説明

シールド掘進機における地中障害物探査装置と探査方法

【課題】金属製以外の障害物であっても容易にその存在を検知することができる検知構造と方法を提供する。
【解決手段】シールド掘進機のカッターフェイスやカッタースポークの内部に、探査回転体を取り付ける。この探査回転体の一部に探査ビットを取り付ける。この探査ビットは、他の掘削ビットよりも破損しやすいように形成する。探査ビットの破損の状態を検知して表示するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド掘進機における地中障害物探査装置と探査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地中に鋼材やコンクリート塊、アースアンカー体、ワイヤーなどの障害物が埋設されている場合がある。
シールド掘進機が掘進中にそのような地中の障害物に当たった場合には、カッターフェイスやカッタースポークに溶接やボルトアップにて固定してあるビットが破損する可能性がある。
ビットにワイヤーのような柔軟性のあるものがからむと、カッタースポークなどの回転が不可能となる場合もある。
また障害物が既存の構造物の仮設材、本設構造物にかかわらず、障害物に設計外の力を与えると、本来の構造物に影響を与えてしまう可能性もある。
そのような事故の発生を避けるために、例えば磁気や電磁波を切羽面から地中に発信し、その反射波を検出して前方の埋設障害物の存在を確認する方法が提案されている。

【特許文献1】特開平10−306686号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記した従来のシールド掘進機における地中障害物の探査方法にあっては、金属製の障害物の検知はできるが、コンクリート製のものなどには反応しなという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記のような課題を解決するために本発明のシールド掘進機における地中障害物探査装置と探査方法は、シールド掘進機のカッターフェイスやカッタースポークの内部に、探査回転体を取り付け、この探査回転体の一部に、探査ビットを取り付け、この探査ビットは、他の掘削ビットよりも破損しやすいように形成し、探査ビットの破損の状態を検知して表示するように構成したシールド掘進機における地中障害物探査装置を特徴としたものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明のシールド掘進機における地中障害物探査装置と探査方法は以上説明したようになるから次のような効果を得ることができる。
<1> 金属製以外の障害物であっても容易にその存在を検知することができる。
<2> したがって障害物によって掘削用ビットが破損する前に、地上から適切な処理を行うことができるから、それ以降のシールド掘進機の掘進に影響を与えることがない。
<3> 複数個所に障害物があっても、次々と検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下図面を参照にしながら本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【実施例】
【0007】
<1>全体の構成。
本発明の装置は図1、2に示すように、シールド掘進機1のカッターフェイスやカッタースポーク11に取付けた探査回転体2と、探査回転体2に取付けた探査ビット21、および検知装置とによって構成する。
探査回転体2は、図1に示すようにスポークと直交する方向に取付けることも、あるいは図2に示すようにスポークと平行方向に取付けることもできる。
【0008】
<2>探査回転体2。
カッターフェイスやカッタースポーク11は切羽面を掘削する回転盤であるが、その一部に、探査回転体2を取付ける。
探査回転体2は、カッターフェイスなどに取付けた掘削用ビット12とは異なり、掘削を目的とするものではなく、探査を目的とするものである。
探査回転体2を回転するように構成する意味は、掘削のための回転ではなく、ひとつの探査ビット21が破損した場合に、回転して他の探査ビット21をカッターフェイス、カッタースポーク11の表面に露出させるための構成である。
探査回転体2としては例えば図3に示すように、回転軸22の周囲に三方向に向けて探査ビット21を突設させた歯車状に形成する。
この探査回転体2の回転軸22はカッターフェイスの回転中心からの放射線と一致する方向に向けて取り付ける。
あるいはカッターフェイスの回転中心からの放射線と直交する方向に向けて取り付ける。
探査回転体2の回転は、例えば探査回転体2の中心の回転軸22に、一定角度だけ回転するロータリーエンコーダーなどを取り付け、そこへ電流、圧力油を供給して探査ビット21を1コマつづ一方へ送る構成を採用する。
あるいは探査回転体2にラチェット機構の回転軸22を備え、油圧ジャッキで1コマづつ一方へ送ることによって探査回転体2に一定量の回転を与える構成を採用する。
あるいは、油圧ジャッキだけで回転軸22に回転を与え、常時ジャッキによる押し付け力を与えることによって探査ビット21の反転を阻止する構成を採用することもできる。
回転体2を、三面を突出させた三角状の歯車に形成するだけでなく、四面、五面などの多数の面をもった角柱に形成することができる。
あるいは図4に示すように、中心の回転軸22から翼状に2本の支持腕23を突出させ、その先端に探査ビット21を取付けた形状に構成することもできる。
【0009】
<3>探査ビット21。
この探査回転体2に取り付けた探査ビット21は、他の掘削用ビット12よりも破損しやすいように形成してある。
そのために、一定の外力がかかると探査ビット21は折れてしまい、その結果探査ビット21の回転軸22には無理な外力が作用しない。
探査ビット21が破損した場合に、探査回転体2は前記したように複数の探査ビット21を備えているから、1コマだけ回転を与えて破損していない新たな探査ビット21をカッターフェイスから前方に露出させることができる。
【0010】
<4>検知機構。
探査ビット21が破損した場合にその破損の状態を検知して、作業者に向けて表示するように構成してある。
