説明

シールド導電路

【課題】複数種の電線を挿通可能であり、かつ、所望の形状に容易に加工可能なシールド導電路を提供する。
【解決手段】本発明のシールド導電路10は、導体12,22を絶縁被覆13,23で包囲してなる複数の電線11,21と、電線11,21を挿通させることによりシールドするとともに保護する金属製のパイプ30と、を備える。パイプ30は、電線11,21を挿通させる筒状の筒本体31と、筒本体31の内壁31Aから延出され筒本体31の内部31Bを仕切る仕切り壁32と、を有する。本発明は、仕切り壁32の筒本体31の軸線方向に対して垂直な方向の断面形状が、曲面形状あるいは屈曲した形状であるところに特徴を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド導電路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数本のノンシールド電線を金属製のパイプに挿通することで、電線をシールドするとともに保護するようにしたシールド導電路が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3909763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ハイブリッド自動車などの車両においては、高電圧大電流が流れる動力電線や弱電系の電線など複数種の電線が配索される。ここで、例えば、動力電線と弱電系の電線とを、同一のパイプに挿通させる場合には、動力電線が発する電磁ノイズの影響を防ぐために弱電系の電線に編組線などのシールドを施してからパイプに挿通させる必要があり、部品点数が多くなり、かつ、加工の手間がかかるという問題があった。
【0005】
この問題について検討した結果、パイプの内部を扁平な仕切り壁により2以上に分けることにより上記問題を解決可能であるとの知見が得られた。しかしながら、このような構成のパイプを配索箇所に応じた形状とするために曲げ加工を施すと、仕切り壁が梁として作用し、意図した形状に変形させるのが困難であるという問題があった。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、複数種の電線を挿通可能であり、かつ、所望の形状に容易に加工可能なシールド導電路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、導体を絶縁被覆で包囲してなる複数の電線と、前記電線を挿通させることによりシールドするとともに保護する金属製のパイプと、を備えるシールド導電路であって、前記パイプは、前記電線を挿通させる筒状の筒本体と、前記筒本体の内壁から延出され前記筒本体の内部を仕切る仕切り壁と、を有し、前記仕切り壁の前記筒本体の軸線方向に対して垂直な方向の断面形状が、曲面形状あるいは屈曲した形状であるところに特徴を有する。
【0008】
本発明では、パイプの筒本体の内部が仕切り壁により仕切られているから、複数種の電線をシールドを施さずに挿通させることができ、加工の手間がかからない。
【0009】
また、本発明においては、筒本体を仕切る仕切り壁の断面形状が曲面形状あるいは屈曲した形状をなしているから、変形しやすい。その結果、本発明によれば、複数種の電線を挿通可能であり、かつ、所望の形状に容易に加工可能なシールド導電路を提供することができる。
【0010】
本発明は、以下の構成とするのが好ましい。
前記筒本体の内壁および前記仕切り壁に囲まれてなる挿通空間と、前記絶縁被覆の外周面との間には、隙間が設けられている構成とすると、シールド導電路の曲げ加工を行った時電線を傷つけることはない。
【0011】
前記仕切り壁は、前記断面形状が線対称な形状または点対称な形状であるか、あるいは、前記筒本体の内壁から前記筒本体の軸心に延出されるとともに前記記筒本体の内壁に均等な間隔を設けて配置された同一形状の複数の仕切り片からなる構成とすると、仕切り壁が曲り易くなるので、所望の形状への加工がより容易となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数種の電線を挿通可能であり、かつ、所望の形状に容易に加工可能なシールド導電路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態1のシールド導電路の断面図
【図2】実施形態2のシールド導電路の断面図
