説明

シールド機及びこのシールド機を用いた姿勢転換方法

【課題】シールド機の姿勢を効率良く転換することができるシールド機及びシールド機の姿勢転換方法を提供する。
【解決手段】フード部3はシールド機1の内側に向かって傾動する可動フード29と、固定フード31とから構成され、可動フード29は各主シールド15の中心軸に対して水平方向及び垂直方向位置に、例えば、合計10箇所設けられる。また、各可動フード29を傾動するための駆動機構33がスキンプレート9の内側にそれぞれ設置され、各可動フード29は独立して傾動可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド機及びシールド機の姿勢転換方法に関し、特に、姿勢転換に有効なシールド機及びこのシールド機を用いた姿勢転換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、シールド機は、進行方向前部で切羽の掘削を行うフード部と、後部で覆工を行うテール部と、フード部及びテール部を結ぶとともに推進設備等を内方に装備するガーダー部とからなり、外部から作用する荷重に対し前述した各部を保護するための円筒状の鋼殻からなるスキンプレートを備えている。このスキンプレートの内側に近接して等間隔にシールドジャッキが設けられ、セグメント全周に均等に推進荷重が作用するように環状に設置されている。
【0003】
シールド機の姿勢転換は、主にシールドジャッキの選択による力点の設定によって行われる。すなわち、選択されたシールドジャッキのみを作動させると、選択されたシールドジャッキ側のシールド機は選択されていないシールドジャッキ側のシールド機よりも前に進むというシールド機の推進量の違いを利用して姿勢転換が行われる。また、シールド機の姿勢転換の補助方法として、オーバーカッター、コピーカッター等による余堀が行われ、シールド機の姿勢転換する側(例えば、シールド機が左向きに推進する際は切羽の左側)の自由度を増加させる方法が用いられている。
【0004】
また、例えば、非特許文献1には、曲線施工時や蛇行時等におけるシールド機の姿勢を転換するための方法として、シールド機本体の中央部に可動ソリ装置を取り付ける方法が開示されている。この可動ソリ装置は、シールド機本体内に設けられ、シールド機の姿勢を転換する際にジャッキによりソリ板と呼ばれる抵抗板をスキンプレートよりも外方に突出させて地盤に押し付けてシールド機の姿勢を転換するものである。
【0005】
さらに、例えば、特許文献1には、ローリング時におけるシールド機の姿勢を転換するための方法として、矩形シールド機のフード部をテーパー状に形成し、コピーカッターを有するカッターヘッドにて切羽の掘削断面形状を変化させることによりシールド機の姿勢を転換する方法が開示されている。この方法においては、フード部の左右側はテーパー状で、上下側は水平に形成され、カッターヘッドにてフード部内方の前方に位置する切羽部分を掘削すると同時に、コピーカッターにてフード部の前方に位置する切羽部分の一部を残すように余堀し、シールド機を前進させる際にこの掘り残し部分に乗り上げることによりシールド機の姿勢を転換するものである。
【非特許文献1】シールド工法、鹿島出版会、昭和56年12月20日発行
【特許文献1】特開2000−328873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、シールドジャッキを作動させてシールド機の姿勢を転換する方法では、シールドジャッキの反力材とするためのセグメントが環状ではなく、略U型に構築されている場合等に、姿勢転換に有効なシールドジャッキを使用できず、姿勢転換が困難になるという問題点があった。また、オーバーカッター、コピーカッター等により余堀を行い、姿勢転換する側の自由度を増加させる方法では、余堀が生じるために地山が緩み、地盤沈下が生じる可能性があるという問題点があった。また、余堀の部分には裏込材を注入しなければならないために、裏込材の材料費が余分にかかるという問題点があった。さらに、この裏込材の充填が不十分な場合は、シールド機がノーズダウン、ローリングしてしまい、軌道の修正に手間と時間がかかるという問題点があった。
【0007】
また、非特許文献1に記載されている可動ソリを地盤に押し付けてシールド機本体の姿勢を転換する方法では、可動ソリはスキンプレートよりも外方に突出して地盤を押し付けるために地山を痛めるという問題点があった。また、シールド機はその自由度を周辺地山に拘束されているために、可動ソリでは姿勢の転換の効果が小さく、所望の姿勢へ転換するためには長区間に渡って可動ソリを突出させなければならず、この作業に多くの手間と時間がかかるという問題点があった。
【0008】
また、特許文献1に記載されている矩形シールド機では、テーパー状のフード部は固定されているために、掘削土の取り込み断面積は常に一定である。つまり、シールド機の姿勢を転換する場合に、テーパー状のフード部の前方に掘り残し部分を設けても、フード部内に取り込まれる掘削土量は掘り残し部を設けない場合と変わらないために、シールド機の自由度に差位は生じない。したがって、シールド機が推進して、テーパー状のフード部が、この掘り残し部分に乗り上げても姿勢転換の効果は小さいという問題点があった。
【0009】
一方、シールド機が直進する場合においても、固定されたテーパー外側の土砂は、掘削される・掘削されないにかかわらずシールド内に取り込まれないために、抵抗が大きくなり、シールド機の掘進が困難になるという問題点があった。
【0010】
そこで、本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、曲線施工時やピッチング、ヨーイング、ローリング等の蛇行時にシールド機の姿勢を効率良く転換することができるシールド機及びシールド機の姿勢転換方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本発明のシールド機は、進行方向前部にフード部を有するシールド機であって、前記フード部は複数のフードに分割され、少なくとも一部のフードは前記シールド機の内側に向かって駆動可能な可動フードとして構成され、該可動フードを可動するための駆動機構と、前記フード部の前方に位置する切羽部分の一部を選択して掘削することが可能なコピーカッターを有するカッターヘッドとを備えることを特徴とする(第1の発明)。
【0012】
本発明のシールド機は、フード部が複数のフードに分割され、少なくとも一部のフードはシールド機の内側に向かって駆動可能な可動フードと、この可動フードを可動するための駆動機構とを備えることにより、可動フードをシールド機の内側に向かって駆動することが可能となる。
【0013】
また、本発明のシールド機はフード部の前方に位置する切羽部分を選択して掘削することが可能なコピーカッターを有するカッターヘッドを備えることにより、駆動する可動フードの前方に位置する切羽部分を掘削せず、駆動する可動フード以外のフードの前方に位置する切羽部分を掘削することが可能となる。
