ジェットポンプ及び原子炉
【課題】ジェットポンプ効率をさらに向上できるジェットポンプを提供する。
【解決手段】ジェットポンプ13は、ノズル14、ベルマウス15、スロート16、デフューザ17及びノズルホルダ18を有する。ノズルホルダ18に設けられたノズル14がベルマウス15の上方に配置される。スロート16は、上端から下端に向って配置された、混合部の第1直管部16A,テーパ管16B及び直管部である挿入管部16Cを有する。第1直管部16Aがベルマウス14の下端に接続され、デフューザ17はスリップジョイント部19で挿入管部16Cに接続される。ベルマウス15の内面に三角溝20Aを、第2直管部16Aの内面に三角溝20Bを、挿入管部16Cの内面に三角溝20Cをそれぞれ形成している。直管部である挿入管部16Cに三角溝20Cを形成しているので、ジェットポンプ効率が向上し、振動が低減される。
【解決手段】ジェットポンプ13は、ノズル14、ベルマウス15、スロート16、デフューザ17及びノズルホルダ18を有する。ノズルホルダ18に設けられたノズル14がベルマウス15の上方に配置される。スロート16は、上端から下端に向って配置された、混合部の第1直管部16A,テーパ管16B及び直管部である挿入管部16Cを有する。第1直管部16Aがベルマウス14の下端に接続され、デフューザ17はスリップジョイント部19で挿入管部16Cに接続される。ベルマウス15の内面に三角溝20Aを、第2直管部16Aの内面に三角溝20Bを、挿入管部16Cの内面に三角溝20Cをそれぞれ形成している。直管部である挿入管部16Cに三角溝20Cを形成しているので、ジェットポンプ効率が向上し、振動が低減される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジェットポンプ及び原子炉に係り、特に、沸騰水型原子炉に適用するに好適なジェットポンプ及び原子炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の沸騰水型原子炉(BWR)は、原子炉圧力容器内にジェットポンプを設置している。ジェットポンプは、ノズル、ベルマウス、スロート及びデフューザを備える。再循環系配管は原子炉圧力容器に接続される。この再循環系配管に設けられた再循環ポンプの駆動によって昇圧された冷却水は、再循環系配管を通り、駆動水としてノズルからジェットポンプ内に噴出される。噴出された駆動水によって、ノズルの周囲に存在する冷却水が被駆動水としてベルマウス及びスロート内に流入する。スロートからデフューザに導かれてデフューザから排出された冷却水は、下部プレナムを経て炉心に供給される(例えば、特開2005−233152号公報参照)。
【0003】
特開平7−119700号公報には、多孔ノズルを用いて旋回流を発生させるジェットポンプが記載されている。このジェットポンプは、ジェットポンプ効率の向上を目的として、デフューザ及びスロートでの圧力損失の低減を図っている。圧力損失の低減のために、デフューザ及びスロートの一方の内面に旋回流発生用のフインまたは溝を設けることが提案されている。直進する流体を旋回させるフインまたは溝の抵抗体を設けた場合には、その設置箇所で摩擦損失が生じる。このため、デフューザまたはスロートでの圧力損失が増加し、ジェットポンプ効率の低下を招く可能性がある。
【0004】
特開平8−135600号公報には、ジェットポンプ効率を向上させるため、スロートの摩擦損失を低減したジェットポンプが記載されている。このジェットポンプは、スロートの内面に、流体の流れ方向に沿って形成された複数の細い溝を周方向に並べたリブレットを形成している。特開平8−135600号公報では、リブレットの定義として、その高さを流体乱流の粘性底層の厚さと等しいとしている。この流体乱流の粘性底層の厚さは、通常、0.1mm以下であり、高流速のスロート部では、粘性底層の厚さはこの値よりも小さな値となる。特開平8−135600号公報には、このリブレットの高さを求める(1)式が開示されている。
【0005】
δ1=123・(uD/ν)7/8・δ ……(1)
ここで、δ1は乱流の粘性底層の厚さ、uD/νはRe数(−)、uは流体流速、Dは管の内径、νは粘性係数、δは管の半径である。
【0006】
BWRのジェットポンプでは、通常、Re数が約1×106及びスロートにおける最小の管半径が約80mmであり、これらを(1)式に代入すると、ブレットの高さδ1は約2×106mm(2km)となる。これは管径の約12500倍であり、(1)式ではブレットの高さを求めることができない。
【0007】
【特許文献1】特開2005−233152号公報
【特許文献2】特開平7−119700号公報
【特許文献3】特開平8−135600号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ジェットポンプの性能は、以下に示すようなM比、N比、効率によって表される。M比は、駆動水(再循環水)の流量Qaに対する、被駆動水(冷却水)の流量Qbの比であり、(2)式で表される。
【0009】
M比 = Qb/Qa ……(2)
N比は、駆動水に対する被駆動水の全水頭比であり、(3)式で表される。
【0010】
N比 = (Hc−Hb)/(Ha−Hc) ……(3)
ここで、Haはノズルの駆動水入口における全水頭、Hbはジェットポンプの被駆動水入口における全水頭、Hcはジェットポンプ出口における全水頭である。効率は、駆動水に対する被駆動水のエネルギーの比であり、M比とN比の積で表される。
【0011】
効率 = M比 × N比 ……(4)
ジェットポンプとしては、M比、N比及び効率がより高いことが望ましい。小さい容量の再循環ポンプを用いて、ジェットポンプから吐出される冷却水流量を効率良く増加させることができれば、再循環系をコンパクト化することができ、再循環系の設置スペースを低減できる。
【0012】
例えば、既設の原子炉(例えば、BWR)で出力向上を行う場合には、炉心流量を増加して炉心の冷却能力を高めることにより、原子炉出力の増大幅を拡大することができる。このように炉心流量を増加させるためには、再循環ポンプ、給水ポンプ及びジェットポンプを改良するとよい。出力向上を目的とした既設の原子炉の改造においては、再循環ポンプ及び給水ポンプなどの大型機器の改造、交換に比べて、ジェットポンプの改良のほうが期間的に有効である。ジェットポンプの性能は、駆動水と被駆動水の混合部の形状に大きく依存するため、発明者らは、スロートでの圧力損失の低減に注目した。さらに、発明者らは、ジェットポンプのベルマウスと直管部との接続近傍で発生するクラッドの付着もジェットポンプ効率を低下させる原因になることを見出した。
【0013】
本発明の目的は、ジェットポンプ効率をさらに向上させることができるジェットポンプ及び原子炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、ジェットポンプのスロートが、ベルマウスに接続されてベルマウスの開放端での内径よりも小さい内径を有する第1直管部、第1直管部の内径よりも大きな内径を有してデフューザに接続される第2直管部、及び第1直管部と第2直管部を接続し、第1直管部側の一端から第2直管部側の他端に向って内径が増大する結合管部を有することにある。
【0015】
スロートのデフューザに接続する部分が第2直管部となっているので、ジェットポンプの効率をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ジェットポンプの効率をさらに向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
従来のジェットポンプのスロートは、ノズルから噴出された駆動水及びノズルの周囲に存在する被駆動水の入口となるラッパ状に開いたベルマウスにつながってこの下流に位置し、駆動水及び被駆動水の混合部となる第1直管部、第1直管部の下流に位置するテーパ管、及びデフューザとの接続部である挿入管部を有する。
【0018】
このスロートで圧力損失が発生する原因は、以下の3つが考えられる。
(a)ベルマウスと第1直管部の接続部近傍で縮流が生じることによって発生するリング状の減圧域により、実質的な流路断面積が狭まることである。
(b)最も流路断面積が小さい第1直管部の摩擦損失及び第1直管部での渦による逆流損失があることである。
(c)デフューザとの接続部である挿入管部からデフューザの上端部への冷却水の流入に起因してその接続部で急激な拡大流が生じることによる拡大流損失があることである。
【0019】
発明者らは、まず、(a)及び(b)の圧力損失を軽減できるジェットポンプを検討した。発明者らは、ベルマウス、及びスロートの第1直管部及び接続部のそれぞれの内面に三角形溝を形成した場合における圧力損失を確認するために、実験を行った。この実験結果を、図11を用いて説明する。図11は、内径55mm(三角溝を形成した管では隣り合う三角溝の間に形成された、180°反対側に位置する三角突起間の距離)の管で、水を用いてレイノルズ数Reが250000で行った実験結果を示す。ここで、横軸は三角溝の深さを表し、縦軸は管の摩擦損失係数λを表している。摩擦損失係数は、以下の式で定義される。
【0020】
ΔP=λ・L/D・1/2・ρu2 ……(5)
ここで、ΔPは摩擦損失、λは摩擦損失係数、Lは管の長さ、Dは管の内径、ρは流体密度及びuは流速である。
【0021】
スロートの第1直管部の内面には、図5に示すように、周方向に複数の三角溝が形成されている。向かい合った2つの面のなす角(底部の角度)が90°及び60°であるそれぞれの三角溝を形成した2つの第1直管部内に水をそれぞれ流した場合の実験結果、すなわち、三角溝の深さと摩擦損失係数の関係を図11に示す。併せて、市販のアクリル管及び市販のステンレス管に対する実験結果も示した。60°の三角溝を形成した第1直管部に対する実験データは一点しかないので、シミュレーションにより求めた結果を破線で示した。
