説明

シール装置及びシール装置を備えたガスタービン

【課題】隣接する部材間の間隙からのリークを抑制するために設置したシールプレートを用いたシール装置において、セグメント部材のオフセットに対応させた上、シール性能を向上させると共に、信頼性の高いシール装置を提供する。
【解決手段】上記目的を達成するために、本発明のガスタービンのシール装置においては、シールプレート50は、矩形断面をした2枚のプレート51a、51bを離間して配置しており、この両プレートを弾性体である板バネ52が接合し、さらに、プレート51a、51bからは、湾曲状弾性体53a、53bが伸び、その終端57a、57bは、シールプレート50の内方向に向かうとともに、一方のプレート終端面が、ともにδg分だけ長く製作され、そのδgの間隙を保持して、弾性体材料によって製作された側端プレート55a、55bを接合したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール装置及びシール装置を備えたガスタービンに係り、特に、圧縮空気を燃料と共に燃焼して得た燃焼ガスのエネルギーによって回転動力を得るガスタービン設備冷却翼の冷却空気のリークを抑制するのに好適なシール装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンにおいては、熱効率の向上を目的として作動ガスの高温化が図られているが、特に、作動ガス中に配置されているタービン静・動翼が高温に耐えられるように、翼内部に冷却媒体を供給している。一般に採用されている、この種のガスタービンは、空気冷却によるオープン冷却方式である。即ち、圧縮機から抽気した空気を冷却空気として用い、この空気をケーシングや、タービン内部を経由させて、翼内部に導き冷却するようにしている。そして、翼内部を冷却した後の空気は、翼外表面に設けたフィルム冷却孔や翼の後縁冷却孔等から、ガスパス中に排出される。また、静翼冷却用に導入された冷却空気の一部を、タービンホィールスペースのシール空気として分岐するが、この空気も主流ガスのイングレス抑制用としてガスパスに排出される。
【0003】
ところで、動翼シュラウドや静翼体は、セグメント構造として周方向に環状配置されるが、セグメント部材の熱伸びを考慮して、セグメント間には、周方向に間隙を有する。この間隙は、熱応力の発生防止の観点から、定格点においてもセグメント部材同士が接触しないように設計される。つまり、静翼の冷却用空気として導入されるケーシング内部外端側キャビティとガスパスは、この間隙路によって、半径方向に連通することになる。即ち、冷却空気の一部が、このセグメント間からの間隙を径由して、ガスパス中に漏洩する。所謂、リークである。同様に、静翼のダイアフラムもセグメントとして環状に構成されるが、シール空気の一部がリークすることになる。これらのリークは、それ自体が損失であると共に、ガスパスの作動ガス中へ混入することから、比較的、低温であるリーク空気の希釈による作動ガスの温度低下や、混合損失によって、タービンの出力低下を起こすため、高温化のメリットが十分に発揮できない恐れがある。
【0004】
この改善策として、一般的には、周方向に隣接するセグメントの両側対向面にシール溝を形成し、そのシール溝間に平板状シールプレートを装着して、リーク空気を抑制する手法が採られている。但し、この種のシールプレートは、近年の高温化に伴うセグメントの半径方向の熱伸び偏差によって生じるシール溝の半径方向のずれ(オフセットと呼称)に対応できない。このため、平板状シールプレートのシール溝との接触部分を円弧状に形成し、中央を薄く加工したシールプレートが開発されている。その代表例が、ドッグボーン型シールプレートであり、シールプレート外端部を楕円状に成形している(例えば、特許文献1参照)。これによって、セグメントの半径方向の熱伸び偏差によって、シール溝にオフセットが生じても、溝面で必ず接触点が確保できると共に、プレート中央部が薄肉化されているため、この部分がシール溝エッジ部と干渉することはない。さらには、弾性体である板状部材と複数の線状突起を用いたシールプレートによって、線接触線の複数化(例えば、特許文献2参照)等の改良が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】US Patent 5158430