【0014】
したがって、可動フードを駆動し、駆動した可動フードの前方に位置する切羽部分を掘削せず、駆動した可動フード以外のフードの前方に位置する切羽部分を掘削し、シールド機を推進すると、駆動した可動フードの前方に位置する切羽部分の土砂はシールド機内に取り込まれずに、シールド機本体の推進により圧密され、駆動した可動フードを押し出す力が生じる。そして、この可動フードを押し出す力を利用することによりシールド機の姿勢を転換することが可能となる。つまり、セグメントの形状が半円状、U字状等であって、姿勢転換のためにすべてのシールドジャッキを使用できない場合においてもシールド機の姿勢を転換することが可能となる。
【0015】
また、可動フード以外のフードの前方に位置する切羽部分を掘削し、シールド機を推進させて掘削された地山を可動フード以外のフードにて保持することにより、地山の緩みを防止するとともに、地盤沈下等を防止することが可能となる。
【0016】
第2の発明は、第1の発明において、前記可動フードは、その進行方向前部が前記シールド機の内側に向かって傾動することを特徴とする。
【0017】
本発明の可動フードはシールド機の内側に向かって傾くために地山を痛めることがない。
【0018】
第3の発明は、第1の発明において、前記可動フードが前記シールド機の中心軸に対して平行な状態で、前記シールド機の内側に向かって変位可能であることを特徴とする。
【0019】
本発明の可動フードはシールド機の内側に向かって変位するために地山を痛めることがない。
【0020】
第4の発明のシールド機の姿勢転換方法は、進行方向前部に設けられたフード部が複数のフードに分割され、少なくとも一部のフードがシールド機の内側に向かって駆動可能な可動フードとして構成されたシールド機の姿勢転換方法において、前記可動フードのうち、姿勢転換のために駆動する可動フードを選択する選択工程と、該選択した可動フードを前記シールド機の内側に向かって駆動する駆動工程と、カッターヘッドで地山を掘削すると同時に、前記選択した可動フード以外のフードの前方に位置する切羽部分のみを掘削して、前記選択した可動フードの前方に位置する切羽部分を掘り残す掘削工程とを備え、前記シールド機を前進させて、前記掘削した地山を前記シールド機内に取り込むとともに、前記駆動した可動フードにて前記切羽部分の掘り残しを圧密することにより姿勢を転換することを特徴とする。
【0021】
本発明のシールド機の姿勢転換方法は、進行方向前部に設けられたフード部のうち、姿勢転換のために駆動する可動フードを選択し、この選択された可動フードをシールド機の内側に向かって駆動させ、カッターヘッドで地山を掘削すると同時に、可動フード以外のフードの前方に位置する切羽部分のみを掘削して可動フードの前方に位置する切羽部分を掘り残す。この掘り残した切羽部分の土砂はシールド機を前進させてもシールド機内に取り込まれない。したがって、掘り残した切羽部分の土砂は、シールド機の推進と同時に圧密され、可動フードを押し出す力が生じ、この可動フードを押し出す力を利用することによりシールド機の姿勢を転換することが可能となる。つまり、圧密された土砂が可動フードを押し出す力を利用してシールド機の姿勢を転換するために、確実に姿勢を転換することが可能となる。
【0022】
また、本発明のシールド機の姿勢転換方法は、選択工程の後に、駆動工程を行うことができるために、掘削と同時にシールド機本体も推進する典型的なシールド機を用いる場合に適用することが可能である。
【0023】
第5の発明は、第4の発明において、前記駆動工程と、前記掘削工程とを、この順又は逆順して行うことを特徴とする。
【0024】
本発明のシールド機の姿勢転換方法は、掘削工程の後に、駆動工程を行うことができるために、カッターヘッドを有する複数の小型シールドがシールド機本体よりも先行進行し、その後シールド機本体が進行するシールド機を用いる場合にも適用することが可能である。
【発明の効果】
【0025】
本発明のシールド機及びシールド機の姿勢転換方法によれば、シールド機の姿勢を効率良く転換することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明における好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。本実施形態においては、複数の小型シールドを備えた矩形シールド機を用いる場合の姿勢転換方法について説明する。
【0027】
図1は、本発明の第一実施形態に係る矩形シールド機の正面図、図2は、本発明の第一実施形態に係る矩形シールド機の側断面図である。図1及び図2に示すように、シールド機1は、進行方向前部で切羽の掘削を行うフード部3と、後部で覆工を行うテール部5と、フード部3及びテール部5を結ぶとともに推進設備等を内方に装備するガーダー部7とから構成され、外部から作用する荷重に対し前述した各部を保護するための矩形筒状の鋼殻からなるスキンプレート9を備える。このスキンプレート9の内側に近接して等間隔にシールドジャッキ11が設けられ、セグメント13全周に均等に推進荷重が作用するように環状に設置される。
【0028】
また、シールド機1は、スキンプレート9内に縦横に所定の組み合せで配列されるとともに、それぞれが独立して推進可能、かつそれぞれが独立して駆動可能な複数の矩形状の主シールド15を備える。主シールド15の配列は、構築するトンネルの掘削断面の形状、大きさ等に応じて適宜の組み合せとすることができ、本実施形態においては、例えば、縦(鉛直)方向×横(水平)方向=2(段)×3(列)としている。各主シールド15は、フード部3内及びガーダー部7内に前後移動自在に設けられる矩形状のシールド本体17と、シールド本体17を進退させるスライドジャッキ19と、シールド本体17の前面側に回転可能に設けられ、コピーカッター21を有するカッターヘッド23と、シールド本体17に設けられ、カッターヘッド23及びコピーカッター21を駆動するための駆動源25と、駆動源25の駆動力をカッターヘッド23及びコピーカッター21に伝達する動力伝達機構27とを備えており、各主シールド15は、独立して駆動可能に構成される。
【0029】
フード部3はシールド機1の内側に向かって傾動する可動フード29と、固定フード31とから構成され、可動フード29は各主シールド15の中心軸に対して水平方向及び垂直方向位置に、例えば、合計10箇所設けられる。また、各可動フード29を傾動するための駆動機構33がスキンプレート9の内側にそれぞれ設置され、各可動フード29は独立して傾動可能である。
【0030】
