説明

ジオキサフォスフォリナン誘導体とその付加塩及びスフィンゴシン−1−リン酸(S1P1,S1P4)受容体作動薬

【課題】
S1P3に対するアゴニスト作用が弱く、S1P1,S1P4受容体に対し優れたアゴニスト作用を有する副作用の少ないジオキサフォスフォリナン誘導体を提供すること。
【解決手段】
S1P1及びS1P4受容体に対し優れたアゴニスト作用を有する化合物として
一般式(1)
【化1】


で表されるジオキサフォスフォリナン誘導体(具体例:5−アミノ−5−[4−(3−ベンジルオキシフェニルチオ)−2−クロロフェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド)を見出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スフィンゴシン−1−リン酸(以下S1Pと略記)(S1P)受容体作動薬として有用なジオキサフォスフォリナン誘導体とその付加塩並びにその水和物に関する。
さらに詳しく言えば、本発明はS1P1及びS1P4受容体に対して選択性の高いアゴニスト作用を有する化合物とそれらを有効成分として含有する医薬に関する。
【背景技術】
【0002】
スフィンゴシン−1−リン酸(S1P)は、スフィンゴシン代謝における中間代謝物にすぎないとみなされていたが、細胞増殖促進作用や細胞運動機能の制御作用を有することが報告されるに至り、アポトーシス作用、細胞形態調節作用、血管収縮などの多彩な生理作用を発揮する新しい脂質メディエーターであることが明らかとなってきている(非特許文献1、非特許文献2)。この脂質は細胞内セカンドメッセンジャーとしての作用と、細胞間メディエーターとしての二つの作用を併せ持つが、特に細胞間メディエーターとして作用に関する研究が活発に行なわれており、細胞膜表面上に存在する複数のG蛋白質共役型受容体(Endothelial Differentiation Gene,
EDG)を介して情報伝達がなされていることが報告されている(非特許文献1、非特許文献3)。現在S1P受容体にはEdg-1、Edg-3、Edg-5、Edg-6及びEdg-8の5つのサブタイプが知られており、各々S1P1、S1P3、S1P2、S1P4、S1P5とも呼ばれている。
【0003】
これらS1P受容体に対する様々な研究から、この受容体へのアゴニスト活性あるいはアンタゴニスト活性を示す、いわゆるS1P受容体調節剤が多岐にわたる疾患に対し有効性を発揮する報告がなされるようになった。例えばEdg-5(S1P2)に作用する化合物が動脈硬化症、腎線維症、肺線維症、肝線維症に有効であることが(特許文献1)に開示されている。又、Edg-1(S1P1)、Edg-3(S1P3)又はEdg-5へ作用する化合物が、慢性気管支喘息、びまん性過誤腫性肺脈管筋腫症、成人呼吸促迫症候群(ARDS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、間質性肺炎、特発性間質性肺炎、肺癌、過敏性肺臓炎などの呼吸器疾患の治療及び予防剤として有効であることが(特許文献2)に開示されている。さらにEdg-1アゴニスト作用を有する化合物が閉塞性動脈硬化症、閉塞性血栓血管炎、バージャー病、糖尿病性ニュロパチーの末梢動脈疾患、敗血症、血管炎、腎炎、肺炎、脳梗塞、心筋梗塞症、浮腫性疾患、動脈硬化症、痔核、裂肛、痔ろうなどの静脈瘤、解離性大動脈瘤、狭心症、DIC、胸膜炎、うっ血性心不全、多臓器不全、とこずれ、火傷、潰瘍性大腸炎、クローン病、心移植、腎移植、皮膚移植、肝移植、骨髄移植、骨粗しょう、慢性肝炎、肝硬変、慢性腎不全、腎糸球体硬化症の治療及び予防剤として有効であることが(特許文献3)に開示されている。
【0004】
さらに、S1P受容体アゴニスト活性を有する化合物が白血球の遊走を調節することが(非特許文献4、非特許文献5)に報告され、またこれらの非特許文献に紹介された一連の誘導体が各種臓器移植、GVHDに対する有効性以外に関節リウマチ、ループス腎炎、全身性エリテマトーデス、橋本病、多発性硬化症、重症筋無力症、I及びII型糖尿病、クローン病などの自己免疫疾患、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性接触皮膚炎などのアレルギー性疾患、炎症性腸疾患或いは潰瘍性大腸炎などの炎症性疾患に有効であることが(特許文献4、特許文献5)に開示されている。また、上記(特許文献4)ならびに(特許文献5)に類似したリン酸誘導体がS1P受容体拮抗薬として(特許文献6)にも開示されている。最近では、アミノアルコール誘導体、リン酸エステル誘導体、カルボン酸誘導体など様々な化合物が(特許文献7〜37)にS1P1受容体を中心とした調節剤として開示されている。
【0005】
また、S1P受容体調節剤とは明言されていないが免疫抑制作用を有する化合物として本特許化合物とは構造を異にするリン酸エステル誘導体が(特許文献38〜44)に開示されている。
【0006】
さらにS1P4受容体については白血球などの免疫担当細胞や免疫系に大きく関与する臓器に極度に分布することから、免疫系への深い関与が示唆されており、実際にSLE、リウマチなどの自己免疫疾患や喘息、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患や炎症性疾患治療薬を目的にS1P4アゴニスト活性を有する化合物が(特許文献30、35)に開示されている。
【0007】
