説明

シール用のゴムパッキンの取り付け構造

【課題】所定部材の突出部の外周面に、リング状のゴムパッキンを取り付けるに当り、取り付け後に突出部に適当な締め付け力が得られるようにするのに、ゴムパッキンを事前に引き伸ばす専用の装置等を要することなく、簡易、迅速なその取り付けを可能とする。
【解決手段】突出部21の外周面23のうち、先端P1から基端32に向かう一定範囲Hを、先端P1に向かって縮径する傾斜面33に形成しておく。傾斜面33の先端P1の周長をL1とし、傾斜面33の基端側の端P2の周長をL2とし、ゴムパッキン101の内周面103のうち、突出部21への嵌め込み開始側の端P3の周長を、突出部21への取り付け前にL3としたとき、これら各寸法を、L1<L3<L2の関係に保持した。ゴムパッキン101は、装置等を要せず、初期の嵌め込みができ、その後は、押込むことで、傾斜面33で拡径させることで、容易に取付けができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの部材をゴムパッキンを介してシールを保持して接合(連結)する構造に用いられる、シール用のゴムパッキンの取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、回路基板を収容する樹脂製のケース(ケース本体)には、回路基板の収容後に、その基板挿入口に樹脂製のカバーが取付けられ、内部の配線等にシール(気密又は液密)が保持されるように構成されるものがある。このようなカバーの取付けに際しては、ケース本体の基板挿入口と、カバーとの間にシール用のゴムパッキンを介在させてそれを圧縮変形することで、ゴムの弾性を利用してシールを確保する構成のものが知られている。このようなカバーのうち、ケース本体の基板挿入口を向く面に、突出状に筒状部又は凸部などの突出部を設けておき、この突出部を、ケース本体の基板挿入口の内周面に嵌め込む(内嵌)構造のものでは、その内周面と突出部の外周面との間にシール用のゴムパッキンを介在させて、シールを保持することがある。
【0003】
このようなシール構造を得るには、リング状をなすシール用のゴムパッキンを、カバーの突出部の外周面、又はケース本体の基板挿入口の内周面のいずれか一方に、周方向に沿って、事前に嵌め込み又は配置するなどして取付けておくのが普通である。このうち、ゴムパッキンを、カバーの突出部の外周面に、周方向に沿って事前に取付けておく構成のものでは、カバーの突出部の外周面にその先端側からゴムパッキンを嵌め込んで取り付けることになる。そして、このカバーの突出部を、ケース本体の基板挿入口に嵌るように押込むことになる。なお、このような基本構造を採用している文献公知技術としては、ケースにおいて外方に突出する突出部(端子台呑み込み筒部)の外周面に防水材(ゴムパッキン)を取付けておき、その外側に防水カバーを相対的に嵌め込んで取付けるようにしたものがある(例えば、特許文献1)。
【0004】
ところで、上記したようなカバーの突出部の外周面にその先端側からゴムパッキンを嵌め込んで取り付けるには、ゴムパッキンを突出部の外周面の輪郭に合うようにリング状に保持し、その外周面に嵌め、或いは、その一部を外周面に嵌めた後で、突出部の基端側に押すなどして移動させることになる。したがって、ゴムパッキンの内径又は内周面の形状が、それを周方向に引き伸ばす前、又は自由状態において、突出部の外周面の輪郭に合致する形状、寸法にあるか、その輪郭より若干、大きめで、その形状、寸法に合うように形成されていれば、ゴムパッキンの突出部への取り付けは容易にできる。
【0005】
しかし、このような寸法関係にあるゴムパッキンでは、突出部に締め付け状態で取り付けることはできない。したがって、その取り付け後のカバーを、ケース本体の基板挿入口に取り付ける工程に至るまでの運搬等の各過程において、ゴムパッキンの突出部における取り付け位置がずれてしまうことがある。また、場合によっては、カバーを取り付ける工程に至る途中で、ゴムパッキンが分離又は脱落してしまうこともある。このような場合には、その後のカバーの取り付け作業が円滑にできないか、取り付け不能の事態を招いてしまうことになる。
【0006】
一方、このようなゴムパッキンのズレや分離等の問題を解消する手段としては、ゴムパッキンが突出部に取付けられた際に、そのゴムパッキンが周方向に適量伸びる形で、突出部に取付けられるようにすればよい。このような取り付け状態にあれば、ゴムパッキンが自身の収縮力により突出部を適当な力で締め付けるためである。そして、このような取り付け状態を得るためには、取り付け前のリング状をなすゴムパッキンの内周面の内径、又は内周面の周長を、突出部の外周面の外径、又は外周面の周長より適量小さくしておけばよい。しかし、このような寸法関係にあるゴムパッキンを突出部の外周面に取付けるためには、その取り付け時において、ゴムパッキンを周方向に引き伸ばしておくか、拡径しておく手間が必要となる。
