説明

シール材及び目地シール構造

【課題】ゴムに水不透過性を有する部材を埋め込むことで構成されたシール材を用いる場合に、長期間に亘ってシール効果が得られるようにする。
【解決手段】隣り合う構造物の目地を覆うように配置され、該目地をシールするように構成されたシール材10は、帯状のゴム部11と、ゴム部11内の厚み方向中間部に埋め込まれ、ゴム部11の帯形状に対応するように形成された水不透過性を有するシート状の芯材12とを備えている。芯材12は、ゴム部11の幅方向中間部において厚み方向に重なるように折り畳まれた折り畳み部12aを有している。ゴム部11に対する幅方向の引張力によってゴム部11が変形するとともに折り畳み部12aが展開方向に形状変化するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の目地をシールするためのシール材及び目地シール構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えばコンクリート製の水路構成用構造物を複数並べて水路を形成することが行われている。このような構造の場合、隣り合う構造物の目地にシール材を埋め込んで漏水を防止するようにしているが、地盤沈下や車両の走行振動、温度変化による膨張収縮等によって隣り合う構造物が互いに異なる動きをして変位してしまい、このような構造物の変位にシール材が追従できずに漏水が発生することがある。
【0003】
そこで、例えば特許文献1に開示されているようなモルタルとの接着性を有するゴムからなるシール材を構造物の目地に埋め込んで漏水を防止する構造が考えられる。ところが、構造物が互いに離れるように変位した場合、シール材がモルタルに接着されていることに起因して、シール材の外面には、モルタルの割れの起点に対応する部分に引き裂き力が作用する。この引き裂き力によってシール材は、いわゆるゼロスパンテンションを受けることになり、局部的に引き裂かれてその箇所から破断に至り、漏水の原因となることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−291802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、特許文献1のシール材の破断を防止するために、図14に示すように、シール材の厚み方向中間部に、ポリエチレン製フィルムを埋め込むことが考えられる。これにより、ゴム部分が局部的に引き裂かれても、ポリエチレン製フィルムは破断せずに残り、そのフィルムの存在によってシール効果が期待できる。
【0006】
ところが、構造物の変位量が小さいうちはフィルムは破断せずに耐えるが、図15に示すように変位量が大きくなるとフィルムが破断してしまい、漏水の原因となる。
【0007】
また、フィルムが破断しない場合であっても、フィルムが無理に引っ張られて全体的に伸びるとともに、ゴム部分が全体的に薄肉化していき、これにより、シール材を覆って保護している保護モルタル層の全体に高い応力が発生し、図16に示すように多数のひび割れができる。その結果、保護モルタル層が広範囲に亘って損傷してシール材が露出してしまうので、長期間に亘るシール効果が得られない恐れがある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ゴムに水不透過性を有する部材を埋め込むことで構成されたシール材を用いる場合に、長期間に亘ってシール効果が得られるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明では、ゴムに埋め込まれた水不透過性の部材に折り畳み部を設けておき、シール材が引張力を受けた際に折り畳み部を展開させるようにした。
【0010】
第1の発明は、隣り合う構造物の目地を覆うように配置され、該目地をシールするように構成されたシール材において、帯状のゴム部と、上記ゴム部内の厚み方向中間部に埋め込まれ、該ゴム部の帯形状に対応するように形成された水不透過性を有するシート状の芯材とを備え、上記芯材は、上記ゴム部の幅方向中間部において厚み方向に重なるように折り畳まれた折り畳み部を有し、上記ゴム部に対する幅方向の引張力によって該ゴム部が変形するとともに上記折り畳み部が展開する方向に形状変化するように構成されている
