説明

シールド掘進機とこれを用いた管路構築工法

【課題】地中障害物を削ることにより小さくし、シールド掘進機内に取り込んで泥土と共に処理することができるシールド掘進機を提供する。
【解決手段】スキンプレート2の前部に回転駆動されるカッター板3を設け、このカッター板3の前面に、掘進用のカッタービット10を設けたシールド掘進機1であって、前記カッター板3の前面に、地中障害物を削るための切削ビット11を、カッター板3の回転軸心を中心とする渦巻き状の配置で多数を設け、カッタービット10の刃先10bに対して切削ビット11の刃先11aが前方に突出した配置になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シールド掘進機とこれを用いた管路構築工法、更に詳しくは、地中掘進時の進路内に地中障害物がある場合、地盤改良を行うことなく容易に除去して掘進することができるシールド掘進機及び管路構築工法に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド掘進機を用いた一般的な管路構築には、例えば、推進工法とシールド工法があり、前者の推進工法は、シールド掘進機の後方に推進管を接続し、推進管の押し込みとシールド掘進機による掘進により推進管を順次継ぎ足して管路を構築し、また、後者のシールド工法は、シールド掘進機による地中の掘進と共に、その後方にセグメントを順次組立てながら接続して地中に管路やトンネルを構築する工法である。
【0003】
ところで、都市部などにおいて推進工法やシールド工法を施工する場合、シールド掘進機による地中掘進時の前方進路内に、例えば、シートパイル(矢板)や鉄骨、基礎杭等の地中障害物が存在する場合がある。
【0004】
このような障害物が存在すると、シールド掘進機のカッタービットが損傷を受けることで切削不能の事態が発生するため、従来採用されている一般的な対処方法は、地中に上記のような障害物が存在することが判った場合、シールド掘進機の運転を停止し、地山に薬液を注入して固化させる地山改良を行った後、シールド掘進機の前部に人力で空洞を掘って障害物を露出させ、この障害物をガス切断等で除去するようにしている。
【0005】
しかしながら、このような人力による処理の方法は、危険を伴うだけでなく、多くの労力と時間が必要になり、管路やトンネルの構築コストを高騰させる原因になる。
【0006】
このような不都合を解決しようとして、シールド掘進機におけるカッター板の後方位置にローラカッターを配置し、地中に障害物があるとこのローラカッターを油圧シリンダでカッター板の前方位置に押し出し、前記ローラカッターで障害物を切断することで処理する障害物処理シールド掘進機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、シールド掘進機の内部でカッター板の後方位置にコアボーリングマシンを配置し、地中の前方にある障害物をコアボーリングマシンの伸長により切削して処理する障害物処理シールド掘進機が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
これらとは別に、シールド掘進機の前部に高圧ノズルを配置し、障害物に遭遇すると、先ずノズルから地盤改良材を高圧噴射して地山改良を行った後、ノズルから高圧流体を噴射して障害物を切断除去する処理工法も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−319796号公報
【特許文献2】特開平6−336895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上記した従来の障害物処理シールド掘進機や処理工法において、その何れも、障害物を切断して処理しようとするものであるが、切断による障害物の小型化には限度がある。
このため、切断した障害物をシールド掘進機内に取り込んで泥土と共に処理するのは現実的には困難であり、障害物処理シールド掘進機や処理工法の実用化のネックになっており、実際の施工において、人力による処理の方法に頼っているのが現状である。
【0011】
