説明

シール構造

【課題】ボルトの緩みを極力防止することができ、同時に止水性も確保することができ、更に径方向に小型化することができるシール構造を得る。
【解決手段】樹脂製のリアスポイラ10の取付座22には、固定ボルト32の頭部36の大径部36Aが係合されている。この固定ボルト32の軸部38の平滑部38Aには、ワッシャ40及びシールワッシャ42が挿嵌されている。シールワッシャ42はその外周部及び内周部に第1のシール部及び第2のシール部を備えており、バックドアパネル12の取付孔30の周囲との止水、固定ボルト32との止水を行っている。また、固定ボルト32の頭部36の小径部36Bは、金属製のワッシャ40及びシールワッシャ42のワッシャ本体を介してバックドアパネル12に当接されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、シールワッシャに関する技術が開示されている。簡単に説明すると、シールワッシャは、リング板状に形成されたワッシャ本体を備えている。さらに、ワッシャ本体の内周側には、環状に形成されたゴム製のシールリップが一体成形されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−226692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記先行技術による場合、ボルトが挿通する車両パネルの孔の周縁部にバリが形成されていると、シールリップがバリによって損傷を受けてシール切れが生じる可能性がある。また、取付部品を車両パネルにボルトで固定する際の孔の位置ずれをシールリップで対応しようとすると、シールリップが径方向に大型化する。その一方で、ボルト締結後のボルトの緩みを防止する観点からは、メタルタッチさせて軸力を確保する構造にすることが望ましいが、孔の位置ずれ対応も両立させるとなると、ワッシャのサイズやボルト頭部のサイズが更に径方向に大型化することになり、部材効率が悪化する。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、ボルトの緩みを極力防止することができ、同時に止水性も確保することができ、更に径方向に小型化することができるシール構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明に係るシール構造は、頭部が樹脂成形品に係合され、軸部が金属製の車両パネルに形成された取付孔に挿通されると共に貫通端部にナットが螺合される固定ボルトと、環状に形成されると共に前記固定ボルトの軸部に挿入され、前記固定ボルトの頭部と前記車両パネルとに直接又は金属部材を介して面当たりする金属製のワッシャ本体と、このワッシャ本体の外周側に設けられると共に弾性材料によって形成され前記車両パネルに圧接される第1のシール部と、前記ワッシャ本体の内周側に設けられると共に弾性材料によって形成され前記固定ボルトの頭部の下面及び軸部の外周面の少なくとも一方に圧接される第2のシール部と、を含んで構成されたシールワッシャと、を有している。
【0007】
請求項2記載の本発明に係るシール構造は、請求項1記載の発明において、前記固定ボルトの頭部と前記ワッシャ本体との間には前記金属部材が配置されており、当該金属部材は前記シールワッシャとは異なる第2のワッシャとされている、ことを特徴としている。
【0008】
請求項3記載の本発明に係るシール構造は、請求項1又は請求項2記載の発明において、前記第1のシール部及び前記第2のシール部は、前記ワッシャ本体に一体的に成形されている、ことを特徴としている。
【0009】
請求項4記載の本発明に係るシール構造は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の発明において、前記ワッシャ本体は、リング板状に形成されると共に外周部と内周部とで軸方向に段差が形成され更に周方向の一部において外周部と内周部とを軸方向に連通する連通部が形成されており、前記第1のシール部と前記第2のシール部とは前記連通部に配設されたシール連結部を介して相互に繋がっている、ことを特徴としている。
【0010】