【特許文献1】特開2007−280697号公報の図10参照
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
すなわち、前記したような寸法関係のゴムパッキンを用いる場合には、それを突出部に嵌め込んで取り付けるに際しては、事前に、ゴムパッキンをその弾性に抗して周方向に引き伸ばすようにし、突出部の外周面の輪郭より一回り大きく拡径する必要がある。そして、このような拡径状態に保持したゴムパッキンを、突出部の先端寄り部位に嵌めこむように仕掛けてからその拡径状態を解除して収縮状態とし、その後、基端側の所定位置まで押込む作業となる。或いは、突出部の先端側から外嵌して、その拡径状態のまま突出部における所定位置に移動してから拡径状態を解除する、という作業になる。
【0008】
このため、ゴムパッキンの突出部に対する取り付けに際しては、ゴムパッキンの拡径手段としての拡径装置、或いは拡径工具(又はジグ)を要する。したがって、ゴムパッキンの取り付けに要する工程が増大、又は複雑化し、結果としてその取り付けコストのアップを招いてしまうといった問題があった。
【0009】
このような問題は、ゴムパッキンが取付けられる突出部が円形でなく、矩形や楕円形又は長円形などのような非円形で突出している場合において、特に問題となる。というのは、ゴムパッキンは、突出部の先端の形状(先端の輪郭形状)に合わせて拡径する必要があるため、必然的に、専用の拡径装置が必要となる場合が多いためである。しかも、このようなゴムパッキンを嵌め込んで取り付ける時には、この拡径状態を保持したゴムパッキンを、嵌め込むべき突出部の先端において、その輪郭に合致するように適宜に移動するなどして、その位置の調節をしつつ、嵌めこむことを要するため、その作業が煩雑となる。なお、こうした問題は、上記したようなカバーにおいて、シール用のゴムパッキンの取り付け構造を得る場合に限られない。すなわち、そのようなカバー以外であっても、所定部材において突出するように形成された突出部にシール用のゴムパッキンを取り付ける構造を得る場合において、同様のことがいえる。
【0010】
本発明は、こうした問題点に鑑みてなされたもので、所定部材の突出部の外周面に、その先端側からリング状をなすゴムパッキンを嵌め込んで取り付けるに当り、取り付け後において突出部に適当な締め付け力が得られるようにするのに、ゴムパッキンを事前に周方向に引き伸ばしたり、拡径するための専用の装置やジグを要することなく、簡易、迅速にその取り付けが行えるようにすることにある。そして、その目的達成のための本発明は以下の各手段である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の本発明は、所定部材において外方に突出する突出部の外周面に、その突出部の先端側からリング状をなすゴムパッキンを嵌め込んで取り付けてなるシール用のゴムパッキンの取り付け構造において、
前記突出部の外周面のうち、先端から基端に向かう一定領域が、該先端に向かって縮径するように傾斜面に形成されている一方、
前記ゴムパッキンは、前記突出部への嵌め込み開始時において、周方向に引き伸ばされることなく嵌め込み開始側の端が前記傾斜面の領域に嵌め込み可能であり、かつ、該ゴムパッキンが相対的に前記突出部の基端側に向けて押されることにより該傾斜面にて拡径されて取付けられるように形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項1におけるゴムパッキンとしては次のものが例示できる。すなわち、該ゴムパッキンは、前記突出部への嵌め込み開始時において、周方向に引き伸ばされることなく嵌め込み開始側の端又は該端寄り部位が前記傾斜面に接するように、該ゴムパッキンの嵌め込み開始側の端又は該端寄り部位における内径又は内周面の周長(周の長さ)が形成されている場合である。これは、突出部の外径寸法と、ゴムパッキンの内径寸法との関係でいうと、該傾斜面における前記先端の外径をD1とし、該傾斜面における前記基端側の端(傾斜の起点)の外径をD2とし、前記ゴムパッキンの前記突出部への嵌め込み開始側の端又は該端寄り部位における該突出部への嵌め込み前における内径をD3としたとき、D1、D2及びD3の各寸法が、D1<D3<D2の関係に保持されている場合である。
【0013】