【特許文献2】特開平10−002203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、ガスタービン設備において、冷却空気の供給経路等にシール装置を設けることは、リーク流量低減から有効な手段である。即ち、その一環であるセグメント間に装着するシールプレートは、その開発目的から、間隙間の冷却・シール空気のリークを、未然に抑制するものである。しかし、トレードオフ設計によって、プレート形状を、高温化に伴う半径方向の熱伸び偏差であるオフセットに対応させた結果、ドッグボーン型シールプレートでは、シール溝におけるシールプレートの接触状態は、従来の面接触から単線の線接触になり、当然、平板状シールプレートに比べて、リーク流量の増加が予想される。また、この課題を緩和するための板状部材と複数本の線状突起で構成されるシールプレートでは、オフセットの発生によって、一部、線状突起の面圧が上昇する利点があるが、この線状突起点を支点として、線接触を開放される線状突起部が生じる結果、リークの抑制効果が低減することがある。このように、シールプレートの開発には、リーク流量の低減と熱伸び偏差の対応という、相反する課題が含まれている。
【0007】
一方で、これらのシールプレートは、単独に配置して用いることはなく少なく、リーク発生要因となる高圧側域と低圧側域を遮断するように、複数枚のシールプレートによって領域を取り囲むように配置される。このとき、シールプレートの端部面と直交する隣接したシールプレートとの間でシール面を形成する必要があるが、互いの熱伸び差の関係で間隙が生じ、リークを増大させている。
【0008】
そこで、本発明の目的は、隣接する部材間の間隙からのリークを抑制するために設置したシールプレートを用いたシール装置において、セグメント部材のオフセットに対応させた上、シール性能を向上させ、信頼性の高いシール装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のシール装置は、板状弾性体と、前記板状弾性体の両端にそれぞれ接合されたプレートと、前記プレートのそれぞれから延びる湾曲状弾性体とを備え、向かい合う二つのシール溝に跨るように設置した際に、前記プレートと前記板状弾性体とが、前記シール溝の異なる面と、面接触面を形成するように構成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、隣接する部材間の間隙からのリークを抑制するために設置したシールプレートを用いたシール装置において、セグメント部材のオフセットに対応させた上、シール性能を向上させ、信頼性の高いシール装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例に係るガスタービンの構成を示す概念図である。
【図2】本発明の実施例に係るシール装置を適用するタービン部の断面図である。
【図3】本発明の実施例に係るシール装置の配置を示す概念図である。
【図4】本発明の実施例に係るシール装置の装着を示す静翼体の概念図である。
【図5】本発明の第1の実施例を示すシール装置の外観図である。
【図6】本発明の第1の実施例を示すシール装置のシール溝装着時の概念断面図である。
【図7】本発明の第1の実施例を示すシール装置のガスタービン運転時の状態を表す概念図である。
【図8】本発明の第1の実施例を示すシール装置のガスタービン運転時の作用を表す概念図である。
【図9】本発明の第2の実施例を示すシール装置の外観図である。
【図10】本発明の第3の実施例を示すシール装置の平面図である。
【図11】本発明の第3の実施例を示すシール装置の外観図である。
【図12】本発明の第3の実施例を示すシール装置のリーク説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔実施例〕
以下、本発明の第1の実施例を図1、図2、図3、図4、図5、図6、図7、及び、図8により説明する。図1は、本実施例に係るガスタービンの構成を示す概念図、図2は、本実施例に係るタービン部の断面図、図3は、本実施例によるシール装置の配置を示す概念図、図4は、本実施例によるシール装置の装着を示す静翼体の概念図、図5は、本発明の第1の実施例を示すシール装置の外観図、図6は、本発明の第1の実施例を示すシール装置のシール溝装着時の概念断面図、図7は、本発明の第1の実施例を示すシール装置のガスタービン運転時の状態を表す概念図、及び、図8、は本発明の第1の実施例を示すシール装置のガスタービン運転時の作用を表す概念図を示してある。各図において、同一番号は、同一の機器、或いは、部材、機能を表す。
【0013】
図1を用いて、作動ガスと冷却空気の流れからガスタービン1の全体構成を説明する。ガスタービン1は、主として多段のタービン4と、このタービンに軸連結され、燃焼用の圧縮空気を得る圧縮機2、圧縮空気を高温高圧ガスに変換する燃焼器3、及び、発電機5を備えている。圧縮機2から抽気した冷却空気は、第2段静翼を冷却するための静翼低圧冷却空気経路6a、第1段静翼を冷却するための静翼高圧冷却空気経路6b、また第1、2段動翼を冷却するための動翼冷却空気経路7を経て、各々のタービン被冷却部に供給される。
