説明

シール部品の製造方法

【課題】基材5の表面にバリを形成することなく、基材5の両面にガスケットを成形することの可能な方法を提供することにある。
【解決手段】フィルム状、シート状又は板状の基材5の両面にガスケットを一体に成形したシール部品の製造において、基材5とその一側に衝合される第一の分割型11との間に画成され成形材料供給ゲート11bが開口した第一のキャビティ14と、基材5とその他側に衝合される第二の分割型12との間に画成される第二のキャビティ15を、基材5に開設した第一の連通孔51を介して互いに連通させ、第一の分割型11に、第一のキャビティ14における成形材料の合流部に開口した第一のエアベント孔11cと、第二のキャビティ15における成形材料の合流部で基材5に開設した第二の連通孔52に位置して開口した第二のエアベント孔11dを、基材5の表面から離間して設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば燃料電池スタックの各燃料電池セルに形成される流路をシールするための燃料電池用シール等のように、フィルム、シート又は板状の基枠にゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料からなるガスケットを一体に成形したシール部品を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、電解質膜の両面に一対の電極層を設けたMEA(Membrane Electrode Assembly:膜−電極複合体)を含む発電体を、セパレータで挟持して燃料電池セルとし、更にこの燃料電池セルを多数積層したスタック構造を有する。そして、空気(酸素)が各セパレータの一方の面に形成された空気流路から一方の触媒電極層(空気極)に供給され、燃料ガス(水素)が各セパレータの他方の面に形成された燃料ガス流路から他方の触媒電極層(燃料極)に供給され、水の電気分解の逆反応である電気化学反応、すなわち水素と酸素から水を生成する反応によって、電力を発生するものである。
【0003】
このため各燃料電池セルには、燃料ガスや空気、上述の電気化学反応により生成された水や、余剰空気等の漏れを防止するためのシール部品が設けられる。そしてこの種のシール部品としては、セパレータあるいは合成樹脂フィルムなどのようなフィルム状、シート状又は板状の基材に、ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料からなるガスケットを一体化したものが知られている(例えば下記の特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3820883号
【0004】
図7は、薄板状の基材の両面にガスケットを一体成形したシール部品を示す断面図、図8は、図7のシール部品を製造するための従来技術を示す断面図である。
【0005】
すなわち、図7に示されるシール部品は、薄板状の基材1と、その表裏両面に一体的に設けられたゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料からなるガスケット2とを備え、このガスケット2が、基材1に接着されたベース部2aと、その上面から山形に隆起したシールリップ2bとを有し、積層される不図示のセパレータなどに適当なつぶし代で密接されることによって、上述した燃料ガスや空気に対する密封機能を発揮するものである。
【0006】
このシール部品において、ガスケット2は、基材1に液状の成形材料を用いてLIM(Liquid Injection Molding)等の公知の成形方法により一体成形されたものである。詳しくは図8に示されるように、分割型101〜103からなる金型100が用いられ、基材1を分割型102,103の間に位置決め固定し、この基材1と分割型102,103の内面との間に画成されると共に基材1に開設した連通孔1aを介して互いに連通した環状のキャビティ104,105内に、分割型101,102に形成されたスプル100a、ランナ100b及びゲート100cを通じて液状の成形材料を充填し、架橋硬化させる。
【0007】
ここで、ガスケット2は環状(無端形状)に連続したものであり、これを成形するキャビティ104,105も同形状であるから、ゲート100c及び連通孔1aを介してキャビティ104,105に充填される液状の成形材料は、ゲート100c及び連通孔1aからキャビティ104,105内をその周方向両側へ分岐して流れ、ゲート100c及び連通孔1aと反対側で合流する。そしてこの合流部分104a,105aには、残存エアや、成形材料からの揮発ガスによる成形不良が発生しやすいため、このような残存エアや揮発ガスを逃がすためのエアベント溝104b,105bが、基材1と分割型102,103との衝合面に沿って形成されている。したがって、このような方法で製造されたシール部品は、エアベント溝104b,105bへ流入した成形材料によって、図7に示されるように、ガスケット2のベース部2aから基材1の表面に沿って延びるバリ2cが形成されることになる。
