説明

ジカルボン酸二塩化物の製造方法

【課題】薬局方基準、特に特有の旋光度に関する基準を満たす造影剤である化合物の合成における中間体として用いられる化合物の工業的に便利な製造方法及び精製方法を提供する。
【解決手段】S−(−)−5−〔〔2−(アセチルオキシ)−1−オキソプロピル〕−アミノ〕−2,4,6−トリヨード−1,3−ベンゼンジカルボン酸二塩化物の製造方法であって、S−(−)−〔2−(アセチルオキシ)〕プロピオン酸塩化物と、5−アミノ−2,4,6−トリヨード−1,3−ベンゼンジカルボン酸二塩化物とを、非プロトン性双極性溶媒中、ハロゲン化水素酸の存在下での反応を含む方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、次式(I):
【0002】
【化2】

【0003】
で示されるS−5−〔〔2−(アセチルオキシ)−1−オキソプロピル)〕アミノ〕−2,4,6−トリヨード−1,3−ベンゼンジカルボン酸二塩化物の新規な製造方法に関する。式(I)の化合物は、GB 1472050中にすでに記載があり、S−N,N′−ビス〔2−ヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)エチル〕−5−〔(2−ヒドロキシ−1−オキソプロピル)アミノ〕−2,4,6−トリヨ−ド−1,3−ベンゼンジカルボキサミド(以下、化合物Aと呼ぶ)の製造中間体として用いられてきた。
【0004】
上記の特許明細書中に記載された式(I)の化合物の合成は、スキーム1に示した以下の反応を予測している。
【0005】
【化3】

【0006】
5−アミノ−2,4,6−トリヨード−1,3−ベンゼンジカルボン酸二塩化物(式(II)の化合物)の反応は、GB 1472050によれば、2.5当量のS−(−)−〔2−(アセチルオキシ)〕プロピオン酸塩化物と、ジメチルアセトアミド中、3〜5℃で実施される。
【0007】
最近公表された特許出願GB 2271990中には、化合物(I)の製造方法の記載があり、その方法は、スキーム1の反応において触媒量のルイス酸を用いることが特徴である。著者によれば、該発明によりもたらされる改良は、定量的な転換であるという。反応溶媒は種々変更することができ、これによりジメチルアセトアミドの除去から派生する不利益をさけることができる。
【0008】
上記したように、化合物Aは、キラル中心を有する生成物であって、その薬局方基準(例えば、USP XXV;FU IX 版)によれば、その特有の最小旋光能は〔α〕43620=−4.6°と5.2°(c=40、H2O)の間の範囲である。
【0009】
スキーム1の反応をジメチルアセトアミド中、又は他の非プロトン性双極性溶媒中、ハロゲン化水素酸の存在下で実施する場合、光学的及び化学的に純粋な最終生成物を含んだ反応混合物を得ることができるということが判明し、これが本願のひとつの側面である。
【0010】
さらに、本発明は、この反応混合物の工業的に便利な精製方法に関し、これにより、特有の旋光能が〔α〕D20=−13.7°と−14.7°(c=10、CH3CN)の間の範囲であって、化学的純度が99%以上である、式(I)の純粋な化合物が高い収量で得られる。この生成物は、化合物Aの合成において中間体として用いられて、薬局方基準、特に特有の旋光度に関する基準を満たす造影剤となる。
【0011】
したがって、本発明の範囲は、式(I)の化合物の製造方法であって、非プロトン性双極性溶媒中、ハロゲン化水素酸の存在下で、S−(−)−〔2−(アセチルオキシ)〕プロピオン酸塩化物と、式(II)の化合物5−アミノ−2,4,6−トリヨード−1,3−ベンゼンジカルボン酸二塩化物との反応を含む方法である。
【0012】
本発明の好ましい実施態様において、非プロトン性双極性溶媒は、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド及びN−メチル−2−ピロリドンからなる群から選択され、好ましくはN,N−ジメチルアセトアミドである。