【0014】
このとき、抽気空気圧力は、各翼でのガスパス圧力に応じた値から選定しており、静翼高圧冷却空気経路6b、動翼冷却空気経路7には、圧縮機2の最終段からの抽気空気、静翼低圧冷却空気経路6aには、圧縮機2の中圧段からの抽気空気を導入する。被冷却部を冷却して熱交換した各冷却空気は、図示しない翼のフィルム冷却、或いは、翼後縁からの噴出し等として、タービン4のガスパス中に排出され、作動ガスと混合して、最終的には排気ガスとして大気に放出される。
【0015】
図2は、タービン4の2段目までの第1段静翼10、第2段静翼12a、第1段動翼11、及び、第2段動翼13を表すタービン部分断面である。各冷却空気経路6a、6b、及び7は、それぞれの被冷却部である翼に連通するが、ここでは、本実施例のシール装置を明確にするため、第2段静翼12aまわりを対象として説明する。
【0016】
静翼低圧冷却空気経路6aを径由して、ケーシング14に設けた導入孔(図示せず)を介して供給された冷却空気は、ケーシング14の外端側内部にある第2段静翼供給キャビティ8を経て、周方向に環状に配置された第2段静翼体21aに供給される。この第2段静翼体セグメント21aは、主として、外径側エンドウォール22a、第2段静翼12a、及び、内径側エンドウォール23aから成る。冷却空気は、第2段静翼体21aの図示しない冷却パスを通過するときに熱交換を行い、各エンドウォール22a、23a、第2段静翼12aを冷却するとともに、温度上昇して、ガスパス9に排出される。
【0017】
一方、第2段静翼供給キャビティ8に供給された空気の一部は、第2段静翼体セグメント21aと、第2段静翼体セグメント21aに装着されるダイアフラム16aとの間で形成されるダイアフラムキャビティ15を経て、第1段ホィール19a、スペーサー18及びダイアフラム16aで形成される第1段動翼後側ホィールスペース17aに供給された後、一部が、第1段動翼11と第2段静翼12a間のガスパスへシール空気として流れ、一部が、ダイアフラム15とスペーサー18の間で協働するシールフィン29によって流量を絞られた後、第2段ホィール19b、スペーサー18及びダイアフラム16aで形成される第2段動翼前側ホィールスペース17bに分配され、第2段静翼12aと第2段動翼13間のガスパス9中へシール空気として流れることになる。
【0018】
図3は、周方向に複数個配置される第2段静翼体セグメントの1つである第2段静翼12aを含む第2段静翼体セグメント21aとダイアフラム16aを示したものである。第2段静翼体セグメント21aの外径側エンドウォール22aには、シール溝30、31a、及びシール溝32、内径側エンドウォール23aには、シール溝33、34、及びシール溝35が、設けられている。また、ダイアフラム16aには、シール溝36、37、38、39、40、41、及びシール溝42が設けられている。
【0019】
第2段静翼体セグメント21aは、周方向に複数個を配置するものであり、互いのセグメント間には間隙を有する。従って、第2段静翼供給キャビティ8とガスパス9は、連通しており、概念的には、図中に示す第2段静翼供給キャビティ8からガスパス9へ向かう矢印方向のリーク流路が発生することになり、シール溝30、31a、32が、高圧側である第2段静翼供給キャビティ8と、低圧側であるガスパス9を遮断する形で配置している。同様に、内径側エンドウォール23aやダイアフラム16aのセグメント間にもリーク流路が存在することになるが、以下、さらに、本実施例の意図を明確にするため、シール溝31aに着目してシール装置の詳細を説明する。
【0020】
図4は、第2段静翼体セグメント21aと隣接する第2段静翼体セグメント21bを半径方向外側から眺めた投影図である。前述したとおり、第2段静翼体セグメントは、周方向に複数個のセグメントとして環状に配置されたものであり、代表的に2つの第2段静翼体セグメント21a、21bを示したものである。第2段静翼体セグメント21a、21bの間は、周方向間隙σc_coldをもたせて、組み立てられている。第2段静翼体セグメント21aの外径側エンドウォール22aに隣接対向して、第2段静翼体セグメント21bの外径側エンドウォール22bがあり、それぞれの周方向に対向した半径位置に、シール溝31aと、31bが形成される。この両者のシール溝を跨ぐことによって、周方向間隙σc_coldを塞ぐように、シールプレート50が装着されている。これによって、前記の第2段静翼供給キャビティ8からガスパス9にかけてのリーク経路が、半径方向に遮断されることになる。
