説明

シールド掘進機の発進方法

【課題】 既設トンネル内からそのトンネル内径よりも全長の長いシールド掘進機を発進させる際にローリングを防止する。
【解決手段】 シールド掘進機1を軸方向に複数に分割し、各分割片3a〜3b、4a〜4dを既設トンネル2内に搬入して連結しながら掘削対象壁を掘り抜いて発進する方法であって、上記分割片3bを架台26に載置し、上記分割片3bの外周部に取り付けた金具27を上記架台26に設けたガイド28に当接させることで、上記分割片3bを上記架台26に対して軸方向に移動可能且つ周方向に回転固定し、この状態で上記分割片3b及び上記架台26を上記既設トンネル2の上記掘削対象壁21に対向する位置に搬送し、上記分割片3bを上記架台26に対して軸方向に前進させる際、上記金具27を上記ガイド28に摺接させて上記分割片3bのローリングを防止し、上記分割片3bを上記金具27を取り外した後に上記掘削対象壁21に取り付けた発進フード16を通過させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発進時のローリングを防止するようにしたシールド掘進機の発進方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド掘進機は通常立坑から発進するが、この発進時に、シールド掘進機の前部に設けられた回転カッタの反力によってシールド掘進機にはローリングが生じるため、かかるローリングを防止する必要がある。
【0003】
上記ローリングを防止する発明として、立坑の内面に取り付けた円筒状の発進フードの内周面に軸方向に沿ってガイド溝を設けると共に、この発進フードを通過するシールド掘進機の外周面にピンを設け、このピンを上記ガイド溝に係合させてシールド掘進機を発進させることで上記ローリングを防止するようにしたものが知られている(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−106087号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記文献1に記載されたものにおいては、シールド掘進機の立坑からの発進時におけるローリングは、掘進機の外周面に設けたピンが発進フードの内周面に設けたガイド溝に係合している間、防止される。このため、ローリングを防止しつつ掘進機が前進できる長さを稼ぐためには、上記ガイド溝の長さ即ち発進フードの長さを通常よりも長くする必要がある。
【0006】
しかし、このように発進フードの長さを長くすると、立坑を上方から見た場合の立坑面積に対する発進フードの占有面積の割合が大きくなり、立坑内に掘進機を搬入・設置するためのマシン設置面積が相対的に小さくなる。よって、上記マシン設置面積にシールド掘進機が収まらなくなるケースも考えられ、この場合、シールド掘進機を軸方向に分割し、各分割片を立坑内に搬入して連結しながら発進することになる。
【0007】
ここで、上述のように発進フードの長さが通常よりも長くなっていると、発進フードとの干渉を避けるためには、発進フードが通常の長さの場合よりも、掘進機をより細かな分割片に分割しなければならない。よって、その分割・組立作業の煩雑さによるコストアップを考慮すると、このような方式は実際には採用できない。
【0008】
以上の事情を考慮して創案された本発明の目的は、発進フードの長さを長くすることなく、発進時のローリングを防止できるシールド掘進機の発進方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明は、シールド掘進機を軸方向に複数に分割し、各分割片を既設トンネル内に搬入して連結しながら発進する方法であって、上記分割片を架台に載置し、上記分割片の外周部に取り付けた金具を上記架台に設けたガイドに当接させることで、上記分割片を上記架台に対して軸方向に移動可能且つ周方向に回転固定し、この状態で上記分割片及び上記架台を上記既設トンネルの掘削対象壁に対向する位置に搬送し、上記分割片を上記架台に対して軸方向に前進させる際、上記金具を上記ガイドに摺接させて上記分割片のローリングを防止するようにしたものである。
【0010】
