説明

ジクロロジシアノベンゾキノンを用いたフェノールオリゴマーの製造方法

【課題】
本発明は、フェノール又はフェノール誘導体から、重合度が30程度までのオリゴマーを任意の重合度で、且つ、簡便に製造する方法を提供する。
【解決手段】
本発明は、ジクロロジシアノベンゾキノン(DDQ)の存在下で、フェノール性水酸基のオルト位が水素原子であるフェノール類をオリゴマー化させて、当該フェノール類のオリゴマーを製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汎用酸化剤として知られるジクロロジシアノベンゾキノンを用いて、従来、合成が困難とされてきた、フェノール性水酸基のオルト位が水素原子であるフェノール類のオリゴマーを簡便に製造する方法に関する。より詳しくは、本発明は、ジクロロジシアノベンゾキノンの存在下で、フェノール性水酸基のオルト位が水素原子であるフェノール類をオリゴマー化させて、当該フェノール類のオリゴマーを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フェノール並びにその誘導体は多くの化学材料の原料として古くから用いられて来た。材料としての使用状態の多くは重合度の高い高分子であり、代表的高分子材料として扱われてきた。近年、これらのフェノール誘導体をオリゴマーとして使うことの有用性が注目されてきた。重合度2から30程度までのフェノール誘導体オリゴマーはフォトレジスト材料や光学材料等の合成原料等々の分野で使われることが期待されているが、高分子まで進ませず中間のオリゴマーで留めることが難しいために、その有用性への期待が寄せられていたが、用途の広がりは少なかった。
【0003】
フェノール又はフェノール誘導体を重合する方法は幾つかあり、古くはホルムアルデヒドとの重合体ノボラック樹脂にまで溯ることができる。ホモの重合体を得る方法としては金属試薬による酸化的カップリング反応による方法が著名である(非特許文献1参照)。しかしながら、この方法はフェノールのオルト位の炭素原子同士でカップリングするだけでなく、オルト位の炭素原子と酸素原子がカップリングしてエーテル結合が生成する副反応を伴うため、オルト位同士で連結されたオリゴフェノールを得ることは極めて困難であった。このため、これまでオルト位で連結されたフェノール誘導体のホモオリゴマーを得るためには、酸化的カップリング後に精製する工程を繰り返す方法がとられてきた(非特許文献2、非特許文献3参照)。また、重合度が調節された任意の重合度のオリゴマー群を得ることは、知られていない。
【0004】
【非特許文献1】S. Habaue, M. Ohmura, M. Mizoe, and T. Temma, Polymer J. 37, 625-628 (2005).
【非特許文献2】G. Sartori, R. Maggi, F. Bigi, A. Arienti, and G. Casnati, Tetrahedron 48, 9483-9494 (1992).
【非特許文献3】G. Sartori, R. Maggi, F. Bigi, and G. Casnati, J. Org. Chem. 59, 3701-3703 (1994).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、フェノール又はフェノール誘導体のモノマー又は重合度の低いオリゴマーから、重合度が30程度までのオリゴマーを任意の重合度で、且つ、簡便に製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、フェノール誘導体のオリゴマーを得ることを目的に鋭意研究を重ねてきたところ、ジクロロジシアノベンゾキノン(以下、DDQと略記する)を選択された溶媒中で、所定の条件下で作用させることによって、目的とする重合度を含むオリゴマー群を製造することに成功し、本発明を完成させた。
【0007】
即ち、本発明は、ジクロロジシアノベンゾキノン(DDQ)の存在下で、フェノール性水酸基のオルト位が水素原子であるフェノール類をオリゴマー化させて、当該フェノール類のオリゴマーを製造する方法に関する。
【0008】
本発明をより詳細に説明すれば、次のとおりとなる。
(1)ジクロロジシアノベンゾキノンの存在下で、フェノール性水酸基のオルト位が水素原子であるフェノール類をオリゴマー化させて、当該フェノール類のオリゴマーを製造する方法。
(2)フェノール性水酸基のオルト位が水素原子であるフェノール類が、モノマー、ダイマー、又はトリマーである前記(1)に記載の方法。
(3)オリゴマー化が、溶媒の存在下で行われる前記(1)又は(2)に記載の方法。
(4)溶媒が、炭化水素、含ハロゲン炭化水素、含硫黄系の有機溶媒から選択される1種又はこれらの混合物である前記(3)に記載の方法。
(5)溶媒が、二硫化炭素、又は二硫化炭素を含有する溶媒である前記(3)又は(4)に記載の方法。
(6)製造されたフェノール類のオリゴマーの平均重合度が、2〜30である前記(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。
(7)フェノール性水酸基のオルト位が水素原子であるフェノール類が、次の一般式(I)
【0009】
【化2】