を特徴とするものである。
【0011】
この構成によれば、隣り合う構造物が互いに離れる方向に変位した場合、ゴム部には幅方向に引張力が作用してゴム部が幅方向に延びるように変形する。このとき、ゴム部には水不透過性の芯材が埋め込まれているので、ゴム部が破断したとしても、芯材によってシール効果が得られる。
【0012】
また、構造物の変位量が大きい場合には、芯材の折り畳み部が展開する方向に形状変化することで芯材の破断が回避される。さらに、折り畳み部が展開することで芯材が全体的に無理に伸ばされるのが回避され、従って、シール材を保護モルタル層で覆っている場合にその保護モルタル層の全体に亘ってひび割れが発生するのを抑制することが可能になる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、芯材は、ゴム部を構成しているゴムが折り畳み部に付着しないように、該折り畳み部を覆う覆い部を備えていることを特徴とするものである。
【0014】
この構成によれば、芯材の折り畳み部にゴム部を構成しているゴムが付着しないので、ゴムが折り畳み部の展開を阻害することはない。
【0015】
第3の発明は、隣り合う構造物の目地を覆うように配置されたシール材と、上記シール材を覆うように設けられた保護モルタル層とを備えた目地シール構造において、上記シール材は、モルタルとの接着性を有するゴムからなる帯状のゴム部と、上記ゴム部内の厚み方向中間部に埋め込まれ、該ゴム部の帯形状に対応するように形成された水不透過性を有するシート状の芯材とを備え、上記芯材は、上記ゴム部の幅方向中間部において厚み方向に重なるように折り畳まれた折り畳み部を有し、上記ゴム部に対する幅方向の引張力によって該ゴム部が変形するとともに上記折り畳み部が展開する方向に形状変化するように構成されていることを特徴とするものである。
【0016】
この構成によれば、第1の発明と同様に、ゴム部が破断しても芯材によってシール効果が得られ、また、構造物の変位量が大きい場合に芯材の破断が回避されるとともに、シール材を覆っている保護モルタル層に全体的にひび割れが発生するのを抑制することが可能になる。
【0017】
第4の発明は、隣り合う構造物の目地を覆うように配置され、該目地をシールするように構成されたシール材において、帯状のゴム部と、上記ゴム部内の厚み方向中間部に埋め込まれ、該ゴム部の帯形状に対応するように形成された水不透過性を有するシート状の芯材と、上記ゴム部内に埋め込まれ、上記芯材の幅方向両側をそれぞれ覆うように形成された水不透過性を有するフィルム部材とを備え、上記フィルム部材は、上記芯材の厚み方向に重なるように折り畳まれた折り畳み部を有し、上記ゴム部に対する幅方向の引張力によって該ゴム部が変形するとともに上記折り畳み部が展開する方向に形状変化するように構成されていることを特徴とするものである。
【0018】
この構成によれば、隣り合う構造物が互いに離れる方向に変位した場合、ゴム部には幅方向に引張力が作用してゴム部が幅方向に延びるように変形する。このとき、ゴム部には水不透過性の芯材が埋め込まれているので、ゴム部が破断したとしても、芯材によってシール効果が得られる。
【0019】
また、構造物の変位量が大きい場合には、芯材の幅方向両側を覆っているフィルム部材の折り畳み部が展開することで芯材には無理な力がかからず、芯材の破断が回避される。さらに、折り畳み部が展開することで芯材が全体的に無理に伸ばされるのが回避され、従って、シール材を保護モルタル層で覆っている場合にその保護モルタル層の全体にひび割れが発生するのを抑制することが可能になる。
【0020】
第5の発明は、隣り合う構造物の目地を覆うように配置されたシール材と、上記シール材を覆うように設けられた保護モルタル層とを備えた目地シール構造において、上記シール材は、モルタルとの接着性を有するゴムからなる帯状のゴム部と、上記ゴム部内の厚み方向中間部に埋め込まれ、該ゴム部の帯形状に対応するように形成された水不透過性を有するシート状の芯材と、上記ゴム部内に埋め込まれ、上記芯材の幅方向両側をそれぞれ覆うように形成された水不透過性を有するフィルム部材とを備え、上記フィルム部材は、上記芯材の厚み方向に重なるように折り畳まれた折り畳み部を有し、上記ゴム部に対する幅方向の引張力によって該ゴム部が変形するとともに上記折り畳み部が展開する方向に形状変化するように構成されていることを特徴とするものである。
