説明

ジェル状化粧料

【課題】水を実質的に含まない保湿剤を水溶性増粘剤によりゲル化し、水を含有しないジェル状化粧料を提供すること。
【解決手段】実質的に水を含まない保湿剤を水溶性増粘剤でゲル化したことを特徴とするジェル状化粧料である。本発明のジェル状化粧料は、温感を与えるマッサージジェル、モイスチャージェル、クレンジングジェル、シェービングジェル等として特に好ましく利用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はジェル状化粧料に関する。さらに詳しくは、水溶性増粘剤により保湿剤をゲル化したことを特徴とするジェル状化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
保湿効果を付与する化粧料として、保湿剤配合の水系組成物を水溶性増粘剤でゲル化した水性ジェルが知られている(非特許文献1)。水溶性増粘剤は、水に溶解若しくは膨潤させて、系を増粘させるために使用される増粘剤であり、主に多糖類やカルボキシビニルポリマー等の水溶性高分子を使用してジェル状化粧料が製造されている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
しかしながら、従来の水溶性高分子からなる増粘剤は水を含む系をゲル化させることは出来るが、水を含まない系をゲル化する能力には乏しい。また、そもそもモイスチャージェル等の水溶性保湿剤配合のジェル状化粧料においては、一定量の水を含むことが当業者の常識であり、さらには、水溶性高分子により、水を含まない組成物を増粘させてゲル化させる必要もなく、そのような試みはなされない。
【0004】
一方、水溶性増粘剤として、水溶性高分子のミクロゲルからなる増粘剤が開発され、水を含有する化粧料の増粘剤として利用されている(特許文献3〜5)。
【0005】
【特許文献1】特開2005−325106
【特許文献2】特開2005−225769
【特許文献3】特開2004−157130
【特許文献4】特開2005−132782
【特許文献5】特開2005−145860
【非特許文献1】新化粧品学 南山堂 357〜359頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者等は、上記水溶性高分子のミクロゲルからなる増粘剤を配合する化粧料について鋭意研究を重ねた結果、保湿剤中に該増粘剤を混合すると、驚くべきことに、水が存在しなくても保湿剤がゲル化し、水溶性高分子による増粘作用が水が存在しない保湿剤中にて顕著に発揮されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明の目的は、水を実質的に含まない保湿剤を水溶性増粘剤でゲル化したことを特徴とする、従来の発想では生じ得ない新規なジェル状化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、実質的に水を含まない保湿剤を水溶性増粘剤でゲル化したことを特徴とするジェル状化粧料を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、前記水溶性増粘剤が、水溶性エチレン性不飽和モノマーを分散相に溶解し分散相中にてラジカル重合して得られるミクロゲルからなる増粘剤であることを特徴とする上記のジェル状化粧料を提供するものである。
【0010】
さらに、本発明は、前記水溶性エチレン性不飽和モノマーが、ジアルキルアクリルアミド及びイオン性アクリルアミドであることを特徴とする上記のジェル状化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のジェル状化粧料は水を含まないが、水溶性増粘剤によって希望する粘度のゲルを製造できるので、安定したジェル状化粧料を容易に製造することが可能となる。そして、水を実質的に含有しないため、保湿剤による温感効果を有する化粧料として好ましく利用出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明を詳述する。
【0013】
本発明に用いる保湿剤は水溶性高分子によりゲル状になる限り限定されない、具体的には、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、ソルビトール、マルチトール等が挙げられる。多価アルコールが好ましく、特に好ましくは、グリセリン及び/又は1,3-ブチレングリコールである。2種類以上の保湿剤をゲル化しても良い。