【0008】
しかしながら、上述のような成形方法によれば、例えばガスケット2のシールリップ2bがセパレータに形成した溝の底面に密接されるものである場合、エアベント溝104b,105bによって形成されるバリ2cが前記溝内に収まらず、ガスケット2のシール性に悪影響を及ぼし、基材1の歪の原因にもなるので、このようなバリ2cは、ガスケット2の成形後に除去しなければならない。特に、ガスケット2を基材1の両面に設けた場合は、バリ2cも基材1の両面に存在するためその除去作業に膨大な時間がかかり、しかもバリ除去の際に基材1が破損してしまうおそれもあった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題とするところは、基材の表面にバリを形成することなく、基材の両面にガスケットを成形することの可能な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1の発明に係るシール部品の製造方法は、フィルム状、シート状又は板状の基材の両面にガスケットを一体に成形したシール部品の製造において、前記基材とその一側に衝合される第一の分割型との間に画成され成形材料供給ゲートが開口した第一のキャビティと、前記基材とその他側に衝合される第二の分割型との間に画成される第二のキャビティを、前記基材に開設した第一の連通孔を介して互いに連通させ、前記第一の分割型に、前記第一のキャビティにおける成形材料の合流部に開口した第一のエアベント孔と、前記第二のキャビティにおける成形材料の合流部で前記基材に開設した第二の連通孔に位置して開口した第二のエアベント孔を、前記基材の表面から離間して設けるものである。
【0011】
すなわちこの方法において、成形材料供給ゲートから第一のキャビティへ供給される成形材料は、基材に開設した第一の連通孔を介して第二のキャビティへも供給され、第一のキャビティにおける成形材料の合流部からの残存エアや揮発ガスは、第一の分割型における第一のエアベント孔を介して排出され、第二のキャビティにおける成形材料の合流部からの残存エアや揮発ガスは、基材における第二の連通孔及び第一の分割型における第二のエアベント孔によって排出される。そして、この第一及び第二のエアベント孔は、いずれも第一の分割型に設けられているので、金型分割構造が複雑にならず、しかもこの第一及び第二のエアベント孔に形成されるバリは、基材の表面から離間しているので、その除去作業を容易に行うことができる。
【0012】
また、請求項2の発明に係るシール部品の製造方法は、フィルム状、シート状又は板状の基材の両面にガスケットを一体に成形したシール部品の製造において、前記基材とその一側に衝合される第一の分割型との間に画成され成形材料供給ゲートが開口した第一のキャビティと、前記基材とその他側に衝合される第二の分割型との間に画成される第二のキャビティを、前記成形材料供給ゲートと対応する位置で前記基材に開設した第一の連通孔と、前記第一及び第二のキャビティにおける成形材料の合流部で前記基材に開設した第二の連通孔を介して互いに連通させ、前記第一の分割型に、前記第二の連通孔と対応する位置に開口したエアベント孔を、前記基材の表面から離間して設けるものである。
【0013】
すなわちこの方法において、成形材料供給ゲートから第一のキャビティへ供給される成形材料は、基材に開設した第一の連通孔を介して第二のキャビティへも供給され、第一のキャビティにおける成形材料の合流部からの残存エアや揮発ガスは、第一の分割型におけるエアベント孔を介して排出され、第二のキャビティにおける成形材料の合流部からの残存エアや揮発ガスも、基材における第二の連通孔を通じて前記エアベント孔によって排出される。このため、エアベント孔が第一及び第二のキャビティからの双方のエアベント手段を兼ねるため、金型分割構造が複雑にならず、しかもエアベント孔に形成されるバリは基材の表面から離間していると共に、その形成箇所も少なくなるので、バリ除去作業を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明に係るシール部品の製造方法によれば、基材の両面にガスケットを成形する過程で、基材の両側の第一及び第二のキャビティにおける成形材料の合流部からの残存エアや揮発ガスが、第一の分割型に設けられた第一及び第二のエアベント孔により排出されるので、金型構造が複雑にならず、しかも基材の表面にバリが形成されないといった効果が実現される。
【0015】
請求項2の発明に係るシール部品の製造方法によれば、請求項1と同様の効果に加え、基材の両側の第一及び第二のキャビティにおける成形材料の合流部からの残存エアや揮発ガスが、第一及び第二のキャビティ共有のエアベント孔により排出されるので、金型構造を一層簡素にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係るシール部品の製造方法の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。まず図1は、基材の両面に、延長形状の互いに異なるガスケットを一体成形したシール部品を示す断面図である。