【0021】
ここで、用語の定義をしておく。シール溝31aと、31bに装着されるシールプレート50を例にして、作動ガスの流入する側(図面上、左側)に、上流側終端面24を有し、逆に、作動ガスの排出される側(図面上、右側)に下流側終端面25を持つが、この上流側終端面24と下流側終端面25を結ぶ方向、即ち、プレートの両端面を結ぶ方向を、シール溝の長手方向と呼ぶ。例えば、これに倣って、シール溝32の長手方向は、図3の上下方向である。
【0022】
図5は、本実施例に係るシール装置である、シールプレート50の外観を示している。シールプレート50は、矩形断面をした2枚の長手方向に同等に延びるプレート51a、51bを離間して配置しており、この両プレートを板状の弾性体である板バネ52が、プレート51a、51bと同等に長手方向に亘って接合している。さらに、各プレート51a、51bの板バネ52が接合された面の反対面から、板状の部材である湾曲状弾性体53a、53bが延びている。また、湾曲状弾性体53a、53bは、その終端57a、57bが、シールプレート50の内方向に向かうよう湾曲して反転しており、板バネ52と同等に長手方向に亘っている。従って、長手方向の各部材の長さは、プレート40a、40b、板バネ52、及び、湾曲状弾性体53a、53bともに、同等である。
【0023】
図6は、シールプレート50を、シール溝31a、31bに跨るように設置した、組立時の断面として示している。外径側エンドウォール22aと隣接する外径側エンドウォール22bの間には、周方向間隙σc_coldが設けられており、外径側エンドウォール22a、22bのそれぞれの間隙面68a、68bに直交して、シール溝31aとシール溝31bが対向して設けられている。
【0024】
プレート51aは、シール溝31aの内径側シール面66aに面接触し、接触シール面61aを形成する。湾曲状弾性体53aは、プレート51aから延びる板バネ52とは反対方向に、プレート51aから延びて湾曲した後、外径側シール面67aに面接触して接触シール面60aを形成し、その終端57aはシール溝31aの溝深さ(図面の左右方向)の中に留まっている。同様に、プレート51bは、シール溝31bの内径側シール面66bに面接触し、接触シール面61bを形成する。また、プレート51bから延びる湾曲状弾性体53bも、外径側シール面67bに面接触して接触シール面60bを形成する。
【0025】
このように、両シール溝31a、31bに対して、プレート51a、51bと湾曲状弾性体53a、53bが、独立した形でシール溝に、シール面を形成するとともに、板バネ52によってプレート51aとプレート51bが、シール溝深さ方向に接合されている。
【0026】
このように構成された本実施例において、複数の第2段静翼体セグメントは、環状にスライドさせながら1リング状に組み込むことになるが、シールプレート50は、湾曲状弾性体のバネ力によって、シール溝に、簡単に固定された状態になるため、比較的、容易に第2段静翼体セグメントの組み立てが可能となる。
【0027】
ガスタービン1の運転とともに圧縮機2と燃焼器3で発生する高温高圧の作動ガスは、圧力が約1.6MPa、温度が1300℃程度で、タービン内部の第1段静翼10aの入口に流入する。以下、第1段動翼10bをはじめとする各動翼段で、流体エネルギーをタービンの回転エネルギーに変化させながら、圧力、温度を低下させ、約600℃で最終段動翼を流出後、排気される。この時、ガスタービン1に直結した発電機5が回転して電力を得る。
【0028】
タービン翼は、高温のガスに晒されるため、圧縮機2で得られる高圧空気の一部を抽気して冷却空気として用いる。この冷却空気は、静翼と動翼へ区分され、さらに静翼も適正圧力からの抽気となり、セグメントのひとつである第2段静翼12aへは、静翼低圧冷却空気経路6aに含まれる第2段静翼キャビティ8を経由して、第2段静翼体セグメント21に導入される。
【0029】
図7に、ガスタービン運転時のシールプレート50が概念図として示されている。ガスタービンの運転とともに、作動ガスや冷却空気を加熱源として、各ガスタービン部材は温度上昇する。その一つとして、第2段静翼体セグメント21a、21bには熱伸びが生じるが、周方向には、組立時のセグメント間隙σc_coldが、σc_hotまで狭まる。しかし、この間隙σc_hotは、ガスタービンの定格点運転においても接触しないように設計されているため零になることはない。このとき、この第2段静翼体セグメント21a、21bの動きに連動して、外径側エンドウォール22a、22b、さらには、シール溝31a、31bも、図の間隙方向に向かって移動するが、シールプレート50は、接触シール面60a、60b、61a、61bでの滑りと、板バネ52での弾性変形により、シール溝31a、31bの変位を吸収する。