また、上記分割片を上記架台から前方に移動させた後に空荷となった上記架台を取り除き、これにより生じたスペースに次の分割片を別の架台に載置して運び込んで上記前進された分割片の後部に連結し、この連結ユニットを前進させる際に上記次の分割片に取り付けた金具を上記別の架台に設けたガイドに摺接させてローリングを防止し、以降同様の手順により、各分割片を架台に載せて順次既設トンネル内に搬入して発進途中の上記連結ユニットの後部に連結し、各分割片に取り付けた金具を各架台に設けたガイドに摺接させてローリングを防止するようにしてもよい。
【0011】
また、上記各分割片が上記発進フードを通過するに先立って、各分割片の外周部に取り付けた金具を取り外すようにしてもよい。
【0012】
また、上記金具を上記分割片にボルトによって取り付け、ボルトを緩めることで取り外すようにしてもよい。
【0013】
また、上記金具を上記分割片に溶接により取り付け、溶接部を切断することで取り外すようにしてもよい。
【0014】
また、上記金具を上記分割片の中折れシールの近傍の部位に取り付ける場合にはボルトによって取り付け、ボルトを緩めることで取り外すようにし、上記金具を上記分割片の中折れシールが近傍に存在しない部位に取り付ける場合には溶接によって取り付け、溶接部を切断することで取り外すようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、架台を利用してローリングを防止しているので、発進フードの長さを長くすることなく、発進時のローリングを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好適な一実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0017】
図1に本実施形態に用いられるシールド掘進機1を示す。このシールド掘進機1は、図2に示す既設トンネル2の内部からトンネル壁を掘り抜いて発進するものであるが、その全長が上記既設トンネル2の内径よりも長くなっている。かかるシールド掘進機1は軸方向に複数に分割され、各分割片(後述の第1〜第2前胴部3a〜3b、第1〜第4後胴部4a〜4d)の長さは上記既設トンネル2の内径よりも短くなっている。
【0018】
上記シールド掘進機1は、図例では前胴部3と後胴部4とが中折れジャッキNJを介して連結された中折れシールドとなっているが、本発明の実施形態は、中折れシールドに限られず、中折れ機構のない通常のシールドであっても構わない。上記前胴部3は、第1前胴部3a及び第2前胴部3bからなり、後胴部4は、第1後胴部4a、第2後胴部4b、第3後胴部4c及び第4後胴部4dからなる。
【0019】
第1前胴部3aは、筒体6と、その内部を前後に仕切る隔壁7と、隔壁7に回転可能に装着された回転カッタ8と、回転カッタ8を回転駆動するための駆動部(図示せず)とを有する。隔壁7には、回転カッタ8で切削され隔壁7の前方のカッタ室9に取り込まれた土砂を隔壁7の後方の坑内に取り込むための図示しない土砂搬送装置(送排泥管またはスクリューコンベヤ等)が取り付けられている。また、第2前胴部3bはその後部内周面に中折れシール10を有する。
【0020】
第1後胴部4aは、第2前胴部3bの内部に挿入され上記中折れシール10に当接する挿入部11と、挿入部11の後端に取り付けられたフランジ部12と、フランジ部12の外周端に取り付けられた筒体13とを有する。フランジ部12には、シールドジャッキ(推進ジャッキ)SJが取り付けられている。また、第1後胴部4aと第1前胴部3aとの間には、前胴部3と後胴部4とを屈曲させるための中折れジャッキNJが介設されている。
【0021】
第1後胴部4aの後端には円筒状の第2後胴部4bが連結され、その後端には円筒状の第3後胴部4cが連結され、その後端には円筒状の第4後胴部4dが連結されている。第2後胴部4bには後胴部4の内部でセグメントSを筒状に組み立てるためのエレクタ(図示せず)が設けられ、第4後胴部4dには既設セグメントSの外周面に押し付けられるテールシール15が取り付けられている。
【0022】
かかるシールド掘進機1は、上記既設トンネル2内から発進するときには、第1前胴部3a、第2前胴部3b、第1後胴部4a、第2後胴部4b、第3後胴部4c及び第4後胴部4dに分割される。そして、それら分割片が夫々架台に載置されて先頭側のものから順に架台と一緒に既設トンネル2内に搬入され、トンネル壁の掘削対象壁(掘削可能壁)に対向する位置に移送される。
【0023】