そのための検知機構としては、例えば探査ビット21が破損した際に、カッターフェイスやカッタースポーク11の回転トルクの変化を数値化して探査ビット21の破損状態を検知するように構成することができる。
あるいは探査回転体2に荷重計を取付けておき、探査ビット21が破損した際に、探査ビット21を取付けてある回転体の荷重計の荷重変化によって、探査ビット21の破損状態を検知するように構成することができる。
あるいは探査ビット21にセンサーを取付けておき、センサーの断線などによって、探査ビット21の破損状態を検知するように構成することもできる。
【0011】
<5>障害物の検知の機能。
次の機能について説明する。
【0012】
<6>常時は収納しておく構成。
上記したように探査ビット21は掘削に使用するビットではないから、常時、前方に露出しておく必要はない。
そこで地上からの探査などによって障害物3の出現が予想される範囲を通過するに場合に限り、ジャッキなどによって探査回転体2をカッタースポーク11の前面から前方に向けて押し出す。
こうして探査ビット21を出現させて、カッターフェイスやカッタースポーク11に取付けた掘削用ビット12よりも前方に露出させる。(図5)
その状態でカッタースポーク11を回転して掘削を継続すると、まず探査ビット21の先端が障害物3に接触する。(図6)
そのままカッタースポーク11の回転を続けると、次の回転で探査ビット21が再度障害物3に衝突して破損してしまう。(図7)
探査ビット21が地中の障害物3に当たって破損したら、上記したいずれかの検知機構によって破損状態を検知する。
そして作業員などが知りうる状態でその結果をディスプレイその他に表示して障害物3の存在を知らせる。
探査ビット21の破損によって地中の障害物3の位置が明確になるから、地上から掘削してその障害物3を取り除くなどの作業を行う。
【0013】
<7>常時、前方に突出させておく構成。
障害物3の位置の予想がつかないような場合には、探査回転体2を回転してその一部に取付けた探査ビット21を出現させて、カッターフェイスやカッタースポーク11に取付けた掘削用ビット12よりも前方に露出させる。
その状態でカッタースポーク11を回転して掘削用ビット12による掘削を継続する。
探査ビット21が地中の障害物3に当たって破損した場合には上記のケースと同様に地中の障害物3の位置が明確になるから、対応策を採用する。
【0014】
<8>新たな探査ビット21の露出。
障害物3に接触して探査ビット21は破損しているから、そのままでは次の障害物3の検知はできない。
そこで探査回転体2を1コマ回転して新たな探査ビット21を出現させて前面に露出させ、上記のような工程にしたがって次の障害物3に対応する。
上記したような簡単な構成を採用することによって、地中障害物3の出現の可能性のある範囲で施工するシールド工法、シールド掘進機1において、安価で確実に障害物3の探査が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の探査装置をカッタースポークに配置したシールド掘進機の実施例の正面図。
【図2】他の実施例の正面図。
【図3】探査回転体の実施例の説明図。
【図4】他の探査回転体の実施例の説明図。
【図5】回転ビットをカッタースポークの前面から露出させた状態の説明図。
【図6】障害物に接触する直前の説明図。
【図7】障害物によって探査ビットが破損した状態の説明図。
【符号の説明】
【0016】
1:シールド掘進機
11:カッタースポーク
12:掘削用ビット
2:探査回転体
22:探査ビット
3:障害物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド掘進機のカッターフェイスやカッタースポークの内部に、
探査回転体を取り付け、
この探査回転体の一部に、探査ビットを取り付け、
この探査ビットは、他の掘削ビットよりも破損しやすいように形成し、
探査ビットの破損の状態を検知して表示するように構成した、
シールド掘進機における地中障害物探査装置。
【請求項2】
探査回転体は、
歯車状に形成し、
各歯車に相当する部分に探査ビットをとりつけて構成した、
請求項1記載のシールド掘進機における地中障害物探査装置。
【請求項3】
探査ビットが破損した際に、
カッターフェイスやカッタースポークの回転トルクの変化によって、
探査ビットの破損状態を検知するように構成した、
請求項1記載のシールド掘進機における地中障害物探査装置。
【請求項4】
探査ビットが破損した際に、
探査ビットを取付けた回転体の荷重計の荷重変化によって、
探査ビットの破損状態を検知するように構成した、
請求項1記載のシールド掘進機における地中障害物探査装置。
【請求項5】
探査ビットが破損した際に、
探査ビットに取付けたセンサーの断線によって、
探査ビットの破損状態を検知するように構成した、
請求項1記載のシールド掘進機における地中障害物探査装置。
【請求項6】
請求項1記載の装置を使用し、
障害物の出現が予想される場合に、
探査回転体を回転してその一部に取付けた探査ビットを出現させて、
カッターフェイスやカッタースポークに取付けた掘削用ビットよりも前方に露出させて掘削を継続し、
探査ビットが地中の障害物に当たって破損した場合に、
その破損状態を検知して表示する、シールド掘進機における地中障害物探査方法。

【請求項7】
請求項1記載の装置を使用し、
掘削中には、
探査回転体を回転してその一部に取付けた探査ビットを出現させて、
カッターフェイスやカッタースポークに取付けた掘削用ビットよりも前方に露出させて掘削を継続し、
探査ビットが地中の障害物に当たって破損した場合に、
その破損状態を検知して表示する、シールド掘進機における地中障害物探査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−177518(P2007−177518A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−377495(P2005−377495)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】