請求項5記載の本発明に係るシール構造は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の発明において、前記固定ボルトの頭部は、軸部側が基端側よりも小径とされた段差形状とされており、 前記固定ボルトの頭部と前記樹脂成形品との間には、当該固定ボルトの軸方向及び径方向のそれぞれに隙間が設定されている、ことを特徴としている。
【0011】
請求項6記載の本発明に係るシール構造は、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の発明において、前記樹脂成形品の内部には、側部に前記固定ボルトの頭部を挿入するための挿入口を有し、底部に前記挿入口と連通されて前記固定ボルトを貫通させるための切欠が形成されたブロックがインサート成形されている、ことを特徴としている。
【0012】
請求項7記載の本発明に係るシール構造は、請求項6記載の発明において、前記ブロックは、天板部と、この天板部に重ねられ前記固定ボルトの頭部が天板部との間に挿入される受け部と、を含んで構成された金属製の部材として構成されている、ことを特徴としている。
【0013】
請求項8記載の本発明に係るシール構造は、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の発明において、前記樹脂成形品は車両のリアスポイラであり、前記車両パネルはバックドアである、ことを特徴としている。
【0014】
請求項1記載の本発明によれば、固定ボルトがナットに螺合されると、樹脂成形品が車両パネルに締結される。この状態では、シールワッシャのワッシャ本体の外周部に設けられた第1のシール部が車両パネルに圧接されるため、ワッシャ本体と車両パネルとの間が止水される。また、ワッシャ本体の内周部に設けられた第2のシール部がワッシャ本体と固定ボルトの頭部の下面及び軸部の外周面の少なくとも一方に圧接されるため、固定ボルトとワッシャ本体との間が止水される。その結果、樹脂成形品の表面や車両パネルの表面を伝った雨水等の水が取付孔を通って車両パネルの内側に浸入するのを防ぐことができる。
【0015】
ここで、上記のようにワッシャ本体の外周部に第1のシール部が設けられているため、仮に車両パネルの取付孔の周縁部にバリが形成されていたり、取付孔の形成位置にずれが生じていたとしても、第1のシール部が損傷を受けることはない。従って、止水性は担保される。また、同様の理由から、先行技術のようにシールリップや固定ボルトの頭部が径方向に大型化することもない。
【0016】
さらに、固定ボルトの締結状態では、金属製のワッシャ本体を介して或いはワッシャ本体と金属部材の両方を介して、固定ボルトの頭部が車両パネルに面当たりする。このため、ボルト締結後に、車両走行時の路面入力や空力等によって、固定ボルトの軸力が低下して固定ボルトが緩むといったことが非常に起こり難くなる。
【0017】
請求項2記載の本発明によれば、固定ボルトの頭部とワッシャ本体との間には金属部材が配置されており、更にその金属部材は前述したシールワッシャとは異なる第2のワッシャとされている。このため、固定ボルトに要求される軸力を伝達するための座面の大きさは第2のワッシャ側で規定される。よって、固定ボルトを径方向に更に小型化することができる。
【0018】
請求項3記載の本発明によれば、第1のシール部と第2のシール部がワッシャ本体に一体的に成形されているため、三者が別個独立に設けられる場合に比べて、シールワッシャがより小型化される。また、第1のシール部及び第2のシール部がワッシャ本体から剥離しにくくなる。
【0019】
請求項4記載の本発明によれば、ワッシャ本体は外周部と内周部とで軸方向に段差が形成されたリング板状に形成されている。さらに、第1のシール部と第2のシール部とはワッシャ本体に形成された連通部に配設されたシール連結部を介して相互に繋がっている。このため、第1のシール部及び第2のシール部を別々にワッシャ本体に固定する場合に比べて、第1のシール部及び第2のシール部のワッシャ本体への支持強度が増す。
【0020】
請求項5記載の本発明によれば、固定ボルトの頭部が段差形状とされており、固定ボルトの頭部と前記樹脂成形品との間には、当該固定ボルトの軸方向及び径方向のそれぞれに隙間が設定されている。このため、樹脂成形品と車両パネルとの熱膨張差により両者間に伸びや縮みが発生した場合に、その際に生じる摩擦力が固定ボルトに伝達されないようにすることが可能となる。