より具体的には、例えば、突出部の外周面が円筒形であり、ゴムパッキンも円リング状に成形された自己保形性のあるものとすると、自由状態にあるゴムパッキンの内周面のうち、例えば、嵌め込み開始側の端の内径D3が、突出部の外周面のうち、傾斜面の基端側の端における外径D2より小さく、しかも、突出部の先端の外径D1より大きい場合である。また、ゴムパッキンが取付けられる突出部の外周面の輪郭が、例えば長円形や楕円形、或いは矩形である場合(以下、非円形ともいう)において、ゴムパッキン自体が極めて低硬度(柔らかい)のため、自由状態での自己保形性がない場合や、自己保形性はあるが突出部とは異なり円環状に形成されている場合には、上記関係の特定は容易でない。このような場合には、突出部の傾斜面におけるD1、D2の測定箇所における外周面に沿う各周長L1、L2と、ゴムパッキンの例えば、嵌め込み開始側の端の内周面の周長L3を、L1<L3<L2の関係が満たされるようにすればよい。
【0014】
また、本発明において突出部は、その外周面のうち、面取り状の傾斜面に形成した、先端から基端に向かう一定領域(範囲)以外は、突出方向に向けて横断面形状(輪郭)が同じとなるのが普通であるが、同じでなくともよい。すなわち、突出部が樹脂製で成形型により成形されているような場合において、抜き勾配等が付されていてもよい。
【0015】
請求項2に記載の本発明は、前記ゴムパッキンの内周面のうち、前記嵌め込み開始側の端からその反対側端に向かう一定領域が、該嵌め込み開始側の端に向かって拡径するように傾斜面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のシール用のゴムパッキンの取り付け構造である。
【0016】
そして、請求項3に記載の本発明は、前記突出部の外周面のうち、先端から基端に向かう一定領域が、該先端に向かって傾斜角αで縮径するように傾斜面に形成されている一方、
前記ゴムパッキンの内周面のうち、前記嵌め込み開始側の端からその反対側端に向かう一定領域が、該嵌め込み開始側の端に向かって傾斜角βで拡径するように傾斜面に形成されており、
傾斜角α、βが、α<βの関係に保持されていることを特徴とする、請求項1に記載のシール用のゴムパッキンの取り付け構造である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の本発明においては、その構成に基づき、ゴムパッキンを突出部に嵌め込むに当り、周方向に伸ばして拡径することなく、その嵌め込み開始側の端を、突出部の前記傾斜面の領域に嵌め込むことができる。したがって、拡径することなくその嵌め込み開始状態を得ることができる。そして、その状態のゴムパッキンを相対的に突出部の基端側に向けて押すことにより、突出部の傾斜面を利用して、くさび作用でゴムパッキンを周方向に伸ばすように拡径状に変形させながら、その取り付けを行うことができる。
【0018】
このように本発明では、ゴムパッキンを突出部に嵌め込み開始するに当っては、専用の装置やジグで拡径することなく、少なくともその嵌め込み開始側の端を、突出部の先端に形成された傾斜面に嵌め込むことができる。そして、この状態のゴムパッキンを相対的に突出部の基端側に向けて押すことで、拡径状に変形させながら、突出部へのその取り付けを行うことができる。このように、本発明によれば、別途、独立の拡径用の装置(工具)やジグ等を用いることなく、突出部の所定位置にゴムパッキンを締め付け状態で取り付けることができるため、低コストで所望とする、シール用のゴムパッキンの取り付け構造を得ることができる。
【0019】
なお、本発明においては、突出部の傾斜面における傾斜角が小さく、その突出方向の領域(寸法)が短いほど、ゴムパッキンの嵌め込み開始後の押込みが容易となるが、その反面、ゴムパッキンが突出部を締め付ける力が小さくなる。したがって、この締め付け力を高めるには、その傾斜角を大きくするか、突出部において傾斜面を設ける領域を長くして、ゴムパッキンが周方向に伸びる量を大きくする必要がある。他方、このようにする程、ゴムパッキンの押込みに要する力が大きくする必要がある。したがって、突出部の傾斜面の傾斜角、或いは、その領域寸法は、ゴムパッキンの突出部への取り付け後において必要な締め付け状態が得られるように、適宜に設定すればよい。具体的には、ゴムパッキンを構成するゴムの材質に基づく弾性や硬さ、或いは強度などとの関係で、さらには、押込みによるその取付けに支障がでない範囲で適宜に設定すればよい。
【0020】