図2に第1前胴部3aの移送の様子を示す。第1前胴部3aは、その外周部に発進フード16がスライド可能に被嵌され、その軸方向が既設トンネル2の軸方向と直交し且つ水平状態で架台17上に載置される。架台17は、屈曲されたH鋼等からなり、その中央部に発進フード16が嵌る凹部18が形成されており、両端部に走行車輪19が取り付けられている。車輪19は、既設トンネル2の底部にその長手方向に沿って敷設されたレール20上を走行する。レール20は、上記底部に設けられた枕木や平板の上に敷設される。
【0024】
第1前胴部3a及び発進フード16は、架台17に載置された状態でトンネル壁の掘削対象壁21(図3参照)に対向する位置に移送される。掘削対象壁21は、上記回転カッタ8によって切削できる材質(モルタル等)からなり、回転カッタ8により掘り抜かれて既設トンネル2から分岐する分岐トンネルの開口が形成される。なお、移送中の第1前胴部3aの中心CPは、既設トンネル2の中心線CLよりも所定高さ上方に位置する。
【0025】
図3に示すように、第1前胴部3a及び発進フード16が上記掘削対象壁21に対向する位置に移送されたならば、架台17とトンネル底部の平板22との間にジャッキ23が介設され、ジャッキ23が伸長されて車輪19がレール20から浮かされ、第1前胴部3a及び発進フード16の重量がジャッキ23に支持される。その状態で、車輪19を架台17から取り外し、架台17の下方のレール20を平板22から取り外す。
【0026】
図4に示すようにジャッキ23が収縮されて、架台17が上記平板22に載置される。これにより、第1前胴部3aの中心CPが、既設トンネル2の中心線CLの高さと一致する。ジャッキ23が取り除かれ、架台17を上記平板22上にて滑らせることで架台17上の第1前胴部3a及び発進フード16を掘削対象壁21に対向する所定の発進位置(分岐位置)に移動させ、発進フード16を掘削対象壁21の内周面に当接させる。なお、架台17の底面(平板22との接触部)に、コロを設けてよい。
【0027】
図5に示すように、発進フード16は、円筒状に形成されたエントランス部16aと、円筒の前端が既設トンネル2の内周面に当接するように馬鞍状に形成された接続部16bとからなる。エントランス部16aの内周面には、第1前胴部3aの外周面に当接して発進フード16と第1前胴部3aとの間を止水するエントランスシール25が設けられている。接続部16bは、その前端が既設トンネル2の掘削対象壁21の内周面に当接され、そこに溶接固定されて発進フード16と掘削対象壁21との間が止水される。
【0028】
図6に示すように、第2前胴部3bを架台26に載置して第1前胴部3aの近傍まで既設トンネル2内を搬送する。架台26は、上記レール20上を走行する車輪(図示せず)を有する。架台26が第1前胴部3aの近傍まで移動されたなら架台26と既設トンネル底部の平板22との間にジャッキ(図示せず)を介設し、ジャッキアップによって車輪を架台26から取り外し、架台26の下方のレール20を平板22から取り外す(図3参照)。
【0029】
ジャッキダウンによって架台26の底部を上記平板22上に載置したならばジャッキを取り除き(図4参照)、架台26を上記平板22上にて滑らせることで架台26上の第2前胴部3bを上記第1前胴部3aの後方に移動させる(図6参照)。なお、架台26の底面に、平板22上を転がるコロを設けてよい。その後、第2前胴部3bは、第1前胴部3aに溶接固定され、両者の間が止水される。
【0030】
図7にも示すように、架台26に載置されて移送される第2前胴部3bの外周部には金具27が取り付けられ、架台26には金具27に当接して第2前胴部3bを軸方向に移動可能且つ周方向に回転固定するためのガイド28が設けられている。これにより、第2前胴部3bは移送中に架台26に対して回転することはなく、第2前胴部3bをワイヤで架台26に固定する作業(ラッシング)が不要となる。
【0031】
金具27は、第2前胴部3bの外周部の斜め下部に左右一対取り付けられており、ガイド28は架台26の左右に既設トンネル2の軸方向と直交して水平に形成されている。金具27は、図6に示すように第2前胴部3bの軸方向後部に取り付けられており、第1前胴部3a及び第2前胴部3bが一体となった連結ユニット33(前胴部3でもある)が掘削対象壁21を掘り抜いて前進するとき、ガイド28に摺接して案内される長さ(ローリング防止長さ)を可及的に稼いでいる。
【0032】
