説明

ジベンジルトリチオカーボネート誘導体、その製造方法およびそれを用いた重合体

【課題】末端に水酸基を有する新規ジベンジルトリチオカーボネート誘導体を提供する。
【解決手段】一般式(1):[式中、Arはフェニレン基またはナフチレン基を表し、R1は(C1〜C4)アルキル基を表し、R2は(C2〜C4)アルキレン基を表す]
で表される、ジベンジルトリチオカーボネート誘導体により解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子の両末端にヒドロキシ基を有する新規ジベンジルトリチオカーボネート誘導体、その製造方法および該誘導体を用いるビニル基を有するモノマーの重合体ならびにその重合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、末端にヒドロキシ基を有する重合体は、該ヒドロキシ基と反応し得る官能基、例えばイソシアネート、カルボキシルおよびエステルなどの官能基を有する化合物を架橋剤として用いることにより、上記重合体のヒドロキシ部分に架橋を形成させることができ、耐熱性、耐水性、耐候性、耐久性、相溶性等に優れる機能性材料となり得ることが知られている。
【0003】
特に、重合体の両末端に官能基が導入されている場合、末端同士の架橋による鎖延長が効率的に起こり、使用する架橋剤によっては、直鎖状または網状の高分子量重合体を形成でき、優れた引張強度や伸び率を発現する樹脂を得ることができる。
【0004】
したがって、従来、上記のような末端にヒドロキシ基を導入する(メタ)アクリレート系重合体の製造方法が、種々研究されてきた(例えば、特許文献1〜7)。
しかしながら、従来法では、重合反応時における重合体の分子量の制御は容易ではなく、重合体の分子量分布(Mw / Mn (重量平均分子量/数平均分子量))まで記載している文献は殆どない。
【0005】
僅かに、特許文献4および特許文献6には、約2.0の分子量分布および約1.4程度の分子量分布を有する重合体の製造方法がそれぞれ記載されているが、自由に重合度を制御できる方法および分子量分布が1.3以下のような非常に狭い分子量分布を示す両末端にヒドロキシ基を有する重合体の簡便な製造方法は未だに見出されていない。
また、最近、末端にカルボン酸基を有するアクリルオリゴマーの重合反応は報告されている(例えば、非特許文献1)。
【0006】
【特許文献1】特開昭54−47782号公報
【特許文献2】特開昭61−271306号公報
【特許文献3】特公平1−19402号公報
【特許文献4】特開平5−262808号公報
【特許文献5】特開平7−228618号公報
【特許文献6】特開平11−80249号公報
【特許文献7】特開2002−114805号公報
【非特許文献1】G. Davidら、Eur. Pdym. J. 39, 77 - 83 (2003 )
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献1〜7に記載の方法は種々の問題点を含んでいる。すなわち、片末端にしか水酸基が入らない場合がある;重合制御が困難である;開始剤自体が不安定で取り扱いに難点がある;末端に限らず多数の水酸基を有するポリ(メタ)アクリレート重合体が得られ得る;高価な連鎖移動剤を大量に使用しなければならない;実用的規模の生産には不向きである;目的物との分離に多くの労力を要する;また、安価な過酸化水素のみを用いた場合には、得られるオリゴマーの分子量の調節が困難であるとともに、分子末端にのみ水酸基を導入することは困難である;など、工業生産の実用化には障害となる問題点を多数含んでいる。
【0008】
一方、近年、リビングラジカル重合の一種である付加-開裂移動反応(Reversible Addition-fragmentation chain transfer;RAFT)重合法が、重合初期から分子量分布の狭いポリマーを与え、かつ多様なモノマーに対して適用可能な点で注目されている(Chiefari, J.ら、Macromoelcules、1998、31、5591)。
【0009】
したがって、本願発明は、分子の両末端にヒドロキシ基を有し、分子量分布が小さいRAFT重合法に用いられ得る新規なジベンジルトリチオカーボネート誘導体、その製造方法の開発および該誘導体を用いた重合体(以下、単にRAFT重合体ともいう)の製造方法の開発および該RAFT重合体の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意努力を重ねた結果、両末端にヒドロキシ基を有する新規ジベンジルトリチオカーボネート誘導体と、その簡便な製造方法を見出し、本発明を完成した。
【0011】
また、本発明者は、上記のジベンジルトリチオカーボネート誘導体の存在下に、ビニル基を有するモノマーを重合反応させることによる、分子量分布が狭いRAFT重合体の製造方法およびその方法を用いた新規RAFT重合体も見出し、本発明を完成した。
【0012】
したがって、本発明によれば、一般式(1):
【化1】