請求項2の本発明では、ゴムパッキンの内周面における嵌め込み開始側にも傾斜面を設けたことから、嵌め込み開始が一層、容易に行えるようになり、したがって、さらにその取付けの簡易、迅速化が図られる。なお、突出部の外周面における傾斜面、及びゴムパッキンの内周面における傾斜面とも、直線状の傾斜面取りとして形成してもよいし、円弧状などの曲線面取りとして形成してもよい。
【0021】
請求項3に記載の本発明のように、傾斜角α、βが、α<βの関係に保持されているものとすることで、ゴムパッキンの突出部への嵌め込み開始が一層、容易に行えるため、より一層、その取付けの簡易、迅速化が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明を実施するための最良の形態(第1実施形態)について、図1〜図7に基いて詳細に説明する。ただし、本形態では、図1の左側に示したように、回路基板201を収容した樹脂製ケース(本体)301の基板挿入口(図1左側の開口)303を閉塞する樹脂製のカバー(蓋)11を所定部材として具体化したものである。なお、図1はこのカバー11にて、ケース301の基板挿入口303を閉塞している状態の断面図であって、カバー11における突出部21の突出方向に引いた仮想軸線Xを通るケース本体301を含む縦断面図である。
【0023】
本形態の所定部材であるカバー11は、図1に示したように、ケース本体301の基板挿入口303を向く面に、外方に向かって突出した突出部21を備えており、その突出部21の外周面23にリング状のゴムパッキン101が取り付けられている。そして、このゴムパッキン101が取り付けられたカバー11における突出部21を、ケース本体301の基板挿入口303に嵌め込む(内嵌)ことで、挿入口303がシールを保持して塞がれる構成とされている。すなわち、その嵌め込みにより、基板挿入口303の内周面305と突出部21の外周面23との間に、リング状のゴムパッキン101を介在させるように構成され、ゴムパッキン101が基板挿入口303において、その内周面305と突出部21の外周面23間にて径方向に圧縮されるようにゴムパッキン101を含む各部の寸法が後述するように設定されている。
【0024】
なお、図1に示したケース本体301は、その基板挿入口303が長円形状(又は扁平楕円形状)に形成されているため、図2に示したように、カバー11はその基部(基板部)12がケース本体301の基板挿入口303を閉塞するため、それと略同じ長円形状に形成されている。なお、図2は、カバー11を、ケース本体301の基板挿入口303を向く面の側から見た、ゴムパッキン101の取り付け前の一部省略図である。そして、カバー11は、このカバー基部12において、図1〜図3に示したように、同挿入口303に向けて、それより外周面23が1回り小さく形成された長円形状にて突出する突出部21を有しており、本例ではこの突出部21の外周面23に、リング状のゴムパッキン101が取り付けられている。なお、カバー11はその突出部21側に、詳細な説明は省略するが、ケース本体301内に収容される回路基板201の端子と接続される複数の端子金具251を挿通するための端子金具挿通部25を有している。また、図1に示したように、カバー11には、これをケース本体301の挿入口303を閉塞するように取付けた際には、その挿入口303の外周面307を覆うように、カバー基部12の外周に沿ってフード27が、突出部21の突出方向と同方向に延びる形で形成されている。さらに、詳しくは説明しないが、フード27の周方向に沿う適所には、カバー11をケース本体301に取り付けた後における分離防止用の固着片29が適数(4箇所)設けられている。また、突出部21側と反対側にはコネクタ部30が突出状に設けられている。
【0025】
さて、次に、このような所定部材であるカバー11の突出部21及びこれにゴムパッキン101が取り付けられている状態等について、さらに詳細に説明する。所定部材であるカバー11は、図2に示したように、これを突出部21が設けられた側(ケース本体301の基板挿入口303)から見ると、前記したように長円形状を呈しており、その突出部21も1回り小さい長円形状を呈している。図3は、このようなカバー11をケース本体301の基板挿入口303に取り付ける前において、その突出部21の突出方向に引いた仮想軸線Xを通る拡大縦断面図、及びその要部のさらなる拡大図である。すなわち、図3に示したように、このカバー11における突出部21は、その突出方向に引いた仮想軸線Xに平行な外周面23を有している。そして、この突出部21の外周面23には、その突出部21の先端31側からリング状をなすゴムパッキン101が取り付けられて、シール用のゴムパッキン101の取り付け構造を構成している。なお、ケース本体301の基板挿入口303を閉塞する際のカバー11は、実際には、その端子金具挿通部25に、複数の端子金具251が挿通、固着されて、同金具と回路基板201とが接続された状態に組立てられたものとなるが、説明を容易とするため、図1以外ではこれら端子金具等は省略している。