【0022】
底部の角度が90°の三角溝を形成した第1直管部の摩擦損失係数が底部の角度が60°の三角溝を形成した第1直管部のそれよりも小さくなる。底部の角度が90°の三角溝を形成した場合には、三角溝の深さが1.0mmよりも小さいと摩擦損失係数が大きくなる。底部の角度が90°の三角溝の場合では、三角溝の深さが1.3mm以上になると、摩擦損失係数が市販のアクリル管及び市販のステンレス管の摩擦損失係数と同等まで低下する。このため、底部の角度が90°の三角溝を形成する場合では、三角溝の深さを1.0mm以上、好ましくは、それを1.3mm以上にすることが好ましい。
【0023】
底部の角度が60°の三角溝を形成した場合では、摩擦損失係数は、三角溝の深さが1.5mmよりも小さいと摩擦損失係数が大きくなる。底部の角度が60°の三角溝を形成した場合では、三角溝の深さが1.9mm以上になると、摩擦損失係数が市販のアクリル管及び市販のステンレス管の摩擦損失係数と同等まで低下する。このため、底部の角度が60°の三角溝を形成する場合では、三角溝の深さを1.5mm以上、好ましくは、市販ステンレス管と同等の摩擦損失係数となる1.9mm以上にすることが好ましい。
【0024】
第1直管部での整流効果は、三角溝の深さが深いほど大きくなる。しかしながら、三角溝の深さを深くすると、スロートの強度が低下することになる。したがって、三角溝の深さは、整流効果及びスロートの強度を考慮して決定される。この三角溝の深さは5.0mm以下とする。これは、原子炉に用いられるジェットポンプのスロートの肉厚が約10mmであり、強度上の観点から三角溝の深さの上限をスロートの肉厚の半分の5.0mmとした。
【0025】
図12は、図11に示す実験結果及びシミュレーション結果を、三角溝の底部の角度と三角溝の深さの関係で表したものである。特性曲線Bは、摩擦損失係数が小さくなる、底部の角度が90°の三角溝における三角溝の深さ1.0mm及び底部の角度が60°の三角溝における三角溝の深さ1.5mmに基づいて得られた曲線である。特性曲線Aは、摩擦損失係数が最も好ましい市販のアクリル管及び市販のステンレス管の摩擦損失係数と同等になる、底部の角度が90°の三角溝における三角溝の深さ1.3mm及び底部の角度が60°の三角溝における三角溝の深さ1.9mmに基づいて得られた曲線である。
【0026】
この結果、三角溝の深さh(mm)の下限値は、特性曲線Bに基づいて(6)式で表される。
【0027】
h=−1.5767・lnθ+8.1629 ……(6)
ここで、θは三角溝の底部の角度である。lnθはθの自然対数である。摩擦損失係数が市販のアクリル管及び市販のステンレス管のそれと同等になる、好ましい三角溝の深さh(mm)の下限値は、特性曲線Aに基づいて(7)式で表される。
【0028】
h=−1.7219・lnθ+9.0299 ……(7)
この結果、三角溝の深さh(mm)が、(6)式に基づいて得られる(8)式を満足する範囲内に存在すれば、第1直管部の摩擦損失係数を小さくすることができる。
【0029】
−1.5767・lnθ+8.1629≦h≦5.0mm ……(8)
三角溝の深さh(mm)は、好ましくは、(7)式に基づいて得られる(9)式を満足すればよい。
【0030】
−1.7219・lnθ+9.0299≦h≦5.0mm ……(9)
隣り合う三角溝の間に形成された三角突起の頂点の位置は、従来例のスロートの第1直管部の内径と一致させる。これによって、ベルマウスと第1直管部の接続部近傍で縮流が生じることによって発生する減圧域が三角溝内に形成されるので、その接続部の流路断面積が狭くなることを回避することができる。さらに、この三角溝内にベルマウスに流入した冷却水が流れ、三角溝がその冷却水の案内を兼ねることになる。三角溝は、そのような整流機能を有する。
【0031】
ジェットポンプにおいてベルマウスの上端よりも下流で最も流路断面積が小さくなる第1直管部の摩擦損失は、(8)式を満足する深さhを有する三角溝を第1直管部に形成することによって小さくなる。その第1直管部で発生する渦による第1直管部の内面近傍での逆流損失は、その渦が三角溝内を流れ冷却水が三角溝で整流されることによって、第1直管部内を流れる冷却水の主流において軽減される。
【0032】
(8)式または(9)式を満足する深さhを有する三角溝は、ベルマウスの内面に形成しても良い。
【0033】
発明者らは、前述の(c)についても検討をおこなった。スロートの、デフューザとの接続部である挿入管部から、スロート内を流れる冷却水が流出するときに発生する従来構造での拡大流損失は、冷却水がスロートのテーパ部から段差のある広い領域(デフューザ)内に流入することによって発生する。このような流路形状では、冷却水が、挿入管部の下端から直径が拡大したデフューザの内面側に向って急激に広がることによって、挿入管部の下端部の内面付近で急激な圧力変化が発生する。このため、挿入管部の下端付近に形成される止水域でランダムな渦が発生し、この渦に起因した流れの乱れによって圧力損失(拡大流損失)が大きくなる。この圧力損失を低減するために、挿入管部の下端部を内部が末広がりのテーパ管にしないで第2直管部とし、この第2直管部の内面に(8)式または(9)式を満足する深さhを有する複数の三角溝を形成する。これらの三角溝は、挿入管部の直管の内面に周方向に並べて形成される。挿入管部の下端部からデフューザに流入する冷却水の、デフューザ上端部の内面付近での乱れが抑制され、その冷却水の流れが安定化される。このため、挿入管部の下端からデフューザ上端部の流路面積拡大部において、圧力損失を低減することができる。特に、挿入管部の下端部に内径が入口から出口に向かって同じである第2直管部を形成することによって、ジェットポンプの効率が向上した。第2直管部の内径は第1直管部の内径よりも大きくなっている。この第2直管部における複数の三角溝の形成によって、ジェットポンプの振動を抑制することができる。これは、従来のジェットポンプにおけるスロートのテーパ管出口の内面がテーパ管下端まで傾斜して末広がりになっている構造のようにそのテーパ管からデフューザ内に冷却水が広角噴出されるのではなく、第2直管部によって外側への広がりが少ない真下に流れる冷却水流をデフューザの入口部で形成することができてデフューザ内への冷却水の押し込み力を増すことができること、さらに、第2直管部の内面に三角溝を形成することで第2直管部内面近傍の流れが緩やかになり、また、その流れが整流されることによって、デフューザ入口部の内面近傍の圧力変動が減少するからである。
【0034】
(8)式または(9)式を満足する三角溝は、ベルマウスの上端からスロートの第1直管部の下端に掛けて形成することが好ましい。ベルマウスとその第1直管部の接続部近傍では、前述したように、縮流に起因して発生する減圧域が三角溝内に形成される。三角溝を形成した場合には、形成された減圧域は、リング状とはならずに周方向に存在する三角溝によって凹凸のあるものとなる。ベルマウス内に流入する冷却水に含まれているクラッドは、三角溝内の減圧域に面する三角溝の表面に付着しようとする。しかしながら、ベルマウスから連続して連なる三角溝内を流れている冷却水の流速は、三角溝内の流動抵抗が大きいため、遅くなる。この結果、三角溝内に形成される減圧域が小さくなり、三角溝の表面へのクラッドの付着が抑制される。
【0035】
ジェットポンプでの流力振動の発生場所は、ノズルからの噴出流の圧力変動および流路断面積が最も小さく、混合部となるスロートの第1直管部である。この第1直管部の内面に、(8)式または(9)式を満足する深さhを有する複数の三角溝を形成することによって、これらの三角溝の整流効果、及びその第1直管部での渦による圧力変動をそれらの三角溝内での吸収効果を発揮することができるので、第1直管部内を流れる冷却水の主流の流れを安定化させることができ、流力振動を低減させることができる。
【0036】
上記した三角溝を形成することによって圧力損失を軽減することができ、その分、デフューザの吐出圧力であるジェットポンプ出口における全水頭Hcを大きくすることができる。このため、N比の上昇によるジェットポンプの効率の向上が可能となる。
【0037】
上記の検討結果を反映した本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0038】
本発明の好適な一実施例である実施例1のジェットポンプを、図1から図8を用いて説明する。
【0039】
本実施例のジェットポンプ13が適用される沸騰水型原子炉(BWR)の概略の構造を、まず、図1及び図2により説明する。
【0040】
BWRは、原子炉圧力容器(原子炉容器)1を有し、原子炉圧力容器1内に炉心シュラウド3を設置している。複数の燃料集合体(図示せず)が装荷された炉心3が、炉心シュラウド3によって取り囲まれている。気水分離器4及び蒸気乾燥器5が原子炉圧力容器1内で炉心2の上方に配置される。ジェットポンプ13が、原子炉圧力容器1と炉心シュラウド3の間に形成される環状のダウンカマ6内に配置される。原子炉圧力容器1には、再循環系配管9及び再循環ポンプ10を有する再循環系が設けられる。再循環系ポンプ10が設けられた再循環系配管9は、一端が原子炉圧力容器1に接続されてダウンカマ6に連絡され、他端がダウンカマ7内に配置されたライザ管11に接続される。分岐管12がライザ管11の上端に接続され、分岐管12には、二基のジェットポンプ13のそれぞれのノズルホルダ18が接続される。主蒸気配管7及び給水配管8が原子炉圧力容器1に接続される。1つの分岐管12にそれぞれのノズルホルダ18が接続される二基のジェットポンプ13は、1本のライザ管11の両側に配置される。
【0041】
