説明

シール装置

【課題】有効なシール時間を正確に把握することができると共に、必要なシール時間を確保するための調整を簡単に行うことができるシール装置を提供する。
【解決手段】固定側シールヘッド11と、この固定側シールヘッド11との間に合成樹脂シートSを挟み込む可動側シールヘッド12と、この可動側シールヘッド12を、ロードセル13を介して、シール位置に対して接近離反可能に支持する可動支持体14と、サーボモータ16を駆動源としたボールねじ機構によって可動支持体14を駆動する駆動手段15と、サーボモータ16を制御する制御手段17とを備えており、制御手段17は、可動側シールヘッド12が合成樹脂シートSに接触している間の可動側シールヘッド12の停止時間をシール時間として把握し、少なくとも、可動側シールヘッド12が合成樹脂シートSに接触している間は、サーボモータ16のトルクを一定値に保持するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、パウチ容器等の製袋に使用される、合成樹脂シートのシール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のシール装置としては、例えば、図6(a)、(b)に示すようなものがある。このシール装置50は、同図に示すように、重ね合わされた合成樹脂シートSを沿わせる固定側シールヘッド51と、この固定側シールヘッド51と対向するように配置され、合成樹脂シートSを固定側シールヘッド51との間に挟み込む可動側シールヘッド52と、この可動側シールヘッド52に固定された支持ロッド53と、この支持ロッド53に沿って移動可能に支持された支持プレート54と、可動側シールヘッド52と支持プレート54との間で、支持ロッド53に外嵌されたコイルばね55と、支持プレート54にロードセル56を介して固定された可動体57と、この可動体57を固定側シールヘッド51に対して進退させるクランク機構58とを備えており、このクランク機構58が、可動体57を固定側シールヘッド51側に押し出すことによって、可動体57と共に移動する可動側シールヘッド52が合成樹脂シートSに接触した後、可動体57がコイルばね55を圧縮して可動体57だけが固定側シールヘッド51側に移動することで、固定側シールヘッド51に沿わせた合成樹脂シートSが可動側シールヘッド52によって加圧され、ヒートシールされる。
【0003】
ところで、こういったシール装置50では、ロードセル56によって検知される可動側シールヘッド52の加圧力が設定圧力以上に保持されている時間を有効なシール時間とし、この有効なシール時間が十分確保されるように、シール装置の調整を行うことになる。なお、上述したコイルばねに代えてエアシリンダを採用し、このエアシリンダ内の圧力を検知することによって、シール時間を把握するシール装置もある。
【0004】
【特許文献1】特開平09−183174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したように、圧縮したコイルばね55の反発力を利用して加圧する場合は、使用するコイルばね55のバネ定数の初期バラツキや経時的な変動があり、そのバラツキや変動に応じて、コイルばね55の圧縮量を調整しなければならず、調整作業が面倒であると共に、コイルばね55の摺動部で経時的に不具合が生じるといった問題がある。また、エアシリンダの空気圧を利用して加圧する場合も、空気圧の変動に伴い、加圧力が変動するといった問題がある。
【0006】
また、上述したように、クランク機構58等によって可動側シールヘッド52を移動させる場合、図7に示すように、可動側シールヘッド52が合成樹脂シートSに接触した後、合成樹脂シートSから離反するまでの間にロードセル56によって検出される可動側シールヘッド52の加圧力(圧縮したコイルばね55の反発力に起因した加圧力)が、停止しようとする可動側シールヘッド52のイナーシャの影響を受けてしまい、有効なシール時間を正確に把握することができないという問題がある。特に、高速で運転を行う場合は、可動側シールヘッド52の移動速度を急速に加速したり、減速したりする必要があることから、上述した問題が顕著に現れることになる。
【0007】
そこで、この発明の課題は、有効なシール時間を正確に把握することができると共に、必要なシール時間を確保するための調整を簡単に行うことができるシール装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明は、重ね合わせた合成樹脂シートをシールヘッドで加熱押圧することによってヒートシールするシール装置であって、前記シールヘッドを、前記シールヘッドが合成樹脂シートを押圧するシール位置に対して接近離反可能に支持する可動支持体と、前記可動支持体を駆動する、サーボモータを駆動源とする駆動手段と、前記サーボモータを制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記サーボモータからのフィードバックパルス信号に基づいて、前記シールヘッドの速度を検出する速度検出部を備え、前記シールヘッドが合成樹脂シートに接触している間で前記シールヘッドの速度が0である時間をシール時間として把握するようになっており、少なくとも、前記シール時間内は、前記制御手段によって、前記サーボモータのトルクが一定値に保持されていることを特徴とするシール装置を提供するものである。