また、シールド掘進機による管路やトンネルの施工において、地中障害物の存在を事前に知るのは技術的に困難性があり、上記した従来の障害物処理シールド掘進機や処理工法においては、掘削ビットが障害物に当接してシールド掘進機の前進が不能になった時点で障害物の存在を知ることが往々にしてあり、このため、障害物によって掘削ビットが破損するという事態が生じることになる。
【0012】
そこで、この発明の課題は、上記のような問題点を解決するため、地中障害物を削ることにより小さくし、シールド掘進機内に取り込んで泥土と共に処理することができ、障害物処理シールド掘進機や処理工法の実用化を実現でき、かつ、地中障害物による掘削ビットが破損発生を有効に防ぐことができるシールド掘進機とこれを用いた管路構築工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記のような課題を解決するため、この発明は、スキンプレートの前部に回転駆動されるカッター板を設け、このカッター板の前面に、掘進用のカッタービットを設けたシールド掘進機において、前記カッター板の前面に、地中の障害物を切削するためのビットを取付けたものである。
【0014】
上記ビットは、切削ビットを用い、カッター板の前面に、このカッター板の回転軸心を中心とする渦巻き状の配置で多数が設けられているようにすることができる。
【0015】
上記切削ビットは、カッター板に固定する支持台と、この支持台に揺動可能となるよう取付けた複数の超硬チップからなり、各超硬チップは揺動方向と交差する方向の刃先を有し、複数の超硬チップは、揺動方向に沿ってその刃先が段付き状の配置になるよう並び、前記切削ビットが、カッター板の前面に超硬チップの揺動方向がカッター板の回転方向に沿う配置で固定されているようにすることができる。
【0016】
上記ビットは、ローラービットを用い、このローラービットの回転方向がカッター板の回転方向に沿う配置でカッター板の前面に複数が取付けられ、前記複数のローラービットは、カッター板の半径方向に位置を違えた配置になっている構造とすることができる。
【0017】
上記ローラービットは、軸方向に沿う多数の直線状刃先が周方向に一定の間隔で設けられた歯車形に形成され、このローラービットの外周面に、各刃先を分断するようにスパイラルの溝が設けられているようにしてもよい。
【0018】
上記ビットは、カッター板の中心部に位置するものが最も前方に位置し、外周部に位置するものほど後方に位置するような配置になっているようにできる。
【0019】
上記ビットは、切削ビットとローラービットを併用し、この切削ビッドは、カッター板の前面に、このカッター板の回転軸心を中心とする渦巻き状の配置で多数が設けられ、このローラービットは、カッター板の全面に、その回転方向がカッター板の回転方向に沿う配置でかつカッター板の半径方向に位置を違えた配置で複数が取付けられ、ローラビットは、周方向に沿う円弧状(円環状)刃先が軸方向に複数並列する形状とし、ローラービット、切削ビット、およびカッタービットは、ローラービットの刃先の前方突出量>切削ビットの刃先の前方突出量>カッタービットの刃先の前方突出量 となるように配置する配置するのが好ましい。
【0020】
管路構築工法は、上記した何れかのシールド掘進機を用い、地中掘進時の進路内に地中障害物があると、これをビットで切削してシールド掘進機内に取り込むことで処理するようにしたものである。
【0021】
ここで、上記シールド掘進機のカッター板は、中心部の前面に掘削用のセンタービットと、少なくとも外周部の位置に掘削用のカッタービットが設けられ、モータによるカッター板の回転により地山を掘進し、カッター板に設けた開口部分から、このカッター板の後部に配置したチャンバーに掘削物を取り込むようになっている。
【0022】
上記ビットは、揺動式切削ビット、固定式切削ビット、ローラービットの何れかを採用することができ、揺動式切削ビットの場合、揺動方向の両側にそれぞれ複数の超硬チップが対称状の配置で設けられ、カッター板に対して揺動方向が回転方向に沿う配置で固定されているので、カッター板を何れの方向に回転させても切削機能が得られると共に、複数の超硬チップを刃先が多段となるようにすることで、一枚目の硬質チップの刃先が磨耗したり破損しても、次位置の硬質チップで切削を続行することができることになる。