【0030】
一方、第2段静翼体セグメント21a、21bは、熱流動上の熱偏差に伴う半径方向の熱伸び偏差や、作動流体力と部材の製作公差によるσrの半径方向変位が生じ、シール溝にオフセットが生じる。このオフセットによって、接触シール面60aと接触シール面60b、接触シール面61aと接触シール面61bの間で半径方向に段差を生じることになるが、この段差による変位を板バネ52が吸収するため、接触シール面60a、60b、61a、61bは、組立時と同様に、面接触シール面が保持される。
【0031】
図8のシールプレートのガスタービン運転時の作用を表す概念図を用いて、面接触シール面の保持の詳細を説明する。図8には、シール溝31a側のみ図示しているが、シール溝31b側についても同様である。前述したように、第2段静翼体セグメントに供給される冷却空気は、図示しない第2段静翼体セグメントの被冷却部を冷却した後、ガスパス9に排出するため、被冷却部での圧力損失を含めたガスパス9よりも高い圧力を、第2段静翼供給キャビティ8に供給する必要がある。
【0032】
即ち、第2段静翼供給キャビティ8の供給圧力をP1、ガスパス9の圧力をP2とすると、P1>P2の関係となる。板バネ52には、圧力P1が矢印62aとして付加され、圧力P2が矢印62bとして付加されるが、この差圧であるΔP12に、板バネ52の図示しない受圧面積を乗じた流体力の半分が、プレート51aの板バネ52の接合点に、矢印63として作用する。
【0033】
一方、湾曲状弾性体53aは、矢印64で示すバネ力によって、接触シール面60aに密着して面シールを高めるとともに、矢印65によって示すバネ反力が、プレート51aの湾曲状弾性体53aの接合点に作用する。従って、プレート51aには、流体力とバネ反力が、接触シール面61aの面シールを高めることになる。また、湾曲状弾性体53aの終端57aがシール溝の溝深さ範囲内にあるため、バネ反力を十分に生かす事ができ、面シールの密着性を高めることができる。
【0034】
従って、確実に面接触が保持されることから、この間でのリークが抑制される。即ち、第2段静翼供給キャビティ8とガスパス9の間のセグメント間隙σc_hotによる連通が、運転中の常時に亘り、遮断されるため、この間からのリーク流量が低減できる。
【0035】
以上に説明したセグメント間に装着したガスタービンのシール装置において、板バネの両端にそれぞれ接合された2枚のプレートと、2枚のプレートからそれぞれ延びる湾曲状弾性体を接合して構成することにより、シールプレートや第2段静翼体セグメントの組立性の効率向上と、オフセットに対応したリーク流量低減は勿論のこと、オフセットによって起こりうるシールプレートの変形、或いは、プレートを介したシール溝エッジに掛かる応力の発生を防止し、損傷破壊を未然に防ぐことのできる信頼性の高いシール装置を提供できる。
【0036】
なお、本実施例では、第2段静翼体の外径側エンドウォールに設けた、一対の対向するシール溝に装着したシールプレートを実施例として説明したが、外径側エンドウォールのみならず、他に設けたシール溝に対しても、本シールプレートを適用すれば、さらに大きな効果が期待できるのは自明である。更に、オフセットによって生じた段差σrが、マイナスのσrとするオフセットでも、同様の効果が成立するのは当然である。
【0037】
また、シールプレートについての製作方法について言及していないが、プレート、板バネ、及び、プレートを単体として製作した後、これらを組み上げる方式とする本実施例では、特に、湾曲状弾性体と板バネ、或いは、プレートと湾曲状弾性体の接合に関して、この接合部からのリーク発生を防止する手法を講じておくのは常識であり、例えば、圧接やレーザ溶接等を用いて接合、封止しておくことは、本発明の主旨から当然である。さらに、プレートを矩形断面としたが、接触シール面の確保を最重視して、板バネ、或いは、湾曲状弾性体の接合に支障をきたさない断面形状であれば、これに限定されないことは明らかである。
【0038】
次に、本発明の第2の実施例を図9により説明する。図9は本発明の第2の実施例を示すシールプレートの外観図を示しており、第1の実施例と同様に、シール溝31a、31bへの装着とする。各図において、同一番号は、第1、2の実施例と同一の機器、或いは、部材、機能を表す。
【0039】