【0009】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明のシール装置において、前記制御手段が、前記サーボモータからのフィードバックパルス信号に基づいて、前記シールヘッドの位置を検出する位置検出部を備えており、前記シール時間内で、前記位置検出部によって検出された前記シールヘッドの位置が予め設定されている前記シール位置からずれている場合は、正常にヒートシールが行われていないと判断するようになっている。
【0010】
また、請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明のシール装置において、前記制御手段が、前記シール時間が変化した場合は、正常にヒートシールが行われていないと判断するようになっている。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、請求項1に係る発明のシール装置では、少なくとも、シールヘッドが合成樹脂シートに接触している間は、制御手段が、サーボモータのトルク(押圧力)を一定値に保持し、シールヘッドが合成樹脂シートに接触している間のシールヘッドの停止時間をシール時間として把握しているので、圧縮したコイルばねの反発力やエアシリンダの空気圧を利用して加圧し、シールヘッドのイナーシャの影響を受ける圧力センサによって検出されるシールヘッドの押圧力が設定値を上回っている間の時間をシール時間としている従来のシール装置とは異なり、有効なシール時間を正確に把握することができると共に、必要なシール時間を確保するための調整も簡単に行うことができる。
【0012】
また、圧縮したコイルばねの反発力やエアシリンダの空気圧を利用して加圧するシール装置では、シールヘッドと合成樹脂シートとの間に異物が進入していたり、合成樹脂シート自体に皺が発生したり、さらには、シールヘッド自体が摩耗していても、それを検知することができず、シール不良が発生するといった問題があるが、請求項2に係る発明のシール装置では、制御手段の位置検出部によって検出されたシールヘッドの位置が予め設定されているシール位置からずれている場合は、正常にヒートシールが行われていないと判断するようになっているので、シール不良の発生を最小限に抑えることができる。
【0013】
さらに、請求項3に係る発明のシール装置では、シール時間が変化した場合は、正常にヒートシールが行われていないと判断するようになっているので、シール不良の発生を最小限に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。図1に示すように、この発明のシール装置1は、パウチ容器等を製袋する際に、重ね合わせた合成樹脂シートS同士を相互にヒートシールするものであり、重ね合わされた合成樹脂シートSを沿わせる固定側シールヘッド11と、この固定側シールヘッド11と対向するように配置され、合成樹脂シートSを固定側シールヘッド11との間に挟み込む可動側シールヘッド12と、この可動側シールヘッド12を、ロードセル13を介して、シール位置に対して接近離反可能に支持する可動支持体14と、サーボモータ16を駆動源としたボールねじ機構によって可動支持体14を駆動する駆動手段15と、サーボモータ16を制御する制御手段17とを備えている。
【0015】
前記制御手段17は、サーボモータ16からのフィードバックパルス信号に基づいて、可動側シールヘッド12の速度を検出する速度検出部17aと、サーボモータ16からのフィードバックパルス信号に基づいて、可動側シールヘッド12の位置を検出する位置検出部17bと、サーボモータ16のトルクを検出するトルク検出部17cとを備えており、可動側シールヘッド12が合成樹脂シートSに接触している間で可動側シールヘッド12の速度が0である可動側シールヘッド12の停止時間をシール時間として把握するようになっている。
【0016】
以下、制御手段17によるサーボモータ16の駆動制御について、図2に示すタイミングチャートを参照しながら説明する。まず、可動側シールヘッド12が固定側シールヘッド11から最も離反している初期位置S0から、可動側シールヘッド12が固定側シールヘッド11との間に合成樹脂シートSを挟み込むシール位置SBの手前に設定された所定位置SAまで可動側シールヘッド12を移動させるが、この間(t0〜t3)、制御手段17は、サーボモータ16に対して位置制御を行う。
【0017】
従って、可動側シールヘッド12は、移動開始時点(t0)から増速し、その後(t1〜t2)は一定の高速度で移動しながら、所定位置SAの手前で減速し始め(t2)、所定位置SAで停止することになる(t3)。そして、可動側シールヘッド12の増速時、減速時には、イナーシャによりサーボモータ16が+側のトルク、−側のトルクをそれぞれ発生している。
【0018】
このようにして、可動側シールヘッド12を所定位置SAで一旦位置決めした後、再び、可動側シールヘッド12を固定側シールヘッド11側に移動させるが、この間(t3〜t5)、制御手段17は、サーボモータ16のトルクが一定値に保持されるように、サーボモータ16に対してトルク制御を行う。