【0013】
特に好ましい反応条件は、ハロゲン化水素酸を、式(II)の化合物に対して、0.1:3のモル比で、無水ガスとして加えることである。
【0014】
同様に好ましい反応条件は、ハロゲン化水素酸を、上述の非プロトン性双極性溶媒の塩として加えることである。とくに好ましいのは、ジメチルアセトアミド塩酸塩である。
【0015】
同様に好ましい反応条件は、0〜40℃の温度範囲で実施することである。
【0016】
本発明はまた、該生成反応から得られるS−5−〔〔2−(アセチルオキシ)−1−オキソ−プロピル〕アミノ〕−2,4,6−トリヨード−1,3−ベンゼンジカルボン酸二塩化物の精製及び単離方法に関する。
【0017】
最終生成物及び非プロトン性双極性溶媒を含有する反応混合物を、酢酸の直鎖又は分岐鎖(C3−C5)アルコールとのエステル;直鎖もしくは分岐鎖の(C3−C5)第二又は第三級アルコール;及びモノ−、ジ−もしくはポリ−クロロ−(C1−C4)アルカンからなる群から選択される溶媒で希釈し、ついで水を加えることにより、所望の化合物を良好な収量で単離し、非プロトン性双極性溶媒の除去が容易にかつ完全に実施でき、かつ、薬局方基準に適した化合物Aの合成を実施するために必要な、化学的−物理的性質のすべてを有する生成物を得ることができることが判明した。
【0018】
本発明はまた、以下の工程からなる、S−(−)−5−〔〔2−(アセチルオキシ)−1−オキソ−プロピル〕アミノ〕−2,4,6−トリヨード−1,3−ベンゼンジカルボン酸二塩化物の単離及び精製方法に関する。
−反応混合物を、酢酸の直鎖もしくは分岐鎖(C3−C5)アルコールとのエステル、又はモノ−、ジ−もしくはポリ−クロロ(C1−C4)アルカンで、希釈溶媒と非プロトン性双極性溶媒の比0.3:1〜2.5:1w/wにおいて希釈し、
−水対希釈溶媒の比0.5:1〜4:1w/wにおいて水により非プロトン性双極性溶媒を抽出し、
−水で生成物を沈殿させる。
【0019】
特に好ましい溶媒は、プロピルアセタート、n−ブチルアセタート及びメチルクロロホルムから選択される溶媒である。
【0020】
驚くべきことに、反応混合物の精製は、反応混合物の希釈に用いるのと同じ溶媒及び水を両端に充填し、反応混合物を中間のプレートに充填した連続式抽出器の使用を基本とする、別の方法を用いて有利に実施することができることが判明した。生成物は、溶媒相の濃縮により単離される。この場合もまた生成物は所望の化学的−物理学的純度の基準に見合うものである。
【0021】
直鎖もしくは分岐鎖の第二または第三級(C1−C3)アルコールの使用に関しては、希釈は、選択した溶媒を反応混合物に加えることによるか、又は選択したアルコールを含有する水−アルコール溶液に反応混合物を加えるかのいずれかにより実施され、反応混合物中の非プロトン性双極性溶媒に対する、希釈溶媒の比は、常に0〜1.5w/w、好ましくは0.3〜0.6w/wの範囲である。
【0022】
以下の実施例は、本発明の実施を説明するものであり、いかなる意味でも本発明の範囲を制限するものではない。
【0023】
実施例1
(S)−5−〔〔2−(アセチルオキシ)−1−オキソプロピル〕アミノ〕−2,4,6−トリヨード−1,3−ベンゼンジカルボン酸二塩化物
【0024】
【化4】

【0025】
A)S−(−)−〔2−(アセチルオキシ)〕プロピオン酸ナトリウム塩
S−(−)乳酸ナトリウム塩560gを、酢酸1.5kgに溶解した。HCl(35〜38%w/w)180g及び無水酢酸650gを、温度が40℃を越えないように、攪拌しつつ加えた。溶液を20℃に冷却し、無水酢酸ナトリウム20gを、30分間攪拌しつつ加えた。得られた懸濁液をセライトを通してろ過し、このフィルターを酢酸50gで洗浄した。酢酸−無水酢酸(無水物5〜12%)により形成された混合物を真空下に蒸留してろ液を濃縮した。濃縮液は所望の生成物に相当し、そのまま、次の工程に用いた。