このように多岐にわたる医学的用途の可能性を秘めたS1P)受容体作動薬については多くの関心が集められているが、すべてのS1P受容体作動薬が必ずしも生体にとって望ましい作用を提供してくれるわけではない。たとえば、近年、移植領域において注目を集めている新規免疫抑制剤2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール 塩酸塩(FTY720、CAS 162359-56-0)は、臨床試験において臓器移植拒絶反応を抑制する有用性が示されている反面、投与後に副作用として徐脈が認められ、この作用に関してはS1P3受容体に対するアゴニスト作用が起因しているのではないかといった報告もある(非特許文献6、非特許文献7)。
【0008】
本発明者らは徐脈などの副作用の発現を回避するためにS1P3受容体に対するアゴニスト作用の弱いS1P受容体調節作用を有する化合物の開発を目的に鋭意研究を行った結果、従来の化合物とは構造を異にするジオキサフォスフォリナン誘導体に、S1P1、S1P4受容体に対し選択性の高いアゴニスト作用を有することを発明した。
【0009】
なお、最近、本出願化合物の一部を含むアミノ環状リン酸誘導体が(特許文献29)に開示されたが、本出願化合物についての具体的な開示は無く、さらに本出願化合物の特徴であるS1P1、S1P4選択的アゴニスト作用についても何ら記載がない。
【0010】
【特許文献1】WO0198301号パンフレット
【特許文献2】WO03020313号パンフレット
【特許文献3】WO02092068号パンフレット
【特許文献4】WO0218395号パンフレット
【特許文献5】WO02076995号パンフレット
【特許文献6】特開平2003−137894号公報
【特許文献7】WO03040097号パンフレット
【特許文献8】WO02064616号パンフレット
【特許文献9】WO02062389号パンフレット
【特許文献10】WO03051876号パンフレット
【特許文献11】WO03061567号パンフレット
【特許文献12】WO03062248号パンフレット
【特許文献13】WO03062252号パンフレット
【特許文献14】WO03073986号パンフレット
【特許文献15】WO03074008号パンフレット
【特許文献16】WO03105771号パンフレット
【特許文献17】WO04010949号パンフレット
【特許文献18】WO04024673号パンフレット
【特許文献19】WO04058149号パンフレット
【特許文献20】WO04071442号パンフレット
【特許文献21】WO04096752号パンフレット
【特許文献22】WO04096757号パンフレット
【特許文献23】WO04103279号パンフレット
【特許文献24】WO04103306号パンフレット
【特許文献25】WO04103309号パンフレット
【特許文献26】WO04110979号パンフレット
【特許文献27】WO04113330号パンフレット
【特許文献28】WO04074297号パンフレット
【特許文献29】WO05014603号パンフレット
【特許文献30】WO05020882号パンフレット
【特許文献31】WO04002531号パンフレット
【特許文献32】WO05032465号パンフレット
【特許文献33】WO05041899号パンフレット
【特許文献34】WO05058848号パンフレット
【特許文献35】WO05070886号パンフレット
【特許文献36】WO05082089号パンフレット
【特許文献37】WO05082841号パンフレット
【特許文献38】特開平2004−137208号公報
【特許文献39】特開平2005−41867号公報
【特許文献40】特開平2005−47899号公報
【特許文献41】WO05014525号パンフレット
【特許文献42】WO05040091号パンフレット
【特許文献43】WO05063671号パンフレット
【特許文献44】WO05079788号パンフレット
【非特許文献1】Y.Takuma et al., Mol. Cell. Endocrinol.,177, 3(2001).
【非特許文献2】Y. Igarashi, Ann, N.Y.Acad. Sci., 845, 19(1998).
【非特許文献3】H. Okazaki et al., Biochem. Biophs. Res.Commun., 190, 1104(1993).
【非特許文献4】S. Mandala et al., Science, 296,346(2002).
【非特許文献5】V. Brinkmann etal., J. Biol. Chem., 277, 21453(2002).
【非特許文献6】M. G. Sanna et al.,J. Biol. Chem., 279, 13839(2004).
【非特許文献7】M. Forrest et al.,J. Pharmacol. Exp. Ther., 309, 758(2004).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、S1P3に対するアゴニスト作用が弱く、S1P1,S1P4受容体に対し優れたアゴニスト作用を有する副作用の少ないジオキサフォスフォリナン誘導体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、S1P1及びS1P4受容体調節作用を有し、S1P3受容体に対するアゴニスト作用の弱い安全性の高い化合物を創製すべく鋭意研究を重ねた結果、これまでに知られているS1P受容体調節剤とは構造を異にした新規なジオキサフォスフォリナン誘導体が強力なS1P1及びS1P4受容体調節作用を有するものの、S1P3受容体に対するアゴニスト作用が弱いことを見出し、本発明を完成した。
【0013】
即ち、本発明は
1) 一般式(1)
【0014】
【化1】