【0014】
本発明に用いる保湿剤は水を実質的に含まないものであり(ゲル化に影響しない程度や、不純物として精製出来ない程度の水が含まれていてもよい)、本発明のジェル状化粧料も実質的に水を含まない。保湿剤の配合量はジェル状化粧料全量に対して5〜99質量%程度であり、希望するゲルの粘度によって適宜決定される。
【0015】
本発明に用いる水溶性増粘剤は保湿剤をゲル化することが出来る限り限定されないが、
水溶性エチレン性不飽和モノマーを分散相に溶解し分散相中にてラジカル重合して得られるミクロゲルからなる増粘剤がゲル化効果の点で特に好ましい。
ミクロゲルからなる増粘剤とは、有機溶媒若しくは油分を分散媒とし水を分散相とする組成物において、水溶性エチレン性不飽和モノマーを分散相に溶解し分散相中にてラジカル重合して得られる合成高分子のミクロゲルからなる増粘剤であり、前記特許文献3(特開2004−43785)に記載されている増粘剤である。
【0016】
すなわち、一般に逆相乳化重合法と称される重合法により製造される高分子ミクロゲルを増粘剤の用途に使用するものであり、特開平2001−114641号公報に開示されているような均一重合系により得られる合成高分子からなる増粘剤とは、その重合方法及び力学物性が異なる。ミクロゲルとは逆相マイクロエマルション重合法などにより製造された合成高分子電解質の微粒子である。このミクロゲルは、水、エタノールあるいは水−エタノール混合溶液中で膨潤し、外観上肉眼的に均一な高粘度溶液を提供できる。これに対して、特開平2001−114641号公報に開示されている均一重合系による合成高分子はミクロゲルではなく、合成高分子を重合後、化粧料に配合するためには粉末状態に粉砕しなければならない。また、合成高分子のゲルが目立ち、外観上問題を生じる場合がある。本発明に用いるミクロゲルは不均一重合系で重合される。得られる合成高分子は微細な高分子ゲル、すなわちミクロゲルとなり、化粧料に配合する際に新たに粉砕して粉末状態にする必要がなく、優れた増粘効果と優れた使用感を発揮し、さらに化粧料の外観上も好ましい。
【0017】
本発明に用いるミクロゲルからなる増粘剤は逆相乳化重合法において製造されることが好ましい。すなわち、有機溶媒若しくは油分を分散媒とし水を分散相とする組成物において、水溶性エチレン性不飽和モノマーを分散相に溶解し分散相中にてラジカル重合して製造される。重合されたミクロゲルは洗浄、乾燥されるが、粉砕する必要はない。
特に適宜選択された親水疎水バランス(HLB)に調節された界面活性剤を使用することにより、逆相乳化重合における重合系が一相マイクロエマルションあるいは微細W/Oエマルションを形成する条件下において、ミクロゲルからなる増粘剤が製造されることが好ましい。
【0018】
一相マイクロエマルションとは熱力学的に安定に油相と水相が共存している状態で油・水間の界面張力は極小になっている状態である。また、微細W/Oエマルションは熱力学的には不安定であるが速度論的に安定に油と水が微細なW/Oエマルションとして存在している状態である。一般的に微細W/Oエマルションの内水相の粒子径は数10〜100nm程度である。これらの状態は系の組成と温度のみで決定され、機械的な攪拌条件などには左右されない。
【0019】
重合系を構成する組成物は、水とは混合しない有機溶媒若しくは油分からなる分散媒(外相を構成する)、水からなる分散相(内相を構成する)とからなる。
好ましい有機溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカンなどのアルカン類;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンなどのシクロアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、デカリン、ナフタレンなどの芳香族および環状炭化水素が挙げられる。
好ましい油分としてはパラフィン油などの非極性油分が挙げられる。
水溶性エチレン性不飽和モノマーは、分散相である水に溶解し次いで分散媒である有機溶媒あるいは油分と混合され、所望の温度に加熱した後、重合開始剤を水相に添加し重合を行う。
【0020】