【0017】
図1に示されるシール部品は、燃料電池における各セルの密封手段として用いられるものであって、基材5の両面に、延長形状(リップライン)の互いに異なるガスケット6,7を一体成形したものである。
【0018】
詳しくは、基材5は、例えば合成樹脂フィルム、カーボンプレート、セラミックス、金属の多孔質材料あるいは金属薄板などからなるものであるが、特に限定されない。ガスケット6,7は、ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料からなるものであって、基材5の外周近傍に沿って環状(無端形状)に連続している。そしてガスケット6,7は、基材5の表面に接着されたベース部61,71と、その上面から山形に隆起したシールリップ62,72とを有し、周方向一部6a,7aが互いに異なる位置を延び、すなわち基材5の両側で互いに異なる延長形状をなす。
【0019】
すなわちこのシール部品は、ガスケット6,7のシールリップ62,72が、不図示の相手材(セパレータなど)の表面に適当なつぶし代で密接されることによって、燃料極へ供給される水素ガスの流路中へ、空気極へ供給される酸素が混入したり、逆に空気流路中に水素ガスが混入するのを防止し、発電効率の低下を防止する機能を有するものである。
【0020】
図2は、上述の構成を備える図1のシール部品を製造するための本発明に係るシール部品の製造方法を示す金型及び基材の断面図、図3は、図2における金型のキャビティと基材との関係を示す平面図である。
【0021】
図2において、参照符号10は、基材5の両面にガスケットを一体成形するための金型で、基材5を挟持可能であって互いに進退可能に配置される第一の分割型11及び第二の分割型12と、第一の分割型11に結合された第三の分割型13とを備える。第二の分割型12の内面(上面)における所定位置には、基材5がセット可能であり、図示の型締め状態において、セットされた基材5とその上下両側にある第一の分割型11及び第二の分割型12の内面との間には、それぞれガスケット成形用の第一のキャビティ14及び第二のキャビティ15が画成されるようになっている。
【0022】
第一のキャビティ14及び第二のキャビティ15は、図1に示されるガスケット6,7とネガ−ポジ対応する断面形状を有するものであって、第一の分割型11と第二の分割型12の間にセットされた基材5の外周近傍に沿って環状(無端形状)に連続し、浅いベース成形部141,151と、その幅方向中間から略V字形に深くなるシールリップ成形部142,152とを有する。そして図2及び図3に示されるように、この第一のキャビティ14及び第二のキャビティ15は、基材5に開設された第一の連通孔51を介してベース成形部141,151間で互いに連続しており、周方向一部14a,15a、詳しくは前記第一の連通孔51の開設位置と周方向反対側が互いに異なる位置を延び、基材5の両側で互いに異なる延長形状をなしている。
【0023】
第三の分割型13には、不図示の成形機からの成形材料注入口であるスプル13aが開設され、第一の分割型11には、スプル13aから延びるランナ11a及びこのランナ11aの下流端であるゲート(成形材料供給ゲート)11bが開設されている。ゲート11bは、第一のキャビティ14におけるベース成形部141に、基材5における第一の連通孔51の開口位置と対応して開口している。なお、第一の連通孔51の開口径は、ゲート11bの開口径に比較して大径に形成されている。
【0024】
基材5には、第一の連通孔51のほか、第二の連通孔52が開設されている。この第二の連通孔52は、第二のキャビティ15の周方向一部15a、すなわち第一の連通孔51の開口位置に対して周方向反対側に位置しており、図3に示されるように、第一のキャビティ14から第一の連通孔51を通じて第二のキャビティ15内に注入される成形材料の流れが合流する位置に開口している。
【0025】
第一の分割型11には、第一のエアベント孔11c及び第二のエアベント孔11dが開設されている。第一のエアベント孔11cは、一端が、第一のキャビティ14における周方向一部14aのうち、ゲート11bから第一のキャビティ14内に注入される成形材料の合流部に開口し、他端が第一の分割型11と第三の分割型13との衝合面に開口している。また、第二のエアベント孔11dは、一端が、第二のキャビティ15における周方向一部15aのうち、第一のキャビティ14から第一の連通孔51を通じて第二のキャビティ15内に注入される成形材料の合流部であって、基材5における第二の連通孔52と対応する位置に開口し、他端が第一の分割型11と第三の分割型13との衝合面に開口している。
【0026】
