説明

シール構造

【課題】ハウジング内への水の浸入を防ぐことができるシール構造を提供する。
【解決手段】ハウジング1に形成された挿通孔10から突き出た状態で設けられたパイプ2の外表面2cと、挿通孔との間をシールするシール構造であって、前記パイプは、前記挿通孔に嵌め込まれるシール部50と、前記パイプの前記外表面に弾性的に接触するリップ部51とを備えたシール部材5に挿通され、前記シール部が前記挿通孔に嵌め込まれた状態で前記パイプに前記接続部材が組み付けられ、前記リップ部の先側52aが前記接続部材の端部30で覆われていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジングに形成された挿通孔から突き出た状態で設けられたパイプの外表面と、前記挿通孔との間をシールするシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上述のようなシール構造が求められるものとしては、以下の例が挙げられる。
近年、車両の駆動源としてエンジン(内燃機関)及び電動機を備えたいわゆるハイブリッド車が知られており、電動機の動作はインバータにより制御されている。ハイブリッド車においては、電動機はバッテリから電力を得て駆動力を発生するモータ等として働き、インバータは、バッテリ等から供給される直流電源をスイッチング作用により交流電源に変換して電動機に電力の供給を行っている。
このようなハイブリッド車等に用いられるインバータは大きな電力量を求められ、スイッチング素子等に大電流が流れるため、発熱量が多い。そこで、インバータを収容するインバータケース内に冷却水や冷却液等の冷媒が流れる冷媒流路を構成し、インバータを冷却するシステムが採用されている。
【0003】
例えば下記特許文献1には、車両用電子機器を冷媒によって冷却する冷却器の冷却水流通口と外部ホースとの間を接続するユニオン継手を1部材で形成したものが記載されている。
このような構造においては、冷却水流通口とユニオン継手、ユニオン継手と外部ホースのそれぞれの接合部間をシールし、冷却水が漏れないようにする必要がある。
下記特許文献1には、外部ホースとユニオン継手とが、外部ホースの先端に連結されたクイックコネクタによって接続するようにしていることが記載されている(上記特許文献1・図5参照)。また冷却水流通口とユニオン継手とはロウ付けによって固定されていることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−96231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これら接合部においては、冷媒の漏洩防止だけでなく外部からの雨水等の浸入、さらには車両等を高圧洗浄する際の水の噴射にも耐えられるシール性が求められる。
上記特許文献1の構造では、高圧噴射される水がユニオン継手に直接噴射されるとユニオン継手が振動してクイックコネクタとユニオン継手との接合部から水が浸入してしまうおそれがある。そこでより一層強固なシール構造が求められている。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、ハウジング内への水の浸入を防ぐことができるシール構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るシール構造は、ハウジングに形成された挿通孔から突き出た状態で設けられたパイプの外表面と、前記挿通孔との間をシールするシール構造であって、前記パイプは、前記挿通孔に嵌め込まれるシール部と、前記パイプの前記外表面に弾性的に接触するリップ部とを備えたシール部材に挿通され、前記シール部が前記挿通孔に嵌め込まれた状態で前記パイプに接続部材が組み付けられ、前記リップ部の先側が前記接続部材の端部で覆われていることを特徴とする。
この構造によれば、ハウジングに形成された挿通孔から突き出た状態で設けられたパイプの外表面と挿通孔との間をシール部材のリップのみでシールするのではなく、パイプに接続部材が組み付けられることにより、リップ部の先側が前記接続部材の端部で覆われた状態とすることができる。
例えば、上述のように設けられたパイプの外表面と挿通孔との間に水が高圧噴射されるような場合でも、シール部材のリップ部の先側が接続部材の端部で覆われた状態としているため、直接リップ部の先側が噴射されることがない。従って、リップ部の先側が水圧でめくれあがることが抑えられ、ハウジング内への水等の浸入を確実に防ぐことができる。