【0010】
(式中、R、R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキルチオ基、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、水酸基、又はシアノ基を表し、mは1〜3の整数を表す。)
で表されるフェノール類である前記(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。
(8)ジクロロジシアノベンゾキノンが、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノンである前記(1)〜(7)のいずれかに記載の方法。
(9)オリゴマー化の反応温度が、0℃〜80℃の範囲である前記(1)〜(8)のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、従来、容易でなかった、フェノール及びフェノール誘導体(以下、フェノール類という。)のオリゴマーを任意の重合度で容易に製造する方法を提供する。本発明の方法は、汎用酸化剤として広く知られるジクロロジシアノベンゾキノンを用いて、フェノール又はフェノール誘導体の単量体又はダイマーやトリマーなどの低次のオリゴマーを原料として、極めて簡便な方法で、また任意の重合度のオリゴマーの混合物を簡便に製造する方法を提供するものである。本発明の方法では、原料の濃度、反応時間、反応温度などを調節することにより、目的とするオリゴマーの重合度を制御することができ、特定の重合度のフェノールオリゴマーを高収量で製造することができる。
本発明の方法によれば、ビフェノール誘導体等のフェノール類の各種の重合度を有するオリゴマーを高収量で、かつ容易に製造することができることになり、例えば、本発明の方法により製造されたオリゴマーをフォトレジスト材料等の製造原料などとして、幅広く使用できるようになる。また、これらのポリフェノール類を用いた新たな用途分野を開発することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の方法について詳細に述べる。
本発明の方法における「フェノール性水酸基のオルト位が水素原子であるフェノール類」としては、フェノール又はその誘導体であって、当該フェノール類のフェノール性水酸基のオルト位が水素原子であるフェノール又はフェノール誘導体であれば特に制限はない。オルト位以外の位置は、各種の置換基で置換されていてもよく、当該置換基としては、オリゴマー化の反応に悪影響を与えるものや、重合時に立体障害を起こすほど極端に大きな置換基でなければ、特に制限はない。
また、本発明の方法におけるフェノール誘導体としては、単環式、多環式、又は縮合環式のいずれのものであってもよい。
さらに、本発明の方法におけるフェノール誘導体の水酸基の数も特に制限はなく、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン等の2価フェノールの誘導体や多価フェノールやその誘導体であってもよいが、好ましくは、1価のフェノール類が挙げられる。多価フェノール又はその誘導体であっても、フェノール性水酸基のオルト位の水素原子が、1つのフェノール性水酸基のみに存在している場合には、特に支障は無いが、フェノール性水酸基のオルト位の水素原子が3箇所以上存在している場合には、オリゴマー化の反応がこれらのオルト位の水素原子のいずれの場所でも生起することになり、生成するオリゴマーの構造が複雑となり、多種類のオリゴマーの混合物となり、分離精製が難しくなるからである。
【0013】
また、本発明の方法における「フェノール性水酸基のオルト位が水素原子であるフェノール類」としては、フェノール性水酸基のオルト位が水素原子であるフェノール又はその誘導体の単量体(モノマー)であってもよいし、これらの二量体(ダイマー)又は三量体(トリマー)などのオリゴマーであってもよい。
本発明は、フェノール性水酸基のオルト位に水素原子を有するフェノール又はその誘導体(フェノール類)が、ジクロロジシアノベンゾキノン(DDQ)の存在下でオリゴマー化反応を起こすことを見出したものであり、重合度が2〜30程度の比較的重合度の低いオリゴマーを製造する新規な方法を提供するものであり、原料に使用するフェノール類の化学構造に格別の特徴を有するものではないのであるから、化学構造を特定した一般式を用いて表記する必要は無いのであるが、本発明の方法をより具体的に説明するために、一般式を用いた化学反応式で示せば、次のとおりとなる。
【0014】
【化3】