【0026】
一方、この突出部21の外周面23のうち、先端(図3右端)31から、それと反対側(図3左端側)の基端32に向かう一定領域(範囲)Hは、その先端31に向かって、所定の傾斜角(仮想軸線Xと傾斜面とのなす角度)αで縮径するように、周方向に沿って面取り状の傾斜面33に形成されている。ただし、傾斜角αは本例では、5〜45度の範囲とされている。したがって、この傾斜面33における先端P1の周長(傾斜面33と、先端(先端面)31との交差稜線の周方向に沿う長さ)をL1とし、この傾斜面33における突出部21の基端32側の端(一定領域Hにおける先端と反対側の端)P2における周長をL2とすると、L1<L2の関係に保持されている。なお、傾斜面33は、上記した仮想軸線Xを通る平面で切断した際において、凸又は凹となす円弧状等の曲線としてもよいが、本例では直線をなすように形成されている。なお、突出部21の外周外方には、上記もしたように、カバー11がケース本体301に取付けられた際に(図1参照)、その基板挿入口303の外周面307に外嵌されるフード27が設けられている。
【0027】
次に本形態におけるリング状のゴムパッキン101について詳述する。このゴムパッキン101は、突出部21の外周面23の輪郭(長円形状。図2参照)に沿うようにリング状に成形(金型成形)されたものであり、内周面103は、突出部21の外周面23へ取り付けられている状態において、その外周面23を適度の締め付け力で締め付けるように形成されている。このゴムパッキン101の内周面103の周長については、L1、L2の寸法との関係においてさらに後述する。また本形態では、ゴムパッキン101の内周面103のうち、その図示左側に位置する、嵌め込み開始側の端105からその反対側端107に向かう一定領域Gが、嵌め込み開始側の端105に向かって、上記仮想軸線Xに対し所定の傾斜角βで拡径するように面取り状の傾斜面109に形成されている。この傾斜角βは、本例では傾斜角αより、突出部21への取り付け前(自由状態)において大きく設定されている。また、本形態ではこの傾斜面109は直線状とされているが、突出部21における傾斜面33と同様に、円弧状等の曲線をなすものとしてもよい。
【0028】
なお、本例のゴムパッキン101は、その外周面23に周方向に沿って周回状に設けられた複数列のリップ111を有している。そして、図1に示したように、カバー11における突出部21が、ケース本体301の基板挿入口303に嵌め込まれた際に、突出部21に取付けられたゴムパッキン101のリップ111と、フード27との間にケース本体301の基板挿入口303側の端部が入り込み、このリップ111の先端(外周側)がケース本体301の基板挿入口303の内周面305に押付けられることで、シールが保持されるように設定されている。ただし、リップ111の図示左側には、フランジ113がリップ111より外径方向に突出するように形成されており、ケース本体301の基板挿入口303の端部にて、突出部21の突出方向に圧縮されるように設定されている。また、リップ111は、図3における右端側に向かってその外径(突出量)が小さくなるように形成されている。
【0029】
このような本形態のゴムパッキン101は、突出部21への取り付け前においては、図4、図5に示したように、内周面103、すなわち内周面103のうち、突出部21に対する嵌め込み開始側に形成された面取り状の傾斜面109の拡径開始端(図5右端)P3における周長をL3としたとき、上記したL1、L2との関係において、L1<L3<L2の関係に保持されている。なお、これらの寸法関係を図5、図7における各部位での径、D1,D2,D3で示すと、D1<D3<D2となる。したがって、このゴムパッキン101は、図3に示したように、突出部21の外周面23に、その突出部21の先端31側から嵌め込まれて、突出部21の外周面23の傾斜面33の領域Hよりも、図示左の平行状の外周面23に取り付けられているが、この取り付け状態においては、基本的に、L2−L3分、周方向に伸びている。すなわち、突出部21に取付けられたゴムパッキン101は、その分、ゴムの弾性に基づいて拡径されており、突出部21の外周面23を締め付けている。
【0030】