【0023】
また、固定式切削ビットの場合、カッター板の回転方向に沿って長い支持台の先端に、この支持台の長さ方向の中心を挟んでそれぞれ複数の超硬チップを対称状の配置で固定し、各超硬チップの刃先を多段となるようにすることで、一枚目の硬質チップの刃先が磨耗したり破損しても、次位置の硬質チップで切削を続行することができることになる。
【0024】
上記ローラービットは、歯車状の構造を有し、カッター板の前面に複数が回転可能に取付けられ、推力を受けて障害物に当接した状態で、カッター板の回転による公転により自転することで障害物を削ることになる。
【発明の効果】
【0025】
この発明によると、シールド掘進機におけるカッター板の前面に、地中の障害物を切削するためのビットを取付けたので、シールド掘進機での掘進による管路構築時に、進路内に位置する障害物をビットで切削して除去することができ、障害物は削ることによって小さな切削物となり、障害物をこのように小さな切削物として小型化することで、掘削土砂と共にシールド掘進機内に取り込むことが可能になり、障害物の除去とその処理がシールド掘進機の掘進を停止させることなく自動的に行え、人力による障害物の処理に比べて安全性と作業能率の向上を図ることができる。
【0026】
また、カッタービットの刃先に対して切削ビットの刃先を同一又は前方に突出した配置にすることで、シールド掘進機による掘進時に地中の障害物に対して切削ビットが当接して切削を行い、カッタービットが障害物で破損を受けるのを防止することができ、地中障害物の存在を事前に知ることができなくても、掘進を連続して続けることができる。
【0027】
更に、切削ビットにおいて、複数の超硬チップを刃先が段付き状の配置になるように並べれば、一枚目の超硬チップが磨耗したり破損した場合、次の超硬チップで障害物を切削することができ、切削ビットの取換え頻度を少なくして作業能率の向上を図ることができる。
【0028】
切削ビットとローラービットをともに用い、ローラービットの刃先の前方突出量が切削ビットの刃先の前方突出量よりも大きく配置することで、進路内の障害物に、まず円弧状の刃先が軸方向に並列するローラービットにより並列する筋状の溝を入れ、ついで切削ビットにより障害物のその筋状の溝の間の残部を削り取ることが可能となる。
このように、障害物を段階的に切削することにより、切削時にビットに大きな負担がかかることを防ぐことができ、ビットの破損、摩耗を抑制できる。併せて、ビットが障害物に大きく食い込んでシールド掘進機全体がローリングしてしまうなどの不都合も解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】揺動式切削ビットを用いたこの発明に係るシールド掘進機の第1の実施の形態を示す全体構造の一部を外形とした縦断正面図
【図2】シールド掘進機の先端から見た揺動式切削ビットの配置形状を示す図1の矢印II−IIでの拡大した側面図
【図3】図1の矢印III−IIIでの拡大した縦断側面図
【図4】シールド掘進機におけるカッター板に取付けた揺動式切削ビットの配置状態を部分的に示す斜視図
【図5】(a)は揺動式切削ビットの外観形状を示す斜視図、(b)は同じく揺動式切削ビットの縦断正面図、(c)は同縦断側面図
【図6】(a)は揺動式切削ビットの超硬チップによる地中障害物であるシートパイルの切削状態を示す横断平面図、(b)は同じく揺動式切削ビットの一枚目の超硬チップが破損したときの二枚目の超硬チップによるシートパイルの切削状態を示す横断平面図
【図7】固定式切削ビットを用いたこの発明に係るシールド掘進機の第2の実施の形態を示す全体構造の縦断正面図
【図8】固定式切削ビットの超硬チップによる地中障害物であるシートパイルの切削状態を示す拡大した横断平面図
【図9】シールド掘進機の先端から見た固定式切削ビットの配置形状を示す側面図
【図10】(a)は固定式切削ビットの斜視図、(b)は同横断平面図
【図11】ローラービットを用いたこの発明に係るシールド掘進機の第3の実施の形態を示す全体構造の縦断正面図
【図12】ローラービットによる地中障害物であるシートパイルの切削状態を示す拡大した横断平面図
【図13】シールド掘進機の先端から見たローラービットの配置形状を示す側面図