【0015】
[式中、Rは炭素数1〜7の低級アルキル基、炭素数1〜4の低級アルコキシ基、トリフルオロメチル基、置換基を有しても良いアラルキル基、置換基を有しても良いアラルキルオキシ基、置換基を有しても良いアラルキルチオ基または置換基を有しても良いフェノキシ基を、
は水素原子、ハロゲン原子またはトリフルオロメチル基を、
は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4の低級アルコキシ基またはトリフルオロメチル基を、XはO、S、SOまたはSOを、
mは2〜4の整数を示す]
で表されることを特徴とするジオキサフォスフォリナン誘導体、その薬理学的に許容しうる塩並びにその水和物、
【0016】
2)上記一般式(1)で示される化合物が、
5−アミノ−5−[4−(3−ベンジルオキシフェニルチオ)−2−クロロフェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
5−アミノ−5−[4−(3−ベンジルオキシフェニルチオ)−2−クロロフェニル]エチル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
5−アミノ−5−[4−(3−ベンジルオキシフェノキシ)−2−クロロフェニル]エチル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
5−アミノ−5−[2−クロロ−4−(3−フェノキシフェニルオキシ)フェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
5−アミノ−5−[2−トリフルオロメチル−4−(3−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
5−アミノ−5−[4−(3−トリフルオロメチルフェノキシ)−2−メトキシフェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
5−アミノ−5−[4−(3−ヘプチルフェノキシ)フェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
5−アミノ−5−[4−(3−ベンジルオキシ−5−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
5−アミノ−5−[4−(3−ベンジルチオフェニルオキシ)フェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
5−アミノ−5−[4−(3−ベンジルオキシ−5−トリフルオロメチルフェノキシ)−2−クロロフェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
5−アミノ−5−[4−(3−トリフルオロメチル−5−フェネチルフェノキシ)フェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
5−アミノ−5−[4−(4−クロロ−3−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
5−アミノ−5−[4−(3−ベンジルオキシフェノキシ)−2−クロロフェニル]ブチル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
5−アミノ−5−[4−(2−クロロ−3−トリフルオロメチルフェノキシ)−2−クロロフェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
5−アミノ−5−[4−(3−ベンジルオキシフェノキシ)−2−メチルフェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
5−アミノ−5−[2−クロロ−4−(3−メトキシフェニルチオ)フェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
5−アミノ−5−[4−(3−トリフルオロメチルフェニルチオ)−2−トリフルオロメチルフェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシドまたは
5−アミノ−5−[4−(3−ベンジルオキシフェニルチオ)−2−クロロフェニル]ブチル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシドである請求項1記載のジオキサフォスフォリナン誘導体及び薬理学的に許容しうる塩並びにその水和物、
【0017】
2) 一般式(1)
【0018】
【化2】

【0019】
[式中、Rは炭素数1〜7の低級アルキル基、炭素数1〜4の低級アルコキシ基、トリフルオロメチル基、置換基を有しても良いアラルキル基、置換基を有しても良いアラルキルオキシ基、置換基を有しても良いアラルキルチオ基または置換基を有しても良いフェノキシ基を、
は水素原子、ハロゲン原子またはトリフルオロメチル基を、
は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4の低級アルコキシ基またはトリフルオロメチル基を、XはO、S、SOまたはSOを、
mは2〜4の整数を示す]
で表されることを特徴とするジオキサフォスフォリナン誘導体、その薬理学的に許容しうる塩並びにその水和物の少なくとも一種類以上を有効成分とするS1P1、S1P4受容体調節剤、
【0020】
3) 前記一般式(1)で示される化合物が、
5−アミノ−5−[4−(3−ベンジルオキシフェニルチオ)−2−クロロフェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
5−アミノ−5−[4−(3−ベンジルオキシフェニルチオ)−2−クロロフェニル]エチル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
5−アミノ−5−[4−(3−ベンジルオキシフェノキシ)−2−クロロフェニル]エチル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
5−アミノ−5−[2−クロロ−4−(3−フェノキシフェニルオキシ)フェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
5−アミノ−5−[2−トリフルオロメチル−4−(3−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
5−アミノ−5−[4−(3−トリフルオロメチルフェノキシ)−2−メトキシフェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
5−アミノ−5−[4−(3−ヘプチルフェノキシ)フェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
5−アミノ−5−[4−(3−ベンジルオキシ−5−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
5−アミノ−5−[4−(3−ベンジルチオフェニルオキシ)フェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
5−アミノ−5−[4−(3−ベンジルオキシ−5−トリフルオロメチルフェノキシ)−2−クロロフェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
5−アミノ−5−[4−(3−トリフルオロメチル−5−フェネチルフェノキシ)フェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
5−アミノ−5−[4−(4−クロロ−3−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
5−アミノ−5−[4−(3−ベンジルオキシフェノキシ)−2−クロロフェニル]ブチル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
5−アミノ−5−[4−(2−クロロ−3−トリフルオロメチルフェノキシ)−2−クロロフェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
5−アミノ−5−[4−(3−ベンジルオキシフェノキシ)−2−メチルフェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
5−アミノ−5−[2−クロロ−4−(3−メトキシフェニルチオ)フェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
5−アミノ−5−[4−(3−トリフルオロメチルフェニルチオ)−2−トリフルオロメチルフェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
5−アミノ−5−[4−(3−ベンジルオキシフェニルチオ)−2−クロロフェニル]ブチル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシドであることを特徴とするジオキサフォスフォリナン誘導体、その薬理学的に許容しうる塩並びにその水和物の少なくとも一種類以上を有効成分とするS1P1,S1P4受容体調節剤、
【0021】
5)上記1)〜4)のいずれか1項に記載されたジオキサフォスフォリナン誘導体、その薬理学的に許容しうる塩並びにその水和物の少なくとも一種類以上を有効成分として含有する医薬、
に関するものである。
【発明の効果】
【0022】
上述のように、本発明は、新規なジオキサフォスフォリナン誘導体とその付加塩がS1P1、S1P4受容体に対しアゴニスト作用を示すものの徐脈の一因とされるS1P3受容体に対してはアゴニスト作用が弱いことを見出したものである。このようなS1P1、S1P4受容体に対し選択的な調節作用を有する化合物は、副作用が少なくかつ動脈硬化症、閉塞性動脈硬化症、閉塞性血栓血管炎、腎線維症、肝腎線維症維症、慢性気管支喘息、びまん性過誤腫性肺脈管筋腫症、成人呼吸促迫症候群(ARDS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、間質性肺炎、特発性間質性肺炎、肺癌、過敏性肺臓炎、バージャー病、糖尿病性ニューロパチーの末梢動脈疾患、敗血症、血管炎、腎炎、肺炎、脳梗塞、心筋梗塞症、浮腫性疾患、静脈瘤、解離性大動脈瘤、狭心症、DIC、胸膜炎、うっ血性心不全、多臓器不全、とこずれ、火傷、潰瘍性大腸炎、クローン病などの治療及び予防薬として、又、心移植、腎移植、皮膚移植、肝移植、骨髄移植などの拒絶反応の予防又は治療薬、関節リウマチ、ループス腎炎、全身性エリトマトーデス、橋本病、多発性硬化症、重症筋無力症、糖尿病、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性接触皮膚炎等の予防又は治療薬として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明における上記一般式(1)は新規化合物である。
【0024】
本発明における一般式(1)で表される化合物の薬理学的に許容される塩には、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、又はアルミニウム塩のようなアルカリ付加塩が挙げられる。
【0025】
また、本発明の一般式(1)において、「ハロゲン原子」とはフッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表し、「炭素数1〜7の低級アルキル基」とは、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシルまたはヘプチルなどの直鎖もしくは分岐した炭素数1〜7の炭化水素が挙げられる。「炭素数1〜4の低級アルキル基」、「炭素数1〜4の低級アルコキシ基」、などの「低級アルキル基」とは、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチルまたはt−ブチルなどの直鎖もしくは分岐した炭素数1〜4の炭化水素が挙げられる。「置換基を有しても良いアラルキル基」、「置換基を有しても良いアラルキルオキシ基」、「置換基を有しても良いアラルキルチオ基」、「置換基を有しても良いフェニル基」とはベンゼン環の任意の位置にフッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子などのハロゲン原子、トリフルオロメチル基、炭素数1〜4の低級アルキル基、炭素数1〜4の低級アルコキシ基またはヒドロキシ基を有するものが挙げられる。又ここでいう「アラルキル基」とはベンジル基、ジフェニルメチル基、フェネチル基またはフェニルプロピル基が挙げられる。
【0026】
本発明によれば、上記一般式(1)で表される化合物は、一般式(2)
【0027】
【化3】