このように、金具27は、第2前胴部3bの軸方向後部に取り付けられるため、図10に示すように、中折れシール10の近傍に取り付けられることになる(図1参照)。中折れシール10は、ゴムや樹脂などの熱に弱い材質を用いた部品からなると共に、シール本体10aを取り付けるためのボルト穴10b等の機械加工部が多い。このため、図8に示すように、上記金具27をボルト30によって第2前胴部3bに取り付けている。
【0033】
仮に、金具27を溶接によって第2前胴部3bに取り付けると、溶接時の熱によって中折れシール10のゴムや樹脂などの熱に弱い材質を用いた部品が損傷し、中折れシール10が所定のシール性能が発揮できない虞がある。また、金具27を取り付ける部分の近傍には、元々シール本体10aを取り付けるためのボルト穴10b等の機械加工部が多いため、金具27をボルト30で取り付けるためのボルト穴を追加して加工することもたやすい。
【0034】
図11に示すように、第2前胴部3bを第1前胴部3aに溶接固定してなる連結ユニット33は、回転カッタ8を回転駆動しつつ中折れジャッキNJ(図1参照)によって前進され、回転カッタ8が掘削対象壁21を掘り抜いて地山に侵入する。このとき、中折れジャッキNJの軸方向後方のトンネル壁には反力架台(図示せず)が設置され、この反力架台と中折れジャッキNJとの間には掘進反力を伝えるスペーサ(図示せず)が介設される。また、掘削土砂は、予め隔壁7(図1参照)に取り付けられた排土装置(送排泥管、スクリューコンベヤ等)によってカッタ室9から排土される。
【0035】
連結ユニット33は、回転カッタ8が掘削対象壁21や地山から受ける回転反力によってローリングしようとするが、第2前胴部3bに取り付けられた金具27が架台26に設けられたガイド28に押し付けられることで上記ローリングが防止される。すなわち、金具27は、連結ユニット33に生じるローリングトルクによってガイド28に押し付けられつつ連結ユニット33の前進に伴ってガイド28に沿って摺接され、ローリングを防止する。
【0036】
また、上記ガイド28に繋がるように架台17にも同様のガイド29を設けておけば、上記金具27は上記ガイド28を通過した後にこのガイド29にも摺接されて連結ユニット33のローリングを防止する。これらガイド28、29の間の隙間は上記金具27の幅よりも狭く設定しておく。金具27が発進フード16の開口縁16aの手前の位置となったなら、連結ユニット33の前進を中止する。そして、空荷となった架台26を架台17の後方から移動させ、次の架台31のためのスペースを作る。
【0037】
図12に示すように、第1後胴部4aを架台31に載置してトンネル2内を搬送し、上記連結ユニット33の後方の生じたスペースに移送する。架台31は、上記レール20上を走行する車輪を有する(図2参照)。架台31が連結ユニット33の近傍まで移動されたなら架台31とトンネル底部の平板22との間にジャッキを介設し、ジャッキアップによって車輪を架台31から取り外し、架台31の下方のレール20をトンネル底部から取り外す(図3参照)。その後、ジャッキダウンによって架台31の底部を上記平板22上に載置したならばジャッキを取り除き、架台31を上記平板22上にて滑らせることで架台31上の第1後胴部4aを図12に示すように上記連結ユニット33の後方に移動させる。なお、架台31の底面に、平板22上を転がるコロを設けてよい。
【0038】
図13に示すように、第1後胴部4aは、作業員が手動ジャッキを用いる等の作業によって前進され連結ユニット33の後部に挿入され、これが新たな連結ユニット34となる。その後、空荷となった架台31が架台17の後方から移動され、次の架台35のためのスペースを作る。
【0039】
図14に示すように、第2後胴部4bを架台35に載置してトンネル2内を搬送し、上記連結ユニット34の後方の生じたスペースに移送する。架台35は、上記レール20上を走行する車輪を有する(図2参照)。架台35が連結ユニット34の近傍まで移動されたなら架台35とトンネル底部の平板22との間にジャッキを介設し、ジャッキアップによって車輪を架台35から取り外し、架台35の下方のレール20を平板22から取り外す(図3参照)。その後、ジャッキダウンによって架台35の底部を上記平板22上に載置したならばジャッキを取り除き、架台35を上記平板22上にて滑らせることで架台35上の第2後胴部4bを上記連結ユニット34の後方に移動させる。なお、架台35の底面に、平板22上を転がるコロを設けてよい。