なお、第一のエアベント孔11cは、ゲート11bと同様、第一のキャビティ14におけるベース成形部141に開口し、第二のエアベント孔11dは、第二のキャビティ15におけるベース成形部151に開口している。したがって、第一のエアベント孔11c及び第二のエアベント孔11dは、基材5の表面から離間した位置に開口している。
【0027】
上述の金型10による成形においては、図2に示されるように基材5を位置決めセットして型締めし、あらかじめ第一のキャビティ14及び第二のキャビティ15内を、図示されていない真空ポンプ等によって第一のエアベント孔11c及び第二のエアベント孔11dを介して真空引きしてから、不図示の成形機でスプル13a、ランナ11a及びゲート11bを介して第一のキャビティ14に液状の成形材料を射出すると、この成形材料の一部はゲート11bの直下に位置する基材5の第一の連通孔51を通じて第二のキャビティ15にもほぼ同時に充填される。なお、液状の成形材料としては基材5に対して接着性のあるものが好適に用いられるが、接着性のない成形材料を用いる場合は、予め基材5に接着剤が塗布される。
【0028】
成形材料の充填に際して、図3に示されるように、第一のキャビティ14内では成形材料がゲート11bから両側へ分岐して流れ、ゲート11bと周方向反対側で再び合流する。そしてこの合流位置にある第一のエアベント孔11c内は減圧されているので、残存エアや成形材料からの揮発ガスが排出され、更に成形材料が合流しながらこの第一のエアベント孔11c内へ流れ込む。したがって成形材料の合流・融合が良好に行われ、しかも、この合流部に前記残存エアや揮発ガスによる気泡が混入しても、これらは成形材料の一部と共に第一のエアベント孔11cへ流出するので、成形不良の発生が有効に防止される。
【0029】
同様に、第二のキャビティ15内では成形材料が第一の連通孔51から両側へ分岐して流れ、第一の連通孔51と周方向反対側で再び合流する。そしてこの合流位置にある第二の連通孔52に開口している第二のエアベント孔11d内は減圧されているので、残存エアや成形材料からの揮発ガスが排出され、更に成形材料が合流しながら第二の連通孔52を介して第二のエアベント孔11d内へ流れ込む。しかも、前記合流部に前記残存エアや揮発ガスによる気泡が混入しても、第二の連通孔52を介して第二のエアベント孔11dへ成形材料の一部と共に流出するので、成形不良の発生が有効に防止される。
【0030】
そして、第一のエアベント孔11c及び第二のエアベント孔11dによって残存エアや揮発ガスの排出が容易に行われる結果、成形圧力を低くすることができるため、カーボンやセラミックスのような脆性材料からなる基材5にガスケット6,7を一体成形する方法として有用である。
【0031】
第一及び第二のキャビティ14,15内に充填された成形材料は、架橋硬化することによって、図1に示されるように、基材5に、ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料からなるガスケット6,7が一体に成形される。
【0032】
上述の成形過程で、第一のエアベント孔11cに成形材料の一部が流れ込むことによって形成されるバリ(不図示)は、ゲート11b内の成形材料によって形成されるバリ(不図示)と同様、図1に示されるガスケット6のベース部61の上面に位置する。また、第二のエアベント孔11dに成形材料の一部が流れ込むことによって形成されるバリ(不図示)は、基材5における第二の連通孔52内から延びるものとなる。このため、バリの除去が、基材5の表面から剥離又は切除するといった煩雑な作業にはならないので、容易に除去することができ、しかもバリの除去痕はシールリップ62,72には形成されないので、密封性に悪影響を及ぼすこともない。
【0033】
しかも上述の方法によって製造されたシール部品は、基材5の表面に従来のようなエアベント溝によるバリ(図7の参照符号2c)が存在しないので、燃料電池スタックとしての積層状態において、基材5や相手材にバリの圧縮応力に起因する歪が発生したり、これによってガスケット6,7のシールリップ62,72の面圧にムラを生じてシール性が悪化したり、積層方向のサイズがバリの介在によって大きくなるのを有効に防止することができる。
【0034】
また、第一のエアベント孔11c及び第二のエアベント孔11dによるバリは、基材5の表面に沿って外周側あるいは内周側へ張り出すように形成されるものではないので、その分、基材5を小型化することができる。
【0035】
ここで、図4はシール部品の製造方法の比較例を示す金型及び基材の断面図である。
【0036】
