り離すためには、中間ビーム100を溶断などで切断する必要があり、解体に時間がかかってしまう。
【0010】
また、中間ビーム100を溶断する場合、その溶断の熱により、中間リング100のシール部材101などが破損してしまう虞がある。
【0011】
以上から、シールドマシン91は、カッター駆動部94を転用し難くかった。
【0012】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、カッタースポークとカッター駆動部とを容易に解体することができ、かつカッター駆動部を転用し易いシールドマシンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明は、カッターが複数のカッタースポークを有し、そのカッターを駆動するためのカッター駆動部がバルクヘッドに回転可能に設けられた中間リングを有し、その中間リングに上記カッタースポークが中間ビームを介して支持されたシールドマシンにおいて、上記中間ビームが、上記中間リングに着脱可能に設けられたものである。
【0014】
上記中間ビームの上記中間リング側の端部にフランジ部が設けられ、そのフランジ部が上記中間リングにボルト接合されたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、カッタースポークとカッター駆動部とを容易に解体することができ、かつカッター駆動部を転用し易いという優れた効果を発揮するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好適な一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0017】
本実施形態のシールドマシンは、例えば、泥土圧シールドマシンである。
【0018】
図1から図3に基づきシールドマシンの概略構造を説明する。
【0019】
図1は、シールドマシンの側断面図であり上半分のみを示す。図2は、カッタースポークの正面図である。図3は、中間リングのフランジ部の背面図である。以下の説明では、図1の左方が掘進方向の前方、右方が後方である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態のシールドマシン1は、外殻をなすシールドフレーム2と、そのシールドフレーム2の前方に配置され地山を掘削するためのカッター3と、シールドフレーム2内に配置されカッター3を回転駆動するためのカッター駆動部4とを備える。
【0021】
シールドフレーム2は、掘進方向に延びる筒状に形成される。シールドフレーム2の内周面には、カッター駆動部4などを支持すると共に、バルクヘッド5を形成するためのフレーム部材6が設けられる。
【0022】
カッター3は、径方向の中心部(軸心部)から外周側に延びる複数のカッタースポーク9を有し、それらカッタースポーク9は放射状に配置される。カッター3の径方向の中心部には、前方に突出するフィッシュテールビット8が配置される。
【0023】
図2に示すように、図例では、6つのカッタースポーク9が、周方向に等間隔で配置される。それらカッタースポーク9の外周部は、外周リング部材11で連結され、その外周リング部材11とカッタースポーク9とがカッターフレーム補強材12で連結される。
【0024】
各カッタースポーク9の前面には複数のカッタービット14が径方向に並べて取り付けられる。カッタースポーク9の外周端部には、径方向に出没自在なコピーカッター15(図1参照)が設けられる。
【0025】
詳しくは後述するが、カッタースポーク9の後面には、中間ビーム16が取り付けられ、その中間ビーム16によりカッター3がカッター駆動部4に支持される。
【0026】
カッター駆動部4は、バルクヘッド5に回転可能に設けられた中間リング18と、その中間リング18を回転可能に支持する旋回環19(ベアリング)と、その旋回環19を介して中間リング18を回転駆動する駆動モータ20とを備える。
【0027】
旋回環19は、同心状に配置された内輪22および外輪23と、それら内輪22および外輪23の間に設けられスラスト方向(軸方向)とラジアル方向(周方向)との荷重を支持する転動体24と有する。
【0028】
図例の旋回環19では、内輪22がシールドフレーム2のフレーム部材6に固定され、外輪23に中間リング18が取り付けられる。また、外輪23の外周には、駆動モータ20の後述するピニオン29に歯合する歯部28が形成される。
【0029】
駆動モータ20は、旋回環19の外輪23に沿って周方向に間隔を隔てて複数配置される。駆動モータ20は、例えば、油圧モータや電動モータなどからなる。駆動モータ20の出力軸には、旋回環19の外輪23の歯部28に歯合するピニオン29が設けられる。