図3は、本発明の第一実施形態に係る可動フード29の駆動機構33を示す図である。駆動機構33は、ガーダー部の内側に固着されるガーダー部側ブラケット35と、このガーダー部側ブラケット35にピン37を介して接続されるフード部用ジャッキ41と、フード部3の内側に固定され、フード部用ジャッキ41のロッド41aとピン45を介して接続されるフード部側ブラケット47と、フード部側ブラケット47に可動フード29の可動中心として接続される支点ピン49と、この支点ピン49を支持するための支持部材51と、シールド機1本体内への土砂の挿入を防止するシール材39とから構成される。
【0031】
可動フード29は、フード部用ジャッキ41を収縮することにより、支点ピン49を中心として、その切羽側がシールド機1の内側(図3中の上側)に傾動する。なお、可動フード29は、フード部用ジャッキ41のロッド41aを隔壁63にピン等の固定材41bにて固定することにより可動フード29を固定することができる。また、フード部用ジャッキ41を伸張した状態では可動フード29は内側に傾動せず、固定フード31と同じ形状になる。
【0032】
図4は、本発明の第一実施形態に係るカッターヘッド23の断面図である。カッターヘッド23は、カッターヘッド23内部に設けられるジャッキ53と、このジャッキ53の伸縮に連動してカッターヘッド23の外周部から出没自在となるように構成されるコピーカッター21とを備える。カッターヘッド23は、フード部3の内方となる主シールド15の前方に位置する切羽部分を掘削する。一方、コピーカッター21は、カッターヘッド23の回転角度に連動して出没し、カッターヘッド23が掘削する矩形面の外周に沿って、固定フード31及び固定した可動フード29の前方に位置する切羽部分のみを掘削して、傾動した可動フード29の前方に位置する切羽部分を掘り残す。ジャッキ53の伸縮は駆動源25を制御する制御装置(図示せず)にて制御される。
【0033】
図5は、本発明の第一実施形態に係るガーダー部7及びテール部5の断面図である。ガーダー部7とテール部5とは、スキンプレート9の内側に近接して等間隔に複数本設置される中折れジャッキ55にて連結されており、この中折れジャッキ55の伸縮動作により、ガーダー部7とテール部5とを折り曲げ、これらのなす角度を変化させてシールド機1の推進方向を変更する。
【0034】
ガーダー部7には掘削した土砂を排出するための排出装置57が接続されている。
【0035】
テール部5の内側にはセグメント組立装置59が設けられ、このセグメント組立装置59により、掘削したトンネルの内面に順次セグメント13が組み立てられ、セグメント13による内壁が構築される。
【0036】
以下に、シールド機1の姿勢転換方法について姿勢転換手順にしたがって説明する。
【0037】
まず、第一実施形態における姿勢転換方法の第1の実施例を示す。
【0038】
図6〜図10は、本発明の第一実施形態に係る矩形シールド機1において可動フード29のみを使用して姿勢転換方法を示す図である。
【0039】
図6に示すように、上記のように構成した本実施形態によるシールド機1を用いてトンネル内で進行方向右側(紙面平面図の上側)に姿勢を転換するには、まず、シールド機1の内側に向かって傾動する可動フード29を選択する。傾動する可動フード29は、シールド機1の姿勢転換方向に応じて選択するものとし、本実施形態においては、切羽に向かって左側部の可動フード29a、29bを選択する。そして、可動フード29a、29bのフード部用ジャッキ41をそれぞれ収縮させてシールド機1の内側に可動フード29a、29bを傾動する。
【0040】
次に、図7に示すように、スライドジャッキ19を伸張させることにより、主シールド15をシールド機1本体から推進させ、その主シールド15の前方に位置する切羽をカッターヘッド23により掘削する。主シールド15のカッターヘッド23を回転駆動させると同時に、コピーカッター21にて固定フード31及び固定した可動フード29c〜29j(つまり、選択した可動フード29a、29b以外のフード)の前方に位置する切羽部分を掘削する。カッターヘッド23の回転に連動して出没自在なコピーカッター21は、傾動する可動フード29a、29bの前方に位置する切羽部分を掘削しないようにカッターヘッド23内に格納され、固定フード31及び固定した可動フード29c〜29jの前方に位置する切羽部分を掘削するようにカッターヘッド23から突出させられる。カッターヘッド23及びコピーカッター21により掘削された土砂は、排出装置57により順次シールド機1の後端側へ排出される。
【0041】
そして、図8に示すように、主シールド15を突出させた状態で、シールドジャッキ11を伸張させてシールド機1本体を推進させ、掘削された地山をスキンプレート9にて保持することにより、地山の緩みを防止するとともに、地盤沈下等を防止する。可動フード29a、29bの前方の土砂は、シールド機1内に取り込まれないために、シールド機1本体の推進により可動フード29a、29bにて押圧され、シールド機1側に向かうにしたがって細くなるように圧密される。
【0042】
ここで、図9に示すように、圧密された土砂は楔としての機能を有し、シールド機1本体が推進する際に、傾動した可動フード29a、29bが土砂の側面Dに沿って滑動し、シールド機1本体の姿勢を進行方向右側(紙面上側)に転換する。
【0043】
図10に示すように、可動フード29a、29bを傾動してからカッターヘッド23及びコピーカッター21にて切羽を掘削し、シールド機1本体を推進するまでの一連の作業を1サイクルとし、このサイクルを複数回繰り返すことにより、シールド機1本体の姿勢を進行方向右側(紙面上側)に転換して所望の曲線に沿ったトンネルを構築する。
【0044】
次に、第一実施形態における姿勢転換方法の第2の実施例を示す。下記に示す説明において、上述した実施例と同一部分には同一の符号を付して、説明を省略する。
【0045】
図11〜図14は、本発明の第一実施形態に係る矩形シールド機1において可動フード29及びシールドジャッキ11を使用して姿勢転換方法を示す図である。
【0046】
図11及び図12に示すように、シールド機1を用いてトンネル内で進行方向右側(紙面上側)に姿勢を転換するには、上記第1の実施例と同様に、可動フード29a、29bを選択し、シールド機1の内側に可動フード29a、29bを傾動して、スライドジャッキ19を伸張させることにより主シールド15を推進させ、その主シールド15の前方に位置する切羽を掘削すると同時に、コピーカッター21にて固定フード31及び固定した可動フード29c〜29j(つまり、選択した可動フード29a、29b以外のフード)の前方に位置する切羽部分を掘削する。
【0047】
そして、図13に示すように、主シールド15を突出させた状態で、シールド機1の左側部に設置されたシールドジャッキ11を伸張させてシールド機1の左側部を右側部よりも前進させるとともに、掘削された地山をスキンプレート9にて保持する。傾動した可動フード29a、29b前方の土砂は、シールド機1内に取り込まれなかったシールド機1本体の推進により可動フード29a、29bにて押圧され、シールド機1側に向かうにしたがって細くなるように圧密される。
【0048】