【図3】他の実施形態(1)で説明するシールド導電路の断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1を参照して説明する。本実施形態1のシールド導電路10は、例えばハイブリッド自動車において走行用の動力源を構成するバッテリ、インバータ、モータなどの装置(図示せず)の間に配索されるものであり、2種類のノンシールドタイプの電線11,21を、一括シールド機能と電線保護機能を兼ね備えるパイプ30内に挿通した構成になる。
【0015】
本実施形態において、図1の右側の挿通空間34(詳細は後述する)に配されている3本の電線を第1の電線11とし、図1の左側の挿通空間35に配されている4本の電線を第2の電線21とし、これらを総括して2種類の電線11,21とする。
【0016】
2種類の電線11,21は断面直径が相違しており、第1の電線11のほうが第2の電線21よりも断面直径が大きい。2種類の電線11,21は、それぞれ、金属製(例えば、アルミニウム合金、アルミニウム、銅や銅合金など)の導体12,22の外周を合成樹脂製の絶縁被覆13,23で包囲した形態である。
【0017】
2種類の電線11,21の導体12,22は、それぞれ、棒状の単芯線又は複数本の細線を螺旋状に寄り合わせた撚り線からなり、略円形断面に成形されている。絶縁被覆13,23の外周の断面形状も、導体12,22と同様に略円形断面に成形されている。
【0018】
パイプ30は、金属製(例えば、アルミニウム合金や銅合金など)であり、略円形断面の円筒部31(筒本体31に相当)と、円筒部31の内壁31Aから延出され円筒部31の内部31Bを仕切る仕切り壁32とを有している。円筒部31と仕切り壁32とは押し出し成形によって一体に形成されたものである。
【0019】
さて、仕切り壁32は、パイプ30の全長に亘って形成されており、円筒部31の内周面(内壁)の一端部から、円筒部31の軸心Yを通り、前記一端部に対向する内周面に亘って形成されている。仕切り壁32の円筒部31の軸線方向に対して垂直な方向の断面形状は、図1に示すように、サインカーブ状に曲がった曲面形状をなしている。仕切り壁32の断面形状は、円筒部31の軸心Yに対して概ね点対称な形状である。
【0020】
仕切り壁32により円筒部31の内部31Bは2つの挿通空間34,35に仕切られている。各挿通空間34,35は円筒部31の内壁31Aおよび仕切り壁32に囲まれてなる空間である。各挿通空間34,35内には、夫々、パイプ30の一端側の開口から第1の電線11と第2の電線21とが挿入されている。本実施形態では第1の電線11が挿通される図示右側の挿通空間34を第1の挿通空間34とし、第2の電線21が挿通される図示左側の挿通空間35を第2の挿通空間35とし、2つの挿通空間を総括して挿通空間34,35とする。
【0021】
挿入された第1の電線11の絶縁被覆13と、第1の挿通空間34との間には、隙間36が設けられており、挿入された第2の電線21の絶縁被覆23と、第2の挿通空間35との間にも、隙間37が設けられている。
【0022】
次に、本実施形態の作用及び効果を説明する。
本実施形態のシールド導電路10を作製する際には、パイプ30の円筒部31の内部31Bに2種類の電線11,21を挿通させる。パイプ30の一端側の開口から第1の挿通空間34に第1の電線11が3本挿通され、第2の挿通空間35に第2の電線が4本挿通される。ここで、本実施形態では、パイプ30の円筒部31Aの内部31Bが仕切り壁32により仕切られているから、2種類の電線11,21を挿通させる際にシールドを施す必要はないので加工の手間がかからず部品点数も少なくて済む。仕切り壁によって挿通空間が狭まり、電線との接触面が増え、電線の発熱を放熱させる効果もある。
【0023】
上述のようにして作製した本実施形態のシールド導電路10を配索する際には、配索箇所に応じた形状に変形させる。ここで、本実施形態においては、円筒部31を仕切る仕切り壁32の断面形状が曲面形状をなしているから、変形させやすい。
【0024】
特に本実施形態では、第1および第2の挿通空間34,35と、二種類の電線11,21の各絶縁被覆13,23の外周面との間には、隙間36,37が設けられているので、電線11,21の各絶縁被覆13,23をキズつけることなく曲げ加工が容易であり、かつ、仕切り壁32の断面形状が点対称な形状をなしているので、仕切り壁32が曲り易く、所望の形状への加工がより容易である。
