説明

ジェル状毛髪化粧料

【課題】安定した霧状噴霧が可能で、毛髪化粧料として高いアレンジ力、優れた使用感(仕上がりの軽さ)を有するとともに、フレーキングを生じない、外観が透明な新規なジェル状毛髪化粧料の提供。
【解決手段】(a)特定のカチオン性高分子、(b)増粘作用を有する非曳糸性のアニオン性高分子(例えばカルボキシビニルポリマー)、(c)JIS Z−0237規格に準じた傾斜式ボールタック試験(傾斜角30°、25℃、湿度50%)におけるボールナンバーが1〜30である粘着性を有する粘着性高分子、および/または、(d)(d−1)糖アルコール、糖アルコール誘導体、(d−2)糖、糖誘導体、(d−3)ポリアルキレングリコール、の中の少なくとも1群から選ばれる1種または2種以上を、水性溶媒中に含み、粘度が500〜3000mPa・s(30℃、B型粘度計)であり、使用時に霧状に噴霧して用いる非乳化型のジェル状毛髪化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はジェル状毛髪化粧料に関する。さらに詳しくは、霧状噴霧が可能で、毛髪化粧料として高いアレンジ力、優れた使用感(仕上がりの軽さ)を有するとともに、フレーキングを生じない、外観が透明な新規なジェル状毛髪化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ジェル状化粧料は、手のひらに製剤を取り出し、これを皮膚若しくは毛髪などに塗布して用いている。そのため、使用後、手のひら上の残存物などを洗い流すなどの行為が必要となり、使い勝手の点で問題があった。また、このようなジェル状化粧料を噴霧容器に収容して噴霧しようとしても、高粘度の製剤のため霧として噴霧することが困難であった。このような上記問題点を解決したのが特許文献1に示す技術である。
【0003】
この特許文献1の技術は、透明なジェル状組成物を霧状に噴霧できるという優れた効果を奏するが、該組成物を、髪の毛の形を手ぐしなどで自在に好みに応じた形に整えることができるアレンジ力や、再整髪力(再アレンジ力)、優れた使用感(仕上がりの軽さ)などの効果を併せもった毛髪化粧料としての適用についての検討は行っていなかった。
【0004】
また一般に、毛髪化粧料において、アレンジ力を出すには固形油分や液状油分などを乳化する必要あるが、その場合、透明性を得ることはできない。
【0005】
このように既存技術では、霧状噴霧可能な透明ジェル状で、かつ、高いアレンジ力を有するという両立は技術的に困難であった。
【0006】
なお本発明に近い技術を開示する文献として、さらに特許文献2が挙げられる。該特許文献2では、固定力とアレンジ力を兼ね備えた毛髪化粧料について記載されているが、霧状噴霧可能な透明ジェル状で、かつ、アレンジ力が高く、使用感(仕上がりの軽さ)にも優れる毛髪化粧料を得るということを示唆するような記載はない
また毛髪化粧料は、一般に整髪力を上げていこうとすると整髪成分(主に皮膜性高分子)濃度が高くなり、フレーキング(髪型を崩した際に粉のようなものが出てしまう現象)が生じやすくなる傾向がみられるという製剤上の問題点があることから、かかる現象の発生も予防し得ることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−34614号公報
【特許文献2】特開2010−235499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、安定した霧状噴霧が可能で、毛髪化粧料として高いアレンジ力、優れた使用感(仕上がりの軽さ)を有するとともに、フレーキングを生じない、外観が透明な新規なジェル状毛髪化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明は、下記(a)成分と、(b)成分と、(c)成分および/または(d)成分を水性溶媒中に含み、粘度が500〜3000mPa・s(30℃、B型粘度計)であり、使用時に霧状に噴霧して用いる、非乳化型のジェル状毛髪化粧料を提供する。
【0010】
(a)成分:下記式(I)

【0011】
〔式(I)中、R1、R6はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基を表し;R2は炭素原子数1〜10のアルキレン基を表し;R3、R4、R5はそれぞれ独立に炭素原子数1〜24のアルキル基を表し;Aは酸素原子またはNH基を表すか、あるいはAをもたない。Xはハロゲン原子、R’SO4(ただしR’は炭素原子数1〜6のアルキル基)を表す。また、t/u=2/8〜8/2である。〕
で表される構成単位を有するカチオン性高分子、
(b)成分:増粘作用を有する非曳糸性のアニオン性高分子、
(c)成分:JIS Z−0237規格に準じた傾斜式ボールタック試験(傾斜角30°、温度25℃、湿度50%)におけるボールナンバーが1〜30である粘着性を有する粘着性高分子、
(d)成分:(d−1)糖アルコールおよび/または糖アルコール誘導体、(d−2)糖および/または糖誘導体、(d−3)ポリアルキレングリコール、の中の少なくとも1群から選ばれる1種または2種以上。
【0012】
また本発明は、水性溶媒が水および/またはアルコール系溶媒である、上記ジェル状毛髪化粧料を提供する。
【0013】
また本発明は、(a)成分が下記式(II)
【0014】

【0015】
〔式(II)中、t/u=2/8〜8/2である。〕
で表される構成単位を有するビニルピロリドン/N,Nジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩である、上記ジェル状毛髪化粧料を提供する。
【0016】
また本発明は、(b)成分がカルボキシビニルポリマーである、上記ジェル状毛髪化粧を提供する。
【0017】
また本発明は、(c)成分が、下記式(A)で表されるモノマーおよび/または下記式(B)で表されるモノマーと、下記式(C)で表されるモノマーと、および下記式(D)で表されるモノマーとを重合させて得られる粘着性高分子である、上記ジェル状毛髪化粧料を提供する。
【0018】

【0019】
〔式(A)中、R7はHまたはCH3であり、nは0〜30の整数であって(CH2nは分岐鎖を含み、R8はH、OH、OCH3、OCH2CH3またはフェニル基である。〕
【0020】

【0021】
〔式(B)中、R9はHまたはCH3であり、R10、R11はそれぞれ独立にHまたは(CH2kR’’である{ここでkは1〜3の整数であり、R’’はH、OHまたは−NR’’’R’’’’(ただしR’’’、R’’’’はそれぞれ独立にHまたは炭素原子数1〜3のアルキル基である)}。〕
【0022】