原子炉圧力容器1内の上部に存在する冷却水(被駆動流体)は、給水配管8から原子炉圧力容器1に供給された給水38と混合されてダウンカマ6内を下降する。この冷却水31は、再循環ポンプ10の駆動によって再循環系配管9内に流入し、再循環ポンプ10によって昇圧される。この昇圧された冷却水8を、便宜的に、駆動水(駆動流体)という。この駆動水32は、再循環系配管9、ライザ管11及び分岐管12を通ってジェットポンプ13のノズル14からベルマウス15内に向って噴出される。ノズル14の周囲に存在する、ダウンカマ6内の冷却水31は、駆動水32の噴出によって、ベルマウス15からスロート16内に吸い込まれる。この冷却水31は、駆動水32と共にスロート16内を下降し、デフューザ17から吐出される。デフューザ17から吐出された冷却水(冷却水31及び駆動水10を含む)を、冷却水33と称する。冷却水33は、下部プレナム21を経て炉心2に供給される。冷却水33は、炉心2を通過する際に加熱されて水及び蒸気を含む二相流となる。気水分離器4は蒸気と水を分離する。分離された蒸気は、更に、蒸気乾燥器5で湿分を除去されて主蒸気配管7に排出される。この蒸気は、蒸気タービン(図示せず)に導かれ、蒸気タービンを回転させる。蒸気タービンから排出された蒸気は、復水器(図示せず)で凝縮されて水となる。この水は、給水38として給水配管8より原子炉圧力容器1内に供給される。気水分離器4及び蒸気乾燥器5で分離された水は、落下して冷却水31となる。
【0042】
ノズル14等を有するジェットポンプ13は、再循環ポンプ10の動力を駆動水32から冷却水31に効果的に伝え、ジェットポンプ13から吐出される冷却水33の流量を駆動水32の流量よりも増大させる。具体的には、駆動水32は、炉心2に供給する冷却水33の流量を増加するために用いられる。再循環ポンプ10によって与えられた駆動水32の運動エネルギーが冷却水31に有効に作用すると、冷却水31が駆動されて冷却水33の流量が更に増加する。そのため、駆動水32の運動エネルギーが増加するようにノズル14の出口における駆動水32の流速を増加させると共に、スロート16で流路断面積をベルマウス15の上端部に位置する開放端のそれよりも小さくすることにより冷却水31の速度を増加して静圧を減圧させる。これにより、冷却水31をスロート16に吸い込むことができ、少ない動力で必要な炉心流量を確保することができる。
【0043】
なお、図2には、ジェットポンプ13の性能を評価する上で必要となる前述の(2)式及び(3)式に用いられる変数を該当する部位に併せて記した。
【0044】
本実施例のジェットポンプ13を、図3から図8を用いて詳細に説明する。ジェットポンプ13は、図3に示すように、ノズル14、ベルマウス15、スロート16、デフューザ17及びノズルホルダ18を有する。5本のノズル14が、分岐管12に接続されるノズルホルダ18に取り付けられ、ノズルホルダ18から下方に向かって伸びている。ベルマウス15は、ノズル14の下方に配置される。ノズルホルダ18は、ベルマウス15の上端部に設けられてベルマウス15の半径方向に配置された複数の固定板19(図2参照)によって支持される。ベルマウス15は下端から上端に向って拡がっている。ジェットポンプ13は、ベルマウス15より下方にスロート16及びデフューザ17を配置している。スロート16はベルマウス14の下端に接続され、デフューザ17はスリップジョイント部19でスロート16の下端部に接続される。
【0045】
スロート16は、上端から下端に向って混合部である第1直管部16A,テーパ管(結合管部)16B及び挿入管部(第2直管部)16Cを有する。第1直管部16Aは、ベルマウス15の下端に接続され、ジェットポンプ13のベルマウス15の上端より下方で最も流路断面積が小さくなっている。テーパ管16Bは、第1直管部16Aの下端に接続され、下方に向かって流路断面積が拡大している。第2直管部である挿入管部16Cは、テーパ管16Bの下端に接続され、デフューザ17の上端部に設けられるスリップジョイント部19内に挿入されてデフューザ17に接続される(図3参照)。第1直管部16A及び挿入管部16Cは、入口から出口に向って内径が実質的に同じになっている。
【0046】
ジェットポンプ13は、ベルマウス15の内面に複数の三角溝20Aを、第2直管部16Aの内面に複数の三角溝20Bを、挿入管部16Cの内面に複数の三角溝20Cをそれぞれ形成している。三角溝20A,20B及び20Cは、該当する箇所で、周方向に等間隔で平行に配置されている。三角溝20A,20B及び20Cは、ジェットポンプ13の軸方向に伸びている。
【0047】
複数の三角溝20Aは、ベルマウス15の上端からその下端に掛けてスロート16の軸方向において連続して内面に形成されている。図4はベルマウス15を上方より見た状態を示しており、三角溝20Aがベルマウス15の周方向に並んで配置されている。三角溝20Aはベルマウス15の上端部に形成されている曲面にも形成されている。複数の三角溝20Bが、第1直管部16Bの上端からその下端に掛けてスロート16の軸方向において連続して形成され(図3参照)、図5に示すように、第1直管部16Bの周方向に配置されている。各三角溝20Bは、図7に示すように、テーパ管16Bの上端部の僅かな範囲でも形成されている。テーパ管16が下方に向かって流路断面積が拡大されている関係上、各三角溝20Bの深さが三角溝20Bの下端に向うほど浅くなっている。複数の三角溝20Cは、図8に示すように、テーパ管16の下端部から挿入管部16Cの下端に掛けてスロート16の軸方向において連続して形成されている。各三角溝20Cの上端部での溝の深さは、三角溝20Cの上端に向うほど浅くなっている。
【0048】
三角溝20Bの底部の角度θ(図6参照)は90°である。三角溝20A及び20Cの底部の角度θも90°である。三角溝20A,20B.20Cの各深さhは、(8)式の関係を満足する1.0mmである。
【0049】
第1直管部16Aの内径は、ベルマウス15の開放端での内径及び挿入管部16Cの内径よりも小さくなっている。これらの内径は、隣り合う三角溝の間に形成された各三角突起22(図6参照)の頂点を結んで形成される円の直径である。
【0050】
分岐管12からノズルホルダ18内に導かれた流量Qaの駆動水32は、5本のノズル14からそれぞれ噴出流34となって噴射される。これらの噴出流34はベルマウス15を経て第1直管部16A内に達する。各ノズル14から噴出流34が噴射されることによって、ダウンカマ6内でノズル14の周囲に存在する冷却水31、すなわち、被駆動水36がノズル14とベルマウス15の間を通ってベルマウス15内に流入し、第1直管部16A内に達する。噴出流34の噴射によってベルマウス15内に吸引される被駆動水36の流量は、Qbである。流量Qbは流量Qaよりも多くなっている。噴射された駆動水32、及び被駆動水36は、第1直管部16A内で混合されてテーパ管16B及び挿入管部16C内を経てデフューザ17内に導かれ、デフューザ17の下端から下部プレナム21内に冷却水33として排出される。この冷却水33は炉心2に供給される。
【0051】
本実施例のジェットポンプ13は、スロート16の挿入管部16Cを直管にしているので、ジェットポンプの効率を向上させることができる。このジェットポンプの効率向上を、図9を用いて説明する。
【0052】
図9は、デフューザに挿入される、スロートの挿入管部の形状を変えて水を流した場合の実験結果を示している。図9の実線は、挿入管部が直管になっている挿入管部16Cを有するジェットポンプ(第1ジェットポンプという)におけるジェットポンプ効率を示している。挿入管部16Cの内面には、実施例1のように、底部の角度θが90°である複数の三角溝20Cが形成されている。なお、第1ジェットポンプは、ベルマウス及びスロートの第1直管部の内面には、三角溝を形成していない。第1ジェットポンプで直管の挿入管部16Cの内面に三角溝20Cを形成していないジェットポンプ(第2ジェットポンプという)を用いた実験を行ったが、図9に示す実線の結果を得た。図9の破線は、従来のジェットポンプ、すなわち、ベルマウス及びスロートの第1直管部の内面には、三角溝を形成していなく、スロートの挿入管部の内面が挿入管部の下端まで末広がりになっており、その挿入管部の内面に三角溝が形成されていない従来のジェットポンプ(第3ジェットポンプという)におけるジェットポンプ効率を示している。
【0053】
以上の実験結果によれば、挿入管部が直管である第1及び第2ジェットポンプは、挿入管部内面に三角溝のあるなしに拘らず、第3ジェットポンプに比べてジェットポンプの効率が向上する。これは、前述したように、直管の挿入管部によって、外側への広がりが少ない真下に流れる冷却水流をデフューザの入口部で形成することができてデフューザ内への冷却水の押し込み力が増すためである。
【0054】
第2直管部である挿入管部16Cの内面に三角溝20Cを形成しているので、ジェットポンプ13の振動を抑制することができる。この振動抑制を、図10を用いて説明する。
【0055】
図10は、図9に示す実験結果を得た三種類のジェットポンプ、すなわち、第1、第2及び第3ジェットポンプにおける振動を確認するための実験結果を示している。縦軸は、圧力変動の元となるノズル内の変動圧力に対するスロート出口部の変動圧力の割合を示している。つまり、縦軸はスロート内での圧力変動の減衰率を表している。図10に示された実験結果によれば、第3ジェットポンプ(挿入管部:末広がり通路)は、スロート出口部での圧力変動が最も大きくなっている。第1ジェットポンプ(挿入管部:直管(90°三角溝あり))及び第2ジェットポンプ(挿入管部:直管(三角溝なし))は、第3ジェットポンプよりもスロート出口部での圧力変動が小さくなっており、第1ジェットポンプにおけるスロート出口部での圧力変動が最も小さい。
本実施例は、ベルマウス15の内面にも三角溝20Aを形成しているので、ジェットポンプ13の効率をさらに向上させることができる。ベルマウス15に三角溝20Aを形成することによって、減圧域がリング状とはならずに、凹凸のあるものとなる。三角溝20A内は流動抵抗が大きく流速が遅くなるため、三角溝20A内の減圧域が小さくなって流路抵抗が減少し、さらに、クラッドの付着が抑制され、性能維持が可能になる。