ここで、図14に示すように、圧密された土砂は楔としての機能を有し、上記第1の実施例と同様に、シールド機1本体が推進する際は傾動した可動フード29a、29bが土砂の側面Dに沿って滑動し、シールド機1本体の姿勢を進行方向右側(紙面上側)に転換する。
【0049】
可動フード29a、29b及びシールドジャッキ11を用いて姿勢転換する場合は、可動フード29a、29bのみを用いて姿勢転換する場合よりも大きくシールド機1の姿勢が転換される。
【0050】
可動フード29a、29bを傾動してからカッターヘッド23及びコピーカッター21にて切羽を掘削し、シールド機1の左側部に設置されたシールドジャッキ11を作動させてシールド機1本体を推進するまでの一連の作業を1サイクルとし、このサイクルを複数回繰り返すことにより、シールド機1本体の姿勢を進行方向右側(紙面上側)に転換して所望の曲線に沿ったトンネルを構築する。
【0051】
さらに、第一実施形態における姿勢転換方法の第3の実施例を示す。
【0052】
図15〜図18は、本発明の第一実施形態に係る矩形シールド機1において可動フード29、シールドジャッキ11及び中折れジャッキ55を使用して姿勢転換方法を示す図である。
【0053】
図15及び図16に示すように、シールド機1を用いてトンネル内で進行方向右側(紙面上側)に姿勢を転換するには、上記第1及び第2の実施例と同様に、可動フード29a、29bを選択し、シールド機1の内側に可動フード29a、29bを傾動する。
【0054】
次に、シールド機1の左側部に設置された中折れジャッキ55を伸張させてガーダー部7の左側部を右側部よりも前進させ、フード部3及びガーダー部7がテール部5に対して進行方向右側に傾いた状態にする。
【0055】
そして、上記第1及び第2の実施例と同様に、スライドジャッキ19を伸張させることにより主シールド15を推進させ、その主シールド15の前方に位置する切羽を掘削すると同時に、コピーカッター21にて固定フード31及び固定した可動フード29c〜29j(つまり、選択した可動フード29a、29b以外のフード)の前方に位置する切羽部分を掘削する。
【0056】
また、図17に示すように、主シールド15を突出させた状態で、上記第2の実施例と同様に、シールド機1の左側部に設置されたシールドジャッキ11を伸張させてシールド機1の左側部を右側部よりも前進させる。
【0057】
ここで、図18に示すように、圧密された土砂は楔としての機能を有し、上記第1及び第2の実施例と同様に、シールド機1本体が推進する際は傾動した可動フード29a、29bが土砂の側面Dに沿って滑動し、シールド機1本体の姿勢を進行方向右側(紙面上側)に転換する。
【0058】
可動フード29a、29b、シールドジャッキ11及び中折れジャッキ55を用いて姿勢転換する場合は、可動フード29a、29b及びシールドジャッキ11を用いて姿勢転換する場合よりも大きくシールド機1の姿勢が転換される。
【0059】
可動フード29a、29bを傾動してからシールド機1の左側部に設置された中折れジャッキ55を作動させ、カッターヘッド23及びコピーカッター21にて切羽を掘削し、シールド機1の左側部に設置されたシールドジャッキ11を作動させてシールド機1本体を推進するまでの一連の作業を1サイクルとし、このサイクルを複数回繰り返すことにより、シールド機1本体の姿勢を進行方向右側(紙面上側)に転換して所望の曲線に沿ったトンネルを構築する。
【0060】
以上のように、本実施形態によるシールド機1は、フード部3が複数のフードに分割され、少なくとも一部のフードはシールド機1の内側に向かって傾動する可動フード29として構成され、この可動フード29を傾動するための駆動機構33を備えることにより、可動フード29をシールド機1の内側に向かって傾動することが可能となる。また、シールド機1はコピーカッター21を有するカッターヘッド23を備えることにより、傾動する可動フード29a、29bの前方に位置する切羽部分を掘削せず、固定フード31及び固定する可動フード29c〜29jの前方に位置する切羽部分を掘削することが可能となる。
【0061】
したがって、可動フード29a、29bを傾動し、これらの可動フード29a、29bの前方に位置する切羽部分を掘削せず、固定フード31及び固定する可動フード29c〜29jの前方に位置する切羽部分を掘削し、シールド機1を推進すると、可動フード29a、29bの前方に位置する切羽部分の土砂はシールド機1内に取り込まれずに、シールド機1本体の推進により圧密され、楔としての機能を有し、シールド機1が推進する際に、可動フード29a、29bが圧密された土砂の側面Dに沿って滑動し、シールド機1の姿勢を転換することが可能となる。つまり、セグメント13の形状が半円状、U字状等であって、姿勢転換のためにすべてのシールドジャッキ11を使用できない場合においてもシールド機1の姿勢を転換することが可能となる。
【0062】
また、可動フード29a、29bにて姿勢を転換する方法を、シールドジャッキ11、中折れジャッキ55等と併用することにより、姿勢を転換する効果が大きくなり、短い区間で姿勢を転換することが可能となる。
【0063】
そして、可動フード29a、29bを傾動し、固定フード31及び固定する可動フード29c〜29jの前方に位置する切羽部分を掘削し、シールド機1を推進させて掘削された地山を固定フード31及び固定する可動フード29c〜29jにて保持することにより、地山の緩みを防止するとともに、地盤沈下等を防止することが可能となる。
【0064】
また、可動フード29a、29bはシールド機1の内側に向かって傾動するために地山を痛めることがない。
【0065】
次に、本発明における第一実施形態と異なる実施形態を示す。下記に示す説明において、第一実施形態と同様の技術を用いたものと対応する部分には同一の符号を付して、説明を省略する。
【0066】
図19は、本発明の第二実施形態に係る矩形シールド機61の側断面図、図20は、本発明の第二実施形態に係る矩形シールド機61の正面図である。図19及び図20に示すように、シールド機61は、第一実施形態にて説明したシールド機1のフード部3の駆動機構33と異なる駆動機構73を備えたものであり、主に相違点について説明する。シールド機61のフード部3は、シールド機61の中心軸に対して平行な状態で、シールド機61の内側に向かって変位する可動フード69と、固定フード31とから構成される。そして、各可動フード69を駆動するための駆動機構73がスキンプレート9の内側にそれぞれ設置され、各可動フード69は独立して駆動可能である。可動フード69は、第一実施形態と同様に、各主シールド15の中心軸に対して水平方向及び垂直方向位置に、例えば、合計10箇所設けられる。
【0067】