以上より、本実施形態によれば、複数種の電線11,21を挿通可能であり、かつ、所望の形状に容易に加工可能なシールド導電路10を提供することができる。
【0025】
<実施形態2>
以下、本発明を具体化した実施形態2を図2を参照して説明する。本実施形態のシールド導電路40は、実施形態1と同様の装置(図示せず)の間に配索されるものであり、3種類のノンシールドタイプの電線51,61,71を、一括シールド機能と電線保護機能を兼ね備えるパイプ80内に挿通した構成になる。
【0026】
本実施形態において、図2の上側の挿通空間84(詳細は後述する)に配されている1本の電線を第3の電線51とし、図2の右下側の挿通空間85に配されている2本の電線を第4の電線61とし、図2の左下側の挿通空間86に配されている4本の電線を第5の電線71とし、これらを総括して3種類の電線51,61,71とする。
【0027】
3種類の電線51,61,71は断面直径が相違しており、断面直径が大きい順に並べると第3の電線51、第4の電線61,第5の電線71の順である。3種類の電線51,61,71は、それぞれ、金属製(例えば、アルミニウム合金、アルミニウム、銅や銅合金など)の導体52,62,72の外周を合成樹脂製の絶縁被覆53,63,73で包囲した形態である。
【0028】
3種類の電線51,61,71の導体52,62,72は、それぞれ、棒状の単芯線又は複数本の細線を螺旋状に寄り合わせた撚り線からなり、略円形断面に成形されている。絶縁被覆53,63,73の外周の断面形状も、導体52,62,72と同様に略円形断面に成形されている。
【0029】
パイプ80は、金属製(例えば、アルミニウム合金や銅合金など)であり、略円形断面の円筒部81(筒本体81に相当)と、円筒部81の内壁81Aから延出され円筒部81の内部81Bを仕切る仕切り壁82とを有している。円筒部81と仕切り壁82とは押し出し成形によって一体に形成されたものである。
【0030】
さて、仕切り壁82は、パイプ80の全長に亘って形成されており、円筒部81の内壁81Aから円筒部81の軸心Zに延出された円弧状の3つの仕切り片83,83,83から構成され、図2に示すように、円筒部81の軸線方向に対して垂直な方向の断面形状は曲面形状をなしている。3つの仕切り片83,83,83の延出端(軸心Z側の端部)は、円筒部81の軸心Zにおいて互いに連結され一体化されている。また3つの仕切り片83,83,83は同一形状であり、円筒部81の内壁81Aの周方向において120°のピッチで等角度間隔に配置されている。
【0031】
仕切り壁82により円筒部81の内部81Bは3つの挿通空間84,85,86に仕切られている。各挿通空間84,85,86は円筒部81の内壁81Aおよび仕切り壁82に囲まれてなる空間である。各挿通空間84,85,86内には、夫々、パイプ80の一端側の開口から第3の電線51と第4の電線61と第5の電線71が挿入されている。本実施形態では第3の電線51が挿通される図示上側の挿通空間84を第3の挿通空間84とし、第4の電線61が挿通される図示右下側の挿通空間85を第4の挿通空間85とし、第5の電線71が挿通される図示左側の挿通空間86を第5の挿通空間86とし3つの挿通空間を総括して挿通空間84,85,86とする。
【0032】
挿入された第3の電線51の絶縁被覆53と第3の挿通空間84との間には、隙間87が設けられており、挿入された第4の電線61の絶縁被覆63と第4の挿通空間85との間には、隙間88が設けられており、挿入された第5の電線71の絶縁被覆73と第5の挿通空間86との間にも、隙間89が設けられている。
【0033】
次に、本実施形態の作用及び効果を説明する。
本実施形態のシールド導電路40を作製する際には、パイプ80の円筒部81の内部81Bに3種類の電線51,61,71を挿通させる。パイプ80の一端側の開口から第3の挿通空間84に第3の電線51が1本挿通され、第4の挿通空間85に第4の電線61が2本挿通され、第5の挿通空間86に第5の電線71が4本挿通される。ここで、本実施形態では、パイプの円筒部81の内部81Bが仕切り壁82により仕切られているから、複数種の電線51,61,71を挿通させる際にシールドを施す必要はないので加工の手間がかからず部品点数も少なくて済む。
【0034】