【0019】
従って、可動側シールヘッド12は、移動再開時点(t3)から増速し、その後は一定の低速度で移動しながら、シール位置SBにおいて、固定側シールヘッド11との間に合成樹脂シートSを挟み込んだ時点(t4)で停止することになるが、可動側シールヘッド12が移動を停止した状態においても、サーボモータ16のトルクが一定値に保持されているので、合成樹脂シートSが所定の圧力で加熱押圧されてヒートシールされることになる。
【0020】
そして、トルク制御の開始時点(t3)から所定時間が経過すると、可動側シールヘッド12を逆方向に移動させて初期位置S0に戻すが、この間(t5〜t8)、制御手段17は、サーボモータ16に対して位置制御を行う。なお、可動側シールヘッド12を逆方向に移動させて初期位置S0に戻すタイミングは、初期位置S0における可動側シールヘッド12の移動開始時点(t0)を基準に決定してもよい。
【0021】
従って、可動側シールヘッド12は、移動再開時点(t5)から増速し、その後(t6〜t7)は一定の高速度で移動しながら、初期位置S0の手前で減速し始め(t7)、初期位置S0で停止することになる(t8)。そして、可動側シールヘッド12の増速時、減速時には、前回の位置制御のときとは逆に、イナーシャによりサーボモータ16が−側のトルク、+側のトルクをそれぞれ発生している。
【0022】
また、制御手段17は、シール時間内に、位置検出部17bによって検出された可動側シールヘッド12の位置が予め設定されている所定位置(シール位置SB)からずれている場合は、正常にヒートシールが行われていないと判断するようになっている。
【0023】
さらに、制御手段17には、ロードセル13から圧力検出信号が入力されるようになっており、可動側シールヘッド12が移動しているときにロードセル13によって検出される力とサーボモータ16のトルクとを比較することで、駆動系に異常が発生しているか否かを判断するようになっている。
【0024】
以上のように、上述したシール装置1では、制御手段17が、可動側シールヘッド12が合成樹脂シートSに接触している間の可動側シールヘッド12の停止時間をシール時間として把握し、少なくとも、シール時間内は、サーボモータ16のトルクを一定値に保持しているので、圧縮したコイルばねの反発力やエアシリンダの空気圧を利用して加圧し、シールヘッドのイナーシャの影響を受ける圧力センサによって検出されるシールヘッドの押圧力が設定値を上回っている間の時間をシール時間としている従来のシール装置とは異なり、有効なシール時間を正確に把握することができると共に、必要なシール時間を確保するための調整も簡単に行うことができ、しかも、シール圧力が必要以上に高くなることもないので、ヒートシールされる合成樹脂シートSに傷やタマ等が発生することもない。
【0025】
また、シール時間内において、位置検出部17bによって検出された可動側シールヘッド12の位置が予め設定されている所定位置(シール位置SB)からずれている場合は、正常にヒートシールが行われていないと判断するようになっているので、例えば、位置検出部17bによって検出された可動側シールヘッド12の位置がシール位置SBよりも手前の場合に想定される、固定側シールヘッド11や可動側シールヘッド12と合成樹脂シートSとの間に異物が混入していたり、合成樹脂シートS自体に皺が発生していたりすることに起因したシール不良や、逆に、位置検出部17bによって検出された可動側シールヘッド12の位置がシール位置SBを越えている場合に想定される、固定側シールヘッド11や可動側シールヘッド12が摩耗していることに起因したシール不良の発生を未然にに防止することができる。
【0026】
また、トルク制御を行う場合は、何らかの理由によってボールねじに螺合しているナットの移動抵抗が大きくなる等の異常が発生すると、シール圧力が低下するおそれがあるが、上述した各実施形態では、可動側シールヘッド12が移動しているときにロードセル13によって検出される力とサーボモータ16のトルクとを比較することで、駆動系に異常が発生しているか否かを判断するようになっているので、こういったシール圧力の低下に伴うシール不良の発生を未然に防止することができる。
【0027】
なお、この実施形態では、可動側シールヘッド12を所定位置SAで一旦停止させて位置決めしているが、これに限定されるものではなく、例えば、図3に示すタイミングチャートのように、可動側シールヘッド12を所定位置SAで一旦停止させることなく、シール位置SBまで連続的に移動させるようにしてもよい。
【0028】
また、上述した各実施形態では、可動側シールヘッド12を初期位置S0からシール位置SBの手前の所定位置SAまで移動させる際、制御手段17が、サーボモータ16に対して位置制御を行っているが、これに限定されるものではなく、例えば、図4に示すタイミングチャートのように、初期位置S0に位置している可動側シールヘッド12の移動開始時点(t0)から、合成樹脂シートSのヒートシールを完了して可動側シールヘッド12をシール位置SBから後退させる時点(t5)までの間、トルク制御のみを行うようにしてもよい。