【図14】(a)はローラービットの斜視図、(b)は同平面図
【図15】切削ビットとローラービットを併用したこの発明に係るシールド掘進機の第4の実施の形態を示す全体構造の縦断正面図
【図16】シールド掘進機の要部拡大縦断正面図
【図17】シールド掘進機の先端から見た切削ビットおよびローラービットの配置形状を示す側面図
【図18】(a)および(b)は、切削ビットとローラービットによる地中障害物であるシートパイルの段階的な切削状態を示す拡大した横断平面図、(c)は切削ビットの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0031】
図1はこの発明に係るシールド掘進機1の全体構造を示し、円筒状となるスキンプレート2の前部に円板状のカッター板3を、隔壁4で支持されたセンター軸5への取付けによって配置し、センター軸5と連動したモータ6によって前記カッター板3は回転駆動され、前記カッター板3と隔壁4の間が掘削土砂を取り込むためのチャンバー7となり、図3のように、排泥管8と送泥管9が接続されている。
【0032】
図2に示すように、上記カッター板3の前面に、掘進用のカッタービット10と地中障害物Aを切削するための多数のビット11が取付けられ、前記掘進用のカッタービット10は、カッター板3の中心部の位置に設けたセンタービット12を挟む半径方向の両側に、半径方向に二列の配置で設けられ、最も外側に位置するものがスキンプレート2の外径に対して少し突出するゲージビット10aとになり、モータ6によるカッター板3の回転により、これらカッタービット10、センタービット12で地山を掘進し、カッター板3のカッタービット10の近傍に設けた開口13の部分からチャンバー7内に掘削物を取り込むようになっている。
【0033】
上記切削用のビット11は、カッター板3の前面でカッタービット10の部分を除く略半円状となる両側の位置に、カッター板3の回転軸心を中心とする渦巻き状の配置で多数が設けられ、図1に示すように、カッタービット10の刃先10bに対してビット11の刃先が前方に突出した配置になっている。
【0034】
図1乃至図6は、上記ビット11に揺動式切削ビット11Aを用いたシールド掘進機1の第1の実施の形態を示している。
【0035】
図3は、揺動式切削ビット11Aの構造を示し、カッター板3に固定する二又状の支持台14と、この支持台14に軸15で揺動可能となるよう取付けた複数の超硬チップ16からなり、各超硬チップ16は揺動方向と交差する方向の刃先11aを有し、複数の超硬チップ16は、揺動方向に沿ってその刃先11aが段付き状の配置になるよう並び、図示の場合、二枚の超硬チップ16aと16bを軸15を挟んで両側に対称状となるよう配置したものを示し、図4のように、この切削ビット11は、カッター板3の前面に超硬チップ16の揺動方向がカッター板3の回転方向に沿う配置で固定されている。
【0036】
図2のように、上記した多数の揺動式切削ビット11Aは、カッター板3の前面に対して、揺動方向がカッター板3の回転方向に沿う条件で固定されると共に、全体的にカッター板3の回転軸心を中心に、センタービット12の外周寄りの位置からカッター板3の外周に向けて、二つの渦巻の組み合わせとなる渦巻状の配置になっている。
【0037】
各揺動式切削ビット11Aの渦巻き状の配置において、カッター板3の回転方向に沿って前後に隣接する位置関係にある揺動式切削ビット11Aは、その超硬チップ16の刃先11aによる切削幅の幅方向の側縁が互いに一致するが一部がラップするように配置し、このような揺動式切削ビット11Aの回転方向に沿う間隔及び渦巻状の配置により、カッター板3の直径範囲内の全面で切削機能が得られることになり、シールド掘進機1の掘進範囲内における障害物Aの削り残しの発生が生じないようになっていると共に、このように揺動式切削ビット11Aをカッター板3の前面に対してランダムに配置することにより、障害物Aの切削時におけるシールド掘進機1への負荷を低減することができる。
【0038】