【0021】
請求項6記載の本発明によれば、樹脂成形品の内部にはブロックがインサート成形されている。ブロックには挿入口と切欠が形成されているため、固定ボルトの頭部をブロックの側部の挿入口から挿入しつつ、底部の切欠から残った部分を突出させればよい。このようにすることにより、固定ボルトとブロックとの間に、樹脂成形品と車両パネルとの熱膨張差等に起因した外力を逃がすための隙間を容易に確保することができる。
【0022】
請求項7記載の本発明によれば、ブロックが金属製とされ天板部と受け部とを含んで構成されているため、ブロック全体を薄くできる。従って、樹脂成形品の厚さが薄い場合に好適である。
【0023】
請求項8記載の本発明によれば、リアスポイラがバックドアに取付けられるに際して、上記のシール構造が適用される。従って、雨水等が締結部からバックドア内に浸入するのを防ぐことができる。また、ボルトの緩みが生じ難いので、リアスポイラを中心としたフォルムが良好に維持されると共に、車両走行時に異音等も生じ難い。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、請求項1記載の本発明に係るシール構造は、ボルトの緩みを極力防止することができ、同時に止水性も確保することができ、更に径方向に小型化することができるという優れた効果を有する。
【0025】
請求項2記載の本発明に係るシール構造は、固定ボルトの小型化を図ることができるという優れた効果を有する。
【0026】
請求項3記載の本発明に係るシール構造は、シールワッシャの小型化を図ることができると共に安定的なシール性能を確保することができるという優れた効果を有する。
【0027】
請求項4記載の本発明に係るシール構造は、より高いシール性能が得られるという優れた効果を有する。
【0028】
請求項5記載の本発明に係るシール構造は、熱膨張差に起因した固定ボルトの緩みが生じないようにすることができるという優れた効果を有する。
【0029】
請求項6記載の本発明に係るシール構造は、ブロックをインサート成形により設けるため、インジェクション成形品よりも安価に作ることができるという優れた効果を有する。
【0030】
請求項7記載の本発明に係るシール構造は、高さ方向の寸法を抑えた意匠に対応することができ、意匠の自由度を上げることができるという優れた効果を有する。
【0031】
請求項8記載の本発明に係るシール構造は、バックドアへのリアスポイラの取付後の状態において、止水性の確保及び異音の抑制又は防止を図ることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第1実施形態に係るリアスポイラのバックドアへの取付構造を示す図3の1−1線に沿った縦断面図である。
【図2】図1の締結部を拡大して示す拡大断面図である。
【図3】リアスポイラがバックドアの上端部に取付けられた状態を車両後方側から見て示す外観斜視図である。
【図4】(A)はリアスポイラを車両前方下側から見た状態で示す拡大斜視図であり、(B)は(A)のP線矢視部の拡大図である。
【図5】図1に示されるシールワッシャを一部破断して示す斜視図である。
【図6】(A)はシールワッシャの平面図であり、(B)は(A)の(B)−(B)線に沿った縦断面図である。
【図7】第2実施形態に係るリアスポイラがバックドアの上端部に取付けられた状態を車両後方側から見て示す外観斜視図である。
【図8】インサートブロックと締結具を示す分解斜視図である。
【図9】第2実施形態に係るリアスポイラのバックドアへの取付構造を示す図7の9−9線に沿った縦断面図である。
【図10】図9の10−10線に沿った縦断面図である。
【図11】インサートブロックの変形例を示す図9に対応する縦断面図である。
【図12】図11のQ線矢視部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
〔第1実施形態〕
以下、図1〜図6を用いて、本発明に係るシール構造が適用された第1実施形態について説明する。なお、図1示される矢印FRは車両前方側を示しており、又矢印UPは車両上方側を示している。さらに、矢印INは車両幅方向内側を、又矢印OUTは車両幅方向外側をそれぞれ示している。