【0021】
この構成によれば、第4の発明と同様に、ゴム部が破断しても芯材によってシール効果が得られ、また、構造物の変位量が大きい場合に芯材の破断が回避されるとともに、シール材を覆っているモルタル層に全体的にひび割れが発生するのを抑制することが可能になる。
【発明の効果】
【0022】
第1、3の発明によれば、ゴム部に水不透過性を有する芯材を埋め込み、この芯材に折り畳み部を設けて引張力を受けた際に展開させるようにしたので、長期間に亘ってシール効果を維持できる。
【0023】
第2の発明によれば、芯材の折り畳み部を覆い部で覆ってゴムが付着しないようにしたので、折り畳み部を確実に展開させることができる。
【0024】
第4、5の発明によれば、ゴム部に水不透過性を有する芯材と、該芯材の幅方向両側をそれぞれ覆うように形成された水不透過性を有するフィルム部材とを埋め込み、このフィルム部材に折り畳み部を設けて引張力を受けた際に展開させるようにしたので、長期間に亘ってシール効果を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態1にかかる水路の一部を示す斜視図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】芯材の断面図である。
【図4】シール材の断面図である。
【図5】隣り合う水路構成部材が互いに離れる方向に変位した場合の図2相当図である。
【図6】一方の水路構成部材が下方に変位した場合の図5相当図である。
【図7】実施形態2にかかる図1相当図である。
【図8】図7のVIII−VIII線断面図である。
【図9】実施形態2にかかる図5相当図である。
【図10】実施形態3にかかる図2相当図である。
【図11】実施形態3にかかる図5相当図である。
【図12】実施形態4にかかる図2相当図である。
【図13】実施形態5にかかる水路及び目地シール構造の断面図である。
【図14】従来の目地シール構造を説明する断面図である。
【図15】シール材のフィルムが破断した場合の図14相当図である。
【図16】シール材のフィルムが破断しなかった場合の図14相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0027】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1にかかる目地シール構造1が適用された水路Aを示すものである。この実施形態1の説明では、目地シール構造1を説明する前に、水路Aについて説明する。
【0028】
水路Aは、例えば、農業用水や工業用水の他、生活排水を流す際に使用されるものであり、複数のコンクリート製の水路構成部材(構造物)B,Bを並べて構成されている。各水路構成部材Bは同じものであり、上方に開放する略コ字状断面を有している。図2に示すように、隣り合う水路構成部材B,Bの目地Cには、シーリング材Dが埋め込まれている。水路Aの完成時には、隣り合う水路構成部材B、Bの間隔は、所定の間隔で維持されているが、完成から長期間経過すると、水路A周辺の地震や地盤沈下、車両走行の振動、温度変化による膨張収縮等によって、隣り合う水路構成部材B,Bが互いに異なる動きをして変位することがある。水路構成部材B、Bの変位の方向としては、各種あり、例えば、水路構成部材B、Bが互いに離れる方向、水平線に対して傾く方向、上下方向等がある。本発明にかかる目地シール構造1は、水路構成部材B、Bが変位したとしても、シール効果を得られるようにするためのものである。
【0029】
