説明

ジエン−ベースのポリマーラテックスの水素化

【課題】ジエン−ベースのポリマーラテックスの水素化を提供する。
【解決手段】本発明は、第1主触媒成分と第2水不溶性触媒成分とをベースとするin situ調製された触媒活性系による、いかなる有機溶媒も用いないジエン−ベースのポリマーラテックス中の炭素−炭素二重結合の水素化方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いかなる有機溶媒も用いず、VIII族貴金属ベースの触媒を使用することによる、ラテックス形態で存在するジエン−ベースのポリマー中の炭素−炭素二重結合の選択的水素化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー中の炭素−炭素二重結合が触媒の存在下に水素で有機溶媒中のポリマーを処理することによって成功裡に水素化されてもよいことは公知である。かかる方法は、例えば、芳香族またはナフテン基中の二重結合が水素化されず、かつ、炭素と窒素または酸素などの他の原子との間の二重または三重結合が影響を受けないように水素化される二重結合に選択的であることができる。この分野の技術は、コバルト、ニッケル、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、およびパラジウムをベースとする触媒をはじめとする、かかる水素化に好適な触媒の多くの例を含む。触媒の好適性は、必要とされる水素化度、水素化反応の速度、ならびにポリマー中の、カルボキシルおよびニトリル基などの、他の基の存在または不存在に依存する。(特許文献1)、(特許文献2)、(特許文献3)、(特許文献4)、および(特許文献5)などの、この分野で出願された多くの特許および特許出願が既に存在してきた。
【0003】
しかしながら、多くのジエン−ベースのポリマー、コポリマーまたはターポリマーはエマルジョン重合法によって製造され、それらが重合反応器から排出されるとき、それらはラテックス形態にある。それ故、ラテックス形態でジエン−ベースのポリマーを直接水素化することが非常に望ましく、この手法はここ10年間で段々と注目を集めつつある。多くの取組みがかかる方法を実現するために行われてきた。
【0004】
今までのところ、酸素、空気または過酸化水素のような酸化剤と一緒に還元剤としてヒドラジンまたはヒドラジンの誘導体を使用するC=C結合の水素化が大きく注目されてきた。C=C結合を飽和させるための水素源はそのとき、ジイミドがまた中間体として形成されるレドックス反応の結果としてその場発生する。
【0005】
(特許文献6)で、ラテックス水素化はジイミドをその場生成させるためにヒドラジン水和物/過酸化水素(または酸素)レドックス系を使用して行われている。CuSOまたはFeSOが触媒として使用されている。
【0006】
(特許文献7)および(特許文献8)は、ジイミド手法を用いるラテックス水素化中にまたはその後に形成する架橋ポリマー鎖を破壊するために水素化ラテックスをオゾンで処理する、より洗練されたラテックス水素化方法を提供している。
【0007】
(特許文献9)は、ジイミド水素化ルートを用いる水素化中に形成された架橋を破壊するために、ある化合物をラテックス水素化前、中または後に添加できることを開示している。この化合物は、第一級または第二級アミン、ヒドロキシルアミン、イミン、アジン、ヒドラゾンおよびオキシムから選択することができる。
【0008】
(特許文献10)は、触媒としての少なくとも4の酸化状態の金属原子(Ti(IV)、V(V)、Mo(VI)およびW(VI)などの)を含有する金属化合物の存在下にヒドラジンおよび酸化性化合物を使用することによる水性分散系形態での不飽和ポリマーのC=C結合の水素化方法を記載している。
【0009】
(非特許文献1)および(非特許文献2)に、ジイミド水素化ルートの利用によるニトリル・ブタジエンゴムラテックスの水素化に関する詳細な研究が提示されており、それは水素化効率および水素化度の調査について触れている。ラテックス形態でのポリマーの架橋を開始するラジカルを生成する、副反応がラテックス粒子の界面相でおよびポリマー相内に存在することが分かった。ラジカル捕捉剤の使用は、ゲル形成の程度を抑えるのに役立ついかなる証拠も示さなかった。
【0010】
架橋を減らすために開発された方法は存在するが、前述のジイミド・ルートは、高い水素化転化率が達成されるときに特に、ゲル形成問題に依然として直面する。それ故、生じた水素化ゴム塊は、その巨視的な三次元架橋構造のために、加工することが困難であるかまたはさらなる使用に不適当である。
【0011】
(特許文献11)は、パラジウム化合物である水素化触媒の存在下に水素での不飽和ニトリル基含有ポリマーの炭素−炭素二重結合の選択的水素化方法を記載している。この方法では、不飽和ニトリル基含有ポリマーの水性エマルジョンが水素化にかけられ、さらに、ポリマーを溶解または膨潤させることができる有機溶媒が1:1〜1:0.05の範囲の水性エマルジョン対有機溶媒の容量比で使用される。水性エマルジョンは、乳化した状態を維持しながらガス状のまたは溶解した水素と接触させられる。
【0012】
(特許文献12)は、ポリマー中のC=C二重結合の選択的水素化方法を開示している。前記方法は、20容量%以下の有機溶媒を含むポリマーの水性分散系で、ロジウムのおよび/またはルテニウムの塩および錯化合物から選択された少なくとも1つの水素化触媒の存在下にポリマーを水素と反応させることを含む。好適なロジウム含有触媒は、式RhX(L(式中、Xはハロゲン化物、カルボン酸のアニオン、アセチルアセトナート、アリール−もしくはアルキルスルホネート、ヒドリドまたはジフェニルトリアジンアニオンであり、そしてL、LおよびLは独立してCO、オレフィン、シクロオレフィン、ジベンゾホスホール、ベンゾニトリル、PRまたはRP−A−PRであり、mは1または2であり、そしてnは0、1または2である、ただし、L、LまたはLの少なくとも1つは式PRまたはPR−A−PR(ここで、Rはアルキル、アルキルオキシ、シクロアルキル、シクロアルキルオキシ、アリールまたはアリールオキシである)の上述のリン含有配位子の1つである)のロジウム・リン錯体である。(特許文献13)は、グラフトポリマーを製造するためにルテニウムおよび/またはロジウム含有触媒の存在下にラテックス形態でポリマーを水素化する同一原理技術を用いている。
【0013】
(特許文献14)は、ジエン−ベースのポリマーラテックスのさらなる水素化方法を記載している。2−クロロ−1,3−ブタジエン(コ)ポリマーのラテックスは、(コ)ポリマーを溶解または膨潤させる有機溶媒中の触媒の溶液または分散系と混合され、次に水素と接触させられる。使用される触媒は、式MeCl(P(C(式中、Meは遷移金属であり、Clは塩素であり、bは整数で、1に等しいかまたはそれより大きく、そしてa+bは6未満かまたはそれに等しい整数である)を有する、いわゆるウィルキンソン(Wilkinson)触媒である。実施例では、−42℃のTおよび150,000の数平均分子量Mを有するポリ(2−クロロ−1,3−ブタジエン)ゴムのラテックスがRhCl(PPhおよびPhPを含有するトルエン溶液に加えられ、100℃および5.0MPaで2時間水素化されてT=−54℃およびM=120,000の水素化ポリマーを得た。
【0014】
(非特許文献3)に、多くのRuCl(PPh錯体触媒の存在下に実施される、ニトリル−ブタジエンゴム(「NBR」)エマルジョンでのC=C結合の2つの選択的水素化方法が記載されている。その方法の1つは、NBRポリマーおよび触媒を溶解させることができ、そしてエマルジョンと相溶性である有機溶媒が使用される、均一系で実施されている。他の方法は、触媒を溶解させ、そしてポリマー粒子を膨潤させることができるが、水性エマルジョン相と混和しない有機溶媒が使用される、不均一系で実施されている。両方法とも、ポリマーを溶解または膨潤させるためのある量の有機溶媒を用いてC=C二重結合の定量的水素化を実現することができる。
