説明

ジプラシドンの持続放出剤形

哺乳動物において精神障害、たとえば統合失調症(精神分裂病)を処置するための持続放出固体経口剤形であって、精神障害の処置に有効な量のジプラシドンおよび薬学的に許容できるキャリヤーを含む経口剤形を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
背景
本発明は、ジプラシドン(ziprasidone)を含む持続放出剤形に関する。
ジプラシドンは非定型抗精神病薬であり、米国で現在ゲオドン(GEODON、登録商標)として、統合失調症(精神分裂病)の短期および長期処置のための即時放出(IR)経口カプセル製剤と、統合失調症患者の興奮の短期制御のためのIR筋肉内(IM)製剤の両方で販売されている。IR経口カプセル剤は、一般に1日2回投与される。IR経口カプセル剤は、20、40、60および80 mgAカプセル剤として入手できる(”mgA”は、活性ジプラシドンの量−すなわちジプラシドン遊離塩基のmgを意味する)。初回量は一般に20 mgAを1日2回、食事と共に摂取する。次いで患者の応答に基づいて用量を調整する。
【0002】
経口持続放出ジプラシドン剤形を提供することが望まれている。そのような剤形は、IR経口カプセル剤より長期間にわたって有効血中ジプラシドン濃度をもたらさなくてはならないが、理想的には、同量のジプラシドンを含有するIR経口カプセル剤がもたらすより高い最大血中濃度をもたらすべきではない。そのような剤形は、患者のコンプライアンスを高め、副作用の軽減などにより患者および医師による受入れを最大限にすることができる。そのような剤形は、同一用量のIR経口カプセル剤と対比してジプラシドンの血中濃度が相対的に低いため、IR経口カプセル剤方式と同等またはより良好な安全性および耐容性プロフィールをも提供することができる。
【0003】
長期間にわたる有効血中濃度を達成するために、持続放出剤形はジプラシドンが長期間吸収されるのを可能にする様式でジプラシドンを消化管へ放出すべきである。しかし、ジプラシドンを持続放出剤形中へ配合することは多数の問題を提起する。ジプラシドンは胃内pHでは比較的良好な溶解度をもつが、腸内pHでは比較的低い溶解度をもつ。遊離塩基形のジプラシドンは約6.5のpHで約0.2μg/mlの溶解度をもつ。このように腸内pHでの低い溶解度は、腸におけるジプラシドンの吸収を阻害する。さらに、ジプラシドンが水性溶液で過飽和になる(すなわち、低pHの胃内環境からより高いpHの腸内環境へ移動した際に起きるように、腸内pHでの薬物の平衡溶解度より高い濃度で溶解している)と、結晶質遊離塩基形の薬物として急激に沈殿し、こうして溶存ジプラシドンの濃度が遊離塩基結晶質(最低エネルギー形)ジプラシドンの溶解度にまで急激に低下するする傾向がある。
【0004】
CuratoloらのUSP No. 6,548,555 B1には、塩基性薬物と沈殿防止用ポリマー、たとえばヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)の混合物が開示されている。Curatoloらは、その薬物は胃内で溶解し、沈殿防止用ポリマーは溶存薬物が腸に進入しても高い溶存薬物濃度を維持するであろうと教示している。
【0005】
Curatoloらの米国特許出願公開No. 2002/ 0006443 A1およびCuratoloらの米国特許出願公開No. 2003/ 0072801 A1には、水溶液の溶存薬物濃度を高めるために低溶解度薬物の溶解度改良形態をポリマーと組み合わせた物理的混合物が開示されている。特に、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートのようなポリマーと混合した、溶解度改良形態の多様なジプラシドンが開示されている。
【0006】
WO 01/ 47500には、浸透圧の制御放出剤形が開示されている。この出願の例10には、20 mgAのジプラシドンをポリマーであるヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート中における薬物の非晶質固体分散物の形で含有する、浸透圧剤形が開示されている。
【0007】
ジプラシドンを持続放出でき、その必要がある患者に薬学的に有効な量のジプラシドンを送達する、経口剤形を提供することが望まれている。
概要
本発明は、哺乳動物において精神障害、たとえば統合失調症を処置するための持続放出(SR)固体経口剤形であって、精神障害の処置に有効な量のジプラシドンおよび薬学的に許容できるキャリヤーを含む経口剤形を提供する。
【0008】
したがって本発明は、哺乳動物において精神障害、たとえば統合失調症を処置するための固体経口剤形であって、精神障害の処置に有効な量のジプラシドンおよび薬学的に許容できるキャリヤーを含み、有効量のジプラシドンが長期間にわたって放出される経口剤形を提供する。
【0009】
1態様において、経口剤形は錠剤である。他の態様において、経口剤形はカプセル剤である。
他の態様において、持続期間は少なくとも約24時間である。他の態様において、持続期間は約4〜約24時間である。持続期間は、少なくとも約4時間、少なくとも約6時間、少なくとも約8時間、少なくとも約10時間、少なくとも約12時間、少なくとも約16時間であってよい。他の態様において、持続期間は約24時間である。一例として”少なくとも約6時間”という句を用いる際、そのような概念における”少なくとも約”という句は、1態様においては剤形中の実質的にすべての(たとえば約80重量%以上)のジプラシドンがその剤形から投与後約6時間にわたって放出され、6時間以後に放出されるのは約20重量%を超えないことを意味する。他の態様においてはそれは、実質的にすべての(たとえば約80重量%以上)のジプラシドンが投与後約6時間を超える期間にわたって放出されることを意味する。
【0010】
他の態様において、経口剤形は1より多い層、たとえば2層または3層を含む。好ましい態様において、経口剤形は有効層と膨潤層を含む2層コアを含む。コアはコーティングされていてもよい。多層を含む経口剤形は、1態様においてコーティングの有効層側に1以上の孔をもつ。
【0011】
1態様において、持続放出経口剤形は、薬学的に有効な量のジプラシドン、および当該ジプラシドンの少なくとも一部を放出するための持続放出手段を含み、投与されて定常状態に達した後、少なくとも20 ng/mlの定常状態最小血中ジプラシドン濃度(Cmin)、および330 ng/ml未満の定常状態最大血中ジプラシドン濃度(Cmax)をもたらす。
【0012】
血中ジプラシドン濃度とは、血液、血清または血漿中のジプラシドンの濃度を意味する。
好ましい1態様において、1日2回投与した場合、定常状態比Cmax:Cminは約2.6未満である。他の好ましい態様において、1日1回投与した場合、比Cmax:Cminは約12未満である。
【0013】
第2態様において、医薬剤形は薬学的に有効な量のジプラシドンを含み、この剤形は使用環境に投与された後の最初の2時間でその剤形からジプラシドンの全量の90重量%以下しか放出しない。この剤形は、少なくとも30 mgAのジプラシドンを含有する。
【0014】
本明細書中で用いる”使用環境”は、インビボ環境、たとえば動物、特にヒトの消化管、またはインビトロ環境である試験溶液、たとえばリン酸緩衝化生理食塩(PBS)液、モデル絶食十二指腸(Model Fasted Duodenal、MFD)液、または模擬腸内緩衝液である。
【0015】
第3態様において、持続放出剤形は、薬学的に有効な量のジプラシドン、および当該ジプラシドンの少なくとも一部を放出するための持続放出手段を含む。持続放出部分に含まれるジプラシドンは、(i)結晶質薬物および(ii)シクロデキストリンと組み合わせた薬物のうちの少なくとも1つである。
【0016】
他の態様において、本発明はジプラシドンを投与する方法を提供する。この方法は、持続放出剤径を投与することを含み、その剤形は、摂食状態のヒトに1日1回または2回投与すると、少なくとも約20 ng/mlの定常状態最小血中ジプラシドン濃度(Cmin)、および約330 ng/ml未満の定常状態最大血中ジプラシドン濃度(Cmax)をもたらす。
【0017】
本方法の好ましい1態様において、1日2回投与した場合、定常状態比Cmax:Cminは約2.6以下である。他の好ましい態様において、1日1回投与した場合、比Cmax:Cminは約12以下である。
【0018】
”持続放出”は、剤形が使用環境に投与された後の最初の2時間でその剤形中のジプラシドンの90重量%以下しか放出しないことを意味する。たとえばその剤形は放出期間にわたってジプラシドンを徐々に連続放出し、ジプラシドンをパルス様式または遅延様式で放出し、あるいはジプラシドンを放出プロフィールの組合わせで、たとえば即時放出バースト、続いて遅延バーストまたは徐々に連続放出により放出することができる。
【0019】
使用環境への”投与”は、インビボ使用環境が消化管である場合、摂取もしくは嚥下または剤形を送達するための他の措置を意味する。使用環境がインビトロである場合、”投与”は剤形をインビトロ試験媒質へ配置または送達することを表わす。
【0020】
持続放出剤形は、多数の利点をもつ可能性がある。理論により拘束されたくはないが、ジプラシドンの有効性はD2受容体の占有率に関連すると考えられる。この占有率は脳内におけるジプラシドン濃度の関数であり、これは血中ジプラシドン濃度に関連し、血中ジプラシドン濃度の上昇に伴って占有率は実質的に増大する。D2占有率は、血中ジプラシドン濃度が16 ng/mlである場合は約50%、血中ジプラシドン濃度が30 ng/mlである場合は約65%、血中ジプラシドン濃度が50 ng/mlである場合は約75%である。したがって、有効であるためには、剤形が少なくとも20 ng/ml、より好ましくは少なくとも30 ng/ml、さらに好ましくは少なくとも50 ng/mlの定常状態最小血中ジプラシドン濃度をもたらすことが好ましい。持続放出剤形は、IR経口カプセル剤より長期間、より高いD2占有率をもたらすのに十分なほど血中ジプラシドン濃度を高く維持することにより、有効性を改善することができる。これが達成される理由は、持続放出剤形がIR経口カプセル剤と対比してより多量のジプラシドンを投与できるため、あるいはIR経口カプセル剤より長期間にわたってジプラシドンが吸収されるため、あるいは両者であろう。持続放出剤形は、血中ジプラシドン濃度の変動を最小限に抑えることもでき、これによってより均一な応答が得られる。
【0021】
持続放出剤形は、一定用量についてIR経口カプセル剤と対比してより低い最大血中濃度をもたらすこともでき、したがって有害作用または副作用を軽減または緩和することができる。あるいは、より高用量のジプラシドン持続放出剤形を投与することができ、その結果、低用量IR経口カプセル剤と対比して大きな有効性が得られ、かつ高用量IR経口カプセル剤と対比して有害作用または副作用が少ない。
【0022】
1日1回投与を提供する持続放出製剤について、この持続放出剤形は1日1回投与による高い簡便性およびコンプライアンスを提供できる。食物の存在下でジプラシドンの吸収は最高2倍に増加し、したがってジプラシドンを食物と共に投与することが推奨されるので、これは特に重要である。投与回数が1日1回または2回である場合、1日数回と対比して”食物と共に摂取すること”に対するコンプライアンスはより良好であると思われる。
【0023】
以上および他の本発明の目的、態様および利点は、以下の本発明の詳細な説明を考慮するとより理解しやすいであろう。
発明の詳しい説明
ジプラシドンは、下記の構造をもつ既知化合物5-[2-[4-(1,2-ベンゾイソチアゾール-3-イル)-1-ピペラジニル]エチル]-6-クロロ-1,2-ジヒドロ-2H-インドール-2-オンである:
【0024】
【化1】