シールプレート50は、長手方向に延びる1対の湾曲状弾性体53a、53bと蛇腹プレート54が一体成形され、蛇腹プレート54側の湾曲状弾性体53a、53bの直線部外側面58a、58bに、矩形断面をした2枚の長手方向に同等に延びるプレート51a、51bを接合したものである。このとき、湾曲状弾性体53a、53bの終端57a、57bは、シールプレート50の内方向に向かっている。さらに、長手方向の各長さは、ほぼ同等である。
【0040】
このように構成された本実施例において、ガスタービンの運転とともに、第2段静翼体セグメント21a、21bの動きに連動して、外径側エンドウォール22a、22b、さらには、シール溝31a、31bも、変位するが、シールプレート50は、接触シール面60a、60b、61a、61bでの滑りと、蛇腹プレート54での弾性変形により、変位を吸収する。一方、第2段静翼体セグメント21a、21bは、熱流動上の熱偏差に伴う半径方向の熱伸び偏差や、作動流体力と部材の製作公差によるσrの段差が生じ、シール溝にオフセットが生じる。このオフセットによって、接触シール面60aと接触シール面60b、接触シール面61aと接触シール面61bの間で半径方向に段差を生じることになるが、この段差による変位を蛇腹プレート54が吸収するため、接触シール面60a、60b、61a、61bは、組立時と同様に、面接触シール面を保持することができる。
【0041】
一方、湾曲状弾性体53a、53bと蛇腹プレート54が一体成形されており、接合部をもたないため、この部材に関するリークは、接触シール面60a、60bでの極小流量を除いて、発生することはない。厳密には、長手方向端からのリークがあるが、本発明の主旨とは別形態のリークとなるため、ここでは言及しない。
【0042】
以上に説明したセグメント間に装着したガスタービンのシール装置において、離間した2枚のプレートに、一体化した蛇腹プレートと湾曲状弾性体を接合して構成することにより、オフセットに対応したリーク流量低減は勿論のこと、その流量低減の確実性を高めるとともに、オフセットによって起こりうるシールプレートの変形、或いは、プレートを介したシール溝エッジに掛かる応力の発生を防止し、損傷破壊を未然に防ぐことのできる信頼性の高いシール装置を得ることができ、その効果を十分に発揮できるガスタービンを提供できる。
【0043】
本実施例では、プレート間の接合にあたる弾性体を蛇腹プレートとし、且つ、湾曲状弾性体と一体化して説明したが、プレート自体も一体化すれば、さらに、リーク流量の低減効果に確実性が増すのは自明である。
【0044】
次に、本発明の第3の実施例を図3、図10、図11及び、図12により説明する。図3は本発明によるシールプレートの配置を示す概念図、図10は本発明の第3の実施例を示すシールプレートの平面図、図11は本発明の第3の実施例を示すシールプレートの外観図及び、図12は本発明の第3の実施例を示すシールプレートのリーク説明図を示してある。各図において、同一番号は、第1の実施例と同一の機器、或いは、部材、機能を表す。
【0045】
図3に示すとおり、シールプレートは、高圧側と低圧側を遮断する形で、複数枚、配置されており、本実施例では、シール溝38、39、40に装着するシールプレートに着目して説明する。これらのシール溝は、第1段動翼後側ホィールスペース17aに供給したシール空気のガスパス側9へのリーク抑制として配置されたものである。
【0046】
図10を用いて、本実施例によるシールプレート50の外観構成を説明する。シールプレート50は、矩形断面をした2枚のプレート51a、51bを離間して配置しており、この両プレート51a、51bに板バネ52が、接合されている。さらに、プレート51a、51bからは、板バネ52の接合側とは反対方向に、それぞれ湾曲状弾性体53a、53bが伸び、その終端57a、57bは、シールプレート50の内方向に向かっている。
【0047】
プレート51aとプレート51bは、長手方向に長さが相違しており、プレート51bの上流側終端面27aと下流側終端面27bを基準として、プレート51aの上流側終端面26aと下流側終端面26bは、ともにδg分だけ長く製作されている。長手方向における各長さは、板バネ52、湾曲状弾性体53a、53bが、プレート51bに、同等である。尚、プレート51a、51bの材料は、ダイアフラム16aに用いる材料よりも、大きな線膨張係数を有する。
【0048】
プレート51aの上流・下流終端面26a、26bには、それぞれ、プレート51bの上流・下流終端面27a、27b方向に向かう、δgの間隙を保持して、弾性体材料によって製作された側端プレート55a、55bが接合される。この側端プレート55a、55bの図面の奥行き方向に当たる高さは、プレートの接触シール面を基準とする湾曲状弾性体の最大高さよりも、小さく設定されている。尚、δgは、湾曲状弾性体の半径方向の動きを妨げない程度の微小間隙である。