一般的に不均一重合法では重合中の攪拌条件により製造される高分子の物性が異なることが知られている。その理由は乳化系が熱力学的に安定な状態ではない為に攪拌条件による乳化粒子の形状、サイズに変化が生じる為である。本発明においては、熱力学的に安定な一相マイクロエマルション領域あるいは準安定的である一相領域の近傍に存在する微細W/Oエマルション領域で重合を行うことでこれらの問題を回避できることを見出した。具体的には、通常の熱重合あるいはレドックス重合用の重合開始剤の最適重合温度近傍に上記一相マイクロエマルションあるいは微細W/Oエマルション領域が出現するように重合系の組成(有機溶媒の種類、界面活性剤のHLB)を調節することで微細な水相(水滴)内で高分子を重合することで増粘効果が高いミクロゲルを得ることが可能になった。
【0021】
相図による例を図1に示す。図1は、有機溶媒にヘキサンを使用した場合の、ヘキサン(Wで示す)/界面活性剤/水溶性エチレンモノマー水溶液(Oで示す)の3成分系の相図である。図中に示したA領域が一相マイクロエマルション領域〜微細W/Oエマルション領域であり、この領域で重合を行うことにより、好ましいミクロゲルの重合が可能である。
これに対して、従来の懸濁重合による高分子の増粘剤(例えば、特開平2001−114641号公報記載の方法)では重合時の水滴の粒子径コントロールが困難であり、良質なミクロゲルを得ることは困難である。
【0022】
水溶性エチレン性不飽和モノマーは、非イオン性モノマーとイオン性モノマー(アニオン性モノマー若しくはカチオン性モノマー)とを併用することが好ましい。
非イオン性モノマーは一般式(1)に示すジアルキルアクリルアミドが好ましい。
一般式(1)
【化1】

(R6はHまたはメチル基、R7及びR8はそれぞれ独立にメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基を表わす。)
【0023】
イオン性モノマーは、一般式(2)に示すアニオン性アクリルアミド誘導体または一般式(3)に示すカチオン性アクリルアミド誘導体が好ましい。
一般式(2)
【化2】

(R9及びR10はそれぞれ独立にH又はメチル基、R11は炭素原子数1〜6の直鎖若しくは分岐のアルキル基、Xは金属イオン若しくはNH3を表わす。)

一般式(3)
【化3】

(R12はH又はメチル基、R13はHまたは炭素原子数1〜6の直鎖若しくは分岐のアルキル基、R14は炭素原子数1〜6の直鎖若しくは分岐のアルキル基、R15、R16、R17はメチル基またはエチル基、Yは金属イオンを表わす。)
【0024】
特に好ましいジアルキルアクリルアミドは、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミドである。
特に好ましいイオン性アクリルアミド誘導体は、2-アクリルアミド2-メチルプロパンスルホン酸およびその塩である。
特に好ましいカチオン性アクリルアミド誘導体は、N,N,-ジメチルアミノプロピルアクリルアミドメチルクロライドである。
【0025】
非イオン性モノマーとイオン性モノマーの重合系におけるモノマー組成比(重合系の仕込み比)は、目的とするミクロゲルのモノマー構成比に応じて適宜任意に決定される。ミクロゲルのモノマー構成比と重合系への仕込み比はほぼ同一となる。非イオン性モノマーとイオン性モノマーの重合系の仕込み比(モル比)は、通常、非イオン性モノマー:イオン性モノマー=0.5:9.5〜9.5:0.5、好ましくは1:9〜9:1、さらに好ましくは7:3〜9:1の範囲で共重合に供される。最適比率は、非イオン性モノマー:イオン性モノマー=8:2である。
【0026】
上記の水溶性エチレン性不飽和モノマーを任意に選択して、本発明に用いる(A)成分の増粘剤が重合される。好ましい増粘剤は、水溶性エチレン性不飽和モノマーにジメチルアクリルアミドと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸を用い、これらのモノマーから共重合される2元共重合体のミクロゲルである。この場合に、架橋モノマーは必要がなく、自己架橋により優れた増粘効果と使用感が発揮される増粘剤が得られる。 なお、架橋モノマーを用いることもでき、その場合には一般式(4)で示される架橋モノマーが好ましい。特にメチレンビスアクリルアミドが好ましく、ジメチルアクリルアミドと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸とメチレンビスアクリルアミドからなる共重合体のミクロゲルも、本発明に好ましく使用される。