【0025】
ジプラシドンは、USP No. 4,831,031および5,312,925に開示され、両者の全体を本明細書に援用する。ジプラシドンは神経遮断薬としての有用性をもち、したがって特に抗精神病薬として有用である。ジプラシドンは一般に、患者の要件に応じて約40〜約160 mgAの1日量で投与される。”1日量”は、患者に1日に投与されるジプラシドンの全量を意味する。
【0026】
用語”ジプラシドン”にはその化合物の薬学的に許容できる形態がいずれも含まれると理解すべきである。”薬学的に許容できる形態”とは、薬学的に許容できるいかなる誘導体または変異形をも意味し、これには立体異性体、立体異性体混合物、鏡像異性体、溶媒和物、水和物、同形体、多形体、擬多形体、中性形態、酸付加塩形態、およびプロドラッグが含まれる。ジプラシドンの薬学的に許容できる酸付加塩は常法により、遊離塩基の溶液または懸濁液を約1当量の薬学的に許容できる酸と反応させることにより調製される。塩類の単離には、一般的な濃縮法および再結晶法が用いられる。適切な酸の具体例は、酢酸、乳酸、コハク酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、メシル酸、トシル酸、安息香酸、ケイ皮酸、フマル酸、硫酸、リン酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、スルファミン酸、スルホン酸、たとえばメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、および関連する酸である。好ましい形態のジプラシドンには、遊離塩基、塩酸ジプラシドン 1水和物、メシル酸ジプラシドン 3水和物、およびトシル酸ジプラシドンが含まれる。
【0027】
本発明の経口持続放出剤形は、薬学的に有効であるのに十分な量のジプラシドンを含有する。ジプラシドンの一般的な1日量は、ジプラシドン40〜240 mgAである。目的用量を得るために1個または複数個の持続放出剤形を同時に投与できる。好ましい態様において、持続放出剤形は少なくとも約40〜約160 mgAのジプラシドンを含有する。
【0028】
本発明の剤形は比較的多量のジプラシドンを含有できるので、高い薬物装填量を収容するためにジプラシドンが剤形の有意画分を構成することが望ましい。これにより剤形を経口投与に好都合なサイズ(たとえば1,000mg未満、より好ましくは800mg未満)に維持できる。好ましくは、ジプラシドンは少なくとも剤形の約5重量%を構成する。ジプラシドンは剤形のより大きな量、たとえば少なくとも約10重量%、さらに少なくとも約15重量%を構成することもできる。
【0029】
ジプラシドンは、結晶質または非晶質の形態で存在することができる。ジプラシドンは急速に結晶化する傾向があるので、剤形中の薬物の安定性の観点から結晶形が好ましい。非晶質薬物として存在する場合、ジプラシドンは安定な形態で存在することが好ましい。好ましい非晶質形態はいわゆるジプラシドンとシクロデキストリンの同時凍結乾燥品(co-lyophile)である。
【0030】
持続放出剤形中のジプラシドンは、所望により溶解度改良形態であってもよい。”溶解度改良形態”とは、後記に詳述するように濃度上昇をもたらすことができる形態のジプラシドンを意味する。溶解度改良形態ジプラシドンについては後記に詳述する。本明細書に述べるように、遠位小腸または結腸でジプラシドンを吸収させることを目的とする態様、および1日1回投与を目的とする態様については、溶解度改良形態が好ましい。
【0031】
1態様において、溶解度改良形態ジプラシドンは高溶解性塩形である。ある種の低溶解性薬物は、他の塩形の薬物と対比して使用環境での薬物濃度を一時的に高める高溶解性塩形で配合できることが知られている。ジプラシドンについてのそのような塩形の例はメシル酸塩であり、これはpH 2.5で約900μg/mlの水溶解度をもつ。ジプラシドンの数種の高溶解性塩形の溶解度を次表に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
好ましい高溶解性塩形のジプラシドンには、塩酸塩、メシル酸塩、トシル酸塩、リン酸塩およびサリチル酸塩が含まれる。
他の態様において、溶解度改良形態には、約10μm未満、好ましくは約5μm未満の体積重みつき(weighted)平均粒径をもつジプラシドンが含まれる。標準的な結晶質塩酸ジプラシドンは、一般にブロック状または針状の晶癖をもつ。そのような結晶のサイズは一般に長さ30μm、幅4μmであるが、広範なものがみられる。これらの結晶をMalvern Mastersizerにより分析し、湿潤スラリーとして調べると、体積重みつき平均粒子直径は約10μmである。ジプラシドンの粒径を縮小すると、その溶解度が改善され、したがってより大きな結晶サイズにより達成される濃度と対比して、水性使用環境で少なくとも一時的に高い溶存ジプラシドン濃度を得ることができる。そのような小粒子は、一般的な粉砕法およびミリング法により得ることができる。好ましい1方法では、ジプラシドンをジェットミリングする。ジェットミリングしたジプラシドンは、約5μm未満、好ましくは約3μm未満の体積重みつき平均粒径をもつことができる。
【0034】
他の態様において、ジプラシドンはナノ粒子の形態であってもよい。用語”ナノ粒子”は、一般に約500nm未満、より好ましくは約250nm未満、さらに好ましくは約100nm未満の有効平均結晶サイズをもつ粒子の形態のジプラシドンを表わす。そのようなナノ粒子の例はさらにUSP No. 5,145,684に記載され、これを本明細書に援用する。本発明薬物のナノ粒子は、ナノ粒子を製造するためのいずれか既知の方法により製造できる。1方法は、ジプラシドンを液体分散媒質に懸濁し、粉砕媒体の存在下で機械的措置を施して薬物の粒径を有効平均粒径に低下させることを含む。表面改質剤の存在下で粒子サイズを低下させることができる。あるいは、摩砕後に粒子を表面改質剤と接触させることができる。ナノ粒子を製造するための他の別法は、USP No. 5,560,932およびUSP No. 5,874,029に開示され、両者の全体を本明細書に援用する。
【0035】
他の溶解度改良形態ジプラシドンには、シクロデキストリンと組合わせたジプラシドン含まれる(包接複合体または物理的混合物として)。本明細書中で用いる用語”シクロデキストリン”は、シクロデキストリンのすべての形態および誘導体を表わす。シクロデキストリンの具体例には、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリンおよびγ-シクロデキストリンが含まれる。シクロデキストリンの誘導体の例には、モノ-またはポリアルキル化β-シクロデキストリン、モノ-またはポリヒドロキシアルキル化β-シクロデキストリン、たとえばヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン(ヒドロキシプロピルシクロデキストリン)、モノ、テトラまたはヘプタ置換β-シクロデキストリン、およびスルホアルキルエーテルシクロデキストリン(SAE-CD)、たとえばスルホブチルエーテルシクロデキストリン(SBECD)が含まれる。
【0036】
シクロデキストリン誘導体としても知られるこれらの溶解度改良形態(本明細書中で、以下”シクロデキストリン/薬物形態”と呼ぶ)は、単純な物理的混合物であってもよい。そのような例はUSP No. 5,134,127に記載され、これを本明細書に援用する。あるいは、薬物とシクロデキストリンが互いに複合体を形成してもよい。たとえば、最終製剤の調製前に、有効薬物とスルホアルキルエーテルシクロデキストリン(SAE-CD)を複合体に予備形成してもよい。あるいは、放出速度調節剤およびSAE-CD/薬物混合物を含む固体コアを囲むフィルムコーティングを用いて薬物を配合することもできる;USP No. 6,046,177に記載され、これを本明細書に援用する。あるいは、SAE-CDを含有する持続放出製剤は、1種類以上のSAE-CD誘導体、任意の放出速度調節剤、療法薬(その主要部分がSAE-CDと複合体形成していない)の物理的混合物を含むコア、およびこのコアを囲む任意の放出速度調節剤コーティングから構成されてもよい。本発明が意図する他のシクロデキストリン/薬物形態はUSP No. 5,134,127、5,874,418および5,376,645に開示され、これらをすべて本明細書に援用する。
【0037】
他の溶解度改良形態ジプラシドンは、ジプラシドンと可溶化剤の組合わせである。そのような可溶化剤は、ジプラシドンの水溶性を高める。ジプラシドンを可溶化剤の存在下で水性使用環境に投与すると、少なくとも一時的に溶存ジプラシドンの濃度が溶存ジプラシドンの平衡濃度を超える可能性がある。可溶化剤の例には、下記のものが含まれる:pH調節剤、たとえば緩衝剤、有機酸;グリセリド;部分グリセリド;グリセリド誘導体;ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシプロピレンエーテルならびにそれらのコポリマー;ソルビタンエステル;ポリオキシエチレンソルビタンエステル;アルキルスルホネート;ならびにリン脂質。この態様において、薬物および可溶化剤は両方とも、好ましくは固体である。
【0038】
界面活性剤の例には下記のものが含まれる:脂肪酸およびアルキルスルホネート;市販の界面活性剤、たとえば塩化ベンザルコニウム(HYAMINE(登録商標)1622、Lonza, Inc.から入手可能、ニュージャージー州フェアローン);スルホコハク酸ジオクチルナトリウム(ドクサートナトリウム(DOCUSATE SODIUM)、Mallinckrodt Spec. Chem.から入手可能、ミズーリ州セントルイス);ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(TWEEN(登録商標)、ICI Americas Inc.から入手可能、デラウェア州ウィルミントン;LIPOSORB(登録商標)O-20、Lipochem Inc.から入手可能、ニュージャージー州パターソン;CAPMUL(登録商標)POE-0、Abietic Corp.から入手可能、ウィスコンシン州ジェーンズビル);ならびに天然界面活性剤、たとえばタウロコール酸ナトリウム、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、レシチン、ならびに他のリン脂質、ならびにモノ-およびジグリセリド。
【0039】
好ましい1クラスの可溶化剤は有機酸からなる。有機酸の例には下記のものが含まれる:酢酸、アコニット酸、アジピン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウスルホン酸、コール酸、クエン酸、デカン酸、エリソルビン酸、1,2-エタンジスルホン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、グリオキシル酸、ヘプタン酸、馬尿酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、乳酸、ラクトビオン酸、レブリン酸、リシン、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、1-および2-ナフタレンスルホン酸、ニコチン酸、パモ酸、パントテン酸、フェニルアラニン、3-フェニルプロピオン酸、フタル酸、サリチル酸、サッカリン酸、コハク酸、タンニン酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸、トリプトファンおよび尿酸。
【0040】
他のクラスの可溶化剤は、米国特許出願公開2003/0228358 A1(2003年12月11日公開、本明細書に援用する)に記載された親油性ミクロ相形成物質からなる。親油性ミクロ相形成物質は、界面活性剤および/または親油性物質を含むことができる。したがって、本明細書中で用いる”親油性ミクロ相形成物質”には単一物質のほか物質ブレンドも含まれるものとする。親油性ミクロ相形成物質として用いるのに適した両親媒性物質の例には下記のものが含まれる:スルホン化炭化水素およびそれらの塩類、たとえば1,4-ビス(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、ドクサートナトリウム(docusate sodium)(CROPOL)としても知られる、およびラウリル硫酸ナトリウム(SLS);ポロキサマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー(PLURONIC、LUTROL)としても知られる;ポリオキシエチレンアルキルエーテル(CREMOPHOR A、BRIJ);ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート、TWEEN);短鎖グリセリルモノアルキレート(HODAG、IMWITTOR、MYRJ);ポリグリコール化グリセリド(GELUCIRE);ポリオール、たとえばグリセロールのモノ-およびジ-アルキレートエステル;非イオン界面活性剤、たとえばポリオキシエチレン20ソルビタンモノオレエート(ポリソルベート80、商標TWEEN 80で販売、ICIから市販);ポリオキシエチレン20ソルビタンモノラウレート(ポリソルベート20、商標TWEEN 20で市販);ポリエチレン(40または60)水素化ヒマシ油(商標CREMOPHOR(登録商標)RH40およびRH60でBASFから入手可能);ポリオキシエチレン(35)ヒマシ油(CREMOPHOR(登録商標)EL);ポリエチレン(60)水素化ヒマシ油(Nikkol HCO-60);α-トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート(ビタミンE TPGS);グリセリルPEG 8カプリレート/カプレート(登録商標LABRASOLでGattefosseから市販);PEG 32グリセリルラウレート(登録商標GELUCIRE 44/14でGattefosseにより市販);ポリオキシエチレン脂肪酸エステル(登録商標MYRJでICIから市販);ポリオキシエチレン脂肪酸エーテル(登録商標BRIJでICIから市販)。ポリオールのアルキレートエステルは、分子当たりのアルキレート数およびアルキレート中の炭素数に応じて、両親媒性または疎水性とみなすことができる。ポリオールがグリセロールである場合、モノ-およびジ-アルキレートはしばしば両親媒性とみなされ、一方グリセロールのトリアルキレートは一般に疎水性とみなされる。しかし、一部の科学者は中鎖モノ-およびジ-グリセリドですら疎水性と分類する。たとえばPatelらのUSP No. 6,294,192 (B1)を参照;その全体を本明細書に援用する。分類に関係なく、モノ-およびジ-グリセリドを含む組成物は本発明の好ましい組成物である。他の適切な両親媒性物質はPatelらのUSP No. 6,294,192中にあり、”疎水性非イオン界面活性剤および親水性イオン界面活性剤”として列記されている。
【0041】
ある種の両親媒性物質はそれ自体は水と非混和性でなく、少なくともある程度は水溶性であることを留意すべきである。それにもかかわらず、そのような両親媒性物質を混合物、特に疎水性物質との混合物として用いた場合、親油性ミクロ相を形成することができる。
【0042】
親油性ミクロ相形成物質として用いるのに適した疎水性物質の例には下記のものが含まれる:中鎖グリセリルモノ-、ジ-およびトリ-アルキレート(CAPMUL MCM、MIGLYOL 810、MIVEROL 18-92、ARLACEL 186、分画ヤシ油、植物軽油);ソルビタンエステル(ARLACEL 20、ARLACEL 40);長鎖脂肪アルコール(ステアリルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール);長鎖脂肪酸(ステアリン酸);およびリン脂質(卵レシチン、大豆レシチン、植物レシチン、タウロコール酸ナトリウム、および1,2-ジアシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、たとえば1-パルミトイル-2-オレイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1-パルミトイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、および他の天然または合成ホスファチジルコリン);下記の登録商標のカプリン酸およびカプリル酸モノおよびジグリセリド:Capmul(登録商標)MCM、MCM 8およびMCM 10、Abieticから市販、ならびにImwitor(登録商標)988、742または308、Condea Vistaから市販;ポリオキシエチレン 6杏仁油、登録商標Labrafil M 1944 CSでGattefosseから入手可能;ポリオキシエチレントウモロコシ油、Labrafil(登録商標)M 2125で市販;プロピレングリコールモノラウレート、LauroglycolとしてGattefosseから市販;プロピレングリコールジカプリレート/カプレート、Captex(登録商標)200としてAbieticから、またはMiglyol(登録商標)840としてCondea Vistaから市販;ポリグリセリルオレエート、Plurol oleiqueとしてGattefosseから入手可能;脂肪酸のソルビタンエステル(たとえばSpan(登録商標)20、Crill(登録商標)1、Crill(登録商標)4、ICIおよびCrodaから市販)、およびグリセリルモノオレエート(Maisine、Peceol);中鎖トリグリセリド(MCT、C6-C12)および長鎖トリグリセリド(LCT、C14-C20)ならびにモノ-、ジ-およびトリグリセリドの混合物;または脂肪酸の親油性誘導体、たとえばアルキルアルコールとのエステル;分画ヤシ油、、たとえばMiglyol(登録商標)812、すなわち56%カプリル酸(C8)および36%カプリン酸(C10)トリグリセリド、Miglyol(登録商標)810(68% C8および28% C10)、Neobee(登録商標)M5、Captex(登録商標)300、Captex 355、およびCrodamol(登録商標)GTCC(MiglyolはCondea Vista Inc.(Huls)により、NeobeeはStepan Europe(Voreppe、フランス)により、CaptexはAbietic Corp.、CrodamolはCroda Corp.により供給);植物油、たとえば大豆油、サフラワー油、トウモロコシ油、オリーブ油、綿実油、ラッカセイ油、ヒマワリ実油、パーム油またはナタネ油;アルキルアルコールの脂肪酸エステル、たとえばオレイン酸エチルおよびモノオレイン酸グリセリル。親油性ミクロ相形成物質として用いるのに適した他の疎水性物質の例には、PatelのUSP No. 6,294,192に”疎水性界面活性剤”として列記されたものが含まれる。疎水性物質のクラスの例には下記のものが含まれる:脂肪アルコール;ポリオキシエチレンアルキルエーテル;脂肪酸;グリセロール脂肪酸モノエステル;グリセロール脂肪酸ジエステル;アセチル化グリセロール脂肪酸モノエステル;アセチル化グリセロール脂肪酸ジエステル;低級アルコール脂肪酸エステル;ポリエチレングリコール脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールグリセロール脂肪酸エステル;ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレングリセリド;モノグリセリドの乳酸誘導体;ジグリセリドの乳酸誘導体;プロピレングリコールジグリセリド;ソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー;エステル交換した植物油;ステロール;ステロール誘導体;糖エステル;糖エーテル;スクログリセリド;ポリオキシエチレン植物油;ポリオキシエチレン水素化植物油;ポリオールと、脂肪酸、グリセリド、植物油、水素化植物油およびステロールよりなる群の少なくとも1メンバーとの反応生成物;ならびにその混合物。比較的親水性の物質、たとえば本明細書中で”両親媒性”またはPatelにおいて”親水性界面活性剤”と呼ばれるものと前記の疎水性物質との混合物が特に適切である。特に、Patelが開示した疎水性界面活性剤と親水性界面活性剤の混合物が適切であり、多くの組成物に好ましい。しかし、Patelと異なり、疎水性成分としてトリグリセリドを含有する混合物も適切である。
【0043】
1態様において、親油性ミクロ相形成物質は下記よりなる群から選択される:ポリグリコール化グリセリド(GELUCIRE);ポリエチレン(40または60)水素化ヒマシ油(商標CREMOPHOR(登録商標)RH40およびRH60でBASFから入手可能);ポリオキシエチレン(35)ヒマシ油(CREMOPHOR(登録商標)EL);ポリエチレン(60)水素化ヒマシ油(Nikkol HCO-60);α-トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート(ビタミンE TPGS);グリセリルPEG 8カプリレート/カプレート(登録商標LABRASOLでGattefosseから市販);PEG 32グリセリルラウレート(登録商標GELUCIRE 44/14でGattefosseにより市販);ポリオキシエチレン脂肪酸エステル(登録商標MYRJでICIから市販);ポリオキシエチレン脂肪酸エーテル(登録商標BRIJでICIから市販);ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー(PLURONIC、LUTROL);ポリオキシエチレンアルキルエーテル(CREMOPHOR A、BRIJ);長鎖脂肪アルコール(ステアリルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール);長鎖脂肪酸(ステアリン酸);ポリオキシエチレン 6杏仁油、登録商標Labrafil M 1944 CSでGattefosseから入手可能;ポリオキシエチレントウモロコシ油、Labrafil(登録商標)M 2125で市販;プロピレングリコールモノラウレート、LauroglycolとしてGattefosseから市販;ポリグリセリルオレエート、Plurol oleiqueとしてGattefosseから入手可能;トリグリセリド:中鎖トリグリセリド(MCT、C6-C12)および長鎖トリグリセリド(LCT、C14-C20)を含む;分画ヤシ油、、たとえばMiglyol(登録商標)812、すなわち56%カプリル酸(C8)および36%カプリン酸(C10)トリグリセリド、Miglyol(登録商標)810(68% C8および28% C10)、Neobee(登録商標)M5、Captex(登録商標)300、Captex 355、およびCrodamol(登録商標)GTCC(MiglyolはCondea Vista Inc.[Huls]により、NeobeeはStepan Europe(Voreppe、フランス)により、CaptexはAbietic Corp.により、CrodamolはCroda Corp.により供給);植物油、たとえば大豆油、サフラワー油、トウモロコシ油、オリーブ油、綿実油、ラッカセイ油、ヒマワリ実油、パーム油またはナタネ油;ポリオキシエチレンアルキルエーテル;脂肪酸;低級アルコール脂肪酸エステル;ポリエチレングリコール脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールグリセロール脂肪酸エステル;ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレングリセリド;モノグリセリドの乳酸誘導体;ジグリセリドの乳酸誘導体;プロピレングリコールジグリセリド;エステル交換した植物油;ステロール;ステロール誘導体;糖エステル;糖エーテル;スクログリセリド;ポリオキシエチレン植物油;ポリオキシエチレン水素化植物油;ポリオールと、脂肪酸、グリセリド、植物油、水素化植物油およびステロールよりなる群の少なくとも1メンバーとの反応生成物;ならびにその混合物。
【0044】
特に好ましい親油性ミクロ相形成物質には下記のものが含まれる:ポリエトキシル化ヒマシ油と中鎖グリセリルモノ-、ジ-および/またはトリ-アルキレートの混合物(たとえばCREMOPHOR RH40とCAPMUL MCMの混合物)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルと中鎖グリセリルモノ-、ジ-および/またはトリ-アルキレートの混合物(たとえばTWEEN 80とCAPMUL MCMの混合物)、ポリエトキシル化ヒマシ油と中鎖グリセリルモノ-、ジ-および/またはトリ-アルキレートの混合物(たとえばCREMOPHOR RH40とARLACEL 20の混合物)、タウロコール酸ナトリウムおよびパルミトイル-2-オレイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンおよび他の天然または合成ホスファチジルコリンの混合物、ならびにポリグリコール化グリセリドと中鎖グリセリルモノ-、ジ-および/またはトリ-アルキレートの混合物(たとえばGELUCIRE 44/14とCAPMUL MCMの混合物)。
【0045】
さらに他の溶解度改良形態ジプラシドンは、非晶質形態ジプラシドンである。好ましくは少なくとも大部分のジプラシドンが非晶質である。”非晶質”とは、単にジプラシドンが非結晶質状態であることを意味する。本明細書中で用いる用語”大部分”は、剤形中の薬物の少なくとも60重量%が結晶質形態ではなく非晶質形態であることを意味する。好ましくは、ジプラシドンは実質的に非晶質である。本明細書中で用いる”実質的に非晶質”は、結晶質形態のジプラシドンの量が約25重量%を超えないことを意味する。より好ましくは、ジプラシドンは”ほぼ完全に非晶質”であり、これは、結晶質形態ジプラシドンの量が約10重量%を超えないことを意味する。結晶質ジプラシドンの量は、粉末X線回折(PXRD)、走査型電子顕微鏡(SEM)分析、示差走査熱量測定(DSC)または他の標準定量測定により測定できる。
【0046】
非晶質形態ジプラシドンは、ジプラシドンが非晶質であるいかなる形態であってもよい。非晶質形態ジプラシドンの例には、ポリマー中におけるジプラシドンの固体非晶質分散物が含まれる;たとえば同一出願人による米国特許出願公開2002/0009494 A1に開示され、これを本明細書に援用する。あるいは、ジプラシドンを非晶質形態で固体支持体に吸着させてもよい;たとえば同一出願人による米国特許出願公開2003/0054037 A1に開示され、これを本明細書に援用する。さらに他の別形態として、非晶質ジプラシドンはマトリックス材料を用いて安定化することができる;たとえば同一出願人による米国特許出願公開2003/0104064 A1に開示され、これを本明細書に援用する。
【0047】
他の溶解度改良形態ジプラシドンは、半秩序状態の非晶質形態ジプラシドンである;たとえば同一出願人による米国仮特許出願No. 60/403,087(2002年8月12日出願)に開示され、これを本明細書に援用する。
【0048】
幾つかの方法、たとえばインビトロ溶解試験または膜透過試験を用いて、ある形態のジプラシドンが溶解度改良形態であって溶解度が改良されているかを判定できる。インビトロ溶解度試験は、溶解度改良形態ジプラシドンを溶解試験媒質、たとえばモデル絶食十二指腸(MFD)液、リン酸緩衝化生理食塩(PBS)液、模擬腸内緩衝液、または水に添加し、溶解を促進するために撹拌することにより実施できる。適切なPBS液は、20mMのNa2HPO4、47mMのKH2PO4、87mMのNaCl、および0.2mMのKClを含み、NaOHでpH 6.5に調節した水溶液である。適切なMFD液はPBS液と同じであり、かつ7.3mMのタウロコール酸ナトリウムおよび1.4mMの1-パルミトイル-2-オレイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンも存在する。適切な模擬腸内緩衝液には、下記のものが含まれる:(1)50mMのNaH2PO4および2重量%のラウリル硫酸ナトリウム、pH 7.5に調節、(2) 50mMのNaH2PO4および2重量%のラウリル硫酸ナトリウム、pH 6.5に調節、(3)6mMのNaH2PO4、150mMのNaCl、および2重量%のラウリル硫酸ナトリウム、pH 6.5に調節。ある種の即時沈殿性塩類については、水が好ましい溶解媒質である。その形態が溶解度改良形態であるかを評価するための1方法において、溶解度改良形態ジプラシドンはインビトロ溶解試験法で試験した場合に下記の条件のうち少なくとも1つ、好ましくは両方を満たす。第1条件は、インビトロ溶解試験において、結晶質遊離塩基形のジプラシドンを含む対照組成物と対比して溶解度改良形態がより高い最大溶存薬物濃度(MDC)のジプラシドンをもたらすことである。すなわち溶解度改良形態を使用環境に導入すると、溶解度改良形態は対照組成物と対比してより高い水溶液濃度の溶存ジプラシドンをもたらす。対照組成物は、バルク結晶質形態のジプラシドン遊離塩基のみである。持続放出手段が溶解度改良度の評価を妨げないように、溶解度改良形態を剤形とは別に溶解試験する点を留意することが重要である。好ましくは、溶解度改良形態は、水溶液中で対照組成物の少なくとも1.25倍、より好ましくは少なくとも2倍、最も好ましくは少なくとも3倍のジプラシドンMDCをもたらす。たとえば被験組成物がもたらすMDCが22μg/mlであり、対照組成物がもたらすMDCが2μg/mlである場合、溶解度改良形態は対照組成物がもたらすものの11倍のMDCをもたらす。
【0049】
第2条件は、インビトロ溶解試験において、当量の結晶質ジプラシドン遊離塩基のみを含む対照組成物と対比して溶解度改良形態がより大きな溶解濃度-対-時間曲線下面積(AUC)をもたらすことである。より具体的には、インビトロ使用環境で溶解度改良形態は、使用環境への導入後、約0分から約270分までのいずれかの90分間で、前記の対照組成物の少なくとも1.25倍のAUCをもたらす。好ましくは、本発明組成物がもたらすAUCは対照組成物の少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも3倍である。
【0050】
水溶液中のジプラシドン濃度の増大を評価するためのインビトロ試験は、下記により実施できる:(1)撹拌しながら、ジプラシドンの平衡濃度に達するのに十分な量の対照組成物(すなわち結晶質ジプラシドン遊離塩基のみ)をインビトロ試験媒質、たとえばMFD、PBSまたは模擬腸内緩衝液に添加する;(2)別個の試験において、撹拌しながら、すべてのジプラシドンが溶解した場合にジプラシドンの理論濃度が結晶質ジプラシドン遊離塩基のもたらす平衡濃度より少なくとも2倍、好ましくは少なくとも10倍を超えるのに十分な量の組成物(たとえば溶解度改良形態)を同一試験媒質に添加する;そして(3)試験媒質中の被験組成物のMDCおよび/または水溶液AUC測定値と、対照組成物の平衡濃度および/または水溶液AUCとを比較する。そのような溶解試験を実施する際、被験組成物または対照組成物の使用量は、すべてのジプラシドンが溶解した場合にジプラシドン濃度が平衡濃度の少なくとも2倍、好ましくは少なくとも10倍、最も好ましくは少なくとも100倍になる量である。
【0051】
溶存ジプラシドンの濃度は一般に、試験媒質をサンプリングし、試験媒質中のジプラシドン濃度を時間に対してプロットすることにより時間の関数として測定され、これによりMDCを確認できる。MDCは、試験期間中にわたって測定した溶存ジプラシドンの最大値とする。水溶液AUCは、組成物を水性使用環境へ導入した時点(この時点で時間はゼロである)と使用環境へ導入した270分後(この時点で時間は270分である)までのいずれかの90分間にわたる濃度-対-時間曲線を積分することにより計算される。一般に組成物がそのMDCに速やかに(約30分以内)達する場合、AUCを計算するのに用いる時間は、ゼロの時点から90分の時点までである。しかし、前記のいずれかの90分間にわたる組成物のAUCが本発明の基準に適合する場合、そのジプラシドンは溶解度改良形態であるとみなされる。
【0052】
測定値の誤差を生じる大型の薬物粒子を避けるために、試験溶液を濾過または遠心分離する。”溶存薬物”は、一般に0.45μmのシリンジフィルターを通過する物質、または遠心分離後に上清中に残留する物質とされる。濾過は、Scientific Resourcesにより商標TITAN(登録商標)で販売される13mm、0.45μmのポリビニリデンジフルオリド製シリンジフィルターを用いて実施できる。遠心分離は、一般にポリプロピレン製ミクロ遠心管中、13,000 Gで60秒間、遠心することにより実施される。他の同様な濾過法または遠心分離法を採用しても有用な結果を得ることができる。たとえば他のタイプのマイクロフィルターを用いると、前記に特定したフィルターにより得られるものより若干高い、または低い数値(±10〜40%)が得られるが、やはり好ましい溶解度改良形態を同定することができるであろう。この”溶存薬物”という定義には、モノマー状の溶媒和薬物分子だけでなく、広範な種、たとえばサブミクロンの寸法をもつポリマー/薬物アセンブリー、たとえば薬物凝集体、ポリマーと薬物の混合物の凝集体、ミセル、ポリマーミセル、コロイド粒子またはナノ結晶、ポリマー/薬物複合体、および特定した溶解試験において濾液もしくは上清中に存在する他のこのような薬物含有種をも含むことを認識すべきである。
【0053】
薬物形態が溶解度改良形態であるかを評価するための他の方法においては、その溶解度改良形態の溶解速度を測定し、平均粒径10μmをもつ遊離塩基形ジプラシドンの溶解速度と比較する。溶解速度はいずれか適切な溶解媒質、たとえばPBS液、MFD液、模擬腸内緩衝液、または蒸留水中で試験できる。蒸留水は、速やかに沈殿する塩類には好ましい溶解媒質である。溶解度改良形態の溶解速度は、平均粒径10μmをもつ遊離塩基形ジプラシドンの溶解速度より大きい。好ましくは、溶解速度は遊離塩基形ジプラシドンのものの少なくとも1.25倍、より好ましくは、遊離塩基のものの少なくとも2倍、さらに好ましくは遊離塩基のものの少なくとも3倍である。
【0054】
あるいは、インビトロ膜透過試験を用いて、ジプラシドンが溶解度改良形態であるかを判定できる。この試験では、溶解度改良形態を水溶液に装入、溶解、懸濁、または他の形で送達して供給液を調製する。この水溶液は、いずれかの生理関連溶液、たとえば前記のMFDまたはPBSまたは模擬腸内緩衝液であってよい。供給液を調製した後、この溶液を撹拌して、それに溶解度改良形態を溶解または懸濁させ、あるいは直ちに供給液溜めに添加することができる。あるいは、供給液を供給液溜め内で直接調製することもできる。好ましくは、溶解度改良形態の添加後、膜透過試験の実施前には、供給液を濾過または遠心分離しない。
【0055】
次いで供給液を微孔質膜の供給側と接触させる。微孔質膜の供給側表面は親水性である。膜の親水性でない孔部分は有機流体、たとえばデカノールとデカンの混合物で満たされ、膜の透過側はこの有機流体を含む透過液と流体連絡している。試験期間中、供給液および有機流体は両方とも微孔質膜と接触した状態を維持する。試験期間は、数分から数時間または数日間にすら及ぶ場合がある。
【0056】
透過液の有機流体中における薬物濃度を時間の関数として測定することにより、あるいは供給液中における薬物濃度を時間の関数として測定することにより、あるいは両方により、薬物が供給液から透過液中へ輸送される速度を判定する。これは、当技術分野で周知の方法により達成でき、これには紫外線/可視光線(UV/Vis)分光分析、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ガスクロマトグラフィー(GC)、核磁気共鳴(NMR)、赤外(IR)分光分析、偏光、密度、および屈折率を用いるものが含まれる。有機流体中の薬物濃度は、有機流体を別個の時点でサンプリングして薬物濃度を分析することにより、あるいは有機流体中の薬物濃度を連続分析することにより測定できる。連続分析のためには、UV/Visプローブおよびフロースルーセルを使用できる。すべての場合、当技術分野で周知のように、結果を一組の標準品と対比することにより有機流体中の薬物濃度を判定する。
【0057】
これらのデータから、透過液中の薬物濃度-対-時間プロットの最大勾配に透過液体積を掛け、そして膜面積で割ることにより、膜を通る最大流束を計算する。この最大勾配は一般に試験の最初の10〜90分間に測定される;この期間は、しばしば数分という短時間の遅れに続いてほぼ一定の速度で透過液中の薬物濃度が上昇する。これより長い時点では、大部分の薬物が供給液から除かれているので、濃度-対-時間プロットの勾配は小さくなる。膜を通る薬物輸送の推進力がゼロに近づくのに伴って、しばしば勾配はゼロに近づく;すなわち、2相の薬物が平衡に近づく。最大流束は濃度-対-時間プロットの直線部分から判定され、あるいは曲線が直線でない場合は勾配が最大値となる時点での濃度-対-時間プロットに対する接線から推定される。この膜透過試験の詳細は、同一出願人による出願中の米国仮特許出願No. 60/557,897、タイトル”医薬組成物の評価のための方法および装置”、2004年3月30日出願(代理人Docket No. PC25968)に示され、これを本明細書に援用する。
【0058】
溶解度改良形態剤形を評価するための一般的なインビトロ膜透過試験は、下記により実施できる:(1)すべての薬物が溶解した場合に薬物の理論濃度が薬物の平衡濃度の少なくとも2倍を超えるのに十分な量の被験組成物(すなわち溶解度改良形態ジプラシドン)を供給液に投与する;(2)別個の試験で、当量の対照組成物(すなわち結晶質ジプラシドン遊離塩基)を当量の試験媒質に添加する;そして(3)被験組成物のもたらす最大薬物流束測定値が対照組成物のもたらすものの少なくとも1.25倍になるかを判定する。この試験において水性使用環境に投与した際に、対照組成物がもたらす最大流束の少なくとも1.25倍の最大流束をもたらす場合、その組成物は溶解度改良形態ジプラシドンである。好ましくは、組成物がもたらす最大流束は対照組成物がもたらす最大流束の少なくとも1.5倍、より好ましくは少なくとも2倍、さらに好ましくは少なくとも3倍である。
【0059】
放出プロフィール
本発明の持続放出経口剤形は、使用環境に投与された後の最初の2時間でジプラシドンの少なくとも一部を剤形から放出する。言い換えると、この剤形はすべてのジプラシドンを直ちに放出することはない。”即時放出”は、剤形が投与後の最初の2時間以内にその剤形中のすべてのジプラシドンの90重量%より多量を放出することを意味する。1態様において、本発明の持続放出剤形はインビトロ使用環境に投与された後の最初の2時間でその剤形からジプラシドンの90重量%以下しか放出しない。他の態様において、剤形は使用環境に投与された後の最初の2時間でジプラシドンの80重量%以下、70重量%以下、さらに60重量%以下しか放出しない。少なくとも80重量%のジプラシドンを剤形から放出する時間は少なくとも4時間、少なくとも6時間、少なくとも8時間、少なくとも10時間、さらに少なくとも12時間であってよい。”放出”とは、使用環境に溶解するジプラシドンの量ではなく、剤形から排出する、または放出される量を意味する。たとえば本発明の剤形は結晶質(溶解していない)ジプラシドンを使用環境中へ放出することができ、これが次いで放出に続いて溶解する。
【0060】
インビトロ試験を用いて、剤形が使用環境に投与された後の最初の2時間で少なくとも一部のジプラシドンを剤形から放出するかを判定できる。インビトロ試験法は当技術分野で周知である。インビボでのその剤形の挙動を概算するインビトロ試験法を設計する。そのような試験法のひとつは”残留試験”であり、下記に従って実施される。腸内環境を模倣したもの900mL(0.05Mリン酸二水素ナトリウム、pH 6.5、2重量%のラウリル硫酸ナトリウムを含む、37℃)を収容した別個の撹拌式USPタイプ2溶解フラスコに、複数の剤形をそれぞれ入れる。剤形を溶解媒質に入れ、媒質を75 rpmで回転するパドルにより撹拌する。剤形が錠剤、カプセル剤その他の固体剤形である場合、剤形の全表面が溶解媒質に曝露されるように、剤形をフラスコの底から離した状態に保持する金網支持体に入れることができる。一定の時間間隔後に剤形をフラスコから取り出し、表面に付着した媒質を剤形の表面から拭い去り、剤形を半切し、下記の回収溶液100mLに入れる。最初の2時間、剤形のコーティングを溶解するのに適したアセトンその他の溶剤25mL中で剤形を撹拌する。次いで75mLのメタノールを添加し、周囲温度で一夜撹拌を続けて、剤形中に残留する薬物を溶解する。約2mLの回収溶液を取り出し、遠心分離し、250μLの上清をHPLCバイアルに添加し、750μLのメタノールで希釈する。次いで残留薬物をHPLCにより分析する。HPLC分析はZorbax RxC8 Relianceカラムを用いて実施される。移動相は55%の50mMリン酸二水素カリウム、pH 6.5、および45%のアセトニトリルからなる。315nmでUV吸光度を測定する。剤形中に残留する薬物の量を最初に剤形中に存在していた全薬物から差し引いて、各時間間隔で放出された量を求める。
【0061】
本発明の剤形は、いわゆる”直接”試験法により評価することもできる;この方法では、前記のように腸内環境を模倣したもの900mL(0.05Mリン酸二水素ナトリウム、pH 6.5、2重量%のラウリル硫酸ナトリウムを含む、37℃)を収容した撹拌式USPタイプ2溶解フラスコに剤形を入れる。剤形を溶解媒質中の金網支持体に入れ、媒質を75 rpmで回転するパドルにより撹拌する。たとえば自動受容液交換式VanKel VK8000自動サンプリングdissoetteを用いて、一定の時間間隔で溶解媒質の試料を取り出す。次いで、溶解媒質中に放出された薬物の濃度を、前記のようにHPLCにより測定する(場合により、放出されたジプラシドンは完全に解像するのに十分なほど溶解していない可能性がある。そのような場合、試料に含有される放出された懸濁ジプラシドンを溶解し、次いでアッセイする)。次いで、媒質中の薬物濃度および媒質の体積から溶解媒質中の放出薬物の質量を計算し、最初に剤形中に存在していた質量に対する%として表示する。
【0062】
ある態様において、持続放出剤形は投与後に一定の血中ジプラシドン濃度をもたらすことができる。
1態様において本発明の持続放出剤形は、ある定常状態最小血中ジプラシドン濃度をもたらす。この持続放出剤形は、摂食状態で1日1回または2回投与された後、少なくとも20 ng/mlの定常状態最小血中ジプラシドン濃度(Cmin)をもたらす。”定常状態”とは、剤形を投与した後、最大および最小血中ジプラシドン濃度がプラトーに達する(すなわち、比較的一定の値に達する)のに十分な期間をかけて(たとえば3日から1週間まで)到達した状態を意味する(もちろん、剤形の投与という表現は、同一組成をもつ剤形を1日1回または2回投与して定常状態に到達することを意味し、単一の剤形を繰り返して投与することではない)。好ましくは、本発明の持続放出剤形は少なくとも30 ng/ml、より好ましくは少なくとも50 ng/mlの定常状態最小血中ジプラシドン濃度をもたらす。
【0063】
本発明の持続放出剤形は、定常状態最大血中ジプラシドン濃度(Cmax)をも制限する。この持続放出剤形は、摂食状態で1日1回または2回投与された場合、投与後に330 ng/ml未満の定常状態最大血中ジプラシドン濃度(Cmax)をもたらす。好ましくは、本発明の持続放出剤形は少なくとも265 ng/ml未満、より好ましくは200 ng/ml未満の定常状態最小血中ジプラシドン濃度をもたらす。
【0064】
好ましい態様において、本発明の剤形は定常状態比Cmax:Cminを制限する。1態様において、持続放出剤形を1日2回投与した場合、この持続放出剤形は約2.6未満の最大血中ジプラシドン濃度(Cmax)-対-最小血中ジプラシドン濃度(Cmin)定常状態比をもたらす。定常状態比Cmax:Cminを低く維持することによって持続放出剤形はより均一な患者応答を提供でき、同一用量のジプラシドンを含有する即時放出剤形と対比して副作用を軽減または緩和することができる。より好ましい態様において、1日2回投与した場合、定常状態比Cmax:Cminは約2.4未満、さらに好ましくは約2.2未満である。他の態様において、持続放出剤形を1日1回だけ投与した場合、持続放出剤形は約12未満の最大血中ジプラシドン濃度(Cmax)-対-最小血中ジプラシドン濃度(Cmin)定常状態比をもたらす。より好ましい態様において、1日1回だけ投与した場合、定常状態比Cmax:Cminは約10未満、さらに好ましくは約8未満である。
【0065】
他の態様において、本発明の持続放出剤形は摂食状態での投与後、ある血中ジプラシドン濃度-対-時間曲線下-定常状態面積をもたらす。1日2回投与する剤形について、定常状態AUC0-r(ここでrは投与間隔である)は好ましくは少なくとも240 ng-hr/ml、より好ましくは少なくとも420 ng-hr/ml、さらに好ましくは少なくとも600 ng-hr/mlである。1日1回投与する剤形について、本発明の持続放出剤形は、摂食状態での投与後、少なくとも480 ng-hr/ml、より好ましくは少なくとも840 ng-hr/ml、さらに好ましくは少なくとも1200 ng-hr/mlの定常状態AUC0-rをもたらす。
【0066】
ある態様において、本発明の持続放出剤形はIRカプセル剤と対比して改善をもたらすことができる。
1態様において、本発明の持続放出剤形は、同一投与間隔で投与した場合、対照IR経口カプセル剤がもたらすものより定常状態Cmax:Cmin比を低下させる。”対照IR経口カプセル剤”とは、同一用量の有効ジプラシドンを含有する市販のGEODEN(登録商標)経口投与カプセル剤(Pfizer, Inc.)を意味する。GEODENカプセル剤は、塩酸ジプラシドン 1水和物、乳糖、アルファ化デンプン、およびステアリン酸マグネシウムを含有する(市販のGEODENカプセル剤を入手できない場合、対照IR経口カプセル剤は、表6に報告する実施例のインビトロ放出試験に例示した溶解試験に記載する溶解試験媒質に投与した後、2時間以内に95重量%より多量のジプラシドンを放出するカプセル剤を意味する)。より好ましくは、本発明の持続放出剤形がもたらす定常状態比Cmax:Cminは対照の即時放出経口カプセル剤の場合の90%未満、さらに好ましくは対照の即時放出経口カプセル剤の場合の80%未満である。定常状態比Cmax:Cmin比の低下は、持続放出剤形がより多量のジプラシドン(IR経口カプセル剤と対比して)を含有し、最大血中ジプラシドン濃度を高めることなくより高い用量を得ることができ、あるいは同一用量のジプラシドン(IR経口カプセル剤と対比して)を含有するが、最大血中ジプラシドン濃度を低くできるという利点をもつ。
【0067】