【0015】
(式中、R、R、Rは、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表し、mは1〜3の整数を表し、pは2〜30の整数を表す。)
即ち、フェノール性水酸基のオルト位に存在する水素原子を有する炭素原子が、ジクロロジシアノベンゾキノン(DDQ)の存在下で、反応して、原料のフェノール類のオリゴマー化が起こり、オリゴマーが生成するということである。
したがって、一般式(II)及び一般式(III)における置換基としては、オリゴマー化の反応に悪影響を与えない基であって、立体障害を起こすような極端に大きくない基であれば特に制限は無く、例えば、炭素数1〜10、好ましくは1〜6の置換基を有してもよい炭化水素基、例えば、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基などが挙げられる。これらの炭化水素基は、鎖状であってもよいし、環状であってもよい。また、1個以上の炭素原子が、酸素原子、窒素原子、硫黄原子などの異種原子で置き換えられたものであってもよい。また、R、R、及びRの2つの基が一緒になって隣接する炭素原子と共に環を形成したものであってもよい。また、反応に悪影響を与えない官能基、例えば、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基、アミノ基、シアノ基などであってもよい。
好ましい置換基としては、例えば、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキルチオ基、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基などが挙げられる。
【0016】
本発明の方法における原料として使用される「フェノール性水酸基のオルト位が水素原子であるフェノール類」の好ましい例としては、次の一般式(I)
【0017】
【化4】

【0018】
(式中、R、R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキルチオ基、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、水酸基、又はシアノ基を表し、mは1〜3の整数を表す。)
で表されるフェノール類が挙げられるが、これに限定されるものではない。
アルキル基としては、炭素数1〜10、3〜10、好ましくは1〜8、3〜8、より好ましくは1〜6、3〜6、さらに好ましくは4〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、イソブチル基、イソペンチル基などが挙げられる。アルコキシ基としては、前記してきたアルキル基から誘導されるアルコキシ基が挙げられる。アルキルチオ基としては、前記してきたアルキル基から誘導されるアルキルチオ基が挙げられる。アルコキシカルボニル基としては、前記してきたアルキル基から誘導されるアルコキシカルボニル基が挙げられる。
これらの基における置換基としては、塩素原子、フッ素原子などのハロゲン原子;水酸基;炭素数1〜10のアルコキシ基;アミノ基;炭素数1〜10のアルキルで置換されたアミノ基;カルボキシル基;炭素数1〜10のアルキル基でエステル化されているエステル基;シアノ基;ニトロ基などが挙げられる。
また、一般式(I)において、mが1の場合は単量体(モノマー)であることを示し、mが2の場合は二量体(ダイマー)であることを示し、mが3の場合は三量体(トリマー)であることを示す。
【0019】
このように、本発明の方法の原料のフェノール類の種類に制限は無く、置換基としてアルキル基を1つ以上持つもの、アルキル基以外の置換基を持つものなどのいずれであっても良く、置換基の位置も、特に制限は無く、フェノール性水酸基に対してメタでもパラでも可能であるが、オリゴマー鎖の均一性からは、パラの位置にアルキル基を有するものが好ましい。好ましいパラ位のアルキル基としては、炭素数1〜10のネオカーボンを持つアルキル基が選択される。特に好ましくは、t−ブチル基、イソブチル基やイソペンタン基が挙げられる。
したがって、本発明の方法におけるより好ましい「フェノール性水酸基のオルト位が水素原子であるフェノール類」としては、前記一般式(I)におけるRが、炭素数4〜10、好ましくは4〜8であって、置換基を有してもよい分岐状のアルキル基であるものが挙げられる。この場合における置換基としては、前記してきた置換基が挙げられる。
【0020】
本発明の方法は、溶媒の存在下で行うのが好ましく、用いられる溶媒としては、原料のフェノール類とDDQを溶かすことができれば、特に制限はない。好ましい溶媒としては、ヘキサン、ベンゼンなどの炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、ジクロロエタンなどの含ハロゲン炭化水素系溶媒、二硫化炭素などの含硫黄系溶媒などの有機溶媒が挙げられる。本発明の方法においては、使用される溶媒の種類や原料の濃度により生成するオリゴマーの重合度を制御することができることから、目的の重合度に応じて、使用する溶媒の種類や使用量を選択することができる。一般的には、得られるオリゴマーの重合度の分布の少なさから、二硫化炭素、ベンゼン、ジクロロメタンが好ましく、特に好ましくは二硫化炭素が挙げられる。
溶媒の使用量には特に制限はないが、好ましくは、原料の種類にもよるが一般的には、原料のフェノール類1モル当たり5〜30L、より好ましくは10〜20L程度が挙げられる。
【0021】
本発明の方法で使用されるジクロロジシアノベンゾキノン(DDQ)としては、ベンソキノンに2個の塩素原子、及び2個のシアノ基が置換したものが挙げられ、好ましくは2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノンが挙げられる。ジクロロジシアノベンゾキノンの使用量は、原料に対して化学量論量以上であればよく、好ましくは原料のフェノール類1モルに対して1〜5モル、より好ましくは1.2〜2モル程度である。
【0022】
本発明の方法の好ましい態様としては、原料のフェノール類を有機溶媒に溶かし、次いで所定量のDDQを加えて撹拌しつつ数時間、加熱する方法が挙げられる。
反応温度は、溶媒の沸点以下、溶液の凝固点以上で行われるが、好ましくは0℃〜80℃が選択される。温度が低すぎると、反応時間が長くなることの他に、粘度が上がり、オリゴマーの重合度にバラツキが生じやすい。また、温度が高すぎると重合が進み易く、重合度の制御が難しくなる。特に好ましくは、15〜40℃である。
反応時間は、オリゴマーの重合度に大きな影響を与えるので正確に制御することが望ましいが、好ましい温度範囲では、極端な重合度の上昇や、モノマーの残留等は見られないことが多い。好ましい反応時間としては、2分〜24時間、特に好ましくは、1時間〜12時間である。
【0023】
反応終了後、反応混合物から得られたオリゴマーを分離する。生成したオリゴマーはオリゴマーの混合物としてそのまま使用することもできる。特に、溶媒として二硫化炭素を使用した場合には重合度のバラツキが少ないので、生成したオリゴマーの混合物をそのまま使用することができる。また、混合物ではなく望みの重合度のオリゴマーに分離することもできる。この分離法としては、通常使われる精製法、例えばシリカゲルを使うカラムクロマトにより容易に精製して分離することができる。
【実施例】
【0024】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0025】
[実施例1]
次の反応式で示される方法によりp−t−ブチルフェノールの6量体、9量体、及び12量体を製造した。
【0026】
【化5】