[式中、Arはフェニレン基またはナフチレン基を表し、R1は(C1〜C4)アルキル基を表し、R2は(C2〜C4)アルキレン基を表す]
で表される、ジベンジルトリチオカーボネート誘導体が提供される。
【0013】
好ましくは、前記一般式(1)において、Arがフェニレン基であり、R1がエチル基であり、R2がエチレン基である、次の式:
【化2】

で表される、ジベンジルトリチオカーボネート誘導体(以下、単にRAFT剤ともいう)が提供される。
【0014】
さらに、本発明によれば、一般式(6):
【化3】

[式中、Ar、R1およびR2は上記で定義したとおりであり、R3はヒドロキシ基の保護基を表し、Xはハロゲン原子を表す]
で表される化合物を、二硫化炭素と反応させて、一般式(7):
【0015】
【化4】

[式中、Ar、R1、R2およびR3は上記で定義したとおりである]
で表される化合物を得、この化合物を脱保護して得られる一般式(1):
【0016】
【化5】

[式中、Ar、R1およびR2は上記で定義したとおりである]
で表される、ジベンジルトリチオカーボネート誘導体の製造方法が提供される。
【0017】
また、本発明によれば、前記一般式(6)の化合物が、一般式(3):
【化6】

[式中、ArおよびXは上記で定義したとおりである]
で表される化合物を、一般式(4):
【0018】
【化7】

[式中、Ar、R1およびR2は上記で定義したとおりである]
で表される化合物と反応させて、一般式(5):
【0019】
【化8】

[式中、Ar、R1、R2およびXは上記で定義したとおりである]
で表される化合物を得、この化合物のヒドロキシル基を保護して得られるジベンジルトリチオカーボネート誘導体の製造方法が提供される。
【0020】
さらに、本発明によれば、前記一般式(1)のジベンジルトリチオカーボネート誘導体または前記RAFT剤の存在下に、ビニル基を有するモノマーを重合反応させることを特徴とする、RAFT重合体の製造方法およびRAFT重合体が提供される。
【発明の効果】
【0021】
したがって、本願発明によれば、上記の両末端にヒドロキシ基を有する新規ジベンジルトリチオカーボネート誘導体およびその製造方法と、該誘導体の存在下でビニル基を有するモノマーを重合反応させることによる、両末端にヒドロキシ基を有するRAFT重合体の製造方法および該RAFT重合体が提供される。
【0022】
さらに、該RAFT重合体を用いて、当業者に周知の、ポリイソシアネートまたはジカルボン酸誘導体などの架橋剤と反応させたり、あるいは、末端もしくは分子中に官能基を有する他の重合体、例えばポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂と組合せて架橋させ、耐熱性、耐水性、耐久性および/または相容性などに優れる塗料用樹脂や機能性ブロック重合体用材料として使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明による、一般式(1)のジベンジルトリチオカーボネート誘導体は、以下の反応スキームに従って製造できる。
【化9】