剤形はCmax:Cmin比を低下させるが、その剤形がジプラシドンの相対生物学的利用能を実質的に低下させないことも望まれる。したがってさらに他の態様において、本発明の持続放出剤形は、ヒト患者に摂食状態で投与した場合、好ましくは同一用量のジプラシドンを含有する対照IR経口カプセル剤と対比して少なくとも50%の相対生物学的利用能をもたらす。より好ましい態様において、本発明の持続放出剤形は即時放出カプセル剤と対比して少なくとも60%の相対生物学的利用能をもたらすことができる。さらに好ましい態様において、本発明の持続放出剤形は即時放出カプセル剤と対比して少なくとも70%の相対生物学的利用能をもたらす。
【0068】
持続放出剤形がもたらすジプラシドンのCmax、Cmin、Cmax/Cmin比、および相対生物学的利用能は、ヒトにおいてインビボで、そのような測定を行うための常法により試験することができる。インビボ試験法、たとえば交差試験法を用いて、同一用量の有効ジプラシドンを含有する対照IR経口カプセル剤と比較した持続放出剤形の相対生物学的利用能を測定することができる。インビボ交差試験法では、被験持続放出剤形を被験者グループの半分に投与し、適宜なウォッシュアウト期間(たとえば1週間)後、同一被験者に当量のジプラシドンを含む対照IR経口カプセル剤を投与する。他方の半分のグループには、まずIR経口カプセル剤を投与し、続いて被験持続放出剤形を投与する。被験グループについて測定した血中(血清または血漿)ジプラシドン濃度-対-時間曲線下面積(AUC)を対照IR経口カプセル剤により得られる血中AUCで割ったものとして、相対生物学的利用能を判定する。好ましくは、この被験/対照比を各被験者について判定し、次いでこれらの比率をその試験における全被験者について平均する。AUCのインビボ判定は、縦軸(y-軸)に沿った血清または血漿薬物濃度を横軸(x-軸)に沿った時間に対してプロットすることにより実施できる。剤形のAUCおよび相対生物学的利用能を判定するための方法は当技術分野で周知である(AUCの計算は医薬技術分野で周知の方法であり、たとえばWelling,”Pharmacokinetics Processes and Mathematics”,ACS Monograph 185 (1986)に記載されている)。
【0069】
本発明の持続放出剤形および対照の即時放出経口剤形を摂食状態で投与した後、血中ジプラシドン濃度および相対生物学的利用能を測定する。”摂食状態”とは、当業者に知られているとおり、食後を意味する。たとえば摂食状態での投与は、バター焼き卵2個、ベーコン2切れ、ハッシュブラウンポテト2オンス、バター2塊付きホワイトトースト2枚、および全乳240mLからなる”標準”朝食の後に投与することができる。その剤形を摂取する前20分以内に食事全体を摂取するものとする。
【0070】
沈殿防止剤
ジプラシドンを長期間にわたって放出する態様、特に持続放出剤形を1日1回投与すればよいものについて、持続放出剤形は腸内腔からの吸収を促進する形態および様式でジプラシドンを放出する。これらの態様において、剤形は溶解度改良形態ジプラシドン、および使用環境での溶存ジプラシドン濃度を高める沈殿防止剤を含有する。
【0071】
”沈殿防止剤”とは、ジプラシドンで過飽和した水溶液からジプラシドンが結晶化または沈殿する速度を低下させることができる、当技術分野で既知のいずれかの物質を意味する。本発明の持続放出剤形に使用するのに適した沈殿防止剤は、不都合な様式でジプラシドンと化学反応しないという意味で不活性であり、医薬的に許容でき、かつ生理関連pH(たとえば1〜8)で水溶液中において少なくともある程度の溶解性をもたなければならない。沈殿防止剤は中性またはイオン化性であってよく、pH範囲1〜8の少なくとも一部において少なくとも0.1 mg/mLの水溶解度をもたなければならない。
【0072】
沈殿防止剤はポリマーまたは非ポリマー性であってよい。本発明に使用するのに適した沈殿防止用ポリマーは、セルロース系または非セルロース系であってよい。これらのポリマーは水溶液中で中性またはイオン化性であってよい。これらのうちイオン化性ポリマーおよびセルロース系ポリマーが好ましく、イオン化性セルロース系ポリマーがより好ましい。
【0073】
好ましいクラスのポリマーは、”両親媒性”であるポリマーを含む;これは、そのポリマーが疎水性部分と親水性部分をもつことを意味する。疎水性部分は、脂肪族または芳香族炭化水素基などの基を含むことができる。親水性部分は、水素結合しうるイオン化性または非イオン化性の基、たとえばヒドロキシル、カルボン酸、エステル、アミンまたはアミドを含むことができる。
【0074】
本発明に使用するのに適した1クラスのポリマーは、中性-非セルロース系ポリマーを含む。例示ポリマーには下記のものが含まれる:ヒドロキシル、アルキルアシルオキシまたは環状アミドなどの置換基をもつビニルポリマーおよびコポリマー;それらの反復単位の少なくとも一部を加水分解されていない(酢酸ビニル)形で含むポリビニルアルコール;ポリビニルアルコール-ポリ酢酸ビニルコポリマー;ポリビニルピロリドン;ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー、ポロキサマーとしても知られる;ならびにポリエチレン-ポリビニルアルコールコポリマー。
【0075】
本発明に使用するのに適した他のクラスのポリマーは、イオン化性-非セルロース系ポリマーを含む。例示ポリマーには下記のものが含まれる:カルボン酸官能化ビニルポリマー、たとえばカルボン酸官能化ポリメタクリレートおよびカルボン酸官能化ポリアクリレート、たとえばEUDRAGITS(登録商標)、Degussaにより製造、マサチュセッツ州モールデン;アミン官能化ポリアクリレートおよびポリメタクリレート;タンパク質;ならびにカルボン酸官能化デンプン、たとえばグリコール酸デンプン。
【0076】
両親媒性である非セルロース系ポリマーは、相対的親水性モノマーと相対的疎水性モノマーのコポリマーである。例には、アクリレートおよびメタクリレートのコポリマー、ならびにポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーが含まれる。市販のそのようなコポリマーの例には、メタクリレートおよびアクリレートのコポリマーであるEUDRAGITS、およびBASFが供給するポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーPLURONICSが含まれる。
【0077】
好ましいクラスのポリマーは、少なくとも1つのエステル結合および/またはエーテル結合した置換基をもち、ポリマーが各置換基について少なくとも0.1の置換度をもつ、イオン化性および中性のセルロース系ポリマーを含む。
【0078】
本明細書中で用いるポリマーの命名法において、エーテル結合置換基はこのエーテル基に結合した部分としての”セルロース”の前に示されることを留意すべきである;たとえば”エチル安息香酸セルロース”はエトキシ安息香酸置換基をもつ。また、エステル結合した置換基はカルボキシレートとして”セルロース”の後に示される;たとえば”セルロースフタレート”は、各フタレート部分の1個のカルボン酸がこのポリマーにエステル結合し、他方のカルボン酸は未反応である。
【0079】
”セルロースアセテートフタレート”(CAP)などの名称は、エステル結合によりセルロース系ポリマーのヒドロキシル基の有意画分に結合したアセテートおよびフタレート基をもついずれかのセルロース系ポリマーのファミリーを表わすことも留意すべきである。一般に各置換基の置換度は、このポリマーの他の基準に適合する限り0.1〜2.9であってよい。”置換度”は、セルロース鎖上の糖反復単位当たり3個のヒドロキシルのうち置換されたものの平均数を表わす。たとえばセルロース鎖上のすべてのヒドロキシルがフタレート置換された場合、フタレート置換度は3である。各ポリマーファミリータイプには、そのポリマーの性能を変化させない比較的少量の追加置換基が付加されたセルロース系ポリマーも含まれる。
【0080】
両親媒性セルロースは、親セルロース系ポリマーが少なくとも1種類の相対的疎水性置換基について少なくとも0.1の置換度をもつポリマーを含む。疎水性置換基は、十分に高いレベルの置換度で置換した場合にそのセルロース系ポリマーを本質的に水不溶性にすることができる、本質的にいかなる置換基であってもよい。疎水性置換基の例には、エーテル結合したアルキル基、たとえばメチル、エチル、プロピル、ブチルなど;またはエステル結合したアルキル基、たとえばアセテート、プロピオネート、ブチレートなど;ならびにエーテル結合またはエステル結合したアリール基、たとえばフェニル、ベンゾエートまたはフェニレートが含まれる。前記ポリマーの親水性領域は、非置換ヒドロキシル自体が相対的に親水性であるので、比較的置換されていない部分であるか、あるいは親水性置換基で置換された部分であってもよい。親水性置換基には、エーテル結合またはエステル結合した非イオン化性基、たとえばヒドロキシアルキル置換基であるヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、およびアルキルエーテル基、たとえばエトキシエトキシまたはメトキシエトキシが含まれる。特に好ましい親水性置換基は、エーテル結合またはエステル結合したイオン化性基、たとえばカルボン酸、チオカルボン酸、置換フェノキシ基、アミン、ホスフェートまたはスルホネートである。
【0081】
あるクラスのセルロース系ポリマーは、中性ポリマーを含む;これは、そのポリマーが水溶液中で実質的に非イオン化性であることを意味する。そのようなポリマーは、非イオン化性置換基を含み、それらはエーテル結合していてもよく、エステル結合していてもよい。エーテル結合した非イオン化性置換基の例には、アルキル基、たとえばメチル、エチル、プロピル、ブチルなど;ヒドロキシアルキル基、たとえばヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピルなど;およびアリール基、たとえばフェニルが含まれる。エステル結合した非イオン化性置換基の例には、アルキル基、たとえばアセテート、プロピオネート、ブチレートなど;およびアリール基、たとえばフェニレートが含まれる。ただし、アリール基が含まれる場合、そのポリマーは、生理関連pH 1〜8で少なくともある程度の水溶性をもつのに十分な量の親水性置換基を含む必要がある。
【0082】
前記のポリマーとして使用できる非イオン化性ポリマーの例には、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースアセテート、およびヒドロキシエチルエチルセルロースが含まれる。
【0083】
好ましい一組の中性セルロース系ポリマーは、両親媒性のものである。例示ポリマーには、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースアセテートが含まれ、これらにおいては、非置換ヒドロキシルまたはヒドロキシプロピル置換基と対比して比較的高いメチルまたはアセテート置換基数をもつセルロース反復単位が、ポリマーの他の反復単位と対比して疎水性の領域を構成する。
【0084】
好ましいクラスのセルロース系ポリマーには、生理関連pHで少なくとも部分的にイオン化性であるポリマーが含まれ、これはエーテル結合またはエステル結合した少なくとも1つのイオン化性置換基を含む。エーテル結合したイオン化性置換基の例には下記のものが含まれる:カルボン酸、たとえば酢酸、プロピオン酸、安息香酸、サリチル酸、アルキル安息香酸、たとえばエトキシ安息香酸またはプロポキシ安息香酸、アルコキシフタル酸の各種異性体、たとえばエトキシフタル酸およびエトキシイソフタル酸、アルコキシニコチン酸の各種異性体、たとえばエトキシニコチン酸、およびピコリン酸の各種異性体、たとえばエトキシピコリン酸など;チオカルボン酸、たとえばチオ酢酸;置換フェノキシ基、たとえばヒドロキシフェノキシなど;アミン、たとえばアミノエトキシ、ジエチルアミノエトキシ、トリメチルアミノエトキシなど;ホスフェート、たとえばホスフェートエトキシ;ならびにスルホネート、たとえばスルホネートエトキシ。エステル結合したイオン化性置換基の例には下記のものが含まれる:カルボン酸、たとえばスクシネート、シトレート、フタレート、テレフタレート、イソフタレート、トリメリテート、およびピリジンジカルボン酸の各種異性体など;チオカルボン酸、たとえばチオスクシネート;置換フェノキシ基、たとえばアミノサリチル酸;アミン、たとえば天然または合成アミノ酸、たとえばアラニンまたはフェニルアラニン;ホスフェート、たとえばアセチルホスフェート;ならびにスルホネート、たとえばアセチルスルホネート。芳香族置換ポリマーが同様に必要な水溶性をもつためには、少なくともいずれかのイオン化性基がイオン化するpH値でポリマーを水溶性にするのに十分な親水基、たとえばヒドロキシプロピルまたはカルボン酸官能基がポリマーに結合していることも望ましい。場合により、フタレートまたはトリメリテート置換基のように芳香族基自体がイオン化性であってもよい。
【0085】
生理関連pHで少なくとも部分的にイオン化するセルロース系ポリマーの例には、下記のものが含まれる:ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルローススクシネート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシエチルメチルセルローススクシネート、ヒドロキシエチルセルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシエチルメチルセルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシエチルメチルセルロースアセテートフタレート、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、メチルセルロースアセテートフタレート、エチルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートフタレートスクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルローススクシネートフタレート、セルロースプロピオネートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースブチレートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、メチルセルロースアセテートトリメリテート、エチルセルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートトリメリテートスクシネート、セルロースプロピオネートトリメリテート、セルロースブチレートトリメリテート、セルロースアセテートテレフタレート、セルロースアセテートイソフタレート、セルロースアセテートピリジンジカルボキシレート、サリチル酸セルロースアセテート、ヒドロキシプロピルサリチル酸セルロースアセテート、エチル安息香酸セルロースアセテート、ヒドロキシプロピルエチル安息香酸セルロースアセテート、エチルフタル酸セルロースアセテート、エチルニコチン酸セルロースアセテート、およびエチルピコリン酸セルロースアセテート。
【0086】
親水性領域と疎水性領域をもつ両親媒性の定義に適合するセルロース系ポリマーの例には、セルロースアセテートフタレートおよびセルロースアセテートトリメリテートなどのポリマーが含まれる;これらにおいては、1以上のアセテート置換基をもつセルロース反復単位が、アセテート置換基をもたないかまたは1以上のイオン化したフタレートもしくはトリメリテート置換基をもつ反復単位と対比して疎水性である。
【0087】
特に望ましい一組のセルロース系イオン化性ポリマーは、カルボン酸官能性芳香族置換基とアルキレート置換基の両方をもち、したがって両親媒性のものである。例示ポリマーには下記のものが含まれる:セルロースアセテートフタレート、メチルセルロースアセテートフタレート、エチルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートフタレートスクシネート、セルロースプロピオネートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースブチレートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、メチルセルロースアセテートトリメリテート、エチルセルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートトリメリテートスクシネート、セルロースプロピオネートトリメリテート、セルロースブチレートトリメリテート、セルロースアセテートテレフタレート、セルロースアセテートイソフタレート、セルロースアセテートピリジンジカルボキシレート、サリチル酸セルロースアセテート、ヒドロキシプロピルサリチル酸セルロースアセテート、エチル安息香酸セルロースアセテート、ヒドロキシプロピルエチル安息香酸セルロースアセテート、エチルフタル酸セルロースアセテート、エチルニコチン酸セルロースアセテート、およびエチルピコリン酸セルロースアセテート。
【0088】
他の特に望ましい一組のセルロース系イオン化性ポリマーは、非芳香族カルボキシレート置換基をもつものである。例示ポリマーには、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルローススクシネート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシエチルメチルセルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシエチルメチルセルローススクシネート、ヒドロキシエチルセルロースアセテートスクシネート、およびカルボキシメチルエチルセルロースが含まれる。
【0089】
前記に挙げたように広範なポリマーを使用できるが、本発明者らは、高いMDCおよびAUC値が立証するとおり比較的疎水性のポリマーが最良の性能をもつことを見いだした。特に、非イオン化状態では水不溶性であるが、イオン化状態では水溶性であるセルロース系ポリマーが、殊に良好な性能を示す。そのようなポリマーの具体的サブクラスは、いわゆる”腸溶性”ポリマーであり、これにはたとえばヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、セルロースアセテートフタレート(CAP)、セルロースアセテートトリメリテート(CAT)、およびカルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)が含まれる。さらに、非腸溶グレードのそのようなポリマー、および近縁セルロース系ポリマーは、物理的特性が類似するため良好な性能を示すと期待される。
【0090】
したがって特に好ましいポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、セルロースアセテートフタレート(CAP)、セルロースアセテートトリメリテート(CAT)、メチルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートテレフタレート、セルロースアセテートイソフタレート、およびカルボキシメチルエチルセルロースである。最も好ましいイオン化性セルロース系ポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、およびカルボキシメチルエチルセルロースである。
【0091】
本発明の組成物中に用いるのに適切なものとして個々のポリマーを述べたが、そのようなポリマーのブレンドも適切である。したがって用語”ポリマー”は、単一種のポリマーのほか、ポリマーのブレンドも含むものとする。特に、HPMCASなどのイオン化性セルロース系ポリマーは特定のpH範囲にわたって最良の機能を示すことが見いだされた。たとえばHPMCAS水溶液の特性は、各置換基、すなわちヒドロキシプロポキシ、メトキシ、アセテートおよびスクシネートの置換度、ならびに使用環境のpHの関数である。たとえばHPMCASは信越により製造され、商品名AQOATで、置換度の異なる、したがってpHの関数としてのそれらの特性が異なる3種類のグレードとして販売されている。たとえばpH 6.5の使用環境で結晶化を阻止するためには、HグレードのHPMCASが好ましいことがインビトロ試験で見いだされた。HグレードのHPMCASは、22〜26重量%のメトキシ基、6 10重量%のヒドロキシプロポキシ基、10〜14重量%のアセテート基および4〜8重量%のスクシネート基をもつ。より低いpH値、たとえば5〜6では、MグレードのHPMCASが好ましい。MグレードのHPMCASは、21〜25重量%のメトキシ基、5〜9重量%のヒドロキシプロポキシ基、7〜11重量%のアセテート基および10〜14重量%のスクシネート基をもつ。pHが変動する可能性のある使用環境、たとえば哺乳動物の消化管内では、2種類以上のグレードの混合物が好ましいであろうということも見いだされた。具体的には、溶解度改良形態ジプラシドン、たとえば微細化した形のクロリド塩を、HPMCASの各種グレードの混合物(たとえばHグレードとMグレードのHPMCASの1:1混合物)を含む結晶化防止剤と一緒に哺乳動物の消化管へ送達すると、卓越したジプラシドン吸収が得られることを本発明者らは見いだした。
【0092】
他の好ましいクラスのポリマーは、中和型酸性ポリマーからなる。”中和型酸性ポリマー”とは、有意画分の”酸性部分”または”酸性置換基”が”中和された”、すなわちそれらの脱プロトン形で存在するいずれかの酸性ポリマーを意味する。”酸性ポリマー”とは、有意数の酸性部分をもついずれかのポリマーを意味する。一般に有意数の酸性部分は、ポリマーのグラム当たり約0.1ミリ当量以上の酸性部分である。”酸性部分”には、水と接触または水に溶解すると、少なくとも部分的に水素カチオンを水に供与して水素イオン濃度を高めることができるほど十分に酸性であるいずれかの官能基が含まれる。この定義には、約10未満のpKaをもつ官能基または”置換基”(官能基がポリマーに共有結合している場合にこのように呼ばれる)がいずれも含まれる。この記述に含まれる官能基のクラスの例には、カルボン酸、チオカルボン酸、ホスフェート、フェノール基、およびスルホネートが含まれる。そのような官能基はポリアクリル酸などのポリマーの一次構造を形成していてもよいが、より一般的には親ポリマーの主鎖に共有結合し、したがって”置換基”と呼ばれる。中和型酸性ポリマーは、同一出願人による出願中の米国特許出願No. 10/175,566、タイトル”薬物と中和型酸性ポリマーの医薬組成物”(2002年6月17日出願)に詳述され、それの関連する開示内容を援用する。
【0093】
さらに、前記に挙げた好ましいポリマー、すなわち両親媒性セルロース系ポリマーは、本発明の他のポリマーと対比してより高い沈殿防止性をもつ傾向がある。一般に、イオン化性置換基をもつ沈殿防止用ポリマーが最良の性能を示す傾向がある。そのようなポリマーを含む組成物のインビトロ試験は、本発明の他のポリマーを含む組成物より高いMDCおよびAUC値をもつ傾向がある。
【0094】
幾つかの方法、たとえばインビトロ溶解試験または膜透過試験を用いて、沈殿防止剤、およびその沈殿防止剤により得られる濃度上昇度を評価することができる。インビトロ溶解試験は、溶解度改良形態ジプラシドンを沈殿防止剤と一緒にMFDまたはPBSまたは模擬腸内緩衝液に添加し、撹拌して溶解を促進することにより実施できる。他のpH値の使用環境における沈殿防止剤の有用性を評価するためには、他の値に調節したpH値をもつ他の同様な溶解媒質を用いるのが望ましいであろう。たとえば、HClまたはH3PO4などの酸をPBSまたはMFDに添加して、溶液のpHを6.0または5.0に調節し、次いで後続の溶解試験に使用できる。溶解度改良形態ジプラシドンを沈殿防止剤と一緒にインビトロ溶解試験で試験した場合、以下の基準のうち少なくとも一方、好ましくは両方に適合する。第1条件は、対照組成物と対比して、溶解度改良形態と沈殿防止剤がインビトロ溶解試験においてより高いジプラシドンの最大溶存薬物濃度(MDC)をもたらすことである。対照組成物は、溶解度改良形態ジプラシドンのみ(沈殿防止剤を含まない)からなる。すなわち溶解度改良形態と沈殿防止剤を使用環境へ導入すると、対照組成物と対比して、溶解度改良形態と沈殿防止剤はより高い水溶液濃度の溶存ジプラシドンをもたらす。持続放出手段が溶解度改良度の評価を妨げないように、溶解度改良形態と沈殿防止剤を剤形とは独立して溶解試験することを留意するのが重要である。好ましくは、溶解度改良形態は、水溶液中で対照組成物の少なくとも1.25倍、より好ましくは少なくとも2倍、最も好ましくは少なくとも3倍のジプラシドンMDCをもたらす。たとえば被験組成物がもたらすMDCが5μg/mlであり、対照組成物がもたらすMDCが1μg/mlである場合、被験組成物は対照組成物がもたらすものの5倍のMDCをもたらす。
【0095】
第2条件は、インビトロ溶解試験において、対照組成物と対比して、溶解度改良形態と沈殿防止剤がより大きな溶存ジプラシドン溶解濃度-対-時間曲線下面積(AUC)をもたらすことである。より具体的には、使用環境で溶解度改良形態と沈殿防止剤は、使用環境への導入後、約0分から約270分までのいずれかの90分間で、対照組成物の少なくとも1.25倍のAUCをもたらす。好ましくは、本発明組成物がもたらすAUCは対照組成物の少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも3倍である。
【0096】
あるいは、インビトロ膜透過試験を用いて沈殿防止剤を評価することができる。前記のようにこの試験では、溶解度改良形態と沈殿防止剤を水溶液に装入、溶解、懸濁、または他の形で送達して供給液を調製する。沈殿防止剤を試験するための一般的なインビトロ膜透過試験は、下記により実施できる:(1)すべての薬物が溶解した場合に薬物の理論濃度が薬物の平衡濃度の少なくとも3倍を超えるのに十分な量の被験組成物(すなわち溶解度改良形態ジプラシドンと沈殿防止剤)を供給液に投与する;(2)別個の試験で、当量の対照組成物を当量の試験媒質に添加する;そして(3)被験組成物のもたらす最大薬物流束測定値が対照組成物のもたらすものの少なくとも1.25倍になるかを判定する。溶解度改良形態ジプラシドンと沈殿防止剤は、水性使用環境に投与した際に、上記試験で対照組成物がもたらす最大流束の少なくとも1.25倍の最大薬物流束をもたらす。好ましくは、被験組成物がもたらす最大流束は対照組成物がもたらす最大流束の少なくとも1.5倍、より好ましくは少なくとも2倍、さらに好ましくは少なくとも3倍である。
【0097】
この態様の持続放出剤形は、溶解度改良形態ジプラシドンと沈殿防止用ポリマーの組合わせを含む。本明細書中で用いる”組合わせ”は、溶解度改良形態と沈殿防止用ポリマーが互いに物理的に接触または近接しているが、必ずしも物理的に混合している必要はないことを意味する。たとえば、組合わせは当技術分野で既知の多層錠であってもよく、この場合は1以上の層が溶解度改良形態を含み、1以上の異なる層が沈殿防止用ポリマーを含む。さらに他の例はコーティング錠を構成していてもよく、この場合は溶解度改良形態薬物もしくは沈殿防止用ポリマーまたは両方が錠剤コア内に存在し、コーティングが溶解度改良形態もしくは沈殿防止用ポリマーまたは両方を含むことができる。あるいは、この組合わせは単純な乾燥した物理的混合物であってもよく、この場合は溶解度改良形態と沈殿防止用ポリマーの両方が粒状で混合され、各粒子はサイズに関係なくそれらがバルクとして示すものと同じ個々の物理的特性を保持している。ポリマーと薬物を互いに混合するために用いるいずれか好都合な方法、たとえば物理的混合法および乾式または湿式造粒法を採用できる。
【0098】
溶解度改良形態と沈殿防止用ポリマーの組合わせは、薬物または薬物混合物と沈殿防止剤を乾式または湿式混合して組成物にすることにより調製できる。混合法には、物理的方法および湿式造粒ならびにコーティング法が含まれる。
【0099】
たとえば混合法には、対流混合、剪断混合または拡散混合が含まれる。対流混合は、比較的多量の材料を粉末床の一部から他へ、ブレードもしくはパドル、回転スクリュー、または粉末床の反転により移動させることを伴う。剪断混合は、混合される材料に滑り面が形成される場合に行われる。拡散混合は、単一粒子による位置交換を伴う。これらの混合法は、バッチ式または連続式の装置を用いて実施できる。タンブリングミキサー(たとえばV型)はバッチ操作のために慣用される装置である。連続混合法は、組成物の均質性を改善するために採用できる。
【0100】
ミリングも本発明の組成物を調製するために採用できる。ミリングは、固体の粒径を小さくする機械的方法である(微粉砕)。場合によりミリングはある種の物質については結晶構造を変化させ、化学的変化を起こす可能性があるので、一般に薬物の物理的形態を変化させないミリング条件を選択する。最も一般的なタイプのミリング装置は、ロータリーカッター、ハンマー、ローラーおよび流体エネルギーミルである。装置の選択は、剤形の成分の特性(たとえば軟質、研磨性、または脆性)に依存する。これらの方法の幾つかについては湿式または乾式ミリング法を選択でき、これも成分の特性(たとえば、溶剤中における薬物の安定性)に依存する。ミリング法は、供給材料が不均質である場合、同時に混合法としても用いられる。本発明に用いるのに適した一般的な混合法およびミリング法は、Lachman, et al., The Theory and Practice of Industrial Pharmacy (第3版,1986)に、より詳細に述べられている。本発明組成物の成分を乾式または湿式造粒法により混和することもできる。
【0101】
前記の物理的混合物のほかに、本発明の組成物は薬物と沈殿防止剤の両方を使用環境へ送達する目的を達成するいずれかのデバイスまたはデバイス集合体を構成してもよい。たとえば哺乳動物への経口投与の場合、本発明の剤形は、1以上の層が薬物を含み、1以上の他の層がポリマーを含む、積層錠を構成してもよい。あるいは本発明の剤形は、コアが薬物を含み、コーティングがポリマーを含む、コーティング錠であってもよい。さらに、薬物とポリマーが使用環境で接触しうるように投与される限り、薬物とポリマーが異なる剤形、たとえば錠剤またはビーズ中に存在し、同時にまたは別個に投与されてもよい。薬物とポリマーを別個に投与する場合、一般にポリマーを薬物の前に送達することが好ましい。
【0102】
好ましい1態様において本発明の組合わせは、沈殿防止用ポリマーでコーティングした溶解度改良形態ジプラシドン粒子を含む。この粒子はジプラシドン結晶、または他のいずれかの溶解度改良形態、たとえば非晶質薬物もしくはシクロデキストリン複合体の粒子であってもよい。この態様は、腸、特に結腸内でジプラシドンを吸収させることが望まれる場合に特に有用である。理論により拘束されたくはないが、前記ポリマーおよびジプラシドンが腸内使用環境へ放出されると、薬物の溶解前にポリマーが溶解してゲル化し始める。したがって、薬物が腸内使用環境中へ溶解するのに伴って、溶存薬物は溶存薬物を囲む溶存ポリマーと直ちに遭遇する。これは、薬物の成核を防止し、したがって薬物の沈殿速度を低下させるという利点をもつ。
【0103】
いずれか一般的な方法で、前記ポリマーをジプラシドン結晶の周りにコーティングすることができる。好ましい方法は、噴霧乾燥法である。噴霧乾燥という用語は一般的に用いられており、溶剤を蒸発させるための強い推進力を備えた容器内で液体混合物または懸濁液を小滴に破断し(霧化)、かつ液滴から溶剤を急速に除去することを伴う方法を広範に表わす。
【0104】
ジプラシドン結晶を噴霧乾燥によりコーティングするためには、まず溶剤中におけるジプラシドン結晶および溶存ポリマーの懸濁液を調製する。溶剤に懸濁した薬物と溶剤に溶解したポリマーとの相対量は、生成粒子において目的とする薬物とポリマーの比を得るように選択される。たとえば薬物-対-ポリマー比0.33(25重量%の薬物)を目的とする場合、噴霧液は結晶質薬物粒子1部および溶剤に溶解したポリマー3部を含む。噴霧液の全固形分は、好ましくは噴霧液が効率的に粒子を生成するのに十分な量である。全固形分は、固体薬物、溶存ポリマー、および溶剤に溶解した他の賦形剤の量を表わす。たとえば5重量%の溶存固形分をもち、25重量%の薬物装填量をもつ粒子を生成する噴霧液を調製するためには、噴霧液は1.25重量%の薬物、3.75重量%のポリマーおよび95重量%の溶剤を含むであろう。良好な収率を達成するために、噴霧液は好ましくは少なくとも3重量%、より好ましくは少なくとも5重量%、さらに好ましくは少なくとも10重量%の溶存固形分をもつ。ただし、溶存固形分は高すぎるべきではない。さもなければ、噴霧液が粘稠すぎて効率的に小滴に霧化されない可能性がある。
【0105】
しばしばジプラシドンの粒径は比較的小さいことが望ましい。これにより、ポリマーによるジプラシドンの十分なコーティングが促進される。たとえば、一般にジプラシドン粒子は約10μm未満、好ましくは約5μm未満の体積平均直径をもつことが好ましい。
【0106】
溶剤は、下記の特性に基づいて選択される:(1)薬物は溶剤に不溶性であるか、またはわずかしか溶解しない;(2)ポリマーは溶剤に可溶性である;かつ(3)溶剤は比較的揮発性である。好ましい溶剤には、アルコール類、たとえばメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、およびブタノール;ケトン類、たとえばアセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン;エステル、たとえば酢酸エチルおよび酢酸プロピル;ならびに他の各種溶剤、たとえばアセトニトリル、塩化メチレン、トルエン、THF、環状エーテル、および1,1,1-トリクロロエタンが含まれる。好ましい溶剤はアセトンである。噴霧乾燥操作を実施できるのに十分なほどポリマーが溶解しうる限り、溶剤混合物および水との混合物も使用できる。場合により、噴霧液中のポリマーの溶解を補助するために、少量の水の添加が望まれることがある。
【0107】
噴霧乾燥して薬物粒子の周りにポリマーコーティングを形成することは当技術分野で周知であり、たとえばUSP No. 4,767,789、USP No. 5,013,537、および米国特許出願公開2002/0064108 A1に記載され、これらを本明細書に援用する。
【0108】
あるいは、回転円盤式アトマイザーを用いて薬物結晶の周りにポリマーをコーティングすることができる;USP No. 4,675,140に記載され、これを本明細書に援用する。
あるいは、高剪断ミキサーまたは流動床で沈殿防止用ポリマーを薬物粒子に噴霧することもできる。
【0109】
沈殿防止剤の量は広範に変更できる。一般に沈殿防止剤の量は、前記のように薬物のみを含む対照組成物と対比して薬物濃度を高めるのに十分でなければならない。溶解度改良形態と沈殿防止剤の重量比は、100〜0.01であってよい。沈殿防止剤がポリマーである場合、ポリマーと薬物の重量比が少なくとも0.33(少なくとも25重量%のポリマー)、より好ましくは少なくとも0.66(少なくとも40重量%のポリマー)、さらに好ましくは少なくとも1(少なくとも50重量%のポリマー)である場合に、一般に良好な結果が達成される。ただし、剤形の大きさを制限することが望まれるので、沈殿防止剤の量は最大の濃度上昇をもたらす量より少ない場合がある。
【0110】
持続放出手段
本発明の経口剤形は、ジプラシドンを持続放出する。ジプラシドンを持続放出するための手段は、薬物を持続的に送達できる、当技術分野で既知のいずれの剤形または剤形集合体であってもよい。剤形の例には、侵食性および非侵食性マトリックス持続放出剤形、浸透圧持続放出剤形、多粒子剤(multiparticulate)、および腸溶コーティングしたコアが含まれる。
【0111】
マトリックス持続放出剤形
1態様においては、ジプラシドンを侵食性および非侵食性のポリマーマトリックス持続放出剤形に取り込ませる。侵食性マトリックスとは、純水中で侵食性または膨潤性または溶解性であるという意味で、あるいは侵食または溶解を引き起こすのに十分なほどポリマーマトリックスをイオン化するための酸または塩基の存在を必要とするという意味で、水侵食性または水膨潤性または水溶性であることを意味する。水性使用環境と接触した際に、侵食性ポリマーマトリックスは水を吸収して水膨潤ゲルまたは”マトリックス”を形成し、これがジプラシドンを捕捉する。この水膨潤マトリックスは徐々に使用環境内で侵食、膨潤、崩壊、分散または溶解し、これにより使用環境へのジプラシドンの放出を制御する。そのような剤形の例は当技術分野で周知である。たとえばRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 第20版, 2000を参照。そのような剤形の例は、同一出願人による出願中の米国特許出願No.09/495,059(2000年1月31日出願)[仮特許出願No. 60/119,400(1999年2月10日出願)による優先権を主張]に開示され、その関連する開示内容を本明細書に援用する。他の例はUSP No. 4,839,177およびUSP No. 5,484,608に開示され、その関連する開示内容を本明細書に援用する。
【0112】
ジプラシドンを取り込ませる侵食性ポリマーマトリックスは、一般にジプラシドンと混合する一組の賦形剤として記載することができ、これは水性使用環境と接触した際に水を吸収して水膨潤ゲルまたは”マトリックス”を形成し、これが薬物を捕捉する。薬物放出は、多様な機序で起きる可能性がある:マトリックスが薬物粒子または顆粒の周りから崩壊または溶解する;あるいは吸収した水溶液に薬物が溶解し、錠剤、ビーズまたは顆粒状の剤形から拡散する。この水膨潤マトリックスの重要な成分は、水中で膨潤性、侵食性または可溶性のポリマーであり、これは一般にオスモポリマー(osmopolymer)、ヒドロゲルまたは水膨潤性ポリマーと記載される。そのようなポリマーは、線状、枝分かれまたは、架橋していてもよい。それらはホモポリマーまたはコポリマーであってよい。それらはビニル、アクリレート、メタクリレート、ウレタン、エステルおよびオキシドモノマーから誘導された合成ポリマーであってもよいが、最も好ましくはそれらは天然ポリマー、たとえば多糖類またはタンパク質の誘導体である。例示物質には、親水性ビニルおよびアクリルポリマー、多糖類、たとえばアルギン酸カルシウム、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)が含まれる。天然ポリマーの例には、下記のものが含まれる:天然多糖類、たとえばキチン、キトサン、デキストランおよびプルラン;アガールゴム、アラビアゴム、カラヤガム、ローカストビーンガム、トラガントゴム、カラギーナン、ガッチゴム(gum ghatti)、グァーガム、キサンタンガムおよびスクレログルカン;デンプン、たとえばデキストリンおよびマルトデキストリン;親水性コロイド、たとえばペクチン;ホスファチド、たとえばレシチン;アルギネート、たとえばアルギン酸アンモニウム、アルギン酸ナトリウム、カリウムまたはカルシウム、アルギン酸プロピレングリコール;ゼラチン;コラーゲン;ならびにセルロース系材料。”セルロース系材料”とは、糖反復単位上のヒドロキシル基の少なくとも一部をある化合物と反応させてエステル結合またはエーテル結合した置換基を形成したセルロース系ポリマーを意味する。たとえばセルロース系材料であるエチルセルロースは、エーテル結合したエチル置換基が糖反復単位に結合したものであり、一方、セルロース系材料であるセルロースアセテートは、エステル結合したアセテート置換基が糖反復単位に結合したものである。
【0113】
侵食性マトリックスとして好ましいクラスのセルロース系材料には、たとえば下記の水溶性および水侵食性セルロース材料が含まれる:エチルセルロース(EC)、メチルエチルセルロース(MEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、セルロースアセテート(CA)、セルロースプロピオネート(CPr)、セルロースブチレート(CB)、セルロースアセテートブチレート(CAB)、セルロースアセテートフタレート(CAP)、セルロースアセテートトリメリテート(CAT)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートトリメリテート(HPMCAT)、およびエチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)。特に好ましいクラスのそのようなセルロース系材料には、各種グレードの低粘度(MW 50,000ダルトン以下)および高粘度(MW 50,000ダルトンより大)HPMCが含まれる。市販の低粘度HPMCポリマーにはDow METHOCEL系列E5、E15LV、E50LVおよびK100LYが含まれ、一方、高粘度HPMCポリマーにはE4MCR、E10MCR、K4M、K15MおよびK100Mが含まれる;このグループのうち特に好ましいものはMETHOCEL(商標)K系列のものである。他のタイプの市販HPMCには、信越METOLOSE 90SH系列が含まれる。
【0114】
侵食性マトリックス材料の主な役割は、使用環境へのジプラシドンの放出速度を制御することであるが、本発明者らはマトリックス材料の選択がその剤形により達成される最大薬物濃度および高い薬物濃度の維持に大きな影響をもつ可能性があることを見いだした。1態様において、マトリックス材料は本明細書に定める沈殿防止用ポリマーである。
【0115】
侵食性マトリックス材料として有用な他の材料には下記のものが含まれるが、これらに限定されない:プルラン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、グリセロール脂肪酸エステル、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、エタクリル酸またはメタクリル酸のコポリマー(EUDRAGIT(登録商標)、Rohm America Inc.、ニュージャージー州ピスカッタウェイ)、ならびに他のアクリル酸誘導体、たとえばメタクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸(2-ジメチルアミノエチル)およびメタクリル酸(トリメチルアミノエチル)クロリドのホモポリマーおよびコポリマー。
【0116】
侵食性マトリックスポリマーは、医薬技術分野で既知の多様な添加剤および賦形剤をも含有することができ、これにはオスモポリマー、オスマゲン(osmagen)、溶解促進剤または溶解遅延剤、および剤形の安定性または加工性を向上させる賦形剤が含まれる。
【0117】
あるいは、持続放出手段は非侵食性マトリックス剤形であってもよい。そのような剤形において、溶解度改良形態ジプラシドンは不活性マトリックス中に分散している。この薬物は不活性マトリックスを通した拡散により放出される。不活性マトリックスとして適した材料の例には、不溶性プラスチック、たとえばエチレンと酢酸ビニルのコポリマー、アクリル酸メチル-メタクリル酸メチルコポリマー、ポリ塩化ビニル、およびポリエチレン;親水性ポリマー、たとえばエチルセルロース、セルロースアセテート、および架橋ポリビニルピロリドン(クロスポビドンとしても知られる);ならびに脂肪化合物、たとえばカルナウバワックス、ミクロクリスタリンワックス、およびトリグリセリドが含まれる。そのような剤形はさらにRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 第20版(2000)に記載されている。
【0118】
マトリックス持続放出剤形は、ジプラシドンと他の賦形剤を互いにブレンドし、次いでこのブレンドを圧縮力により形成される錠剤、カプレット、丸剤その他の剤形に成形することにより製造できる。そのような圧縮剤形は、医薬剤形の加工に用いられる多様ないずれかのプレスを用いて成形できる。例には、シングルパンチプレス、回転式錠剤プレス、および多層回転式錠剤プレスが含まれ、すべて当技術分野で知られている。たとえばRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 第20版, 2000を参照。圧縮剤形は、丸形、卵形、長楕円形、円筒形、または三角形を含めた、いかなる形状であってもよい。圧縮剤形の上面および下面は平坦、丸、凹形または凸形であってよい。
【0119】
圧縮により成形した場合、剤形は好ましくは少なくとも5キロポンド(kp)/cm2、より好ましくは少なくとも7 kp/cm2の”強度”をもつ。ここで”強度”は、前記材料から形成した錠剤を破壊するのに必要な破壊力(錠剤”硬度”としても知られる)をその力に対する法面の最大断面積で割ったものである。破壊力は、Schleuniger錠剤硬度試験機6D型を用いて測定できる。この強度を達成するのに必要な圧縮力は錠剤のサイズに依存するが、一般に5 kpより大きいであろう。脆性は、剤形の表面摩擦抵抗の周知の尺度であり、剤形を標準撹拌処理した後の重量損失%を測定する。0.8〜1.0%の脆性値が許容上限をなすと考えられる。約5kp/cm2より大きな強度をもつ剤形、約0.5%未満の脆性をもつ剤形は、一般に強靭である。
【0120】
マトリックス持続放出剤形を製造するための他の方法は医薬技術分野で周知である。たとえばRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 第20版, 2000を参照。
浸透圧持続放出剤形
あるいは、ジプラシドンを浸透圧持続放出剤形に取り込ませることができる。そのような剤形は少なくとも2つの構成要素をもつ:(a)浸透圧剤およびジプラシドンを含有するコア;ならびに(b)コアを囲む透水性、非溶解性かつ非侵食性のコーティング:このコーティングは水性使用環境からコアへの水の流入を制御し、これによりコアの一部または全部を使用環境へ押し出すことにより薬物を放出する。この剤形のコアに含まれる浸透圧剤は、水膨潤性親水性ポリマーであってもよく、あるいはオスモゲン(osmogen)(オスマゲント(osmagent)としても知られる)であってもよい。コーティングは、好ましくはポリマー系で透水性のものであり、予め形成した、またはin situで形成される少なくとも1つの送達口をもつ。そのような剤形の例は当技術分野で周知である。たとえばRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 第20版, 2000を参照。そのような剤形の例は、USP No. 6,706,283に開示され、その関連する開示内容を本明細書に援用する。
【0121】