【0015】
(特許文献15)は、ルテニウムおよび/またはロジウムと、遷移金属と配位化合物を形成することができる少なくとも1つの非イオン性リン化合物とを含む少なくとも1つの水素化触媒の存在下に水素でのポリマー中の非芳香族C=CおよびC≡C結合の選択的水素化方法であって、水素化触媒が溶媒を加えることなくポリマーの水性分散系へ組み入れられる方法を教示している。Ruおよび/またはRu錯体またはRuおよび/またはRu塩が触媒として使用される。好ましい非イオン性リン化合物の例は、PRまたはRP(O)Z(O)PR[Rは、例えばC1〜10アルキル、C4〜12シクロアルキル、C1〜10アルコキシ、アリール(オキシ)およびFを表し、Zは二価炭化水素残基であり、x、y=0、1である]である。この特別な場合のために、アクリル酸−ブタジエン−スチレンコポリマーラテックスが、重合前にRu塩が触媒前駆体としてモノマー水性溶液中へ分散されたことを意味する、ルテニウム(III)トリス−2,4−ペンタンジオネートをまた含有するモノマーの混合物のラジカル重合によって製造された。水性ポリマー分散系を得た後、BuPがラテックスに加えられた。この系が周囲温度で16時間撹拌され、それに150℃および280バールで30時間の苛酷な条件での水素化が続いた。それによって触媒はその場合成され、それ故、触媒を運ぶための有機溶媒は全く使用されなかった。その場合成された触媒は油溶性であるが、水素化は有機媒体中の代わりに水性分散系中で実施される。しかしながら、(特許文献15)の操作手順、すなわち、重合が行われる前のモノマー混合物への触媒前駆体の添加は、触媒前駆体が重合に悪影響を及ぼすかもしれないこと、および触媒前駆体の一部が重合中に失活させられるかもしれないことをはじめとする、幾つかの問題と関係する。
【0016】
(非特許文献4)に、エマルジョン中に存在するスチレン−ブタジエン繰り返し単位(SBRゴム)またはニトリル−ブタジエン繰り返し単位(NBR)を有するポリマーだけでなく、ポリブタジエン(PBD)の水素化に関して報告されている。かかる水素化は、
例えば[RhCl(HEXNa)(HEXNa=PhP−(CH−CONa)およびRhCl(TPPMS)(TPPMS=モノスルホン化トリフェニルホスフィン)のような水溶性ロジウム錯体によって触媒される。しかしながら、この方法は、幾らかの有機溶媒の存在下に実施される。用いられる条件下で、この触媒は反応中に有機相へ抽出される。これは、両親媒性HEXNa配位子によって与えられる錯体の相間移動性に起因する。
【0017】
(非特許文献5)に、いかなる有機溶媒もなしで、ニトリルゴムラテックスの水素化のために、ウィルキンソン触媒の水溶性類似体、すなわち、RhCl(TPPMS)(ここで、TPPMSはモノスルホン化トリフェニルホスフィンを表す)を使用することが記載されている。水素化は、ラテックスの凝固なしに穏和な条件(1気圧の水素圧、75℃)下に起こり、60%以下の水素化を達成することができる。水素化がラテックスのゲル含有率の増加を伴ったことが分かる。
【0018】
(特許文献16)は、有機溶媒を用いずにVIII族金属またはそれらの化合物と親水性有機ホスフィン配位子とを含有0する水溶性触媒を使用する不飽和ポリマーラテックスの水素化方法を開示している。実施例に開示されているようにこの方法では、0.133ミリモル(Rhとして)のクロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウムダイマーが0.372ミリモルのP(CSONa)と撹拌されて錯体触媒の水溶液を生成した。1部のかかる触媒溶液が水素化のために有機溶媒なしで5部のブタジエンゴムラテックスと混合された。しかしながら、最高の水素化度はわずか約56%であり、より大きい生産容量へのスケールアップにとって不十分である。
【0019】
(非特許文献6)に、水溶性Rh/TPPTS錯体を使用することによるポリブタジエン−1,4−ブロック−ポリ(エチレンオキシド)(PB−b−PEO)の水相水素化を行うことが報告されている。この水素化は、PB−b−PEOがそのポリマー鎖内に水溶性部を有するので、成功し得るにすぎない。かかる水素化系では、混合ミセルは、両親媒性PB−b−PEOを追加のカチオン性界面活性剤塩化ドデシルトリメチルアンモニウム(DTAC)およびn−ヘキサンと混合することによって形成される。水素化転化率は、80〜100℃および20バールのH下にRhCl・3HOとTPPTSとからその場生成したRh/TPPTS錯体(水相中[Rh]=10ppm以下)によって触媒される1時間後に100%まで上がることができる。それらのリサイクリング実験は、アニオン性触媒系Rh/P(C−m−SOの触媒活性が連続した動作で高いままであることを示した。この水素化系の成功は主に、PB−b−PEOが両親媒性出発原料であるという事実のためである。それ故、水溶性触媒は、両親媒性ポリマー材料を使用する系に都合がよい。
【0020】
(特許文献17)に、RhCl(PPhが触媒として使用され、そしてPPhが共触媒として使用される、有機溶媒なしでのニトリル−ブタジエンゴムラテックスの選択的水素化方法が開示されている。この触媒は、純物質としてかまたは少量の有機溶媒中で添加される。この方法は高い水素化度を達成することができ、ゲル形成を示さない。しかしながら、この方法は、長い反応時間および触媒の合成のための遷移金属の高い使用量を必要とする。
【0021】
要約すると、酸素、空気もしくはヒドロペルオキシドのような酸化剤と一緒に還元剤としてヒドラジンまたはヒドラジンの誘導体を使用すること、ある量の有機溶媒を伴った油溶性触媒を直接使用すること、および水溶性配位子を含有する触媒を使用することを含む、幾つかの技術的ルートがラテックスの形態のポリマー中のC=C二重結合を水素化するために試みられてきた。ヒドラジン関連ルートは、高い水素化転化率が必要とされるときに特に、顕著なゲル形成問題に直面しており、ゲル形成は後加工操作にとって望ましくない。油溶性触媒の使用に関連する全ての先行技術参考文献では、ある量の有機溶媒が適度の水素化速度を達成するために依然として必要とされる。水溶性触媒を使用するルートもまた、架橋問題を克服するのにかなりの困難に直面してきた。
【0022】
従って、本発明は、短い反応時間内に高い水素化度で、水性分散系として、すなわち、ラテックスとして存在するジエン−ベースのポリマーの水素化を可能にする新規のおよび改良された方法を提供する目的を有した。改良された方法は、複雑な触媒合成操作をできる限り解消するものとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】米国特許第6,410,657号明細書
【特許文献2】米国特許第6,020,439号明細書
【特許文献3】米国特許第5,705,571号明細書
【特許文献4】米国特許第5,057,581号明細書
【特許文献5】米国特許第3,454,644号明細書
【特許文献6】米国特許第4,452,950号明細書
【特許文献7】米国特許第5,039,737号明細書
【特許文献8】米国特許第5,442,009号明細書
【特許文献9】米国特許第6,552,132号明細書
【特許文献10】米国特許第6,635,718号明細書
【特許文献11】米国特許第5,272,202号明細書
【特許文献12】米国特許第6,403,727号明細書
【特許文献13】米国特許第6,566,457号明細書
【特許文献14】特開2001−288212号公報
【特許文献15】米国特許第6,696,518号明細書
【特許文献16】特開2003−126698号公報