[式中、Ar、R1、R2、R3およびXは上記で定義したとおりである]
【0024】
上記一般式(3)におけるArとしては、フェニレン基およびナフチレン基が挙げられ、また、Xとしては、ハロゲン原子、すなわちフッ素、塩素、臭素およびヨウ素原子が挙げられるが、反応性および入手の容易性の観点からArとしてはフェニレン基が好ましく、Xとしては塩素原子が好ましい。
【0025】
上記の一般式(4)および/または(5)におけるArおよびXについては上記一般式(3)において定義したとおりであり、R1としては、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、フェニルおよびベンジル基が挙げられ、R2としては、エチレンおよびプロピレン基が挙げられるが、化合物の入手の容易性の観点からR1としてはエチル基が好ましく、R2としてはエチレン基が好ましい。
【0026】
上記の一般式(6)におけるヒドロキシ基の保護基R3としては、トリフェニルメチル基、メトキシメチルおよびt-ブトキシメチル基などのアルコキシメチル基、トリメチルシリル、トリエチルシリル、t-ブチルジメチルシリル、t-ブチルジフェニルシリル基などのシリル基およびアセチル、プロピオニル、ブチリル、ベンゾイル基などのアシル基が挙げられるが、脱離の容易性の観点からアセチル基が好ましい。
したがって、上記工程3の保護化において用いられる保護剤としては、上記のアシル基に対応する酸ハライドまたは酸無水物が挙げられるが、中でも塩化アセチルが好ましい。
【0027】
上記反応スキームにおける工程1〜4は、いずれも溶媒中で行うことができる。
この溶媒としては、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、プロピオニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリジノンおよびジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒またはベンゼンおよびトルエンなどの非プロトン性非極性溶媒のような不活性溶媒が挙げられる。
【0028】
上記の工程1の反応は、上記の溶媒の中でも、例えば無水テトラヒドロフラン中、−20〜50℃、好ましくは0〜30℃の範囲の温度で撹拌下に行うことができる。
【0029】
上記の工程2の反応は、上記の溶媒の中でも、例えば無水ベンゼンまたはトルエン中、塩基の存在下に、−20〜50℃、好ましくは0〜30℃の範囲の温度で撹拌下に行うことができる。
この工程2で使用され得る塩基として、無機塩基としては水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムなどの水酸化アルカリ金属の水溶液、また、有機塩基としてはトリエチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジンおよびメチルモルホリンなどが挙げられる。
【0030】
工程3の反応は、上記の溶媒の中でも、非プロトン性極性溶媒中、炭酸アルカリ金属塩の存在下に、二硫化炭素と撹拌下に行なわれる。
【0031】
したがって、本発明によれば、前記一般式(1)の製造方法において、一般式(6)の化合物を、二硫化炭素と反応させて一般式(7)で表される化合物を得る反応が、非プロトン性極性溶媒中、炭酸セシウムまたは炭酸カリウムの存在下、室温〜加温下に行なわれるジベンジルトリチオカーボネート誘導体の製造方法が提供される。
【0032】
上記の非プロトン性極性溶媒としては、前記反応スキームで例示した非プロトン性極性溶媒が挙げられるが、その中でも目的物の収率の観点からテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミドおよびN,N−ジメチルアセトアミドが好ましく、さらにアセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミドおよびN,N−ジメチルアセトアミドがより好ましい。
【0033】
炭酸アルカリ金属塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムおよびフランシウムの炭酸塩が挙げられるが、目的物の収率の観点から、特に炭酸カリウムおよび炭酸セシウムが好適に用いられるのも、本発明の特徴の一つである。
【0034】
また、反応温度としては、0℃〜溶媒の沸点の範囲の温度で行うことができるが、10〜70℃、好ましくは20〜60℃、さらに好ましくは25〜50℃の範囲の温度、すなわち室温〜加温下で行うことができる。
【0035】
工程4の反応には、上記の溶媒に加えメタノールおよびエタノールなどプロトン性溶媒を含めたいずれの溶媒も用いることができるが、それらの中でも、化合物の溶解度の観点から、好ましくは、例えばテトラヒドロフランを用いることができ、該溶媒中、当業者に周知のアルカリ加水分解により、例えば0℃〜溶媒の沸点の範囲の温度で脱保護することができるが、温度に関しては、反応時間との兼ね合いで、任意に設定され得る。
【0036】
上記の工程1〜4で得られる化合物は、それぞれ精製することなく、または蒸留、再結晶もしくはカラムクロマトグラフィーなどの従来法により精製して使用できる。
このようして得られる前記の一般式(1):
【化10】