浸透圧持続放出剤形のコアは、ジプラシドンのほかに所望により”浸透圧剤”を含む。”浸透圧剤”とは、水性使用環境から剤形のコアへ水を輸送する推進力を形成するいずれかの物質を意味する。浸透圧剤の例は、水膨潤性親水性ポリマーおよびオスモゲン(またはオスマゲン)である。たとえばコアは、しばしば”オスモポリマー”および”ヒドロゲル”と呼ばれる水膨潤性親水性ポリマー(イオン性および非イオン性の両方とも)を含有することができる。コア内に存在する水膨潤性親水性ポリマーの量は、約5〜約80重量%、好ましくは10〜50重量%であってよい。例示物質には下記のものが含まれる:親水性ビニルおよびアクリルポリマー、多糖類、たとえばアルギン酸カルシウム、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリ(メタクリル酸2-ヒドロキシエチル)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリビニルピロリドン(PVP)、および架橋PVP、ポリビニルアルコール(PVA)、PVA/PVPコポリマー、および疎水性モノマー、たとえばメタクリル酸メチル、酢酸ビニルなどを含むPVA/ PVPコポリマー、大きなPEOブロックを含む親水性ポリウレタン、クロスカルメロースナトリウム、カラギーナン、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびカルボキシエチルセルロース(CEC)、アルギン酸ナトリウム、ポリカルボフィル(polycarbophil)、ゼラチン、キサンタンゴム、ならびにグリコール酸デンプンナトリウム。他の物質には、相互貫通した網状構造のポリマーを含むヒドロゲルが含まれ、これらは付加重合または重縮合により製造でき、その成分は上記の親水性モノマーおよび疎水性モノマーを含むことができる。水膨潤性親水性ポリマーとして用いる好ましいポリマーには、PEO、PEG、PVP、クロスカルメロースナトリウム、HPMC、グリコール酸デンプンナトリウム、ポリアクリル酸、ならびにその架橋型および混合物が含まれる。
【0122】
コアは、オスモゲン(またはオスマゲント)をも含むことができる。コア内に存在するオスモゲンの量は、約2〜約70重量%、好ましくは10〜50重量%であってよい。代表的なクラスの適切なオスモゲンは、水を吸収することにより周囲のコーティングのバリヤーを越えた浸透圧勾配を発生しうる水溶性有機酸、塩類および糖類である。代表的な有用なオスモゲンには、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、硫酸カリウム、炭酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、硫酸リチウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、マンニトール、キシリトール、尿素、ソルビトール、イノシトール、ラフィノース、ショ糖、グルコース、フルクトース、乳糖、クエン酸、コハク酸、酒石酸、およびその混合物が含まれる。特に好ましいオスモゲンは、グルコース、乳糖、ショ糖、マンニトール、キシリトールおよび塩化ナトリウムである。
【0123】
コアは、剤形の性能を向上させ、または安定性、打錠性もしくは加工性を高める、多様な添加剤および賦形剤を含有することができる。そのような添加剤および賦形剤には、打錠助剤、界面活性剤、水溶性ポリマー、pH調節剤、充填剤、結合剤、色素、崩壊剤、酸化防止剤、滑沢剤および着香剤が含まれる。そのような成分の例は下記のものである:微結晶性セルロース;酸の金属塩、たとえばステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、およびステアリン酸亜鉛;pH調節剤、たとえば緩衝剤、有機酸および有機酸塩、ならびに有機塩基および無機塩基;脂肪酸、炭化水素および脂肪アルコール、たとえばステアリン酸、パルミチン酸、流動パラフィン、ステアリルアルコール、およびパルミトール;脂肪酸エステル、たとえば(モノ-およびジ-)ステアリン酸グリセリル、トリグリセリド、(パルミチン酸ステアリン酸)グリセリルエステル、ソルビタンエステル、たとえばモノステアリン酸ソルビタン、モノステアリン酸サッカロース、モノパルミチン酸サッカロース、およびステアリン酸フマル酸ナトリウム;ポリオキシエチレンソルビタンエステル;界面活性剤、たとえばアルキルスルファート、たとえばラウリル硫酸ナトリウムおよびラウリル硫酸マグネシウム;ポリマー、たとえばポリエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシプロピレンエーテル、ならびにそれらのコポリマー、ならびにポリテトラフルオロエチレン;ならびに無機物質、たとえばタルクおよび二塩基性リン酸カルシウム;シクロデキストリン;糖類、たとえば乳糖およびキシリトール;ならびにグリコール酸デンプンナトリウム。崩壊剤の例は、グリコール酸デンプンナトリウム(たとえばExplotab(商標))、微結晶性セルロース(たとえばAvicel(商標))、微結晶性ケイ化セルロース(たとえばProSolv(商標))、クロスカルメロースナトリウム(たとえばAc-Di-Sol(商標))である。
【0124】
浸透圧剤形の1態様は、ジプラシドンを含有する1以上の薬物層、および水膨潤性ポリマーを含む膨潤層から構成され、薬物層と膨潤層を囲むコーティングを備えている。各層は他の賦形剤、たとえば打錠助剤、オスマゲント、界面活性剤、水溶性ポリマーおよび水膨潤性ポリマーを含むことができる。
【0125】
そのような浸透圧送達剤形は、下記を含めた多様な幾何学的形状に加工できる:二層:この場合、コアは互いに近接した薬物層と膨潤層を含む;三層:この場合、コアは2つの薬物層に”挟まれた”膨潤層を含む;および同心円:この場合、コアは薬物層で囲まれた中心の膨潤組成物を含む。
【0126】
そのような錠剤のコーティングは、水に対しては透過性であるが、内部に収容された薬物および賦形剤に対しては実質的に不透過性である、膜で構成される。コーティングは、薬物組成物を送達するために薬物含有層(1以上)と接続した1以上の出口通路または口を含む。コアの薬物含有層(1以上)は薬物組成物(所望によりオスマゲントおよび親水性水溶性ポリマーを含む)を含み、一方、膨潤層は膨張性ヒドロゲルで構成され、追加の浸透圧剤を含有し、または含有しない。
【0127】
この錠剤は、水性媒質中に置かれると膜を通して水を吸収し、組成物を投薬可能な水性組成物にし、ヒドロゲル層を膨張させて薬物含有組成物に押し付け、組成物を出口通路から押し出す。組成物は膨潤して、薬物を通路から押し出すのを補助することができる。このタイプの送達系からは、薬物を出口通路から押し出された組成物中に溶解または分散した形で送達することができる。
【0128】
薬物送達速度は、コーティングの透過性および厚さ、薬物含有層の浸透圧、ヒドロゲル層の親水度、ならびに剤形の表面積などの要因により制御される。コーティングの厚さが大きくなると放出速度が低下するが、以下のいずれも放出速度を高めることは当業者に自明であろう:コーティングの透過性の増大;ヒドロゲル層の親水性の増大;薬物含有層の浸透圧の増大;または剤形の表面積の増大。
【0129】
ジプラシドンのほかに薬物含有組成物の調製に有用な物質の例には、HPMC、PEOおよびPVP、ならびに他の薬学的に許容できるキャリヤーが含まれる。さらに、オスマゲント、たとえば糖類または塩類、特にショ糖、乳糖、キシリトール、マンニトール、または塩化ナトリウムを添加してもよい。ヒドロゲル層の形成に有用な物質には、CMCナトリウム、PEO、ポリ(アクリル酸)、(ポリアクリル酸)ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、グリコール酸デンプンナトリウム、PVP、架橋PVP、および他の高分子量親水性物質が含まれる。特に有用なものは、平均分子量約5,000,000〜約7,500,000ダルトンのPEOポリマーである。
【0130】
二層形状の場合、送達口(1以上)または出口通路(1以上)は錠剤の薬物組成物を含有する側にあってもよく、あるいは薬物層および膨潤層の両方が剤形の外部と接続するように、錠剤の両側、または錠剤の端にあってもよい。出口通路(1以上)は、機械的手段で、またはレーザー穿孔により、または錠剤圧縮中に特殊な工具を用いて錠剤にコーティングしにくい領域を形成することにより、または他の手段で作成できる。
【0131】
浸透圧剤形は、USP 3,845,770のように、半透膜コーティングで囲まれた均質なコアを備えたものとして製造することもできる。ジプラシドンを錠剤コアに取り込ませ、半透膜コーティングを一般的な錠剤コーティング法により、たとえばパンコーターを用いて施すことができる。次いで、レーザーまたは機械的手段でコーティングに穿孔することにより、このコーティングに薬物送達通路を形成することができる。あるいは、コーティングの一部を破断することにより、または前記のように錠剤にコーティングしにくい領域を形成することにより、通路を形成できる。
【0132】
浸透圧剤形の特に有用な態様は下記よりなる:(a)下記を含む単層圧縮コア:(i)ジプラシドン、(ii)ヒドロキシエチルセルロース、および(iii)オスマゲント、この場合、ヒドロキシエチルセルロースはコア内に約2.0〜約35重量%存在し、オスマゲントは約15〜約70重量%存在する;(b)コアを囲む透水性かつ薬物不透過性の層;ならびに(c)層(b)内に、薬物を錠剤の周囲の流体環境へ送達するための少なくとも1つの通路。好ましい態様において本発明の剤形は、表面積-対-体積比(水膨潤した錠剤の)が0.6 mm-1より大きく、より好ましくは1.0 mm-1より大きくなるような形状をもつ。コアを流体環境と接続する通路は錠剤バンド領域に沿って位置することが好ましい。特に好ましい形状は長楕円形であり、この場合、錠剤の形状を規定する錠剤加工軸、すなわち主軸と副軸の比は1.3〜3;より好ましくは1.5〜2.5である。1態様において、ジプラシドンとオスマゲントの組合わせは、約100〜約200 MPaの平均延性、約0.8〜約2.0 MPaの平均引張強さ、および約0.2未満の平均脆性破壊指数をもつ。単層コアは、所望により崩壊剤、生物学的利用能増強用の添加剤、および/または薬学的に許容できる賦形剤、キャリヤーもしくは希釈剤を含有してもよい。そのような剤形は、同一出願人による出願中の米国仮特許出願No. 10/352,283、タイトル”浸透圧送達系”に、より詳細に開示され、その開示内容を本明細書に援用する。
【0133】
そのような浸透圧剤形の作動に際して押し出された流体中にジプラシドン粒子が同伴されることが、きわめて望ましい。粒子が良好に同伴されるために、剤形は粒子が錠剤コア内で沈降する状況になる前に良好に分散することが好ましい。これを達成するための1手段は、圧縮コアをその粒子成分に破断する作用をもつ崩壊剤の添加による。標準的な崩壊剤の例には、グリコール酸デンプンナトリウム(たとえばExplotab(商標)CLV)、微結晶性セルロース(たとえばAvicel(商標))、微結晶性ケイ化セルロース(たとえばProSolv(商標))、クロスカルメロースナトリウム(たとえばAc-Di-Sol(商標))などの物質、および当業者に既知の他の崩壊剤が含まれる。個々の製剤によっては、ある崩壊剤が他のものより良好に作動する。幾つかの崩壊剤は水で膨潤するのに伴ってゲル化して、これにより剤形からの薬物送達を阻害する傾向がある。非ゲル化性、非膨潤性の崩壊剤の方が、コアに水が進入するのに伴ってコア内の粒子をより速やかに分散させる。好ましい非ゲル化性、非膨潤性の崩壊剤は、樹脂、好ましくはイオン交換樹脂である。好ましい樹脂は、Amberlite(商標)IRP 88(Rhom and Haasから入手可能、ペンシルベニア州フィラデルフィア)である。崩壊剤を用いる場合、これはコア組成物の約1〜25%の量で存在する。
【0134】
薬物粒子を通路(1以上)(たとえばオリフィス)から送達できるようになる前はそれらを剤形の内部に分散させて保持しておくために、水溶性ポリマーを添加する。沈降を防止するためには高粘度ポリマーが有用である。ただし、ポリマーが薬物粒子と一緒に通路から押し出されるのは、比較的低い圧力下である。一定の押出圧力では、押出速度は一般に粘度の増大に伴って低下する。ある種のポリマーは、薬物粒子との組合わせで水を含む高粘度溶液を形成するが、なお比較的低い力で錠剤から押し出すことができる。これに対し、低い重量平均分子量(<約300,000)をもつポリマーは、粒子が沈降するため、完全に送達できるのに十分なほど粘稠な溶液を錠剤コア内で形成しない。ポリマーを添加せずにそのような剤形を製造すると粒子の沈降が問題となり、粒子がコア内で沈降しないように錠剤を常に揺動していない限り薬物送達が低下する。沈降速度が増大するほど粒子が大型および/または高密度である場合にも、沈降が問題となる。
【0135】
そのような浸透圧剤形に好ましい水溶性ポリマーは、薬物と相互作用しないものである。非イオン性ポリマーが好ましい。高粘度の溶液を形成し、なおかつ低い圧力で押出し可能な非イオン性ポリマーの例は、Natrosol(商標)250H(高分子量ヒドロキシエチルセルロース、Hercules Incorporated、Aqualon Divisionから入手可能、デラウェア州ウィルミントン;約100万ダルトンのMW、および約3,700の重合度)である。Natrosol(商標)250Hは、オスマゲントと組み合わせた場合、コアの約3重量%という低濃度で有効な薬物送達をもたらす。Natrosol(商標)250H NFは、熱水または冷水に可溶性の高粘度グレードの非イオン性セルロースエーテルである。Brookfield LVT(30 rpm)を用いた25℃での1% Natrosol(商標)250H溶液の粘度は、約1,500〜約2,500 cpsである。
【0136】
これらの単層浸透圧錠に用いるのに好ましいヒドロキシエチルセルロースポリマーは、約300,000〜約1500万の重量平均分子量をもつ。ヒドロキシエチルセルロースポリマーは、一般にコア内に約2.0〜約35重量%の量で存在する。
【0137】
浸透圧剤形の他の例は、浸透圧カプセル剤である。カプセル外殻、またはカプセル外殻の一部が、半透性であってもよい。カプセルに、ジプラシドン、水を吸収して浸透圧をもたらす賦形剤、および/または水膨潤性ポリマー、または所望により可溶化用賦形剤からなる、粉末または液体を充填できる。カプセル剤コアは、前記の二層、三層または同心円形状と同様に、二層または多層組成をもつように作成できる。
【0138】
本発明に有用な他のクラスの浸透圧剤形には、EP 378 404(本明細書に援用する)に記載された膨潤性コーティング錠が含まれる。膨潤性コーティング錠は、溶解度改良形態薬物および膨潤性物質(好ましくは親水性ポリマー)を含む錠剤コアを含み、これは貫通した孔またはポアを含む膜でコーティングされており、これらを通して水性使用環境で親水性ポリマーが押し出されて薬物組成物を運び出すことができる。あるいは膜は高分子量または低分子量の水溶性”ポロシゲン(porosigen)”を含有することができる。ポロシゲンは水性使用環境で溶解してポアを生成し、これを通して親水性ポリマーおよび薬物を押し出すことができる。ポロシゲンの例は、水溶性ポリマー、たとえばHPMC、PEG、および低分子量化合物、たとえばグリセロール、ショ糖、グルコースおよび塩化ナトリウムである。さらに、レーザー、機械的手段または他の手段を用いてコーティングに穿孔することにより、コーティングにポアを形成できる。このクラスの浸透圧剤形においては、膜材料はいずれかのフィルム形成性ポリマーを含むことができ、これには水に対して透過性または不透過性のポリマーが含まれる。ただし、水を進入させかつ薬物を放出するために、錠剤コア上に沈着した膜は多孔質であり、または水溶性ポロシゲンを含有し、または肉眼視できる孔をもつ。このクラスの持続放出剤形の態様は、EP 378 404 A2に記載されるように多層であってもよい。
【0139】
本発明の浸透圧持続放出剤形は、コーティングも含む。浸透圧剤形のためのコーティングに対する本質的な条件は、それが透水性であり、薬物送達のための少なくとも1つの口をもち、薬物配合物の放出中は不溶性および非侵食性であって、これにより、主にコーティング材料自体を通した透過による送達と異なり薬物は実質的に完全に送達口またはポアを通して送達されることである。”送達口”とは、機械的に、レーザー穿孔により、ポア形成により、コーティングプロセス中、または使用中にin situで、または使用中に破裂により形成される、いずれかの通路、開口またはポアを意味する。コーティングは、コア重量に対して約5〜30重量%、好ましくは10〜20重量%の量で存在すべきである。
【0140】
好ましい形態のコーティングは、使用前または使用中に形成された口(1以上)をもつ半透性ポリマー膜である。そのようなポリマー膜の厚さは、約20〜800μm、好ましくは100〜500μmである。送達口(1以上)は一般に直径0.1〜3000μmまたはそれ以上、好ましくは50〜3000μm程度のサイズでなければならない。そのような口(1以上)は、コーティング後に機械的穿孔またはレーザー穿孔により形成でき、あるいはin situでコーティングの破裂により形成できる;そのような破裂は、比較的小さな脆弱部分を意図的にコーティングに組み込むことにより制御できる。送達口は、in situで水溶性物質のプラグの侵食により、またはコアの窪みを覆うより薄いコーティング部分の破裂により形成することもできる。さらに送達口は、USP No. 5,612,059および5,698,220(それらの開示内容を本明細書に援用する)に開示されるタイプの非対称膜コーティングの場合のように、コーティングに際して形成することができる。
【0141】
送達口をin situでコーティングの破裂により形成する場合、特に好ましい態様は本質的に同一または異なる組成のビーズの集合体である。そのようなビーズから、薬物は主にコーティングの破裂後に放出され、破裂後のそのような放出は緩徐または比較的急激であってよい。ビーズの集合体が異なる組成をもつ場合、その組成は、ビーズが投与後に異なる時点で破裂して薬物の全放出が目的期間中持続するように選択できる。
【0142】
コーティングは、緻密、微孔質、または緻密な領域が厚い多孔質領域で支持された”非対称”であってもよい:たとえばUSP No. 5,612,059および5,698,220に開示。コーティングが緻密である場合、コーティングは透水性材料から構成される。コーティングが多孔質である場合、コーティングは水に対して透過性または不透過性の材料から構成することができる。コーティングが多孔質の水不透過性材料から構成される場合、水はコーティングのポアを通して液体または蒸気として透過する。
【0143】
緻密なコーティングを用いる浸透圧剤形の例はUSP No. 3,995,631および3,845,770に含まれ、その緻密コーティングに関連する開示内容を本明細書に援用する。そのような緻密コーティングは外部の流体、たとえば水に対して透過性であり、これらの特許に述べられた材料および当技術分野で既知の他の透水性ポリマーから構成できる。
【0144】
膜はUSP No. 5,654,005および5,458,887に開示されるように多孔質であってもよく、耐水性ポリマーから形成することすらできる。USP No. 5,120,548には、水不溶性ポリマーおよび浸出性水溶性添加剤の混合物からコーティングを形成するための他の適切な方法が記載され、その関連する開示内容を本明細書に援用する。多孔質膜は、USP No. 4,612,008に開示されるポア形成剤の添加により形成することもでき、その関連する開示内容を本明細書に援用する。
【0145】
さらに蒸気透過性コーティングは、緻密な場合は本質的に水不透過性であるきわめて疎水性の材料、たとえばポリエチレンまたはポリビニリデンジフルオリドからでも、それらのコーティングが多孔質である限り形成できる。
【0146】
コーティングの形成に有用な材料には、生理関連pHで透水性および水不溶性である、あるいは架橋などの化学変化によって水不溶性にしやすい、多様なグレードのアクリル類化合物、ビニル類、エーテル類、ポリアミド、ポリエステルおよびセルロース誘導体が含まれる。
【0147】
コーティングの形成に有用な適切なポリマー(または架橋型)の具体例には、下記のものが含まれる:可塑化、非可塑化および強化したセルロースアセテート(CA)、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、CAプロピオネート、セルロースナイトレート、セルロースアセテートブチレート(CAB)、CAエチルカルバメート、CAP、CAメチルカルバメート、CAスクシネート、セルロースアセテートトリメリテート(CAT)、CAジメチルアミノアセテート、CAエチルカーボネート、CAクロロアセテート、CAエチルオキサレート、CAメチルスルホネート、CAブチルスルホネート、CA p-トルエンスルホネート、寒天アセテート、トリ酢酸アミロース、酢酸ベータグルカン、トリ酢酸ベータグルカン、アセトアルデヒドジメチルアセテート、ローカストビーンガムのトリアセテート、ヒドロキシル化エチレン-酢酸ビニル、ならびにエチルセルロース、PEG、PPG、PEG/PPGコポリマー、PVP、HEC、HPC、CMC、CMEC、HPMC、HPMCP、HPMCAS、HPMCAT、ポリ(アクリル酸)およびエステル、ポリ(メタクリル酸)およびエステル、ならびにそのコポリマー、デンプン、デキストラン、デキストリン、キトサン、コラーゲン、ゼラチン、ポリアルケン、ポリエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリハロゲン化ビニル、ポリビニルエステルおよびエーテル、天然ワックスおよび合成ワックス。
【0148】
好ましいコーティング組成物は、セルロース系ポリマー、特にセルロースエーテル、セルロースエステル、およびセルロースエステル-エーテル、すなわちエステル置換基とエーテル置換基の混合物をもつセルロース誘導体を含む。
【0149】
他の好ましいクラスのコーティング材料は、ポリ(アクリル酸)およびエステル、ポリ(メタクリル酸)およびエステル、ならびにそのコポリマーである。
より好ましいコーティング組成物は、セルロースアセテートを含む。さらに好ましいコーティング組成物は、セルロース系ポリマーおよびPEGを含む。最も好ましいコーティング組成物は、セルロースアセテートおよびPEGを含む。
【0150】
コーティング操作は常法により、一般にコーティング材料を溶剤に溶解または懸濁し、次いで浸漬、噴霧コーティング法、または好ましくはパンコーティング法でコーティングすることにより行われる。好ましいコーティング液は、5〜15重量%のポリマーを含有する。前記のセルロース系ポリマーに有用な一般的溶剤には、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、メチルイソブチルケトン、メチルプロピルケトン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルアセテート、二塩化メチレン、二塩化エチレン、二塩化プロピレン、ニトロエタン、ニトロプロパン、テトラクロロエタン、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、水、およびその混合物が含まれる。ポア形成剤および非溶剤(たとえば水、グリセロールおよびエタノール)または可塑剤(たとえばフタル酸ジエチル)も、ポリマーが噴霧温度で溶解性を維持する限り、任意量で添加できる。ポア形成剤およびコーティング形成におけるそれらの使用は、USP No. 5,612,059に記載され、その関連する開示内容を本明細書に援用する。
【0151】
コーティングは疎水性微孔質層であってもよく、その場合、ポアは実質的にガスで満たされ、水性媒質で濡れてはいないが、USP No. 5,798,119に記載されるように水蒸気に対して透過性である;その関連する開示内容を本明細書に援用する。そのような疎水性であるが水蒸気透過性のコーティングは、一般に疎水性ポリマー、たとえばポリアルケン、ポリアクリル酸誘導体、ポリエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリハロゲン化ビニル、ポリビニルエステルおよびエーテル、天然ワックスおよび合成ワックスから構成される。特に好ましい疎水性微孔質コーティング材料には、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデンおよびポリテトラフルオロエチレンが含まれる。そのような疎水性コーティングは、既知の相反転法により、蒸気急冷、液体急冷、熱的方法を用いて、コーティングからの可溶性物質の浸出、またはコーティング粒子の焼結により、形成できる。熱的方法では、潜溶剤中のポリマー溶液を冷却工程で液-液相分離させる。溶剤の蒸発が阻止されなければ、得られる膜は一般に多孔質であろう。そのようなコーティング法はUSP No. 4,247,498、4,490,431および4,744,906に開示される方法により実施でき、その開示内容も本明細書に援用する。
【0152】
浸透圧持続放出剤形は、医薬技術分野で既知の方法を用いて製造できる。たとえばRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 第20版, 2000を参照。
多粒子剤
本発明の剤形は、多粒子剤の使用によってもジプラシドンの持続放出をもたらすことができる。多粒子剤は、一般に直径約10μm〜約2mm、より一般的には約50μm〜1mmのサイズ範囲の多数の粒子または顆粒を含む剤形を表わす。そのような多粒子剤は、たとえばカプセル、たとえばゼラチンカプセル、または水溶性ポリマー、たとえばHPMCAS、HPMCもしくはデンプンで作成したカプセルに充填し;液体中の懸濁液またはスラリーとして投与し;あるいは当技術分野で既知の圧縮その他の方法で錠剤、カプレットまたは丸剤に成形することができる。
【0153】
そのような多粒子剤は、いずれか既知の方法、たとえば湿式および乾式造粒法、押出し/球状化(spheronization)、ローラー圧縮、溶融凝固(melt-congealing)、またはシードコアの噴霧コーティングにより製造できる。たとえば湿式および乾式造粒法では、ジプラシドンおよび所望により賦形剤を含む組成物を造粒して、目的サイズの多粒子剤を形成することができる。多粒子剤の加工および形成を補助するために、他の賦形剤、たとえば結合剤(たとえば微結晶性セルロース)をこの組成物とブレンドしてもよい。湿式造粒の場合、適切な多粒子剤の形成を補助するために、微結晶性セルロースなどの結合剤を造粒用流体に含有させてもよい。たとえばRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 第20版, 2000を参照。
【0154】
いずれの場合も、得られる粒子自体が多粒子剤を構成することができ、あるいは患者への投与を補助するために、それらを各種のフィルム形成性材料、たとえば腸溶ポリマーまたは水膨潤性もしくは水溶性ポリマーでコーティングしてもよく、あるいはそれらを他の賦形剤またはビヒクルと組み合わせてもよい。
【0155】
腸溶コーティングしたコア
本発明の持続放出手段は、コアが胃内で溶解しないように、腸溶コーティングでコーティングしたコアを含むことができる。コアは持続放出コア、たとえばマトリックス錠または浸透圧錠であってもよく、あるいは遅延バーストする即時放出コアであってもよい。”腸溶コーティング”とは、約4未満のpHで無傷のままであって溶解しない耐酸性コーティングを意味する。腸溶コーティングは、コアが胃内で溶解しないようにコアを囲む。腸溶コーティングは、腸溶コーティング用ポリマーを含むことができる。腸溶コーティング用ポリマーは、一般に約3〜5のpKaをもつポリ酸である。腸溶コーティング用ポリマーの例には、下記のものが含まれる:セルロース誘導体、たとえばセルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、セルロースアセテートスクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース、メチルセルロースフタレート、およびエチルヒドロキシセルロースフタレート;ビニルポリマー、たとえばポリ酢酸フタル酸ビニル、ポリ酢酸酪酸ビニル、酢酸ビニル-無水マレイン酸コポリマー;ポリアクリレートおよびポリメタクリレート、たとえばアクリル酸メチル-メタクリル酸コポリマー、メタクリレート-メタクリル酸-アクリル酸オクチルコポリマー、ならびにスチレン-マレイン酸モノエステルコポリマー。これらを単独で、もしくは組み合わせて、または上記以外のポリマーと一緒に使用できる。
【0156】
1クラスの好ましいコーティング材料は、薬学的に許容できるメタクリル酸コポリマー、すなわちアニオン性で、メタクリル酸およびメタクリル酸メチルをベースとし、たとえば遊離カルボキシル基:メチルエステル化カルボキシル基の比率1:>3、たとえば約1:1〜1:2、および平均分子量135000をもつコポリマーである。これらのコポリマーのうちあるものは、たとえばpH 5.5以上の水性媒質中で可溶性の腸溶ポリマーとして知られ、販売されている:たとえば市販のEUDRAGIT腸溶ポリマー、たとえばEudragit L 30、メタクリル酸ジメチルアミノエチルから合成されるカチオンポリマー、Eudragit SおよびEudragit NE。
【0157】
コーティングは、一般的な可塑剤を含有してもよく、これにはフタル酸ジブチル;セバシン酸ジブチル;フタル酸ジエチル;フタル酸ジメチル;クエン酸トリエチル;安息香酸ベンジル;脂肪酸のブチルおよびグリコールエステル;鉱油;オレイン酸;ステアリン酸;セチルアルコール;ステアリルアルコール;ヒマシ油;トウモロコシ油;ヤシ油;およびショウノウ油;ならびに他の賦形剤、たとえば粘着防止剤、流動促進剤などが含まれる。可塑剤としては、クエン酸トリエチル、ヤシ油およびセバシン酸ジブチルが特に好ましい。一般にコーティングは、約0.1〜約25重量%の可塑剤、および約0.1〜約10重量%の粘着防止剤を含有することができる。
【0158】
腸溶コーティングは、不溶性物質、たとえばアルキルセルロース誘導体、たとえばエチルセルロース、架橋ポリマー、たとえばスチレン-ジビニルベンゼンコポリマー、ヒドロキシル基をもつ多糖類、たとえばデキストラン、二官能性架橋剤(たとえばエピクロロヒドリン、ジピクロロヒドリン、1,2-、3,4-ジエポキシブタンなど)で処理したセルロース誘導体をも含むことができる。腸溶コーティングは、デンプンおよび/またはデキストリンをも含むことができる。
【0159】
腸溶コーティングは、腸溶コーティング材料を適切な溶剤に溶解または懸濁することによりコアに施すことができる。コーティングを施す際に用いるのに適した溶剤の例には、下記のものが含まれる:アルコール類、たとえばメタノール、エタノール、プロパノールの異性体、およびブタノールの異性体;ケトン類、たとえばアセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン;炭化水素、たとえばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、およびオクタン;エーテル類、たとえばメチルt-ブチルエーテル、エチルエーテルおよびエチレングリコールモノメチルエーテル;クロロカーボン、たとえばクロロホルム、二塩化メチレンおよび二塩化エチレン;テトラヒドロフラン;ジメチルスルホキシド;N-メチルピロリジノン;アセトニトリル;水;ならびにその混合物。
【0160】
コーティングは常法により、たとえばパンコーター、回転式造粒機、および流動床コーター、たとえばトップスプレー、タンジェンシャルスプレーまたはボトムスプレー(Wurster coating)、最も好ましくは後者により実施できる。
【0161】
好ましい1コーティング液は、約57.5重量%の水中における約40重量%のEudragit L30-D55および2.5重量%のクエン酸トリエチルからなる。この腸溶コーティング液をパンコーターによりコアにコーティングすることができる。
【0162】
即時放出
本発明の持続放出経口剤形は、投与後2時間で少なくとも一部のジプラシドンを使用環境へ放出するが、この持続放出剤形は即時放出部分をも含むことができる。”即時放出部分”とは、持続放出手段とは別個の部分が投与後2時間以内に胃内使用環境へ放出されることを広く意味する。使用環境への”投与”は、インビボ使用環境が消化管である場合、経口摂取もしくは嚥下による送達、または剤形送達のためのこれらに類する他の手段を意味する。使用環境がインビトロである場合、”投与”は、剤形をインビトロ試験媒質へ配置または送達することを表わす。本発明の剤形は、胃内使用環境へ導入した後2時間以内に、剤形の即時放出部分に最初に存在するジプラシドンのうち少なくとも70重量%を放出することができる。好ましくは、本発明の剤形は、胃内使用環境へ剤形を投与した後、剤形の即時放出部分に最初に存在する薬物のうち少なくとも80重量%を最初の2時間で、最も好ましくは少なくとも90重量%を最初の2時間で放出する。薬物の即時放出は医薬技術分野で既知のいずれかの手段で達成でき、これには即時放出コーティング、即時放出層、および即時放出多粒子剤または顆粒剤が含まれる。
【0163】
薬物を即時放出するための医薬技術分野で既知の手段は実質的にいずれも、本発明の剤形に使用できる。1態様において、即時放出部分のジプラシドンは、持続放出手段を囲む即時放出コーティングの形である。即時放出部分の薬物は、水溶性または水分散性ポリマー、たとえばHPC、HPMC、HEC、PVPなどと組み合わせることができる。コーティングは溶液型コーティング法、粉末コーティング法、およびホットメルトコーティング法により形成でき、これらはすべて当技術分野で周知である。溶液型の方法では、まず溶剤、薬物、コーティングポリマーおよび所望によりコーティング添加剤を含む溶液または懸濁液を調製することにより、コーティングを形成する。好ましくは、薬物をコーティング溶剤に懸濁させる。コーティング材料はコーティング溶剤に完全に溶解し、あるいはエマルションもしくは懸濁液またはその中間として単に溶剤に分散していてもよい。水性ラテックス分散液を含めたラテックス分散液は、コーティング液として使用できるエマルションまたは懸濁液の具体例である。コーティング液に用いる溶剤は、薬物と反応せず、または薬物を分解しないという意味で、不活性でなければならず、かつ医薬的に許容できなければならない。1態様において、溶剤は室温で液体である。好ましくは、溶剤は揮発性溶剤である。”揮発性溶剤”とは、その物質が周囲圧力で約150℃より低い沸点をもつことを意味するが、より高い沸点をもつ溶剤を少量用いてもなお許容できる結果を得ることができる。
【0164】
腸溶コーティングした持続放出コアにコーティングを施す際に用いるのに適した溶剤の例には、下記のものが含まれる:アルコール類、たとえばメタノール、エタノール、プロパノールの異性体、およびブタノールの異性体;ケトン類、たとえばアセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン;炭化水素、たとえばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、オクタンおよび鉱油;エーテル類、たとえばメチルt-ブチルエーテル、エチルエーテルおよびエチレングリコールモノメチルエーテル;クロロカーボン、たとえばクロロホルム、二塩化メチレンおよび二塩化エチレン;テトラヒドロフラン;ジメチルスルホキシド;N-メチルピロリジノン;アセトニトリル;水;ならびにその混合物。
【0165】
コーティング用配合物は、目的とする即時放出特性を促進する添加剤、あるいはコーティングの付与を容易にし、または耐久性もしくは安定性を改善する添加剤を含有することもできる。添加剤のタイプには、可塑剤、ポア形成剤、および流動促進剤が含まれる。本発明の組成物に用いるのに適したコーティング添加剤の例には、下記のものが含まれる:可塑剤、たとえば鉱油、ワセリン、ラノリンアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、クエン酸トリエチル、ソルビトール、トリエタノールアミン、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、ヒマシ油、トリアセチン、および当技術分野で既知の他の物質;乳化剤、たとえばポリソルベート-80;ポア形成剤、たとえばポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース;ならびに流動促進剤、たとえばコロイド状二酸化ケイ素、タルクおよびトウモロコシデンプン。1態様においては、薬物を市販のコーティング用配合物、たとえばOpadry(登録商標)clear(Colorcon Inc.から入手可能、ペンシルベニア州ウェストポイント)に懸濁させる。コーティングは常法により、一般に浸漬、流動床コーティング、噴霧コーティングまたはパンコーティングにより行われる。
【0166】
即時放出コーティングは、当技術分野で周知の粉末コーティング法により施すこともできる。これらの方法においては、薬物を所望によりコーティング用賦形剤および添加剤とブレンドして即時放出コーティング用組成物を調製する。次いでこの組成物を圧縮力により、たとえば錠剤プレスで施すことができる。
【0167】
ホットメルトコーティング法によりコーティングを施すこともできる。この方法では、薬物ならびにコーティング用賦形剤および添加剤を含む溶融混合物を調製し、次いで、腸溶コーティングした持続放出コア上に噴霧する。一般に、トップスプレー集成装置を備えた流動床でホットメルトコーティングを施す。
【0168】
他の態様においては、まず即時放出部分を即時放出組成物、多粒子剤または顆粒剤として調製し、これを持続放出手段と組み合わせる。即時放出組成物、多粒子剤または顆粒剤をカプセル内で持続放出手段と組み合わせることができる。1態様において、即時放出組成物は本質的に本発明の薬物からなる。他の態様において、即時放出組成物はジプラシドン、ならびに所望により賦形剤、たとえば結合剤、安定剤、希釈剤、崩壊剤、および界面活性剤を含む。そのような即時放出組成物は、薬物と賦形剤を混和するためのいずれかの常法により調製できる。方法の例には、湿式および乾式造粒法が含まれる。他の態様においては、即時放出多粒子剤を持続放出多粒子剤のものと同じゼラチンカプセルに充填し、あるいは即時放出多粒子剤を持続放出多粒子剤および他の賦形剤とブレンドし、圧縮して錠剤にする。
【0169】
即時放出部分は、薬物のほかに、即時放出部分の調製を補助する他の賦形剤を含有してもよい。たとえばRemington: The Science and Practice of Pharmacy(第20版, 2000)を参照。他の賦形剤の例には、前記の崩壊剤、ポロシゲン、マトリックス材料、充填剤、希釈剤、滑沢剤、流動促進剤などが含まれる。
【0170】
即時放出部分と持続放出部分のジプラシドンの相対量は、目的とする血中薬物濃度を得るために希望に従うことができる。即時放出部分は、剤形中のジプラシドンのうち少なくとも10重量%、少なくとも20重量%、さらに少なくとも30重量%を含有することができる。例示態様において、即時放出部分は約10〜50重量%のジプラシドンを含み、持続放出部分は約90〜約50重量%のジプラシドンを含むことができる。
【0171】
剤形賦形剤
本発明の持続放出剤形は、性能、取扱い性または加工性を改善するための他の賦形剤を含有することができる。一般に界面活性剤、pH調節剤、充填剤、マトリックス材料、錯化剤、可溶化剤、色素、滑沢剤、流動促進剤、着香剤などの賦形剤を、通常の目的および一般的な量で用いても、本発明の持続放出剤形の特性に有害な作用を及ぼすことはない。たとえばRemington's Pharmaceutical Sciences (第18版, 1990)を参照。
【0172】
きわめて有用な1クラスの賦形剤は界面活性剤であり、好ましくは0〜10重量%存在する。適切な界面活性剤には、下記のものが含まれる:脂肪酸およびアルキルスルホネート;市販の界面活性剤、たとえば塩化ベンザルコニウム(HYAMINE(登録商標)1622、Lonza, Inc.から入手可能、ニュージャージー州フェアローン);スルホコハク酸ジオクチルナトリウム(DOCUSATEナトリウム、Mallinckrodt Spec. Chem.から入手可能、ミズーリ州セントルイス);ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(TWEEN(登録商標)、ICI Americas Inc.から入手可能、デラウェア州ウィルミントン;LIPOSORB(登録商標)O-20、Lipochem Inc.から入手可能、ニュージャージー州パターソン;CAPMUL(登録商標)POE-0、Abietic Corp.から入手可能、ウィスコンシン州ジェーンズビル);ならびに天然界面活性剤、たとえばタウロコール酸ナトリウム、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、レシチン、ならびに他のリン脂質、ならびにモノ-およびジグリセリド。そのような物質は、たとえば濡れの促進または他の形で剤形からの薬物放出速度を高めることにより、溶解速度を高めるために有利に使用できる。
【0173】
pH調節剤、たとえば酸、塩基または緩衝剤の添加は、ジプラシドンの溶解を遅延させ(たとえば酢酸ナトリウムまたはアミンなどの塩基)、あるいはジプラシドンの溶解速度を高める(たとえばクエン酸またはコハク酸などの酸)のに有益であろう。
【0174】
一般的なマトリックス材料、錯化剤、可溶化剤、充填剤、崩壊剤(disintegrating agent、disintegrant)、または結合剤も、剤形の最高90重量%を構成することができる。
充填剤または希釈剤の例には、乳糖、マンニトール、キシリトール、微結晶性セルロース、二塩基性リン酸カルシウム(無水および2水和物)およびデンプンが含まれる。
【0175】
崩壊剤の例には、グリコール酸デンプンナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、およびクロスカルメロースナトリウム、ならびに架橋形ポリビニルピロリドン、たとえば商品名CROSPOVIDONEで販売されるもの(BASF Corporationから入手可能)が含まれる。
【0176】
結合剤の例には、メチルセルロース、微結晶性セルロース、デンプン、ならびにゴム、たとえばグァーガムおよびトラガントゴムが含まれる。
滑沢剤の例には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムおよびステアリン酸が含まれる。
【0177】
保存剤の例には、スルファイト(酸化防止剤)、塩化ベンザルコニウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、ベンジルアルコールおよび安息香酸ナトリウムが含まれる。
懸濁化剤または増粘剤の例には、キサンタンゴム、デンプン、グァーガム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリアクリル酸、シリカゲル、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、および二酸化チタンが含まれる。
【0178】
凝結防止剤または充填剤には、酸化ケイ素および乳糖が含まれる。
可溶化剤の例には、エタノール、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールが含まれる。
【0179】
本発明の持続放出剤形には、当技術分野で周知のものを含めた他の一般的な賦形剤を使用できる。一般に、色素、滑沢剤、着香剤などの賦形剤を、通常の目的および一般的な量で用いても、本発明組成物の特性に有害な作用を及ぼすことはない。
【0180】
投与間隔
本発明の持続放出剤形は、好都合な任意の頻度で投与できる。1態様においては、持続放出剤形を少なくとも1日2回投与する。1態様においては、持続放出剤形を1日2回投与する。1日2回投与する場合、投与間隔は好ましくは8〜16時間である。本発明の剤形を好ましくは食物と共に投与する。本発明の剤形を1日2回投与する場合、たとえばこの剤形を朝に食事と共に投与し、同じ組成の剤形を夕方もう一度、食事と共に投与することができる。
【0181】
1態様において本発明の持続放出手段は、1日2回の投与に適した比較的短かい放出期間をもたらす。そのような剤形の放出期間は、4〜8時間であってよい。”放出期間”とは、剤形中のジプラシドンのうち80重量%を剤形が放出するのに要する時間を意味する。この剤形中の薬物量は、20 mgA、30 mgA、40 mgA、60 mgA、80 mgA、またはそれ以上であってもよい。好ましい態様において、そのような短期間放出剤形中のジプラシドンは好ましくは高溶解性塩形のジプラシドンである。この剤形は、好ましくは摂食状態で1日2回投与される。
【0182】
他の態様においては、持続放出剤形を1日1回だけ投与する。この剤形は、好ましくは食物と共に投与される。したがって、この剤形を1日1回投与する場合、剤形を朝1回、食事と共に投与し、あるいは夕方1回、食事と共に投与することができる。
【0183】
他の態様において持続放出手段は、1日2回の投与に適した比較的長い放出期間をもたらす。そのような剤形の放出期間は、8〜24時間であってよい。”放出期間”とは、剤形中のジプラシドンのうち80重量%を剤形が放出するのに要する時間を意味する。この剤形中の薬物量は、20 mgA、30 mgA、40 mgA、60 mgA、80 mgA、またはそれ以上であってもよい。好ましい態様において、そのような短期間放出剤形中のジプラシドンは好ましくは溶解度改良形態のジプラシドンであり、沈殿防止用ポリマーを含有する。この剤形は、好ましくは摂食状態で1日1回投与される。
【0184】
本発明の持続放出剤形は、ジプラシドンが有効な可能性のあるいかなる状態の処置にも使用できる。
本発明の他の特色および態様は以下の実施例から明らかになるであろう。実施例は本発明の説明のために示すものであり、本発明の意図する範囲を限定するためのものではない。
【実施例】
【0185】
溶解度改良形態のジプラシドン
高溶解性塩形体
塩酸塩およびメシル酸塩の結晶質塩形ジプラシドンが溶解度改良形態ジプラシドンであることを証明するために、ミクロ遠心機溶解試験を実施してそれらを評価した。この試験のために、すべてのジプラシドンが溶解した場合にジプラシドンの濃度が200μgA/mLとなるのに十分な量の塩酸ジプラシドン 1水和物またはメシル酸ジプラシドン 3水和物を、ミクロ遠心管に添加した。これらの遠心管を37℃の温度制御チャンバーに入れ、pH 6.5および290 mOsm/kgのMFD溶液1.8mLを各遠心管に添加した。試料を渦撹拌式ミキサーで約60秒間、速やかに混合した。試料を採取する前に、試料を13,000G、37℃で1分間遠心分離した。得られた上清溶液を次いでサンプリングし、メタノールで1:5(体積)希釈した。試料を、315nmでのUV吸光度、Zorbax RxC8 Relianceカラム、および55%(50mMリン酸二水素カリウム、pH 6.5)/45%アセトニトリルからなる移動相を用いる高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析した。試料のUV吸光度を薬物標準品の吸光度と比較することにより、薬物濃度を計算した。各遠心管の内容物を渦撹拌式ミキサーで混合し、次の試料を採取するまで撹拌せずに37℃に放置した。MFD溶液への投入後、4、10、20、40、90および1200分目に試料を採取した。結果を表1に示す。
【0186】
対照としての結晶質ジプラシドン遊離塩基について、すべてのジプラシドンが溶解した場合に化合物濃度が200μgA/mLとなるのに十分な量の物質を添加して、同様な試験を実施した。
【0187】
【表2】