【0023】
〔式(C)中、R12はHまたはCH3であり、pは1〜100の整数であり、mは0〜30の整数であり、R13はH、OH、OCH3、OCH2CH3、またはフェニル基であり、Zはオキシエチレン基(EO)、オキシプロピレン基(PO)、オキシブチレン基(BO)、またはグリセリル基である。〕
【0024】

【0025】
〔式(D)中、R14、R15はそれぞれ独立にHまたはCH3であり、qは1〜100の整数であり、Yはオキシエチレン基(EO)、オキシプロピレン基(PO)、オキシブチレン基(BO)、炭素原子数5以上の直鎖または分岐のオキシアルキレン基、またはグリセリル基である(ただし、Yが炭素原子数5以上の直鎖または分岐のオキシアルキレン基であるときは、qは1である)。〕
【0026】
また本発明は、(c)成分が下記式(III)で示される粘着性高分子である、上記ジェル状毛髪化粧料を提供する。
【0027】

【0028】
〔式(III)中、R7〜R15、n、m、p、q、Y、Zは、上記式(A)〜(D)における意味と同じであり;a、b、c、dは各モノマーのモル数を表し、40<a<400、bは80≦b≦300、cは30<c<300、dは0<d<10の範囲の数である。〕
【発明の効果】
【0029】
本発明により、安定した霧状噴霧が可能で、毛髪化粧料として高いアレンジ力、優れた使用感(仕上がりの軽さ)を有するとともに、フレーキングを生じない、外観が透明な新規なジェル状毛髪化粧料が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】JIS Z−0237規格に準じた傾斜式ボールタック試験のための装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
[(a)成分]
本発明では(a)成分として、下記式(I)で表される構成単位を有するカチオン性高分子が用いられる。
【0032】

【0033】
上記式(I)中、各置換基は以下の意味を示す。
【0034】
1、R6はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基を表す。本発明ではR1としてメチル基が、R6として水素原子が、特に好ましい。
【0035】
2は炭素原子数1〜10、好ましくは1〜5、のアルキレン基を表す。本発明ではメチレン基が特に好ましい。
【0036】
3、R4、R5はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜24、好ましくは1〜4、のアルキル基を表す。本発明ではR3、R4がそれぞれメチル基で、R5がエチル基であるのが特に好ましい。
【0037】
Aは酸素原子またはNH基を表すか、あるいはAをもたない。本発明ではAが酸素原子であるのが好ましい。
【0038】
Xはハロゲン原子、R’SO4(ただしR’は炭素原子数1〜6のアルキル基)を表す。ハロゲン原子としてはCl、Br、Iが好ましい。R’としては炭素原子数1〜4、特には1〜2、のアルキル基が好ましい。本発明ではXがC25SO4であるのが特に好ましい。
【0039】
また、t/u=2/8〜8/2であり、好ましくはt/u=3/7〜7/3である。t/uが2/8未満では被膜形成性に劣り、セット力の点で問題があり、一方、t/uが8/2超では水性溶媒(アルコール、水等)に対する溶解性や、毛髪に対する親和性などの点で問題があり、フレーキングしやすくなり、さらには吸湿性が増し、べたつきを感じ、好ましくない。
【0040】
本発明では、(a)成分として下記式(II)
【0041】