【0049】
図11に、シール溝39(図示せず)に装着されるシールプレート50と、その幅方向に直交して隣接するシール溝38(図示せず)に装着されるシールプレート56aの組み合わせ配置とした組立外観図を示す。シールプレート50の側端プレート55aとシールプレート56aの間には、δaの間隙を有してシール溝に組み込まれており、δaは、ダイアフラム16a、シールプレート50、及び、シールプレート56aの熱伸び量から与えられる。側端プレート55aと協働する、直交して隣接するシールプレート56aのシール面は、平板である。ここでは、側端プレート55aに着目して説明したが、シールプレート50の側端プレート55bについても同様である。
【0050】
このシールプレート配置による組み込み状態での、第1段動翼後側ホィールスペース17aからガスパス9に向かう概念的なリーク経路を説明しておく。リーク経路には、図示しないシール溝とプレート51bで形成する図示しない接触シール面を径由して、図示しないシール溝と湾曲状弾性体53bで形成する図示しない接触シール面からの矢印71aで示す経路、図示しないシール溝とプレート51aで形成する図示しない接触シール面を径由して、図示しないシール溝と湾曲状弾性体53aで形成する図示しない接触シール面からの矢印71bで示す経路、側端プレート55aとシールプレート56aで形成する図示しない接触シール面からの矢印71cで示す経路、及び、側端プレート55bと図示しないシールプレートで形成する図示しない接触シール面からの矢印71dで示す経路に加えて、接合時に設定したδgによる図示しない側端プレート55a側の経路と、側端プレート55b側の矢印72bで示す経路がある。
【0051】
図12を用いて、この側端プレート55a、55b近傍でのリーク経路を、概念的ではあるが、詳細に説明する。図12は、図11でのシールプレート50の中央部からプレート51a方向をみた断面図として示している。シール溝39にシールプレート50、直交して隣接するシール溝38、40に、シールプレート56a、56bが、装着されている。この場合、主要なリーク経路は、側端プレート55aとシールプレート56aの間のδaによる矢印71cで示すリーク経路、側端プレート55aとシールプレート56bの間のδaによる矢印71dで示すリーク経路、側端プレート55aでのδgによる矢印72aで示すリーク経路、及び、側端プレート55bでのδgによる矢印72bで示すリーク経路となる。
【0052】
このように構成された本実施例において、ガスタービンの運転とともに、ダイアフラムの動きに連動して、シール溝も変位する。このとき、リーク経路71aと71bについては、周方向変位、オフセットに対して、板バネ52が、その変位を吸収する。また、シール溝との間で、プレート、湾曲状弾性体の流体力とバネ力により、強固な接触シール面60a、60b、61a、61bが形成され、リーク経路71a、71bは遮断されることになる。
【0053】
一方、シールプレート50の側端部では、ダイアフラムよりも大きな線膨張係数を有するプレート51a、51bとダイアフラムとの熱伸び差によって、間隙δaは縮小され、最終的には零となる。即ち、シールプレート56aと側端プレート55aの間で平板状接触シール面75a、シールプレート56bと側端プレート55bの間で平板状接触シール面75bが形成されるため、リーク経路71c、71dは遮断される。
【0054】
さらに、ガスタービンの定格運転状態まで、この熱伸び差によるプレート51a、51bの熱伸びは進行することになるが、シールプレート56a、56bのシール溝との接触シール面76a、76bが熱伸びの絶対的な拘束点となる。そのため、シールプレート56a、56bのプレート厚みを減じた、接触シール面75a、75bが、シールプレート50の拘束条件となり、プレート51a、51bは、それぞれに、側端プレート55a、55bを押し込む形で伸びる。この結果、プレートの熱伸び力によって側端プレート55a、55bは弾性変形するが、材料の変形部分は、接触シール面75a、75bでの拘束により、シールプレート50の内方向に向かうことになる。換言すれば、側端プレート55a、55bが、δgの間隙を覆うことになり、このリーク経路72a、72bを遮断する。
【0055】
以上に説明したセグメント間に装着したガスタービンのシール装置において、板バネの両端に接合された2枚のプレートと、プレートのそれぞれから延びる湾曲状弾性体とを備え、一方のプレートの長手方向端面に側板プレートを設ける構成にすることにより、オフセットに対応したリーク流量低減は勿論のこと、直交して隣接するシールプレートとの間で生じるリークを未然に防止するシール装置を得ることができる。また、隣接するシールプレート自体のリークを抑制できることから、信頼性の高いシール装置を提供できる。