上記揺動式切削ビット11Aは、シールド掘進機1の掘進時において、超硬チップ16の刃先11aが障害物Aに当接したとき、この刃先11aの幅で障害物Aをカッター板3の回転方向に薄く削っていくことになり、障害物Aが鋼材、線材、コンクリートの何れであっても、削り取った部分は薄くて幅の狭いものとなるので簡単に分断されて小型化し、掘削土砂と共にカッター板3の開口13の部分からチャンバー7内に取り込むことができ、通常の泥土処理で地上に取出すことができる。
【0039】
また、障害物Aがシートパイル等の鋼材のように硬質の場合、超硬チップ16で削り取るにはそれなりの時間が必要になるが、上述した、人力による処理の方法の施工に要する作業時間、即ち、シールド掘進機の運転を停止し、地山に薬液を注入固化させる時間、その後、シールド掘進機の前部に人力で空洞を掘って障害物を露出させる時間、この障害物をガス切断等で除去する時間のトータル時間があれば十分に処理できることになり、作業時間が余分に長くかかるという問題はない。
【0040】
なお、図1のシールド掘進機1は、スキンプレート2の後端に推進管17を接続し、スキンプレート2の途中を分離した部分に複数本の方向修正ジャッキ18を設けた泥濃式推進工法用のものを示したが、スキンプレート2の後部にセグメントの組み立てスペースを設け、スキンプレート2の内部に推進ジャッキを設けたセミシールド工法に用いるものであってもよい。
【0041】
図7乃至図10は、上記ビット11に固定式切削ビット11Bを用いたシールド掘進機1の第2の実施の形態を示している。なお、上記した第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付すことによって説明に代える。以降の実施の形態についても同様である。
【0042】
図9と図10のように、固定式切削ビット11Bは、カッター板3の回転方向に沿って弧を描くように長い支持台21の先端に、この支持台21の長さ方向の中心を挟んでそれぞれ複数の超硬チップ16を対称状の配置で固定し、各超硬チップ16の刃先11aを中央部が最も高く両端に行くほど低くなるように多段の配置になっている。
【0043】
このようにすることで、一枚目の硬質チップ16の刃先11aが磨耗したり破損しても、次位置の超硬チップ16で切削を続行することができることになる。
【0044】
上記固定式切削ビット11Bは、図9のように、カッター板3の前面にこのカッター板3の回転軸心を中心とした一つの渦巻き状の配置で固定すると共に、カッター板3を外周縁から中心部に向けて高くなる円錐形の断面形状にすることで、全固定式切削ビット11Bにおける超硬チップ16の刃先11aの配列を、中央部のものが推進方向の前方に最も突出し、外周に位置するものほど後方に位置する円錐形の配置とし、障害物の切削を管路の中心部から行い、障害物の保持力を減じないように障害物を管路の中心部から外周に向けて切削し、切削による開口部を中心部から外周に広げていくようにしている。
【0045】
このような中央部のものが前方に最も突出する円錐形の配置となる固定式切削ビット11Bの刃先11aの配列は、上記した第1の実施の形態にも採用することは当然可能である。
【0046】
上記した第2の実施の形態において、掘進用のカッタービット10は、カッター板3の外周寄りの位置に固定したゲージビット10aであり、図9の場合、センタービット12の前面には中心を挟む両側の位置に、半径方向に長い切削ビット11が固定してある。
【0047】
図11乃至図14は、上記ビット11にローラービット11Cを用いたシールド掘進機1の第3の実施の形態を示している。
【0048】
上記ローラービット11Cは、超硬材料を用いた円軸体22の外周面に軸方向に沿う直線の刃先11aを周方向に多数設けた歯車形に形成され、図12のように、外周縁から中心部に向けて高くなる円錐形の断面形状に形成したカッター板3の前面で、回転中心を通る径方向の中心線上に、複数のローラービット11Cを回転可能となるよう並べて取付け、図13のように、カッター板3の回転中心を挟んだ半径方向に沿う両側のローラービット11Cの数と取付け位置を異なるようにし、カッター板3の回転により全面で切削が行えるようにしていると共に、各ローラービット11Cはその刃先11aがカッター板3の前面円錐形に沿う配置になっている。
【0049】
また、カッター板3の前面外周部で、上記した直列に並ぶローラービット11C群と直角となる二箇所の位置に最大径の切削用ローラービット11Cが外開きの配置で取付けられ、カッター板の前面で前記最大径の切削用ローラービットの内側位置にカッタービット10が設けてある。