【特許文献17】米国特許出願公開第2006/0211827 A1号明細書
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】Applied Catalysis A−General 第276巻(2004)、No.1−2、123−128ページ
【非特許文献2】Journal of Applied Polymer Science 第96巻(2005)、No.4、1122−1125ページ
【非特許文献3】Journal of Applied Polymer Science 第65巻(1997)、no.4、667−675ページ
【非特許文献4】J.Molecular Catalysis 第123巻(1997)、No.1、15−20ページ
【非特許文献5】Rubber Chemistry and Technology 第68巻(1995)、No.2、281−286ページ
【非特許文献6】Journal of Molecular Catalysis、A:Chemical 第231巻(2005)、No.1−2、93−101ページ
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、ラテックス形態で存在するジエン−ベースのポリマーを、いかなる有機溶媒も用いずに、そして一般式(I)
MQ・aHO (I)
(式中、
MはVIII族遷移貴金属、好ましくはロジウム、ルテニウム、オスミウムまたはイリジウムであり、
Qは同一であるかまたは異なり、そしてヒドリドまたはヒドリド以外のアニオンであり、
xは1、2、または3であり、そして
aは0〜3の範囲にある)
で表される第1主触媒成分と、
一般式(II)または一般式(III)
B (II)
C−A−CR (III)
(式中、
は同一であるかまたは異なり、そして水素、アルキル、好ましくはC〜Cアルキル、アリール、好ましくはC〜C15アリール、シクロアルキル、好ましくはC〜Cシクロアルキルまたはアラルキル、好ましくはC〜C15アラルキルを表し、
Bはリン、窒素、ヒ素、硫黄、またはスルホキシド基S=Oであり、そして
mは2または3であり、
は同一であるかまたは異なり、そして水素、アルキル、好ましくはC〜Cアルキル、アリール、好ましくはC〜C15アリール、シクロアルキル、好ましくはC〜Cシクロアルキルまたはアラルキル、好ましくはC〜C15アラルキルを表し、
Cはリン、またはヒ素であり、
Aは単結合またはスペーサー基、好ましくはフェニレンもしくはnが1〜20の整数である−(CH−基のいずれかを表す)
のいずれかで表される第2水不溶性触媒成分とをベースとする触媒活性系であって、
in situ調製される、かかる触媒活性系と、ジエン−ベースのポリマーとを接触させることによって行われる水素化にかける工程を含む、ジエン−ベースのポリマー中の炭素−炭素二重結合の選択的水素化方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の方法は、ジエン−ベースのポリマー中に存在する炭素−炭素二重結合の選択的水素化を可能にする。これは、例えば、芳香族またはナフテン基中の二重結合が水素化されず、かつ、炭素と窒素または酸素などの他の原子との間の二重または三重結合もまた影響を受けないことを意味する。改良された本方法は、複雑な触媒合成操作をできる限り解消する。
【0027】
in situ調製される触媒活性系の使用と、水素化がいかなる有機溶媒も用いずに行われるという特徴との組み合わせは、本発明の良好な性能にとって重要である。
【0028】
本出願との関連で、用語「その場で」は、前記触媒活性系が、
(i)前記一般式(I)で表される第1主触媒成分を、前記一般式(II)または(III)のいずれかで表される第2水不溶性触媒成分と水溶液であらかじめ接触させ、そして次に触媒活性化学種を単離することなく、かかる触媒活性溶液を水素化されるべき、そしてラテックス形態で存在するジエン−ベースのポリマーと接触させる工程によるか、または
(ii)前記一般式(I)で表される第1主触媒成分を加え、そしてそれによって水素化されるべきジエン−ベースのポリマーを含有するラテックス中で直接前記一般式(II)または(III)のいずれかで表される第2水不溶性触媒成分と接触させる工程によって形成されることを意味するものとする。
【0029】
本発明の一実施形態では、第2水不溶性触媒成分は、一般式(II)(式中、
が同一であるかまたは異なり、そして水素、C〜Cアルキル、C〜C15アリール、C〜CシクロアルキルまたはC〜C15アラルキルを表し、
Bがリンまたは窒素であり、
mが3である)
で表されるか、または第2水不溶性触媒成分は、一般式(III)(式中、
が同一であるかまたは異なり、そして水素、C〜Cアルキル、C〜C15アリール、C〜Cシクロアルキル、またはC〜C15アラルキルを表し、そして
Aが1,4−フェニレンもしくはC〜Cアルキレン基または単結合を表す)
で表される。
【0030】
一般式(II)で表される好適な第2水不溶性触媒成分の例はまた、トリアリール−、トリアルキル−、トリシクロアルキル−、ジアリールモノアルキル−、ジアルキルモノアリール−、ジアリールモノシクロアルキル−、ジアルキルモノシクロアルキル−、ジシクロアルキルモノアリール−またはジシクロアルキルモノアリールホスフィンである。
【0031】
一般式(II)で表される第2水不溶性触媒成分の例はまた、それぞれの司法権が許す限りその開示が参照により援用される米国特許第4,631,315号明細書に示されている。一般式(II)で表される最も好ましい第2水不溶性触媒成分はトリフェニルホスフィンである。
【0032】
本出願との関連で、触媒成分または触媒は、0.001重量部以下が24±2℃で100重量部の水に完全に溶解できる場合に「水不溶性」と考えられるが、触媒成分または触媒は、0.5重量部以上が24±2℃で100重量部の水に完全に溶解できる場合に「水溶性」と考えられる。
【0033】
好ましい実施形態では、一般式(II)(式中、
が水素、シクロヘキシルまたはフェニルであり、
BがPまたはNであり、そして
mが3である)
で表される以下の第2水不溶性触媒成分をベースとする触媒活性系が使用される。
【0034】
一般式(I)で表される第1主触媒成分において、Mは好ましくはロジウム、ルテニウム、オスミウムまたはイリジウムを表し、Qは好ましくは水素またはハロゲン化物、より好ましくは塩化物または臭化物イオンを表し、そしてxは1、2、または3、特にQがハロゲン化物であるときは3であり、そしてaは、0〜3の範囲にある、かつ、整数または非整数を表してもよい、MQに水和したHO分子の平均数である。
【0035】
触媒活性系のin situ調製は、例えば以下の触媒活性化学種をもたらしてもよい:トリス−(トリフェニルホスフィン)−ロジウム(I)−塩化物、トリス−(トリフェニルホスフィン)−ロジウム(III)−三塩化物、トリス−(ジメチルスルホキシド)ロジウム(III)−三塩化物、テトラキス−(トリフェニルホスフィン)−ロジウム(I)ヒドリド、およびトリフェニルホスフィン部分がトリシクロヘキシルホスフィンで置換されている相当する化合物。代わりの実施形態では、OsHCl(CO)(PCyまたはOsHCl(CO)[P(イソプロピル)が本発明に従ってin situ調製されるべき触媒として使用される。
【0036】
特に好ましい実施形態では、触媒活性系は、第1主触媒成分としてのRhCl・3HOと第2触媒成分としてのPPhとをベースにする。
【0037】
第1主触媒成分は一般に、触媒のin situ調製のために少量使用することができる。典型的には第1主触媒成分は、ラテックスのポリマー固体内容物の重量を基準として、0.01重量%〜5.0重量%の、好ましくは0.02重量%〜2.0重量%の範囲の量で使用される。