【0026】
B)S−(−)−〔2−(アセチルオキシ)〕プロピオン酸塩化物
工業用SOCl2640gを、80℃で、工程A)で得られた濃縮物に滴下し、この段階の間温度を65〜70℃に維持した。滴下が終了した時点で、過剰なSOCl2を、真空下で濃縮して除去した。45〜70℃、圧力11〜15mmHgで所望の生成物を蒸留した。生成物677gが得られた。
【0027】
収率 : 90%
ガスクロマグラフィー: 99.5%
〔α〕D20=−35.8(生成物)
1H−NMR、13C−NMR、IR及びMSスペクトルは構造と一致していた。
【0028】
C)5−アミノ−1,3−ベンゼンジカルボン酸
5−ニトロ−1,3−ベンゼンジカルボン酸(市販の製品)325gを、水2.8リットルを含有する反応器に加えた。これを60〜70℃に加熱し、30%NaOH410gを加えることにより、出発物質を溶解した。次いで、炭10gを加えた。スラリーをろ過し、フィルターを水200mlで洗浄した。
【0029】
5%Pd/C(市販の製品)8gを反応容器に加え、約0.01m3の窒素で調整した。水素0.1m3を30kpaの圧力下に加えた。温度は自動的に50℃に達するのでこれを冷却し続けた。水素の消費が停止したなら、溶液を圧力下に1時間保持し、次いで窒素0.02m3で洗浄することにより残余の水素を除去した。懸濁液をろ過し、フィルターを水100mlで洗浄して、5−アミノ−1,3−ベンゼンジカルボン酸ナトリウム塩を含む溶液3.85kgを得た。
【0030】
D)5−アミノ−2,4,6−トリヨードー1,3−ベンゼンジカルボン酸
水2.75リットルを含有する反応容器に、HCl(34%w/w)0.08kg、前段階の反応で得られた5−アミノ−1,3−ベンゼンジカルボン酸ナトリウム塩溶液3.85kg及びH2SO4(1:1水溶液)375gを加えた。内容物を70℃に加熱し、HCl中のICl溶液(ヨウ素44.5%、ICl:HCl(モル比)=1:1)(市販の製品)1.35kgを3時間かけて加えた。添加が終了したら、溶液を90℃に加熱し、この温度を6時間維持した。次いで内容物を60℃に冷却し、別の反応容器に移し、ここで30℃まで冷却した。攪拌しつつ亜硫酸水素ナトリウム45gを加えてスラリーを脱色し、次いで遠心分離し、生成物を水0.3kgで洗浄して、湿潤した所望の生成物935gを得た。乾燥の後、所望の生成物830gを得た。
【0031】
二つの工程の全収率(乾燥生成物を基準として):95.0%
水含量 : 2%
電位差滴定分析: 99.3%
1H−NMR、13C−NMR、IR及びMSスペクトルは構造と一致していた。
【0032】
E)5−アミノ−2,4,6−トリヨード−1,3−ベンゼンジカルボン酸二塩化物
化合物D)1.2kg、キノリン6g及びドデカン970gを、窒素雰囲気下に攪拌しつつ65〜70℃に加熱した。ついで、2時間後にSOCl2/10%n−ドデカンの混合物500〜600gを加え、次いで、4〜6時間後、温度を65〜70℃に維持しつつSOCl2 1kgを加えた。この添加が終了したら、内容物を2時間かけて80〜85℃に加熱し、この温度を6時間維持し、反応を終了させた。次いで、内容物を40〜50℃に冷却し、攪拌しつつ温度を80〜85℃に維持し、SOCl2/10%n−ドデカン混合物を蒸留し、これを再利用した。
【0033】
窒素により圧力を正常値とし、内容物を55℃以下まで冷却し、常に窒素雰囲気下で攪拌しつつ、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)1.3kgを加え、温度を40〜50℃に維持した。
【0034】