また上述のようにこのシール構造を採用すれば、シール性が向上するので、ハウジング自体の搭載位置の自由度を広げることができる。さらにパイプと接続部材との間を流通する冷媒の漏れも防ぐことができる。
【0008】
本発明のシール構造において、前記リップ部が前記接続部材によって押圧されているようにしてもよい。
この場合によれば、接続部材による押圧力でリップ部の先側が接続部材の端部とパイプの外表面との間に形成される隙間に押し込まれ露出しない状態となるので、直接リップ部の先側が噴射されることがなく上述の隙間がシールされるので、ハウジング内への水等の浸入をより一層確実に防ぐことができる。
【0009】
本発明のシール構造において、前記接続部材の端部には径方向外向きに延びる鍔部が形成され、前記リップ部が前記端部と前記鍔部との角部に弾性的に当接するように形成されているものとしてもよい。
この場合によれば、リップ部は、その先側が接続部材の端部に覆われた状態で端部と鍔部との角部に弾性的に当接されるように形成されているので、ハウジング内への水等の浸入をより一層防ぐことができる。例えば、上述のように接合部に水が高圧噴射されるような場合において、高圧噴射される水によって接続部材が振動してもリップ部が角部に弾性的に当接されているので、その振動を吸収し、水の浸入を防ぐことができる。
【0010】
本発明のシール構造において、前記角部はテーパー状に形成されているものとしてもよい。
この場合によれば、角部がテーパー状に形成されているので、パイプと接続部材とが組み付けられる際にリップ部を接合部にスムーズに誘導することができる。
【0011】
本発明のシール構造において、前記鍔部には、前記接続部材の軸方向で且つ前記挿通孔に向かって突出する凸壁部が形成されているものとしてもよい。
この場合によれば、凸壁部の存在が、水等の浸入を防ぐさらなる防護壁となり、上述のような高圧噴射される水等の浸入を効果的に防ぐことができる。
【0012】
本発明のシール構造において、前記シール部材は、前記凸壁部に弾性的に当接するように形成される外周リップをさらに備えているものとしてもよい。
この場合によれば、外周リップの存在が、水等の浸入を防ぐさらなる防護壁となり、上述のような高圧噴射からも効果的に水等の浸入を防ぐことができる
【0013】
本発明のシール構造において、前記接続部材の端部には、平面視して略C型形状からなり、該端部の側部から、前記接続部材の内周面と前記パイプの外表面との間に差し込まれる内周側爪部と、該端部の外周面に嵌め合わされる外周側爪部とを備えた抜け止め部材が設けられるとともに、前記端部には前記内周側爪部が差し込まれる差込開口部が設けられているものとしてもよい。
この場合によれば、抜け止め部材が設けられることにより、パイプと接続部材との接合関係がより一層高まり、パイプと接続部材との内部を流通する冷媒が漏れることを防ぐとともに接続部材が容易に抜けてしまうことも防ぐことができる。
【0014】
本発明のシール構造において、前記リップ部の基部には、求心方向に付勢するスプリング材が前記基部の外側から嵌め合わされているものとしてもよい。
この場合によれば、リップ部の基部がスプリング材によって求心方向に締め付けられ、パイプの外周にリップ部の内周面を押し当てた状態で取り付けることができる。従って、上述のような水の高圧噴射によってリップ部が振動してもリップ部が移動することがなく、強固に接合部をシールすることができる。
またスプリング材で付勢することにより、パイプが傾いて軸がずれても接合部のシールが保たれる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るシール構造は、ハウジングに形成された挿通孔から突き出た状態で設けられたパイプの外表面とハウジングに形成された挿通孔との間をシール部材のリップのみでシールするのではなく、パイプに接続部材が組み付けられることにより、リップの先側が接続部材の端部で覆われた状態とすることができる。
従って例えば、上述のように設けられたパイプの外表面とハウジングに形成された挿通孔との間に水が高圧噴射されるような場合でも、リップ部の先側が接続部材の端部で覆われた状態としているため、直接リップ部の先側が噴射されることがなく、シール機能を発揮しハウジング内への水等の浸入を確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るシール構造の第1実施形態を示す概略的縦断面図である。