【0030】
中間リング18は、旋回環19の前方に配置され、旋回環19の内輪22にリング取付ボルト31により接合(ボルト接合)される。そのリング取付ボルト31は、ボルトヘッドが中間リング18の前面から突出しており、そのボルトヘッドから後方に延び中間リング18を貫通して先端が旋回環19の外輪23に形成されたネジ穴に螺合する。
【0031】
中間リング18は、箱形断面の中空リング状に形成され、シールドフレーム2(および旋回環19)と同心的に、バルクヘッド5に回転可能に組み付けられる。具体的には、バルクヘッド5(フレーム部材6)に中間リング18を収容するための環状の凹部33が形成され、その凹部33内に中間リング18が前方から嵌め入れられる。
【0032】
その中間リング18とフレーム部材6との間に、それらの隙間をシールするためのシール部材34が設けられる。図例では、シール部材34が中間リング18の内周面、外周面および後面とに各々取り付けられる。
【0033】
中間リング18の前面には、カッタースポーク9を支持する中間ビーム16が着脱可能に設けられる。本実施形態では、中間ビーム16の中間リング18側の端部(後端部)にフランジ部36が設けられ、そのフランジ部36が中間リング18にビーム取付ボルト38によりボルト接合される。
【0034】
中間ビーム16は、各カッタースポーク9ごとに設けられる。各中間ビーム16は、中間リング18からカッタースポーク9まで延びるビーム本体39と、上記フランジ部36とを有し、フランジ部36がビーム本体39の後端に取り付けられる。
【0035】
ビーム本体39は、中空状に形成され、図例では箱形断面を有する。ビーム本体39の一端(後端)が、フランジ部36の前面のほぼ中央部に溶接などで取り付けられ、他端(前端)がカッタースポーク9の後面に径方向中間位置に溶接などで取り付けられる。ビーム本体39は、フランジ部36からカッタースポーク9に向かい径方向外側に傾斜し、カッタースポーク9側の端部がフランジ部36側の端部よりも径方向外側に位置する。
【0036】
図3に示すように、フランジ部36は平板状(径方向に長い長方形状)に形成され、その後面が、中間リング18の前面に突き合わされる。そのフランジ部36の後面には、リング取付ボルト31との干渉を避けるための逃げ穴40(長穴)が形成される。その逃げ穴40は、フランジ部36の中央部に配置され、中空状のビーム本体39の後端により囲まれてビーム本体39内に位置する。
【0037】
フランジ部36には、ビーム取付ボルト38が貫通する複数の貫通孔44が形成される。それら貫通孔44は、ビーム本体39の後端を囲繞するように配置される。図例では、ビーム本体39が径方向外側に傾斜することから、貫通孔44が、フランジ部36の径方向外側の辺を除き3辺に配置される。また、図1に示すように、中間リング18の前面における、各貫通孔44に対応する位置には、ビーム取付ボルト38が螺合するネジ穴45が各々形成される。
【0038】
次に、本実施形態のシールドマシン1の作用を説明する。
【0039】
本実施形態のシールドマシン1では、掘進作業の終了後に、シールドマシン1からカッター駆動部4が回収される。
【0040】
その回収に際しては、まず、機内側より駆動モータ20をフレーム部材6から取り外して回収する。
【0041】
次に、カッター3をカッター駆動部4から切り離す。具体的には、中間ビーム16を中間リング18に固定しているビーム取付ボルト38を全て外し、中間ビーム16を中間リング18から取り外す。
【0042】
これにより、中間リング18を旋回環19の内輪22に固定しているリング取付ボルト31が露出する。そこで、露出したリング取付ボルト31を外し、中間リング18をバルクヘッド5(フレーム部材6)から取り出す。
【0043】
これにより、中間リング18と、その中間リング18に固定されたシール部材34とが回収される。さらに、機内側より旋回環19をフレーム部材6から取り外して回収する。
【0044】
以上により、カッター駆動部4の駆動モータ20、中間リング18および旋回環19が回収される。
【0045】
このように本実施形態によれば、中間ビーム16を中間リング18から容易に切り離すことができ、カッタースポーク9とカッター駆動部4とを容易に解体することができる。
【0046】
すなわち、図5の従来のシールドマシン91でカッタースポーク95をカッター駆動部94から切り離すためには、中間ビーム100を溶断する必要があった。これに対して、本実施形態では、カッタースポーク9とカッター駆動部4とをボルト接合しているため、溶断作業を行うことなくカッター3を切り離すことができ、解体に時間がかからない。そのため、カッター駆動部4を転用し易い。