目地シール構造1は、目地Cを水路A内側から覆うように配置されるシール材10と、シール材10を覆って保護するための保護モルタル層20とを備えている。シール材10は、ゴムを帯状に成形してなるゴム部11と、ゴム部11に埋め込まれるシート状の芯材12とを有している。ゴム部11は、モルタルとの接着性を有しており、例えば、特開平11−60823号公報に開示されているゴムを用いることができる。すなわち、このゴムは、プライマーを塗布することなく、モルタルに接着できるように各成分が配合されており、乾燥していないモルタルの上に置いてモルタルを乾燥させると、該モルタルと強固に接着する性質を有している。また、このゴムは水を通さない水不透過性を有している。
【0030】
図1に示すように、シール材10は、目地Cに沿って水路構成部材Bの一方の側面から底面、他方の側面まで連続して上方に開放する略コ字状に延びている。
【0031】
また、図2に示すように、シール材10の幅は、目地Cの幅よりも十分に広く設定されており、シール材10の幅方向中央部がちょうど目地Cと重なるように配置された状態で、シール材10の幅方向両側が、それぞれ、水路構成部材B,Bの内面の所定範囲を覆うことができるようになっている。シール材10は、水路構成部材B,Bの内面に接着剤等で貼り付けられている。シール材10の厚みは、例えば数mm程度に設定され、幅は数十ミリ程度に設定されている。
【0032】
図3及び図4に示すように、芯材12は、水不透過性を有する1枚の樹脂製シートを折り曲げて構成されたものである。芯材12を構成するシートの素材としては、水不透過性を有する樹脂材が好ましく、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等が挙げられる。芯材12は、ゴム部11の厚み方向中間部に埋め込まれており、ゴム部11の帯形状に対応するように該ゴム部11の幅方向に延びるとともに、ゴム部11の長手方向両端部に亘って延びている。
【0033】
芯材12は、その幅方向中央部に設けられた折り畳み部12aと、折り畳み部12aから幅方向一側へ略平坦に延びる一側平坦部12bと、折り畳み部12aから幅方向他側へ略平坦に延びる他側平坦部12cとを備えている。
【0034】
折り畳み部12aは、シートの幅方向中間部を、厚み方向に重なるように折り畳まれて構成されており、この実施形態では、シートが3枚重なった形状となっているが、これに限らず、2枚重なった形状であってもよいし、4枚以上重なった形状であってもよい。図2に示すように、折り畳み部12aの幅は、目地Cの幅と略同じに設定されている。
【0035】
一側平坦部12bは、シートの幅方向一側を、厚み方向に2枚重なるように折り曲げて構成されている。一側平坦部12bの幅方向他側の縁部には、折り畳み部12aを表側(図3の上側)から覆う表側覆い部12dが連続して設けられている。
【0036】
他側平坦部12cは、シートの幅方向他側を、厚み方向に2枚重なるように折り曲げて構成されている。他側平坦部12cの幅方向一側の縁部には、折り畳み部12aを裏側(図3の下側)から覆う裏側覆い部12eが連続して設けられている。
【0037】
上記表側及び裏側覆い部12d、12eの幅は、折り畳み部12aの幅と略同じに設定されている。これにより、折り畳み部12aの全体が表側及び裏側覆い部12d、12eにより覆われることになり、ゴム部11を構成するゴムが折り畳み部12aに付着せず、折り畳み部12aの厚み方向に重なっているシート間には、ゴムが侵入していない。
【0038】
また、一側平坦部12b及び他側平坦部12cの厚み方向に重なるシート間にも、ゴム部11を構成するゴムが侵入していない。
【0039】
図2に示すように、保護モルタル層20は、シール材10の水路A内側を覆うように形成されており、従って、シール材10が保護モルタル層20に埋め込まれた状態となっている。保護モルタル層20は、セメントと砂を水で練った単純モルタルであってもよいし、樹脂エマルジョンを混合した樹脂モルタルであってもよい。
【0040】
保護モルタル層20の厚みは、例えば5mm程度が好ましいが、これに限られるものではない。
【0041】
保護モルタル層20の目地Cに対応する部位には、誘発目地部材21が設けられている。誘発目地部材21は、モルタルとは別の材質(例えば発泡樹脂等)で構成されており、水路構成部材B、Bが変位した場合に、保護モルタル層20における誘発目地部材21が存在する部分(1箇所)にひび割れが発生するように、ひび割れを誘発するためのものである。