【図2】本発明に係るシール構造の第2実施形態を示す概略的縦断面図である。
【図3】(a)は同シール構造に用いられる接続部材の概略的斜視図であり、(b)は同シール構造に用いられる抜け止め部材の概略的斜視図である。
【図4】図2に示すシール構造の変形例を示す概略的縦断面図である。
【図5】図2に示すシール構造の図4の例とは異なる変形例を示す概略的縦断面図である。
【図6】本発明に係るシール構造の第3実施形態を示す概略的縦断面図である。
【図7】本発明に係るシール構造の第4実施形態を示す概略的縦断面図である。
【図8】図7に示すシール構造の変形例を示す概略的縦断面図である。
【図9】図7に示すシール構造の図8の例とは異なる変形例を示す概略的縦断面図である。
【図10】図7に示すシール構造の図8、図9とはさらに異なる変形例を示す概略的縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
まずは図1を参照しながら本発明に係るシール構造の第1実施形態について説明する。
本実施形態に示すシール構造は、インバータケース(ハウジング)1に形成された挿通孔10から突き出た状態で貫装される冷却パイプ(パイプ)2の外表面2cと、挿通孔10との間(以下、接合部4)をシールするシール構造に採用された例を示している。インバータケース1内には、ハイブリッド駆動装置におけるモータ等の電動機を制御するインバータ(不図示)が収容されている。
挿通孔10には、挿通孔10に嵌め込まれるシール部50と、冷却パイプ2の外表面2cに弾性的に接触するリップ部51とを備えたシール部材5が装着され、冷却パイプ2はシール部材5に挿通されている。
図1に示すように本実施形態に係るシール構造は、シール部材5に冷却パイプ2が挿通され、シール部50が挿通孔10に嵌め込まれた状態で、冷却パイプ2に接続部材3が組み付けられ、リップ部51の先側に形成されている厚肉部54及び主リップ52が接続部材3の端部(以下、パイプ接続端部30)で覆われるよう構成されている。
【0018】
インバータケース1は、上下に分割して構成された略直方体形状の箱体とされ、上ケース1aと下ケース1bとを備えている。インバータケース1は、断面視して略凹状の下ケース1bの上に断面視して略凹状の上ケース1aが被さるようにして接合されて構成されており、互いがボルト等の連結具で締結一体とされる。インバータケース1はアルミニウム等の金属材等からなり、インバータケース1内には、インバータを冷却するための冷却水や冷却液などの冷媒を流通させるための冷媒流路が設けられ、冷却パイプ2はその冷媒流路の一部を構成するようにしてもよいし、別途設けられる冷媒流路と連通するようにしてもよい。上ケース1aと下ケース1bとの側壁には、両者が接合されインバータケース1とした際に挿通孔10が形成されるように向かい合う位置に半円形の切欠孔が形成されている。
【0019】
挿通孔10の形状は特に限定されるものではなく、冷却パイプ2の形状、大きさに応じて形成されている。
挿通孔10の径は、冷却パイプ2の外径よりも大になるよう形成されており、この挿通孔10の内周には、冷却パイプ2が挿通されたシール部材5が装着され、冷却パイプ2がインバータケース1の外に突き出た状態で設けられている。
【0020】
冷却パイプ2は、金属材料等の中空の円筒状体からなり、冷媒ホースから供給される冷媒をインバータケース1内の冷媒流路に送り込むよう構成されている。
冷却パイプ2の突き出た端部2aには、接続部材3が被さるように接合され、端部2aは概ね接続部材3で覆われている。冷却パイプ2の突き出た側の外表面2cには、接続部材3の内周面3bに接する程度に外方に突出した環状の凸部2bが形成されている。
冷却パイプ2の端部2aの形状は特に限定されるものではないが、図1に示すように次第に少しずつ径が小さくなるように形成された先細部2dを備えているものとしてもよい。
【0021】
接続部材3は、中空円筒体が途中から略直角に屈曲して形成された樹脂材料等からなり、冷却パイプ2の突き出た端部2aに接合されるとともに、パイプ接続端部30の他端側は、冷却パイプ2を介してインバータケース1内に冷媒を供給する可撓性を有した冷媒ホース(不図示)が接続されている。
接続部材3の形状は特に限定されるものではないが、冷却パイプ2と冷媒ホースとの間を略直角に屈曲して繋ぐため、ここに示す接続部材3は略直角に屈曲して形成されている。