【0040】
架台35に載置されて移送される第2後胴部4bの外周部には図7に示す第2前胴部3bの金具27と同様の金具37が取り付けられ、架台35には金具37に当接して第2後胴部4bを軸方向に移動可能且つ周方向に回転固定するためのガイド38が設けられている。これにより、第2後胴部4bは移送中に架台35に対して回転することはなく、第2後胴部4bをワイヤで架台35に固定するラッシングが不要となる。
【0041】
この金具37は、図9に示すように、溶接によって第2後胴部4bに取り付けられる。図中39は溶接部である。第2後胴部4bの金具37が取り付けられる部分の近傍には、中折れシール10等の熱に弱い部品が存在せず、そのシール本体10aを取り付けるためのボルト穴10b等の機械加工部が存在しないため(図10参照)、ボルト穴を設けてボルトによって上記金具37を第2後胴部4bに取り付けるよりも溶接によって取り付けた方が簡便・低コストだからである。
【0042】
図14に示すように、第2後胴部4bは、第1後胴部4aに溶接によって固定されて両者の間が止水され、これが新たな連結ユニット40となる。その後、第1後胴部4aにシールドジャッキSJを取り付け(図1参照)、第2前胴部3bの金具27をボルト30を緩めて取り外す(図8、図10参照)。
【0043】
図15に示すように、シールドジャッキSJによって連結ユニット40を前進させ、同時に回転カッタ8を回転駆動することで、連結ユニット40が地山に更に深く侵入する。このとき、金具27が外されているため第2前胴部3bは問題なく発進フード16を通過する。そして、回転カッタ8の反力によって連結ユニット40に生じるローリングトルクは、金具37がガイド38、29に押し付けられることで押さえられる。
【0044】
空荷となった架台35は架台17の後方から移動され、金具37が発進フード16と干渉しないようにするため溶接部39(図9参照)を切断(ガス切断等)することで取り外される。
【0045】
その後、第3後胴部4c、第4後胴部4dを同様に各胴部に取り付けた金具を各架台に設けたガイドに当接させて既設トンネル2内を搬送し、各胴部を連結ユニットに溶接し、完成したシールド掘進機1をローリングを防止しつつ発進させる。
【0046】
以上の工程により、既設トンネル2内からそのトンネル内径よりも全長の長いシールド掘進機1を組み立てながら発進させるに際して、ローリングを防止することができる。
【0047】
本実施形態によれば、各分割片3a、3b、4a〜4dを載置する架台17、26、31、35を利用してローリングを防止しているので、発進フード16の内周面にガイド溝を設けてローリングを防止していた上記特許文献1に記載された従来タイプと比べると、発進フード16の軸方向の長さを長くすることなく、発進時のローリングを防止できる。すなわち、発進フード16の軸方向の長さは、シール25が所定の止水性能を発揮できる最小限の長さに可及的に短くできる。
【0048】
よって、既設トンネル2を軸方向から見た場合のトンネル面積に対する発進フード16の占有面積の割合が、上記特許文献1に記載された従来タイプの立坑面積に対する発進フードの占有面積の割合よりも小さくなり、既設トンネル2内に分割片3a、3b、4a〜4dを搬入・設置するためのマシン設置面積が上記従来タイプよりも相対的に大きくなる。この結果、掘進機1の分割数を上記従来タイプよりも少なくして分割片3a、3b、4a〜4dの長さを従来タイプよりも長くでき、その分割・組立作業が従来タイプよりも容易となり、十分実用可能な作業となる。
【0049】
本発明の実施形態は上記タイプに限定されない。
【0050】
例えば、上記金具27、37は、共にボルトによって各胴部に取り付け、ボルトを緩めることで取り外すようにしてもよく、共に溶接によって各胴部に取り付け、溶接部を切断することで取り外すようにしてもよい。
【0051】
また、本明細書及び請求の範囲における「既設トンネル」は、水平方向のみならず上下方向に形成されたトンネルも含み、広くは立坑も含む概念である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本実施形態に用いられるシールド掘進機の部分破断側面図である。
【図2】上記シールド掘進機の分割片(第1前胴部)を架台に載せて既設トンネル内にて搬送する様子を示す側面図である。