【0042】
保護モルタル層20の水路A内側の面には、塗膜25が形成されている。塗膜25は、エポキシ系やウレタン系の塗料を保護モルタル層20に塗布して乾燥させることによって得られたものである。
【0043】
次に、シール材10を用いて水路Aに目地シール構造1を構成する場合について説明する。
【0044】
まず、水路構成部材Bの内面におけるシール材10を接着する部分に接着剤を塗布する。そして、シール材10を水路Aの内面に貼り付けていく。このとき、図2に示すように、芯材12の折り畳み部12aが目地Cに対応するように、かつ、一側平坦部12b及び他側平坦部12cが水路構成部材B、Bの内面に対応するように、シール材10を配置する。
【0045】
その後、モルタルをシール材10及び水路構成部材B、Bの内面に塗布する。このモルタルが乾燥して保護モルタル層20になる。シール材10は保護モルタル層20に接着する。
【0046】
このようにして目地シール構造1が得られる。目地シール構造1によって目地Cからの漏水が防止されるが、時間の経過に従って、図5に示すように隣り合う水路構成部材B、Bが互いに離れる方向に変位することがある。この場合には、シーリング材Dが一方の水路構成部材Bから離れるようになり、隣り合う水路構成部材B、Bの間に隙間ができることになる。このとき、保護モルタル層20に誘発目地部材21を設けていることにより、保護モルタル層20には、誘発目地部材21に対応する部分にひび割れが発生する。
【0047】
シール材10は、幅方向両側が水路構成部材B、Bにそれぞれ接着されているとともに、保護モルタル層20とも接着しているので、幅方向に引っ張られる。引張力を受けたゴム部11は、水路構成部材B、Bの間の部分が伸びて薄肉に変形する。また、芯材12も幅方向両側へ引っ張られることになる。具体的には、芯材12の一側平坦部12bと他側平坦部12cとが引っ張られることになるので、両平坦部12b、12cの間に位置する折り畳み部12aが幅方向に引っ張られる。折り畳み部12aは、シートが厚み方向に折り畳まれているだけなので、次第に展開していくように形状変化する。このとき、折り畳み部12aは表側及び裏側覆い部12d、12eにより覆われていて、折り畳み部12aにはゴムが付着していないので、折り畳み部12aの展開方向への形状変化がゴムによって阻害されることはなく、大きな力を要することなく、スムーズに展開していく。
【0048】
水不透過性の芯材12が破断することなく存在していることによって、例えばゴム部11がゼロスパンテンションを受けて引き裂かれたとしても、シール効果を得ることができる。
【0049】
また、水路構成部材B、Bの変位量が多い場合であっても、折り畳み部12aを展開させることで、芯材12の幅を拡大することができ、芯材12の破断を防止できる。これにより、シール効果が得られる。
【0050】
さらに、芯材12の折り畳み部12aを展開させることで、芯材12の一側平坦部12b及び他側平坦部12cには強い引張力が作用しない。これにより、一側平坦部12b及び他側平坦部12cが無理に引っ張られることはないので、これらを覆っている保護モルタル層20の全体に高い応力が発生するのを回避できる。これにより、保護モルタル層20が広範囲に亘って破損するのを防止できる。
【0051】
尚、折り畳み部12aは、目地Cに対応する部分に位置しており、誘発目地部材21によってひび割れを発生させる箇所にあるので、展開方向に形状変化しても、保護モルタル層20に高い応力を発生させることは殆どなく、また、高い応力を発生させたとしても、ごく限られた狭い範囲であるため、保護モルタル層20の損傷範囲は小さくて済む。
【0052】
また、図6に示すように、一方の水路構成部材Bが上下方向に変位した場合にも、シール材10は結果的に幅方向に引っ張られることになる。これにより、ゴム部11が伸びるように変形するとともに、芯材12の折り畳み部12aが展開する。従って、上述したようにシール効果を得ることができるとともに、保護モルタル層20の全体が損傷するのを防止できる。
【0053】