接続部材3の冷却パイプ2との接続側は、冷却パイプ2における凸部2bの外径と略同一の内径としたパイプ接続端部30と、径方向外向きに延びる鍔部31と、鍔部31の延出方向端部に形成された起立片部31aとを備えている。
図中、32はパイプ接続端部30と鍔部31との角部を示している。
角部32は、厚みのあるリップ部51が設けられる空間を確保しやすいように図例のようにテーパー形状に形成することが望ましい。
また接続部材3の段部3aより冷媒ホース側は、パイプ接続端部30の径より若干小さい径とされ略直角に屈曲して形成された屈曲部33と、冷媒ホースと接続されるホース接続端部34とを備えている。
【0022】
鍔部31は、パイプ接続端部30から延出して形成され径方向外向きに略直角に屈曲して形成されている。そして鍔部31の延出方向端部には、起立片部31aが略直角に屈曲して形成されており、この起立片部31aは、接続部材3の軸方向で且つ挿通孔10に向かって突出するように形成されている。
起立片部31aの突出度合いは、特に限定するものではないが、図例のようにシール部50に接触しない程度に突出したものとしてもよいし、後記する図6に示す凸壁部35のように接触するように突出したものとしてもよい。また起立片部31aは、環状に連なって形成されたものとしてもよいし、部分的に形成されたものとしてもよい。
【0023】
接続部材3を冷却パイプ2に組み付けると、パイプ接続端部30内には、冷却パイプ2が挿通され、その先細部2dが挿通される部位には先細部2dの外径に合わせて段差状に形成された段部3aが設けられている。従って、接続部材3を冷却パイプ2に組み付けた状態においては、段部3aの内周面が冷却パイプ2の先細部2dの外表面2cに接触した状態となる。
パイプ接続端部30の内周面3bには、Oリング等のシールリング7が複数設けられており、接続部材3に挿通される冷却パイプ2の外表面2cに弾性的に接触するように構成されている。
シールリング7は、環状の保持部材(不図示)によって接続部材3の内周面3bに保持されるようにしてもよい。図例の場合、この保持部材は、シールリング7とシールリング7との間及びシールリング7と冷却パイプ2の凸部2bとの間に設けられる。
【0024】
以上によれば、冷却パイプ2に接続部材3を組み付ける際にシールリング7が冷却パイプ2の外表面2cに程よく弾性的に接触し変形し、その弾性反力を冷却パイプ2の外表面2cに作用させることができる。従って冷却パイプ2と接続部材3との間に接続部材3が着脱自在な程度の接合力を与えることができる。
また保持部材を設けた場合は、シールリング7の動きが規制され、接続部材3を冷却パイプ2へ着脱する際に外れたり移動することを防ぐことができる。
また図1に示すように複数のシールリング7のうち、奥側(冷媒ホース側)に配されているシールリング7は段部3aに係止されることが望ましい。
これによれば、冷却パイプ2に接続部材3を組み付ける際に接続部材3を挿通方向(図1の白抜矢印方向参照)に押し込んでもシールリング7は段部3aの内側面に係止されるため、シールリング7の移動を阻止することができる。
【0025】
接続部材3のパイプ接続端部30には、平面視して略C型形状からなる抜け止め部材6が設けられる。
なお、抜け止め部材6の構成及びこれが差し込まれるパイプ接続端部30の構成は図3(a)及び(b)を参照しながら、後に詳しく説明する。
【0026】
インバータケース1の挿通孔10に装着されるシール部材5は、挿通孔10の形状に合わせて環状またはU字状に形成され、挿通孔10に嵌め込まれるシール部50と、接続部材3に弾性的に接触するリップ部51とを備えている。シール部材5は、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム等のゴム材、エラストマー、合成樹脂等からなる。
図に示すシール部50は、筒状に形成され、その両端部には径方向外向きに延び、抜け止めとなる立壁部50bが形成されている。また上ケース1a及び下ケース1bと弾性的に接触するシール部50の外周面には環状で且つ断面視において凸状のビード部50aが複数周方向に形成されている。
【0027】
リップ部51は、インバータケース1の外側に突き出るようにシール部50の端部付近の内面に形成されている。
リップ部51の基部には、冷却パイプ2及び接続部材3の求心方向に付勢するスプリング材5aが前記基部の外側から嵌め合わされているものとしてもよい。