【0027】
水溶性エチレン性不飽和モノマーを、分散相に溶解して本発明に好ましいミクロゲルを重合するためには、最適な外相油分あるいは有機溶媒と、界面活性剤とをそれぞれを選択することが必要である。すなわち、特許文献1に記載されているように、非イオン界面活性剤の親水性疎水性バランス(HLB)を重合系の組成において相図を作成することにより、熱ラジカル重合に適する温度において曇点を示すように調製することで、通常の熱ラジカル重合温度において一相マイクロエマルションあるいは微細W/Oエマルションを形成する状態を作り、増粘剤として好ましいレオロジー特性を持つミクロゲルが得られる。
【0028】
好ましい界面活性剤は、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレ
イルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンヘキシルデシルエーテル、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレンコレステリルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ソルビタン脂肪酸エステル、モノ脂肪酸グリセリン、トリ脂肪酸グリセリン、ポリグリセリン脂肪酸エステル、イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン、ジステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、トリステアリン酸ポリオキシエチレングリセリルなどが挙げられる。
これらの界面活性剤を適宜組み合わせて所望のHLBに調整して重合系に添加することが出来る。
【0029】
上述したように、ジアルキルアクリルアミドとアクリルアミド系イオン性モノマーを共重合したミクロゲルにおいては、自発的な架橋反応が進行し、特に第三成分として多官能性架橋モノマーを共重合しなくても、化学的に自己架橋されたミクロゲルが得られ、好ましい増粘剤となる。そして、第三成分の多官能性架橋モノマーは必要ではないが、これを添加し共重合しても本発明に好ましく使用されるミクロゲルが合成可能である。
【0030】
多官能性架橋モノマーは、一般式(4)に示されるモノマーが好ましく、一般式(4)で示される架橋モノマーの一種類あるいは二種類以上を使用して架橋することが出来る。これらの架橋性モノマーはジアルキルアクリルアミドとイオン性アクリルアミド誘導体との重合系において効率よく架橋構造を取り得ることが必須である。















一般式(4)
【化4】

【0031】
好ましい架橋性モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリオキシエチレンジアクリレート、ポリオキシエチレンジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、N,N' -メチレンビスアクリルアミド、N,N' -エチレンビスアクリルアミド、イソシアヌル酸トリアリル、ペンタエリスリトールジメタクリレート等が挙げられ、この中から選ばれた一種または二種以上を用いることが出来る。本発明においては、特に、N,N'-メチレンビスアクリルアミドが好ましく使用される。
【0032】
共重合体中の2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸単位とジアルキルアクリルアミド単位の含有量のモル比は、通常、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸単位:ジアルキルアクリルアミド単位=0.5:9.5〜9.5:0.5、好ましくは1:9〜9:1であり、さらに好ましくは=3:7〜1:9である。最適比は2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸単位:ジアルキルアクリルアミド単位=2:8である。
【0033】