図21は、本発明の第二実施形態に係る可動フード69の駆動機構73を示す図である。駆動機構73は、可動フード69のガーダー部7側端部に取り付けられ、隔壁63に沿って摺動するガイド75と、ガイド75の端部に固着されるガーダー部側ブラケット77と、このガーダー部側ブラケット77にピン79、クレビス81を介して接続され、基端部83aがガーダー部7の内側に固着されるフード部用ジャッキ83と、フード部3の内側に固着されるフード部側ブラケット85と、一端がフード部側ブラケット85にピン87を介して接続され、隔壁63を介して他端がガイド75に固着される支持部材89と、シールド機1本体内への土砂の挿入を防止するシール材38、40とから構成される。
【0068】
可動フード69は、フード部用ジャッキ83を伸張することにより、隔壁63に沿って摺動するガイド75を介して可動フード69がシールド機61の中心軸に平行な状態で、シールド機61の内側に向かって移動する。また、フード部用ジャッキ83を収縮した状態では可動フード69は内側に移動せず、固定フード31と同じ形状になる。
【0069】
以下に、シールド機61の姿勢転換方法について姿勢転換手順にしたがって説明する。
【0070】
図22〜図26は、本発明の第二実施形態に係る矩形シールド機61において可動フード69のみを使用して姿勢転換方法を示す図である。
【0071】
まず、第二実施形態における姿勢転換方法の第1の実施例を示す。
【0072】
図22に示すように、上記のように構成した本実施形態によるシールド機61を用いてトンネル内で進行方向右側(紙面上側)に姿勢を転換するには、まず、シールド機61の内側に向かって移動する可動フード69を選択する。移動する可動フード69は、第一実施形態と同様に、切羽に向かって左側部の可動フード69a、69bを選択する。そして、可動フード69a、69bのフード部用ジャッキ83をそれぞれ伸張させてシールド機61の内側に可動フード69を移動する。
【0073】
次に、図23に示すように、スライドジャッキ19を伸張させることにより、主シールド15をシールド機61本体から推進させ、その主シールド15の前方に位置する切羽をカッターヘッド23により掘削すると同時に、コピーカッター21にて固定フード31及び固定した可動フード69c〜69jの前方に位置する切羽部分を掘削する。コピーカッター21は、移動する可動フード69a、69bの前方に位置する切羽部分を掘削しないようにカッターヘッド23内に格納され、固定フード31及び固定した可動フード69c〜69j(つまり、選択した可動フード69a、69b以外のフード)の前方に位置する切羽部分を掘削するようにカッターヘッド23から突出される。
【0074】
そして、図24に示すように、主シールド15を突出させた状態で、シールドジャッキ11を伸張させてシールド機61本体を推進させる。移動した可動フード69a、69bの前方の土砂は、シールド機61内に取り込まれないためにシールド機61本体の推進により、可動フード69a、69b及び隔壁63にて圧密される。
【0075】
ここで、図25に示すように、可動フード69a、69b及び隔壁63にて圧密された土砂は、加圧方向(シールド機61の推進方向)と直交する方向(図中のE面)に膨れる力が生じ、この力が可動フード69a、69bに作用し、シールド機61本体の姿勢を進行方向右側(紙面上側)に転換する。
【0076】
図26に示すように、可動フード69a、69bを移動してからカッターヘッド23及びコピーカッター21にて切羽を掘削し、シールド機61本体を推進するまでの一連の作業を1サイクルとし、このサイクルを複数回繰り返すことにより、シールド機61本体の姿勢を進行方向右側(紙面上側)に転換して所望の曲線に沿ったトンネルを構築する。
【0077】
次に、第二実施形態における姿勢転換方法の第2の実施例を示す。
【0078】
図27〜図30は、本発明の第二実施形態に係る矩形シールド機61において可動フード69及びシールドジャッキ11を使用して姿勢転換方法を示す図である。
【0079】
図27、28に示すように、シールド機61を用いてトンネル内で進行方向右側(紙面上側)に姿勢を転換するには、本実施形態における上記第1の実施例と同様に、可動フード69a、69bを選択し、シールド機61の内側に可動フード69a、69bを移動して、スライドジャッキ19を伸張させることにより主シールド15を推進させ、その主シールド15の前方に位置する切羽を掘削すると同時に、コピーカッター21にて固定フード31及び固定した可動フード69c〜69j(つまり、選択した可動フード69a、69b以外のフード)の前方に位置する切羽部分を掘削する。
【0080】
そして、図29に示すように、主シールド15を突出させた状態で、シールド機61の左側部に設置されたシールドジャッキ11を伸張させてシールド機61の左側部を右側部よりも前進させるとともに、掘削された地山をスキンプレート9にて保持する。移動した可動フード69前方の土砂は、シールド機61内に取り込まれないために、シールド機61本体の推進により、可動フード69a、69b及び隔壁63にて圧密される。
【0081】
ここで、図30に示すように、可動フード69a、69b及び隔壁63にて圧密された土砂は、本実施形態における上記第1の実施例と同様に、加圧方向(シールド機61の推進方向)と直交する方向(図中のE面)に膨れる力が生じ、この力が可動フード69a、69bに作用し、シールド機61本体の姿勢を進行方向右側(紙面上側)に転換する。
【0082】
可動フード69a、69b及びシールドジャッキ11を用いて姿勢転換する場合は、可動フード69a、69bのみを用いて姿勢転換する場合よりも大きくシールド機61の姿勢が転換される。
【0083】
可動フード69a、69bを移動してからカッターヘッド23及びコピーカッター21にて切羽を掘削し、シールド機61の左側部に設置されたシールドジャッキ11を作動させてシールド機61本体を推進するまでの一連の作業を1サイクルとし、このサイクルを複数回繰り返すことにより、シールド機61本体の姿勢を進行方向右側(紙面上側)に転換して所望の曲線に沿ったトンネルを構築する。
【0084】
さらに、第二実施形態における姿勢転換方法の第3の実施例を示す。
【0085】
図31〜図34は、本発明の第二実施形態に係る矩形シールド機61において可動フード69、シールドジャッキ11及び中折れジャッキ55を使用して姿勢転換方法を示す図である。
【0086】
図31、図32に示すように、シールド機61を用いてトンネル内で進行方向右側(図32の紙面上側)に姿勢を転換するには、本実施形態における上記第1及び第2実施例と同様に、可動フード69a、69bを選択し、シールド機61の内側に可動フード69a、69bを移動する。
【0087】
次に、シールド機61の左側部に設置された中折れジャッキ55を伸張させてガーダー部7の左側部を右側部よりも前進させ、フード部3及びガーダー部7がテール部5に対して進行方向右側に傾いた状態にする。
【0088】
そして、本実施形態における上記第1及び第2の実施例と同様に、スライドジャッキ19を伸張させることにより主シールド15を推進させ、その主シールド15の前方に位置する切羽を掘削すると同時に、コピーカッター21にて固定フード31及び固定した可動フード69c〜69j(つまり、選択した可動フード69a、69b以外のフード)の前方に位置する切羽部分を掘削する。