すなわち、図1に示されるような、基材5の両面に延長形状の互いに異なるガスケット6,7を一体成形したシール部品の製造において、ガスケット6,7の成形過程で従来のようなエアベント溝によるバリ(図7の参照符号2c)が形成されないようにしてエアベントを行う方法としては、図4に示される比較例のように、金型10が、第二の分割型12に結合された第四の分割型16を備え、第二のエアベント孔12aを第二の分割型12に開設し、その一端が、第二のキャビティ15における第一の連通孔51と周方向反対側(第二のキャビティ15における成形材料の合流部)に開口し、他端が第二の分割型12と第四の分割型16との衝合面に開口した構成とすることも考えられる。
【0037】
しかしながらこの場合、第四の分割型16が必要となるので、金型10が大型化するばかりでなく、その分割構造が複雑になってしまい、しかも第二のエアベント孔12aによるバリがゲート11bによるバリ及び第一のエアベント孔11cによるバリと反対側に形成されることになるので、バリの除去作業が煩雑になる。
【0038】
これに対し、図2に示される方法は、図4に示される比較例のような第四の分割型16が不要であり、第一のエアベント孔11c及び第二のエアベント孔11dによるバリがゲート11bによるバリと同じ側に形成されるので、バリの除去作業が容易であり、これらの点で著しく有利である。
【0039】
次に図5は、基材の両面に、延長形状が互いに同一のガスケットを一体成形したシール部品を示す断面図、図6は、図5のシール部品を製造するための本発明に係るシール部品の製造方法を示す金型及び基材の断面図である。
【0040】
この図5に示されるシール部品において、先に説明した図1に示されるシール部品と異なる点は、基材5の両面に一体成形したガスケット6,7の延長形状(リップライン)が、互いに同一となっていることにある。
【0041】
したがって、図6に示される金型10も、型締め状態において、基材5の上下両側に第一の分割型11及び第二の分割型12によって画成されるガスケット成形用の第一のキャビティ14及び第二のキャビティ15が、互いに同一の延長形状をなして延びている。
【0042】
基材5には、第一の連通孔51及び第二の連通孔52が開設されている。このうち、第一の連通孔51は、第一の分割型11に開設されたゲート11bと対応する位置で第一のキャビティ14のベース成形部141と第二のキャビティ15のベース成形部151の間に開口している。また、第二の連通孔52は、第一の連通孔51の開口位置に対して第一のキャビティ14及び第二のキャビティ15の周方向反対側に位置しており、すなわちゲート11b及び第一の連通孔51を通じて第一のキャビティ14及び第二のキャビティ15内に注入される成形材料の流れが合流する位置に開口している。このため、第一のキャビティ14及び第二のキャビティ15は、第一の連通孔51及び第二の連通孔52を介して互いに連通される。
【0043】
また、第一の分割型11にはエアベント孔11eが開設されている。このエアベント孔11eは、一端が、第一のキャビティ14における周方向一部14aのうち、ゲート11bから第一のキャビティ14内に注入される成形材料の合流部であって、基材5における第二の連通孔52と対応する位置でベース成形部141に開口し、他端が第一の分割型11と第三の分割型13との衝合面に開口している。したがって、エアベント孔11eは、基材5の表面から離間した位置に開口している。
【0044】
なお、その他の部分は、基本的に先に説明した図2と同様に構成することができる。
【0045】
上述の金型10による成形においては、図6に示されるように基材5を位置決めセットして型締めし、あらかじめ第一のキャビティ14及び第二のキャビティ15内を、図示されていない真空ポンプ等によってエアベント孔11eを介して真空引きしてから、不図示の成形機でスプル13a、ランナ11a及びゲート11bを介して第一のキャビティ14に液状の成形材料を射出すると、この成形材料の一部はゲート11bの直下に位置する基材5の第一の連通孔51を通じて第二のキャビティ15にもほぼ同時に充填される。なお、液状の成形材料としては基材5に対して接着性のあるものが好適に用いられるが、接着性のない成形材料を用いる場合は、予め基材5に接着剤が塗布される。
【0046】
成形材料の充填に際して、第一のキャビティ14内では成形材料がゲート11bから両側へ分岐して流れ、ゲート11bと周方向反対側で再び合流し、第二のキャビティ15内では第一の連通孔51から両側へ分岐して流れ、第一の連通孔51と周方向反対側で再び合流する。そして第一のキャビティ14における成形材料の合流部に開口したエアベント孔11e内は減圧されているので、第一のキャビティ14内の合流部における残存エアや成形材料からの揮発ガスがこのエアベント孔11eから排出され、第二のキャビティ15内の合流部における残存エアや成形材料からの揮発ガスも第二の連通孔52を介してエアベント孔11eから排出され、更に第一のキャビティ14及び第二のキャビティ15内の成形材料が第二の連通孔52を介して合流しながらこのエアベント孔11e内へ流れ込む。したがって、成形材料の合流・融合が良好に行われ、しかも、この合流部に前記残存エアや揮発ガスによる気泡が混入しても、これらは成形材料の一部と共にエアベント孔11eへ流出するので、成形不良の発生が有効に防止される。