【0038】
触媒成分系を調製するために第2触媒成分は一般に、ラテックスのポリマー固体内容物の重量を基準として、0.1重量%〜50重量%の、好ましくは0.2重量%〜20重量%の範囲の量で使用される。
【0039】
本発明の水素化方法に好適な基質は原則として、「ラテックス」とも呼ばれる、エチレン系不飽和二重結合を有するポリマーの全ての水性分散系である。これらには、水性モノマーエマルジョンのフリーラジカル重合によって製造された分散系(一次分散系)およびそのポリマーが別のルートで製造され、そして次に水性分散系形態に変換されるもの(二次分散系)の両方が含まれる。用語ポリマー分散系はまた、原則として、マイクロカプセルの分散系を包含する。
【0040】
本発明の方法にかけられてもよい炭素−炭素二重結合を有するポリマーは、少なくとも1つの共役ジエンモノマーをベースとする繰り返し単位を含む。
【0041】
共役ジエンは任意の性質のものであることができる。一実施形態では、(C〜C)共役ジエンが使用される。1,3−ブタジエン、イソプレン、1−メチルブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、ピペリレン、クロロプレン、またはそれらの混合物が好ましい。1,3−ブタジエンおよびイソプレンまたはそれらの混合物が特に好ましい。1,3−ブタジエンが特に好ましい。
【0042】
さらなる実施形態では、モノマー(a)として少なくとも1つの共役ジエンおよび少なくとも1つのさらなる共重合性モノマー(b)の繰り返し単位を含む、炭素−炭素二重結合を有するポリマーが本発明の方法にかけられてもよい。
【0043】
好適なモノマー(b)の例は、エチレンまたはプロピレンなどのオレフィンである。
【0044】
好適なモノマー(b)のさらなる例は、スチレン、アルファ−メチルスチレン、o−クロロスチレンまたはビニルトルエンなどのビニル芳香族モノマー、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、デカン酸ビニル、ラウリン酸ビニルおよびステアリン酸ビニルなどの、脂肪族または分枝C〜C18モノカルボン酸のビニルエステルである。
【0045】
本発明に使用される好ましいポリマーは、1,3−ブタジエンとスチレンまたはアルファ−メチルスチレンとのコポリマーである。前記コポリマーはランダムまたはブロック型構造を有してもよい。
【0046】
好適なモノマー(b)のさらなる例は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸およびイタコン酸などのエチレン性不飽和モノ−もしくはジカルボン酸、ならびに、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸およびイタコン酸などのエチレン性不飽和モノ−もしくはジカルボン酸の、一般に、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、第三ブタノール、n−ヘキサノール、2−エチルヘキサノールなどの、C〜C12アルカノール、またはシクロペンタノールまたはシクロヘキサノールなどの、C〜C10シクロアルカノールとのエステル、そしてこれらのうちで好ましくは、例がメタクリル酸メチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸第三ブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸第三ブチル、およびアクリル酸2−エチルヘキシルである、アクリル酸および/またはメタクリル酸のエステルである。
【0047】
好適なさらなる共重合性モノマー(b)はα,β−不飽和ニトリルである。任意の公知のα,β−不飽和ニトリル、好ましくはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルまたはそれらの混合物などの(C〜C)α,β−不飽和ニトリルを使用することが可能である。アクリロニトリルが特に好ましい。
【0048】
本発明に使用される特に好適なコポリマーはニトリルゴム(「NBR」とまた省略される)であり、これはα,β−不飽和ニトリル、特に好ましくはアクリロニトリルと、共役ジエン、特に好ましくは1,3−ブタジエンと、場合により、α,β−不飽和モノカルボン酸もしくはジカルボン酸、それらのエステルまたはアミドなどの、1つ以上のさらなる共重合性モノマーとのコポリマーである。
【0049】
かかるニトリルゴム中のα,β−不飽和モノカルボン酸もしくはジカルボン酸として、フマル酸、マレイン酸、アクリル酸およびメタクリル酸が好ましい。
【0050】
かかるニトリルゴム中のα,β−不飽和カルボン酸のエステルとして、それらのアルキルエステルおよびアルコキシアルキルエステルを使用することが好ましい。α,β−不飽和カルボン酸の特に好ましいアルキルエステルは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸第三ブチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸第三ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシルおよびアクリル酸オクチルである。α,β−不飽和カルボン酸の特に好ましいアルコキシアルキルエステルは、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルおよび(メタ)アクリル酸メトキシエチルである。アルキルエステル、例えば上述のものと、例えば上述のものの形態での、アルコキシアルキルエステルとの混合物を使用することもまた可能である。
【0051】
本発明に使用される好ましいターポリマーは、アクリロニトリルと、1,3−ブタジエンと、フマル酸、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸n−ブチルおよびアクリル酸第三ブチルからなる群から選択された第3モノマーとのターポリマーである。
【0052】
水素化にかけられるべきポリマーが1つ以上の共役ジエンの繰り返し単位のみならず、1つ以上のさらなる共重合性モノマーの繰り返し単位も含む場合には、共役ジエンおよび他の共重合性モノマーの割合は広い範囲内で変わってもよい。
【0053】
水素化のために使用中のNBRポリマーの場合には、共役ジエンのまたはそれらの合計の割合は通常、全体ポリマーを基準として、40〜90重量%の範囲に、好ましくは50〜85重量%の範囲にある。α,β−不飽和ニトリルのまたはそれらの合計の割合は通常、全体ポリマーを基準として、10〜60重量%、好ましくは15〜50重量%である。モノマーの割合はそれぞれ合計100重量%になる。追加のターモノマーが場合により存在してもよい。使用される場合、それらは典型的には、全体ポリマーを基準として、0超〜40重量%、好ましくは0.1〜40重量%、特に好ましくは1〜30重量%の量で存在する。この場合には、共役ジエンのおよび/またはα,β−不飽和ニトリルの相当する割合は、全てのモノマーの割合がそれぞれ合計100重量%になる状態で、追加のターモノマーの割合で置き換えられる。
【0054】
上述のモノマーの重合によるニトリルゴムの製造は当業者に十分に知られており、ポリマー文献に包括的に記載されている。
【0055】
本発明の目的のために使用することができるニトリルゴムはまた、例えば、ランクセス・ドイチュラント社(Lanxess Deutschland GmbH)から商品名パーブナン(Perbunan)(登録商標)およびクライナック(Krynac)(登録商標)の製品範囲からの製品として市販品として入手可能である。
【0056】