【0034】
図1、図4及び図5に示されるように、この第1実施形態では、リアスポイラ10のバックドアパネル12への取付構造に本発明に係るシール構造が適用されている。まず、リアスポイラ10の全体構造について概説した後、シール構造について詳述する。
【0035】
樹脂成形品としてのリアスポイラ10は、車両パネルとしてのバックドアパネル12の上端部に車両幅方向に沿って配設されている。リアスポイラ10は、平面視で見た場合に前端部がルーフパネル14の後端部に沿うように車両幅方向に直線状に形成され、後端部が車両後方側に凸となるように湾曲した曲線状に形成された長尺状の樹脂部材として構成されている。なお、このリアスポイラ10は、インジェクション成形によって形成されている。
【0036】
また、リアスポイラ10は、構造的には、側断面視で見た場合に下方と前方が開放された略C字状に形成された樹脂製のカバー16と、このカバー16の内側に装着されてカバー16を支持する樹脂製のインナ部材18と、を含んで構成されている。なお、カバー16は、熱溶着によっててインナ部材18に固定されている。
【0037】
インナ部材18の上壁部18Aには、車両幅方向に沿って所定の間隔で取付座22が形成されている。図4(A)、(B)に示されるように、取付座22は車両上方側が開放された略箱体状に形成されており、車両前後方向に沿って平行に配置された左右一対の側壁部22Aと、これらの側壁部22Aを三面構成で車両幅方向に繋ぐ上壁部22B、前壁部22C及び底壁部22Dと、を備えている。上壁部22Bと前壁部22Cは、側面視で車両前方側に突出するV字状を成すように面の向きが設定されている。このうち、前壁部22Cは車両前方斜め下方を向くように形成されており、その中央部には車両幅方向に沿って切り込まれた切欠としてのスリット24が形成されている。また、取付座22における一方の側壁部22Aと前壁部22Cとの接続部位は、当該一方の側壁部22Aと前壁部22Cとの稜線に沿って切り欠かれている(以下、この部分を「挿入口26」と称す。)。これにより、挿入口26とスリット24とが相互に連通されている。また、この挿入口26が形成されたことにより、取付座22の外部空間と前壁部22Cの裏面側の空間(取付座22の内部空間)とが相互に連通されている。
【0038】
次にシール構造について詳細に説明する。図1及び図2に示されるように、バックドアパネル12には、取付座22と車両前後方向に対向する位置に凹部28が形成されている。この凹部28の底壁部28Aには、取付座22のスリット24と対向する位置に取付孔30が形成されている。リアスポイラ10は、取付座22のスリット24に装着された金属製の固定ボルト32を取付孔30に挿通させて、凹部28の底壁部28Aの裏面側から金属製のナット34を螺合させることにより、バックドアパネル12の上端部に締結固定されている。
【0039】
図2に示されるように、固定ボルト32は、大径部36A及び小径部36Bから成る頭部36と、外周面が平滑面とされた平滑部38A及び外周面に雄ねじが形成されたねじ部38Bから成る軸部38と、によって構成されている。大径部36Aは固定ボルト32の基端部に配置されており、平滑部38Aは小径部36Bの軸芯部から立設されている。また、大径部36Aの外径はスリット24のスリット幅よりも広く設定されており、小径部36Bの外径はスリット24のスリット幅よりも狭く設定されている。また、小径部36Bの軸長は取付座22の前壁部22Cの板厚よりも僅かに厚く設定されている。さらに、ねじ部38Bの外径は取付孔30の内径よりも小さく設定されている。
【0040】
上述した平滑部38Aには第2のワッシャとしての金属製のワッシャ40及びシールゴムが一体成形されたシールワッシャ42がこの順に挿嵌されている。図2、図5及び図6に示されるように、シールワッシャ42は、リング板状(環状)に形成されて軸芯部にボルト挿通孔43が形成された金属製のワッシャ本体44を備えている。ワッシャ本体44は段差形状に形成されており、上面側に配置される外周部44Aと下面側に配置される内周部44Bとの間には段差が形成されている。さらに、ワッシャ本体44における外周部44Aの内周縁には、周方向に所定の間隔(一例として、90度間隔)で複数の連通部46が形成されている。連通部46はシールワッシャ42の軸方向に見て略円形に形成されており、ワッシャ本体44を貫通する貫通孔とされている。また、外周部44Aの下面側には、周方向に沿って延在する第1の凹溝48が形成されている。同様に、内周部44Bの上面側には、周方向に沿って延在する第2の凹溝50が形成されている。