リップ部51の形状は特に限定されるものではないが、少なくともその先側52aが接続部材3の端部、図例ではパイプ接続端部30で覆われるように径方向内向きに斜めに延びるように形成されている。
図例のリップ部51は、図1に示すようにパイプ接続端部30に覆われる先側52aを有した主リップ52と、冷却パイプ2の外表面2cに弾性的に接触する複数の補助リップ53と、冷却パイプ2の径方向外方に凸状に厚肉に形成された厚肉部54とを備えている。主リップ52は、厚肉部54の接続部材3側からパイプ接続端部30と冷却パイプ2の外表面2cとの隙間まで延出して形成されている。
【0028】
以上の構造によれば、シール部材5と接続部材3とが図例のように非接触の状態(図1の拡大図参照)となっていても、主リップ52の先側52aが接続部材3のパイプ接続端部30で覆われている。従って例えば接合部4に水が高圧噴射されるような場合でも、直接主リップ52の先側52aが噴射されることがない。
また図例のように起立片部31aを備えたものとすれば、この起立片部31aの存在が、水等の浸入を防ぐさらなる防護壁となる。従って、リップ部51の主リップ52の先側52aが水圧によってめくれあがることが抑えられ、インバータケース1内への水等の浸入を確実に防ぐことができる。
さらにリップ部51の補助リップ53は、シール部材5内に圧入される冷却パイプ2の外表面2cに弾性的に接触するように形成されているので、上述のような水の噴射を受けリップ部51が振動しても冷却パイプ2を保持するとともにインバータケース1内への水等の浸入を阻止することができる。
【0029】
そして、図例のようにリップ部51の基部にガータースプリング等のスプリング材5aを設けたものとすれば、スプリング材5aによってリップ部51の基部が冷却パイプ2及び接続部材3の求心方向に締め付けられ、接合部4をさらに強固にシールすることができる。
またスプリング材5aがリップ部51を求心方向に締め付けることにより、冷却パイプ2をより安定して保持することができる。
さらにスプリング材5aで付勢することにより、冷却パイプ2が傾いて軸がずれても接合部4のシールが保たれる。
そして冷却パイプ2と接続部材3との間を流通する冷媒の漏れも防ぐことができ、このように接合部4のシール性が向上するので、インバータケース1自体の搭載場所の自由度を広げることができる。
【0030】
図2〜図5は、本発明に係るシール構造の第2実施形態を示している。
この実施形態のシール構造は、リップ部51が接続部材3によって押圧されている点及びパイプ接続端部30に起立片部31aが形成されていない点で上述の例と異なる。
なお、上述の実施形態と共通する部分には共通の符号を付し、その説明は省略する。
【0031】
図2に示す接続部材3の冷却パイプとの接続側は、冷却パイプ2における凸部2bの外径と略同一の内径としたパイプ接続端部30と、径方向外向きに延びる鍔部31とを備えている。
パイプ接続端部30と鍔部31との角部32は、図例のようにテーパー形状またはR加工することが望ましい。角部32が直角に近い形状だとリップ部51が破断しやすくなるからである。
シール部材5の構成、形状は図1に示す実施形態と同様である。
【0032】
接続部材3のパイプ接続端部30には、図3(b)に示すように平面視して略C型形状に形成され、合成樹脂等からなる抜け止め部材6が設けられる。抜け止め部材6はパイプ接続端部30の側部から、接続部材3の内周面3bと冷却パイプ3の外表面2cとの間に差し込まれる一対の内周側爪部60と、パイプ接続端部30の外周面30bに嵌め合わされる一対の外周側爪部61とを備えている。またパイプ接続端部30には内周側爪部60が差し込まれる差込開口部30a(図3(a)参照)が設けられている。
【0033】
抜け止め部材6は、冷却パイプ2に接続部材3を組み付けた後、接続部材3の差込開口部30aに内周側爪部60が差し込まれるように取り付けられる。接続部材3に取り付けられる際には、外周側爪部61は接続部材3の外周面30bに当たって一旦外向き方向(拡径方向)に押し広げられながら、嵌め合わされ、接続部材3の外周面30bに嵌め合わされたときには、外周側爪部61に元の形状に戻ろうとする内向き方向(縮径方向)の力が作用する。