本発明の別の実施形態では、それらの分子量を下げるためにメタセシス反応にかけられたニトリルゴムを使用することが可能である。かかるメタセシス反応は当該技術分野で公知であり、例えば国際公開第02/100905号パンフレットおよび国際公開第02/100941号パンフレットに開示されている。
【0057】
本発明に従って使用されてもよいニトリルゴムは、3〜75、好ましくは5〜75、より好ましくは20〜75、さらにより好ましくは25〜70、特に好ましくは30〜50のムーニー(Mooney)粘度(100℃でML 1+4)を有する。重量平均分子量Mは25,000〜500,000の範囲に、好ましくは200,000〜500,000の範囲に、より好ましくは200,000〜400,000の範囲にある。例えば約34のムーニー粘度を有するニトリルゴムは、約1.1dL/gの、35℃でクロロベンゼン中で測定される、固有粘度を有する。使用されるニトリルゴムはまた、1.5〜6.0、好ましくは1.8〜6.0、より好ましくは1.9〜6.0の範囲の、さらにより好ましくは2.0〜4.0の範囲の多分散性PDI=M/M(ここで、Mは重量平均分子量であり、Mは数平均分子量である)を有する。ムーニー粘度の測定は、ASTM(米国材料試験協会)標準D1646に従って実施される。
【0058】
1つ以上の共役ジエンと例えばスチレンまたはアルファ−メチルスチレンのような1つ以上の他の共重合性モノマーとの繰り返し単位を含有するニトリルゴム以外のポリマーが本発明に使用される場合、全てのモノマーの割合がそれぞれ合計して100%になる状態で、共役ジエンの割合は通常15〜100重量%未満であり、共重合性モノマーの合計の割合は0超〜85重量%である。スチレンまたはアルファ−メチルスチレンが他の共重合性モノマーとして使用される場合、スチレンおよび/またはメチルスチレンの割合は好ましくは15〜60重量%であり、一方100重量%への残りは共役ジエンで表される。
【0059】
本発明に有用なラテックス形態での炭素−炭素二重結合含有ポリマーは、エマルジョン重合、溶液重合またはバルク重合などの、当業者に公知の任意の方法によって製造されてもよい。好ましくは、本発明に有用な炭素−炭素二重結合含有ポリマーは、この方法がポリマーのラテックス形態を直接もたらすので、水性エマルジョン重合法で製造される。
【0060】
好ましくは、本発明によれば、水性エマルジョン中のポリマー固体含有率は、水性エマルジョンの総重量を基準として1〜75重量%、より好ましくは5〜30重量%の範囲にある。
【0061】
本発明による方法にかけられるかかるポリマーの製造は当業者に公知であり、原則として、溶液で、バルクで、懸濁液でまたはエマルジョンでアニオン、フリーラジカルまたはチーグラー−ナッタ(Ziegler−Natta)重合によって実施することができる。反応のタイプに依存して、共役ジエンは1,4−および/または1,2−重合させられる。本発明の水素化方法のためには、上述のモノマー(a)および(b)のフリーラジカル水性エマルジョン重合によって製造されたポリマーを用いることが好ましい。これらの技法は当業者に十分に周知であり、文献に、例えばウルマンの工業化学百科事典(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry)第5版、第A21巻、373−393ページに詳細に記載されている。一般に、かかるポリマーはフリーラジカル開始剤、ならびに必要に応じて、乳化剤などの界面活性物質および保護コロイドの存在下に製造される(例えば、ホウベン・ウェイル(Houben Weyl)著、有機化学の方法(Methoden der organischen Chemie)、第XIV/1巻、高分子物質(Makromolekulare Stoffe)、シュトゥットガルト(Stuttgart)、Georg Thieme Verlag社、1961年、192−208ページを参照されたい)。
【0062】
好適なフリーラジカル重合開始剤には、第三ブチルヒドロペルオキシド、ベンゾイルヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゾイルペルオキシドなどの有機過酸化物、過酸化水素、ペルオキソ一および/またはペルオキソ二硫酸、特にアンモニウムおよび/またはアルカリ金属ペルオキソ二硫酸塩(過硫酸塩)などの無機過酸化物、ならびにアゾ化合物が含まれ、過硫酸塩が特に好ましい。少なくとも1つの有機還元剤と少なくとも1つの過酸化物および/または第三ブチルヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシドおよびヒドロキシメタンスルホン酸のナトリウム塩とからなるか、または過酸化水素とアスコルビン酸とからなる複合系(電解質を含まないレドックス系のような)、ならびに重合媒体に可溶性であり、そしてその金属成分が複数の原子価状態で存在し得る少量の金属化合物をさらに含む複合系、例えばアスコルビン酸/硫酸鉄(II)/過酸化水素もまた好ましく、アスコルビン酸をヒドロキシメタンスルフィン酸のナトリウム塩、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムすなわち重亜硫酸ナトリウムで、そして過酸化水素を第三ブチルヒドロペルオキシド、アルカリ金属ペルオキソ二硫酸塩および/またはペルオキソ二硫酸アンモニウムで置き換えることもまたしばしば可能である。水溶性鉄(II)塩の代わりに、水溶性Fe/V塩の組み合わせを用いることもまた可能である。
【0063】
これらの重合開始剤は、重合させられるべきモノマーを基準として、0.01重量%〜5重量%、好ましくは0.1重量%〜2.0重量%の量でなど、慣習的な量で用いられる。
【0064】
モノマー混合物は、必要に応じて、メルカプタンなどの、慣習的な調整剤の存在下に重合させることができ、メルカプタンの例はランクセス・ドイチュラント社(Lanxess Deutschland GmbH)をはじめとする様々な会社によって製造される第三ドデシルメルカプタンである。これらの調整剤はそのとき、混合物の全体量を基準として、0.01重量%〜5重量%の量で使用される。
【0065】
使用することができる乳化剤に関して特別な制限は全くない。エトキシル化モノ−、ジ−およびトリアルキルフェノール(エチレンオキシド度:3〜50、アルキル C〜C)またはエトキシル化脂肪アルコール(エチレンオキシド度:3〜50、アルキル C〜C)などの中性乳化剤および/または脂肪酸(アルキル:C12〜C24)の、アルキル硫酸(アルキル:C〜C22)の、エトキシル化アルカノール(エチレンオキシド度:4〜30、アルキル:C〜C22)のおよびエトキシル化アルキルフェノール(エチレンオキシド度:3〜50、アルキル:C〜C20)の硫酸モノエステルの、アルキルスルホン酸(アルキル:C〜C22)の、およびアルキルアリールスルホン酸(アルキル:C〜C18)のアルカリ金属およびアンモニウム塩などの、アニオン性乳化剤が好ましい。さらに好適なアニオン性乳化剤は、ビス(フェニルスルホン酸)エーテルのモノ−またはジ−C4〜24アルキル誘導体のアルカリ金属またはアンモニウム塩である。
【0066】
アルキルアリールスルホン酸、アルキルスルホン酸(例えばスルホン化C12〜C18パラフィン)、アルキル硫酸(例えばラウリルスルホン酸ナトリウム)の、およびエトキシル化アルカノールの硫酸モノエステル(例えばスルホキシル化された2〜3個のエチレンオキシド単位のラウリルアルコールのエトキシレート)のアルカリ金属および/またはアンモニウム塩、特にナトリウム塩が好ましい。さらに好適な乳化剤は、オレイン酸カリウムなどの、脂肪酸(C12〜C23アルキル基)のナトリウムまたはカリウム塩である。追加の適切な乳化剤は、ホウベン−ウェイル著、上記引用文献、192−208ページに挙げられている。しかしながら、共安定化の目的のために、乳化剤の代わりにまたはそれとの混合物で、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンまたは短い疎水性ブロックの両親媒性ブロックポリマーなどの、通常の保護コロイドを用いることもまた可能である。一般に、使用される乳化剤の量は、重合させられるべきモノマーを基準として、5重量%を超えないであろう。