【0089】
また、図33に示すように、主シールド15を突出させた状態で、本実施形態における上記第2の実施例と同様に、シールド機61の左側部に設置されたシールドジャッキ11を伸張させてシールド機61の左側部を右側部よりも前進させる。
【0090】
ここで、図34に示すように、可動フード69a、69b及び隔壁63にて圧密された土砂は、本実施形態における上記第1及び第2の実施例と同様に、加圧方向(シールド機61の推進方向)と直交する方向(図中のE面)に膨れる力が生じ、この力が可動フード69a、69bに作用し、シールド機61本体の姿勢を進行方向右側(紙面上側)に転換する。
【0091】
可動フード69a、69b、シールドジャッキ11及び中折れジャッキ55を用いて姿勢転換する場合は、可動フード69a、69b及びシールドジャッキ11を用いて姿勢転換する場合よりも大きくシールド機61の姿勢が転換される。
【0092】
可動フード69a、69bを移動してからシールド機61の左側部に設置された中折れジャッキ55を作動させ、カッターヘッド23及びコピーカッター21にて切羽を掘削し、シールド機61の左側部に設置されたシールドジャッキ11を作動させてシールド機61本体を推進するまでの一連の作業を1サイクルとし、このサイクルを複数回繰り返すことにより、シールド機61本体の姿勢を進行方向右側(紙面上側)に転換して所望の曲線に沿ったトンネルを構築する。
【0093】
以上のように、本実施形態によるシールド機61は、フード部3が複数のフードに分割され、少なくとも一部のフードはシールド機61の中心軸に対して平行な状態で、シールド機の内側に向かって移動する可動フード69として構成され、この可動フード69を移動するための駆動機構73を備えることにより、可動フード69をシールド機61の内側に向かって移動することが可能となる。また、シールド機61はコピーカッター21を有するカッターヘッド23を備えることにより、移動する可動フード69a、69bの前方に位置する切羽部分を掘削せず、固定フード31及び固定する可動フード69c〜69jの前方に位置する切羽部分を掘削することが可能となる。
【0094】
したがって、可動フード69a、69bを移動し、これらの可動フード69a、69bの前方に位置する切羽部分を掘削せず、固定フード31及び固定する可動フード69c〜69jの前方に位置する切羽部分を掘削し、シールド機61を推進すると、可動フード69a、69bの前方に位置する切羽部分の土砂はシールド機61内に取り込まれずに、シールド機61本体の推進により圧密される。圧密された土砂は、加圧方向(シールド機61の推進方向)と直交する方向(図中のE面)に膨れる力が生じ、この力が可動フード69a、69bに作用し、シールド機61本体の姿勢を進行方向右側(紙面上側)に転換することが可能となる。つまり、セグメント13の形状が半円状、U字状等であって、姿勢転換のためにすべてのシールドジャッキ11を使用できない場合においてもシールド機61の姿勢を転換することが可能となる。
【0095】
また、可動フード69a、69bにて姿勢を転換する方法を、シールドジャッキ11、中折れジャッキ55等と併用することにより、姿勢を転換する効果が大きくなり、短い区間で姿勢を転換することが可能となる。
【0096】
そして、可動フード69a、69bを駆動し、固定フード31及び固定する可動フード69c〜69jの前方に位置する切羽部分を掘削し、シールド機61を推進させて掘削された地山を固定フード31及び固定する可動フード69c〜69jにて保持することにより、地山の緩みを防止するとともに、地盤沈下等を防止することが可能となる。
【0097】
また、可動フード69a、69bはシールド機61の内側に向かって移動するために地山を痛めることがない。
【0098】
次に、本発明における第三実施形態について説明する。本実施形態においては、掘削と同時にシールド機本体も推進する典型的な円形シールド機を用いる方法について説明する。
【0099】
図35は、本発明の第三実施形態に係る円形シールド機2の正面図、図36は、本発明の第三実施形態に係る円形シールド機2の側断面図である。本実施形態に係るシールド機2の基本的な構成は、第一及び第二実施形態と同様であるので、主に相違点について説明する。図35及び図36に示すように、シールド機2は、円筒状で鋼殻のスキンプレート90と、コピーカッター21を有する1台のカッターヘッド91とを備える。また、フード部3は、シールド機2の内側に向かって傾動する弧状の可動フード92と、弧状の固定フード94とから構成され、可動フード92は、シールド機2本体の中心軸に対して円周方向に、例えば、合計8箇所設けられる。また、フード部3は、各可動フード92を傾動するための駆動機構33を有する。
【0100】
以下に、シールド機2の姿勢転換方法について姿勢転換手順にしたがって説明する。
【0101】
まず、第三実施形態における姿勢転換方法の第1の実施例を示す。
【0102】
図37は、本発明の第三実施形態に係る円形シールド機2において可動フード92のみを使用して姿勢転換方法を示す図である。
【0103】
図37に示すように、上記のように構成した本実施形態によるシールド機2を用いてトンネル内で進行方向右側(紙面上側)に姿勢を転換するには、まず、シールド機2の内側に向かって傾動する可動フード92を選択する。傾動する可動フード92は、シールド機2の姿勢転換方向に応じて選択するものとし、本実施形態においては、切羽に向かって左側部の可動フード92a〜92d(図35に示す)を選択する。そして、可動フード92a〜92dのフード部用ジャッキ41をそれぞれ収縮させてシールド機2の内側に可動フード92a〜92dを傾動する。
【0104】
次に、シールドジャッキ11を伸張させることによりシールド機2本体を推進させ、前方に位置する切羽をカッターヘッド91により掘削する。カッターヘッド91を回転駆動させると同時に、コピーカッター21にて固定フード94及び固定した可動フード92e〜92h(つまり、選択した可動フード92a〜92d以外のフード)の前方に位置する切羽部分を掘削する。カッターヘッド91の回転に連動して出没自在なコピーカッター21は、傾動する可動フード92a〜92dの前方に位置する切羽部分を掘削しないようにカッターヘッド91内に格納され、固定フード94及び固定した可動フード92e〜92hの前方に位置する切羽部分を掘削するようにカッターヘッド91から突出させられる。
【0105】
可動フード92a〜92dの前方の土砂は、第一実施形態と同様に、シールド機2本体を推進させてもシールド機2内に取り込まれないために、シールド機2本体の推進により可動フード92a〜92dにて圧密され、この圧密された土砂は楔としての機能を有し、シールド機2本体が推進する際に、傾動した可動フード92a〜92dが土砂の側面Dに沿って滑動し、シールド機2本体の姿勢を進行方向右側(紙面上側)に転換する。