次いで、温度を約60℃まで上昇させつつNaOH(13〜15%水溶液)280〜240gを加えて最終pHが2.5〜3となるようにした。水300gを加え、NaOH(13〜15%水溶液)690〜590gを加えてpHを6に調整し、混合物を、次いで150〜180gの水で温度30℃で希釈した。
【0035】
懸濁液を窒素雰囲気下でろ過し、湿潤した生成物を水で洗浄した。生成物を50〜60℃で乾燥して、所望の生成物1.237kgを得た。
【0036】
無水の生成物の収量: 95.6%
水の含量 : 1%
HPLC : 98.5%
固定相:column E、Merck Lichrospher(商品名)、
RP−18 5μm、
4mm×12.5cm
移動相 勾配溶離
A=水
B=CH3CN
分 B(%)
0 60
3 60
12 80
19 80
20 60
流速 : 1.2ml/min
温度 : 30℃
UV検出: 240nm
1H−NMR、13C−NMR、IR及びMSスペクトルは構造と一致していた。
【0037】
F)(S)−5−〔〔2−(アセチルオキシ)−1−オキソプロピル〕アミノ〕−2,4,6−トリヨード−1,3−ベンゼンジカルボン酸二塩化物
化合物(E)700gを、室温で、ジメチルアセトアミド1kgに攪拌しつつ溶解し、15℃で冷却した後、HCl(g)を15g加えた。次いで、化合物B)288gを4時間以内に加え、温度を8〜15℃に維持した。溶液を、6〜15℃で30〜40時間維持した後、反応を停止した。
【0038】
n−ブチルアセタート488g及び水1.28kgを攪拌しつつ5分かけて反応混合物に加えた。ついで攪拌を15分間停止して相分離させた。下方の有機相はn−ブチルアセタート、最終生成物及び少量のジメチルアセトアミドから形成されていた。分離の後、5%NaHCO3溶液450gを加えてpHを4に調整した。次に水405gを攪拌しつつ加えて懸濁液とし、これをろ過した。湿潤した生成物をn−ブチルアセタート42.5g及び水600gで二度にわけて洗浄した。同様の操作を有機相の2つの残余部に関しても繰り返した。湿潤した最終生成物を55℃で乾燥して所望の生成物755gを得た。
【0039】
無水の生成物の収量: 90.0%
水の含量 : 1%
〔α〕D20=−14.2°(c=10、CH3CN)
HPLC : 99.2%
固定相:column E、Merck Lichrospher(商品名)、
RP−18 5μm、
4mm×12.5cm
移動相 勾配溶離
A=水
B=CH3CN
分 B(%)
0 45
3 45
9.5 45
15 100
17 45
流速 : 1.0ml/min
温度 : 30℃
UV検出: 245nm
1H−NMR、13C−NMR、IR及びMSスペクトルは構造と一致していた。
【0040】
実施例2
ジメチルアセトアミド塩酸塩(DMAC.HCl)の存在下でのS−(−)−5−〔〔2−(アセチルオキシ)−1−オキソプロピル〕アミノ〕−2,4,6−トリヨード−1,3−ベンゼンジカルボン酸二塩化物の製法
S−(−)−5−〔2−(アセチルオキシ)〕プロピオン酸塩化物362gを、温度15〜17℃で攪拌しつつジメチルアセトアミド(DMAC)657g及びDMAC.HClの31gに溶解した。ついで、DMAC657g中の5−アミノ−2,4,6−トリヨード−1,3−ベンゼンジカルボン酸二塩化物894gの溶液を、温度を17℃に維持しつつ前記溶液に2時間内に加えた。温度17℃で20時間後反応を終了させた。
【0041】
n−ブチルアセタート1300gを加えて、ほとんどのDMAC塩酸塩を沈殿させた。塩酸塩をろ過により除去した。
【0042】
回転及びパルスプレートを備えた直径45mmの連続抽出カラム(LABORTECTK 40/15)に以下のものを充填して、抽出及び洗浄操作を実施した。
【0043】
プレート 流速 全量
プレート1(底部)
:n−ブチルアセタート 4.7リットル/h 7kg
プレート5:生成物を含有する溶液 2.3リットル/h
プレート13:K2CO3(23%w/w) 1.2リットル/h 0.48kg