【0042】
〔式(II)中、t/u=2/8〜8/2である。〕
で表される構成単位を有するビニルピロリドン/N,Nジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩が最も好ましく用いられる。
【0043】
本発明ジェル状毛髪化粧料において、(a)成分の分子量は1万〜1000万程度のものが好ましく、特には10万〜100万程度のものが好ましく用いられる。分子量が1万未満では毛髪化粧料としてのハリ感が得られ難く、一方、1000万超では溶解性が悪くなり基剤に配合し難くなる。
【0044】
上記式(I)で表されるポリマー、特には式(II)で表されるポリマーは、被膜の柔軟性に優れ、毛髪への親和性、密着性に優れるため、毛髪にしなやかで滑らかな風合いを与える特徴をもったポリマーである。また、本発明では透明性の点においても好ましい。これらポリマーは、GAF社(米国)の「ガフコート」シリーズや、大阪有機工業社の「HCポリマー」シリーズ等として市販されており、商業的に入手可能である。(a)成分は1種または2種以上を用いることができる。
【0045】
(a)成分の配合量は、本発明毛髪化粧料中に0.02〜0.5質量%程度が好ましく、特には0.05〜0.2質量%程度が好ましい。
【0046】
[(b)成分]
本発明に用いられる(b)成分である増粘作用を有する非曳糸性のアニオン性高分子としては、カルボキシビニルポリマーが好ましく用いられる。カルボキシビニルポリマーは、曳糸性がなく、アルカリ中和によって増粘性が増大する性質を有するが、曳糸性がないことから「キレ」がよく、霧状噴霧に好適である。カルボキシビニルポリマーは主としてアクリル酸の重合したものであり、カルボキシル基を有する合成高分子である。(b)成分が「非曳糸性」であることから、曳糸性増粘剤である水溶化セルロース誘導体(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、等)、ポリアクリル酸ナトリウムなどは、本発明の(b)成分には含まれない。
【0047】
(b)成分は、アルカリによってpHを調整して中和させて増粘させて用いるのが好ましい。pH調整剤としてのアルカリとしては、特に限定されるものではないが、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、アミノメチルプロパンジオール等が好ましく用いられる。
【0048】
(b)成分は、「シンタレン」シリーズ(イタリア、V3 SIGMA社製)、「カーボポール」シリーズ(米国、B.F.グッドリッチ社製)、「ハイビスワコー」(和光純薬(株)製)等として市販されており、商業的に入手可能である。(b)成分は1種または2種以上を用いることができる。
【0049】
(b)成分の配合量は、本発明毛髪化粧料中に0.05〜1.0質量%程度が好ましく、特には0.1〜0.5質量%程度が好ましい。
【0050】
[(c)成分]
本発明に用いられる(c)成分としての粘着性高分子は、JIS Z−0237規格に準じた傾斜式ボールタック試験(傾斜角30°、温度25℃、湿度50%)におけるボールナンバーが1〜30である粘着性を有する粘着性高分子である。
【0051】
上記傾斜式ボールタック試験とは、図1に示すような測定装置を用いて測定する粘着性の試験である。具体的には、被測定試料(粘着性物質)を、図1に示す測定装置の傾斜面上に、例えば被膜形成などの方法により設け(「粘着面」)、この粘着面上に、傾斜面の頂部から10cmの部分までを非粘着性のシートで被覆して助走路(「非粘着面」)とし、所定の材質および種々の大きさのボールを傾斜面の頂部から転がしたとき、粘着面上のいずれかの位置において停止したボールのうち、最大の大きさのボールの号数(ボールナンバー)により粘着性を特定する。
【0052】
本発明では上記被測定試料(粘着性物質)として、粘着性高分子の実分50質量%のポリマー溶液を準備し、当該ポリマー溶液で図1の傾斜面に厚さ0.1mmの被膜を形成した後、温度25℃、湿度50%で1日間乾燥させたものを試料面(粘着面)として、ボールタック試験を実施した。測定条件としては、図1に示した測定装置における傾斜面の傾斜角を30°とし、温度25℃、湿度50%において測定し、ボールナンバーが1〜30、より好ましくは3〜25である粘着性を有するものを、本発明における粘着性高分子とした。上記ボールナンバーが1未満では粘着性がなく、毛髪上でもアレンジ力が発現できず、一方、30超では粘着性は高いものの、毛髪上ではべたつきが高くなり整髪が困難となり、本発明効果を得ることができない。
【0053】
本発明において使用される(c)成分の具体例としては、アクリル系高分子としては、例えばアクロナールYJ2720D、アクロナールV215ap、アクロナールN285、アクロナールV210、アクロナールV212(以上、BASF社製品)、プラスサイズL−2700(互応化学社製)、NCOR38−088A、Duro−Tak87−200A、Duro−Tak387−2054/87−2054(以上、National Starch & Chemical社製)、MG−0560、MG−0580(以上、Dow Corning社製)、アクリル酸アルキルエステルであるダイトゾール5000AD(大東化成工業社製)、メタクリル酸アルキルエステル/アクリル酸アルキルエステルコポリマーに属するヨドゾールAH955、PRIMAL PS83D(Rohm & HASS社製)等を挙げることができる。
【0054】
また、下記式(A)で表されるモノマーおよび/または下記式(B)で表されるモノマーと、下記式(C)で表されるモノマーと、および下記式(D)で表されるモノマーとを重合させて得られる粘着性高分子も好適例として挙げられる。
【0055】
以下、式(A)で表されるモノマーをモノマーA、式(B)で表されるモノマーをモノマーB、式(C)で表されるモノマーをモノマーC、式(D)で表されるモノマーをモノマーD、とも記す。モノマーA、B、C、Dはそれぞれ1種または2種以上を用いることができる。
【0056】
<モノマーA>
【0057】

【0058】
〔式(A)中、R7はHまたはCH3であり、nは0〜30の整数であって(CH2nは分岐鎖を含み、R8はH、OH、OCH3、OCH2CH3またはフェニル基である。〕
【0059】
モノマーAの具体例として、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、ステアリルメタクリレート、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸メトキシエチル等が挙げられる。
【0060】
<モノマーB>
【0061】

【0062】
〔式(B)中、R9はHまたはCH3であり、R10、R11はそれぞれ独立にHまたは(CH2kR’’である{ここでkは1〜3の整数であり、R’’はH、OHまたは−NR’’’R’’’’(ただしR’’’、R’’’’はそれぞれ独立にHまたは炭素原子数1〜3のアルキル基である)}。〕
【0063】
モノマーBの具体例として、ジメチルアクリルアミド(DMAA)、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA)等が挙げられる。
【0064】
<モノマーC>
【0065】

【0066】
〔式(C)中、R12はHまたはCH3であり、pは1〜100の整数であり、mは0〜30の整数であり、R13はH、OH、OCH3、OCH2CH3、またはフェニル基であり、Zはオキシエチレン基(EO)、オキシプロピレン基(PO)、オキシブチレン基(BO)、またはグリセリル基である。〕
【0067】
モノマーCの具体例として、アクリル酸ポリオキシエチレングリコール等が挙げられる。
【0068】
<モノマーD>
【0069】

【0070】
〔式(D)中、R14、R15はそれぞれ独立にHまたはCH3であり、qは1〜100の整数であり、Yはオキシエチレン基(EO)、オキシプロピレン基(PO)、オキシブチレン基(BO)、炭素原子数5以上の直鎖または分岐のオキシアルキレン基、またはグリセリル基である(ただし、Yが炭素原子数5以上の直鎖または分岐のオキシアルキレン基であるときは、qは1である)。〕
【0071】
モノマーDの具体例として、ジアクリル酸ポリオキシエチレングリコール、ジメタクリル酸ポリオキシエチレングリコール、グリセリンジメタクリレート等が挙げられる。
【0072】
上記モノマーAおよび/またはB、モノマーC、およびモノマーDを重合させて得られる粘着性高分子として、下記式(III)で示される粘着性高分子が好適例として挙げられる。
【0073】