【0028】
[式中、R1、R2、R3、X及びmは前述の通り]
で表される化合物をオキシ塩化リン及びリン酸トリメチルと作用させることによって製造することができる。
【0029】
反応は、オキシ塩化リンとリン酸トリメチルの混液に、好ましくはプロトンスポンジを加え0℃〜常温下に反応させることが好ましい。
【0030】
なお一般式(2)で表される化合物の合成法については、WO03029184、WO03029205、WO04074297及びWO05044780に記載された方法によって製造することができる。

【実施例】
【0031】
次に本発明を具体例によって説明するが、これらの例によって本発明が限定されるものではない。
【0032】
なお、一般式(2)で表される中間体はWO03029184、WO03029205、WO04074297及びWO05044780中に記載された化合物であるか、または同様な方法によって製造することができる。
【0033】
<実施例1>
5−アミノ−5−[4−(3−ベンジルオキシフェニルチオ)−2−クロロフェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド
【0034】
【化4】

【0035】
2−アミノ−2−[4−(3−ベンジルオキシフェニルチオ)−2−クロロフェニル]プロピル−1,3−プロパンジオール塩酸塩(500mg)、プロトンスポンジ(257mg)のリン酸トリメチル(2.00mL)の溶液に、0℃においてオキシ塩化リン(0.11mL)を加えて、2時間撹拌した。水を加え濃縮後、析出した結晶を濾取し希塩酸、水の順で洗浄後乾燥した。濾液を濃縮後、逆層シリカゲルカラムクロマトグラフィー(水: MeCN = 9 : 1→6:1→3:1→1:1→1:3)にて精製し、濾取した結晶とあわせて目的物(343mg)を無色粉末として得た。
MS(FAB+): 520([M+H])
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6) δ 1.48-1.63(4H,
m), 2.62-2.65(2H, m), 3.73-3.81(2H, m), 4.10-4.12(2H, m), 5.11(2H, s),
6.91-7.02(3H, m), 7.23-7.43(9H, m), 8.15(2H, br).
【0036】
以下、対応するアミノアルコールを原料として上記実施例と同様に反応させ下記に示す化合物を合成した。
【0037】
<実施例2>
5−アミノ−5−[4−(3−ベンジルオキシフェニルチオ)−2−クロロフェニル]エチル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド
【0038】
【化5】