さて次にこのようなシール用のゴムパッキン101の取り付け構造を得る工程について、図4〜図8に基づいて説明する。すなわち、この工程においてゴムパッキン101を突出部21に取付ける際には、図4に示したように、突出部21の先端31に対応するように、ゴムパッキン101の嵌め込み開始側の端105を位置合わせする。本形態のゴムパッキン101は、突出部21の外周面23の輪郭形状に対応する形に自己保形性を有するように金型により圧縮成形されたものであるため、図4〜図6に示したように、作業者においてこのゴムパッキン101を手(図示せず)に持って、図7に示したように、突出部21の先端31又は外周面23に、嵌め込み開始側の端105を外嵌めするようにする。すると、上記したL1、L2、L3の寸法関係からして、ゴムパッキン101は、突出部21の外周面23に形成された傾斜面33に対し、内周面103における嵌め込み開始側の端105を含む部位が嵌る(図7参照)。すなわち、ゴムパッキン101の内周面103の傾斜面109の拡径開始端P3が接する形となり、初期嵌め込み状態となる。
【0031】
このように本形態では、ゴムパッキン101を、別途の専用の装置やジグを用いて拡径するまでもなく、突出部21の先端31に嵌め込みを開始することができる。なお、本例では、ゴムパッキン101のこのような嵌め込み開始をしたとき、その嵌め込み開始側の内周面103における傾斜面109の図示右端P3が、突出部21の先端31から基端32に向かって形成された傾斜面33における領域Hのうち、その先端31から概ね中間位置のところで接するように設定されている。
【0032】
そして、このような初期嵌め込み後は、図8に示したように、ゴムパッキン101を相対的に突出部21の基端32側に向けて押込むようにスライドする。こうすることで、ゴムパッキン101は突出部21の傾斜面33において、同図8に示したように、くさび作用を受けるようにして自身の弾性ないし伸縮性により伸びて、拡径し、その傾斜面33になじむように変形する。そして、その押込みを続けることで、最終的に図3に示したように基端32側に移動し、ゴムパッキン101が突出部21の外周面23を締め付けた状態のその取付けが終了する。かくして、本形態では、リング状のゴムパッキン101を、突出部21に取り付けるに当っては、格別の拡径装置等を用いることもなく、突出部21に締め付け状態を保持して、簡易にその取り付けがなされる。
【0033】
なお、その後は、このようにゴムパッキン101が突出部21に取付けられたカバー11を、その突出部21をケース本体301の基板挿入口303に押込むことで、従来と同様に、その基板挿入口303を閉塞することができる。そして、その閉塞工程に至るまでに、そのカバー11が運搬やハンドリングの過程を経るとしても、ゴムパッキン101が突出部21において移動したり、脱落することが有効に防止される。
【0034】
(第2実施形態)
次に、前記形態の変形例とでも言うべき、別例(第2実施形態)について、図9に基づいて説明する。ただし、このものは、上記した第1実施形態と、ゴムパッキン101におけるリング部の横断面(線部の切り口)形状が異なるだけである。このため、その相違点についてのみ説明し、同一部位には同一の符号を付すに止める。以下、同様である。すなわち、上記した第1実施形態では、ゴムパッキン101の内周面103のうち、嵌め込み開始側の端105からその反対側端107に向かう一定領域Gを、周方向に沿って、突出部21への取り付け前の自由状態において、その嵌め込み開始側の端105に向かって拡径するように、面取り状の傾斜面109に形成したものとして具体化した。これに対して、図9に示した別例では、ゴムパッキン120に、前記形態におけるような傾斜面109を設けないものとして具体化したものである。
【0035】
すなわち、図9に示した別例では、ゴムパッキン120を、突出部21へ嵌め込み開始する時において、それが周方向に引き伸ばされることなく、内周面103と嵌め込み開始側の端(面)105とのなす稜線P4の部位が、突出部21の傾斜面33の領域Hにおける中間点に接するように形成したものである。本例では、このような、P4における内周面103の周長をL3とし、L1<L3<L2の関係に保持するようにしたものである。したがって、この嵌め込み開始後、ゴムパッキン101は、突出部21の基端32側に向けて押されることで、傾斜面33にて拡径されて取付けられる。これにより上記第1実施形態の場合と略同様の効果が得られる。本形態は、突出部21に対するゴムパッキン120の取り付け後における締付け力が小さくてもよい場合に好適である。
【0036】
(第3実施形態)
