説明

ジベンゾオキセピノピロール化合物およびその中間体の製造方法ならびに新規中間体

【課題】容易に入手可能な原料より簡便にアセナピンを製造する新規な方法を提供する。
【解決手段】以下の方法により、(2−クロロフェニル)酢酸[Ia]より中間体[IV]を経由してアセナピン[VII]を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は統合失調薬として有用なアセナピン(Asenapine)およびその中間体の製造方法ならびに新規中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
アセナピン[化学名:トランス−5−クロロ−2−メチル−2,3,3a,12b−テトラヒドロ−1H−ジベンゾ[2,3:6,7]オキセピノ[4,5−c]ピロール]は、式[VII]
【化1】

で示される化合物であり、統合失調薬として有用な化合物である。
【0003】
特許文献1には、アセナピン[VII]を含む種々の四環式誘導体が記載されており、また四環を形成する直前の合成中間体が下記ルートにより製造できることが記載されている。
【化2】

(式中、Xはイオウ原子または酸素原子、mは1または2、Rは炭素数1〜6のアルキル基を表し、Rは水素またはC−Cアルキル基、C−C10アラルキル基を表し、ベンゼン環上の棒線はR、R、R、Rが付いているのを省略したものであり、R、R、R、Rはそれぞれ水素、ヒドロキシ基、ハロゲン、C−Cアルキル基などを表す。)
【0004】
一方、非特許文献1には、2−フェノキシ−5−クロロフェニル酢酸が、下記ルートにより合成されることが記載されている。
【化3】

【0005】
また、非特許文献2には、2−フェノキシ−5−クロロフェニル酢酸のクロロ原子位置異性体である2−(4−クロロフェノキシ)フェニル酢酸が、下記合成ルートにより合成されることが記載されている。
【化4】

【0006】
さらに、非特許文献3には、アセナピンが、下記合成ルートにより合成されることが記載されている。
【化5】

【0007】
上記ルートを採用して、最終目的物であるアセナピン(化合物[VII])を合成する場合、工程数が多く、また危険かつ毒性が強い化合物や高価な試薬を用いるため、工業的に好ましい方法とはいえない。
【特許文献1】米国特許第4,145,434(US 4,145,434)
【非特許文献1】J.Med.Chem.(1983),26(10),1353〜1360.
【非特許文献2】Coll.of Czechoslovak Chem.Comm.,34(8),2258−2277(1969).
【非特許文献3】Journal of Labelled Compounds and Radiopharmaceuticals,(1994),vol.XXXIV,No.9,845−869
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、安価な原料を出発し、アセナピンとその合成中間体を効率的かつ安全に製造する方法を提供することであり、また他の課題はアセナピンの新規中間体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、鋭意検討した結果、下記スキーム1で示されるように、安価に入手できる化合物[Ia]と化合物[Ib]を出発原料とし、まず化合物[Ia]から化合物[III]へ変換したのち、該化合物[III]を4−クロロフェノールと反応させて化合物[IV]とし、さらに該化合物[IV]を経由し特許文献1に記載されている方法に準拠して医薬として有用なアセナピン[VII]を製造できることを見出し、さらに検討して本発明を完成するに至った。
【0010】
【化6】

(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
【0011】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1) 式[III]:
【化7】

で表される化合物を4−クロロフェノールと反応させることを特徴とする式[IV]:
【化8】

で表される化合物の製造方法、
【0012】
(2) 式[II]:
【化9】

(式中、Rは前記と同一意味を有する。)
で表される化合物を分子内閉環し、次いで、得られる式[III]:
【化10】

で表される化合物を4−クロロフェノールと反応させることを特徴とする式[IV]:
【化11】

で表される化合物の製造方法、
【0013】
(3) 式[Ia]:
【化12】

で表される化合物またはそのカルボキシル基における反応性誘導体と式[Ib]:
【化13】

(式中、Rは前記と同一意味を有する。)
で表される2級アミン化合物を縮合させ、得られる式[II]:
【化14】

(式中、Rは前記と同一意味を有する。)
で表される化合物を分子内閉環し、次いで、得られる式[III]:
【化15】

で表される化合物を4−クロロフェノールと反応させることを特徴とする式[IV]:
【化16】

で表される化合物の製造方法、
【0014】
(4) 式[Ia]:
【化17】

で表される化合物またはそのカルボキシル基における反応性誘導体と式[Ib]:
【化18】

(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
で表される2級アミン化合物を縮合させ、得られる式[II]:
【化19】