これにより、抜け止め部材6の内周側爪部60は、冷却パイプ2の凸部2bとシール部材5における主リップ52との間に挟まれた状態になるとともに、外周側爪部61は、接続部材3の鍔部31に係止された状態となるので、ストッパー機能を発揮し、上述の挿通方向(図1の白抜矢示方向)とは逆向きの力が作用しても、接続部材3が容易に外れてしまうことを防止することができる。
【0034】
以上の構造によれば、接続部材3による押圧力でリップ部51の先側52aがパイプ接続端部30と冷却パイプ2の外表面2cとの間に形成される隙間に押し込まれて覆われ露出しない状態となるので、直接リップ部51の先側52aが噴射されることがなく上述の隙間がシールされるので、インバータケース1内への水等の浸入をより一層確実に防ぐことができる。
またリップ部51の厚肉部54は、接続部材3の角部32に弾性的に接触しその弾性反力をして強固に角部32に密着した状態に組み付けられるので、上述のような水の噴射を受けてもリップ部51の振動の伝達を緩和するとともに、この厚肉部54においても水等の浸入を防ぐことができる。
【0035】
図4は、図2に示すシール構造の変形例を示している。この例では、シール部材5に環状の補強部材55が設けられ、この補強部材55の外周にシール部50が固着されている。
補強部材55は金属材、硬質の合成樹脂材、剛性を備えたその他の材料等からなり、補強部材55の形状は特に限定されるものではないが、図例のものは、リップ部51の形成側端部を内向きに折り曲げて形成された断面略L字状のものを示している。シール部50の補強部材55への固着は接着剤等によって固着されるものとしてもよいが、加硫接着によりなすものとすれば、両者を強固に固着することができる。
【0036】
これによれば、シール部材5の挿通孔10への嵌合力を剛性のある補強部材55によって強めることができる。従ってリップ部51の弾性的な当接が安定的になされるので、冷却パイプ2の振動等に対するリップ部51の追従性及び冷却パイプ2の保持性をより向上させることができる。
その他の構成は前記と同様であるから、共通部分に同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0037】
図5は、図4の例とはさらに異なるシール構造の変形例を示している。この例では、接続部材3のパイプ接続端部30と鍔部31との角部32がテーパー状に形成された傾斜面32aとされている。
またここに示す鍔部31は上述の例のものより厚みが厚く形成されており、傾斜面32aは、鍔部31からパイプ接続端部30に向かって次第に径が小さくなるように形成されている。そして冷却パイプ2と接続部材3の組み付け時において、この傾斜面32aには、リップ部51の厚肉部54が弾性的に接触した状態とされ、主リップ52の先側52aはパイプ接続端部30と冷却パイプ2の外表面2cとの間に形成される隙間に押し込まれた状態となっている。
【0038】
これによれば、角部32がテーパー状に形成されているので、冷却パイプ2と接続部材3とが組み付けられる際にリップ部51を接合部4にスムーズに誘導することができる。
従って、主リップ52の先側52aは上述の隙間に配置され、厚肉部54はしっかりと接続部材3の角部32に弾性的に接触した状態に導くことができるので、リップ部51の各部位52〜54は、所望するシール機能を発揮することができる。
その他の構成は前記と同様であるから、共通部分に同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0039】
図6は、本発明に係るシール構造の第3実施形態を示している。この実施形態のシール構造は、接続部材3の鍔部31には、接続部材3の軸方向で且つ挿通孔10に向かって突出する凸壁部35が形成されている点で上述の例と異なる。
なお、上述の実施形態と共通する部分には共通の符号を付し、その説明は省略する。
図6に示す接続部材3の角部32は、テーパー状とされ図5と同様の傾斜面32aを備えており、冷却パイプ2と接続部材3とを組み付けた状態において、リップ部51の厚肉部54は傾斜面32aに弾性的に接触する。
【0040】
図例の接続部材3の凸壁部35は、接続部材3を冷却パイプ2に組み付け、接合した際にこの凸壁部35がシール部50のインバータケース1外側の立壁部50bに接触するように形成されている。
このように形成された凸壁部35を設けることにより、角部32以外に接続部材とシール部材5との接触を増やすことができるので、シール性を向上させることができる。
凸壁部35は、環状に連なって形成されたものとしてもよいし、部分的に形成したものとしてもよい。