以上説明したように、この実施形態1によれば、モルタルとの接着性を有するゴム部11に、水不透過性を有する芯材12を埋め込み、この芯材12に折り畳み部12aを設けて幅方向の引張力を受けた際に展開させるようにしたので、水路構成部材Bの変位量が大きくても、保護モルタル層20の全体にひび割れが発生するのを抑制できる。これにより、保護モルタル層20が広範囲に亘って損傷するのを防止でき、長期間に亘ってシール効果を維持できる。
【0054】
また、芯材12の折り畳み部12aを覆い部12d、12eで覆ってゴム部11を構成しているゴムが付着しないようにしたので、折り畳み部12aを確実に展開させることができる。
【0055】
(実施形態2)
図7は、本発明の実施形態2にかかる目地シール構造1が適用された水路Aを示すものである。
【0056】
実施形態2では、目地シール構造1が水路Aの外側に設けられている点で実施形態1のものと異なっており、他の部分は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
【0057】
実施形態2の水路構成部材BはU字状断面を有している。シール材10は、水路構成部材Bの外面に接着されている。図8に示すように、シール材10の外面は、保護モルタル層30により覆われている。
【0058】
図9に示すように隣り合う水路構成部材B、Bが互いに離れる方向に変位した場合には、保護モルタル層30はそのまま残り、水路構成部材B、Bの間に隙間ができる。この水路構成部材B、Bの変位によってシール材10が幅方向に引っ張られる。これにより、ゴム部11は、水路構成部材B、Bの間の部分が伸びて薄肉に変形し、また、芯材12の折り畳み部12aが展開する方向に形状変化する。
【0059】
従って、例えばゴム部11がゼロスパンテンションを受けて引き裂かれたとしても、芯材12によってシール効果を得ることができる。
【0060】
また、水路構成部材B、Bの変位量が多い場合であっても、折り畳み部12aを展開させることで、芯材12の破断を防止できる。これにより、シール効果が得られる。
【0061】
さらに、芯材12の折り畳み部12aを展開させることで、一側平坦部12b及び他側平坦部12cには強い引張力が作用しないので、これらを覆っている保護モルタル層30の全体に高い応力が発生するのを回避できる。よって、保護モルタル層30の全体が損傷するのを防止できる。
【0062】
したがって、この実施形態2によれば、実施形態1と同様に、水路構成部材Bの変位量が大きくても、保護モルタル層30の全体にひび割れが発生するのを抑制でき、保護モルタル層30が広範囲に亘って損傷するのを防止でき、長期間に亘ってシール効果を維持できる。
【0063】
(実施形態3)
図10は、本発明の実施形態3にかかる目地シール構造1が適用された水路Aの断面を示すものである。
【0064】
実施形態3は、シール材10の芯材12の形状が実施形態1のものとは異なっているだけであり、他の部分は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
【0065】
実施形態3の芯材12の一側平坦部12b及び他側平坦部12cは、1枚のシートで構成されている。また、芯材12の折り畳み部12aは、表側及び裏側覆い部12d、12eで覆われていない。
【0066】
図11に示すように隣り合う水路構成部材B、Bが互いに離れる方向に変位した場合、ゴム部11は、水路構成部材B、Bの間の部分が伸びて薄肉に変形し、また、芯材12の折り畳み部12aが展開する方向へ形状変化する。
【0067】
これにより、実施形態3においても、実施形態1と同様な作用効果を得ることができる。
【0068】
(実施形態4)
図12は、本発明の実施形態4にかかる目地シール構造1が適用された水路Aの断面を示すものである。
【0069】
実施形態4は、シール材10の構造が実施形態1のものとは異なっているだけであり、他の部分は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
【0070】