[式中、Ar、R1およびR2は上記で定義したとおりである]
で表されるジベンジルトリチオカーボネート誘導体は、RAFT重合法に使用できるのも、本発明の特徴の一つである。
【0037】
すなわち、上記のジベンジルトリチオカーボネートまたは前記のRAFT剤に対し、例えば1000〜5当量、好ましくは500〜20当量、さらに好ましくは300〜30当量のビニル基を有するモノマー用いて前記RAFT重合法に付すことにより、上記のジベンジルトリチオカーボネート誘導体またはRAFT剤の分子中に、使用したビニル基を有するモノマーが付加-開裂移動反応により重合挿入された構造を有するRAFT重合体が得られる。
【0038】
すなわち、別の観点から、本発明によれば、上記一般式(1)のジベンジルトリチオカーボネート誘導体または前記RAFT剤の存在下に、ビニル基を有するモノマーを重合反応させることを特徴とする、RAFT重合体の製造方法が提供される。
【0039】
上記の製造方法において、使用されるビニル基を有するモノマーとしては、例えば当業者に周知のスチレン、α−メチルスチレン、アクリル酸エステル類、メタアクリル酸エステル類、アクリルアミド類およびアクリロニトリルなどが挙げられる。
【0040】
アクリル酸エステルまたはメタアクリル酸エステル類としては、例えばアクリル酸またはメタアクリル酸のメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチルおよびt−ブチルなどの直鎖状もしくは分枝鎖状アルキルエステルや、フェニル、トルイルなどのアリールエステルおよびベンジルエステルが挙げられる。
【0041】
また、アクリルアミド類としては、例えばアクリルアミド以外に、その、N,N−ジメチル体、N,N−ジエチル体などのアクリルアミドのN−ジアルキル置換体が挙げられる。
前記の製造方法において、使用され得るビニル基を有するモノマーとしては、上記のモノマーを単独で、または2種以上を混合して用いてもよい。
【0042】
上記のRAFT重合体の製造方法は、通常、非プロトン性極性溶媒中で行なわれる。該非プロトン性極性溶媒としては、前記反応スキームで例示した非プロトン性極性溶媒が挙げられるが、その中でも目的物の収率の観点からジオキサン、プロピオニトリル、メチルエチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドおよびN-メチルピロリジノンが好ましく、これらを単独で、または2種以上の混合溶媒として用いることができる。
【0043】
したがって、本発明によれば、前記重合反応が、非プロトン性溶媒中で行なわれ、該非プロトン性極性溶媒が、ジオキサン、プロピオニトリル、メチルエチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドおよびN-メチルピロリジノンからなる群から選択される単独溶媒または2以上の混合溶媒である上記RAFT重合体の製造方法が提供される。
【0044】
また、上記の非プロトン性極性溶媒の代わりに、イソプロピルアルコールのようなプロトン性極性溶媒中で重合反応を行うこともできるが、この場合には、上記の非プロトン性極性溶媒に比べ、生成物の分子量分布が比較的広いRAFT重合体が得られる。
【0045】
上記のRAFT重合体の製造方法は、重合開始剤の非存在下に、単に加熱することにより行なうこともできるが、重合開始剤の存在下に重合を行なう場合は、当業者に周知の重合開始剤を用いることができる。それらの中でも、例えば2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、
【0046】
2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2'−アゾビス(N,N′−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2'−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド〕、2,2'−アゾビス(イソブチルアミド)ジヒドレート、4,4'−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2'−アゾビス(2−シアノプロパノール)などのアゾ化合物が、上記RAFT重合体のヒドロキシ部分に付加物を生成しない点から好ましく、さらに、式:
【0047】
【化11】

で表される2,2'−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド] (VA-086 (商標)、和光純薬工業株式会社)が、副生成物を生成し難い点で好ましい。
【0048】
上記のRAFT重合体の製造方法は、通常、還流冷却管、不活性ガス導入管、滴下ロート、撹拌機を備えた三頸もしくは四頸フラスコまたはシュレンク管あるいは密閉重合管またはオートクレーブなどを用いて、脱気後、不活性ガス雰囲気下に、溶媒中で行なうことができる。
【0049】
また、不活性ガスは、酸素ガス置換を目的としており、窒素ガスまたはアルゴンガスを用いることができる。
重合反応温度は、通常、40〜150℃、好ましくは60〜130℃または溶媒の沸点の範囲の温度で行うことができる。
【0050】
すなわち、別の観点に基づけば、本発明によれば、前記RAFT重合体が、一般式(2):
【化12】

[式中、Ar、R1およびR2は上記で定義したとおりであり、Rはビニル基を有するモノマーに由来する基を表し、nは5〜1000の整数を表し、mは1以上nより小さい整数を表す]
で表される、RAFT重合体の製造方法が提供される。
【0051】
上記の式(2)において、通常nは、5〜1000、より好ましくは20〜500、さらに好ましくは30〜300の整数を表す。
また、mは1以上nより小さい整数を表し得るが、本発明者らの実験結果からは、通常、mとn−mの値とは同程度の値、すなわち、mはnの約半分の値を示す。
【0052】
したがって、本発明のRAFT重合体の製造方法に従って、種々のビニル基を有するモノマーが本発明によるジベンジルトリチオカーボネート誘導体またはRAFT剤の分子中に、重合挿入された構造を有するRAFT重合体を得ることができる。
【0053】
すなわち、もう一つの観点によれば、本発明は、一般式(2):
【化13】