【0188】
これらの試験で得たジプラシドン濃度を用いて、最初の90分間のジプラシドンの最大溶存濃度(”MDC90”)および濃度-対-時間曲線下面積(”AUC90”)を判定した。結果を表2に示す。
【0189】
【表3】

【0190】
これらの結果は、塩酸ジプラシドン 1水和物が遊離塩基により得られたものの11倍のMDC90および遊離塩基により得られたものの14倍のAUC90をもたらしたことを示す。メシル酸ジプラシドン 3水和物は、遊離塩基により得られたものの27倍のMDC90および遊離塩基により得られたものの13倍のAUC90をもたらした。したがって、塩酸塩およびメシル酸塩の両方とも溶解度改良形態ジプラシドンである。
【0191】
沈殿防止用ポリマーでコーティングしたジプラシドン結晶
35%の有効塩酸ジプラシドン 1水和物を沈殿防止用ポリマーHPMCASでコーティングしたジプラシドンコーティング結晶を、下記により調製した。まず下記により噴霧懸濁液を調製した:上置型ミキサーを備えた容器内でHPMCAS-H(AQOAT Hグレード、信越から入手可能、日本、東京)をアセトンに溶解した。次いで平均粒径約10μmの塩酸ジプラシドン 1水和物の結晶質粒子をポリマー溶液に添加し、上置型ミキサーによる混合を続けた。この組成物は、6.03重量%のHPMCAS-HGおよび90重量%のアセトン中に懸濁した3.97重量%の結晶質塩酸ジプラシドン 1水和物粒子からなっていた。次いで再循環ポンプ(Yamada空気圧式ダイヤフラムポンプNDF-5FST型)を用いて、懸濁液を高剪断インラインミキサー(Betatek LZ-150-6-PB型マルチ剪断インラインミキサー)へ移した。ここで一連のローター/ステーター剪断ヘッドにより、残存する薬物結晶凝集物は破断された。この高剪断ミキサーを、20kgの溶液につき3500±500 rpm、45〜60分間の設定で作動させた。再循環ポンプ圧は35±10 psigであった。
【0192】
次いで、圧力ノズル(Spraying Systems、圧力ノズルとボディー−SK 74-20)を備えた高圧ポンプで、噴霧乾燥機(Niro、液体供給プロセス容器付きXP型ポータブル噴霧乾燥機(”PSD-1”))へ懸濁液を送入した。PSD-1は5フィート9インチのチャンバー延長部を備えていた。乾燥機の垂直長さを拡張するために、このチャンバー延長部を噴霧乾燥機に追加した。この追加長さにより乾燥機内での滞留時間が延長され、これにより製品は噴霧乾燥機の傾斜セクションに到達する前に乾燥した。噴霧乾燥機は、1/16インチの穿孔をもつ316ステンレス鋼円形拡散板(開口領域1%)も備えていた。この小さな開口領域が乾燥用ガスの流れを方向づけて、噴霧乾燥機内での製品再循環を最小限に抑えた。操作中、ノズルは拡散板と同一平面にあった。懸濁液を約285 g/分、圧力約300 psigでノズルへ送入した。ポンプシステムには、ノズルの脈動を最小限に抑えるために脈動制動器も含まれていた。流速1850 g/分、導入温度140℃の乾燥用ガス(たとえば窒素)を、拡散板を通して循環させた。蒸発した溶剤および湿った乾燥用ガスは、温度40℃で噴霧乾燥機から排出した。このプロセスで形成されたコーティング結晶をサイクロンに採集し、次いで40℃で作動するGruenbergシングルパス対流トレイ乾燥機で4時間、後乾燥させた。後乾燥後のコーティング結晶の特性は下記のとおりであった。
【0193】
【表4】