以上の構造によれば、凸壁部35の存在が、水等の浸入を防ぐさらなる防護壁となり、上述のような高圧噴射される水等の浸入を効果的に防ぐとともに、スプリング材5aのみが外れてしまうことも防止できる。
【0041】
なお、リップ部51の形状は、図例に限定されるものではない。例えば主リップ52が短く形成され、主リップ52の先側52aが冷却パイプ2の外表面2cに弾性的に接触していなくてもよい。
このような場合でも、凸壁部35が立壁部50bに接触するように形成されているので、水等の浸入を防ぐことができる。
その他の構成は前記と同様であるから、共通部分に同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0042】
図7〜図10は、本発明に係るシール構造の第4実施形態を示している。この実施形態のシール構造は、シール部50は、凸壁部35に弾性的に当接されるように形成された外周リップ56をさらに備えている点で上述の例と異なる。
なお、上述の実施形態と共通する部分には共通の符号を付し、その説明は省略する。
図7に示すように外周リップ56は撓んだ状態で凸壁部35に弾性的に接触するように構成されている。
【0043】
外周リップ56は、シール部50に形成された立壁部50bのうち、インバータケース1外側の立壁部50bから分岐するように凸壁部35に向かって延出して形成されている。外周リップ56は、外方向に向かって湾曲しており、凸壁部35の挿通孔10と対向する端面35aに弾性的に接触した状態とされる。
主リップ52の形状は、図例に限定されるものではなく、主リップ52が短く形成されてもよい点は第3の実施形態と同様である。
以上の構造によれば、外周リップ56の存在が、水等の浸入を防ぐさらなる防護壁となり、上述のような高圧噴射される水等の浸入を効果的に防ぐとともに、スプリング材5aのみが外れてしまうことも防止できる。
【0044】
図8は、図7に示すシール構造の変形例を示している。この例では、外周リップ56の先側が内向きに湾曲した状態で凸壁部35の内周面35bの角部に弾性的に接触している。外周リップ56の長さは、図例のように、凸壁部35の内周面35bの角部に接触する程度としてもよいし、主リップ52に近接する程に延出して形成されたものとしてもよい。
この例における凸壁部35の突出度合いは、外周リップ56の先側が内向きに湾曲した状態で凸壁部35の内周面35bに当接するので、インバータケース1外側の立壁部50bに接触しない程度に突出したものとしてもよい。また図6の例で説明したように、凸壁部35の突出度合いを立壁部50bに接触する程度に突出したものとしてもよい。
この場合も主リップ52の形状は、図例に限定されるものではなく、主リップ52が短く形成されてもよい点は第3の実施形態と同様である。
その他の構成は前記と同様であるから、共通部分に同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0045】
図9は、図7に示すシール構造の変形例を示しており、図8に示す変形例とは異なる例である。この例では、外周リップ56が凸壁部35の外周面35c側へ延出して形成され、外周リップ56の先側は鍔部31における挿通孔10側の端面に弾性的に接触している。
この場合も主リップ52の形状は、図例に限定されるものではなく、主リップ52が短く形成されてもよい点は第3の実施形態と同様である。
その他の構成は前記と同様であるから、共通部分に同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0046】
図10は、図7に示すシール構造の変形例を示しており、図8及び図9に示す変形例とはさらに異なる例である。この例では、外周リップ56の先が二股に分かれており、外周リップ56は、凸壁部35の外周面35c側に配設される外側片56aと、凸壁部35の内周面35b側に配設される内側片56bとを備えている。そして、接続部材3によってリップ部51が押圧されることにより、外側片56aと内側片56bの間に凸壁部35が挟まった状態で押圧され、それぞれの先側が鍔部31における挿通孔10側の端面に弾性的に接触する。
この場合も主リップ52の形状は、図例に限定されるものではなく、主リップ52が短く形成されてもよい点は第3の実施形態と同様である。
その他の構成は前記と同様であるから、共通部分に同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0047】