[式中、Ar、R1、R2、R、nおよびmは上記で定義したとおりである]
で表されるRAFT重合体を提供することもできる。
【実施例】
【0054】
以下の実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら制限されるものではない。
なお、実施例では、特に記載がない限り、以下の試薬および分析装置を用いた。
VA-086 (商標) (2,2'-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド、和光純薬工業株式会社製)
NMR測定装置:Varian社製 UNITY−INOVA 500(500 MHz)
元素分析装置:Perkin Elmer社製CHNS/O 2400II Analyzer
GPC分析装置:TOSOH社製 HLC−8220GPC
【0055】
実施例1
N-エチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-4-(クロロメチル)ベンズアミドの製造
撹拌器、還流冷却管、滴下ロートを備えた200 mL三頸フラスコにN-エチル-エタノールアミン8.91 g (100 mmol)とテトラヒドロフラン50 mLを加え、反応液を0〜10℃に保ちながら4-クロロメチルベンゾイルクロライド4.73 g (25 mmol)のテトラヒドロフラン25 mL溶液を撹拌下に滴下し、1時間撹拌した。更に室温で4時間撹拌して溶媒を留去した。残渣に冷水50 mLを加えた後、濃塩酸を加えて弱酸性にし、酢酸エチル100 mLで二回抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水50 mLで洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去して標記化合物5.95 g (収率98%)を無色油状物として得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ(ppm):1.15 (3 H, m, CH3), 3.33 (2 H, m, CH2CH3), 3.59 (1 H, s, OH), 3.70 (2 H, m, CH2CH2O), 3.89 (2 H, m, CH2CH2O), 4.60 (2 H, s, CH2Cl), 7.40-4.45 (4 H, ArH)
【0056】
実施例2
N-エチル-N-(2-アセトキシエチル)-4-(クロロメチル)ベンズアミドの保護化
撹拌器、還流冷却管、滴下ロートを備えた200 mL三頸フラスコにN-エチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-4-(クロロメチル)ベンズアミド4.83 g (20 mmol)、トリエチルアミン3.04 g (30 mmol)、4-ジメチルアミノピリジン171 mg (1.4 mmol)およびトルエン64 mLを加え、撹拌下に塩化アセチル2.35 g (30 mmol)のトルエン6 mL溶液を、室温で20分間かけて滴下した。更に室温で2時間撹拌した後、反応液を濾過し、残渣をトルエン30 mLで洗浄した。合わせた濾液を2N塩酸水溶液50 mL、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液50 mL、水100 mL、飽和食塩水50 mLで順次洗浄した後、分液して無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒留去して得られた粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:CHCl3 / MeOH = 50 / 1)に付して精製し、標記化合物6.53 g (収率92%)を淡黄色油状物として得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ(ppm):1.12-1.26 (3 H, m, CH3), 2.08 (3 H, s, C(O)CH3), 3.33-3.53 (2 H, m, CH2CH3), 3.60-3.74 (2 H, m, CH2CH2O), 4.11-4.36 (2 H, m, CH2CH2O), 4.60 (2 H, s, CH2Cl), 7.37 (2 H, d, J = 8.0 Hz, ArH), 7.43 (2 H, d, J = 8.0 Hz, ArH).
【0057】
実施例3
ビス[4-[エチル-2-(アセトキシエチル)アミノカルボニル]-ベンジル]トリチオカーボネートの合成
撹拌器、還流冷却管、滴下ロートを備えた50 mLナス型フラスコに炭酸カリウム2.67 g (19.3 mmol)、N,N-ジメチルホルムアミド14 mLを加え、そこへ二硫化炭素1.47 g (19.3 mmol)を加えて油浴50℃で撹拌した。15分後にN-エチル-N-(2-アセトキシエチル)-4-(クロロメチル)ベンズアミド4.97 g (17.5 mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド3.5 mL溶液を加えて50℃でさらに24時間撹拌した。反応液を冷水100 mLに加えて反応を停止し、酢酸エチル100 mLで二回抽出した。合わせた有機層を水100 mL、飽和食塩水50 mLで順次洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒留去して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:CHCl3 / MeOH = 50 / 1)に付して精製し、標記化合物4.92 g (収率93%)を淡黄色油状物として得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ(ppm):1.12-1.25 (6 H, m, CH3), 2.08 (6 H, s, C(O)CH3), 3.32-3.52 (4 H, m, CH2CH3), 3.59-3.74 (4 H, m, CH2CH2O), 4.11-4.35 (4 H, m, CH2CH2O), 4.64 (4 H, s, CH2S), 7.33 (4 H, d, J = 8.5 Hz, ArH), 7.38 (4 H, d, J = 8.5 Hz, ArH)
【0058】
実施例4
ビス[4-[エチル-2-(ヒドロキシエチル)アミノカルボニル]-ベンジル]トリチオカーボネートの合成
撹拌器、還流冷却管、滴下ロートを備えた200 mL三頸フラスコにビス[4-[エチル-2-(アセトキシエチル)アミノカルボニル]-ベンジル]トリチオカーボネート3.02 g (5 mmol)とテトラヒドロフラン60 mLを加え、反応液を氷浴で0℃に冷却しながら撹拌下に、1M水酸化カリウム水溶液30 mL (30 mmol)を30分間かけて滴下した。更に室温で4時間撹拌した後、反応液に飽和炭酸ナトリウム水溶液10 mL、水10 mLを加え、酢酸エチル100 mLで二回抽出した。合わせた有機層を水100 mL、飽和食塩水50 mLで順次洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒留去して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:CHCl3 / MeOH = 30 / 1)で精製し、標記化合物2.25 g (収率86%)を淡黄色油状物として得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ(ppm):1.01-1.13 (6 H, m, CH3), 3.22 (4 H, m, CH2CH3), 3.45-3.59 (8 H, CH2CH2O), 4.73 (4 H, s, CH2S), 4.78 (2 H, s, OH), 7.34 (4 H, m, ArH), 7.43 (4 H, m, ArH)
【0059】
実施例5
ビス[4-[エチル-2-(ヒドロキシエチル)アミノカルボニル]-ベンジル]トリチオカーボネートを用いたジオキサン中におけるスチレンのRAFT重合
撹拌器、還流冷却管、窒素導入管を備えた10mL三頸フラスコに実施例4で得られたビス[4-[エチル-2-(ヒドロキシエチル)アミノカルボニル]-ベンジル]トリチオカーボネート15.6 mg (0.03 mmol)、スチレン1.04 g (10 mmol)、ジオキサン2 mLを加え、減圧脱気後、窒素ガス置換して、窒素気流下に110℃で24時間撹拌した。反応終了後、室温に冷却して反応を停止した。
【0060】
反応液をヘキサン50 mLまたはヘキサン50 mL / 水30 mL混合液に加えて、再沈殿を行った。残渣を減圧乾燥して淡黄色固体の重合体を得た。
得られた重合体の分子量(Mn)及び分子量分布(Mw / Mn)はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により分析した。GPC分析は0.01M臭化リチウムのN,N-ジメチルホルムアミド溶液を溶離液とし、ポリスチレン換算にて行い、その結果を以下の表1に示す。
【0061】
実施例6
ビス[4-[エチル-2-(ヒドロキシエチル)アミノカルボニル]-ベンジル]トリチオカーボネートを用いたプロピオニトリル中におけるスチレンのRAFT重合
溶媒をジオキサンからプロピオニトリル(EtCN)に変更した以外は、実施例5と全く同様にして得た結果を以下の表1に示す。
【0062】
実施例7
ビス[4-[エチル-2-(ヒドロキシエチル)アミノカルボニル]-ベンジル]トリチオカーボネートを用いたN,N-ジメチルホルムアミド中におけるスチレンのRAFT重合
溶媒をジオキサンからN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に変更した以外は、実施例5と全く同様にして得た結果を以下の表1に示す。
【0063】
実施例8
ビス[4-[エチル-2-(ヒドロキシエチル)アミノカルボニル]-ベンジル]トリチオカーボネートを用いたN,N-ジメチルアセトアミド中におけるスチレンのRAFT重合
溶媒をジオキサンからN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)に変更した以外は、実施例5と全く同様にして得た結果を以下の表1に示す。
【0064】
実施例9
ビス[4-[エチル-2-(ヒドロキシエチル)アミノカルボニル]-ベンジル]トリチオカーボネートを用いたN-メチルピロリジノン中におけるスチレンのRAFT重合
溶媒をジオキサンからN-メチルピロリジノン(NMP)に変更した以外は、実施例5と全く同様にして得た結果を以下の表1に示す。
【0065】
実施例10
ビス[4-[エチル-2-(ヒドロキシエチル)アミノカルボニル]-ベンジル]トリチオカーボネートを用いたジメチルスルホキシド中におけるスチレンのRAFT重合
溶媒をジオキサンからジメチルスルホキシド(DMSO)に変更した以外は、実施例5と全く同様にして得た結果を以下の表1に示す。
【0066】
【表1】