【0074】
〔式(III)中、R7〜R15、n、m、p、q、Y、Zは、上記式(A)〜(D)における意味と同じであり;a、b、c、dは各モノマーのモル数を表し、40<a<400、bは80≦b≦300、cは30<c<300、dは0<d<10の範囲の数である。〕
【0075】
本発明のボールナンバーが1〜30である粘着性の条件を満たす式(III)で表される各モノマーの質量%は、およそ次のようになる。7.5<モノマーA<62.5(質量%)、20≦モノマーB≦45(質量%)、7.5<モノマーC<60(質量%)、0<モノマーD<10(質量%)。
【0076】
上記粘着性高分子は、上記モノマーAおよび/またはBと、モノマーCと、モノマーDを適切な比率で混合し、必要に応じて適当な溶媒中において、標準的な重合方法を用いて重合させることにより調製することができる。例えば、エタノール中で、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等の重合開始剤を用い、約80℃において8時間熱重合させることによって得ることができ、得られたポリマーを適宜精製して使用することができる。ただしこの製造方法に限定されるものでない。
【0077】
またシリコーン系の粘着性高分子も用いることができ、付加反応型シリコーンであるSD4584PSA、SD4560、SD4570、SD4580、SD4585、SD4587L(以上、東レダウシリコーン社製)、TSR1512、TSR1516(以上、MOMENTIVE社製)等が挙げられる。
【0078】
本発明における(c)成分は、上記の粘着性の条件を満たす高分子であれば、上記列記した具体例に限定されるものでない。毛髪化粧料の透明性という点から、シリコーン系の粘着性高分子に比べ、上記アクリル系高分子、上記モノマーAおよび/またはモノマーBと、モノマーCと、およびモノマーDを重合させて得られる粘着性高分子が好ましく用いられる。本発明では(c)成分を1種または2種以上を用いることができる。
【0079】
(c)成分の配合量は、本発明毛髪化粧料中に0.05〜13質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%である。0.05質量%未満ではアレンジ力、再整髪力等が不足する場合があり、一方、13質量%を超えると仕上がりの軽さを得るのが難しい場合があり、好ましくない。
【0080】
[(d)成分]
本発明の(d)成分は、(d−1)糖アルコールおよび/または糖アルコール誘導体、(d−2)糖および/または糖誘導体、(d−3)ポリアルキレングリコール、の中の少なくとも1群から選ばれる1種または2種以上である。
【0081】
<(d−1)成分>
糖アルコールは、糖類のカルボニル基を還元して得られる、常温で固体状の多価アルコールである。具体的には、マルチトール(「マルビット」;物産フードサイエンス(株)製)、ソルビトール(「ソルビトールC」;物産フードサイエンス(株)製)、リビトール、マンニトール、アラビトール、ガラクチトール、キシリトール、エリトリトール、イノシトール等を例示することができる。中でもべたつき、ごわつきのなさ等の点からソルビトール、マルチトールが好ましい。
【0082】
糖アルコール誘導体としては、糖アルコールにポリオキシエチレン(POE)および/またはポリオキシプロピレン(POP)を付加した付加物、糖アルコールにアルキル基を付加した付加物、糖アルコールをカチオン化したカチオン化物、糖アルコールをアニオン化したアニオン化物、糖アルコールをシリル化したシリル化物などが挙げられる。具体的には、POPソルビット(「ユニオールHS−1600D」「ユニオールHS−2000D」(日油(株)製)など)、POEPOPペンタエリスリトールエーテル(「ユニルーブ5TP−300KB」(日油(株)製))などが挙げられる。
【0083】
<(d−2)成分>
糖としては、単糖類、オリゴ糖類などが挙げられる。具体的には、単糖類としては、三炭糖(例えば、D−グリセリルアルデヒド、ジヒドロキシアセトン等);四炭糖(例えば、D−エリトロース、D−エリトルロース、D−トレオース等);五炭糖(例えば、L−アラビノース、D−キシロース、L−リキソース、D−アラビノース、D−リボース、D−リブロース、D−キシルロース、L−キシルロース等);六炭糖(例えば、D−グルコース、D−タロース、D−ブシコース、D−ガラクトース、D−フルクトース、L−ガラクトース、L−マンノース、D−タガトース等);七炭糖(例えば、アルドヘプトース、ヘプロース等);八炭糖(例えば、オクツロース等);デオキシ糖(例えば、2−デオキシ−D−リボース、6−デオキシ−L−ガラクトース、6−デオキシ−L−マンノース等);アミノ糖(例えば、D−グルコサミン、D−ガラクトサミン、シアル酸、アミノウロン酸、ムラミン酸等);ウロン酸(例えば、D−グルクロン酸、D−マンヌロン酸、L−グルロン酸、D−ガラクツロン酸、L−イズロン酸等)等が挙げられる。
【0084】
糖誘導体としては、糖にPOEおよび/またはPOPを付加した付加物、糖にアルキル基を付加した付加物、糖をカチオン化したカチオン化物、糖をアニオン化したアニオン化物、糖をシリル化したシリル化物などが挙げられる。具体的には、POE(10)メチルグルコシド(=メチルグルセス−10)(「マクビオブライドMG−10E」(日油(株)製)、グルカムE−10(ルーブリゾール(株)製))、POE(20)メチルグルコシド(「マクビオブライドMG−20E」(日油(株)製))、POP(10)メチルグルコシド(「マクビオブライドMG−10P」(日油(株)製)、グルカムP−10(ルーブリゾール(株)製))、POE(20)メチルグルコシド(「マクビオブライドMG−20P」(日油(株)製)、「グルカムP−20」(日本ルーブリゾール(株)製)など))などが挙げられる。中でも毛髪に塗布した際のアレンジ力、経時での再整髪力等の点からPOE(10)メチルグルコシド、POP(10)メチルグルコシド等が好ましい。
【0085】
<(d−3)成分>