【0056】
また、側端プレート55a、55bの高さが、プレートの接触シール面を基準とする湾曲状弾性体の最大高さよりも小さく設定されているため、シール溝への取付けも容易である。
【0057】
本実施例では、プレート51bの上流側終端面27aと下流側終端面27bを基準として、プレート51aの上流・下流終端面26a、26bが、ともに長くなるとしたが、例えば、真逆、或いは、勝手違いに長さが相違して構成しても、本実施例の効果を妨げないのは自明である。また、側端プレート55a、55bの取付けに関して、一定の微小間隙δgを保持するとしたが、最終的には、弾性体が、この空隙を覆うため、一定間隙として限定された条件になるものではない。
【0058】
また、直交して隣接するシールプレートとして、説明したが、これが傾斜したとしても、これに対応した側端プレートの取付けと側板プレートの形状変更で、容易に対応できるのは明らかである。また、ダイアフラムの一部のシールプレートをもって、実施例としたが、同様のシール溝構成部分に適用すれば、その効果は、さらに、期待できる。尚、本実施例では、側端プレートの材料には言及していないが、素材としての弾性力のみでなく、エキスパンドメタルを内蔵するような構造的弾性体でも構わない。
【符号の説明】
【0059】
1 ガスタービン
4 タービン
31a シール溝
50 シールプレート
51a、51b プレート
52 板バネ
53a、53b 湾曲状弾性体
54 蛇腹プレート
55a、55b 側端プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状弾性体と、前記板状弾性体の両端にそれぞれ接合されたプレートと、前記プレートのそれぞれから延びる湾曲状弾性体とを備え、向かい合う二つのシール溝に跨るように設置した際に、前記プレートと前記シール溝の第一の面とが面接触面を形成し、前記湾曲状弾性体と前記シール溝の第二の面とが面接触面を形成するように構成されたシール装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシール装置において、前記湾曲状弾性体は、前記板状弾性体の反対方向に延びた後に湾曲して反転する形状を有し、前記シール溝に設置した際に、前記プレートとの接合部を始端とした場合の終端が、前記シール溝の溝深さの範囲内となるように構成されたことを特徴とするシール装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のシール装置において、少なくとも、前記板状弾性体と前記湾曲状弾性体とを一体成形品としたことを特徴とするシール装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のシール装置において、前記プレートのうち一方の長手方向における端面から延び、他方の前記プレートの端面上に間隙を有するように構成された側端プレートを備え、
該側端プレートは、前記プレートの前記シール溝の第一の面と前記面接触面を形成する面を基準とした前記湾曲状弾性体の最大高さの範囲内の高さであって、弾性体材料から成ることを特徴とするシール装置。
【請求項5】
請求項4に記載のシール装置において、前記側端プレートと面接触を形成するためのシールプレートを有し、該シールプレートと前記側端シールプレートとで平板状の面接触面が形成されるよう構成されていることを特徴とするシール装置。
【請求項6】
圧縮機、燃焼器、及び、静翼と動翼を有するタービンで構成され、前記タービンの周方向について構成部材が複数のセグメントに分割されているガスタービンにおいて、
隣り合う前記セグメント同士が互いに対向する間隙面のそれぞれに、向かい合うようにシール溝が設けられ、
板状弾性体と、前記板状弾性体の両端にそれぞれ接合されたプレートと、前記プレートのそれぞれから延びる湾曲状弾性体とを備えたシール装置が、向かい合う二つの前記シール溝に跨るように設置され、
前記プレートと前記シール溝の第一の面とが面接触面を形成し、前記湾曲状弾性体と前記シール溝の第二の面とが面接触面を形成していることを特徴とするガスタービン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−24222(P2013−24222A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162763(P2011−162763)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】