【0039】
無色粉末
MS(FAB+): 506([M+H])
HRMS(FAB+) : 506.0975 (+1.7 mmu)
NMR(400MHz, DMSO-d6)δ: 1.61-1.66 (2H, m), 2.65-2.70 (2H, m), 3.12 (1H, br), 3.77-3.85
(2H, m), 4.19-4.22 (2H, m), 5.08 (2H, s), 6.89-7.00 (3H, m), 7.21-7.22 (1H, m),
7.29-7.40 (8H, m), 8.23 (2H, br).
【0040】
<実施例3>
5−アミノ−5−[4−(3−ベンジルオキシフェノキシ)−2−クロロフェニル]エチル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド
【0041】
【化6】

【0042】
無色粉末
MS(FAB+): 490([M+H])
HRMS(FAB+) : 490.1201 (+1.4 mmu)
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6)δ: 1.62-1.67 (2H, m), 2.64-2.69 (2H, m), 3.79-3.87 (2H, m), 4.20-4.22
(2H, m), 5.08 (2H, s), 6.56-6.58 (1H, m), 6.67-6.68 (1H, m), 6.81-6.84 (1H, m),
6.91-6.94 (1H, m), 7.04-7.05 (1H, m), 7.27-7.42 (7H, m), 8.25 (2H, br).
【0043】
<実施例4>
5−アミノ−5−[2−クロロ−4−(3−フェノキシフェニルオキシ)フェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド
【0044】
【化7】

【0045】
無色粉末
MS(FAB+): 490 ([M+H])
HRMS(FAB+) : 490.1177 (−0.9 mmu)
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6)
δ: 1.44-1.66 (4H, m), 2.58-2.66 (2H, m), 3.11-3.13
(2H, m), 3.69-3.77 (1H, m), 3.86 (1H, br), 4.09-4.11 (1H, m), 6.62-6.63 (1H,
m), 6.73-6.75 (2H, m), 6.97-7.18 (5H, m), 7.32-7.42 (4H, m).
【0046】
<実施例5>
5−アミノ−5−[2−トリフルオロメチル−4−(3−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド
【0047】
【化8】

【0048】
無色粉末
MS(FAB+): 500([M+H])
HRMS(FAB+): 500.1060 (-0.1 mmu)
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6)δ: 1.47-1.67(4H, m), 2.63-2.72(2H, m), 3.70-3.82(2H, m),
4.06-4.13(2H, m), 7.29-7.37(3H, m), 7.40-7.58(3H, m), 7.64(1H, t, J=7.9Hz),
8.05-8.24(2H, br).
【0049】
<実施例6>
5−アミノ−5−[4−(3−トリフルオロメチルフェノキシ)−2−メトキシフェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド
【0050】
【化9】

【0051】
無色粉末
MS(FAB+): 462([M+H])
HRMS(FAB+): 462.1309 (+1.5 mmu)
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6)δ: 1.40-1.55(4H, m), 2.48-2.53(2H, m), 3.66-3.72(2H, m), 3.75(3H, s),
4.05-4.12(2H, m), 6.55(1H, dd, J=2.5, 7.9Hz), 6.77(1H, d, J=2.5Hz), 7.15(1H, d,
J=7.9Hz), 7.24-7.27(2H, m), 7.45(1H, d, J=7.9Hz), 7.60(1H, t, J=7.9Hz),
7.92-8.08(3H, br).
【0052】
<実施例7>
5−アミノ−5−[4−(3−ヘプチルフェノキシ)フェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド
【0053】
【化10】

【0054】
黄色アモルファス
MS(FAB+): 462([M+H])
HRMS: 462.2415 (+0.5 mmu)
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6)δ: 0.82(3H, t, J=6.7Hz), 1.15-1.27(8H, m),
1.42-1.59(6H, m), 2.48-2.62(4H, m), 3.82-3.94(2H, m), 4.17-4.22(2H, m),
6.70-6.73(2H, m), 6.89-6.94(3H, m), 7.16-7.19(2H, m), 7.23(1H, t, J=7.9Hz),
7.59-7.63(2H, br).
【0055】
<実施例8>
5−アミノ−5−[4−(3−ベンジルオキシ−5−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド
【0056】
【化11】

【0057】
無色粉末
MS(FAB+): 538([M+H])
HRMS: 538.1640 (+3.4 mmu)
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6)δ: 1.00-1.24(4H, m), 2.12-2.20(2H, m), 3.28-3.41(2H, m),
3.67-3.74(2H, m), 4.77(2H, s), 6.38(1H, s), 6.46(1H, s), 6.61(2H, d, J=7.9Hz),
6.69(1H, s), 6.85(2H, d, J=7.9Hz), 6.92-7.06(5H, m), 7.65-7.80(2H, br).
【0058】
<実施例9>
5−アミノ−5−[4−(3−ベンジルチオフェニルオキシ)フェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド
【0059】
【化12】

【0060】
無色粉末
MS(FAB+): 486([M+H])
HRMS: 486.1466
(-3.8 mmu)
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6)
δ: 1.40-1.47(2H, m), 1.57-1.62(2H, m), 2.45-2.52(2H,
m), 3.70-3.79(2H, m), 4.07-4.13(2H, m), 4.21(2H, s), 6.73(1H, dd, J=2.5,
8.6Hz), 6.88-6.90(3H, m), 7.05(2H, d, J=7.9Hz), 7.13-7.32(7H, m), 8.03-8.17(3H,
br).
【0061】
<実施例10>
5−アミノ−5−[4−(3−ベンジルオキシ−5−トリフルオロメチルフェノキシ)−2−クロロフェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド
【0062】
【化13】