尚、前記実施形態では、本発明のシール構造が適用される対象として、ハイブリッド駆動装置におけるインバータケース1に貫装される冷却パイプ2の外表面2cと挿通孔10との間をシールするシール構造を例に採って述べたが、これに限定されるものではない。例えばコンバータ等、発熱を伴う電子機器が収容されたケースに貫装されるパイプと接続部材との接合部におけるシール構造に適用できる。また図1、図2の例以外は、シール部材5が補強部材55を有している例について述べたが、これもシール部50の主たる構成材料としての弾性材自体が保形性を備えたものである場合には、図1、図2と同様に不要とされ、スプリング材5aも必須の部材ではない。さらに、ハウジングの例として示したインバータケース1は、分割されたものに限定されるものではなく、一部材で構成されたものとしてもよい。そして、冷却パイプ2の形状も円筒形に限定されず、角形状のものであってもよく、この場合は、挿通孔10、接続部材3の形状もこれに合わせて形成される。
【符号の説明】
【0048】
1 インバータケース(ハウジング)
10 挿通孔
2 パイプ(冷却パイプ)
3 接続部材
30 パイプ接続端部(端部)
30a 差込開口部
31 鍔部
35 凸壁部
5 シール部材
5a スプリング材
50 シール部
51 リップ部
52a 先側
6 抜け止め部材
60 内周側爪部
61 外周側爪部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングに形成された挿通孔から突き出た状態で設けられたパイプの外表面と、前記挿通孔との間をシールするシール構造であって、
前記パイプは、前記挿通孔に嵌め込まれるシール部と、前記パイプの前記外表面に弾性的に接触するリップ部とを備えたシール部材に挿通され、前記シール部が前記挿通孔に嵌め込まれた状態で前記パイプに接続部材が組み付けられ、前記リップ部の先側が前記接続部材の端部で覆われていることを特徴とするシール構造。
【請求項2】
請求項1に記載のシール構造において、
前記リップ部が前記接続部材によって押圧されていることを特徴とするシール構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のシール構造において、
前記接続部材の端部には径方向外向きに延びる鍔部が形成され、
前記リップ部が前記端部と前記鍔部との角部に弾性的に当接するように形成されていることを特徴とするシール構造。
【請求項4】
請求項3に記載のシール構造において、
前記角部は、テーパー状に形成されていることを特徴とするシール構造。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載のシール構造において、
前記鍔部には、前記接続部材の軸方向で且つ前記挿通孔に向かって突出する凸壁部が形成されていることを特徴とするシール構造。
【請求項6】
請求項5に記載のシール構造において、
前記シール部材は、前記凸壁部に弾性的に当接するように形成される外周リップをさらに備えていることを特徴とするシール構造。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のシール構造において、
前記接続部材の端部には、平面視して略C型形状からなり、該端部の側部から、前記接続部材の内周面と前記パイプの外表面との間に差し込まれる内周側爪部と、該端部の外周面に嵌め合わされる外周側爪部とを備えた抜け止め部材が設けられるとともに、前記端部には前記内周側爪部が差し込まれる差込開口部が設けられていることを特徴とするシール構造。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のシール構造において、
前記リップ部の基部には、求心方向に付勢するスプリング材が前記基部の外側から嵌め合わされていることを特徴とするシール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−82881(P2012−82881A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228149(P2010−228149)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000225359)内山工業株式会社 (204)
【Fターム(参考)】