(d−3)成分であるポリアルキレングリコールは、エチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)、ブチレンオキサイド(BO)の付加重合体を意味する。本発明では毛髪に塗布した際のアレンジ力、仕上がり後の軽さの点から分子量200〜20000程度のものを用いるのが好ましい。(d−3)成分は市販のものを利用することができ、例えば、EO付加重合体としてはポリエチレングリコール(PEG)200、PEG300、PEG400、PEG600、PEG1000、PEG1540、PEG2000、PEG4000、PEG6000、PEG11000、PEG20000(日油(株)製または東邦化学(株)製)等が挙げられ、PO付加重合体としてはユニオールD−700、ユニオールD−1000、ユニオールD−1200、ユニオールD−2000(以上、いずれも日油(株)製)等が挙げられる。中でも毛髪に塗布した際のアレンジ力の点から分子量1000〜15000のポリエチレングリコールが最も好ましい。
【0086】
(d)成分は上記(d−1)成分、(d−2)成分、(d−3)成分の中の群の中から任意の1種または2種以上を用いることができる。(d)成分は常温固体、常温液体のいずれも用いることができるが、より好ましいのは常温固体である。ただしこれに限定されるものでない。
(d)成分の配合量(合計量)は、本発明毛髪化粧料中に0.05〜13質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%である。0.05質量%未満ではアレンジ力、再整髪力等が不足する場合があり、一方、13質量%を超えると仕上がりの軽さを得るのが難しい場合があり、好ましくない。
【0087】
本発明では上記(a)成分と、(b)成分と、(c)成分および/または(d)成分を、水性溶媒中に溶解してなる。水性溶媒としては水、エタノール等のアルコール系溶媒、あるいはこれらの混合溶媒などが挙げられる。
【0088】
本発明の整髪化粧料は系の粘度が500〜3000mPa・s(30℃、B型粘度計)であり、好ましくは600〜2000mPa・s、特に好ましくは700〜1500mPa・sである。
【0089】
本発明の整髪化粧料は水系で低粘度であるが、粘度の調整は、例えば、配合する共重合体重合度を制御したり、高分子等の添加量の増減、水性溶媒の配合量を調整すること等によって行うことができる。
【0090】
本発明のジェル状毛髪化粧料は、上記(a)成分と(b)成分とが複合体を形成し、さらに、近接する複合体どうしが凝集力により弱い結合をなしている。これにより、通常のジェル状組成物に比べて低い粘度でありながら、弾力感があり、しかも均一なジェルを形成することができるとともに、振盪や細孔通過(例えば、化粧料用噴霧器の噴霧孔通過、など)程度の外力によって、簡単に複合体間の凝集による弱い結合が壊されるので、使用時、簡易に霧状に噴霧して用いることができる。
【0091】
さらに、使用時に複合体間の凝集による弱い結合が崩れても、使用後、静置させておくことにより、複合体どうしが互いに凝集する性質を有することから、そのチキソトロピー性によって、再び近接する複合体間で凝集による弱い結合がなされ、弾力感のあるジェルを形成する。したがって、本発明により、静置時にジェル状をなし、使用時、噴霧器による噴霧等で簡便に霧状に噴霧塗布することができ、使用後、静置させておくと再びもとのジェルに復帰し、かつ、アレンジ力、使用感にも優れるという、全く新しいタイプのジェル状毛髪化粧料が提供される。このジェル状毛髪化粧料は、見た目のプリプリ感(ジェル感)にも優れ、また使用時の手触りにも優れる。また透明感も良好である。
【0092】
本発明毛髪化粧料は非乳化型である。本発明では油分(ただし香料、フェノキシエタノールを除く)、界面活性剤を実質的に含まないことが好ましい。油分を実質的に含まないことにより、べたつき感の低減をより効果的に得ることができ、乳化を行わないことにより外観を透明に調整することができる。また本発明では油分を含まなくても十分な滑らかさを得ることができる。
【0093】
本発明の毛髪化粧料は、例えば、その形態に応じて、従来から毛髪化粧料に使用されている他の成分を、本発明の効果を損なわない範囲で配合してもよい。このような成分として、例えば皮膜形成性高分子が挙げられる。皮膜形成性高分子は通常、上記ボールタック試験でのボールナンバーが(c)成分に比べ低い。
【0094】
皮膜形成性高分子としては、特に限定されるものでなく、従来よりヘアスタイリング剤等の毛髪化粧料に用いられている皮膜形成性高分子を任意に用いることができる。本発明では再整髪性等の点から、アクリル系、ビニル系、ウレタン系の皮膜形成性高分子が好ましく用いられる。
【0095】
<アクリル系およびビニル系皮膜形成性高分子>
アニオン性のものとして、アクリル酸アルキル・ジアセトンアクリルアミド共重合体(プラスサイズL−53P、プラスサイズL−9909B、プラスサイズL−9948B等(いずれも互応化学工業株式会社製))、アクリル酸アルキル・オクチルアクリルアミド共重合体(Dermacryl 79(日本エヌエスシー株式会社製))、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール−25・ジメチコン・アクリレーツ共重合体(ルビフレックスSILK(BASF社製))、アクリル酸・アクリル酸アミド・アクリル酸エチル共重合体(ウルトラホールド8、ウルトラホールドStrong(BASF社製))、アクリル酸アルキル共重合体(アニセットNF−1000,アニセットHS−3000など(大阪有機化学工業株式会社製))等。
【0096】
両性のものとして、アクリル酸オクチルアミド・アクリル酸ヒドロキシプロピルプロピル・メタクリル酸ブチルアミノエチル共重合体(AMPHOMER SH30、AMPHOMER LV−71(日本エヌエスシー株式会社製))、メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン・メタクリル酸アルキル共重合体(ユカフォーマーR205、ユカフォーマー301、ユカフォーマーSM、ユカフォーマー104Dなど(三菱化学株式会社製)、RAMレジン−1000、RAMレジン−2000、RAMレジン−3000、RAMレジン−4000(大阪有機化学工業株式会社製))、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリル酸共重合体(マーコート280、マーコート295(ナルコ社製))、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド・アクリル酸共重合体(マーコートプラス3330、マーコートプラス3331(ナルコ社製))等。
【0097】