【0056】
本実施例は、第1直管部16Aの内面にも三角溝20Bを形成しているので、振動低減効果を得ることができる。
【0057】
ベルマウス15と第1直管部16Aの接続部近傍では、縮流に起因して発生する減圧域が三角溝20B内に形成される。ベルマウス15内に流入した冷却水に含まれているクラッドは、三角溝20B内の減圧域に面する三角溝20Bの表面に付着しようとする。しかしながら、ベルマウス15に形成された三角溝20Aに連続して連なる三角溝20B内を冷却水が流れているので、減圧域での三角溝20Bの表面へのクラッドの付着が抑制される。
【0058】
なお、第1直管部16Aの下流に位置するテーパ管16Bの内面の、軸方向の大部分には、三角溝を形成していない。これは、テーパ管16Bの上流に位置する第1直管部16Aの内面に形成された三角溝20Bの効果により、テーパ管16Bに流入する冷却水が、第1直管部16Aの三角溝20Bの内面近傍で整流されて安定化されているからである。
【0059】
第1直管部16Aとテーパ管16Bの接続部では三角溝20Bの深さがテーパ管16B側の一端に向かって浅くなり、テーパ管16Bと挿入管部16Cの接続部では三角溝20Cの深さがテーパ管16B側の一端に向かって浅くなっている。このように、三角溝20B,20Cの深さhを一端に向かって浅くすることによって、スロート16での流路断面積が変化する部分における圧力損失を軽減することができる。
【0060】
ベルマウス15、第2直管部16A及び挿入管部16Cに三角溝20A,20B及び20Cを形成した本実施例のジェットポンプ13と三角溝20A,20B及び20Cのいずれも形成していないジェットポンプのそれぞれを対象にしたM比とジェットポンプの効率及びスロート内の圧力変動の関係を、図13に示す。実線で示す特性41及び42は直管の挿入管部16Cを有し、さらに三角溝20A,20B及び20Cを形成した本実施例のジェットポンプ13に対する特性である。破線で示す特性43及び44は内部に末広がりの通路を形成した挿入管部を有して三角溝20A,20B及び20Cを形成していないジェットポンプに対する特性である。特性41及び43はM比に対するジェットポンプ効率の変化を示しており、特性42及び44はM比に対するスロート内の圧力変動の変化を示している。
【0061】
直管の挿入管部16Cを有して三角溝20A,20B及び20Cを形成したジェットポンプ13の最大ジェットポンプ効率は、内部に末広がりの通路を形成した挿入管部を有して三角溝20A,20B及び20Cを形成していないジェットポンプのそれよりも高くなる。前者の効率は後者の効率より約2%上昇した。ジェットポンプ13の最大ジェットポンプ効率は、ベルマウス15の内面に三角溝を形成しているので、直管の挿入管部16Cによってもたらされる最大ジェットポンプ効率をさらに高めることができる。直管の挿入管部16Cを有して三角溝20A,20B及び20Cを形成したジェットポンプ13におけるスロート内の圧力変動は、内部に末広がりの通路を形成した挿入管部を有して三角溝20A,20B及び20Cを形成していないジェットポンプのそれよりも小さくなった。本実施例のジェットポンプ13の流力振動が小さくなる。ジェットポンプ13の流力振動は、第1直管部16Aの内面に形成された三角溝20Bによる振動低減効果が加味されるので、直管の挿入管部16Cによってもたらされる振動の低減よりもさらに低減される。
【0062】
既設のBWRにおいてジェットポンプのスロートを図3に示すスロート16に交換することによって、既設のBWRの原子炉圧力容器1内に設置されているジェットポンプをジェットポンプ13に改造することができる。この改造により、既設のBWRのジェットポンプの効率を著しく増大させることができ、既設のBWRにおいて炉心2に供給する冷却水33の流量を著しく増加できる。改造されたジェットポンプ13を有する既設のBWRは、出力増加幅の大きな出力向上を容易に実現することができる。ベルマウス及びスロートは、スロートをスリップジョイント部19から引き抜くことによって、三角溝を内面に形成したベルマウス15及びスロート16と容易に交換することができる。
【0063】
本実施例のジェットポンプ13において、三角溝20A,20B及び20Cのそれぞれの深さhを(9)式の範囲に含まれる、例えば、1.5mmにすることによってスロート16の圧力損失をさらに低下させることができ、ジェットポンプ13のさらなる効率向上に貢献する。
【実施例2】
【0064】
本発明の他の実施例である実施例2のジェットポンプを、図14を用いて説明する。本実施例のジェットポンプ13Aは、実施例1のジェットポンプ13において第1直管部16Aの内面に形成された三角溝20Bを実質的に取り除いた構造を有する。ジェットポンプ13Aの他の構成は、ジェットポンプ13と同じである。
【0065】
ベルマウス15の内面に形成された各三角溝20A及び挿入管部16Cの内面に形成された各三角溝20Cの底部の角度は90°であり、それらの深さhは、(8)式の範囲を満足する1.0mmである。ベルマウス15の内面に形成された各三角溝20Aは、下端部において、第1直管部16A側の一端に向って深さhが第1直管部16Aの内面に一致するように徐々に浅くなっている。
【0066】
本実施例のジェットポンプ13Aは、第2直管部16Aの内面に三角溝20Bを形成することによって得られる効果を除いて、実施例1のジェットポンプ13で生じる各効果を得ることができる。
【0067】
ベルマウス15及び挿入管部16Cに三角溝20A及び20Cを形成した本実施例のジェットポンプ13Aと三角溝20A,20B及び20Cのいずれも形成していないジェットポンプのそれぞれを対象にしたM比とジェットポンプの効率の関係を、図15に示す。実線で示す特性45は三角溝20A及び20Cを形成したジェットポンプ13Aに対する特性である。破線で示す特性46は三角溝20A,20B及び20Cを形成していないジェットポンプに対する特性である。ジェットポンプ13Aの最大ジェットポンプ効率は、三角溝20A,20B及び20Cを形成していないジェットポンプのそれよりも高くなる。
【0068】
既設のBWRにおいてジェットポンプのスロートを図14に示すスロート16に交換することによって、既設のBWRの原子炉圧力容器1内に設置されているジェットポンプをジェットポンプ効率が向上したジェットポンプ13Aに改造することができる。
【0069】
本実施例のジェットポンプ13Aにおいて、ベルマウス15の内面に形成された三角溝20Aを取り除いても良い。このジェットポンプは、スロート16の第2直管部である挿入管部16Cの内面に三角溝20Cを形成しており、ベルマウス15及び第1直管部16Aの各内面には三角溝が形成されていない。このジェットポンプは、第2直管部である挿入管部16Cの内面に三角溝20Cを形成しているので、ジェットポンプの効率を向上させることができ、且つジェットポンプの振動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】沸騰水型原子炉の構成図である。
【図2】図1に示す本発明の好適な一実施例である実施例1のジェットポンプの構成図である。
【図3】図2に示すジェットポンプの上部の拡大縦断面図である。
【図4】図3及び図14のIV−IV矢視図である。
【図5】図3及び図14のV−V断面図である。
【図6】図5のVI部の拡大図である。
【図7】図3のVII部の拡大図である。
【図8】図3のVIII部の拡大図である。
【図9】ジェットポンプのスロートの挿入管部の形状の違いによるジェットポンプ効率の変化を示す特性図である。
【図10】ジェットポンプのスロートの挿入管部の形状の違いによるスロート出口部の変動圧力の変化を示す特性図である。
【図11】三角溝の深さに対する摩擦損失係数の変化を示す特性図である。
【図12】三角溝の底部の角度と三角溝の深さとの関係を示す特性図である。
【図13】図3に示すジェットポンプのジェットポンプ効率及び圧力変動を従来のジェットポンプのこれらと対比して示した特性図である。
【図14】本発明の他の実施例である実施例2のジェットポンプの縦断面図である。
【図15】図14に示すジェットポンプのジェットポンプ効率を従来のジェットポンプのこれと対比して示した特性図である。
【符号の説明】
【0071】
1…原子炉圧力容器、2…炉心、3…炉心シュラウド、6…ダウンカマ、9…再循環系配管、10…再循環ポンプ、13,13A…ジェットポンプ、14…ノズル、15…ベルマウス、16…スロート、16A…第1直管部、16B…テーパ管、16C…挿入管部、17…デフューザ、18…ノズルホルダ、19…スリップジョイント部、20A,20B,20C…三角溝、31…冷却水、32…駆動水、34…噴出流、36…被駆動水。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジェットポンプ及び原子炉に係り、特に、沸騰水型原子炉に適用するに好適なジェットポンプ及び原子炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の沸騰水型原子炉(BWR)は、原子炉圧力容器内にジェットポンプを設置している。ジェットポンプは、ノズル、ベルマウス、スロート及びデフューザを備える。再循環系配管は原子炉圧力容器に接続される。この再循環系配管に設けられた再循環ポンプの駆動によって昇圧された冷却水は、再循環系配管を通り、駆動水としてノズルからジェットポンプ内に噴出される。噴出された駆動水によって、ノズルの周囲に存在する冷却水が被駆動水としてベルマウス及びスロート内に流入する。スロートからデフューザに導かれてデフューザから排出された冷却水は、下部プレナムを経て炉心に供給される(例えば、特開2005−233152号公報参照)。
【0003】