【0029】
また、上述した各実施形態では、少なくとも、可動側シールヘッド12が合成樹脂シートSに接触している間は、制御手段17がトルク制御を行っているが、これに限定されるものではなく、例えば、図5に示すタイミングチャートのように、終始、位置制御を行いながら、可動側シールヘッド12が合成樹脂シートSに接触している間を含む所定区間(t9〜t11)において、サーボモータ16のトルクが、一定値を越えないように、トルクの上限値を制限するようにしてもよい。この場合は、可動側シールヘッド12を初期位置S0からシール位置SBまで移動させるのではなく、可動側シールヘッド12が実際には到達することができない、シール位置SBを僅かに越えた仮想位置まで移動させるような位置制御を行えばよい。
【0030】
また、上述した実施形態では、固定側シールヘッド11に対して可動側シールヘッド12を押し当てるようにしているが、これに限定されるものではなく、双方のシールヘッドが互いに接近離反するようなタイプであってもよいことはいうまでもない。
【0031】
また、上述した実施形態では、シール時間内において、位置検出部17bによって検出された可動側シールヘッド12の位置が予め設定されている所定位置(シール位置SB)からずれている場合は、正常にヒートシールが行われていないと判断するようになっているが、これに限定されない。例えば、固定側シールヘッド11や可動側シールヘッド12と合成樹脂シートSとの間に異物が進入していたり、合成樹脂シートS自体に皺が発生している場合は、可動側シールヘッド12が正常時よりも早く停止することになるので、シール時間が長くなり、逆に、固定側シールヘッド11や可動側シールヘッド12が摩耗しているような場合は、可動側シールヘッド12が通常時よりも遅く停止することになるので、シール時間が短くなる。従って、このようにシール時間が変化した場合は、正常にヒートシールが行われていないと判断することで、シール不良の発生を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明に係るシール装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】同上のシール装置におけるサーボモータの駆動制御を説明するためのタイミングチャートである。
【図3】他の実施形態であるシール装置におけるサーボモータの駆動制御を説明するためのタイミングチャートである。
【図4】他の実施形態であるシール装置におけるサーボモータの駆動制御を説明するためのタイミングチャートである。
【図5】他の実施形態であるシール装置におけるサーボモータの駆動制御を説明するためのタイミングチャートである。
【図6】(a)、(b)は従来のシール装置を示す概略構成図である。
【図7】同上のシール装置の問題点を説明するためタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0033】
1 シール装置
11 固定側シールヘッド
12 可動側シールヘッド
13 ロードセル
14 可動支持体
15 駆動手段
16 サーボモータ
17 制御手段
17a 速度検出部
17b 位置検出部
17c トルク検出部
S 合成樹脂シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重ね合わせた合成樹脂シートをシールヘッドで加熱押圧することによってヒートシールするシール装置であって、
前記シールヘッドを、前記シールヘッドが合成樹脂シートを押圧するシール位置に対して接近離反可能に支持する可動支持体と、
前記可動支持体を駆動する、サーボモータを駆動源とする駆動手段と、
前記サーボモータを制御する制御手段と
を備え、
前記制御手段は、前記サーボモータからのフィードバックパルス信号に基づいて、前記シールヘッドの速度を検出する速度検出部を備え、前記シールヘッドが合成樹脂シートに接触している間で前記シールヘッドの速度が0である時間をシール時間として把握するようになっており、
少なくとも、前記シール時間内は、前記制御手段によって、前記サーボモータのトルクが一定値に保持されていることを特徴とするシール装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記サーボモータからのフィードバックパルス信号に基づいて、前記シールヘッドの位置を検出する位置検出部を備えており、
前記シール時間内で、前記位置検出部によって検出された前記シールヘッドの位置が予め設定されている前記シール位置からずれている場合は、正常にヒートシールが行われていないと判断するようになっている請求項1に記載のシール装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記シール時間が変化した場合は、正常にヒートシールが行われていないと判断するようになっている請求項1に記載のシール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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