次に、さらに第1実施形態の変形例とでも言うべき、別例(第3実施形態)について、図10に基づいて説明する。上記第1実施形態では、ゴムパッキン101の内周面103に面取り状の傾斜面109を形成し、その傾斜角βと、突出部21における傾斜面33の傾斜角αとを、α<βの関係に保持した場合を例示した。これに対して、図10に示した第3実施形態では、これとは逆に、両傾斜角を、β<αとして具体化したものである。本形態では、前記第2実施形態と同様、ゴムパッキン130の内周面103と、嵌め込み開始側の端(面)105とのなす稜線(拡径側端)P4の部位、すなわち、傾斜面109の嵌め込み開始側の端105における周長をL3としたとき、L1<L3<L2の関係に保持するようにしたものである。これにより上記第2実施形態の場合と略同様の効果が得られることは明らかである。なお、内周面103におけるその周長が小さいほど、突出部21に対するゴムパッキン130の取り付け後における締付け力が大きくなる。
【0037】
(第4実施形態)
さらに第1実施形態の変形例とでも言うべき、別例(第4実施形態)について、図11に基づいて説明する。上記第1実施形態では、ゴムパッキン101の内周面103に面取り状の傾斜面109を形成し、その傾斜角βと、突出部21における傾斜面33の傾斜角αとを、α<βの関係に保持している。そして、ゴムパッキン101の内周面103のうち、突出部21に対する嵌め込み開始側に形成された面取り状の傾斜面109の、同図右端P3における周長をL3としたとき、L1<L3<L2の関係に保持されるようにした。これに対して、本第4実施形態においては、α<βの関係を保持した上で、ゴムパッキン140の内周面103のうち、突出部21に対する嵌め込み開始側に形成された面取り状の傾斜面109の領域Gの途中位置(中間点)P5における周長をL3としたとき、L1=L3の関係に保持されるようにしたものである。すなわち、突出部21の傾斜面33における先端P1の周長L1と、ゴムパッキン140の傾斜面109の領域Gの途中位置P5における周長L3とが同じになるようにしたものである。
【0038】
このような本形態では、突出部21に対するゴムパッキン140の嵌め込み開始時においては、ゴムパッキン101が周方向に引き伸ばされることなく、嵌め込み開始側の端105が前記傾斜面33の領域Hに嵌め込まれる。したがって、その後、ゴムパッキン140は、突出部21の基端32側に向けて押されることで、突出部21の傾斜面33にて拡径されて取付けられるように形成されている。すなわち、本例では、突出部21に対するゴムパッキン140の嵌め込み開始時においては、突出部21の傾斜面33の先端P1に、ゴムパッキン140の傾斜面109の領域Gの途中位置(中間点)P5が当接して、初期嵌め込みが行われ、その後の押込みにより、突出部21の傾斜面33に沿う形で、ゴムパッキン140の嵌め込み開始側に形成された傾斜面109、及び平行な内周面103が拡径されてその取付けが行われる。本形態では、突出部21に対するゴムパッキン140の取り付け後において、大きな締付け力を確保したい場合に好適である。
【0039】
本発明のシール用のゴムパッキンの取り付け構造は、上記した各形態のものに限定されるものではない。すなわち、本発明では、突出部の外周面の先端部位に先端に向けて縮径するように傾斜面を形成しておく一方、ゴムパッキンを、突出部への嵌め込み開始時において、周方向に引き伸ばすことなく、嵌め込み開始側の端又は該端寄り部位が、突出部の傾斜面の領域に嵌め込み可能であり、かつ、そのゴムパッキンが相対的に前記突出部の基端側に向けて押されることにより前記傾斜面にて拡径されて取付けられるように形成されていればよい。したがって、その範囲において種々、変更して具体化できる。
【0040】
また、上記各形態では所定部材が、回路基板搭載用のケースの基板挿入口を閉塞するための樹脂製のカバーであり、突出部が非円筒形のものにおいて具体化したが、本発明では、所定部材はこのようなカバーに限定されるものではない。また、突出部の形状もこのようなものに限定されるものではない。本発明は、2つの部材をゴムパッキンを介してシールを保持して接合(連結)する構造であれば、上記各形態以外にも、シール用のゴムパッキンの取り付け構造として、広く適用できる。このことから明らかなように、本発明における所定部材は、シール用のゴムパッキンの取り付け構造において、ゴムパッキンが嵌め込まれて取り付けられるように形成された突出部を有していればよい。また、その突出部は、外周面にリング状のゴムパッキンが取付けられる形状、構造を有していればよく、したがって、筒状部として突出しているものである必要はなく、単なる凸部として、所定部材において突出するように形成されているものでもよい。
【0041】