【0106】
可動フード92a〜92dを傾動してからカッターヘッド91及びコピーカッター21にて切羽を掘削し、シールド機2本体を推進するまでの一連の作業を1サイクルとし、このサイクルを複数回繰り返すことにより、シールド機2本体の姿勢を進行方向右側(紙面上側)に転換して所望の曲線に沿ったトンネルを構築する。
【0107】
次に、第三実施形態における姿勢転換方法の第2の実施例を示す。
【0108】
図38は、本発明の第三実施形態に係る円形シールド機2において可動フード92及びシールドジャッキ11を使用して姿勢転換方法を示す図である。
【0109】
図38に示すように、シールド機2を用いてトンネル内で進行方向右側(紙面上側)に姿勢を転換するには、本実施形態における上記第1の実施例と同様に、可動フード92a〜92d(図35に示す)を選択し、シールド機2の内側に可動フード92a〜92dを傾動する。
【0110】
次に、シールド機2の左側部に設置されたシールドジャッキ11を伸張させてシールド機2の左側部を右側部よりも前進させることによりシールド機2本体を推進させ、前方に位置する切羽をカッターヘッド91により掘削すると同時に、コピーカッター21にて固定フード94及び固定した可動フード92e〜92hの前方に位置する切羽部分を掘削する。
【0111】
可動フード92a〜92dの前方の土砂は、第一実施形態と同様に、シールド機2本体の推進により可動フード92a〜92dにて圧密され、この圧密された土砂は楔としての機能を有し、シールド機2本体が推進する際に、傾動した可動フード92a〜92dが土砂の側面Dに沿って滑動し、シールド機2本体の姿勢を進行方向右側(紙面上側)に転換する。
【0112】
可動フード92a〜92d及びシールドジャッキ11を用いて姿勢転換する場合は、可動フード92a〜92dのみを用いて姿勢転換する場合よりも大きくシールド機2の姿勢が転換される。
【0113】
可動フード92a〜92dを傾動してからカッターヘッド91及びコピーカッター21にて切羽を掘削し、シールド機2の左側部に設置されたシールドジャッキ11を作動させてシールド機2本体を推進するまでの一連の作業を1サイクルとし、このサイクルを複数回繰り返すことにより、シールド機2本体の姿勢を進行方向右側(紙面上側)に転換して所望の曲線に沿ったトンネルを構築する。
【0114】
さらに、第三実施形態における姿勢転換方法の第3の実施例を示す。
【0115】
図39は、本発明の第三実施形態に係る円形シールド機2において可動フード92、シールドジャッキ11及び中折れジャッキ55を使用して姿勢転換方法を示す図である。
【0116】
図39に示すように、シールド機2を用いてトンネル内で進行方向右側(紙面上側)に姿勢を転換するには、本実施形態における上記第1及び第2の実施例と同様に、可動フード92a〜92d(図35に示す)を選択し、シールド機2の内側に可動フード92a〜92dを傾動する。
【0117】
次に、シールド機2の左側部に設置された中折れジャッキ55を伸張させてガーダー部7の左側部を右側部よりも前進させ、フード部3及びガーダー部7がテール部5に対して進行方向右側に傾いた状態にする。
【0118】
そして、本実施形態における上記第2の実施例と同様に、シールド機2の左側部に設置されたシールドジャッキ11を伸張させてシールド機2の左側部を右側部よりも前進させることによりシールド機2本体を推進させ、前方に位置する切羽をカッターヘッド91により掘削する。また、コピーカッター21にて固定フード94及び固定した可動フード92e〜92hの前方に位置する切羽部分を掘削する。
【0119】
可動フード92a〜92dの前方の土砂は、第一実施形態と同様に、シールド機2本体の推進により可動フード92a〜92dにて圧密され、この圧密された土砂は楔としての機能を有し、シールド機2本体が推進する際に、傾動した可動フード92a〜92dが土砂の側面Dに沿って滑動し、シールド機2本体の姿勢を進行方向右側(紙面上側)に転換する。
【0120】
可動フード92a〜92d、シールドジャッキ11及び中折れジャッキ55を用いて姿勢転換する場合は、可動フード92a〜92d及びシールドジャッキ11を用いて姿勢転換する場合よりも大きくシールド機2の姿勢が転換される。
【0121】
可動フード92a〜92dを傾動してからシールド機2の左側部に設置された中折れジャッキ55を作動させ、カッターヘッド91及びコピーカッター21にて切羽を掘削し、シールド機2の左側部に設置されたシールドジャッキ11を作動させてシールド機2本体を推進するまでの一連の作業を1サイクルとし、このサイクルを複数回繰り返すことにより、シールド機2本体の姿勢を進行方向右側(紙面上側)に転換して所望の曲線に沿ったトンネルを構築する。
【0122】
なお、本実施形態においては、可動フード92を駆動させる方法として駆動機構33を用いる方法について説明したが、これに限定されるものではなく、駆動装置73を用いてもよい。
【0123】
なお、上述した各実施形態において、矩形又は円形のシールド機1、2、61を用いた姿勢転換方法について説明したが、シールド機の形状は矩形又は円形に限定されるものではなく、様々な断面形状のシールド機に適用が可能であって、例えば、図40に示すように、複円形シールド機にも本発明の姿勢転換方法を適用することが可能である。
【0124】
また、上述したすべての実施形態において、シールド機1、2、61の進行方向右側への姿勢転換方法について説明したが、これに限定されるものではなく、進行方向左側等の曲線施工時、ピッチング、ヨーイング、ローリングにおける軌道修正時等の姿勢転換が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本発明の第一実施形態に係る矩形シールド機の正面図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る矩形シールド機の側断面図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係る可動フードの駆動機構を示す図である。
【図4】本発明の第一実施形態に係るカッターヘッドの断面図である。
【図5】本発明の第一実施形態に係るガーダー部及びテール部の断面図である。
【図6】本発明の第一実施形態に係る矩形シールド機において可動フードのみを使用して姿勢転換方法を示す図である。
【図7】本発明の第一実施形態に係る矩形シールド機において可動フードのみを使用して姿勢転換方法を示す図である。
【図8】本発明の第一実施形態に係る矩形シールド機において可動フードのみを使用して姿勢転換方法を示す図である。
【図9】本発明の第一実施形態に係る矩形シールド機において可動フードのみを使用して姿勢転換方法を示す図である。
【図10】本発明の第一実施形態に係る矩形シールド機において可動フードのみを使用して姿勢転換方法を示す図である。