【0041】
上記ワッシャ本体44の外周部44Aの下面側には、ゴム製の第1のシール部52が一体的に配設されている。第1のシール部52の下面側は波形の断面形状とされており、これにより複数条のリップ部52Aが同心円状に形成されている。また、第1のシール部52の内周側には、ワッシャ本体44の外周部44A側へ突出して第1の凹溝48に弾性的に係合される第1の凸状部52Bが一体に形成されている。
【0042】
また、ワッシャ本体44の内周部44Bの上面側には、ゴム製の第2のシール部54が一体的に配設されている。第2のシール部54の上部内周縁側には、ワッシャ本体44の内周部44Bから離間する方向へ環状に突出する1条のリップ部54Aが一体に形成されている。さらに、第2のシール部54の外周側には、ワッシャ本体44の内周部44B側へ突出して第2の凹溝50に弾性的に係合される第2の凸状部54Bが一体に形成されている。
【0043】
さらに、連通部46にもゴムが充填されており、このゴムによって第1のシール部52と第2のシール部54とが相互に連結されている。以下、連通部46内に充填されるゴムを「シール連結部56」と称す。
【0044】
図2に示されるように、上記構成のシールワッシャ42がワッシャ44と共に固定ボルト32の平滑部38Aの外周部に挿通され、ねじ部38Bにナット34が螺合されることにより、リアスポイラ10がバックドアパネル12に取り付けられている。この状態では、固定ボルト32の頭部36の大径部36Aの下面がリアスポイラ10の取付座22のスリット24の周縁部24Aに僅かな隙間57をあけて係止可能に配置されている。また、頭部36の小径部36Bは円柱状に形成されており、この小径部36Bが一端が開放された長孔形状のスリット24内に納められる構成であるため、必然的に小径部36Bはスリット24の長手方向に所定の隙間58(図4(B)参照)が設定されている。また、頭部36の小径部36Bの下面は、金属製のワッシャ40の上面40Aに面接触状態で当接されている。さらに、ワッシャ40の下面40Bは、ワッシャ本体44の外周部44Aの上面に面接触状態で当接されている。また、ワッシャ本体44の内周部44Bの下面は、バックドアパネル12の凹部28の底面28Bに面接触状態で当接されている。さらに、ナット34の上端面はバックドアパネル12の下面に当接されている。すなわち、固定ボルト32の頭部32は、ワッシャ40及びシールワッシャ42を介してバックドアパネル12にメタルタッチで当接されている。
【0045】
さらに上記の状態では、第1のシール部52のリップ部52Aがバックドアパネル12の凹部28の底面28Bに弾性的に圧接されている。これにより、ワッシャ本体44とバックドアパネル12との間がシールされている。また、第2のシール部54のリップ部54Aがワッシャ40の下面40B及び固定ボルト32の平滑部38Aの外周面に圧接されている。これにより、固定ボルト32とワッシャ40及びシールワッシャ42との間がシールされている。
【0046】
(本実施形態の作用・効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0047】
リアスポイラ10は、一例として以下の手順で組付けられる。まず、リアスポイラ10の各取付座22に固定ボルト32が装着される。具体的には、頭部36の大径部36Aが取付座22の挿入口26から挿入されてスリット24の端部まで挿入される。次いで、固定ボルト32の軸部38の平滑部38Aにワッシャ40及びシールワッシャ42がこの順に挿嵌される。その後、固定ボルト32のねじ部38Bをバックドアパネル12の取付孔30に挿入してナット34をねじ部38Bに螺合させる。これにより、リアスポイラ10がバックドアパネル12の上端部に取り付けられる。
【0048】