【0047】
第一及び第二のキャビティ14,15内に充填された成形材料は、架橋硬化することによって、図5に示されるように、基材5に、ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料からなるガスケット6,7が一体に成形される。
【0048】
上述の成形過程で、エアベント孔11eに成形材料の一部が流れ込むことによって形成されるバリ(不図示)は、ゲート11b内の成形材料によって形成されるバリ(不図示)と同様、図5に示されるガスケット6のベース部61の上面に位置するので、バリの除去が、基材5の表面から剥離又は切除するといった煩雑な作業にはならない。しかも、エアベント孔11eは、第一のキャビティ14からのエアベント手段及び第二のキャビティ15からのエアベント手段を兼ねるので、これによって形成されるバリの数も少ないものとなる。このため、バリの除去を容易に行うことができ、バリの除去痕はシールリップ62,72には形成されないので、密封性に悪影響を及ぼすこともない。
【0049】
しかも上述の方法によって製造されたシール部品も、基材5の表面に従来のようなエアベント溝によるバリ(図7の参照符号2c)が存在しないので、燃料電池スタックとしての積層状態において、基材5や相手材にバリの圧縮応力に起因する歪が発生したり、これによってガスケット6,7のシールリップ62,72の面圧にムラを生じてシール性が悪化したり、積層方向のサイズがバリの介在によって大きくなるのを有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】基材の両面に、延長形状の互いに異なるガスケットを一体成形したシール部品を示す断面図である。
【図2】図1のシール部品を製造するための本発明に係るシール部品の製造方法を示す金型及び基材の断面図である。
【図3】図2における金型のキャビティと基材との関係を示す平面図である。
【図4】シール部品の製造方法の比較例を示す金型及び基材の断面図である。
【図5】基材の両面に、延長形状が同一のガスケットを一体成形したシール部品を示す断面図である。
【図6】図5のシール部品を製造するための本発明に係るシール部品の製造方法を示す金型及び基材の断面図である。
【図7】薄板状の基材の両面にガスケットを一体成形したシール部品を示す断面図である。
【図8】図7のシール部品を製造するための従来技術を示す断面図である。
【符号の説明】
【0051】
5 基材
51 第一の連通孔
52 第二の連通孔
6,7 ガスケット
61,71 ベース部
62,72 シールリップ
10 金型
11 第一の分割型
11b ゲート(成形材料供給ゲート)
11c 第一のエアベント孔
11d 第二のエアベント孔
11e エアベント孔
12 第二の分割型
13 第三の分割型
14 第一のキャビティ
141,151 ベース成形部
142,152 シールリップ成形部
15 第二のキャビティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム状、シート状又は板状の基材の両面にガスケットを一体に成形したシール部品の製造において、前記基材とその一側に衝合される第一の分割型との間に画成され成形材料供給ゲートが開口した第一のキャビティと、前記基材とその他側に衝合される第二の分割型との間に画成される第二のキャビティを、前記基材に開設した第一の連通孔を介して互いに連通させ、前記第一の分割型に、前記第一のキャビティにおける成形材料の合流部に開口した第一のエアベント孔と、前記第二のキャビティにおける成形材料の合流部で前記基材に開設した第二の連通孔に位置して開口した第二のエアベント孔を、前記基材の表面から離間して設けることを特徴とするシール部品の製造方法。
【請求項2】
フィルム状、シート状又は板状の基材の両面にガスケットを一体に成形したシール部品の製造において、前記基材とその一側に衝合される第一の分割型との間に画成され成形材料供給ゲートが開口した第一のキャビティと、前記基材とその他側に衝合される第二の分割型との間に画成される第二のキャビティを、前記成形材料供給ゲートと対応する位置で前記基材に開設した第一の連通孔と、前記第一及び第二のキャビティにおける成形材料の合流部で前記基材に開設した第二の連通孔を介して互いに連通させ、前記第一の分割型に、前記第二の連通孔と対応する位置に開口したエアベント孔を、前記基材の表面から離間して設けることを特徴とするシール部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−281528(P2009−281528A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135301(P2008−135301)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】