増粘剤の粘性は、強解離基であるスルホニル基に基づく静電反発による分子鎖の伸展およびジアルキルアクリルアミドの自発架橋反応あるいは架橋性単量体による架橋構造に起因しているが、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸単位またはその塩の含有量が、ジアルキルアクリルアミド単位に対して5モル%未満では十分に分子鎖の伸展が起こらないため十分な粘度が得られないことがある。
【0034】
架橋性モノマーの使用量は、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸またはその塩とジアルキルアクリルアミドの全モル数に対し0.0001〜2.0モル%の範囲で添加されることが好ましい。0.0001モル%未満で調製された増粘剤は架橋の効果が見られない場合がある。また、2モル%を超えて調製された場合、架橋密度が高すぎてミクロゲルが充分に膨潤出来ないために充分な増粘効果を発揮しない場合がある。
【0035】
本発明に用いるミクロゲルである増粘剤の分子量は、重量平均分子量10万〜500万(PEG換算:GPCによる測定)程度であり、増粘剤として求められる粘度により調節される。
【0036】
上記の重合法によって得られるミクロゲルは、下記(1)〜(3)のすべてのレオロジー的性質を有する。このミクロゲルからなる増粘剤は上記の重合法による製造方法により得られ、増粘剤として好ましく使用される。
(1)ミクロゲルの0.5%(質量百分率)の水分散液の見かけ粘度が、ずり速度1.0s-1において10000mPa・s以上である。
(2)ミクロゲルの0.5%(質量百分率)のエタノール分散液の見かけ粘度が、ずり速度1.0 s-1において5000mPa・s以上である。
(3)ミクロゲルの0.5%(質量百分率)の水分散液若しくはエタノール分散液における動的弾性率が、歪み1%以下、周波数0.01〜10Hzの範囲でG' > G"である。
なお、ミクロゲルの水若しくはエタノール分散液の見かけ粘度とは、コーンプレート型レオメータ(Paar Rhysica製 MCR-300)を用い、測定温度25℃、ずり速度1s-1における粘度である。
また、動的弾性率は、同上の測定装置を用いて測定温度25℃、歪み1%以下で周波数範囲0.1〜10Hzで測定した貯蔵弾性率(G')および損失弾性率(G")の値を意味する。
【0037】
本発明に増粘剤として用いるミクロゲルは重合後簡単な沈殿精製工程を経て粉末状態で分離することが可能である。粉末状に分離されたミクロゲルは、保湿剤に容易に分散して速やかに膨潤しゲル化増粘剤として機能する。
【0038】
本発明においては、上記必須成分の他に油分やエタノールを配合することが出来る。油分やエタノールの配合量は上記必須成分の残余であるが、ジェル状化粧料全量に対して1〜50質量%が好ましい。
【0039】
本発明のジェル状化粧料には、上記保湿剤に水溶性増粘剤を混合してゲル化し、目的に応じて、通常化粧料に配合される水以外の任意配合成分をジェル状に維持出来る範囲内で混合して常法により製造出来る。
【0040】
本発明は特に主要成分の保湿剤がジェル状に増粘されているので、温感皮膚化粧料として好ましく、具体的な製品としては、温感を与えるマッサージジェル、モイスチャージェル、クレンジングジェル、シェービングジェル等の製品として利用されることが特に好ましい。
【実施例】
【0041】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明はこれらの実施例により限定されない。なお、配合量については、他に断りのない限り質量%を示す。
【0042】
「ミクロゲルからなる増粘剤の製造」
合成例1
ジメチルアクリルアミド(興人製)を40gと2-アクリルアミド2-メチルプロパンスルホン酸(Sigma製)9gを250gのイオン交換水に溶解し水酸化ナトリウムでpH=7.0に調節する。還流装置を備えた1000ml三つ口フラスコに、n−ヘキサン250gとポリオキシエチレン(3)オレイルエーテル(エマレックス503、日本エマルション製)8.2gおよびポリオキシエチレン(6)オレイルエーテル(エマレックス506、日本エマルション製)16.4gを入れ混合溶解しN2置換する。この三つ口フラスコにモノマー水溶液を添加してN2雰囲気下で攪拌しながらオイルバスで65℃〜70℃に加熱する。系の温度が65℃〜70℃に達したところで系が半透明なマイクロエマルション状態になっていることを確認した後、過硫酸アンモニウム2gを重合系に添加し重合を開始する。重合系を65〜70℃に3時間攪拌しながら維持することでミクロゲルが生成する。重合終了後ミクロゲル懸濁液にアセトンを加えてミクロゲルを沈殿させ、引き続きアセトンで3回洗浄し、残存モノマーおよび界面活性剤を除去する。沈殿物は濾過後減圧乾燥し、白色粉末状のミクロゲル乾燥物を得る。