この状態では、シールワッシャ42のワッシャ本体44の外周部に設けられた第1のシール部52のリップ部52Aが、バックドアパネル12の凹部28の底面28Bに圧接される。このため、ワッシャ本体44とバックドアパネル12の凹部28の底面28Bとの間が止水される。また、ワッシャ本体44の内周部に設けられた第2のシール部54のリップ部54Aがワッシャ40の下面40Bに圧接される。また、これと同時に、第2のシール部54の内周部が径方向内側へ弾性変形して押し出され、固定ボルト32の軸部38の平滑部38Aの外周面に圧接される。これにより、固定ボルト32の頭部36側とワッシャ本体44との間が止水される。その結果、リアスポイラ10の表面やバックドアパネル12の表面を伝った雨水等の水が取付孔30を通ってバックドアパネル12の内側に浸入するのを防ぐことができる。
【0049】
ここで、上記のようにバックドアパネル12の取付孔30よりも径方向外側に、シールワッシャ42の外周部に設けられた第1のシール部52が配置されているため、仮にバックドアパネル12の取付孔30の周縁部にバリが形成されていたり、製造誤差や組付誤差等により取付孔30の位置が固定ボルト32の軸芯からずれていたとしても、第1のシール部52が損傷を受けることはない。従って、取付孔30周りの止水性は担保される。また、同様の理由から、先行技術のようにシールリップや固定ボルトの頭部が径方向に大型化することもない。
【0050】
さらに、固定ボルト32の締結状態では、金属製のワッシャ及びシールワッシャ42の金属製のワッシャ本体44を介して、固定ボルト32の頭部36の小径部36Bがバックドアパネル12に面当たりする。このため、ボルト締結後に、車両走行時の路面入力や空力等によって、固定ボルト32の軸力が低下して固定ボルト32が緩むといったことが非常に起こり難くなる。
【0051】
その結果、本実施形態によれば、固定ボルト32の緩みを極力防止することができ、同時に(締結部位の)止水性も確保することができ、更に(固定ボルト32ひいては取付座22等を)径方向に小型化することができる。
【0052】
また、固定ボルト32の頭部36とワッシャ本体44との間にはワッシャ40が配置されており、更にそのワッシャ40は前述したシールワッシャ42とは異なる第2のワッシャとされている。このため、固定ボルト32に要求される軸力を伝達するための座面の大きさは第2のワッシャであるワッシャ40側で規定される。よって、固定ボルト32を径方向に小型化することができる。その結果、本実施形態によれば、固定ボルト32の小型化を図ることができる。
【0053】
さらに、第1のシール部52と第2のシール部54がワッシャ本体44に一体的に成形されているため、シールワッシャ42がより小型化される。また、第1のシール部52及び第2のシール部54がワッシャ本体44から剥離しにくくなる。これらの結果、本実施形態によれば、シールワッシャ42の小型化を図ることができると共に安定的なシール性能を確保することができる。
【0054】
また、ワッシャ本体44は外周部44Aと内周部44Bとで軸方向に段差が形成されたリング板状に形成されており、第1のシール部52と第2のシール部54とはワッシャ本体44に形成された連通部46を介して相互に繋がっている。このため、第1のシール部52及び第2のシール部54を別々にワッシャ本体44に固定する場合に比べて、第1のシール部52及び第2のシール部54のワッシャ本体44への支持強度が増す。その結果、本実施形態によれば、より高いシール性能が得られる。
【0055】
さらに、固定ボルト32の頭部36が段差形状とされており、頭部36の大径部36A、小径部36Bとリアスポイラ10との間にボルト軸方向の隙間57(図2参照)とボルト径方向(スリット24の長手方向であり、図4(B)の矢印S方向)の隙間58が設定されている。このため、リアスポイラ10とバックドアパネル12との熱膨張差により両者間に伸びや縮みが発生した場合に、その際の摩擦力が固定ボルト32に伝達されないようにすることが可能となる。その結果、本実施形態によれば、熱膨張差に起因した固定ボルト32の緩みが生じないようにすることができる。
【0056】
また、上記のように本実施形態では、リアスポイラ10がバックドアパネル12に取付けられるに際して、上記のシール構造が適用される。従って、雨水等が固定ボルト32の締結部からバックドアパネル12内に浸入するのを防ぐことができる。また、固定ボルト32の緩みが生じ難いので、リアスポイラ10を中心としたフォルムが良好に維持されると共に、車両走行時に異音等も生じ難い。その結果、本実施形態によれば、リアスポイラ10のバックドアパネル12への取付後の状態において、止水性の確保及び異音の抑制又は防止を図ることができる。