【0050】
このローラービット11Cは、図14のように、外周面において、軸方向に沿う多数の直線状となる刃先11aが周方向に一定の間隔で設けられた歯車形に形成され、このローラービット11Cの外周面に、周方向に沿ってスパイラルの溝23を設け、各刃先11aを分断した構造とすることにより、各刃先11aの分断による端部の食い付き性の向上によって障害物に対する切り込み性を高め、切削効率を上げるようにしたものを用いることができる。
【0051】
図15乃至図18は、上記ビット11に固定式切削ビット11Bとローラービット11Cを併用したシールド掘進機1の第4の実施の形態を示している。
以下、上記各実施形態と同様の構成については、詳細な説明を省略する。
【0052】
その固定式切削ビット11Bは、支持台21に超硬チップ16を固定してなる上記第2の実施形態と同様の構造のものが用いられている(図18(c)参照)。
その超硬チップ16の刃先(端面)11aは、面取りの施されていない鋭角なものであり、折損の危険性よりも切削性能の向上を優先させた形状となっている。
図17に示すように、カッター板3の前面にこのカッター板3の回転軸心を中心としたほぼ渦巻き状の配置で固定され、カッター板3の直径範囲内の全面で切削機能が得られることになっている。
なお、固定式切削ビット11Bに代えて、上記第1の実施形態と同様の揺動式切削ビット11Aを用いることも可能である。
【0053】
またローラービット11Cには、その円軸体22の外周面に円弧状(円環状)の刃先11aが形成されており、この刃先11aは、円軸体22の軸方向に多数並列している。
各ローラービット11Cは、その円軸体22の軸心がカッター板3の半径方向と一致するようにカッター板3に取り付けられている。そのため、ローラービット11Cは、カッター板3の回転方向に沿って回転するようになっている。
さらに図17に示すように、ローラービット11Cは、カッター板3の半径方向に位置を違え、かつ固定式切削ビット11Bと重なり合わないように配置されており、カッター板3の回転により全面で切削が行えるようになっている。
【0054】
図15および図16のように、カッター板3は、外周縁から中心部に向けて高くなる円錐形の断面形状に形成しされており、各固定式切削ビット11Bの刃先11aおよび各ローラービット11Cの刃先11aは、カッター板3の前面でその円錐形にほぼ沿う配置となっている。
【0055】
さらに図16のように、カッター板3の中心からほぼ等距離にあるカッタービット10、固定式切削ビット11B、ローラービット11Cの高低を比較すると、ローラービット11Cの刃先11aが最も前方に突出し、固定式切削ビット11Bの刃先11aがこれに次ぎ、カッタービット10の刃先は最も後方に位置している。
したがって、ビット11により障害物の切削する際には、まずローラービット11Cが障害物に接触してこれを切削し、ついで固定式切削ビット11Bが障害物に接触してこれを切削することになる。
【0056】
次に、この発明の管路構築工法の施工方法を上記した第1の実施の形態のシールド掘進機1を主体に用いて説明する。
【0057】
地中に挿入したシールド掘進機1のカッター板3を回転させ、シールド掘進機1に対して同時に推力を加えることにより、掘進用のカッタービット10と切削ビット11が回転することで地山を掘削、掘削土砂を開口13の部分からチャンバー7内に取り込むことで掘進し、シールド掘進機1の後方に、推進管17を継ぎ足すことによる管路や、セグメントの組立と継ぎ足しによる管路又はトンネルを構築することになる。
【0058】
上記シールド掘進機1の掘進時において、その進路上にシートパイルや鉄骨、基礎杭等の地中障害物Aが存在すると、切削ビット11が障害物に当接し、カッター板3が回転していると共にシールド掘進機1に前進方向の推力が与えられているので、切削ビット11は超硬チップ16の刃先11aで障害物Aをカッター板3の回転方向に沿って削っていく。
【0059】
図6(a)は、地中障害物Aがシートパイルの場合における切削ビット11での切削状態を示し、カッター板3の回転方向aに沿って揺動可能となる切削ビット11は、回転方向aの前方に位置する一枚目の超硬チップ16aの刃先11aがシートパイルに当接する