【0043】
合成例2
ジメチルアクリルアミド(興人製)を35gと2-アクリルアミド2-メチルプロパンスルホン酸(Sigma製)17.5gを260gのイオン交換水に溶解し水酸化ナトリウムでpH=7.0に調節する。還流装置を備えた1000ml三つ口フラスコに、n−ヘキサン260gとポリオキシエチレン(3)オレイルエーテル(エマレックス503、日本エマルション製)8.7gおよびポリオキシエチレン(6)オレイルエーテル(エマレックス506、日本エマルション製)17.6gを入れ混合溶解しN2置換する。この三つ口フラスコにモノマー水溶液を添加してN2雰囲気下で攪拌しながらオイルバスで65℃〜70℃に加熱する。系の温度が65℃〜70℃に達したところで系が半透明なマイクロエマルション状態になっていることを確認した後、過硫酸アンモニウム2gを重合系に添加し重合を開始する。重合系を65〜70℃に3時間攪拌しながら維持することでミクロゲルが生成する。重合終了後ミクロゲル懸濁液にアセトンを加えてミクロゲルを沈殿させ、引き続きアセトンで3回洗浄し、残存モノマーおよび界面活性剤を除去する。沈殿物は濾過後減圧乾燥し、白色粉末状のミクロゲル乾燥物を得る。
【0044】
合成例3
ジメチルアクリルアミド(興人製)を30gと2-アクリルアミド2-メチルプロパンスルホン酸(Sigma製)26.7gを280gのイオン交換水に溶解し水酸化ナトリウムでpH=7.0に調節する。還流装置を備えた1000ml三つ口フラスコに、n−ヘキサン280gとポリオキシエチレン(3)オレイルエーテル(エマレックス503、日本エマルション製)9.4gおよびポリオキシエチレン(6)オレイルエーテル(エマレックス506、日本エマルション製)19gを入れ混合溶解しN2置換する。この三つ口フラスコにモノマー水溶液を添加してN2雰囲気下で攪拌しながらオイルバスで65℃〜70℃に加熱する。系の温度が65℃〜70℃に達したところで系が半透明なマイクロエマルション状態になっていることを確認した後、過硫酸アンモニウム2gを重合系に添加し重合を開始する。重合系を65〜70℃に3時間攪拌しながら維持することでミクロゲルが生成する。重合終了後ミクロゲル懸濁液にアセトンを加えてミクロゲルを沈殿させ、引き続きアセトンで3回洗浄し、残存モノマーおよび界面活性剤を除去する。沈殿物は濾過後減圧乾燥し、白色粉末状のミクロゲル乾燥物を得る。
【0045】
合成例4
ジメチルアクリルアミド(興人製)を35gと2-アクリルアミド2-メチルプロパンスルホン酸(Sigma製)17.5gおよびメチレンビスアクリルアミド7mgを260gのイオン交換水に溶解し水酸化ナトリウムでpH=7.0に調節する。還流装置を備えた1000ml三つ口フラスコに、n−ヘキサン260gとポリオキシエチレン(3)オレイルエーテル(エマレックス503、日本エマルション製)8.7gおよびポリオキシエチレン(6)オレイルエーテル(エマレックス506、日本エマルション製)17.6gを入れ混合溶解しN2置換する。この三つ口フラスコにモノマー水溶液を添加してN2雰囲気下で攪拌しながらオイルバスで65℃〜70℃に加熱する。系の温度が65℃〜70℃に達したところで系が半透明なマイクロエマルション状態になっていることを確認した後、過硫酸アンモニウム2gを重合系に添加し重合を開始する。重合系を65〜70℃に3時間攪拌しながら維持することでミクロゲルが生成する。重合終了後ミクロゲル懸濁液にアセトンを加えてミクロゲルを沈殿させ、引き続きアセトンで3回洗浄し、残存モノマーおよび界面活性剤を除去する。沈殿物は濾過後減圧乾燥し、白色粉末状のミクロゲル乾燥物を得る。
【0046】
合成例5