【0057】
〔第2実施形態〕
次に、図7〜図12を用いて、本発明に係るシール構造が適用された第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分には、同一番号を付してその説明を省略する。
【0058】
図7及び図8に示されるように、この第2実施形態では、ブロー成形で形成された樹脂部材としてのリアスポイラ70にインサートブロック72をインサート成形によって埋設させている点に特徴がある。
【0059】
具体的には、図8〜図10に示されるように、インサートブロック72は樹脂製とされており、薄型の直方体形状とされている。このインサートブロック72の高さ方向中間部には、一方の側面から他方の側面へ向けて切れ込む所定幅及び所定長さの空間部74が形成されている。空間部74は、平面視で矩形状に形成されている。
【0060】
また、インサートブロック72の底部72Aには、一方の側面から他方の側面へ向けて切れ込む所定幅及び所定長さのスリット76が形成されている。スリット76の終端部は円弧状に形成されている。また、スリット76の内周対向面の一方には、底部72Aの板厚方向に延びる左右一対の突起部78が所定の間隔で一体に形成されている。各突起部78は半円柱形状に形成されており、これらの突起部78間に後述する固定ボルト80の小径部36Bとの接点がくるように位置決めされている。
【0061】
これに対応して、固定ボルト80は、空間部74内に挿入可能な方形平板状に形成された嵌合部82Aと、この嵌合部82Aの下面中央部に一体に形成された小径部36Bから成る頭部82と、平滑部38A及びねじ部38Bから成る軸部38と、によって構成されている。なお、図8には、ワッシャ40及びシールワッシャ42が装着された状態で固定ボルト80が描かれている。
【0062】
また、図9及び図10に示されるように、固定ボルト80の嵌合部82Aがインサートブロック72の空間部74に挿入された状態では、インサートブロック72と固定ボルト80の頭部82との間に、軸方向の隙間57及びスリット76の長手方向への隙間58が形成されている。
【0063】
(作用・効果)
上記構成によれば、リアスポイラ70の成形時に、インサートブロック72がインサート成形される。なお、インサートブロック72の空間部74には固定ボルト80の嵌合部82Aが予め挿入され、この状態でリアスポイラ70にインサート成形される。このようにすることにより、固定ボルト80とインサートブロック72との間に隙間57、58が容易に形成される。そして、この隙間57、58を固定ボルト80が相対移動することにより、リアスポイラ70と被締結部材であるバックドアパネル12との熱膨張差や空力等に起因した外力が逃がされ、相対滑りが生じない。その結果、本実施形態によれば、シール性の確保とすべり防止とを容易に両立させることができる。
【0064】
なお、本実施形態によれば、インサートブロック72を樹脂製としたが、これに限らず、金属製としてもよい。例えば、図11及び図12に示される実施形態では、リアスポイラ90の内部に金属製とされたインサートブロック92が埋設されている。このインサートブロック92は、矩形平板状の天板部92Aと、この天板部92Aの下面に溶接された皿状の受け部92Bとによって構成されている。上記構成によれば、インサートブロック92を上述した樹脂製のインサートブロック72よりも薄くできる。その結果、高さ方向の寸法を抑えた意匠に対応することができ、意匠の自由度を上げることができる。
【0065】
〔上記実施形態の補足説明〕
(1)上述した各実施形態では、樹脂成形品としてリアスポイラ10、70、90が車両パネルとしてのバックドアパネル12に取付けられる構成を例にして説明したが、これに限らず、他の部位に対して本発明に係るシール構造を適用してもよい。例えば、ルーフパネルの両サイドに取り付けられるラックカバーに対して本発明に係るシール構造を適用してもよい。また、バックドアパネルに取付けられるライセンスプレートガーニッシュに対して本発明を適用してもよい。