【図3】図2の続きを示す側面図である。
【図4】図3の続きを示す側面図である。
【図5】上記分割片を既設トンネルのトンネル壁の掘削対象壁にセットした様子を示す正面図である。
【図6】次の分割片(第2前胴部)を次の架台に載せて上記分割片の後方にセットした様子を示す断面図である。
【図7】上記次の分割片に取り付けられた金具、および上記次の架台に設けられたガイドを示す正面図である。
【図8】上記金具の取付構造を示す正面断面図である。
【図9】上記金具の別の取付構造を示す正面断面図である。
【図10】上記金具の取付構造を示す側面断面図である。
【図11】図6の続きを示す断面図である。
【図12】図11の続きを示す断面図である。
【図13】図12の続きを示す断面図である。
【図14】図13の続きを示す断面図である。
【図15】図14の続きを示す断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 シールド掘進機
2 既設トンネル
3 前胴部
3a 第1前胴部(分割片)
3b 第2前胴部(分割片)
4 後胴部
4a 第1後胴部(分割片)
4b 第2後胴部(分割片)
4c 第3後胴部(分割片)
4d 第4後胴部(分割片)
16 発進フード
21 掘削対象壁
26 架台
27 金具
28 ガイド
30 ボルト
35 架台
37 金具
38 ガイド
39 溶接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド掘進機を軸方向に複数に分割し、各分割片を既設トンネル内に搬入して連結しながら発進する方法であって、上記分割片を架台に載置し、上記分割片の外周部に取り付けた金具を上記架台に設けたガイドに当接させることで、上記分割片を上記架台に対して軸方向に移動可能且つ周方向に回転固定し、この状態で上記分割片及び上記架台を上記既設トンネルの掘削対象壁に対向する位置に搬送し、上記分割片を上記架台に対して軸方向に前進させる際、上記金具を上記ガイドに摺接させて上記分割片のローリングを防止するようにしたことを特徴とするシールド掘進機の発進方法。
【請求項2】
上記分割片を上記架台から前方に移動させた後に空荷となった上記架台を取り除き、これにより生じたスペースに次の分割片を別の架台に載置して運び込んで上記前進された分割片の後部に連結し、この連結ユニットを前進させる際に上記次の分割片に取り付けた金具を上記別の架台に設けたガイドに摺接させてローリングを防止し、以降同様の手順により、各分割片を架台に載せて順次既設トンネル内に搬入して発進途中の上記連結ユニットの後部に連結し、各分割片に取り付けた金具を各架台に設けたガイドに摺接させてローリングを防止するようにした請求項1記載のシールド掘進機の発進方法。
【請求項3】
上記各分割片が上記発進フードを通過するに先立って、各分割片の外周部に取り付けた金具を取り外すようにした請求項1又は2記載のシールド掘進機の発進方法。
【請求項4】
上記金具を上記分割片にボルトによって取り付け、ボルトを緩めることで取り外すようにした請求項1〜3いずれかに記載のシールド掘進機の発進方法。
【請求項5】
上記金具を上記分割片に溶接により取り付け、溶接部を切断することで取り外すようにした請求項1〜3いずれかに記載のシールド掘進機の発進方法。
【請求項6】
上記金具を上記分割片の中折れシールの近傍の部位に取り付ける場合にはボルトによって取り付け、ボルトを緩めることで取り外すようにし、上記金具を上記分割片の中折れシールが近傍に存在しない部位に取り付ける場合には溶接によって取り付け、溶接部を切断することで取り外すようにした請求項1〜3いずれかに記載のシールド掘進機の発進方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−97331(P2006−97331A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−284760(P2004−284760)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【特許番号】特許第3705293号(P3705293)
【特許公報発行日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【Fターム(参考)】