(式中、Rは前記と同一意味を有する。)
で表される化合物を分子内閉環することを特徴とする式[III]:
【化20】

で表される化合物の製造方法、
【0015】
(5)前記(1)〜(3)のいずれかの方法により式[IV]:
【化21】

で表される化合物とし、得られる化合物[IV]を分子内閉環して式[V]:
【化22】

で表される化合物とし、得られる化合物[V]を還元して式[VI]:
【化23】

で表される化合物とし、ついで、得られる化合物[VI]のカルボニル基を還元して式[VII]:
【化24】

で表されるジベンゾオキセピノピロール化合物とし、所望により該化合物[VII]をその薬理的に許容しうる塩とすることを特徴とするジベンゾオキセピノピロール化合物または薬理的に許容しうる塩の製造方法、
【0016】
(6) 式[IV]
【化25】

で表される化合物、および
【0017】
(7) 式[III]:
【化26】

で表される化合物。
【発明の効果】
【0018】
本発明の方法によれば、安価に入手可能な化合物[Ia]および[Ib]を出発原料とし、効率的かつ安全に合成中間体[IV]、さらにはこの合成中間体[IV]を経由して医薬として有用なアセナピンもしくはその薬理的に許容し得る塩を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明によれば、前記スキーム1に示したルートにより、アセナピンもしくはその薬理的に許容し得る塩を製造することができる。以下、各工程について説明する。
なお、出発原料である化合物[Ia]および化合物[Ib]において、記号Rで示される炭素数1〜6のアルキル基としては、直鎖状でも分岐状でもよく、とりわけメチル基、エチル基が好ましい。
【0020】
(工程1)化合物[Ia]+化合物[Ib]→化合物[II]
化合物[II]は化合物[Ia]またはそのカルボキシル基における反応性誘導体と化合物[Ib]とを反応させることにより製造することができる。本反応は一般的なアミド化反応で採用されている方法により実施することができる。例えば、遊離のカルボン酸化合物[Ia]を用いる場合は、縮合剤を用いる方法を採用することができる。また、化合物[Ia]の反応性誘導体を用いる場合は、化合物[Ia]から誘導される反応性誘導体、例えば対応する酸ハライドを化合物[Ib]と反応させる方法が挙げられる。
【0021】
化合物[Ia]と化合物[Ib]とを縮合剤を用いて反応させる場合は、化合物[Ib]の使用量は、化合物[Ia]1モルに対し、通常0.8モル〜5モル、好ましくは1.0モル〜1.5モルである。縮合剤としては、通常カルボジイミド縮合剤(例えば、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N−(3−ジエチルアミノ−1−プロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(WSCI・HCl)など)、5価の有機リン縮合剤(例えば、ジフェニルホスホリルアジド(DPPA)、シアノリン酸ジエチル(DEPC)、N,N’−ビス(2−オキソ−3−オキサゾリジニル)ホスフィニッククロライド(BOP−Cl)など)、クロロ炭酸エステル類(例えば、クロロ炭酸メチル、クロロ炭酸エチル、クロロ炭酸イソプロピルなど)、ピバロイルクロリド、塩化チオニル、オキシ塩化リンなどが挙げられる。縮合剤の使用量は化合物[Ia]1モルに対し、通常0.8モル〜5モル、好ましくは1.0モル〜1.5モルである。
【0022】
本反応は、塩基を必ずしも添加しなくてもよいが、塩基(例えば、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、ピリジン、2,6−ジ−tert−ブチルピリジン、イミダゾール、1−メチルイミダゾールなどの有機塩基、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、重炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸リチウムなどの無機塩基)を添加してもよく、トリエチルアミンが特に好ましい。塩基を使用する場合の使用量は化合物[Ia]1モルに対し、通常0.01モル〜5モル、好ましくは1モル〜2モルである。塩基が液状である場合、溶媒を兼ねさせることができる。溶媒としては、例えば、エステル溶媒(例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチルなど)、エーテル溶媒(例えば、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジグライム、テトラヒドロフランなど)、アミド溶媒(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなど)、ケトン溶媒(例えば、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノンなど)、ニトリル溶媒(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリルなど)、アルコール溶媒(例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノールなど)、ハロゲン化溶媒(例えば、塩化メチレン、クロロホルムなど)、芳香族溶媒(例えば、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ニトロベンゼンなど)、水、あるいはそれらの混合溶媒などが挙げられるが、好ましくはトルエンとテトラヒドロフランである。