【0063】
無色粉末
MS(FAB+): 572([M+H])
HRMS(FAB+): 572.1190
(-2.7 mmu)
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6)
δ: 1.39-1.43(2H, m), 1.53-1.63(2H, m), 2.63(2H, t,
J=7.3Hz), 3.59-3.66(2H, m), 3.82-3.87(2H, m), 5.17(2H, s), 6.07-6.50(3H, br),
6.89(1H, br s), 6.94(1H, br s), 6.98(1H, dd, J=2.5, 8.6Hz), 7.14(1H, br s),
7.16(1H, d, J=2.5Hz), 7.31-7.43(6H, m).
【0064】
<実施例11>
5−アミノ−5−[4−(3−トリフルオロメチル−5−フェネチルフェノキシ)フェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド
【0065】
【化14】

【0066】
無色粉末
MS(FAB+): 536([M+H])
HRMS(FAB+): 536.1812
(-0.2 mmu)
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6) δ 1.41-1.48(2H,
m), 1.54-1.65(2H, m), 2.52-2.56(2H, m), 2.83-2.89(2H, m), 2.91-2.97(2H, m),
3.43-3.50(2H, m), 3.77-3.81(2H, m), 6.61-6.68(2H, m), 6.75-6.83(2H, m), 6.91-7.05(8H,
m)
【0067】
<実施例12>
5−アミノ−5−[4−(4−クロロ−3−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド
【0068】
【化15】

【0069】
無色粉末
MS(FAB+): 466([M+H])
HRMS(FAB+): 466.0785(-1.3 mmu)
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6) δ 1.46-1.54(2H,
m), 1.58-1.72(2H, m), 2.55-2.62(2H, m), 3.74-3.85(2H, m), 4.12-4.20(2H, m),
7.12(2H, d, J=8.6Hz), 7.29 (1H, dd, J=3.0, 9.2Hz), 7.33(2H, d, J=8.6Hz),
7.46(1H, d, J=3.0Hz), 7.76(1H, d, J=9.2Hz), 7.86-8.20(3H, br)
【0070】
<実施例13>
5−アミノ−5−[4−(3−ベンジルオキシフェノキシ)−2−クロロフェニル]ブチル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド
【0071】
【化16】

【0072】
無色粉末
MS(FAB+): 518([M+H])
HRMS(FAB+): 518.1452(-4.7 mmu)
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6) δ 1.22-1.54(6H,
m), 2.59-2.68(2H, m), 3.66-3.74(2H, m), 4.08-4.16(2H, m), 5.08(2H, s), 6.57(1H,
dd, J=2.4, 8.6Hz), 6.67(1H, t, J=2.4Hz), 6.82(1H, dd, J=2.4, 8.6Hz), 6.91(1H,
dd, J=2.4, 8.6Hz), 7.03(1H, d, J=2.4Hz), 7.26-7.44(7H, m), 7.90-8.10(2H, br)
【0073】
<実施例14>
5−アミノ−5−[4−(2−クロロ−3−トリフルオロメチルフェノキシ)−2−クロロフェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド
【0074】
【化17】

【0075】
無色粉末
MS(FAB+): 500([M+H])
HRMS(FAB+): 500.1382(-2.7 mmu)
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6) δ 1.38-1.46(2H,
m), 1.51-1.62(2H, m), 2.39-2.59(2H, m), 3.61-3.78(2H, m), 4.06-4.13(2H, m),
6.97(1H, dd, J=8.6Hz), 7.14-7.31(3H, m), 7.53(1H, t, J=8.6Hz), 7.64(1H, d,
J=8.6Hz), 7.90-8.10(3H, br)
【0076】
<実施例15>
5−アミノ−5−[4−(3−ベンジルオキシフェノキシ)−2−メチルフェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド
【0077】
【化18】

【0078】
無色粉末
MS(FAB+): 484([M+H])
HRMS(FAB+): 484.1893(+0.4 mmu)
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6) δ 1.42-1.62(4H,
m), 2.21(3H, s), 2.44-2.59(2H, m), 3.64-3.76(2H, m), 4.04-4.12(2H, m), 5.05(2H,
s), 6.47(1H,dd, J=1.8, 8.6Hz), 6.56(1H, t, J=1.8Hz), 6.71-6.76(2H, m), 6.80(1H,
d, J=1.8Hz), 7.10(1H, d, J=8.6Hz), 7.23(1H, t, J=8.6Hz), 7.34-7.41(5H, m),
7.80-8.22(2H, br)
【0079】
<実施例16>
5−アミノ−5−[2−クロロ−4−(3−メトキシフェニルチオ)フェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド
【0080】
【化19】

【0081】
無色粉末
MS(FAB+): 444([M+H])
HRMS(FAB+): 444.0807(+0.6 mmu)
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6) δ 1.38-1.64(4H,
m), 2.53-2.67(2H, m), 3.61-3.72(2H, m), 3.73(3H, s), 4.03-4.10(2H, m),
6.86-6.94(3H, m), 7.23(1H, dd, J=1.8, 8.6Hz), 7.29-7.35(3H, m), 7.60-8.10(2H,
br)
【0082】
<実施例17>
5−アミノ−5−[4−(3−トリフルオロメチルフェニルチオ)−2−トリフルオロメチルフェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド
【0083】
【化20】