シール材10には、芯材35と、第1及び第2フィルム材36、37とが埋め込まれている。芯材35と第1及び第2フィルム材36、37とは、実施形態1の芯材12と同様なシートで構成されている。芯材35は、ゴム部11の幅方向両側まで延びている。第1フィルム材36の一縁部及び他縁部は、芯材35の幅方向一側の縁部に接着されている。第1フィルム材36は、芯材35の幅方向一側の表側(図12の上側)及び裏側(図12の下側)に重なった状態で折り畳まれた折り畳み部36a、36aを有している。
【0071】
第2フィルム材37の一縁部及び他縁部は、芯材35の他側の縁部に接着されている。第2フィルム材37は、芯材35の幅方向他側の表側及び裏側に重なった状態で折り畳まれた折り畳み部37a、37aを有している。従って、芯材35の幅方向両側は、第1及び第2フィルム材36、37で覆われている。
【0072】
実施形態4のシール材10を用いて水路Aに目地シール構造1を構成する要領は実施形態1と同様である。
【0073】
隣り合う水路構成部材B、Bが互いに離れる方向に変位した場合には、ゴム部11における水路構成部材B、Bの間の部分が延びる。また、第1フィルム材36及び第2フィルム材37が互いに離れる方向に引っ張られ、このとき、折り畳み部36a、37aは厚み方向に折り畳まれているだけなので、次第に展開していくように形状変化していき、第1及び第2フィルム材36、37の折り畳み部36a、37aが芯材35の表面と裏面とを滑り、芯材35には無理な引張力が作用せず、芯材35の位置も殆ど変化せずに目地Cを覆ったままとなる。
【0074】
これにより、芯材35が破断することはなく、例えばゴム部11がゼロスパンテンションを受けて引き裂かれたとしても、シール効果を得ることができる。
【0075】
また、水路構成部材B、Bの変位量が多い場合であっても、折り畳み部36a、37aを展開させることで、芯材35に無理な力がかからないようにして芯材35の破断を防止できる。これにより、シール効果が得られる。
【0076】
さらに、折り畳み部36a、37aを展開させることで、芯材35には強い引張力が作用しない。これにより、保護モルタル層20の全体に高い応力が発生するのを回避でき、保護モルタル層20が広範囲に亘って破損するのを防止できる。
【0077】
したがって、この実施形態4によれば、実施形態1と同様に、水路構成部材Bの変位量が大きくても、保護モルタル層20の全体にひび割れが発生するのを抑制でき、保護モルタル層20が広範囲に亘って損傷するのを防止でき、長期間に亘ってシール効果を維持できる。
【0078】
(実施形態5)
図13は、本発明の実施形態5にかかる目地シール構造1が適用された水路Aの断面を示すものである。
【0079】
実施形態5は、シール材10の固定構造が実施形態1のものとは異なっているだけであり、他の部分は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
【0080】
実施形態5では保護モルタル層20が設けられておらず、シール材10は固定金具40、40及びボルト41、41、…によって水路構成部材B、Bに固定されている。固定金具40は、水路Aの内面に沿って延びる略コ字状に形成されている。固定金具40には、ボルト41が挿通する挿通孔40aが形成されている。また、水路構成部材B、Bの内面には、ボルト41が螺合するボルト孔B1が形成されている。さらに、ボルト41は、シール材10を厚み方向に貫通している。
【0081】
次に、シール材10を用いて水路Aに目地シール構造1を構成する場合について説明する。まず、シール材10を水路構成部材B、Bの内面に接着する。
【0082】
その後、固定金具40,40をシール材10に重ねてボルト41を固定金具40のボルト挿通孔40aに挿通し、シール材10を貫通させて水路構成部材Bのボルト孔B1に螺合させる。これにより、シール材10の幅方向両側が固定金部40,40によって水路構成部材B、Bの内面に押し付けられて固定される。尚、符号48はシール材10を覆うコーティング層を示している。
【0083】
隣り合う水路構成部材B、Bが互いに離れる方向に変位した場合には、シール材10が幅方向に引っ張られる。これにより、ゴム部11が伸びて薄肉に変形し、また、芯材12の折り畳み部12aが展開する。
【0084】
したがって、この実施形態2によれば、実施形態1と同様に、水路構成部材Bの変位量が大きくても、長期間に亘ってシール効果を維持できる。