上述のようにして作製した本実施形態のシールド導電路40を配索する際には、配索箇所に応じた形状に変形させる。ここで、本実施形態においては、円筒部81を仕切る仕切り壁82の断面形状が曲面形状をなしているから、変形させやすい。
【0035】
特に本実施形態では、各挿通空間84,85,86と、電線の絶縁被覆53,63,73の外周面との間には、隙間87,88,89が設けられているので曲げ加工が容易であり、所望の形状への加工がより容易である。
以上より、本実施形態によれば、3種類の電線51,61,71を挿通可能であり、かつ、所望の形状に容易に加工可能なシールド導電路40を提供することができる。
【0036】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では仕切り壁として断面形状が曲面形状であり、かつ点対称な形状のものや、筒本体の内壁から筒本体の軸心に延出されるとともに筒本体の内壁に均等な間隔で配置された同一形状の複数の仕切り片からなるものを示したが、これに限定されない。
仕切り壁は断面形状が曲面形状あるいは屈曲した形状のものであればよく、例えば図3に示すような断面形状が屈曲した形状のものであってもよい。なお、図3に示すシールド導電路は、仕切り壁の断面形状が屈曲した形状であること以外は実施形態1のシールド導電路と同様の構成である。
また、仕切り壁は線対称な形状のものでもよいし、筒本体の内部を均等に分割しない位置に、断面が円弧状の仕切り壁を形成してもよいし、複数の仕切り壁を配置してもよい。さらに、同一形状の複数の仕切り片を不均等な間隔で配置して仕切り壁を形成してもよいし、相違する形状の複数の仕切り片を均等あるいは不均等な間隔で配置して仕切り壁を形成してもよい。
(2)上記実施形態では複数種(2種、3種)の電線を、種類ごとに筒本体の挿通空間に挿通させたが、同一種の複数本の電線を複数の挿通空間にわけて挿通させたものであってもよい。
(3)パイプの断面形状は略円形でなく、略楕円形、略多角形でも良い。
(4)金属パイプは押し出し成形によって一体に形成されたものだけでなく、溶接により形成されたものでも良い。
(5)パイプには光ファイバーなどの線材をさらに挿通させてもよい。
(6)電線の断面形状は略円形以外に、フラット形状、略楕円形、略長円形、略矩形状などであってもよい。
(7)挿通させる電線の断面直径は同一のものであっても、同程度のものであっても良い。
【符号の説明】
【0037】
10…シールド導電路
11…第1の電線(電線)
12…導体
13…絶縁被覆
21…第2の電線(電線)
22…導体
23…絶縁被覆
30…パイプ
31…円筒部(筒本体)
31A…内壁
Y…円筒部の軸心
32…仕切り壁
34…第1の挿通空間(挿通空間)
35…第2の挿通空間(挿通空間)
36…隙間
37…隙間
83…仕切り片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体を絶縁被覆で包囲してなる複数の電線と、前記電線を挿通させることによりシールドするとともに保護する金属製のパイプと、を備えるシールド導電路であって、
前記パイプは、前記電線を挿通させる筒状の筒本体と、前記筒本体の内壁から延出され前記筒本体の内部を仕切る仕切り壁と、を有し、
前記仕切り壁の前記筒本体の軸線方向に対して垂直な方向の断面形状が、曲面形状あるいは屈曲した形状であることを特徴とするシールド導電路。
【請求項2】
前記筒本体の内壁および前記仕切り壁に囲まれてなる挿通空間と、前記絶縁被覆の外周面との間には、隙間が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のシールド導電路。
【請求項3】
前記仕切り壁は、前記断面形状が線対称な形状または点対称な形状であるか、あるいは、前記筒本体の内壁から前記筒本体の軸心に延出されるとともに前記筒本体の内壁に均等な間隔を設けて配置された同一形状の複数の仕切り片からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシールド導電路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−146228(P2011−146228A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5706(P2010−5706)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】