プレート15(最上部):洗浄用水 0.9リットル/h 1.4kg
【0044】
溶液類はPROMINENT投与用インパルスポンプ3個、及び約3.2mmのチューブを結合したWATSON MARLOW 503U蠕動型ポンプ1個(n−ブチルアセタート用)により充填した。
【0045】
パルス及び回転の速度は60%と20%に設定した。抽出器の横断面の面積はは約16cm2であって、この部分は、一部分攪拌システムで占められている。平均的任意切断面(free section)は、10cm2に等しかった。
【0046】
抽出は、温度30℃以下で、n−ブチルアセタートを連続相として維持しつつ1時間30分行った。最終有機相を、まず不均質な共沸H2O/n−ブチルアセタート混合物を20Torr、27℃で、次いで有機溶媒のみを35℃で、蒸留することにより、濃縮した。濃縮の最終段階において、所望の生成物が析出してきた。冷却の後、生成物をろ過した。乾燥の後、所望の生成物925gを得た。
【0047】
無水の生成物の収量: 87%
HPLC : 99.0%
化学的−物理的特性は、上記したものと一致した。
【0048】
実施例3
S−(−)−5−〔〔2−(アセチルオキシ)−1−オキソプロピル〕アミノ〕−2,4,6−トリヨード−1,3−ベンゼンジカルボン酸二塩化物のその他の精製方法
S−5−〔〔2−(アセチルオキシ)−1−オキソプロピル〕アミノ〕−2,4,6−トリヨード−1,3−ベンゼンジカルボン酸溶液(実施例1で調製)680gを、CH3CCl3 550mlで希釈した。室温で15分間攪拌した後、溶液を17〜18℃で冷却し、30%NaOH溶液を加えてpHを6〜6.2に調整し、温度を20〜25℃に保った。NaClを含有する反応混合物を水500mlで希釈し、30分間攪拌しつつ保持した。2つの相を分離し、有機相を室温で攪拌下に水に注ぎ、生成物を沈殿させた。溶液を20〜23℃で1時間攪拌し続け、次いで加圧下にろ過し、まずCH3CCl3で、次いで水で洗浄した。所望の生成物267gを得た。
【0049】
単離収率:95%
特性は、上記したものと一致した。
【0050】
実施例4
S−(−)−5−〔〔2−(アセチルオキシ)−1−オキソプロピル〕アミノ〕−2,4,6−トリヨード−1,3−ベンゼンジカルボン酸二塩化物のその他の精製方法
S−5−〔〔2−(アセチルオキシ)−1−オキソプロピル〕アミノ〕2,4,6−トリヨード−1,3−ベンゼンジカルボン酸溶液(実施例1で調製)680gをtBuOH256gで希釈した。7%NaOH溶液1,040gを、30℃で滴下してpHを4.5〜5.5とした。滴下が終了した後、pHを調節しつつ攪拌下にこのスラリーを1時間保持した。固体をろ過し、水で洗浄した。所望の生成物256gを得た。
【0051】
単離収量:89.0%
化学的−物理的特性は、上記したものと一致した。
【0052】
実施例5
S−(−)−5−〔〔2−(アセチルオキシ)−1−オキソプロピル〕アミノ〕−2,4,6−トリヨード−1,3−ベンゼンジカルボン酸二塩化物のその他の精製方法
S−(−)−5−〔〔2−(アセチルオキシ)−1−オキソプロピル〕アミノ〕2,4,6−トリヨード−1,3−ベンゼンジカルボン酸溶液(実施例1で調製)680gを、温度20〜40℃で、30%w/wのtert−ブタノール496.4gの水−アルコール性溶液に滴下した。同時に、7%NaOH約612gを加えてpHを3.5〜5.5に維持した。
【0053】
滴下終了後、スラリーを攪拌下に1時間、pH3.5〜4.5に保持した。固体をろ過し、水で洗浄した。所望の生成物271gを得た。
【0054】
単離収率: 95%
化学的−物理的特性は、上記したものと一致した。
【0055】
実施例6
tBuOHを2−BuOHに代え、実施例4にしたがって、所望の生成物241gを得た。
【0056】
単離収率: 85.0%