ことにより、前記刃先11aがシートパイルに食い込むよう切削ビット11が傾動し、シートパイルの表面を超硬チップ16aの刃先11aの幅で削っていく。
【0060】
各切削ビット11は、カッター板3の前面に二組の渦巻き状の配置で固定され、かつ、カッター板3の回転方向aに沿って前後に隣接する位置関係にある切削ビット11は、その超硬チップ16の刃先11aによる切削幅の幅方向の側縁が互いに一致するが一部がラップするように配置されているので、障害物Aに対してシールド掘進機1の外径に見合う範囲を削ることができる。
【0061】
このとき、切削ビット11における超硬チップ16の刃先11aは掘進用のカッタービット10よりも前方に突出した配置になっているので、掘進用のカッタービット10が障害物に当接することによって損傷するというようなことがない。
【0062】
上記各切削ビット11は、カッター板3の回転方向aに沿って、複数の超硬チップ16を並べた構造になっているので、図6(b)のように、一枚目の超硬チップ16aが磨耗したり破損した場合、二枚目の超硬チップ16bによって切削を継続することができ、また、超硬チップ16は軸15を挟んだ両側に対称状の配置とすることで、一方側の超硬チップ16が磨耗したり破損した場合、カッター板3の回転を逆回転させることで、他方側の超硬チップ16で切削を継続することができる。
【0063】
上記のように、カッター板3の回転とシールド掘進機1に対する推力の付与を継続することにより、各超硬チップ16の刃先11aで、シールド掘進機1の外径に見合う範囲で障害物Aを削り取るっていき、障害物Aの削り取られたものは薄くて幅の狭いものであり、掘削土砂との混練で小さく分断されるので、カッター板3に設けた開口13の部分から掘削土砂と共にチャンバー7内に取り込むことができ、これにより、既存の排泥機構を用い、泥土共に地上に取出して処理することができる。
【0064】
このように、シールド掘進機1の掘進を継続しながらシールド掘進機1の外径に見合う範囲で障害物Aを削り取ると、通常の掘進となって管路を構築していけばよく、障害物Aが存在しても掘進を中断することなく管路を構築できる。
【0065】
上記した管路構築工法の施工において、第2の実施の形態のシールド掘進機1を用いた場合、地中の障害物に遭遇すると、回転と推力の付与により、カッター板3の前面に設けた固定式切削ビット11Bで障害物を切削し、この固定式切削ビット11Bは、円錐形の配置になっているので、障害物を管路の中心部から切削を開始し、このように、中心部から外周に切削範囲を広げていくことにより、障害物の保持力を減じないようにすることができ、地山が崩落することのないように掘進することができる。
【0066】
また、第3の実施の形態のシールド掘進機1を用いた場合、ビット11がローラービット11Cになっているので、地中の障害物に遭遇すると、回転と推力が付与されたローラービット11Cは公転しながら自転し、ローラービット11Cの回転方向の変化に伴うこじり作用で、刃先11aによって障害物を効率よく切削することになる。
【0067】
さらに、第4の実施の形態のシールド掘進機1を用いた場合、地中の障害物Aに遭遇すると、上述した刃先の突出量の関係から、まずローラービット11Cの刃先11aが障害物に接触する。そして、ローラービット11Cの円軸体22の軸方向に並列する円弧形の刃先11aにより、図18(a)のように、障害物は筋状の溝Gが並列した状態に削り取られる。
次いで固定式切削ビット11Bの刃先11aが障害物Aに接触し、図18(b)のように、障害物のローラービット11Cにより形成された筋状の溝Gの間の残存箇所が削り取られる。
このように、段階的に障害物Aを切削するため、切削時にビット11にかかる負荷を低減することができ、その損耗を防ぐことができる。特に、ローラビット11Cにより並列する筋状の溝Gを障害物Aに形成することで、障害物は圧裂切断されるため、後続の固定式切削ビット11Bによる切断をスムーズにおこなうことができる。
【0068】