【0194】
コーティングしたジプラシドン結晶をインビトロで膜透過試験により評価した。Accurrel(登録商標)PP 1E微孔質ポリプロピレン膜をMembrana GmbH(ドイツ、ウッペルタール)から入手した。膜をイソプロピルアルコール中で洗浄し、音波処理浴内でメタノール中、周囲温度で1分間すすぎ、次いで周囲温度で風乾した。次いで膜試料をプラズマチャンバーに入れることにより膜の供給側をプラズマ処理して親水性にした。プラズマチャンバーの雰囲気を、圧力550 mtorrの水蒸気で飽和させた。次いで環状電極によりチャンバー内へ誘導カップリングさせた高周波(RF)電力により、電力設定50ワットで45秒間、プラズマを発生させた。プラズマ処理した膜の表面に置かれた水滴の接触角は約40°であった。同じ膜の透過側に置かれた水滴の接触角は約110°より大きかった。
【0195】
プラズマ処理した膜の試料を内径約1インチ(2.54cm)のガラス管にエポキシ系接着剤(LOCTITE(登録商標)E-30CL HYSOL(登録商標)、Henkel Loctite Corp.、コネチカット州ロッキー・ヒル)で接着することにより、透過液溜めを作成した。膜の供給側を透過液溜めの外側になるように配置し、一方、膜の透過側を溜めの内側になるように配置した。透過液溜め上の膜の有効膜面積は約4.9 cm2であった。透過液溜めをガラス製供給液溜めに入れた。供給液溜めは磁気撹拌バーを備えており、この溜めを撹拌プレートに乗せ、試験中は撹拌速度を100 rpmに設定した。この装置を、試験期間中37℃に維持したチャンバーに入れた。試験装置およびプロトコルの詳細は、出願中の米国特許出願No. 60/557,897、タイトル”医薬組成物の評価のための方法および装置”、2004年3月30日出願(代理人Docket No. PC25968)に示され、これを本明細書に援用する。
【0196】
供給液を調製するために、コーティング結晶の試料1.39mgを供給液溜め内へ秤量した。これに、7.3mMのタウロコール酸ナトリウムおよび1.4mMの1-パルミトイル-2-オレイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(0.5% NaTC/POPC)を含有するPBS溶液からなる前記のMFD溶液5mLを添加した。供給液中のジプラシドンの濃度は、すべてのジプラシドンが溶解した場合に100μgA/mLとなるものであった。供給液を渦撹拌式ミキサーで1分間混合した。膜を供給液と接触させる前に、デカン中の60重量%デカノール5mLを透過液溜めに入れた。試験のゼロ時点は、膜を供給液と接触させた時点であった。指示した時点で透過液50mLずつを採集した。次いで試料を250mLのIPA中に希釈し、HPLCで分析した。結果を表3に示す。
【0197】
対照として、すべての薬物が溶解した場合に薬物濃度が100μgA/mLとなるように、結晶質ジプラシドン単独の試料0.5mgを用いて膜試験を繰り返した。これらの結果を表3に示す。
【0198】
【表5】