【0027】
p−t−ブチルフェノール3量体(100mg,0.224mmol)のCS溶液 (3.3mL)に2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン(76.2mg,0.336mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。1mol/LのHCl水溶液(15mL)を加え、クロロホルムで抽出し(30mL×2)、HO(30mL)、飽和食塩水(30mL)で有機層を洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過を行った後溶媒を留去し、残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル=100/1)により精製し、フェノール6量体(10.5mg)、9量体(18.3mg)、12量体(22.2mg)をそれぞれ得た。
【0028】
[実施例2]
p−t−ブチルフェノール3量体(100mg,0.224mmol)のベンゼン溶液(3.3mL)に2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン(76.2mg,0.336mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。1mol/LのHCl水溶液(15mL)を加え、クロロホルムで抽出し(30mL×2)、HO(30mL)、飽和食塩水(30mL)で有機層を洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過を行った後溶媒を留去し、残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル=100/1)により精製し、フェノール6量体(12.4mg)、9量体(33.9mg)、12量体(2.8mg)をそれぞれ得た。
【0029】
[実施例3]
p−t−ブチルフェノール1量体(33.6mg,0.224mmol)のCS溶液(3.3mL)に2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン(76.2mg,0.336mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。1mol/LのHCl水溶液(15mL)を加え、クロロホルムで抽出し(30mL×2)、HO(30mL)、飽和食塩水(30mL)で有機層を洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過を行った後溶媒を留去し、残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー)により精製し、フェノール2〜9量体の混合物(28.2mg)を得た。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の方法は、任意の重合度のフェノール類のオリゴマーを簡便に製造する方法を提供するものであり、本発明の方法により製造されるオリゴマーは、フォトレジスト材料、光学材料等の製造原料として用いることができるほか、合成樹脂、医薬、農薬等の分野にも応用可能であり、さらに重合度の低いホモ重合フェノール樹脂として新たな用途分野への適用も可能となり、本発明の方法は産業上有用なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジクロロジシアノベンゾキノンの存在下で、フェノール性水酸基のオルト位が水素原子であるフェノール類をオリゴマー化させて、当該フェノール類のオリゴマーを製造する方法。
【請求項2】
フェノール性水酸基のオルト位が水素原子であるフェノール類が、モノマー、ダイマー、又はトリマーである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
オリゴマー化が、溶媒の存在下で行われる請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
溶媒が、炭化水素、含ハロゲン炭化水素、含硫黄系の有機溶媒から選択される1種又はこれらの混合物である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
溶媒が、二硫化炭素、又は二硫化炭素を含有する溶媒である請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
製造されたフェノール類のオリゴマーの平均重合度が、2〜30である請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
フェノール性水酸基のオルト位が水素原子であるフェノール類が、次の一般式(I)
【化1】

(式中、R、R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキルチオ基、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、水酸基、又はシアノ基を表し、mは1〜3の整数を表す。)
で表されるフェノール類である請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
ジクロロジシアノベンゾキノンが、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノンである請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
合成の温度が、0℃〜80℃の範囲である請求項1〜8のいずれかに記載の方法。

【公開番号】特開2009−114144(P2009−114144A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−291196(P2007−291196)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】