なお、上記式においてMn(th)は数平均分子量の理論値を意味し、Conv.は収率を意味し、NStはスチレンモノマーの使用モル数を意味し、MStはスチレンモノマーの分子量を意味し、NCTAはRAFT剤の使用モル数を意味し、MCTAはRAFT剤の分子量を意味する。
【0067】
上記の結果から、本発明によるジベンジルトリチオカーボネート誘導体の存在下にスチレンをモノマーとしてRAFT重合を行ったところ、得られたRAFT重合体は、使用した溶媒により若干の差はあるものの、分子量分布がいずれも1.15〜1.22と極めて狭い分子量分布を示すことが判った。
【0068】
実施例11
ビス[4-[エチル-2-(ヒドロキシエチル)アミノカルボニル]-ベンジル]トリチオカーボネートを用いたメチルエチルケトン中におけるアクリル酸エチルのRAFT重合
撹拌器、還流冷却管、窒素導入管を備えた10mL三頸フラスコに実施例4で得られたビス[4-[エチル-2-(ヒドロキシエチル)アミノカルボニル]-ベンジル]トリチオカーボネート15.6 mg (0.03 mmol)、2,2'-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド] (VA-086) 4.3 mg (0.015 mmol)、アクリル酸エチル1.00 g (10 mmol)、メチルエチルケトン(MEK)2 mLを加え、減圧脱気後、窒素ガス置換して、窒素気流下に100℃で30分間撹拌し、その後室温に冷却して反応を停止した。
【0069】
反応液をヘキサン50 mLまたはヘキサン50 mL / 水30 mL混合液に加えて、再沈殿を行った。残渣を減圧乾燥して淡黄色油状物の重合体を得た。得られた重合体の分子量及び分子量分布はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により分析した。GPC分析は0.01M臭化リチウムのN,N-ジメチルホルムアミド溶液を溶離液とし、ポリスチレン換算にて行い、その結果を以下の表2に示す。
【0070】
実施例12
ビス[4-[エチル-2-(ヒドロキシエチル)アミノカルボニル]-ベンジル]トリチオカーボネートを用いたジオキサン中におけるアクリル酸エチルのRAFT重合
溶媒をメチルエチルケトンからジオキサンに変更した以外は、実施例11と全く同様にして得た結果を以下の表2に示す。
【0071】
実施例13
ビス[4-[エチル-2-(ヒドロキシエチル)アミノカルボニル]-ベンジル]トリチオカーボネートを用いたアクリル酸エチルのRAFT重合
溶媒をメチルエチルケトンからN,N-ジメチルホルムアミドに変更した以外は、実施例11と全く同様にして得た結果を以下の表2に示す。
【0072】
実施例14
ビス[4-[エチル-2-(ヒドロキシエチル)アミノカルボニル]-ベンジル]トリチオカーボネートを用いたアクリル酸エチルのRAFT重合
溶媒をメチルエチルケトンからN,N-ジメチルアセトアミドに変更した以外は、実施例11と全く同様にして得た結果を以下の表2に示す。
【0073】
実施例15
ビス[4-[エチル-2-(ヒドロキシエチル)アミノカルボニル]-ベンジル]トリチオカーボネートを用いたアクリル酸エチルのRAFT重合
溶媒をメチルエチルケトンからN-メチルピロリジノンに変更した以外は、実施例11と全く同様にして得た結果を以下の表2に示す。
【0074】
実施例16
ビス[4-[エチル-2-(ヒドロキシエチル)アミノカルボニル]-ベンジル]トリチオカーボネートを用いたアクリル酸エチルのRAFT重合
溶媒をメチルエチルケトンからジメチルスルホキシドに変更した以外は、実施例11と全く同様にして得た結果を以下の表2に示す。
【0075】
実施例17
ビス[4-[エチル-2-(ヒドロキシエチル)アミノカルボニル]-ベンジル]トリチオカーボネートを用いた2−プロピルアルコール中におけるアクリル酸エチルのRAFT重合
溶媒をメチルエチルケトンから2−プロピルアルコール(2−PrOH)に変更した以外は、実施例11と全く同様にして得た結果を以下の表2に示す。
【0076】
【表2】