カチオン性のものとして、ビニルピロリドン・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体ジエチル硫酸塩(H.C.ポリマー1S(M)、H.C.ポリマー2(大阪有機化学工業株式会社製)、ガフコート755N(ISP社製))、ビニルピロリドン・ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド・ラウリルジメチルアミノプロピルメタクリルアミド共重合体(スタイリーゼW−20(ISP社製))、ビニルピロリドン・メタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル・アクリル酸アルキル・ジアクリル酸トリプロピレングリコール共重合体(コスカットGA467,コスカットGA468(大阪有機化学工業株式会社製)、ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム(マーコート100(ナルコ社製))、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体(マーコート550(ナルコ社製))、塩化トリメチルアミノプロピルアクリルアミド・ジメチルアクリルアミド共重合体等。
【0098】
ノニオン性のものとして、ポリビニルピロリドン〔ルビスコールK17、ルビスコールK30、ルビスコールK90(以上、BASF社製)、PVP K(ISP社製)〕、ビニルピロリドン・酢酸ビニル共重合体〔PVP/VA S−630、PVP/VA E−735、PVP/VA E−335(以上、ISP社製)、ルビスコールVA73W、ルビスコール37E(以上、BASF社製)、PVA−6450(大阪有機化学工業(株)製)〕、ビニルメチルエーテル・マレイン酸アルキル共重合体〔ガントレッツA−425、ガントレッツES−225、ガントレッツES−335(いずれもISP社製)〕、ビニルピロリドン・メタクリルアミド・ビニルイミダゾール共重合体〔ルビセットクリア(BASF社製)〕などが挙げられる。
【0099】
<ウレタン系皮膜形成性高分子>
ウレタン系皮膜形成性高分子としては、例えばシリコーン/ポリエーテル系ポリウレタン樹脂〔ヨドゾールPUD;アクゾノーベル(株)製)〕、「ルビセットP.U.R.」(BASF社製)、特開2006−213706号公報に記載のシリル化ウレタン系ポリマー等が挙げられる。アクリル−ウレタン系皮膜形成性高分子としては、例えば、「DynamX」(アクゾノーベル(株)製)等が挙げられる。
【0100】
皮膜形成性高分子を配合する場合、本発明毛髪化粧料中に0.1〜15質量%程度配合するのが好ましく、より好ましくは1〜4質量%である。
【0101】
また、シリコーン誘導体、多価アルコールも任意添加成分として挙げられる。シリコーン誘導体、多価アルコールは特に限定されず、従来から化粧品等に使用されているものを用いることができる。
【0102】
シリコーン誘導体の具体例として、ジメチコンコポリオール(ポリエーテル変性シリコーン)等が挙げられる。市販品として、シリコーンSC1014M、シリコーン KF−6017P(ともに信越化学)、SILWET−10E、SILWET−10P(ともに日本ユニカー)、シリコーンSH−3771(東レ・ダウコーニング)等を挙げることができる。
【0103】
多価アルコールの具体例としては、2価のアルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、ペンタメチレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール等);3価のアルコール(例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等);多価アルコール重合体(例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ジグリセリン、ポリエチレングリコール、トリグリセリン、テトラグリセリン、ポリグリセリン等);2価のアルコールアルキルエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2−メチルヘキシルエーテル、エチレングリコールイソアミルエーテル、エチレングリコールベンジルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等);2価アルコールアルキルエーテル類(例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル等);2価アルコールエーテルエステル(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、エチレングリコールジアジベート、エチレングリコールジサクシネート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノフェニルエーテルアセテート等);グリセリンモノアルキルエーテル(例えば、キシルアルコール、セラキルアルコール、バチルアルコール等);グリソリッド;テトラハイドロフルフリルアルコール;POE−テトラハイドロフルフリルアルコール;POP−ブチルエーテル;POP・POE−ブチルエーテル;トリポリオキシプロピレングリセリンエーテル;POP−グリセリンエーテル;POP−グリセリンエーテルリン酸;ポリグリセリン等が挙げられる。
【0104】
シリコーン誘導体、多価アルコールを配合する場合、その配合量は、本発明毛髪化粧料中に0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.2〜5.0質量%である。
【0105】
本発明の毛髪化粧料には、上記成分の他に、通常化粧品や医薬品等に用いられる他の成分を、本発明効果を損なわない範囲内で任意に添加することができる。
【0106】
本発明ジェル状整髪化粧料の剤型は、エアゾール系ヘアスプレー、ノンエアゾール系ヘアスプレー、ヘアミスト、ヘアスタイリングジェルなどで、使用時噴霧して用いる。具体的には、例えばディスペンサータイプ、トリガータイプ等の通常の噴霧用化粧料用容器に収容して、使用時に噴霧して用いることにより、容易にミスト状となって、手を汚すことなく、毛髪に簡易に塗布することができる。
【0107】
本発明の毛髪化粧料は、水系で低粘度のため、使用時、霧状に噴霧しても、噴霧容器の噴霧ノズルが詰まることなく、優れたアレンジ力、再整髪力(再アレンジ力)を有して毛髪に広く均一に塗布することができる。なおエアゾール系タイプのものでは通常、噴射剤とともに噴霧容器に充填される。噴射剤としては、プロパン、ブタン、ペンタン、ジメチルエーテル等の液化ガス、窒素、圧縮空気等の圧縮ガスなど、エアゾールの分野に公知の噴射剤を任意に用いることができる。これら噴射剤の配合量は毛髪化粧料(原液)100質量%に対して30〜60質量%程度が好ましい。