化学的−物理的特性は、上記したものと一致した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(I):
【化1】


で示されるS−(−)−5−〔〔2−(アセチルオキシ)−1−オキソプロピル〕アミノ〕−2,4,6−トリヨード−1,3−ベンゼンジカルボン酸二塩化物の製造方法であって、S−(−)−〔2−(アセチルオキシ)〕プロピオン酸塩化物と5−アミノ−2,4,6−トリヨード−1,3−ベンゼンジカルボン酸二塩化物とを、非プロトン性双極性溶媒中で、ハロゲン化水素酸の存在下で反応させることを含む方法。
【請求項2】
S−(−)−〔2−(アセチルオキシ)〕プロピオン酸塩化物を加える前に、ハロゲン化水素酸を5−アミノ−2,4,6−トリヨード−1,3−ベンゼンジカルボン酸二塩化物溶液にガスとして加える、請求項1記載の方法。
【請求項3】
加えるハロゲン化水素酸が塩酸である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
該HClのガスを、0.1〜3のモル比率で加える請求項3記載の方法。
【請求項5】
非プロトン性有機溶媒が、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド及びN−メチル−2−ピロリドンからなる群から選択され、好ましくはN,N−ジメチルアセトアミドである、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
HClを、ジメチルアセトアミドの塩酸塩として加える、請求項1記載の方法。
【請求項7】
ジメチルアセトアミドの塩酸塩を、0.1〜3のモル比率で加える、請求項6記載の方法。
【請求項8】
反応温度が0〜40℃の範囲である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
吸光能が、〔α〕D20=−13.7〜−14.7°(c=10、CH3CN)である、請求項1記載の方法により得られる式(I)の化合物。
【請求項10】
請求項1記載のS−(−)−5−〔〔2−(アセチルオキシ)−1−オキソプロピル〕アミノ〕−2,4,6−トリヨード−1,3−ベンゼンジカルボン酸二塩化物の精製及び単離方法であって、以下の工程:
−反応混合物を、酢酸の直鎖もしくは分岐鎖(C3−C5)アルコール類とのエステル又はモノ−、ジ−もしくはポリクロロ(C1−C4)アルカン類から選択されるものの1つで、希釈溶媒と反応混合物中の非プロトン性双極性溶媒との比0.3:1から2.5:1w/wにおいて希釈する工程、
−希釈溶媒に対する水の比率0.5〜4w/wにおいて、水によって抽出する工程、
−生成物を水で沈殿させる工程
を含む方法。
【請求項11】
請求項10記載のS−(−)−5−〔〔2−(アセチルオキシ)−1−オキソプロピル〕アミノ〕−2,4,6−トリヨード−1,3−ベンゼンジカルボン酸二塩化物の精製及び単離方法であって、溶媒が、プロピルアセタート、n−ブチルアセタート及びメチルクロロホルムから選択される方法。
【請求項12】
請求項10及び11記載のS−(−)−5−〔〔2−(アセチルオキシ)−1−オキソプロピル〕アミノ〕−2,4,6−トリヨード−1,3−ベンゼンジカルボン酸二塩化物の精製及び単離方法であって、水による抽出が、希釈に用いるのと同じ溶媒及び水を端部に、希釈された混合物が中間プレート上に充填された連続式抽出器で実施され、生成物は溶媒相の濃縮により単離される方法。
【請求項13】
請求項1記載のS−(−)−5−〔〔2−(アセチルオキシ)−1−オキソプロピル〕アミノ〕−2,4,6−トリヨード−1,3−ベンゼンジカルボン酸二塩化物の精製及び単離方法であって、以下の工程:
−反応混合物中に存在する非プロトン性双極性溶媒に対する希釈溶媒の比率0〜1.5w/wにおいて、直鎖もしくは分岐鎖(C3−C5)アルコールで反応混合物を希釈する工程、
−生成物を水で沈殿させる工程