【0077】
上記の結果から、本発明によるジベンジルトリチオカーボネート誘導体の存在下にスチレンをモノマーとしてRAFT重合を行ったところ、得られたRAFT重合体は、使用した溶媒により若干の差はあるものの、分子量分布がいずれも1.14〜1.56と極めて狭い分子量分布を示すことが判った。
【0078】
実施例18
RAFT重合によるスチレンオリゴマーの合成と元素分析による末端官能基導入率の評価
実施例4で得られたビス[4-[エチル-2-(ヒドロキシエチル)アミノカルボニル]-ベンジル]トリチオカーボネート156 mg (0.3 mmol)、ジメチルスルホキシド2 mLを用いる以外は実施例5と同様の操作で重合を行った。得られた淡黄色結晶の重合体の収率は52%、分子量(Mn)は2,250 (th = 2,330)、分子量分布(Mw / Mn)は1.15であった。また元素分析の実測値:C; 83.66, H; 7.34, N; 1.29, S; 4.42と理論値(C158H165N2O4S3):C; 84.25, H; 7.38, N; 1.25, S; 4.28がほぼ一致することより、本重合法によって得られるRAFT重合体の両末端には、RAFT剤由来の水酸基が定量的に導入されていることが判明した。
得られたRAFT重合体をジメチルスルホキシド−d6中で、NMR測定したところ、重水添加により重水置換性のヒドロキシ基由来のプロトンの存在およびスチレンポリマーに由来するRAFT重合体のプロトン吸収が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明によるジベンジルトリチオカーボネート誘導体の存在下にビニル基を有するモノマーを用いてRAFT重合を行うと、極めて狭い分子量分布を示すRAFT重合体を得ることができる。
このようにして得られた一般式(2)で表されるRAFT重合体は、その両末端のヒドロキシ基と、当業者に周知の反応性樹脂、例えばポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂などの各種樹脂、あるいは1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する2,4−または2,6−トリレンジイソシアネートのような多価イソシアネート化合物や、1分子中に2個以上のカルボキシ基を有するシュウ酸、フタル酸、テレフタル酸などの多価カルボン酸、またはその無水物もしくはハロゲン化物などと反応させることができるので、耐熱性、耐水性、耐久性および/または相容性などに優れる塗料用樹脂や機能性材料用ブロック重合体用材料として使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
【化1】