【0199】
表3の0〜60分のデータに最小二乗適合を行って勾配を求め、この勾配に透過液体積(5mL)を掛け、そして膜面積(4.9 cm2)で割ることにより、膜を通る最大薬物流束(単位mgA/cm2-分)を判定した。この分析の結果を表4にまとめる。この表は、コーティングしたジプラシドン結晶が、結晶質ジプラシドン遊離塩基単独により得られるものの2倍の膜透過最大流束をもたらしたことを示す。
【0200】
【表6】

【0201】
持続放出剤形の製造
剤形DF-1
ジプラシドンを持続放出する、塩酸ジプラシドン 1水和物を含有する剤形を製造した。この剤形は二層浸透圧錠の形態であった。この二層浸透圧錠は、薬物含有組成物、水膨潤性組成物、およびこれら二層の周りのコーティングからなっていた。この二層錠を下記に従って製造した。
【0202】
薬物含有組成物の調製
薬物含有組成物を調製するために、下記の物質をブレンドした:塩酸ジプラシドン 1水和物10.0重量%、平均分子量200,000のポリエチレンオキシド(PEO)(Polyox WSR N80)84.0重量%、ヒドロキシプロピルセルロース5.0重量%、およびステアリン酸マグネシウム1.0重量%。まずステアリン酸マグネシウムを含まない薬物含有組成物成分を合わせて、IPA/水(85/15)を用いてNiro SP1高剪断ミキサー造粒機で湿式造粒した。この顆粒を湿潤状態でふるい分けし、次いで40℃の熱対流炉で16時間乾燥させた。次いで乾燥顆粒をFitzpatrick M5Aミルでミリングした。最後に、V型ブレンダー内でこの薬物含有組成物にステアリン酸マグネシウムを添加し、成分をさらに5分間ブレンドした。
【0203】
水膨潤性組成物の調製
水膨潤性組成物を調製するために、下記の物質をブレンドした:平均分子量5,000,000のポリエチレンオキシド(Polyox WSR凝固剤)64.9重量%、塩化ナトリウム34.5重量%、ステアリン酸マグネシウム0.5重量%、およびBlue Lake #2 0.1重量%。まずPEOと塩化ナトリウムを合わせてV型ブレンダー内で10分間ブレンドし、次いでFitzpatrick M5Aミルでミリングした。Blue Lake #2を40メッシュのスクリーンでふるい分けし、PEOと塩化ナトリウムの一部に添加した。成分をTurbulaミキサーで5分間混合し、次いで残りのPEOと塩化ナトリウムに添加し、V型ブレンダー内で10分間ブレンドした。ステアリン酸マグネシウムを添加し、混合物を再び5分間ブレンドした。
【0204】
錠剤コアの製造
Elizabeth-Hata三層プレスを用い、7/16インチ標準丸凹型(standard round concave、SRC)平滑面工具で、454.5mgの薬物含有組成物と150.5mgの水膨潤性組成物を混和することにより、二層錠コアを製造した。錠剤コアを約12.6キロポンド(kp)の硬度に圧縮した。得られた二層錠コアは、総重量605mgをもち、全40mgの活性ジプラシドンを含有していた。
【0205】
コーティングの付与
Vector LDCS-30パンコーターで、錠剤コアのコーティングを施した。DF-1のコーティング液は、セルロースアセテート(CA 398-10、Eastman Fine Chemical、テネシー州キングスポートから)、ポリエチレングリコール(PEG 3350、Union Carbide)、水、およびアセトンを7 / 3 / 5 / 85(重量%)の重量比で含有していた。Masterflexポンプを用いて毎分20gの溶液を送入した。パンコーターに導入する加熱した乾燥用ガスの流速を40ft3/分に設定し、排出温度を28℃に設定した。22 psiの空気を用い、ノズル-床距離2 5/8インチで、コーティング液を噴霧ノズルから霧化した。パンの回転を14 rpmに設定した。こうしてコーティングした錠剤を、トレイ乾燥機により40℃で16時間乾燥させた。乾燥コーティングの最終重量は錠剤コアの約10重量%であった。各DF-1錠剤のコーティングの薬物組成物含有側に直径900μmの孔を1個、レーザー穿孔して、錠剤当たり1個の送達口を設けた。
【0206】
剤形DF-2
DF-1について概説したものと同じ方法で剤形DF-2を製造した。ただし、DF-2のコーティング液は、CA 398-10、PEG 3350、水、およびアセトンを8 / 2 / 5 / 85(重量%)の重量比で含有していた。
【0207】
剤形DF-3
塩酸ジプラシドン 1水和物を含有する二層浸透圧剤形を下記の方法で製造した。
薬物含有組成物の調製
薬物含有組成物を調製するために、下記の物質をブレンドした:塩酸ジプラシドン 1水和物10.0重量%、PEO(Polyox WSR N80)84.0重量%、およびステアリン酸マグネシウム1.0重量%。まずステアリン酸マグネシウムを含まない薬物含有組成物成分を合わせてTurbulaミキサーで20分間ブレンドし、20メッシュのふるいに通し、再び20分間ブレンドした。次いでステアリン酸マグネシウムの半量をこのブレンドに添加し、混合物をさらに4分間ブレンドした。次いで成分をVector TFミニローラー圧縮機(ローラー圧1トン、ローラー速度2 rpm、オーガー速度1.0 rpm)でローラー圧縮し、次いでラスピングスクリーンを備えたFitzpatrick M5Aミルにより1500 rpmでミリングした。最後に、残りのステアリン酸マグネシウムを添加し、成分を再び4分間ブレンドした。
【0208】
水膨潤性組成物の調製
水膨潤性組成物を調製するために、下記の物質をブレンドした:PEO(Polyox WSR凝固剤)65.0重量%、塩化ナトリウム34.3重量%、ステアリン酸マグネシウム0.5重量%、およびBlue Lake #2 0.2重量%。ステアリン酸マグネシウムおよびBlue Lake #2以外のすべての成分を合わせて20分間ブレンドし、20メッシュのふるいに通し、再び20分間ブレンドした。次いでステアリン酸マグネシウムおよびBlue Lake #2を添加し、混合物を4分間ブレンドした。
【0209】
錠剤コアの製造
Fプレスを用い、15/32インチ標準丸凹型(SRC)平滑面工具で、444mgの薬物含有組成物と222mgの水膨潤性組成物を混和することにより、二層錠コアを製造した。錠剤コアを約9.1 kpの硬度に圧縮した。得られた二層錠コアは、総重量666mgをもち、全40mgの活性ジプラシドンを含有していた。
【0210】
コーティングの付与
Vector LDCS-20パンコーターで、錠剤コアのコーティングを施した。コーティング液は、CA 398-10、PEG 3350、水、およびアセトンを3.5 / 1.5 / 3 / 92(重量%)の重量比で含有していた。パンコーターに導入する加熱した乾燥用ガスの流速を40ft3/分に設定し、排出温度を25℃に設定した。22 psiの窒素を用い、ノズル-床距離2インチで、コーティング液を噴霧ノズルから霧化した。パンの回転を20 rpmに設定した。こうしてコーティングした錠剤を、トレイ乾燥機により40℃で16時間乾燥させた。乾燥コーティングの最終重量は錠剤コアの約16.4重量%であった。各錠剤のコーティングの薬物組成物含有側に直径900μmの孔を1個、レーザー穿孔して、錠剤当たり1個の送達口を設けた。
【0211】
剤形DF-4
下記の点以外はDF-1について概説したものと同じ方法で、剤形DF-4を製造した。薬物含有組成物は、メシル酸ジプラシドン 3水和物11.96重量%、PEO(Polyox WSR N80)82.04重量%、ヒドロキシプロピルセルロース5重量%、およびステアリン酸マグネシウム1重量%からなっていた。水膨潤性組成物は、PEO(Polyox WSR凝固剤)65.0重量%、塩化ナトリウム34.45重量%、ステアリン酸マグネシウム0.5重量%、およびBlue Lake #2 0.05重量%からなっていた。コーティング液は、CA 398-10、PEG 3350、水、およびアセトンを8 / 2 / 5 / 85(重量%)の重量比で含有し、コア重量の10.4重量%であった。各DF-4錠剤は40 mgAのジプラシドンを含有していた。
【0212】
剤形DF-5
下記の点以外はDF-1について概説したものと同じ方法で、剤形DF-5を製造した。薬物含有組成物は、メシル酸ジプラシドン 3水和物7.7重量%、β-シクロデキストリン31重量%、PEO(Polyox WSR N80)59.9重量%、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS;MFグレード、信越から)0.4重量%、およびステアリン酸マグネシウム1重量%からなっていた。水膨潤性組成物は、PEO(Polyox WSR凝固剤)65.0重量%、塩化ナトリウム34.4重量%、ステアリン酸マグネシウム0.5重量%、およびBlue Lake #2 0.1重量%からなっていた。13/32インチ標準丸凹型(SRC)平滑面工具を用いて錠剤コアを製造した。コーティング液は、CA 398-10、PEG 3350、水、およびアセトンを8 / 2 / 5 / 85(重量%)の重量比で含有し、コア重量の11.9重量%であった。各DF-5錠剤は20 mgAのジプラシドンを含有していた。
【0213】
剤形DF-6
メシル酸ジプラシドンとスルホブチルエーテルシクロデキストリン(SBECD)の同時凍結乾燥品を薬物含有組成物中に用いて、剤形DF-6を製造した。同時凍結乾燥品は、SBECDとメシル酸ジプラシドンを14.7:1(w/w)の比率で含有する水溶液を凍結し、真空下で固体状態から水を除去することにより調製された。得られた凍結乾燥固体ケークを、0.0315インチのラスピングプレートおよびバーインペラーを備えたFitzpatrick M5Aミルでミリングした。
【0214】
下記の点以外はDF-1について概説したものと同じ方法で、剤形DF-6を製造した。薬物含有組成物は、上記の同時凍結乾燥品38.4重量%、PEO(Polyox WSR N80)60.2重量%、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(MFグレード、信越から)0.4重量%、およびステアリン酸マグネシウム1重量%からなっていた。水膨潤性組成物は、PEO(Polyox WSR凝固剤)65.0重量%、塩化ナトリウム34.4重量%、ステアリン酸マグネシウム0.5重量%、およびBlue Lake #2 0.1重量%からなっていた。7/16インチ標準丸凹型(SRC)平滑面工具を用いて錠剤コアを製造した。コーティング液は、CA 398-10、PEG 3350、水、およびアセトンを7 / 3 / 5 / 85(重量%)の重量比で含有し、コア重量の19.5重量%であった。各DF-6錠剤は20 mgAのジプラシドンを含有していた。
【0215】
剤形DF-7
下記の点以外はDF-3について概説したものと同じ方法で、剤形DF-7を製造した。薬物含有組成物は、塩酸ジプラシドン 1水和物10.0重量%、HPMCAS(MFグレード、信越から)15.0重量%、PEO(Polyox WSR N80)74.0重量%、およびステアリン酸マグネシウム1.0重量%からなっていた。ジプラシドン、HPMCASおよびPEOをTurbulaミキサーで20分間ブレンドし、ブレンドを20メッシュのスクリーンに通し、さらに20分間ブレンドし、ステアリン酸マグネシウムを添加し、さらに4分間ブレンドすることにより、薬物含有組成物を調製した。水膨潤性組成物は、PEO(Polyox WSR凝固剤)65.0重量%、塩化ナトリウム34.3重量%、ステアリン酸マグネシウム0.5重量%、およびBlue Lake #2 0.2重量%からなり、DF-3について概説したように調製された。15/32インチSRC工具を用いて錠剤コアを製造した。コーティング液は、CA 398-10、PEG 3350、水、およびアセトンを3.5 / 1.5 / 3 / 92(重量%)の重量比で含有し、コア重量の18.4重量%であった。各錠剤のコーティングの薬物組成物含有側に直径900μmの孔を1個、レーザー穿孔した。得られた二層錠は、全40mgの活性ジプラシドンを含有していた。
【0216】
剤形DF-8
前記のように”H”グレードのHPMCAS(HPMCAS-HF、信越から(”F”は微細を示す))でコーティングした塩酸ジプラシドン 1水和物結晶を用いて剤形DF-8を製造した。コーティング結晶は35重量%の有効(wt%A)ジプラシドンを含有していた。下記の点以外はDF-1について概説したものと同じ方法で、剤形DF-8を製造した。薬物含有組成物は、コーティング結晶25重量%、PEO(Polyox WSR N80)74重量%、およびステアリン酸マグネシウム1重量%からなっていた。水膨潤性組成物は、PEO(Polyox WSR凝固剤)65.0重量%、塩化ナトリウム34.3重量%、ステアリン酸マグネシウム0.5重量%、およびBlue Lake #2 0.2重量%からなっていた。7/16インチ標準丸凹型(SRC)平滑面工具を用いて錠剤コアを製造した。コーティング液は、CA 398-10、PEG 3350、水、およびアセトンを6.8 / 1.2 / 4 / 88(重量%)の重量比で含有し、コア重量の8.1重量%であった。各DF-8錠剤は40 mgAのジプラシドンを含有していた。
【0217】
剤形DF-9
DF-8について概説したものと同じ方法で剤形DF-9を製造した。ただし、コーティングはコア重量の10重量%であった。各DF-9錠剤は40 mgAのジプラシドンを含有していた。
【0218】
剤形DF-10
剤形DF-10は、粒径を小さくするためにコーティング前にジェットミリングした塩酸ジプラシドン 1水和物結晶をコーティングしたものを含有する二層浸透圧錠からなっていた。剤形DF-10を下記の方法で製造した。
【0219】
噴霧乾燥によるコーティング結晶の調製
前記と同様に、ただし粒径を小さくするためにまず塩酸ジプラシドンをジェットミリングし、ジェットミリング処理ジプラシドンのコーティング結晶を噴霧乾燥により調製した。約100 psiに設定した2本の窒素ラインを備えたGlen Mills実験室用ジェットミルにジプラシドン乾燥粉末を徐々に注入することにより、ジェットミリング処理ジプラシドンを調製した。平均粒径約2μmのミリングした材料を受け器に採集した。ジェットミリング処理ジプラシドン結晶をHPMCAS-HGでコーティングした。二次乾燥後のコーティング結晶の特性は下記のとおりであった。
【0220】
【表7】

【0221】
錠剤コアの製造
薬物含有組成物はDF-7について概説した方法で調製され、コーティングしたジプラシドン結晶25.0重量%、PEO(Polyox WSR N80)74.0重量%、およびステアリン酸マグネシウム1.0重量%からなっていた。水膨潤性組成物は、PEO(Polyox WSR凝固剤)65.0重量%、塩化ナトリウム34.3重量%、ステアリン酸マグネシウム0.5重量%、およびBlue Lake #2 0.2重量%からなり、DF-3について概説したように調製された。7/16インチSRC工具を用いて錠剤コアを製造した。コーティング液は、CA 398-10、PEG 3350、水、およびアセトンを4.25 / 0.75 / 2.5 / 92.5(重量%)の重量比で含有し、コア重量の7.8重量%であった。各錠剤のコーティングの薬物組成物含有側に直径900μmの孔を1個、レーザー穿孔した。得られた二層錠は、全40mgの活性ジプラシドンを含有していた。
【0222】
剤形DF-11
DF-10について概説したものと同じ方法で剤形DF-11を製造した。ただし、コーティングはコア重量の10.2重量%であった。各DF-11錠剤は40 mgAのジプラシドンを含有していた。
【0223】
剤形DF-12
剤形DF-12は、コーティングした塩酸ジプラシドン結晶を用いて製造したマトリックス持続放出錠からなっていた。コーティング結晶は前記の方法で調製され、HPMCAS-HFでコーティングした活性ジプラシドン35重量%を含有していた。このマトリックス錠は、コーティング結晶42重量%、ソルビトール42重量%、HPMC(K100LV)15重量%、およびステアリン酸マグネシウム1重量%からなっていた。錠剤を下記により製造した。まずコーティング結晶、ソルビトールおよびHPMCをV型ブレンダー内で20分間ブレンドし、Fitzpatrick M5Aミルでミリングし、次いでV型ブレンダー内でさらに20分間ブレンドした。次いでステアリン酸マグネシウムを添加し、混合物を再び5分間ブレンドした。Fプレスを用い、11-mmのSRC平滑面工具で、555.5mgの混合物を使用して錠剤を製造した。錠剤コアを約11 kpの硬度に圧縮した。得られた持続放出マトリックス錠は、全80mgの活性ジプラシドンを含有していた。
【0224】
剤形DF-13
剤形DF-13は、塩酸ジプラシドンとHPMCAS(HFグレード、信越)の混合物を湿式造粒したものを用いて製造したマトリックス持続放出錠からなっていた。湿式造粒物を調製するために、塩酸ジプラシドンとHPMCASをTurbulaミキサーで4分間混合した。得られた物理的混合物は、34 wt%Aのジプラシドンを含有していた。次いで、85/15(w/w)イソプロピルアルコール/水混合物に溶解したHPMCAS(HFグレード、信越)からなる結合剤溶液を調製した。次いで、物理的混合物の試料10gおよび結合剤溶液の試料4gを乳鉢と乳棒で混和し、手動で湿式造粒した。得られた顆粒を次いで40℃のオーブン内で一夜乾燥させた。得られた湿潤顆粒は36 wt%Aのジプラシドンを含有していた。
【0225】
このマトリックス錠は、塩酸ジプラシドンとHPMCASの湿式造粒混合物40重量%、ソルビトール44重量%、HPMC(K100LV)15重量%、およびステアリン酸マグネシウム1重量%からなっていた。錠剤を下記により製造した。まず造粒混合物、ソルビトールおよびHPMCをV型ブレンダー内で20分間ブレンドし、Fitzpatrick M5Aミルでミリングし、次いでV型ブレンダー内でさらに20分間ブレンドした。次いでステアリン酸マグネシウムを添加し、混合物を再び5分間ブレンドした。Fプレスを用い、11mmのSRC平滑面工具で、555.5mgの混合物を使用して錠剤を製造した。錠剤コアを約8 kpの硬度に圧縮した。得られた持続放出マトリックス錠は、全80mgの活性ジプラシドンを含有していた。
【0226】
剤形DF-14
剤形DF-14は、コーティングした塩酸ジプラシドン結晶を用いて製造したマトリックス持続放出錠からなっていた。コーティング結晶は前記の方法で調製され、HPMCAS(HFグレード)でコーティングした活性ジプラシドン35重量%を含有していた。このマトリックス錠は、コーティング結晶30重量%、噴霧乾燥乳糖29重量%、PEO(Polyox WSRN-10)(100,000ダルトン)40重量%、およびステアリン酸マグネシウム1重量%からなっていた。錠剤を下記により製造した。まずコーティング結晶、乳糖およびPEOをV型ブレンダー内で20分間ブレンドし、Fitzpatrick M5Aミルでミリングし、次いでV型ブレンダー内でさらに20分間ブレンドした。次いでステアリン酸マグネシウムを添加し、混合物を再び5分間ブレンドした。Fプレスを用い、寸法0.30インチ×0.60インチのカプレット形工具で、381mgの混合物を使用して錠剤を製造した。錠剤コアを約13 kpの硬度に圧縮した。得られた持続放出マトリックス錠は、全40mgの活性ジプラシドンを含有していた。
【0227】
剤形DF-15
剤形DF-15は、腸溶コーティングでコーティングした剤形DF-14からなっていた。コーティング液は、水55.8重量%中のEudragit L30-D55 41.7重量%およびクエン酸トリエチル2.5重量%からなっていた。LDCS-20パンコーターでコーティングを施した。コーティング重量はコーティングしていないコア重量の10重量%であった。得られた持続放出マトリックス錠は、全40mgの活性ジプラシドンを含有していた。
【0228】
剤形DF-16
剤形DF-16は、下記の点以外はDF-3について概説したものと同じ方法で製造した二層浸透圧錠からなっていた。薬物層は、コーティングした塩酸ジプラシドン結晶について概説した方法によりHPMCAS(Hグレード)でコーティングしたトシル酸塩形ジプラシドン結晶を含有していた。コーティング結晶は35重量%の活性ジプラシドンを含有していた。薬物層組成物は、コーティングしたトシル酸ジプラシドン結晶25重量%、PEO(Polyox WSR N80)74重量%、およびステアリン酸マグネシウム1重量%からなっていた。水膨潤性組成物は、PEO(Polyox WSR凝固剤)65.0重量%、塩化ナトリウム34.3重量%、ステアリン酸マグネシウム0.5重量%、およびBlue Lake #2 0.2重量%からなっていた。7/16インチ標準丸凹型(SRC)平滑面工具を用いて錠剤コアを製造した。コーティング液は、CA 398-10、PEG 3350、水、およびアセトンを4.25 / 0.75 / 2.5 / 92.5(重量%)の重量比で含有し、コア重量の10.4重量%であった。各DF-16錠剤は40 mgAのジプラシドンを含有していた。
【0229】
剤形DF-17
剤形DF-17は、ジプラシドンを持続放出する単層浸透圧錠からなっていた。この剤形は、前記のようにHPMCAS(Hグレード)でコーティングした塩酸ジプラシドン 1水和物結晶を含有していた。この錠剤は、コーティングしたジプラシドン結晶26.5重量%、ソルビトール60.0重量%、ヒドロキシエチルセルロース(Natrosol 250HX)8.0重量%、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)1.5重量%、ヒドロキシプロピルセルロース(Klucel EXF)3.0重量%、およびステアリン酸マグネシウム1.0重量%からなっていた。錠剤コアを調製するために、ステアリン酸マグネシウム以外のすべての成分をV型ブレンダー内で15分間ブレンドした。次いでこのブレンドを、0.031インチのConidurラスピングスクリーンを備えた200 rpmのFitzmill M5Aに通した。次いでブレンドをV型ブレンダーに戻してさらに15分間ブレンドした。次いでステアリン酸マグネシウムの半量をこのブレンドに添加し、混合物をさらに3分間ブレンドした。次いで乾燥ブレンドを、”S”ロール付きVector Feund TFミニローラー圧縮機により、ローラー圧390〜400 psi、ローラー速度3〜4 rpm、およびスクリュー速度4〜6 rpmでローラー圧縮した。ローラー圧縮したリボンを次いでFitzmill M5Aでミリングした。ミリングした材料を次いでV型ブレンダーに戻して10分間ブレンドし、この時点で残りのステアリン酸マグネシウムを添加し、混合物をさらに3分間ブレンドした。次いでKillian T100錠剤プレスで0.2838インチ×0.5678インチの改変卵型工具を用いて錠剤コアを成形した。DF-1について概説した方法で、錠剤コアにコーティングを施した。ただし、コーティング液は、CA 398-10、PEG 3350、水、およびアセトンを4.5 / 1.5 / 5 / 89(重量%)の重量比で含有し、コア重量の7.5重量%であった。各DF-17錠剤は40 mgAのジプラシドンを含有していた。
【0230】
剤形DF-18
剤形DF-18は、下記の方法で製造した持続放出多粒子剤からなっていた。この多粒子剤は、塩酸ジプラシドン 1水和物40重量%、COMPRITOL 888 ATO(13〜21重量%のモノベヘン酸グリセリル、40〜60重量%のジベヘン酸グリセリル、および21〜35重量%のトリベヘン酸グリセリルの混合物、Gattefosse Corporationから、ニュージャージー州パラムス)およびポロキサマー407(LUTROL F127としてBASF Corporationにより販売、ニュージャージー州マウント・オリーブ)からなり、下記の溶融凝固法により製造された。まずCOMPRITOL 888 ATOおよびLUTROL F127を90℃で加熱シリンジバレル内において溶融した。次いでジプラシドンを添加し、この溶融成分中の薬物懸濁液を700 rpmで5分間撹拌した。
【0231】
次いでシリンジポンプを用いて、供給懸濁液を75 g/分の速度で回転円板アトマイザーの中央に送入した。この特注した回転円板アトマイザーは、直径10.1cm(4インチ)のボウル形ステンレス鋼円板を備えていた。円板表面下の薄膜ヒーターにより回転円板アトマイザーの表面を100℃に保持し、円板を10,000 rpmで回転させた。回転円板アトマイザーにより製造した多粒子剤を周囲空気中で凝固させ、全25gの多粒子剤を採集した。走査型電子顕微鏡(SEM)により測定した平滑な球状多粒子剤の平均直径は約110μmであった。
【0232】
剤形DF-19
剤形DF-19を下記に従って製造する。まず、ポリマーコーティングした塩酸ジプラシドン結晶を含有するマトリックス持続放出コアを含む、腸溶コーティングした持続放出コアを製造した。コーティング結晶は前記の方法で製造され、HPMCAS(Hグレード)でコーティングした活性ジプラシドン35重量%を含有していた。マトリックス錠は、コーティング結晶30重量%、噴霧乾燥乳糖29重量%、PEO(Polyox WSRN-10)(100,000ダルトン)40重量%、およびステアリン酸マグネシウム1重量%からなっていた。錠剤を下記により製造した。まずコーティング結晶、乳糖およびPEOをV型ブレンダー内で20分間ブレンドし、Fitzpatrick M5Aミルでミリングし、次いでV型ブレンダー内でさらに20分間ブレンドした。次いでステアリン酸マグネシウムを添加し、混合物を再び5分間ブレンドした。Fプレスを用い、寸法0.30インチ×0.60インチのカプレット形工具で、381mgの混合物を使用して錠剤を製造した。錠剤コアを約12〜14 kpの硬度に圧縮した。得られた持続放出マトリックス錠は、全40mgの活性ジプラシドンを含有し、約380mgの全質量をもっていた。
【0233】
次いでDF-19を腸溶コーティングでコーティングした。コーティング液は、水55.8重量%中のEudragit L30-D55 41.7重量%およびクエン酸トリエチル2.5重量%からなっていた。LDCS-20パンコーターでコーティングを施した。コーティング重量はコーティングしていないコア重量の10重量%であった。得られた腸溶コーティングした持続放出マトリックス錠は、約419mgの全質量をもっていた。
【0234】
次いで、この腸溶コーティングした持続放出コアに即時放出コーティングを施す。ジェットミリングしたジプラシドンおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースをアセトン中に含有するコーティング懸濁液を調製する。薬物とポリマーは合わせて懸濁液の2〜15重量%である。この懸濁液を1時間撹拌し、噴霧ノズルを塞ぐ可能性のあるポリマー粒子を除去するために使用前に250μmのスクリーンにより濾過する。この腸溶コーティングした持続放出コアをパンコーターでコーティングする。噴霧終了時にコーティング剤形をトレイ乾燥機により40℃で1時間乾燥させる。
【0235】
剤形DF-20
下記の点以外はDF-6について概説したものと同じ方法で剤形DF-20を製造する。薬物含有組成物は、前記の同時凍結乾燥品38.4重量%、PEO(Polyox WSR N80)56.1重量%、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HFグレード、信越から)4.5重量%、およびステアリン酸マグネシウム1重量%からなる。
【0236】
剤形DF-21
下記の点以外はDF-6について概説したものと同じ方法で剤形DF-21を製造する。薬物含有組成物は、前記の同時凍結乾燥品38.4重量%、PEO(Polyox WSR N80)56.1重量%、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HFグレード、信越から)2.25重量%、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(MFグレード、信越から)2.25重量%、およびステアリン酸マグネシウム1重量%からなる。
【0237】
剤形DF-22
下記の点以外はDF-6について概説したものと同じ方法で剤形DF-22を製造する。薬物含有組成物は、前記の同時凍結乾燥品38.4重量%、PEO(Polyox WSR N80)58.4重量%、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HFグレード、信越から)1.1重量%、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(MFグレード、信越から)1.1重量%、およびステアリン酸マグネシウム1重量%からなる。
【0238】
剤形DF-23
下記の点以外はDF-14について概説したものと同じ方法で剤形DF-23を製造する。コーティング結晶は前記の方法で製造され、HPMCAS(Hグレード)とHPMCAS(Mグレード)の1:1混合物でコーティングした活性ジプラシドン35重量%を含有していた。
【0239】
剤形DF-24
剤形DF-24は、DF-15に施した腸溶コーティングでコーティングした剤形DF-23からなる。コーティング結晶は前記の方法で製造され、HPMCAS(Hグレード)とHPMCAS(Mグレード)の1:1混合物でコーティングした活性ジプラシドン35重量%を含有していた。
【0240】
剤形DF-25
下記の点以外はDF-14について概説したものと同じ方法で剤形DF-25を製造する。マトリックス錠は、同時凍結乾燥品26.9重量%、HPMCAS(Hグレード、信越)1.65重量%、HPMCAS(Mグレード、信越)1.65重量%、噴霧乾燥乳糖29重量%、PEO(Polyox WSRN-10)(100,000ダルトン)40重量%、およびステアリン酸マグネシウム1重量%からなる。得られた持続放出マトリックス錠は全20mgの活性ジプラシドンを含有する。
【0241】
対照剤形C1
対照剤形C1は、40 mgAのジプラシドンを含有する市販のGEODEN(商標)カプセル剤からなっていた。このカプセル剤は、塩酸ジプラシドン 1水和物、乳糖、アルファ化デンプン、およびステアリン酸マグネシウムを含有していた。
【0242】
対照剤形C2
対照剤形C2は、即時放出カプセル剤におけるメシル酸ジプラシドン 3水和物22.65重量%、乳糖66.10重量%、アルファ化デンプン10重量%、およびステアリン酸マグネシウム1.25重量%からなっていた。各カプセル剤は20 mgAのジプラシドンを含有していた。
【0243】
対照剤形C3
対照剤形C3は、20 mgAのジプラシドンを含有する市販のGEODEN(商標)カプセル剤からなっていた。このカプセル剤は、塩酸ジプラシドン 1水和物、乳糖、アルファ化デンプン、およびステアリン酸マグネシウムを含有していた。
【0244】
対照剤形C4
対照剤形C4は、20 mgAの塩酸ジプラシドン 1水和物を含有する即時放出錠からなっていた。この錠剤を製造するために、塩酸ジプラシドン 1水和物22.61重量%、無水乳糖51.14重量%、微結晶性セルロース20.0重量%、およびヒドロキシプロピルセルロース5.0重量%を、まずV型ブレンダーで30分間ブレンドした。次いでマグネシウム0.75重量%を添加し、3分間ブレンドした。このブレンドを、”DPS”ロール付きFreund TFミニローラー圧縮機により、回転速度5 rpm、圧縮力30 kg/cm2、およびオーガー速度18 rpmでローラー圧縮してリボンにした。得られたリボンを、2A-1601-173インペラーおよび2A-040G03122329スクリーンを備えた、500 rpmで作動するComil(197S)で造粒した。この顆粒は、それぞれ1.66および1.12 cm3/gの非タップおよびタップ比体積をもっていた。
【0245】
造粒した材料をV型ブレンダーに添加し、混合物を10分間ブレンドした。最終量のステアリン酸マグネシウム(0.5重量%)を添加し、顆粒をさらに3分間ブレンドした。7/32インチ標準丸凹型(SRC)工具を備えたKillian T100回転式錠剤プレスを用いて、目標硬度6〜8キロポンド(kP)の100mg錠を製造した。White Opadry IIフィルムコート(錠剤重量の4重量%)およびClear Opadryオーバーコート(錠剤重量の0.5重量%)を、Vector/ Freund HCT-30パンコーターで錠剤に施した。
【0246】
インビトロ放出試験
下記の直接薬物分析法を用いてDF-1〜DF-18のインビトロ放出試験を実施した。まず、溶解媒質である模擬腸内緩衝液900mLを収容した撹拌式USPタイプ2 dissoetteフラスコに剤形を入れた。DF-1〜DF-9については、模擬腸内緩衝液は50mMのNaH2PO4および2重量%のラウリル硫酸ナトリウム(pH 7.5に調節)からなっていた。DF-10〜DF-13、およびDF-16〜DF-18については、模擬腸内緩衝液は50mMのNaH2PO4および2重量%のラウリル硫酸ナトリウム(pH 6.5に調節)からなっていた。DF-14およびDF-15については、模擬腸内緩衝液は6mMのNaH2PO4、150mMのNaCl、および2重量%のラウリル硫酸ナトリウム(pH 6.5に調節)からなっていた。流動する緩衝液に全表面が曝露されるように剤形をフラスコの底から離しておくために、フラスコ内で剤形を金網支持体に入れ、溶液を50〜75 rpmで回転するパドルにより撹拌した。自動受容液交換式VanKel VK8000自動サンプリングdissoetteを用いて、周期的間隔で溶解媒質の試料を取り出す。次いで、溶解媒質中に放出された溶存薬物の濃度を、315nmでのUV吸光度、Zorbax RxC8 Relianceカラム、および55%(50mMリン酸二水素カリウム、pH 6.5)/45%アセトニトリルからなる移動相を用いるHPLCにより測定する。試料のUV吸光度を薬物標準品の吸光度と比較することにより、薬物濃度を計算した。次いで、媒質中の薬物濃度および媒質の体積から溶解媒質中の放出薬物の質量を計算し、最初に剤形中に存在していた質量に対する%として表示した。結果を表6に示す。
【0247】
【表8】