特開平7−119700号公報には、多孔ノズルを用いて旋回流を発生させるジェットポンプが記載されている。このジェットポンプは、ジェットポンプ効率の向上を目的として、デフューザ及びスロートでの圧力損失の低減を図っている。圧力損失の低減のために、デフューザ及びスロートの一方の内面に旋回流発生用のフインまたは溝を設けることが提案されている。直進する流体を旋回させるフインまたは溝の抵抗体を設けた場合には、その設置箇所で摩擦損失が生じる。このため、デフューザまたはスロートでの圧力損失が増加し、ジェットポンプ効率の低下を招く可能性がある。
【0004】
特開平8−135600号公報には、ジェットポンプ効率を向上させるため、スロートの摩擦損失を低減したジェットポンプが記載されている。このジェットポンプは、スロートの内面に、流体の流れ方向に沿って形成された複数の細い溝を周方向に並べたリブレットを形成している。特開平8−135600号公報では、リブレットの定義として、その高さを流体乱流の粘性底層の厚さと等しいとしている。この流体乱流の粘性底層の厚さは、通常、0.1mm以下であり、高流速のスロート部では、粘性底層の厚さはこの値よりも小さな値となる。特開平8−135600号公報には、このリブレットの高さを求める(1)式が開示されている。
【0005】
δ1=123・(uD/ν)7/8・δ ……(1)
ここで、δ1は乱流の粘性底層の厚さ、uD/νはRe数(−)、uは流体流速、Dは管の内径、νは粘性係数、δは管の半径である。
【0006】
BWRのジェットポンプでは、通常、Re数が約1×106及びスロートにおける最小の管半径が約80mmであり、これらを(1)式に代入すると、ブレットの高さδ1は約2×106mm(2km)となる。これは管径の約12500倍であり、(1)式ではブレットの高さを求めることができない。
【0007】
【特許文献1】特開2005−233152号公報
【特許文献2】特開平7−119700号公報
【特許文献3】特開平8−135600号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ジェットポンプの性能は、以下に示すようなM比、N比、効率によって表される。M比は、駆動水(再循環水)の流量Qaに対する、被駆動水(冷却水)の流量Qbの比であり、(2)式で表される。
【0009】
M比 = Qb/Qa ……(2)
N比は、駆動水に対する被駆動水の全水頭比であり、(3)式で表される。
【0010】
N比 = (Hc−Hb)/(Ha−Hc) ……(3)
ここで、Haはノズルの駆動水入口における全水頭、Hbはジェットポンプの被駆動水入口における全水頭、Hcはジェットポンプ出口における全水頭である。効率は、駆動水に対する被駆動水のエネルギーの比であり、M比とN比の積で表される。
【0011】
効率 = M比 × N比 ……(4)
ジェットポンプとしては、M比、N比及び効率がより高いことが望ましい。小さい容量の再循環ポンプを用いて、ジェットポンプから吐出される冷却水流量を効率良く増加させることができれば、再循環系をコンパクト化することができ、再循環系の設置スペースを低減できる。
【0012】
例えば、既設の原子炉(例えば、BWR)で出力向上を行う場合には、炉心流量を増加して炉心の冷却能力を高めることにより、原子炉出力の増大幅を拡大することができる。このように炉心流量を増加させるためには、再循環ポンプ、給水ポンプ及びジェットポンプを改良するとよい。出力向上を目的とした既設の原子炉の改造においては、再循環ポンプ及び給水ポンプなどの大型機器の改造、交換に比べて、ジェットポンプの改良のほうが期間的に有効である。ジェットポンプの性能は、駆動水と被駆動水の混合部の形状に大きく依存するため、発明者らは、スロートでの圧力損失の低減に注目した。さらに、発明者らは、ジェットポンプのベルマウスと直管部との接続近傍で発生するクラッドの付着もジェットポンプ効率を低下させる原因になることを見出した。
【0013】
本発明の目的は、ジェットポンプ効率をさらに向上させることができるジェットポンプ及び原子炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、ジェットポンプのスロートが、ベルマウスに接続されてベルマウスの開放端での内径よりも小さい内径を有する第1直管部、第1直管部の内径よりも大きな内径を有してデフューザに接続される第2直管部、及び第1直管部と第2直管部を接続し、第1直管部側の一端から第2直管部側の他端に向って内径が増大する結合管部を有することにある。
【0015】
スロートのデフューザに接続する部分が第2直管部となっているので、ジェットポンプの効率をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ジェットポンプの効率をさらに向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
従来のジェットポンプのスロートは、ノズルから噴出された駆動水及びノズルの周囲に存在する被駆動水の入口となるラッパ状に開いたベルマウスにつながってこの下流に位置し、駆動水及び被駆動水の混合部となる第1直管部、第1直管部の下流に位置するテーパ管、及びデフューザとの接続部である挿入管部を有する。
【0018】
このスロートで圧力損失が発生する原因は、以下の3つが考えられる。
(a)ベルマウスと第1直管部の接続部近傍で縮流が生じることによって発生するリング状の減圧域により、実質的な流路断面積が狭まることである。
(b)最も流路断面積が小さい第1直管部の摩擦損失及び第1直管部での渦による逆流損失があることである。
(c)デフューザとの接続部である挿入管部からデフューザの上端部への冷却水の流入に起因してその接続部で急激な拡大流が生じることによる拡大流損失があることである。
【0019】
発明者らは、まず、(a)及び(b)の圧力損失を軽減できるジェットポンプを検討した。発明者らは、ベルマウス、及びスロートの第1直管部及び接続部のそれぞれの内面に三角形溝を形成した場合における圧力損失を確認するために、実験を行った。この実験結果を、図11を用いて説明する。図11は、内径55mm(三角溝を形成した管では隣り合う三角溝の間に形成された、180°反対側に位置する三角突起間の距離)の管で、水を用いてレイノルズ数Reが250000で行った実験結果を示す。ここで、横軸は三角溝の深さを表し、縦軸は管の摩擦損失係数λを表している。摩擦損失係数は、以下の式で定義される。
【0020】
ΔP=λ・L/D・1/2・ρu2 ……(5)
ここで、ΔPは摩擦損失、λは摩擦損失係数、Lは管の長さ、Dは管の内径、ρは流体密度及びuは流速である。
【0021】
スロートの第1直管部の内面には、図5に示すように、周方向に複数の三角溝が形成されている。向かい合った2つの面のなす角(底部の角度)が90°及び60°であるそれぞれの三角溝を形成した2つの第1直管部内に水をそれぞれ流した場合の実験結果、すなわち、三角溝の深さと摩擦損失係数の関係を図11に示す。併せて、市販のアクリル管及び市販のステンレス管に対する実験結果も示した。60°の三角溝を形成した第1直管部に対する実験データは一点しかないので、シミュレーションにより求めた結果を破線で示した。
【0022】
底部の角度が90°の三角溝を形成した第1直管部の摩擦損失係数が底部の角度が60°の三角溝を形成した第1直管部のそれよりも小さくなる。底部の角度が90°の三角溝を形成した場合には、三角溝の深さが1.0mmよりも小さいと摩擦損失係数が大きくなる。底部の角度が90°の三角溝の場合では、三角溝の深さが1.3mm以上になると、摩擦損失係数が市販のアクリル管及び市販のステンレス管の摩擦損失係数と同等まで低下する。このため、底部の角度が90°の三角溝を形成する場合では、三角溝の深さを1.0mm以上、好ましくは、それを1.3mm以上にすることが好ましい。
【0023】
底部の角度が60°の三角溝を形成した場合では、摩擦損失係数は、三角溝の深さが1.5mmよりも小さいと摩擦損失係数が大きくなる。底部の角度が60°の三角溝を形成した場合では、三角溝の深さが1.9mm以上になると、摩擦損失係数が市販のアクリル管及び市販のステンレス管の摩擦損失係数と同等まで低下する。このため、底部の角度が60°の三角溝を形成する場合では、三角溝の深さを1.5mm以上、好ましくは、市販ステンレス管と同等の摩擦損失係数となる1.9mm以上にすることが好ましい。
【0024】
第1直管部での整流効果は、三角溝の深さが深いほど大きくなる。しかしながら、三角溝の深さを深くすると、スロートの強度が低下することになる。したがって、三角溝の深さは、整流効果及びスロートの強度を考慮して決定される。この三角溝の深さは5.0mm以下とする。これは、原子炉に用いられるジェットポンプのスロートの肉厚が約10mmであり、強度上の観点から三角溝の深さの上限をスロートの肉厚の半分の5.0mmとした。
【0025】
図12は、図11に示す実験結果及びシミュレーション結果を、三角溝の底部の角度と三角溝の深さの関係で表したものである。特性曲線Bは、摩擦損失係数が小さくなる、底部の角度が90°の三角溝における三角溝の深さ1.0mm及び底部の角度が60°の三角溝における三角溝の深さ1.5mmに基づいて得られた曲線である。特性曲線Aは、摩擦損失係数が最も好ましい市販のアクリル管及び市販のステンレス管の摩擦損失係数と同等になる、底部の角度が90°の三角溝における三角溝の深さ1.3mm及び底部の角度が60°の三角溝における三角溝の深さ1.9mmに基づいて得られた曲線である。
【0026】
この結果、三角溝の深さh(mm)の下限値は、特性曲線Bに基づいて(6)式で表される。
【0027】
h=−1.5767・lnθ+8.1629 ……(6)
ここで、θは三角溝の底部の角度である。lnθはθの自然対数である。摩擦損失係数が市販のアクリル管及び市販のステンレス管のそれと同等になる、好ましい三角溝の深さh(mm)の下限値は、特性曲線Aに基づいて(7)式で表される。
【0028】
h=−1.7219・lnθ+9.0299 ……(7)