【0084】
無色粉末
MS(FAB+): 516([M+H])
HRMS(FAB+): 516.0794(−3.9
mmu)
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6) δ 1.42-1.64(4H,
m), 2.64-2.72(2H, m), 3.64-3.76(2H, m), 4.03-4.14(2H, m), 7.54-7.72(7H, m),
7.84-8.10(2H, br)
【0085】
<実施例18>
5−アミノ−5−[4−(3−ベンジルオキシフェニルチオ)−2−クロロフェニル]ブチル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド
【0086】
【化21】

【0087】
無色粉末
MS(FAB+): 534([M+H])
HRMS(FAB+): 534.1243 (−2.8
mmu)
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6) δ 1.20-1.54(6H,
m), 2.58-2.68(2H, m), 3.54-3.71(2H, m), 3.88-3.98(2H, m), 5.05(2H, s), 6.87(1H,
d, J=8.6Hz), 6.91-6.98(2H, m), 7.15-7.18(1H, m), 7.25-7.38(8H, m),
7.84-8.10(2H, br)
【0088】
次に本発明化合物について、有用性を裏付ける成績を実験例によって示す。
【0089】
<実験例1> ヒトS1P(スフィンゴシン-1-リン酸)受容体発現細胞に対する被験化合物の細胞内カルシウム動員誘導試験
10%のウシ胎児血清、及び200μg/mLのGeneticinを含むHam’s F-12培地で継代培養したヒトS1P受容体発現CHO細胞(hS1P1受容体発現CHO細胞、あるいはhS1P3受容体発現CHO細胞)を4×104
cells/wellで96穴黒色クリアボトム培養プレート(コースター)に播種し、37℃、5%CO2条件下で一晩培養した。さらにCa2+結合性蛍光指示薬としてCalcium Screening Kit試薬(同仁化学)を添加し、37℃、5%CO2条件下で60分間培養した。培養後、マイクロプレート蛍光分光光度計(FLEX Station、モレキュラーデバイス)を用いて、励起波長485nm、検出波長525nmにおける蛍光強度を測定した。最終濃度の10倍の濃度になるよう培地で調製したS1P、あるいは被験化合物(最終DMSO濃度0.1%)を蛍光測定開始18秒後に添加し、1.5秒毎で添加後100秒まで蛍光強度を連続測定した。測定データより最大蛍光強度から最小蛍光強度を引いた値(蛍光増加量)を算出し、溶媒を添加したときの蛍光増加量とS1Pを10-6Mで作用させたときの蛍光増加量の差を100%として、被験化合物の蛍光増加率(%)を算出した。これを被験化合物の細胞内カルシウム動員誘導作用として、PRISMソフトウェア(GraphPad)を用いてEC50値を求めた。EC50値≧0.1μmol/Lについては−、0.1μmol/L>EC50値≧0.01μmol/Lについては+、0.01μmol/L>EC50値については++と表記し、表4に示した。
【0090】
【表1】

【0091】
以上の結果から本発明化合物はヒトS1P1、S1P4受容体により高い選択的アゴニストであることが認められた。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、新規なジオキサフォスフォリナン誘導体とその付加塩がS1P1,S1P4受容体に選択的なアゴニスト作用を有することを見出したものである。このようなS1P3受容体に対するアゴニスト作用の弱いS1P受容体調節作用を有する化合物は、副作用が少なくかつ動脈硬化症、閉塞性動脈硬化症、閉塞性血栓血管炎、腎線維症、肝線維症、慢性気管支喘息、びまん性過誤腫性肺脈管筋腫症、成人呼吸促迫症候群(ARDS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD),間質性肺炎、特発性間質性肺炎、肺癌、過敏性肺臓炎、バージャー病、糖尿病性ニューロパチーの末梢動脈疾患、敗血症、血管炎、腎炎、肺炎、脳梗塞、心筋梗塞症、浮腫性疾患、静脈瘤、解離性大動脈瘤、狭心症、DIC、胸膜炎、うっ血性心不全、多臓器不全、とこずれ、火傷、潰瘍性大腸炎、クローン病などの治療及び予防薬として、又、心移植、腎移植、皮膚移植、肝移植、骨髄移植などの拒絶反応の予防又は治療薬、関節リウマチ、ループス腎炎、全身性エリトマトーデス、橋本病、多発性硬化症、重症筋無力症、糖尿病、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性接触皮膚炎等の予防又は治療薬として有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