[式中、Arはフェニレン基またはナフチレン基を表し、R1は(C1〜C4)アルキル基を表し、R2は(C2〜C4)アルキレン基を表す]
で表される、ジベンジルトリチオカーボネート誘導体。
【請求項2】
前記誘導体が、前記一般式(1)において、Arがフェニレン基であり、R1がエチル基であり、R2がエチレン基である、次の式:
【化2】

で表される、請求項1に記載のジベンジルトリチオカーボネート誘導体。
【請求項3】
一般式(6):
【化3】

[式中、Ar、R1およびR2は上記で定義したとおりであり、R3はヒドロキシ基の保護基を表し、Xはハロゲン原子を表す]
で表される化合物を、二硫化炭素と反応させて、一般式(7):
【化4】

[式中、Ar、R1、R2およびR3は上記で定義したとおりである]
で表される化合物を得、この化合物を脱保護して得られる一般式(1):
【化5】

[式中、Ar、R1およびR2は上記で定義したとおりである]
で表される、ジベンジルトリチオカーボネート誘導体の製造方法。
【請求項4】
前記製造方法において、一般式(6)の化合物を、二硫化炭素と反応させて一般式(7)で表される化合物を得る反応が、非プロトン性極性溶媒中、炭酸セシウムまたは炭酸カリウムの存在下、室温〜加温下に行なわれる請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記一般式(6)の化合物が、一般式(3):
【化6】

[式中、ArおよびXは上記で定義したとおりである]
で表される化合物を、一般式(4):
【化7】

[式中、R1およびR2は上記で定義したとおりである]
で表される化合物と反応させて、一般式(5):
【化8】

[式中、Ar、R1、R2およびXは上記で定義したとおりである]
で表される化合物を得、この化合物のヒドロキシ基を保護して得られる請求項3または4に記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1または2に記載のジベンジルトリチオカーボネート誘導体の存在下に、ビニル基を有するモノマーを重合反応させることを特徴とする、RAFT重合体の製造方法。
【請求項7】
前記ビニル基を有するモノマーが、スチレン、アクリル酸エステル類、メタアクリル酸エステル類およびアクリルアミド類からなる群から選択される請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記重合反応が、非プロトン性溶媒中で行なわれ、該非プロトン性極性溶媒が、ジオキサン、プロピオニトリル、メチルエチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドおよびN-メチルピロリジノンからなる群から選択される単独溶媒または2種以上の混合溶媒である請求項6または7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記RAFT重合体が、一般式(2):
【化9】

[式中、Ar、R1およびR2は上記で定義したとおりであり、Rはビニル基を有するモノマーに由来する基を表し、nは5〜1000の整数を表し、mは1以上nより小さい整数を表す]
で表される、請求項6〜8のいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項10】
一般式(2):
【化10】

[式中、Ar、R1、R2、R、nおよびmは上記で定義したとおりである]
で表されるRAFT重合体。

【公開番号】特開2007−230947(P2007−230947A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−56779(P2006−56779)
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年9月5日 社団法人高分子学会発行の「高分子学会予稿集54巻2号(2005)」に発表
【出願人】(000229254)日本テルペン化学株式会社 (5)
【Fターム(参考)】