この結果、三角溝の深さh(mm)が、(6)式に基づいて得られる(8)式を満足する範囲内に存在すれば、第1直管部の摩擦損失係数を小さくすることができる。
【0029】
−1.5767・lnθ+8.1629≦h≦5.0mm ……(8)
三角溝の深さh(mm)は、好ましくは、(7)式に基づいて得られる(9)式を満足すればよい。
【0030】
−1.7219・lnθ+9.0299≦h≦5.0mm ……(9)
隣り合う三角溝の間に形成された三角突起の頂点の位置は、従来例のスロートの第1直管部の内径と一致させる。これによって、ベルマウスと第1直管部の接続部近傍で縮流が生じることによって発生する減圧域が三角溝内に形成されるので、その接続部の流路断面積が狭くなることを回避することができる。さらに、この三角溝内にベルマウスに流入した冷却水が流れ、三角溝がその冷却水の案内を兼ねることになる。三角溝は、そのような整流機能を有する。
【0031】
ジェットポンプにおいてベルマウスの上端よりも下流で最も流路断面積が小さくなる第1直管部の摩擦損失は、(8)式を満足する深さhを有する三角溝を第1直管部に形成することによって小さくなる。その第1直管部で発生する渦による第1直管部の内面近傍での逆流損失は、その渦が三角溝内を流れ冷却水が三角溝で整流されることによって、第1直管部内を流れる冷却水の主流において軽減される。
【0032】
(8)式または(9)式を満足する深さhを有する三角溝は、ベルマウスの内面に形成しても良い。
【0033】
発明者らは、前述の(c)についても検討をおこなった。スロートの、デフューザとの接続部である挿入管部から、スロート内を流れる冷却水が流出するときに発生する従来構造での拡大流損失は、冷却水がスロートのテーパ部から段差のある広い領域(デフューザ)内に流入することによって発生する。このような流路形状では、冷却水が、挿入管部の下端から直径が拡大したデフューザの内面側に向って急激に広がることによって、挿入管部の下端部の内面付近で急激な圧力変化が発生する。このため、挿入管部の下端付近に形成される止水域でランダムな渦が発生し、この渦に起因した流れの乱れによって圧力損失(拡大流損失)が大きくなる。この圧力損失を低減するために、挿入管部の下端部を内部が末広がりのテーパ管にしないで第2直管部とし、この第2直管部の内面に(8)式または(9)式を満足する深さhを有する複数の三角溝を形成する。これらの三角溝は、挿入管部の直管の内面に周方向に並べて形成される。挿入管部の下端部からデフューザに流入する冷却水の、デフューザ上端部の内面付近での乱れが抑制され、その冷却水の流れが安定化される。このため、挿入管部の下端からデフューザ上端部の流路面積拡大部において、圧力損失を低減することができる。特に、挿入管部の下端部に内径が入口から出口に向かって同じである第2直管部を形成することによって、ジェットポンプの効率が向上した。第2直管部の内径は第1直管部の内径よりも大きくなっている。この第2直管部における複数の三角溝の形成によって、ジェットポンプの振動を抑制することができる。これは、従来のジェットポンプにおけるスロートのテーパ管出口の内面がテーパ管下端まで傾斜して末広がりになっている構造のようにそのテーパ管からデフューザ内に冷却水が広角噴出されるのではなく、第2直管部によって外側への広がりが少ない真下に流れる冷却水流をデフューザの入口部で形成することができてデフューザ内への冷却水の押し込み力を増すことができること、さらに、第2直管部の内面に三角溝を形成することで第2直管部内面近傍の流れが緩やかになり、また、その流れが整流されることによって、デフューザ入口部の内面近傍の圧力変動が減少するからである。
【0034】
(8)式または(9)式を満足する三角溝は、ベルマウスの上端からスロートの第1直管部の下端に掛けて形成することが好ましい。ベルマウスとその第1直管部の接続部近傍では、前述したように、縮流に起因して発生する減圧域が三角溝内に形成される。三角溝を形成した場合には、形成された減圧域は、リング状とはならずに周方向に存在する三角溝によって凹凸のあるものとなる。ベルマウス内に流入する冷却水に含まれているクラッドは、三角溝内の減圧域に面する三角溝の表面に付着しようとする。しかしながら、ベルマウスから連続して連なる三角溝内を流れている冷却水の流速は、三角溝内の流動抵抗が大きいため、遅くなる。この結果、三角溝内に形成される減圧域が小さくなり、三角溝の表面へのクラッドの付着が抑制される。
【0035】
ジェットポンプでの流力振動の発生場所は、ノズルからの噴出流の圧力変動および流路断面積が最も小さく、混合部となるスロートの第1直管部である。この第1直管部の内面に、(8)式または(9)式を満足する深さhを有する複数の三角溝を形成することによって、これらの三角溝の整流効果、及びその第1直管部での渦による圧力変動をそれらの三角溝内での吸収効果を発揮することができるので、第1直管部内を流れる冷却水の主流の流れを安定化させることができ、流力振動を低減させることができる。
【0036】
上記した三角溝を形成することによって圧力損失を軽減することができ、その分、デフューザの吐出圧力であるジェットポンプ出口における全水頭Hcを大きくすることができる。このため、N比の上昇によるジェットポンプの効率の向上が可能となる。
【0037】
上記の検討結果を反映した本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0038】
本発明の好適な一実施例である実施例1のジェットポンプを、図1から図8を用いて説明する。
【0039】
本実施例のジェットポンプ13が適用される沸騰水型原子炉(BWR)の概略の構造を、まず、図1及び図2により説明する。
【0040】
BWRは、原子炉圧力容器(原子炉容器)1を有し、原子炉圧力容器1内に炉心シュラウド3を設置している。複数の燃料集合体(図示せず)が装荷された炉心3が、炉心シュラウド3によって取り囲まれている。気水分離器4及び蒸気乾燥器5が原子炉圧力容器1内で炉心2の上方に配置される。ジェットポンプ13が、原子炉圧力容器1と炉心シュラウド3の間に形成される環状のダウンカマ6内に配置される。原子炉圧力容器1には、再循環系配管9及び再循環ポンプ10を有する再循環系が設けられる。再循環系ポンプ10が設けられた再循環系配管9は、一端が原子炉圧力容器1に接続されてダウンカマ6に連絡され、他端がダウンカマ7内に配置されたライザ管11に接続される。分岐管12がライザ管11の上端に接続され、分岐管12には、二基のジェットポンプ13のそれぞれのノズルホルダ18が接続される。主蒸気配管7及び給水配管8が原子炉圧力容器1に接続される。1つの分岐管12にそれぞれのノズルホルダ18が接続される二基のジェットポンプ13は、1本のライザ管11の両側に配置される。
【0041】
原子炉圧力容器1内の上部に存在する冷却水(被駆動流体)は、給水配管8から原子炉圧力容器1に供給された給水38と混合されてダウンカマ6内を下降する。この冷却水31は、再循環ポンプ10の駆動によって再循環系配管9内に流入し、再循環ポンプ10によって昇圧される。この昇圧された冷却水8を、便宜的に、駆動水(駆動流体)という。この駆動水32は、再循環系配管9、ライザ管11及び分岐管12を通ってジェットポンプ13のノズル14からベルマウス15内に向って噴出される。ノズル14の周囲に存在する、ダウンカマ6内の冷却水31は、駆動水32の噴出によって、ベルマウス15からスロート16内に吸い込まれる。この冷却水31は、駆動水32と共にスロート16内を下降し、デフューザ17から吐出される。デフューザ17から吐出された冷却水(冷却水31及び駆動水10を含む)を、冷却水33と称する。冷却水33は、下部プレナム21を経て炉心2に供給される。冷却水33は、炉心2を通過する際に加熱されて水及び蒸気を含む二相流となる。気水分離器4は蒸気と水を分離する。分離された蒸気は、更に、蒸気乾燥器5で湿分を除去されて主蒸気配管7に排出される。この蒸気は、蒸気タービン(図示せず)に導かれ、蒸気タービンを回転させる。蒸気タービンから排出された蒸気は、復水器(図示せず)で凝縮されて水となる。この水は、給水38として給水配管8より原子炉圧力容器1内に供給される。気水分離器4及び蒸気乾燥器5で分離された水は、落下して冷却水31となる。
【0042】
ノズル14等を有するジェットポンプ13は、再循環ポンプ10の動力を駆動水32から冷却水31に効果的に伝え、ジェットポンプ13から吐出される冷却水33の流量を駆動水32の流量よりも増大させる。具体的には、駆動水32は、炉心2に供給する冷却水33の流量を増加するために用いられる。再循環ポンプ10によって与えられた駆動水32の運動エネルギーが冷却水31に有効に作用すると、冷却水31が駆動されて冷却水33の流量が更に増加する。そのため、駆動水32の運動エネルギーが増加するようにノズル14の出口における駆動水32の流速を増加させると共に、スロート16で流路断面積をベルマウス15の上端部に位置する開放端のそれよりも小さくすることにより冷却水31の速度を増加して静圧を減圧させる。これにより、冷却水31をスロート16に吸い込むことができ、少ない動力で必要な炉心流量を確保することができる。
【0043】
なお、図2には、ジェットポンプ13の性能を評価する上で必要となる前述の(2)式及び(3)式に用いられる変数を該当する部位に併せて記した。
【0044】
本実施例のジェットポンプ13を、図3から図8を用いて詳細に説明する。ジェットポンプ13は、図3に示すように、ノズル14、ベルマウス15、スロート16、デフューザ17及びノズルホルダ18を有する。5本のノズル14が、分岐管12に接続されるノズルホルダ18に取り付けられ、ノズルホルダ18から下方に向かって伸びている。ベルマウス15は、ノズル14の下方に配置される。ノズルホルダ18は、ベルマウス15の上端部に設けられてベルマウス15の半径方向に配置された複数の固定板19(図2参照)によって支持される。ベルマウス15は下端から上端に向って拡がっている。ジェットポンプ13は、ベルマウス15より下方にスロート16及びデフューザ17を配置している。スロート16はベルマウス14の下端に接続され、デフューザ17はスリップジョイント部19でスロート16の下端部に接続される。