この発明において、地中の障害物を揺動式切削ビット11Aや固定式切削ビット11B又はローラービット11Cで切削するので、地中障害物が金属製又はコンクリート製の何れであっても、切削によって生じる切削物は幅の狭い薄いものとなり、このような切削物は掘削土と共に地上へ排出処理できることになる。
【符号の説明】
【0069】
1 シールド掘進機
2 スキンプレート
3 カッター板
4 隔壁
5 センター軸
6 モータ
7 チャンバー
8 排泥管
9 送泥管
10 掘進用のカッタービット
11 切削ビット
11A 揺動式切削ビット
11B 固定式切削ビット
11C ローラービット
12 センタービット
13 開口
14 支持台
15 軸
16 超硬チップ
17 推進管
18 方向修正ジャッキ
21 支持台
22 円軸体
23 スパイラルの溝
A 障害物
G 障害物の溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スキンプレートの前部に回転駆動されるカッター板を設け、このカッター板の前面に、掘進用のカッタービットを設けたシールド掘進機において、前記カッター板の前面に、地中の障害物を切削するためのビットを取付けたことを特徴とするシールド掘進機。
【請求項2】
上記ビットは、切削ビットを用い、カッター板の前面に、このカッター板の回転軸心を中心とする渦巻き状の配置で多数が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のシールド掘進機。
【請求項3】
上記切削ビットは、カッター板に固定する支持台と、この支持台に揺動可能となるよう取付けた複数の超硬チップからなり、各超硬チップは揺動方向と交差する方向の刃先を有し、複数の超硬チップは、揺動方向に沿ってその刃先が段付き状の配置になるよう並び、前記切削ビットが、カッター板の前面に超硬チップの揺動方向がカッター板の回転方向に沿う配置で固定されていることを特徴とする請求項2に記載のシールド掘進機。
【請求項4】
上記ビットは、ローラービットを用い、このローラービットの回転方向がカッター板の回転方向に沿う配置でカッター板の前面に複数が取付けられ、前記複数のローラービットは、カッター板の半径方向に位置を違えた配置になっていることを特徴とする請求項1に記載のシールド掘進機。
【請求項5】
上記ローラービットは、軸方向に沿う多数の直線状刃先が周方向に一定の間隔で設けられた歯車形に形成され、このローラービットの外周面に、各刃先を分断するようにスパイラルの溝が設けられていることを特徴とする請求項4に記載のシールド掘進機。
【請求項6】
上記ビットは、カッター板の中心部に位置するものが最も前方に位置し、外周部に位置するものほど後方に位置するような配置になっていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載のシールド掘進機。
【請求項7】
上記ビットは、切削ビットとローラービットを併用し、
この切削ビッドは、カッター板の前面に、このカッター板の回転軸心を中心とする渦巻き状の配置で多数が設けられ、
このローラービットは、カッター板の全面に、その回転方向がカッター板の回転方向に沿う配置でかつカッター板の半径方向に位置を違えた配置で複数が取付けられ、
ローラービットは、周方向に沿う円弧状刃先が軸方向に複数並列するものとし、
ローラービット、切削ビット、およびカッタービットは、下式を満たすように配置されている請求項1に記載のシールド掘進機。
ローラービットの刃先の前方突出量>切削ビットの刃先の前方突出量>カッタービットの刃先の前方突出量
【請求項8】
請求項1乃至7の何れかに記載のシールド掘進機を用い、地中掘進時の進路内に地中障害物があると、これをビットで切削してシールド掘進機内に取り込むことで処理する管路構築工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−47444(P2013−47444A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−85168(P2012−85168)
【出願日】平成24年4月4日(2012.4.4)
【出願人】(501200664)株式会社インテック (2)
【出願人】(506292262)ヤスダエンジニアリング株式会社 (8)
【Fターム(参考)】