【0067】
フリーラジカル重合反応は、全体バッチ初装入(バッチ)技法によって実施することができるが、工業的規模では特に、フィード技法に従って好ましくは操作される。この後者の技法では、重合させられるべきモノマーの主要量(一般に50〜100重量%)は、既に重合器中のモノマーの重合の進行に従って重合器に加えられる。これに関連して、フリーラジカル開始剤系は、重合器への初装入物中に完全に含められるか、あるいはフリーラジカル水性エマルジョン重合の過程でそれが消費される速度で重合反応に連続的にもしくは段階的に加えられるかのいずれかであることができる。各個々の場合に、これは、公知であるように、開始剤系の化学的性質および重合温度の両方に依存するであろう。開始剤系は好ましくは、それが消費される速度で重合ゾーンに供給される。
【0068】
重合反応はまた、ポリマーとして水性ポリマー分散系(シードラテックス)の存在下に行われてもよい。かかる技法は基本的には当業者に公知であり、例えば、参照により本明細書に援用される、独国特許出願公開第42 13 967号明細書、独国特許出願公開第42 13 968号明細書、欧州特許出願公開第A−0 567 811号明細書、欧州特許出願公開第A−0 567 812号明細書、または欧州特許出願公開第A−0 567 819号明細書に記載されている。原則として、所望の性質に依存して、初装入物中にシードを含めること、または重合の過程で連続的にもしくは段階的にそれを加えることが可能である。重合は好ましくは初装入物中にシードありで実施される。シードポリマーの量は好ましくは、モノマーa)〜d)を基準として、0.05〜5重量%、好ましくは0.1〜2重量%、特に、0.2〜1重量%の範囲にある。使用されるシードラテックスのポリマー粒子は好ましくは、10〜100nm、好ましくは20〜60nmの範囲の、特に、約30nmの重量平均径を有する。ポリスチレンシードの使用が好ましい。
【0069】
重合反応は好ましくは大気圧より上で実施される。重合時間は広い範囲内で変わることができ、一般に1〜15時間、好ましくは3〜10時間である。重合の温度もまた広い範囲で可変であり、使用される開始剤に依存して、約0〜110℃である。
【0070】
このように製造されたポリマー分散系は一般に、75重量%以下の固体含有率を有する。本発明の水素化方法での使用のために、これらの固体含有率の分散系を用いることが可能である。しかしながら、場合によっては、分散系をあらかじめ適切な固体含有率に希釈することが好ましい。用いられる分散系の固体含有率は好ましくは、分散系の全体重量を基準として、5〜30重量%の範囲にある。
【0071】
一般に、ポリマー分散系中に依然として存在する界面活性物質、および、例えば、エマルジョン重合で慣習的重合助剤として使用されるさらなる物質は、本発明の水素化方法に破壊的影響を及ぼさない。しかしながら、水素化前にポリマー分散系を化学的または物理的脱臭にかけることが好ましい。残存モノマーをスチームで取り去ることによる、物理的脱臭は、例えば、欧州特許出願公開A−0 584 458号明細書、欧州特許出願公開A−0 327 006号明細書から公知であり、その一部は従来の蒸留法の使用を推奨している。化学的脱臭は好ましくは、主重合後にポスト重合を用いて行われる。かかる方法は、例えば、独国特許出願公開第383 4734号明細書、欧州特許出願公開第A−0 379 892号明細書、欧州特許出願公開第A−0 327 006号明細書、独国特許出願公開第44 19 518号明細書、独国特許出願公開第44 35 422号明細書および独国特許出願公開第44 35 423号明細書に記載されている。
【0072】
本発明の水素化方法は場合により、例えば臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)のようなアンモニウム塩の存在下に実施されてもよい。
【0073】
本発明の水素化方法は好ましくは、0.1〜20MPaの圧力の、好ましくは1〜16MPaの圧力の水素ガスで実施される。本方法の一実施形態で前記水素ガスは本質的に純粋である。
【0074】
本発明の水素化方法は、温度制御および攪拌手段を備えた好適な反応器で行うことができる。
【0075】
本発明の一実施形態では、ポリマーラテックス、すなわち、水素化されるべきジエン−ベースのポリマーの水性分散系は反応器へフィードされ、必要に応じて脱ガスされ、そして一般式(II)または一般式(III)のいずれかで表されウ第2水不溶性触媒成分だけでなく一般式(I)の第1主触媒成分がかかる水性分散系に加えられる。反応器は次に水素で加圧することができる。典型的には反応器およびポリマーラテックスは、第1主触媒成分および第2水不溶性触媒成分が加えられる前に加熱される。かかるin situ調製中に有機溶媒は決して全く含まれない。
【0076】
本発明のさらなる実施形態では、ポリマーラテックスは反応器へフィードされ、必要に応じて脱ガスされ、次に触媒活性系が、一般式(I)の第1主触媒成分を一般式(II)または一般式(III)のいずれかで表される第2水不溶性触媒成分と接触させることによってその場でただし別個にあらかじめ調製された水性溶液として加えられる。典型的には反応器およびポリマーラテックスは、触媒溶液が加えられる前に加熱される。
【0077】
または、本発明によれば、一般式(I)の第1主触媒成分を、一般式(II)または一般式(III)のいずれかで表される第2水不溶性触媒成分と接触させることによってその場でただし別個にあらかじめ調製された触媒活性系の水溶液が反応器へ加えられ、次にポリマーラテックスが反応器へフィードされ、必要に応じて脱ガスされる。全ての原材料が反応器に装入された後、反応混合物は所望の温度に加熱される。
【0078】
本発明に好適な水素化温度は、35℃〜180℃の範囲に、好ましくは80℃〜160℃の範囲にある。
【0079】
水素化反応の過程の間、水素が反応器に追加されてもよい。反応時間は、操作条件に依存して、約1/4時間〜約100時間である。ポリマー中の炭素−炭素二重結合が水素化されることができる程度は80〜99.5%、好ましくは90〜99.5%である。
【0080】
水素化反応が所望の程度まで行われたとき、反応容器は冷却し、ガス抜きすることができる。得られた水素化ラテックスは、必要に応じてラテックス形態で使用するかまたは水素化ポリマーを固体形態で得るために、凝固させ、洗浄することができる。
【0081】
本発明に従って得られた水素化ニトリルゴムは、6〜150の範囲の、好ましくは25〜100の範囲の、より好ましくは35〜100の範囲の、さらにより好ましくは39〜100の範囲の、特に好ましくは40〜100の範囲のムーニー粘度(100℃でML 1+4)を有する。
【実施例】
【0082】
以下の実施例は本発明の範囲を例示し、それを限定することを意図しない。結果は、高い水素化度を達成することが可能であることを多くの操作条件下に明らかに示す。
【0083】
水素化反応に使用した材料を表1に挙げる。
【0084】
【表1】

【0085】
比較例1(ロジウム塩(第1主触媒成分を表す)の使用のみ、ただし第2水不溶性触媒成分を用いない)
温度制御手段、攪拌機および水素ガス添加口を有する300mlガラス内張りステンレススチール・オートクレーブを反応器として用いた。
【0086】