【0085】
尚、本発明は、例えば水路Aを新設する場合、補修する場合の両方で用いることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0086】
以上説明したように、本発明は、例えば農業用水路に用いることができる。
【符号の説明】
【0087】
1 目地シール構造
10 シール材
11 ゴム部
12 芯材
12a 折り畳み部
12d 表側覆い部
12e 裏側覆い部
20 保護モルタル層
A 水路
B 水路構成部材(構造物)
C 目地

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合う構造物の目地を覆うように配置され、該目地をシールするように構成されたシール材において、
帯状のゴム部と、
上記ゴム部内の厚み方向中間部に埋め込まれ、該ゴム部の帯形状に対応するように形成された水不透過性を有するシート状の芯材とを備え、
上記芯材は、上記ゴム部の幅方向中間部において厚み方向に重なるように折り畳まれた折り畳み部を有し、
上記ゴム部に対する幅方向の引張力によって該ゴム部が変形するとともに上記折り畳み部が展開する方向に形状変化するように構成されていることを特徴とするシール材。
【請求項2】
請求項1に記載のシール材において、
芯材は、ゴム部を構成しているゴムが折り畳み部に付着しないように、該折り畳み部を覆う覆い部を備えていることを特徴とするシール材。
【請求項3】
隣り合う構造物の目地を覆うように配置されたシール材と、
上記シール材を覆うように設けられた保護モルタル層とを備えた目地シール構造において、
上記シール材は、モルタルとの接着性を有するゴムからなる帯状のゴム部と、
上記ゴム部内の厚み方向中間部に埋め込まれ、該ゴム部の帯形状に対応するように形成された水不透過性を有するシート状の芯材とを備え、
上記芯材は、上記ゴム部の幅方向中間部において厚み方向に重なるように折り畳まれた折り畳み部を有し、
上記ゴム部に対する幅方向の引張力によって該ゴム部が変形するとともに上記折り畳み部が展開する方向に形状変化するように構成されていることを特徴とする目地シール構造。
【請求項4】
隣り合う構造物の目地を覆うように配置され、該目地をシールするように構成されたシール材において、
帯状のゴム部と、
上記ゴム部内の厚み方向中間部に埋め込まれ、該ゴム部の帯形状に対応するように形成された水不透過性を有するシート状の芯材と、
上記ゴム部内に埋め込まれ、上記芯材の幅方向両側をそれぞれ覆うように形成された水不透過性を有するフィルム部材とを備え、
上記フィルム部材は、上記芯材の厚み方向に重なるように折り畳まれた折り畳み部を有し、
上記ゴム部に対する幅方向の引張力によって該ゴム部が変形するとともに上記折り畳み部が展開する方向に形状変化するように構成されていることを特徴とするシール材。
【請求項5】
隣り合う構造物の目地を覆うように配置されたシール材と、
上記シール材を覆うように設けられた保護モルタル層とを備えた目地シール構造において、
上記シール材は、モルタルとの接着性を有するゴムからなる帯状のゴム部と、
上記ゴム部内の厚み方向中間部に埋め込まれ、該ゴム部の帯形状に対応するように形成された水不透過性を有するシート状の芯材と、
上記ゴム部内に埋め込まれ、上記芯材の幅方向両側をそれぞれ覆うように形成された水不透過性を有するフィルム部材とを備え、
上記フィルム部材は、上記芯材の厚み方向に重なるように折り畳まれた折り畳み部を有し、
上記ゴム部に対する幅方向の引張力によって該ゴム部が変形するとともに上記折り畳み部が展開する方向に形状変化するように構成されていることを特徴とする目地シール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−241448(P2012−241448A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113637(P2011−113637)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(591000506)早川ゴム株式会社 (110)
【Fターム(参考)】