【0248】
【表9】

【0249】
即時放出型(IR)の市販GEODEN(商標)カプセル剤についての結果は、インビトロ試験媒質に導入した後の最初の2時間で95重量%より多量のジプラシドンが放出されたことを示す。
【0250】
下記の点以外は前記の直接薬物分析法を用いて、多粒子剤形DF-18のインビトロ試験を実施した。多粒子剤形を小型ビーカーに入れ、溶解媒質の試料で予備湿潤させた。この予備湿潤した多粒子剤形を、次いでゼロ時点で溶解媒質に添加した。溶解媒質をパドルにより50 rpmの速度で撹拌した。すべてのジプラシドンが放出された場合にジプラシドンの濃度が90μgA/mLとなるのに十分な量の多粒子剤形を溶解媒質に添加した。前記のようにHPLCにより薬物濃度を測定した。結果を表7に示す。
【0251】
【表10】

【0252】
表6および7の結果から、最初に剤形中に存在していたジプラシドンのうち80重量%および90重量%を放出する時間を推定し、表8に示す。
【0253】
【表11】

【0254】
実施例1
持続放出剤形DF-1およびDF-2ならびに対照剤形C1を、ヒトのインビボ試験で、健康な被験者において、第1相、開放、ランダム化、交差、単回投与試験により試験した。健康なヒトボランティアに摂食状態で剤形を投与し、各剤形は40 mgAのジプラシドンを含有していた。
【0255】
投与後、複数の時点で血漿試料を採集し、ジプラシドン濃度を測定した。表9にこれらの試験で得たCmax(ng/mL)、AUC0-inf(ng-hr/mL)、およびTmax(hr)を示す。表9に示す結果は初回投与後のものであり、定常状態値ではない。
【0256】
【表12】

【0257】
表9の結果は、持続放出剤形DF-1およびDF-2がIR対照より低いCmax値をもたらし、それぞれC1により得られたものの85%および44%のCmax値をもたらしたことを示す。さらに、DF-1およびDF-2についてのCmax/C24比はC1により得られたものより低かった。
【0258】
実施例2
持続放出剤形DF-4およびDF-5を、実施例1に概説した方法によりヒトのインビボ試験で試験した。健康なヒトボランティアに摂食状態で剤形を投与した。40 mgAのジプラシドンが投与されるように、各被験者に2錠のDF-5を投与した。
【0259】
投与後、複数の時点で血漿試料を採集し、ジプラシドン濃度を測定した。表10にこれらの試験で得たCmax(ng/mL)、AUC0-inf(ng-hr/mL)、およびTmax(hr)、ならびにC12およびC24値を示す。表10に示す結果は初回投与後のものであり、定常状態値ではない。表10には前記のIR対照についての結果も示す。
【0260】
【表13】

【0261】
表10の結果は、持続放出剤形DF-4およびDF-5がIR対照C1より低いCmax値を示し、それぞれC1により得られたものの37%のCmax値をもたらしたことを示す。さらに、DF-4およびDF-5についてのCmax/C24比はC1により得られたものより低かった。
【0262】
実施例3
持続放出剤形DF-3、DF-7、DF-8、DF-9、DF-10、DF-11、DF-15、および対照剤形C1を、摂食状態のビーグル犬を用いるインビボ試験で試験した。犬に1缶のClinicare犬用液餌を試験前日に与えた。犬に水を任意に摂取させた。試験の朝、犬に50gの乾燥餌を与え、15分間食べさせた。犬が食べ終えた後、上記の剤形を投与し、剤形投与の直後に50mLの水を胃管投与した。次いで、試験期間中、犬を代謝ケージに入れ、または個別に試験した。犬に水を自由に摂取させ、投与の8時間後に普通量の餌を与えた。
【0263】
ヘパリンナトリウムを入れた血漿血清分離試験管を用い、20ゲージの針で、投与後、0、0.5、1、2、4、8、12および24時間目に、6mlの全血試料を頚静脈または腕頭静脈から採取した。試料を冷却(5℃)遠心機により2500 rpmで15分間遠心した。得られた血漿試料を2mlの凍結用プラスチック試験管に注入し、サンプリング時点後30分以内にフリーザー(-20℃)内に保存した。次いで試料をHPLCにより分析した。表11にこれらの試験の結果をまとめる。表11に示す結果は初回投与後のものであり、定常状態値ではない。
【0264】
【表14】

【0265】
表11の結果は、持続放出剤形がIR対照C1より低いCmaxをもたらし、C1により得られたものの17〜40%であったことを示す。また持続放出剤形はIR対照(C1)により得られたものより有意に低いCmax/C24比、すなわちC1のものより13〜40%低い値をもたらした。
【0266】
実施例4
ヒトにおいて即時放出および持続放出両方のジプラシドン剤形の試験を実施し、目的とする定常状態血中ジプラシドン濃度を達成するのに適した剤形を判定するモデリング試験の基礎としてそれらの結果を用いた。そのモデリング結果を用いて、好ましいCmax(血中)、Cmin(血中)、およびCmax/Cmin比をもたらす剤形を製造することができる。
【0267】
実施例1で持続放出剤形DF-2およびIR経口カプセル剤C1について実施した試験の結果から、血中濃度-対-時間データを収集した。さらに即時放出錠C4についての別個の試験から、血中濃度-対-時間データを収集した。ワンコンパートメント薬物動態モデルを用いて、これらのデータを一次吸収および排出と適合させた。このモデルから求めた平均薬物動態パラメーターを表12に報告する。
【0268】
【表15】

【0269】
(CL/F = クリアランス/経口生物学的利用能;V = 分布体積;Ka= 吸収速度定数;Tlag = 遅れ;およびAUC = 血中ジプラシドン濃度曲線下面積)
次いでこのモデルの結果を用いて、各種モデル剤形について異なる投与間隔で種々の定常状態血中(血漿)ジプラシドン濃度を計算した。計算した定常状態血中(血漿)ジプラシドン濃度および薬物動態パラメーターを表13に示す。
【0270】
【表16】

【0271】
(BID = 1日2回投与;QD = 1日1回投与;Tmax= Cmaxに達する時間(時間))
この結果は、各持続放出剤形がIR経口カプセル剤およびIR錠剤と対比して改良された性能を達成すると推定されることを示す。たとえば60 mgAのIR経口カプセル剤を60 mgAの持続放出剤形と比較すると、持続放出剤形はCmaxを有意に低下させ、一方では、ほぼ同じCminをもたらす。60 mgAのIR経口カプセル剤のCmaxは155 ng/mlであると推定され、一方60 mgの持続放出剤形のCmaxは104 ng/mlであると推定される。
【0272】
このモデリングはさらに、持続放出剤形では同量のジプラシドンを含有するIR剤形と対比して、Cmaxを有意に高めることなく、より高い用量のジプラシドンを投与できることを指摘する。たとえばこのモデルから、90 mgAの持続放出剤形は156 ng/mlのCmaxおよび91.8 ng/mlのCminをもたらすと推定される。これに対し、IR経口カプセル剤は155 ng/mlのCmaxをもたらすが、わずか59 ng/mlのCminをもたらすであろう。したがってこのモデルから、IR経口カプセル剤と対比して50%多量のジプラシドンを含む持続放出剤形は、Cmaxを有意に高めないが、Cminを有意に高めると推定される。
【0273】
さらに持続放出剤形は、特定用量のジプラシドンについては1日1回投与を可能にする定常状態血中(血漿)ジプラシドン濃度計算値を与える。120 mgAのジプラシドンを含有する持続放出剤形は、1日1回投与した場合、25.1 ng/mlのCminおよび148 ng/mlのCmaxをもたらす。これらは両方とも、ジプラシドンについて望ましい定常状態血中濃度範囲内にある。これに対し、120 mgAのジプラシドンを含有するIR経口カプセル剤は16.6 ng/mlのCminをもたらすと推定される。これは、望ましい最小血中ジプラシドン濃度20 ng/mlより低い。
【0274】
最後に、次いでこのモデルの結果を組み合わせて、即時放出部分と持続放出部分の両方をもつ剤形の性能を推定した。用量応答が単純に直線的であると仮定して、DF-2についてのモデリング結果をC4から得たモデリング結果と組み合わせた。たとえば”SR30+IR30”配合物は、30 mgAの持続放出部分と30 mgAの即時放出部分をもつ剤形に相当する。この剤形において、持続放出部分はDF-2のような挙動を示し、即時放出部分はC4のような挙動を示す。このモデルの結果を表15に示し、60 mgAの即時放出経口カプセル剤(C1)についての計算結果を比較のために示す。
【0275】
【表17】

【0276】
(SRはDF-2から得たパラメーターに対応し、一方IRはC4から得たパラメーターに対応する)
これらの結果は、即時放出部分と持続放出部分の両方をもつ剤形が良好な性能を達成すると推定されることを示す。すべての剤形が50 ng/mlより高い定常状態Cminおよび330 ng/mlより低いCmaxをもたらすと推定される。幾つかの剤形は50 ng/mlより高い定常状態Cminおよび200 ng/mlより低い定常状態Cmaxをもたらすと推定される:SR30+IR30;SR30+IR45;SR40+IR30;およびSR60+IR30。
【0277】
図1は、SR30+IR30剤形についてのモデルから計算した血中ジプラシドン濃度を示す。実線は初回投与後の血中(血漿)ジプラシドン濃度計算値を示し、一方、破線は定常状態血中(血漿)ジプラシドン濃度を示す。図2は、SR60+IR30剤形についての計算結果を示す。両方の場合とも、剤形は50 ng/mlより高い定常状態Cminおよび200 ng/mlより低い定常状態Cmaxをもたらすと推定される。
【0278】
以上の説明中に用いた用語および表現は記述用語として用いたものであり、限定ではなく、そのような用語および表現を用いる際、そこに提示および記載した態様またはその一部の均等物を除外するものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲の記載によってのみ規定および限定されることを認識すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0279】
【図1】実施例4のモデリング結果に基づくモデル剤形についての、時間に対する血中(血漿)ジプラシドン濃度を示す。
【図2】実施例4のモデリング結果に基づく他のモデル剤形についての、時間に対する血中(血漿)ジプラシドン濃度を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的に有効な量のジプラシドン(ziprasidone)、および当該ジプラシドンの少なくとも一部を放出するための持続放出手段を含む、持続放出経口剤形であって、投与されて定常状態に達した後、少なくとも20 ng/mlの定常状態最小血中ジプラシドン濃度(Cmin)、および330 ng/ml未満の定常状態最大血中ジプラシドン濃度(Cmax)をもたらす剤形。
【請求項2】
薬学的に有効な量のジプラシドンを含む持続放出経口剤形であって、当該剤形は、インビトロ使用環境に投与された後の最初の2時間で当該剤形から当該ジプラシドンの90重量%以下しか放出せず、当該剤形は、少なくとも30 mgAのジプラシドンを含み、当該インビトロ使用環境は、溶解媒質である模擬腸内緩衝液900mLである、剤形。
【請求項3】
薬学的に有効な量のジプラシドン、および当該ジプラシドンの少なくとも一部を放出するための持続放出手段を含む持続放出経口剤形であって、持続放出手段中のこの少なくとも一部のジプラシドンが、結晶質ジプラシドン、およびシクロデキストリンと組み合わせたジプラシドンのうちの少なくとも1つである剤形。
【請求項4】
剤形が、インビトロ使用環境に投与された後の最初の2時間で当該剤形から前記ジプラシドンの90重量%以下しか放出せず、当該剤形が、少なくとも30 mgAのジプラシドンを含み、インビトロ使用環境が、溶解媒質である、2重量%のラウリル硫酸ナトリウムを含む50 mM NaH2PO4からなるpH 7.5および37℃の模擬腸内緩衝液900mLである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項5】
剤形が、前記使用環境に投与された後の最初の2時間で前記ジプラシドンの80重量%以下しか放出しない、請求項4に記載の剤形。
【請求項6】
剤形が、前記使用環境に投与された後の最初の2時間で前記ジプラシドンの70重量%以下しか放出しない、請求項5に記載の剤形。
【請求項7】
剤形が、前記使用環境に投与された後の最初の2時間で前記ジプラシドンの80重量%以下しか放出しない、請求項2に記載の剤形。
【請求項8】
剤形中のジプラシドンの少なくとも約80重量%を放出する時間が少なくとも4時間である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項9】
剤形中のジプラシドンの少なくとも約80重量%を放出する時間が少なくとも6時間である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項10】
投与後の最初の2時間で前記ジプラシドンの70重量%以下しか前記使用環境に放出しない、請求項9に記載の剤形。
【請求項11】
患者に1日2回投与された後、剤形が2.6未満の定常状態比Cmax:Cminをもたらす、請求項1に記載の剤形。
【請求項12】
定常状態比Cmax:Cminが2.4未満である、請求項11に記載の剤形。
【請求項13】
定常状態比Cmax:Cminが2.2未満である、請求項12に記載の剤形。
【請求項14】
患者に1日1回投与された後、剤形が12未満の定常状態比Cmax:Cminをもたらす、請求項1に記載の剤形。
【請求項15】
定常状態比Cmax:Cminが10未満である、請求項14に記載の剤形。
【請求項16】
定常状態比Cmax:Cminが8未満である、請求項15に記載の剤形。
【請求項17】
摂食状態における患者に投与された後、剤形が少なくとも20 ng/mlの定常状態最小血中ジプラシドン濃度(Cmin)をもたらす、請求項2に記載の剤形。
【請求項18】
Cminが少なくとも35 ng/mlである、請求項1または17に記載の剤形。
【請求項19】
Cminが少なくとも50 ng/mlである、請求項18に記載の剤形。
【請求項20】
摂食状態の患者に投与された後、剤形が330 ng/ml未満の定常状態最大血中ジプラシドン濃度(Cmin)をもたらす、請求項2に記載の剤形。
【請求項21】
Cmaxが265 ng/ml未満である、請求項1または20に記載の剤形。
【請求項22】
Cmaxが200 ng/ml未満である、請求項21に記載の剤形。
【請求項23】
1日2回投与した場合、少なくとも240 ng-hr/mlの、摂食状態での投与後12時間にわたる血中ジプラシドン濃度-対-時間曲線下定常状態面積をもたらす、請求項1〜3のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項24】
Cmax:Cmin比が、同じ投与頻度で投与した対照即時放出経口カプセル剤によりもたらされる定常状態最大血中ジプラシドン濃度-対-定常状態最小血中ジプラシドンの濃度比率より小さく、当該対照即時放出経口カプセル剤が、本質的に塩酸ジプラシドン・1水和物、乳糖、アルファ化デンプンおよびステアリン酸マグネシウムからなり、当該対照即時放出経口カプセル剤が前記の投与剤形と同量のジプラシドンを含有する、請求項1に記載の剤形。
【請求項25】
剤形が、同じ投与頻度で投与した対照即時放出経口カプセル剤によりもたらされる定常状態最大血中ジプラシドン濃度-対-定常状態最小血中ジプラシドン濃度比以下である定常状態最大血中ジプラシドン濃度(Cmax)-対-定常状態最小血中ジプラシドン濃度(Cmin)比をもたらし、当該対照即時放出経口カプセル剤が、本質的に塩酸ジプラシドン・1水和物、乳糖、アルファ化デンプンおよびステアリン酸マグネシウムからなり、対照即時放出経口カプセル剤が、当該投与剤形と同量のジプラシドンを含有する、請求項2または3に記載の剤形。
【請求項26】
剤形が、対照即時放出経口カプセル剤と対比して少なくとも50%の相対生物学的利用能をもたらし、対照即時放出経口カプセル剤が本質的に当量の塩酸ジプラシドン・1水和物の形の活性ジプラシドン、乳糖、アルファ化デンプンおよびステアリン酸マグネシウムからなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項27】
ジプラシドンが結晶質である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項28】
結晶質ジプラシドンの体積重みつき(weighted)平均粒子直径が約10μm未満である、請求項27に記載の剤形。
【請求項29】
ジプラシドンが溶解度改良形態のものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項30】
ジプラシドンが高溶解性塩形態のものである、請求項29に記載の剤形。
【請求項31】
さらにシクロデキストリンを含む、請求項29に記載の剤形。
【請求項32】
さらに可溶化剤を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項33】
可溶化剤がシクロデキストリンである、請求項32に記載の剤形。
【請求項34】
さらに沈殿防止剤を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項35】
沈殿防止剤がポリマーである、請求項34に記載の剤形。
【請求項36】
沈殿防止剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、およびカルボキシメチルエチルセルロースよりなる群から選択される、請求項35に記載の剤形。
【請求項37】
沈殿防止剤がヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートである、請求項36に記載の剤形。
【請求項38】
沈殿防止剤がジプラシドン上のコーティングとして存在する、請求項35に記載の剤形。
【請求項39】
ジプラシドンの少なくとも一部を溶解度改良形態で、および沈殿防止剤を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項40】
少なくとも30 mgAのジプラシドンを含む、請求項1または3に記載の剤形。
【請求項41】
剤形の少なくとも5重量%がジプラシドンである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項42】
前記使用環境に投与された後の最初の1時間以内に前記ジプラシドンの少なくとも10重量%が放出される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項43】
さらに即時放出部分を含む、請求項42に記載の剤形。
【請求項44】
剤形が浸透圧錠である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項45】
剤形がマトリックス錠である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項46】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の剤形を投与することを含む、ジプラシドンを必要とする患者の処置方法。
【請求項47】
剤形を1日1回だけ投与する、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
剤形を少なくとも1日2回投与する、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
剤形を1日2回投与する、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
1日投与量が少なくとも40 mgAのジプラシドンである、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートがHグレードおよびMグレードのヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートを含む、請求項37に記載の剤形。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−504266(P2007−504266A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526153(P2006−526153)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【国際出願番号】PCT/US2004/028304
【国際公開番号】WO2005/020929
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(397067152)ファイザー・プロダクツ・インク (504)
【Fターム(参考)】