【0045】
スロート16は、上端から下端に向って混合部である第1直管部16A,テーパ管(結合管部)16B及び挿入管部(第2直管部)16Cを有する。第1直管部16Aは、ベルマウス15の下端に接続され、ジェットポンプ13のベルマウス15の上端より下方で最も流路断面積が小さくなっている。テーパ管16Bは、第1直管部16Aの下端に接続され、下方に向かって流路断面積が拡大している。第2直管部である挿入管部16Cは、テーパ管16Bの下端に接続され、デフューザ17の上端部に設けられるスリップジョイント部19内に挿入されてデフューザ17に接続される(図3参照)。第1直管部16A及び挿入管部16Cは、入口から出口に向って内径が実質的に同じになっている。
【0046】
ジェットポンプ13は、ベルマウス15の内面に複数の三角溝20Aを、第2直管部16Aの内面に複数の三角溝20Bを、挿入管部16Cの内面に複数の三角溝20Cをそれぞれ形成している。三角溝20A,20B及び20Cは、該当する箇所で、周方向に等間隔で平行に配置されている。三角溝20A,20B及び20Cは、ジェットポンプ13の軸方向に伸びている。
【0047】
複数の三角溝20Aは、ベルマウス15の上端からその下端に掛けてスロート16の軸方向において連続して内面に形成されている。図4はベルマウス15を上方より見た状態を示しており、三角溝20Aがベルマウス15の周方向に並んで配置されている。三角溝20Aはベルマウス15の上端部に形成されている曲面にも形成されている。複数の三角溝20Bが、第1直管部16Bの上端からその下端に掛けてスロート16の軸方向において連続して形成され(図3参照)、図5に示すように、第1直管部16Bの周方向に配置されている。各三角溝20Bは、図7に示すように、テーパ管16Bの上端部の僅かな範囲でも形成されている。テーパ管16が下方に向かって流路断面積が拡大されている関係上、各三角溝20Bの深さが三角溝20Bの下端に向うほど浅くなっている。複数の三角溝20Cは、図8に示すように、テーパ管16の下端部から挿入管部16Cの下端に掛けてスロート16の軸方向において連続して形成されている。各三角溝20Cの上端部での溝の深さは、三角溝20Cの上端に向うほど浅くなっている。
【0048】
三角溝20Bの底部の角度θ(図6参照)は90°である。三角溝20A及び20Cの底部の角度θも90°である。三角溝20A,20B.20Cの各深さhは、(8)式の関係を満足する1.0mmである。
【0049】
第1直管部16Aの内径は、ベルマウス15の開放端での内径及び挿入管部16Cの内径よりも小さくなっている。これらの内径は、隣り合う三角溝の間に形成された各三角突起22(図6参照)の頂点を結んで形成される円の直径である。
【0050】
分岐管12からノズルホルダ18内に導かれた流量Qaの駆動水32は、5本のノズル14からそれぞれ噴出流34となって噴射される。これらの噴出流34はベルマウス15を経て第1直管部16A内に達する。各ノズル14から噴出流34が噴射されることによって、ダウンカマ6内でノズル14の周囲に存在する冷却水31、すなわち、被駆動水36がノズル14とベルマウス15の間を通ってベルマウス15内に流入し、第1直管部16A内に達する。噴出流34の噴射によってベルマウス15内に吸引される被駆動水36の流量は、Qbである。流量Qbは流量Qaよりも多くなっている。噴射された駆動水32、及び被駆動水36は、第1直管部16A内で混合されてテーパ管16B及び挿入管部16C内を経てデフューザ17内に導かれ、デフューザ17の下端から下部プレナム21内に冷却水33として排出される。この冷却水33は炉心2に供給される。
【0051】
本実施例のジェットポンプ13は、スロート16の挿入管部16Cを直管にしているので、ジェットポンプの効率を向上させることができる。このジェットポンプの効率向上を、図9を用いて説明する。
【0052】
図9は、デフューザに挿入される、スロートの挿入管部の形状を変えて水を流した場合の実験結果を示している。図9の実線は、挿入管部が直管になっている挿入管部16Cを有するジェットポンプ(第1ジェットポンプという)におけるジェットポンプ効率を示している。挿入管部16Cの内面には、実施例1のように、底部の角度θが90°である複数の三角溝20Cが形成されている。なお、第1ジェットポンプは、ベルマウス及びスロートの第1直管部の内面には、三角溝を形成していない。第1ジェットポンプで直管の挿入管部16Cの内面に三角溝20Cを形成していないジェットポンプ(第2ジェットポンプという)を用いた実験を行ったが、図9に示す実線の結果を得た。図9の破線は、従来のジェットポンプ、すなわち、ベルマウス及びスロートの第1直管部の内面には、三角溝を形成していなく、スロートの挿入管部の内面が挿入管部の下端まで末広がりになっており、その挿入管部の内面に三角溝が形成されていない従来のジェットポンプ(第3ジェットポンプという)におけるジェットポンプ効率を示している。
【0053】
以上の実験結果によれば、挿入管部が直管である第1及び第2ジェットポンプは、挿入管部内面に三角溝のあるなしに拘らず、第3ジェットポンプに比べてジェットポンプの効率が向上する。これは、前述したように、直管の挿入管部によって、外側への広がりが少ない真下に流れる冷却水流をデフューザの入口部で形成することができてデフューザ内への冷却水の押し込み力が増すためである。
【0054】
第2直管部である挿入管部16Cの内面に三角溝20Cを形成しているので、ジェットポンプ13の振動を抑制することができる。この振動抑制を、図10を用いて説明する。
【0055】
図10は、図9に示す実験結果を得た三種類のジェットポンプ、すなわち、第1、第2及び第3ジェットポンプにおける振動を確認するための実験結果を示している。縦軸は、圧力変動の元となるノズル内の変動圧力に対するスロート出口部の変動圧力の割合を示している。つまり、縦軸はスロート内での圧力変動の減衰率を表している。図10に示された実験結果によれば、第3ジェットポンプ(挿入管部:末広がり通路)は、スロート出口部での圧力変動が最も大きくなっている。第1ジェットポンプ(挿入管部:直管(90°三角溝あり))及び第2ジェットポンプ(挿入管部:直管(三角溝なし))は、第3ジェットポンプよりもスロート出口部での圧力変動が小さくなっており、第1ジェットポンプにおけるスロート出口部での圧力変動が最も小さい。
本実施例は、ベルマウス15の内面にも三角溝20Aを形成しているので、ジェットポンプ13の効率をさらに向上させることができる。ベルマウス15に三角溝20Aを形成することによって、減圧域がリング状とはならずに、凹凸のあるものとなる。三角溝20A内は流動抵抗が大きく流速が遅くなるため、三角溝20A内の減圧域が小さくなって流路抵抗が減少し、さらに、クラッドの付着が抑制され、性能維持が可能になる。
【0056】
本実施例は、第1直管部16Aの内面にも三角溝20Bを形成しているので、振動低減効果を得ることができる。
【0057】
ベルマウス15と第1直管部16Aの接続部近傍では、縮流に起因して発生する減圧域が三角溝20B内に形成される。ベルマウス15内に流入した冷却水に含まれているクラッドは、三角溝20B内の減圧域に面する三角溝20Bの表面に付着しようとする。しかしながら、ベルマウス15に形成された三角溝20Aに連続して連なる三角溝20B内を冷却水が流れているので、減圧域での三角溝20Bの表面へのクラッドの付着が抑制される。
【0058】
なお、第1直管部16Aの下流に位置するテーパ管16Bの内面の、軸方向の大部分には、三角溝を形成していない。これは、テーパ管16Bの上流に位置する第1直管部16Aの内面に形成された三角溝20Bの効果により、テーパ管16Bに流入する冷却水が、第1直管部16Aの三角溝20Bの内面近傍で整流されて安定化されているからである。
【0059】
第1直管部16Aとテーパ管16Bの接続部では三角溝20Bの深さがテーパ管16B側の一端に向かって浅くなり、テーパ管16Bと挿入管部16Cの接続部では三角溝20Cの深さがテーパ管16B側の一端に向かって浅くなっている。このように、三角溝20B,20Cの深さhを一端に向かって浅くすることによって、スロート16での流路断面積が変化する部分における圧力損失を軽減することができる。
【0060】
ベルマウス15、第2直管部16A及び挿入管部16Cに三角溝20A,20B及び20Cを形成した本実施例のジェットポンプ13と三角溝20A,20B及び20Cのいずれも形成していないジェットポンプのそれぞれを対象にしたM比とジェットポンプの効率及びスロート内の圧力変動の関係を、図13に示す。実線で示す特性41及び42は直管の挿入管部16Cを有し、さらに三角溝20A,20B及び20Cを形成した本実施例のジェットポンプ13に対する特性である。破線で示す特性43及び44は内部に末広がりの通路を形成した挿入管部を有して三角溝20A,20B及び20Cを形成していないジェットポンプに対する特性である。特性41及び43はM比に対するジェットポンプ効率の変化を示しており、特性42及び44はM比に対するスロート内の圧力変動の変化を示している。
【0061】
直管の挿入管部16Cを有して三角溝20A,20B及び20Cを形成したジェットポンプ13の最大ジェットポンプ効率は、内部に末広がりの通路を形成した挿入管部を有して三角溝20A,20B及び20Cを形成していないジェットポンプのそれよりも高くなる。前者の効率は後者の効率より約2%上昇した。ジェットポンプ13の最大ジェットポンプ効率は、ベルマウス15の内面に三角溝を形成しているので、直管の挿入管部16Cによってもたらされる最大ジェットポンプ効率をさらに高めることができる。直管の挿入管部16Cを有して三角溝20A,20B及び20Cを形成したジェットポンプ13におけるスロート内の圧力変動は、内部に末広がりの通路を形成した挿入管部を有して三角溝20A,20B及び20Cを形成していないジェットポンプのそれよりも小さくなった。本実施例のジェットポンプ13の流力振動が小さくなる。ジェットポンプ13の流力振動は、第1直管部16Aの内面に形成された三角溝20Bによる振動低減効果が加味されるので、直管の挿入管部16Cによってもたらされる振動の低減よりもさらに低減される。