を含む方法。
【請求項14】
請求項1記載のS−(−)−5−〔〔2−(アセチルオキシ)−1−オキソプロピル〕アミノ〕−2,4,6−トリヨード−1,3−ベンゼンジカルボン酸二塩化物の精製及び単離方法であって、以下の工程:
−反応混合物中に存在する非プロトン性双極性溶媒に対する希釈溶媒の比率0〜1.5w/wにおいて、直鎖もしくは分岐鎖(C3−C5)アルコールを含有する水−アルコール溶液に、反応混合物を加える工程を含む方法。
【請求項15】
請求項13及び14記載のS−(−)−5−〔〔2−(アセチルオキシ)−1−オキソプロピル〕アミノ〕−2,4,6−トリヨード−1,3−ベンゼンジカルボン酸二塩化物の精製及び単離方法であって、アルコールが、イソプロパノール、tert−ブタノール及びsec−ブタノールからなる群から選択される方法。
【請求項16】
請求項14及び15記載のS−(−)−5−〔〔2−(アセチルオキシ)−1−オキソプロピル〕アミノ〕−2,4,6−トリヨード−1,3−ベンゼンジカルボン酸二塩化物の精製及び単離方法であって、アルコールの量が、反応混合物中の非プロトン性双極性溶媒に対する希釈溶媒の比率0.3〜0.6w/wの範囲である、請求項14又は15記載の方法。
【請求項17】
請求項10〜16記載のS−(−)−5−〔〔2−(アセチルオキシ)−1−オキソプロピル〕アミノ〕−2,4,6−トリヨード−1,3−ベンゼンジカルボン酸二塩化物の精製及び単離方法であって、反応混合物中に存在する非プロトン性双極性溶媒が、N,N′−ジメチルアセトアミドである方法。
【請求項18】
S−(−)−5−〔〔2−(アセチルオキシ)−1−オキソプロピル〕アミノ〕−2,4,6−トリヨード−1,3−ベンゼンジカルボン酸二塩化物の製造方法であって、以下の工程:
a)中性又は塩基性条件下で5−ニトロ−1,3−ベンゼンジカルボン酸を接触水素化して5−アミノ−1,3−ベンゼンジカルボン酸ナトリウム塩の水溶液を得る工程、
b)a)工程から得られる5−アミノ−1,3−ベンゼンジカルボン酸ナトリウム塩の溶液を、さらなる精製なしに、HCl中のICl溶液により直接にヨウ素化して、5−アミノ−2,4,6−トリヨード−1,3−ベンゼンジカルボン酸を得る工程であって、ここで、5−アミノ−1,3−ベンゼンジカルボン酸ナトリウム塩溶液に前もってHClとH2SO4を加えておく工程、
c)5−アミノ−2,4,6−トリヨード−1,3−ベンゼンジカルボン酸二塩化物の塩素化を、5−アミノ−2,4,6−トリヨード−1,3−ベンゼンジカルボン酸とチオニルクロリドとを不均質相で、直鎖もしくは分岐鎖(C7〜C16)炭化水素、(C7〜C8)芳香族炭化水素、1,1,1−トリクロロエタン、n−ブチルアセタート及びジグリム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)から選択される溶媒中、触媒量の第三級アミンの存在下で実施して、5−アミノ−2,4,6−トリヨ−ド−1,3−ベンゼンジカルボン酸二塩化物を得る工程、
d)S−(−)−〔2−(アセチルオキシ)〕プロピオン酸塩化物と5−アミノ−2,4,6−トリヨード−1,3−ベンゼンジカルボン酸二塩化物とを、非プロトン性双極性溶媒中、ハロゲン化水素酸の存在下で反応させる工程
を含む方法。

【公開番号】特開2007−308503(P2007−308503A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−160804(P2007−160804)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【分割の表示】特願平8−535346の分割
【原出願日】平成8年5月17日(1996.5.17)
【出願人】(501094409)
【氏名又は名称原語表記】BRACCO IMAGING S.p.A.
【Fターム(参考)】