25mlの上述のラテックス、75mlの水、および0.012gのRhCl・3HOを反応器へ装入した。ラテックスを次に窒素で脱ガスした。温度を100℃に上げ、水素を1000psi(6.8MPa)まで導入した。
【0087】
4時間後に、水素化度は23%に達する。ゲルが生成し、得られたポリマーはメチルエチルケトンに部分的に不溶性である。
【0088】
実施例2(本発明)
比較例1に記載したものと同じ手順を用いた。しかしながら、0.013gのRhCl・3HOおよび0.36gのPPhを使用し、1000psi(6.8MPa)の水素圧および160℃をかけた。
【0089】
19時間後に97%水素化度を達成した。得られたラテックスは凝固させることができ、最終の得られたゴムはゲルを含まず、メチルエチルケトンに完全に可溶である。
【0090】
実施例3(本発明)
比較例1に記載したものと同じ手順を用いた。しかしながら、0.011gのRhCl・3HOおよび0.36gのPPhを使用し、1000psi(6.8MPa)の水素圧および160℃をかけた。
【0091】
27時間後に95%水素化度を達成した。得られたラテックスは凝固させることができ、最終の得られたゴムはゲルを含まず、メチルエチルケトンに完全に可溶である。
【0092】
実施例4(本発明)
比較例1に記載したものと同じ実験設備およびNBRラテックスを用いた。しかしながら、触媒溶液を得るためにNBRラテックスと接触させる前にRhCl・3HOをPPhとあらかじめ混合した(手順を以下に記載する):0.028gのRhCl・3HOを200mlの3口丸底フラスコ中で50mlの脱イオン水へ溶解させた。水性系をN下に磁気撹拌バーによって攪拌し、水蒸気を還流させるための冷却器を使って油浴を用いることによって90℃に加熱した。1時間後に、0.35gのPPhをまた系へ加えた。この系を攪拌下に90℃で1時間保ち、次にゆっくり室温に冷却した。
【0093】
20mlの上記触媒溶液を高圧反応器へ装入し、25mlのNBRラテックスをまた55mlの脱イオン水と共に装入した。全体ラテックスおよび触媒系を次に窒素で脱ガスした。温度を160℃に上げ、160℃に達したときに水素を600psi(4.1MPa)まで導入した。24時間後に、水素化度は98%に達する。得られたラテックスは凝固させることができ、最終の得られたゴムはゲルを含まず、メチルエチルケトンに完全に可溶である。
【0094】
実施例5(本発明)
比較例1に記載したものと同じ実験設備およびNBRラテックスを用いた。しかしながら、触媒溶液を得るためにNBRラテックスと接触させる前にRhCl・3HOをPPhとあらかじめ混合した(手順を以下に記載する):0.013gのRhCl・3HOを200mlの3口丸底フラスコ中で100mlの脱イオン水へ溶解させた。水性系をN下に磁気撹拌バーによって攪拌し、水蒸気を還流させるための冷却器を使って油浴を用いることによって90℃に加熱した。1時間後に、0.35gのPPhをまた系へ加えた。この系を攪拌下に90℃で1時間保ち、次にゆっくり室温に冷却した。
【0095】
上記触媒溶液を高圧反応器へ装入し、25mlのNBRラテックスもまた装入した。全体ラテックスおよび触媒系を次に窒素で脱ガスした。温度を160℃に上げ、160℃に達したときに水素を1000psi(6.8MPa)まで導入した。
【0096】
19時間後に97%の水素化度を達成した。得られたラテックスは凝固させることができ、最終の得られたゴムはゲルを含まず、メチルエチルケトンに完全に可溶である。
【0097】
実施例6(本発明)
比較例1に記載したものと同じ実験設備およびNBRラテックスを用いた。しかしながら、触媒溶液を得るためにNBRラテックスと接触させる前にRhCl・3HOをPPhとあらかじめ混合した(手順を以下に記載する):0.013gのRhCl・3HOを200mlの3口丸底フラスコ中で50mlの脱イオン水へ溶解させた。水性系をN下に磁気撹拌バーによって攪拌し、水蒸気を還流させるための冷却器を使って油浴を用いることによって90℃に加熱した。1時間後に、0.35gのPPhをまた系へ加えた。25mlラテックスを加える前に系を攪拌下に90℃で1時間保った。90℃でさらに1時間後に、系全体をゆっくり室温に冷却した。
【0098】
上記系を高圧反応器へ装入し、25mlの脱イオン水をまた装入した。全体ラテックスおよび触媒系を次に窒素で脱ガスした。温度を160℃に上げ、160℃に達したときに水素を1000psi(6.8MPa)まで導入した。
【0099】
8時間後に、水素化度は92%に達する。得られたラテックスは凝固させることができ、最終の得られたゴムはゲルを含まず、メチルエチルケトンに完全に可溶である。
【0100】
【表2】

【0101】
本発明は、例示の目的のために前述で詳細に説明されてきたが、かかる詳細はあくまで例示目的のためであること、そして、特許請求の範囲によって限定されるかもしれない場合を除き本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく当業者によって本発明に変更をなし得ることが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラテックス形態で存在するジエン−ベースのポリマーを、いかなる有機溶媒も用いずに、そして一般式(I)
MQ・aHO (I)
(式中、
MはVIII族遷移貴金属、好ましくはロジウム、ルテニウム、オスミウムまたはイリジウムであり、
Qは同一であるかまたは異なり、そしてヒドリドまたはヒドリド以外のアニオンであり、
xは1、2、または3であり、そして
aは0〜3の範囲にある)
を有する第1主触媒成分と、
一般式(II)または一般式(III)
B (II)
C−A−CR (III)
(式中、
は同一であるかまたは異なり、そして水素、アルキル、好ましくはC〜Cアルキル、アリール、好ましくはC〜C15アリール、シクロアルキル、好ましくはC〜Cシクロアルキルまたはアラルキル、好ましくはC〜C15アラルキルを表し、
Bはリン、窒素、ヒ素、硫黄、またはスルホキシド基S=Oであり、そして
mは2または3であり、
は同一であるかまたは異なり、そして水素、アルキル、好ましくはC〜Cアルキル、アリール、好ましくはC〜C15アリール、シクロアルキル、好ましくはC〜Cシクロアルキルまたはアラルキル、好ましくはC〜C15アラルキルを表し、
Cはリン、またはヒ素であり、
Aは単結合またはスペーサー基、好ましくはフェニレンもしくはnが1〜20の整数である−(CH−基のいずれかを表す)
のいずれかを有する第2水不溶性触媒成分とをベースとする触媒活性系と、ジエン−ベースのポリマーとを接触させることによって行われる水素化にかける工程を含み、かかる触媒活性系がin situで調製される、ジエン−ベースのポリマー中の炭素−炭素二重結合の選択的水素化方法。
【請求項2】
前記触媒活性系が
(i)前記一般式(I)を有する第1主触媒成分を、前記一般式(II)または(III)のいずれかを有する第2水不溶性触媒成分と水溶液中であらかじめ接触させ、そして次に触媒活性化学種を単離することなく、かかる触媒活性溶液を、水素化され、そしてラテックス形態で存在するジエン−ベースのポリマーと接触させる工程により、あるいは
(ii)前記一般式(I)を有する第1主触媒成分を加え、そしてそれによって水素化されるジエン−ベースのポリマーを含有するラテックス中で直接前記一般式(II)または(III)のいずれかで表される第2水不溶性触媒成分と第1主触媒成分を接触させる工程であって、かかるin situ調製中に有機溶媒が全く含まれない工程により
形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2水不溶性触媒成分が、前記一般式(II)
(式中、