【0062】
既設のBWRにおいてジェットポンプのスロートを図3に示すスロート16に交換することによって、既設のBWRの原子炉圧力容器1内に設置されているジェットポンプをジェットポンプ13に改造することができる。この改造により、既設のBWRのジェットポンプの効率を著しく増大させることができ、既設のBWRにおいて炉心2に供給する冷却水33の流量を著しく増加できる。改造されたジェットポンプ13を有する既設のBWRは、出力増加幅の大きな出力向上を容易に実現することができる。ベルマウス及びスロートは、スロートをスリップジョイント部19から引き抜くことによって、三角溝を内面に形成したベルマウス15及びスロート16と容易に交換することができる。
【0063】
本実施例のジェットポンプ13において、三角溝20A,20B及び20Cのそれぞれの深さhを(9)式の範囲に含まれる、例えば、1.5mmにすることによってスロート16の圧力損失をさらに低下させることができ、ジェットポンプ13のさらなる効率向上に貢献する。
【実施例2】
【0064】
本発明の他の実施例である実施例2のジェットポンプを、図14を用いて説明する。本実施例のジェットポンプ13Aは、実施例1のジェットポンプ13において第1直管部16Aの内面に形成された三角溝20Bを実質的に取り除いた構造を有する。ジェットポンプ13Aの他の構成は、ジェットポンプ13と同じである。
【0065】
ベルマウス15の内面に形成された各三角溝20A及び挿入管部16Cの内面に形成された各三角溝20Cの底部の角度は90°であり、それらの深さhは、(8)式の範囲を満足する1.0mmである。ベルマウス15の内面に形成された各三角溝20Aは、下端部において、第1直管部16A側の一端に向って深さhが第1直管部16Aの内面に一致するように徐々に浅くなっている。
【0066】
本実施例のジェットポンプ13Aは、第2直管部16Aの内面に三角溝20Bを形成することによって得られる効果を除いて、実施例1のジェットポンプ13で生じる各効果を得ることができる。
【0067】
ベルマウス15及び挿入管部16Cに三角溝20A及び20Cを形成した本実施例のジェットポンプ13Aと三角溝20A,20B及び20Cのいずれも形成していないジェットポンプのそれぞれを対象にしたM比とジェットポンプの効率の関係を、図15に示す。実線で示す特性45は三角溝20A及び20Cを形成したジェットポンプ13Aに対する特性である。破線で示す特性46は三角溝20A,20B及び20Cを形成していないジェットポンプに対する特性である。ジェットポンプ13Aの最大ジェットポンプ効率は、三角溝20A,20B及び20Cを形成していないジェットポンプのそれよりも高くなる。
【0068】
既設のBWRにおいてジェットポンプのスロートを図14に示すスロート16に交換することによって、既設のBWRの原子炉圧力容器1内に設置されているジェットポンプをジェットポンプ効率が向上したジェットポンプ13Aに改造することができる。
【0069】
本実施例のジェットポンプ13Aにおいて、ベルマウス15の内面に形成された三角溝20Aを取り除いても良い。このジェットポンプは、スロート16の第2直管部である挿入管部16Cの内面に三角溝20Cを形成しており、ベルマウス15及び第1直管部16Aの各内面には三角溝が形成されていない。このジェットポンプは、第2直管部である挿入管部16Cの内面に三角溝20Cを形成しているので、ジェットポンプの効率を向上させることができ、且つジェットポンプの振動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】沸騰水型原子炉の構成図である。
【図2】図1に示す本発明の好適な一実施例である実施例1のジェットポンプの構成図である。
【図3】図2に示すジェットポンプの上部の拡大縦断面図である。
【図4】図3及び図14のIV−IV矢視図である。
【図5】図3及び図14のV−V断面図である。
【図6】図5のVI部の拡大図である。
【図7】図3のVII部の拡大図である。
【図8】図3のVIII部の拡大図である。
【図9】ジェットポンプのスロートの挿入管部の形状の違いによるジェットポンプ効率の変化を示す特性図である。
【図10】ジェットポンプのスロートの挿入管部の形状の違いによるスロート出口部の変動圧力の変化を示す特性図である。
【図11】三角溝の深さに対する摩擦損失係数の変化を示す特性図である。
【図12】三角溝の底部の角度と三角溝の深さとの関係を示す特性図である。
【図13】図3に示すジェットポンプのジェットポンプ効率及び圧力変動を従来のジェットポンプのこれらと対比して示した特性図である。
【図14】本発明の他の実施例である実施例2のジェットポンプの縦断面図である。
【図15】図14に示すジェットポンプのジェットポンプ効率を従来のジェットポンプのこれと対比して示した特性図である。
【符号の説明】
【0071】
1…原子炉圧力容器、2…炉心、3…炉心シュラウド、6…ダウンカマ、9…再循環系配管、10…再循環ポンプ、13,13A…ジェットポンプ、14…ノズル、15…ベルマウス、16…スロート、16A…第1直管部、16B…テーパ管、16C…挿入管部、17…デフューザ、18…ノズルホルダ、19…スリップジョイント部、20A,20B,20C…三角溝、31…冷却水、32…駆動水、34…噴出流、36…被駆動水。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動流体を噴出するノズルと、前記ノズルから噴射される前記駆動流体、及び前記ノズルの周囲から吸引される被駆動流体が内部を流れるベルマウス、スロート及びデフューザとを備え、
前記スロートが、前記ベルマウスに接続されて前記ベルマウスの開放端での内径よりも小さい内径を有する第1直管部、前記第1直管部の内径よりも大きな内径を有して前記デフューザに接続される第2直管部、及び前記第1直管部と前記第2直管部を接続し、前記第1直管部側の一端から前記第2直管部側の他端に向って内径が増大する結合管部を有することを特徴とするジェットポンプ。
【請求項2】
複数の三角溝が前記第2直管部の周方向において前記第2直管部の内面に形成されている請求項1に記載のジェットポンプ。
【請求項3】
複数の三角溝が前記ベルマウスの周方向において前記ベルマウスの内面に形成されている請求項2に記載のジェットポンプ。
【請求項4】
複数の三角溝が前記第1直管部の周方向において前記第1直管部の内面に形成されている請求項3に記載のジェットポンプ。
【請求項5】
前記三角溝の底部の角度をθとするとき、前記三角溝の深さh(mm)が、
−1.5767・lnθ+8.1629≦h≦5.0mmを満足している請求項2ないし4のいずれか1項に記載のジェットポンプ。
【請求項6】
前記三角溝の深さh(mm)が、
−1.7219・lnθ+9.0299≦h≦5.0mmを満足している請求項5に記載のジェットポンプ。
【請求項7】
原子炉容器と、前記原子炉容器内に配置され、前記原子炉容器内に配置された炉心に冷却材を供給するジェットポンプとを備え、
前記ジェットポンプが、請求項1ないし6のいずれか1項に記載されたジェットポンプであることを特徴とする原子炉。
【請求項1】
駆動流体を噴出するノズルと、前記ノズルから噴射される前記駆動流体、及び前記ノズルの周囲から吸引される被駆動流体が内部を流れるベルマウス、スロート及びデフューザとを備え、
前記スロートが、前記ベルマウスに接続されて前記ベルマウスの開放端での内径よりも小さい内径を有する第1直管部、前記第1直管部の内径よりも大きな内径を有して前記デフューザに接続される第2直管部、及び前記第1直管部と前記第2直管部を接続し、前記第1直管部側の一端から前記第2直管部側の他端に向って内径が増大する結合管部を有することを特徴とするジェットポンプ。
【請求項2】
複数の三角溝が前記第2直管部の周方向において前記第2直管部の内面に形成されている請求項1に記載のジェットポンプ。
【請求項3】
複数の三角溝が前記ベルマウスの周方向において前記ベルマウスの内面に形成されている請求項2に記載のジェットポンプ。
【請求項4】
複数の三角溝が前記第1直管部の周方向において前記第1直管部の内面に形成されている請求項3に記載のジェットポンプ。
【請求項5】
前記三角溝の底部の角度をθとするとき、前記三角溝の深さh(mm)が、
−1.5767・lnθ+8.1629≦h≦5.0mmを満足している請求項2ないし4のいずれか1項に記載のジェットポンプ。
【請求項6】
前記三角溝の深さh(mm)が、
−1.7219・lnθ+9.0299≦h≦5.0mmを満足している請求項5に記載のジェットポンプ。
【請求項7】
原子炉容器と、前記原子炉容器内に配置され、前記原子炉容器内に配置された炉心に冷却材を供給するジェットポンプとを備え、
前記ジェットポンプが、請求項1ないし6のいずれか1項に記載されたジェットポンプであることを特徴とする原子炉。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−84562(P2010−84562A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252506(P2008−252506)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】
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