【実施例】
【0108】
次に実施例によりさらに本発明を詳述するが、本発明はこれによってなんら限定されるものではない。なお配合量は特記しない限り質量%(実分)で示す。
【0109】
初めに、本実施例で用いた評価方法について記す。
【0110】
[粘度]
試料(100〜200mL)をB型粘度計(ローターNo.2、回転数60rpm、30±2℃)に入れ、ローター回転開始から1分間経過後の試料粘度を測定した。
【0111】
[霧状噴霧]
各試料をディスペンサータイプの噴霧器(「Y−150」:吉野工業(株)製)に収容し、各試料を最大10回噴霧し、霧状に噴霧できるかどうかを確認した。評価は容器を10個用い、評価点の合計点で下記評価基準により評価した。
<評価点>
5点:1回目からきれいに霧状噴霧ができる
4点:2回目からきれいに霧状噴霧ができる
3点:3〜5回目からきれいな霧状噴霧ができる
2点:6〜9回目からきれいな霧状噴霧ができる
1点:10回目できれいな霧状噴霧ができる
0点:霧状噴霧ができない
<評価基準>
◎:評価点合計が40点以上
○:評価点合計が30点以上40点未満
△:評価点合計が20点以上30点未満
×:評価点合計が20点未満
【0112】
[透明性(外観)]
ガラス容器に各試料を収容し、透明性(外観)を目視により判定した。評価は10名で行い、評価点の合計点で下記評価基準により評価した。
<評価点>
5点:透明感がある
4点:やや透明感がある
3点:普通
2点:やや透明感を感じない
1点:透明感を感じない
<評価基準>
◎:評価点合計が40点以上
○:評価点合計が30点以上40点未満
△:評価点合計が20点以上30点未満
×:評価点合計が20点未満
【0113】
[アレンジ力]
1束の黒色バージンヘア(長さ20cm、質量2g)に試料を0.5g塗布し、常温にて乾燥させた後の毛束について、アレンジのしやすさを女性専門パネラー(10名)による官能試験にて、評価点の合計点で下記評価基準により評価した。
<評価点>
5点:アレンジしやすい
4点:ややアレンジしやすい
3点:普通
2点:ややアレンジしにくい
1点:アレンジしにくい
<評価基準>
◎:評価点合計が40点以上
○:評価点合計が30点以上40点未満
△:評価点合計が20点以上30点未満
×:評価点合計が20点未満
【0114】
[仕上がりの軽さ]
1束の黒色バージンヘア(長さ20cm,質量2g)に試料を0.5g塗布し、常温にて乾燥させた後の毛束について、整髪した際の仕上がりの軽さを女性専門パネラー(10名)による官能試験にて、評価点の合計点で下記評価基準により評価した。
<評価点>
5点:軽い仕上がり
4点:やや軽い仕上がり
3点:普通
2点:やや重い
1点:重い
<評価基準>
◎:評価点合計が40点以上
○:評価点合計が30点以上40点未満
△:評価点合計が20点以上30点未満
×:評価点合計が20点未満
【0115】
[再整髪力(1時間後のアレンジ力)]
1束の黒色バージンヘア(長さ20cm,質量2g)に試料を0.5g塗布し、常温にて乾燥させた後の毛束について、塗布直後に整髪を行い、その後1時間後に再度整髪した際のアレンジのしやすさ(再整髪力)を女性専門パネラー(10名)による官能試験にて、評価点の合計点で下記評価基準により評価した。
<評価点基準>
5点:再整髪力がある
4点:やや再整髪力がある
3点:普通
2点:やや再整髪力がない
1点:再整髪力がない
<評価基準>
◎:評価点合計が40点以上
○:評価点合計が30点以上40点未満
△:評価点合計が20点以上30点未満
×:評価点合計が20点未満
【0116】
[フレーキング]
1束の黒色バージンヘア(長さ20cm、質量2g)に試料を0.5g塗布し、常温にて乾燥させた後、毛束を崩した際に白い粉状の物質が毛髪上に生じる(フレーキング現象)かどうかを、女性専門パネラー(10名)による官能試験にて、評価点の合計点で下記評価基準により評価した。
<評価点>
5点:フレーキングが起こらない
4点:ほぼフレーキングが起こらない
3点:普通
2点:ややフレーキングが起こる
1点:フレーキングが起こる
<評価基準>
◎:評価点合計が40点以上
○:評価点合計が30点以上40点未満
△:評価点合計が20点以上30点未満
×:評価点合計が20点未満
【0117】
1.製造例1((c)成分の調製)
下記に示したモノマーA〜Dを用いて重合を行い、本実施例で用いる(c)成分を調製した。
・モノマーA:アクリル酸ブチル(出光興産(株)製) 30部、
・モノマーB:ジメチルアクリルアミド(DMAA)(興人化成(株)製) 30部、
・モノマーC:アクリル酸ポリオキシエチレングリコール(p=10。ブレンマーAE−400。日油(株)製) 15部、およびアクリル酸ポリオキシプロピレングリコール(p=6。ブレンマーAP−400。日油(株)製) 20部(合計:35部)、
・モノマーD:ジアクリル酸ポリオキシエチレングリコール(q=6。NKエステル14G。新中村化学(株)製) 5部。
(製造方法)
上記モノマーA〜D100部を混合した混合物をあらかじめ用意し、この混合物の入った滴下漏斗、還流冷却気、温度計、窒素置換用管および、撹拌機が取り付けられた容量1Lの五つ口フラスコに、エタノール100部を仕込み、窒素気流下、昇温し、還流状態(約80℃)になったところで、このエタノール中に重合開始剤(2,2’−アゾビスイソブチロニトリル)1部を添加し、上記混合物を2時間連続して滴下した。その後、還流状態にて、8時間放置し重合反応を進行させた。次に五つ口フラスコ中の溶液から溶媒を留去および、エタノールを加えることでこの溶液の溶媒含有量を調整し、固形分濃度50%の(c)成分の溶液を得た。
【0118】
この(c)成分(製造例1)の粘着性について、傾斜式ボールタック試験を行ったところ、ボールナンバー5の粘着性を有していた。
【0119】
2.比較例1〜5、実施例1〜7
下記表1に示す試料を用いて、上記評価方法に従い、粘度、霧状噴霧、透明性(外観)、アレンジ力、仕上がりの軽さ、整髪力(1時間後のアレンジ力)、フレーキングについて評価した。結果を表1に示す。なお表1中、(c)成分配合量は実分換算した値で示す。また「ビニルピロリドン・N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩(*)」は上記式(II)に示すポリマー(分子量約100万)を用いた。
【0120】
【表1】