【図11】本発明の第一実施形態に係る矩形シールド機において可動フード及びシールドジャッキを使用して姿勢転換方法を示す図である。
【図12】本発明の第一実施形態に係る矩形シールド機において可動フード及びシールドジャッキを使用して姿勢転換方法を示す図である。
【図13】本発明の第一実施形態に係る矩形シールド機において可動フード及びシールドジャッキを使用して姿勢転換方法を示す図である。
【図14】本発明の第一実施形態に係る矩形シールド機において可動フード及びシールドジャッキを使用して姿勢転換方法を示す図である。
【図15】本発明の第一実施形態に係る矩形シールド機において可動フード、シールドジャッキ及び中折れジャッキを使用して姿勢転換方法を示す図である。
【図16】本発明の第一実施形態に係る矩形シールド機において可動フード、シールドジャッキ及び中折れジャッキを使用して姿勢転換方法を示す図である。
【図17】本発明の第一実施形態に係る矩形シールド機において可動フード、シールドジャッキ及び中折れジャッキを使用して姿勢転換方法を示す図である。
【図18】本発明の第一実施形態に係る矩形シールド機において可動フード、シールドジャッキ及び中折れジャッキを使用して姿勢転換方法を示す図である。
【図19】本発明の第二実施形態に係る矩形シールド機の側断面図である。
【図20】本発明の第二実施形態に係る矩形シールド機の正面図である。
【図21】本発明の第二実施形態に係る可動フードの駆動機構を示す図である。
【図22】本発明の第二実施形態に係る矩形シールド機において可動フードのみを使用して姿勢転換方法を示す図である。
【図23】本発明の第二実施形態に係る矩形シールド機において可動フードのみを使用して姿勢転換方法を示す図である。
【図24】本発明の第二実施形態に係る矩形シールド機において可動フードのみを使用して姿勢転換方法を示す図である。
【図25】本発明の第二実施形態に係る矩形シールド機において可動フードのみを使用して姿勢転換方法を示す図である。
【図26】本発明の第二実施形態に係る矩形シールド機において可動フードのみを使用して姿勢転換方法を示す図である。
【図27】本発明の第二実施形態に係る矩形シールド機において可動フード及びシールドジャッキを使用して姿勢転換方法を示す図である。
【図28】本発明の第二実施形態に係る矩形シールド機において可動フード及びシールドジャッキを使用して姿勢転換方法を示す図である。
【図29】本発明の第二実施形態に係る矩形シールド機において可動フード及びシールドジャッキを使用して姿勢転換方法を示す図である。
【図30】本発明の第二実施形態に係る矩形シールド機において可動フード及びシールドジャッキを使用して姿勢転換方法を示す図である。
【図31】本発明の第二実施形態に係る矩形シールド機において可動フード、シールドジャッキ及び中折れジャッキを使用して姿勢転換方法を示す図である。
【図32】本発明の第二実施形態に係る矩形シールド機において可動フード、シールドジャッキ及び中折れジャッキを使用して姿勢転換方法を示す図である。
【図33】本発明の第二実施形態に係る矩形シールド機において可動フード、シールドジャッキ及び中折れジャッキを使用して姿勢転換方法を示す図である。
【図34】本発明の第二実施形態に係る矩形シールド機において可動フード、シールドジャッキ及び中折れジャッキを使用して姿勢転換方法を示す図である。
【図35】本発明の第三実施形態に係る円形シールド機の正面図である。
【図36】本発明の第三実施形態に係る円形シールド機の側断面図である。
【図37】本発明の第三実施形態に係る円形シールド機において可動フードのみを使用して姿勢転換方法を示す図である。
【図38】本発明の第三実施形態に係る円形シールド機において可動フード及びシールドジャッキを使用して姿勢転換方法を示す図である。
【図39】本発明の第三実施形態に係る円形シールド機において可動フード、シールドジャッキ及び中折れジャッキを使用して姿勢転換方法を示す図である。
【図40】本発明に係る複円形シールド機の正面図である。
【符号の説明】
【0126】
1、2、61 シールド機
3 フード部
5 テール部
7 ガーダー部
9、90 スキンプレート
11 シールドジャッキ
13 セグメント
15 主シールド
17 シールド本体
19 スライドジャッキ
21 コピーカッター
23、91 カッターヘッド
25 駆動源
27 動力伝達機構
29、69、92 可動フード
31、94 固定フード
33、73 駆動機構
35、77 ガーダー部側ブラケット
37、45、79、87 ピン
38、39、40 シール材
41、83 フード部用ジャッキ
41a ロッド
41b 固定材
47、85 フード部側ブラケット
49 支点ピン
51、89 支持部材
55 中折れジャッキ
57 排出装置
59 セグメント組立装置
63 隔壁
75 ガイド
81 クレビス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
進行方向前部にフード部を有するシールド機であって、
前記フード部は複数のフードに分割され、少なくとも一部のフードは前記シールド機の内側に向かって駆動可能な可動フードとして構成され、
該可動フードを駆動するための駆動機構と、
前記フード部の前方に位置する切羽部分の一部を選択して掘削することが可能なコピーカッターを有するカッターヘッドとを備えることを特徴とするシールド機。
【請求項2】
前記可動フードは、その進行方向前部が前記シールド機の内側に向かって傾動することを特徴とする請求項1に記載のシールド機。
【請求項3】
前記可動フードが前記シールド機の中心軸に対して平行な状態で、前記シールド機の内側に向かって変位可能であることを特徴とする請求項1に記載のシールド機。
【請求項4】
進行方向前部に設けられたフード部が複数のフードに分割され、少なくとも一部のフードがシールド機の内側に向かって駆動可能な可動フードとして構成されたシールド機の姿勢転換方法において、
前記可動フードのうち、姿勢転換のために駆動する可動フードを選択する選択工程と、
該選択した可動フードを前記シールド機の内側に向かって駆動する駆動工程と、
カッターヘッドで地山を掘削すると同時に、前記選択した可動フード以外のフードの前方に位置する切羽部分のみを掘削して、前記選択した可動フードの前方に位置する切羽部分を掘り残す掘削工程とを備え、
前記シールド機を前進させて、前記掘削した地山を前記シールド機内に取り込むとともに、前記駆動した可動フードにて前記切羽部分の掘り残しを圧密することにより姿勢を転換することを特徴とするシールド機の姿勢転換方法。
【請求項5】
前記駆動工程と、前記掘削工程とを、この順又は逆順して行うことを特徴とする請求項4に記載のシールド機の姿勢転換方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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