ジメチルアクリルアミド(興人製)を35gと2-アクリルアミド2-メチルプロパンスルホン酸(Sigma製)17.5gおよびメチレンビスアクリルアミド70mgを260gのイオン交換水に溶解し水酸化ナトリウムでpH=7.0に調節する。還流装置を備えた1000ml三つ口フラスコに、n−ヘキサン260gとポリオキシエチレン(3)オレイルエーテル(エマレックス503、日本エマルション製)8.7gおよびポリオキシエチレン(6)オレイルエーテル(エマレックス506、日本エマルション製)17.6gを入れ混合溶解しN2置換する。この三つ口フラスコにモノマー水溶液を添加してN2雰囲気下で攪拌しながらオイルバスで65℃〜70℃に加熱する。系の温度が65℃〜70℃に達したところで系が半透明なマイクロエマルション状態になっていることを確認した後、過硫酸アンモニウム2gを重合系に添加し重合を開始する。重合系を65〜70℃に3時間攪拌しながら維持することでミクロゲルが生成する。重合終了後ミクロゲル懸濁液にアセトンを加えてミクロゲルを沈殿させ、引き続きアセトンで3回洗浄し、残存モノマーおよび界面活性剤を除去する。沈殿物は濾過後減圧乾燥し、白色粉末状のミクロゲル乾燥物を得る。
【0047】
合成例6
ジメチルアクリルアミド(興人製)を35gとN,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミドメチルクロライド(興人製)17.5gを260gのイオン交換水に溶解する。還流装置を備えた1000ml三つ口フラスコに、n−ヘキサン260gとポリオキシエチレン(3)オレイルエーテル(エマレックス503、日本エマルション製)8.7gおよびポリオキシエチレン(6)オレイルエーテル(エマレックス506、日本エマルション製)17.6gを入れ混合溶解しN2置換する。この三つ口フラスコにモノマー水溶液を添加してN2雰囲気下で攪拌しながらオイルバスで65℃〜70℃に加熱する。系の温度が65℃〜70℃に達したところで系が半透明なマイクロエマルション状態になっていることを確認した後、過硫酸アンモニウム2gを重合系に添加し重合を開始する。重合系を65〜70℃に3時間攪拌しながら維持することでミクロゲルが生成する。重合終了後ミクロゲル懸濁液にアセトンを加えてミクロゲルを沈殿させ、引き続きアセトンで3回洗浄し、残存モノマーおよび界面活性剤を除去する。沈殿物は濾過後減圧乾燥し、白色粉末状のミクロゲル乾燥物を得る。
【0048】
合成例7
ジメチルアクリルアミド(興人製)を35gとN,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミドメチルクロライド(興人製)17.5gおよびメチレンビスアクリルアミド7mgを260gのイオン交換水に溶解する。還流装置を備えた1000ml三つ口フラスコに、n−ヘキサン260gとポリオキシエチレン(3)オレイルエーテル(エマレックス503、日本エマルション製)8.7gおよびポリオキシエチレン(6)オレイルエーテル(エマレックス506、日本エマルション製)17.6gを入れ混合溶解しN2置換する。この三つ口フラスコにモノマー水溶液を添加してN2雰囲気下で攪拌しながらオイルバスで65℃〜70℃に加熱する。系の温度が65℃〜70℃に達したところで系が半透明なマイクロエマルション状態になっていることを確認した後、過硫酸アンモニウム2gを重合系に添加し重合を開始する。重合系を65〜70℃に3時間攪拌しながら維持することでミクロゲルが生成する。重合終了後ミクロゲル懸濁液にアセトンを加えてミクロゲルを沈殿させ、引き続きアセトンで3回洗浄し、残存モノマーおよび界面活性剤を除去する。沈殿物は濾過後減圧乾燥し、白色粉末状のミクロゲル乾燥物を得る。
【0049】
上記のミクロゲルからなる水溶性増粘剤と、その他の水溶性増粘剤を用いて保湿剤の増粘効果を検討した。結果を[表1]に示す。この結果から、本発明の実施例においては、保湿剤がゲル化して優れたジェル状化粧料を製造出来るが、比較例の水溶性増粘剤ではゲル化出来ないことが分かる。





【0050】
【表1】

【0051】
次に、次に上記のミクロゲルからなる水溶性増粘剤と、その他の水溶性増粘剤を用いて保湿剤の温感効果を検討した。結果を[表2]に示す。この結果から、本発明の実施例においては、優れた温感効果を与えるジェル状化粧料を製造出来るが、比較例の水溶性増粘剤は水が存在しないとゲル化出来ず、そもそも温感効果を与えないことが分かる。
【0052】
【表2】

【0053】
以下の本発明のジェル状化粧料を挙げる。いずれも温感を有する優れたジェル状化粧料である。
【0054】
〔実施例7:温感ジェル〕
配合成分 質量%
グリセリン 20.0
BG 残余
ポリエチレングリコール400 40.0
合成例1のミクロゲル 0.2
ジメチコン 2.0
香料 適量
ムクロジエキス 1.0
ハマメリス 1.0