【0047】
また、従来のシールドマシン91では、中間ビーム100を溶断する場合に、中間リング99のシール部材101が熱に弱いことから、溶断を、中間リング99から十分に離れた位置(前後方向の中央部)で行っていた。このように中間ビーム99を中央部で分断すると、その中間ビーム100の切断片が中間リング99に残ってしまい、その切断片が、リング取付ボルト102の取り外し作業の邪魔となってしまう。
【0048】
これに対して、本実施形態では、中間ビーム16を完全に中間リング18から取り外すので、図5のシールドマシン91に比べ、リング取付ボルト31の取り外し作業を容易に行うことができる。
【0049】
また、中間ビーム16を溶断する場合、切断面が荒れてしまうために、中間ビーム16を転用する場合には端面の処理などが必要となってしまうが、本実施形態では、中間ビーム16を溶断しないので容易に転用することができる。
【0050】
次に、図4に基づき他の実施形態を説明する。
【0051】
本実施形態は、上述の図1の実施形態とは、ビーム取付ボルト38がカバー部材により覆われる点が異なり、その他は実質的に同じである。したがって、上述の実施形態と同一の要素については、図中同一符号を付すに止め、詳細な説明は省略する。
【0052】
本実施形態では、中間ビーム16のフランジ部36に、ビーム取付ボルト38のボルトヘッドを収容するための収容部51が形成されると共に、その収容部51をビーム取付ボルト38のボルトヘッドごと覆うためのカバー部材52が設けられる。
【0053】
収容部51は、各ビーム取付ボルト38(貫通孔44)ごとに各々配置される。収容部51は、フランジ部36の前面を凹ませて形成され、例えば、貫通孔44の前端部を拡径して形成される。
【0054】
カバー部材52は、フランジ部36の前面に接合された板材で形成される。例えば、カバー部材52は、各フランジ部36の全ての収容部51を覆うコ字状の板からなる。カバー部材52は、溶接などにてフランジ部36に取り付けられる。
【0055】
本実施形態では、カバー部材52を設けているので、ビーム取付ボルト38によりカッターチャンバーの掘削土砂の流れが阻害される虞がない。また、ビーム取付ボルト38に土砂などが付着しないため、ビーム取付ボルト38の取り外しを容易に行うことができる。また、ビーム取付ボルト38が、土砂により摩耗することがない。
【0056】
ここで、本実施形態は、中間ビーム16を中間リング18から切り離す際に、カバー部材52をフランジ部36から除去する必要となるが、カバー部材52は、中間ビーム16のような高い強度を必要としないことから、中間ビーム16に比べて板厚やサイズが小さいので、溶断することなく切削などにより容易に取り外すことができる。その結果、シール部材34を熱で損傷させることなく、カッタースポーク9とカッター駆動部4との連結を容易に解体することができ、カッター駆動部4を転用し易い。
【0057】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されず、様々な変形例や応用例が考えられるものである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るシールドマシンの側断面図であり、上半分を示す。
【図2】図2は、本実施形態のカッタースポークの正面図である。
【図3】図3は、本実施形態のフランジ部を背面図である。
【図4】図4は、他の実施形態に係るシールドマシンの側断面図である。
【図5】図5は、従来のシールドマシンの側断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 シールドマシン
3 カッター
4 カッター駆動部
5 バルクヘッド
9 カッタースポーク
16 中間ビーム
18 中間リング
36 フランジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カッターが複数のカッタースポークを有し、そのカッターを駆動するためのカッター駆動部がバルクヘッドに回転可能に設けられた中間リングを有し、その中間リングに上記カッタースポークが中間ビームを介して支持されたシールドマシンにおいて、
上記中間ビームが、上記中間リングに着脱可能に設けられたことを特徴とするシールドマシン。
【請求項2】
上記中間ビームの上記中間リング側の端部にフランジ部が設けられ、そのフランジ部が上記中間リングにボルト接合された請求項1記載のシールドマシン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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