が同一であるかまたは異なり、そして水素、C〜Cアルキル、C〜C15アリール、好ましくはフェニル、C〜Cシクロアルキル、好ましくはシクロヘキシル、またはC〜C15アラルキルを表し、
Bがリンまたは窒素であり、そして
mが3である)
で表されるか、
あるいは前記第2水不溶性触媒成分が、前記一般式(III)(式中、
が同一であるかまたは異なり、そして水素、C〜Cアルキル、C〜C15アリール、C〜Cシクロアルキル、またはC〜C15アラルキルを表し、そして
Aが1,4−フェニレンもしくはC〜Cアルキレン基または単結合を表す)
を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
一般式(II)に従う前記第2水不溶性触媒成分がトリアリール−、トリアルキル−、トリシクロアルキル−、ジアリールモノアルキル−、ジアルキルモノアリール−、ジアリールモノシクロアルキル−、ジアルキルモノシクロアルキル−、ジシクロアルキルモノアリール−およびジシクロアルキルモノアリールホスフィンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記一般式(I)(式中、Mがロジウム、ルテニウム、オスミウムまたはイリジウムを表し、Qが水素またはハロゲン化物、好ましくは塩化物もしくは臭化物イオンを表し、そしてxが1、2、または3、Qがハロゲン化物であるとき、特に3であり、そしてaが0〜3の範囲にある)で表される第1主触媒成分が使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記触媒活性系のin situ調製が、トリス−(トリフェニルホスフィン)−ロジウム(I)−塩化物、トリス−(トリフェニルホスフィン)−ロジウム(III)−三塩化物、トリス−(ジメチルスルホキシド)ロジウム(III)−三塩化物、テトラキス−(トリフェニルホスフィン)−ロジウム(I)ヒドリド、トリフェニルホスフィン部分がトリシクロヘキシルホスフィンで置換されている相当する化合物、OsHCl(CO)(PCyおよびOsHCl(CO)[P(イソプロピル)からなる群から選択された触媒活性化学種をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
RhCl・3HOが第1主触媒成分として、そしてPPhが第2触媒成分として使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1主触媒成分が、ラテックスのポリマー固体内容物の重量を基準として、0.01重量%〜5.0重量%、好ましくは0.02重量%〜2.0重量%の範囲の量で使用され、そして前記第2触媒成分が、ラテックスのポリマー固体内容物の重量を基準として、0.1重量%〜50重量%、好ましくは0.2重量%〜20重量%の範囲の量で使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記水素化にかけられる炭素−炭素二重結合含有ポリマーが、モノマー(a)としての少なくとも1つの共役ジエンと、少なくとも1つのさらなる共重合性モノマー(b)との繰り返し単位を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
モノマー(b)として、オレフィン、好ましくはエチレンまたはプロピレン、ビニル芳香族モノマー、好ましくはスチレン、アルファ−メチルスチレン、o−クロロスチレンまたはビニルトルエン、脂肪族または分枝C〜C18モノカルボン酸のビニルエステル、より好ましくは酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、デカン酸ビニル、ラウリン酸ビニルおよびステアリン酸ビニルが使用される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
1,3−ブタジエンとスチレンまたはアルファ−メチルスチレンとのコポリマーの水性分散系が水素化にかけられる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
モノマー(b)としてエチレン系不飽和モノ−もしくはジカルボン酸、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸およびイタコン酸、またはエチレン系不飽和モノ−もしくはジカルボン酸、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸およびイタコン酸のC〜C12アルカノール、より好ましくはメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、第三ブタノール、n−ヘキサノール、2−エチルヘキサノール.またはC〜C10シクロアルカノール、より好ましくはシクロペンタノールもしくはシクロヘキサノールとのエステル、そしてこれらのうちでさらにより好ましくはアクリル酸および/またはメタクリル酸のエステル、そして最も好ましくはメタクリル酸メチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸第三ブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸第三ブチル、およびアクリル酸2−エチルヘキシルが使用される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
モノマー(b)としてα,β−不飽和ニトリル、好ましくは(C〜C)α,β−不飽和ニトリル、より好ましくはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルまたはそれらの混合物が使用される、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
α,β−不飽和ニトリル、好ましくはアセトニトリルと、共役ジエン、好ましくは1,3−ブタジエンと場合により少なくとも1つのさらなる共重合性モノマー、好ましくはα,β−不飽和モノ−もしくはジカルボン酸、それらのエステルまたはアミドとのコポリマーであるニトリルゴム(「NBR」)の水性分散系が水素化にかけられる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
アクリロニトリルと、1,3−ブタジエンと、ならびにフマル酸、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸n−ブチルおよびアクリル酸第三ブチルからなる群から選択される第3モノマーとのターポリマーの水性分散系が水素化にかけられる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記水性分散系中のポリマー固体含有率が、水性分散系の総重量を基準として1重量%〜75重量%、より好ましくは5重量%〜30重量%の範囲にある、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
35℃〜180℃の範囲の、好ましくは80℃〜160℃の範囲の水素化温度で、および0.1MPa〜20MPaの圧力で、好ましくは1MPa〜16MPaの圧力で実施される、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。

【公開番号】特開2009−144160(P2009−144160A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−320193(P2008−320193)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(506241042)ランクセス・インコーポレーテッド (20)
【Fターム(参考)】