【0121】
表1に示す結果から明らかなように、本発明の毛髪化粧料である実施例1〜7は本発明効果をすべて併せもつことができた。一方、本発明範囲を外れた比較例1〜3は本発明効果を奏することができなかった。なお比較例4は油分、界面活性剤を配合した乳化型の毛髪化粧料で、透明性が得られず、また仕上がりの軽さも得られなかった。
【0122】
3.各配合成分の好適配合量
(c)成分、(d)成分の好適配合量を調べるために、下記表2〜4に示す試料を用いて、上記評価方法に従い、粘度、霧状噴霧、透明性(外観)、アレンジ力、仕上がりの軽さ、整髪力(1時間後のアレンジ力)、フレーキングについて評価した。結果を表2〜4に示す。なお表2〜4中、(c)成分配合量は実分換算した値で示す。また「ビニルピロリドン・N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩(*)」は上記式(II)に示すポリマー(分子量約100万)を用いた。
【0123】
【表2】

【0124】
【表3】

【0125】
【表4】

【0126】
以下にさらに処方例を示す。
【0127】
(実施例8:ミスト状スタイリング剤)
(配 合 成 分) (質量%)
(1)イオン交換水 残余
(2)エタノール 30
(3)カルボキシビニルポリマー 0.2
(4)ビニルピロリドン・N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸
共重合体ジエチル硫酸塩 0.14
(5)メチルグルセス10 3
(6)プロピレングリコール 5
(7)粘着性高分子(製造例1の(c)成分) 1
(8)ビニルピロリドン・酢酸ビニル共重合体 1
(9)香料 適量
(10)EDTA−2Na・2H2O 適量
(11)2−アクリルアミド−2−メチルプロパン 0.2
<製法>
室温条件にて(1)に(3)、(5)、(6)、(10)を加え十分に溶解させ水相パーツを得る。(2)に(9)を加え可溶化させアルコールパーツとする。水相パーツにアルコールパーツを加えて十分に撹拌した後、(11)を加えて中和する。次に(4)を加え十分に撹拌する。さらに、(7)、(8)を加えて十分に撹拌してジェル状の組成物を得る。これらをミストディスペンサーつき容器に充填をし、霧状噴霧可能なジェル状組成物を得る。
【0128】
(実施例9:ミスト状スタイリング剤)
(配 合 成 分) (質量%)
(1)イオン交換水 残余
(2)エタノール 30
(3)カルボキシビニルポリマー 0.30
(4)ビニルピロリドン・N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸
共重合体ジエチル硫酸塩 0.14
(5)ソルビトール 2
(6)グリセリン 5
(7)粘着性高分子(製造例1の(c)成分) 1
(8)PEG−10メチルエーテルジメチコン 0.5
(9)香料 適量
(10)EDTA−2Na 適量
(11)2−アクリルアミド−2−メチルプロパン 0.2
<製法>
室温条件にて(1)に(3)、(5)、(6)、(10)を加え十分に溶解させ水相パーツを得る。(2)に(9)を加え可溶化させアルコールパーツとする。水相パーツにアルコールパーツを加えて十分に撹拌した後、(11)を加えて中和する。次に(4)を加え十分に撹拌する。さらに、(7)、(8)を加えて十分に撹拌してジェル状の組成物を得る。これらをミストディスペンサーつき容器に充填をし、霧状噴霧可能なジェル状組成物を得る。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明のジェル状毛髪化粧料は、外観が透明で、安定した霧状噴霧が可能で、かつ毛髪化粧料として高いアレンジ力、優れた使用感(仕上がりの軽さ)を有し、フレーキングを生じない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分と、(b)成分と、(c)成分および/または(d)成分を水性溶媒中に含み、粘度が500〜3000mPa・s(30℃、B型粘度計)であり、使用時に霧状に噴霧して用いる、非乳化型のジェル状毛髪化粧料。
(a)成分:下記式(I)

〔式(I)中、R1、R6はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基を表し;R2は炭素原子数1〜10のアルキレン基を表し;R3、R4、R5はそれぞれ独立に炭素原子数1〜24のアルキル基を表し;Aは酸素原子またはNH基を表すか、あるいはAをもたない。Xはハロゲン原子、R’SO4(ただしR’は炭素原子数1〜6のアルキル基)を表す。また、t/u=2/8〜8/2である。〕
で表される構成単位を有するカチオン性高分子、
(b)成分:増粘作用を有する非曳糸性のアニオン性高分子、
(c)成分:JIS Z−0237規格に準じた傾斜式ボールタック試験(傾斜角30°、温度25℃、湿度50%)におけるボールナンバーが1〜30である粘着性を有する粘着性高分子、
(d)成分:(d−1)糖アルコールおよび/または糖アルコール誘導体、(d−2)糖および/または糖誘導体、(d−3)ポリアルキレングリコール、の中の少なくとも1群から選ばれる1種または2種以上。
【請求項2】
水性溶媒が水および/またはアルコール系溶媒である、請求項1記載のジェル状毛髪化粧料。
【請求項3】
(a)成分が下記式(II)

〔式(II)中、t/u=2/8〜8/2である。〕
で表される構成単位を有するビニルピロリドン/N,Nジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩である、請求項1または2記載のジェル状毛髪化粧料。
【請求項4】
(b)成分がカルボキシビニルポリマーである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のジェル状毛髪化粧料。
【請求項5】
(c)成分が、下記式(A)で表されるモノマーおよび/または下記式(B)で表されるモノマーと、下記式(C)で表されるモノマーと、および下記式(D)で表されるモノマーを重合させて得られる粘着性高分子である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のジェル状毛髪化粧料。

〔式(A)中、R7はHまたはCH3であり、nは0〜30の整数であって(CH2nは分岐鎖を含み、R8はH、OH、OCH3、OCH2CH3またはフェニル基である。〕

〔式(B)中、R9はHまたはCH3であり、R10、R11はそれぞれ独立にHまたは(CH2kR’’である{ここでkは1〜3の整数であり、R’’はH、OHまたは−NR’’’R’’’’(ただしR’’’、R’’’’はそれぞれ独立にHまたは炭素原子数1〜3のアルキル基である)}。〕

〔式(C)中、R12はHまたはCH3であり、pは1〜100の整数であり、mは0〜30の整数であり、R13はH、OH、OCH3、OCH2CH3、またはフェニル基であり、Zはオキシエチレン基(EO)、オキシプロピレン基(PO)、オキシブチレン基(BO)、またはグリセリル基である。〕

〔式(D)中、R14、R15はそれぞれ独立にHまたはCH3であり、qは1〜100の整数であり、Yはオキシエチレン基(EO)、オキシプロピレン基(PO)、オキシブチレン基(BO)、炭素原子数5以上の直鎖または分岐のオキシアルキレン基、またはグリセリル基である(ただし、Yが炭素原子数5以上の直鎖または分岐のオキシアルキレン基であるときは、qは1である)。〕
【請求項6】
(c)成分が下記式(III)で示される粘着性高分子である、請求項5記載のジェル状毛髪化粧料。

〔式(III)中、R7〜R15、n、m、p、q、Y、Zは、上記式(A)〜(D)における意味と同じであり;a、b、c、dは各モノマーのモル数を表し、40<a<400、bは80≦b≦300、cは30<c<300、dは0<d<10の範囲の数である。〕

【図1】
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【公開番号】特開2012−136514(P2012−136514A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−265448(P2011−265448)
【出願日】平成23年12月5日(2011.12.5)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】