【0066】
(2)上述した各実施形態では、ワッシャ40を使用したが、これに限らず、ワッシャ40を省略してもよい。
【符号の説明】
【0067】
10 リアスポイラ(樹脂成形品)
12 バックドアパネル(車両パネル)
24 スリット(切欠)
26 挿入口
30 取付孔
32 固定ボルト
34 ナット
36 頭部
38 軸部
40 ワッシャ(第2のワッシャ)
42 シールワッシャ
44 ワッシャ本体
44A 外周部
44B 内周部
46 連通部
52 第1のシール部
54 第2のシール部
56 シール連結部
57 隙間
58 隙間
70 リアスポイラ(樹脂成形品)
72 インサートブロック
76 スリット
80 固定ボルト
82 頭部
90 リアスポイラ(樹脂成形品)
92 インサートブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部が樹脂成形品に係合され、軸部が金属製の車両パネルに形成された取付孔に挿通されると共に貫通端部にナットが螺合される固定ボルトと、
環状に形成されると共に前記固定ボルトの軸部に挿入され、前記固定ボルトの頭部と前記車両パネルとに直接又は金属部材を介して面当たりする金属製のワッシャ本体と、このワッシャ本体の外周側に設けられると共に弾性材料によって形成され前記車両パネルに圧接される第1のシール部と、前記ワッシャ本体の内周側に設けられると共に弾性材料によって形成され前記固定ボルトの頭部の下面及び軸部の外周面の少なくとも一方に圧接される第2のシール部と、を含んで構成されたシールワッシャと、
を有するシール構造。
【請求項2】
前記固定ボルトの頭部と前記ワッシャ本体との間には前記金属部材が配置されており、当該金属部材は前記シールワッシャとは異なる第2のワッシャとされている、
ことを特徴とする請求項1記載のシール構造。
【請求項3】
前記第1のシール部及び前記第2のシール部は、前記ワッシャ本体に一体的に成形されている、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のシール構造。
【請求項4】
前記ワッシャ本体は、リング板状に形成されると共に外周部と内周部とで軸方向に段差が形成され更に周方向の一部において外周部と内周部とを軸方向に連通する連通部が形成されており、
前記第1のシール部と前記第2のシール部とは前記連通部に配設されたシール連結部を介して相互に繋がっている、
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のシール構造。
【請求項5】
前記固定ボルトの頭部は、軸部側が基端側よりも小径とされた段差形状とされており、
前記固定ボルトの頭部と前記樹脂成形品との間には、当該固定ボルトの軸方向及び径方向のそれぞれに隙間が設定されている、
ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のシール構造。
【請求項6】
前記樹脂成形品の内部には、側部に前記固定ボルトの頭部を挿入するための挿入口を有し、底部に前記挿入口と連通されて前記固定ボルトを貫通させるための切欠が形成されたブロックがインサート成形されている、
ことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のシール構造。
【請求項7】
前記ブロックは、天板部と、この天板部に重ねられ前記固定ボルトの頭部が天板部との間に挿入される受け部と、を含んで構成された金属製の部材として構成されている、
ことを特徴とする請求項6記載のシール構造。
【請求項8】
前記樹脂成形品は車両のリアスポイラであり、前記車両パネルはバックドアである、
ことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のシール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−2621(P2013−2621A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137866(P2011−137866)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】