[式中、Rは炭素数1〜7の低級アルキル基、炭素数1〜4の低級アルコキシ基、トリフルオロメチル基、置換基を有しても良いアラルキル基、置換基を有しても良いアラルキルオキシ基、置換基を有しても良いアラルキルチオ基または置換基を有しても良いフェノキシ基を、
は水素原子、ハロゲン原子またはトリフルオロメチル基を、
は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4の低級アルコキシ基またはトリフルオロメチル基を、XはO、S、SOまたはSOを、
mは2〜4の整数を示す]
で表される化合物であることを特徴とするジオキサフォスフォリナン誘導体、その薬理学的に許容しうる塩並びにその水和物。
【請求項2】
前記一般式(1)で示される化合物が、
1)5−アミノ−5−[4−(3−ベンジルオキシフェニルチオ)−2−クロロフェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
2)5−アミノ−5−[4−(3−ベンジルオキシフェニルチオ)−2−クロロフェニル]エチル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
3)5−アミノ−5−[4−(3−ベンジルオキシフェノキシ)−2−クロロフェニル]エチル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
4)5−アミノ−5−[2−クロロ−4−(3−フェノキシフェニルオキシ)フェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
5)5−アミノ−5−[2−トリフルオロメチル−4−(3−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
6)5−アミノ−5−[4−(3−トリフルオロメチルフェノキシ)−2−メトキシフェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
7)5−アミノ−5−[4−(3−ヘプチルフェノキシ)フェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
8)5−アミノ−5−[4−(3−ベンジルオキシ−5−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
9)5−アミノ−5−[4−(3−ベンジルチオフェニルオキシ)フェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
10)5−アミノ−5−[4−(3−ベンジルオキシ−5−トリフルオロメチルフェノキシ)−2−クロロフェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
11)5−アミノ−5−[4−(3−トリフルオロメチル−5−フェネチルフェノキシ)フェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
12)5−アミノ−5−[4−(4−クロロ−3−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
13)5−アミノ−5−[4−(3−ベンジルオキシフェノキシ)−2−クロロフェニル]ブチル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
14)5−アミノ−5−[4−(2−クロロ−3−トリフルオロメチルフェノキシ)−2−クロロフェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
15)5−アミノ−5−[4−(3−ベンジルオキシフェノキシ)−2−メチルフェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
16)5−アミノ−5−[2−クロロ−4−(3−メトキシフェニルチオ)フェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
17)5−アミノ−5−[4−(3−トリフルオロメチルフェニルチオ)−2−トリフルオロメチルフェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
18)5−アミノ−5−[4−(3−ベンジルオキシフェニルチオ)−2−クロロフェニル]ブチル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシドである請求項1記載のジオキサフォスフォリナン誘導体及び薬理学的に許容しうる塩並びにその水和物。
【請求項3】
一般式(1)
【化2】

[式中、Rは炭素数1〜7の低級アルキル基、炭素数1〜4の低級アルコキシ基、トリフルオロメチル基、置換基を有しても良いアラルキル基、置換基を有しても良いアラルキルオキシ基、置換基を有しても良いアラルキルチオ基または置換基を有しても良いフェノキシ基を、
は水素原子、ハロゲン原子またはトリフルオロメチル基を、
は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4の低級アルコキシ基またはトリフルオロメチル基を、XはO、S、SOまたはSOを、
mは2〜4の整数を示す]
で表されることを特徴とするジオキサフォスフォリナン誘導体、その薬理学的に許容しうる塩並びにその水和物の少なくとも一種類以上を有効成分とするS1P1,S1P4受容体調節剤。
【請求項4】
前記一般式(1)で示される化合物が、
1)5−アミノ−5−[4−(3−ベンジルオキシフェニルチオ)−2−クロロフェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
2)5−アミノ−5−[4−(3−ベンジルオキシフェニルチオ)−2−クロロフェニル]エチル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
3)5−アミノ−5−[4−(3−ベンジルオキシフェノキシ)−2−クロロフェニル]エチル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
4)5−アミノ−5−[2−クロロ−4−(3−フェノキシフェニルオキシ)フェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
5)5−アミノ−5−[2−トリフルオロメチル−4−(3−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
6)5−アミノ−5−[4−(3−トリフルオロメチルフェノキシ)−2−メトキシフェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
7)5−アミノ−5−[4−(3−ヘプチルフェノキシ)フェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
8)5−アミノ−5−[4−(3−ベンジルオキシ−5−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
9)5−アミノ−5−[4−(3−ベンジルチオフェニルオキシ)フェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
10)5−アミノ−5−[4−(3−ベンジルオキシ−5−トリフルオロメチルフェノキシ)−2−クロロフェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
11)5−アミノ−5−[4−(3−トリフルオロメチル−5−フェネチルフェノキシ)フェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
12)5−アミノ−5−[4−(4−クロロ−3−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
13)5−アミノ−5−[4−(3−ベンジルオキシフェノキシ)−2−クロロフェニル]ブチル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
14)5−アミノ−5−[4−(2−クロロ−3−トリフルオロメチルフェノキシ)−2−クロロフェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
15)5−アミノ−5−[4−(3−ベンジルオキシフェノキシ)−2−メチルフェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
16)5−アミノ−5−[2−クロロ−4−(3−メトキシフェニルチオ)フェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
17)5−アミノ−5−[4−(3−トリフルオロメチルフェニルチオ)−2−トリフルオロメチルフェニル]プロピル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、
18)5−アミノ−5−[4−(3−ベンジルオキシフェニルチオ)−2−クロロフェニル]ブチル−2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシドであることを特徴とするジオキサフォスフォリナン誘導体、その薬理学的に許容しうる塩並びにその水和物の少なくとも一種類以上を有効成分とするS1P1,S1P4受容体調節剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載されたジオキサフォスフォリナン誘導体、その薬理学的に許容しうる塩並びにその水和物の少なくとも一種類以上を有効成分として含有する医薬。

【公開番号】特開2007−169194(P2007−169194A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−367355(P2005−367355)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(000001395)杏林製薬株式会社 (120)
【Fターム(参考)】