また、リング状のゴムパッキンの形状、形態、構造も適宜のものとして具体化できる。上記の各形態では、ゴムパッキンのリング部の横断面(線部の切り口)形状が、外周面に複数列のリップを有するものとして具体化した。しかし、このようなものに限定されるものではないことは明らかである。図示はしないが、例えば、リング部の横断面(線部の切り口)形状が、例えば単なる四角(矩形)のものにおいても具体化できることは明らかである他、適宜の多角形を呈するものにおいて具体化できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明を所定部材をカバーとして具体化した第1実施形態を示すもので、そのカバーでケース本体の基板挿入口を閉塞している状態の断面図であって、カバーにおける突出部の突出方向に引いた1仮想軸線を通るケース本体を含む縦断面図、及びその要部拡大図。
【図2】図1の所定部材であるカバーを突出部側から見た図。
【図3】カバーをケース本体の基板挿入口に取り付ける前において、その突出部の突出方向に引いた1仮想軸線を通る拡大縦断面図、及びその要部のさらなる拡大図。
【図4】ゴムパッキンを所定部材であるカバーにおける突出部へ取り付ける前の状態を示す一部省略拡大断面図。
【図5】図4における要部の拡大図。
【図6】ゴムパッキンを所定部材であるカバーにおける突出部へ取り付ける前の状態を、ゴムパッキン側から見た斜視図。
【図7】図4において、カバーにおける突出部へゴムパッキンを取り付け始める過程を説明する図。
【図8】図7において、突出部へゴムパッキンを取り付け始めた後、押込む過程を説明する図。
【図9】ゴムパッキンを変更した第2実施形態を説明する、その取り付け前の要部拡大断面図。
【図10】ゴムパッキンを変更した第3実施形態を説明する、その取り付け前の要部拡大断面図。
【図11】ゴムパッキンを変更した第4実施形態を説明する、その取り付け前の要部拡大断面図。
【符号の説明】
【0043】
11 カバー(所定部材)
21 突出部
23 突出部の外周面
31 突出部の先端
32 突出部の外周面の基端
33 突出部の外周面の傾斜面
101,120,130,140 ゴムパッキン
103 ゴムパッキンの内周面
105 ゴムパッキンの嵌め込み開始側の端
109 ゴムパッキンの傾斜面
107 ゴムパッキンの嵌め込み開始側の端の反対側端
P1 突出部の傾斜面の先端
P2 突出部の傾斜面の基端側の端
H 突出部の外周面の先端から基端に向かう一定領域
G ゴムパッキンの嵌め込み開始側の端から反対側端に向かう一定領域
α 突出部の傾斜面の傾斜角
β ゴムパッキンの傾斜面の傾斜角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定部材において外方に突出する突出部の外周面に、その突出部の先端側からリング状をなすゴムパッキンを嵌め込んで取り付けてなるシール用のゴムパッキンの取り付け構造において、
前記突出部の外周面のうち、先端から基端に向かう一定領域が、該先端に向かって縮径するように傾斜面に形成されている一方、
前記ゴムパッキンは、前記突出部への嵌め込み開始時において、周方向に引き伸ばされることなく嵌め込み開始側の端が前記傾斜面の領域に嵌め込み可能であり、かつ、該ゴムパッキンが相対的に前記突出部の基端側に向けて押されることにより該傾斜面にて拡径されて取付けられるように形成されていることを特徴とするシール用のゴムパッキンの取り付け構造。
【請求項2】
前記ゴムパッキンの内周面のうち、前記嵌め込み開始側の端からその反対側端に向かう一定領域が、該嵌め込み開始側の端に向かって拡径するように傾斜面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のシール用のゴムパッキンの取り付け構造。
【請求項3】
前記突出部の外周面のうち、先端から基端に向かう一定領域が、該先端に向かって傾斜角αで縮径するように傾斜面に形成されている一方、
前記ゴムパッキンの内周面のうち、前記嵌め込み開始側の端からその反対側端に向かう一定領域が、該嵌め込み開始側の端に向かって傾斜角βで拡径するように傾斜面に形成されており、
傾斜角α、βが、α<βの関係に保持されていることを特徴とする、請求項1に記載のシール用のゴムパッキンの取り付け構造。

















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−135218(P2010−135218A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−311124(P2008−311124)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】