トウニンエキス 1.0
製造方法
保湿剤を混合し、合成例1のミクロゲルを溶解させる。その後、香料とジメチコンを添加し、植物エキスを添加、均一混合する
【0055】
〔実施例8:温感ジェル〕
配合成分 質量%
グリセリン 残余
BG 30.0
DPG 30.0
PEG/PPG−14/7ジメチルエーテル 20.0
合成例2のミクロゲル 2.0
香料 適量
エチルヘキサン酸セチル 0.5
オウバクエキス 1.0
緑茶エキス 1.0
製造方法
保湿剤を混合し、合成例2のミクロゲルを溶解させる。その後、香料とエチルヘキサン酸セチルを添加し植物エキスを添加、均一混合する。
【0056】
〔実施例9:保湿剤/アルコールジェル〕
配合成分 質量%
グリセリン 5.0
BG 10.0
DPG 10.0
エタノール 20.0
PEG/PPG−14/7ジメチルエーテル 残余
合成例3のミクロゲル 1.0
コラーゲンエキス 1.0
エラスチンエキス 1.0
ブナの芽エキス 1.0
製造方法
アルコール、保湿剤を混合し、合成例3のミクロゲルを溶解させる。
【0057】
〔実施例10:温感シェービング剤〕
配合成分 質量%
ポリエチレングリコール4000 9.0
真球状シリコーン架橋粉体 5.0
1,2−ペンタンジオール 20.0
グリセリン 残部
合成例4のミクロゲル 1.5
ポリエーテル変性シリコーン 4.0
オクタメチルシクロテトラシロキサン 1.0
メチルポリシロキサン 1.0
香料 適量
製造方法
保湿剤に合成例4のミクロゲルを溶解させ、油相を添加しながら、攪拌混合させる。
【0058】
〔実施例11:温感メーククレンジング剤〕
配合成分 質量%
ポリエチレングリコール2000 5.0
プロピレングリコール 20.0
グリセリン 残部
合成例5のミクロゲル 2.0
マルチトール 5.0
シリカ 4.0
ポリエーテル変性シリコーン 3.5
メチルポリシロキサン 2.5
デカメチルシクロペンタシロキサン 8.5
香料 適量
製造方法
保湿剤に合成例5のミクロゲルを溶解させ、油相を添加しながら、攪拌混合させる。
【0059】
〔実施例12:温感マッサージジェル〕
配合成分 質量%
ポリエチレングリコール400 13.0
ポリエチレングリコール6000 4.0
合成例6のミクロゲル 2.5
ポリエーテル変性シリコーン 2.0
活性化ゼオライト 8.0
1,3ブチレングリコール 残部
へキシレングリコール 10.0
デカメチルシクロペンタシロキサン 5.0
製造方法
保湿剤に合成例6のミクロゲルを溶解させ、活性化ゼオライトを分散させたところへ、油相を添加しながら、ホモミキサーにより攪拌混合させる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のジェル状化粧料は水を含まないが、水溶性増粘剤によって希望する粘度のゲルを調製可能であり、安定したジェル状化粧料を容易に提供できる。そして、水を実質的に含有しないため、主成分基剤の保湿剤により優れた温感効果を有するジェル状化粧料として好ましく利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に使用するミクロゲル増粘剤を重合する際のヘキサン/界面活性剤/水溶性エチレンモノマー水溶液の相図の例である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に水を含まない保湿剤を水溶性増粘剤でゲル化したことを特徴とするジェル状化粧料。
【請求項2】
前記水溶性増粘剤が、水溶性エチレン性不飽和モノマーを分散相に溶解し分散相中にてラジカル重合して得られるミクロゲルからなる増粘剤であることを特徴とする請求項1記載のジェル状化粧料。
【請求項3】
前記水溶性エチレン性不飽和モノマーが、ジアルキルアクリルアミド及びイオン性アクリルアミドであることを特徴とする請求項2記載のジェル状化粧料。

【図1】
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【公開番号】特開2007−308399(P2007−308399A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−137331(P2006−137331)
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】