溶媒の使用量は、化合物[Ia]1kgに対し、通常1L〜100L、好ましくは3L〜30Lである。なお、反応を加速するためには、4−N,N−ジメチルアミノピリジン、4−ピロリジノピリジンなどの触媒を加えることが好ましく、4−N,N−ジメチルアミノピリジンを添加することが特に好ましい。触媒の使用量は、化合物[Ia]1モルに対し、通常0.001モル〜1モル、好ましくは0.1モル〜0.5モルである。反応温度は、通常−30℃〜150℃、好ましくは0℃〜50℃である。化合物[Ia]、化合物[Ib]と縮合剤との仕込み順は特に制限はない。
【0023】
一方、化合物[Ia]のカルボキシル基における反応性誘導体として、対応する酸ハライドを使用する場合、酸ハライドとしては、酸クロリド、酸ブロミドなどがあげられ、酸クロリドが好ましい。前記酸ハライドは化合物[Ia]にハロゲン化剤を作用させることにより製造することができる。ハロゲン化剤としては、例えば、塩化チオニル、五塩化リン、三塩化リン、オキシ塩化リン、オキザリルクロリド、臭化チオニル、三臭化リンなどが挙げられ、塩化チオニルが好ましい。ハロゲン化剤として塩化チオニルを使用する場合、塩化チオニルの使用量は化合物[Ia]1モルに対し、通常1モル〜5モル、好ましくは1モル〜1.5モルである。溶媒は必ずしも用いなくてもよいが、ハロゲン化溶媒(例えば、塩化メチレン、クロロホルムなど)や芳香族溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ニトロベンゼンなど)などの溶媒を用いてもよく、好ましくはトルエンである。溶媒の使用量は、化合物[Ia]1kgに対し、通常1L〜100L、好ましくは3L〜30Lである。反応を加速するためには、通常N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアニリンなどを触媒として加えることが好ましく、N,N−ジメチルホルムアミドを添加することが特に好ましい。触媒の使用量は化合物[Ia]1モルに対し、通常0.001モル〜1モル、好ましくは0.001モル〜0.05モルである。反応温度は、通常−30℃〜150℃、好ましくは20℃〜90℃である。化合物[Ia]の酸ハライドは溶媒の留去とともに過剰量のハロゲン化剤を除去後、溶液の状態、濃縮物または蒸留による蒸留品として、好ましくは、濃縮物として、化合物[Ib]との反応に用いられる。
【0024】
化合物[Ia]の酸ハロゲン化物と化合物[Ib]との反応は、通常塩基の存在下に好適に行うことができる。化合物[Ib]の使用量は化合物[Ia]1モルに対し、通常0.8モル〜5モル、好ましくは1.0モル〜1.5モルである。塩基としては、例えば、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、ピリジン、2,6−ジ−tert−ブチルピリジン、イミダゾール、1−メチルイミダゾールなどの有機塩基、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、重炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸リチウムなどの無機塩基を添加してもよく、トリエチルアミンまたはN−メチルモルホリンが好ましい。塩基の使用量は化合物[Ia]1モルに対し、通常0.8モル〜5モル、好ましくは1モル〜3モルである。塩基を溶媒として使用されることも考えられる。溶媒としては、エステル溶媒(例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチルなど)、エーテル溶媒(例えば、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジグライム、テトラヒドロフランなど)、アミド溶媒(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなど)、ケトン溶媒(例えば、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノンなど)、ニトリル溶媒(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリルなど)、アルコール溶媒(例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノールなど)、ハロゲン化溶媒(例えば、塩化メチレン、クロロホルムなど)、芳香族溶媒(例えば、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ニトロベンゼンなど)、水、あるいはそれらの混合溶媒などが挙げられるが、好ましくはトルエン、テトラヒドロフランである。反応を促進させるために、4−N,N−ジメチルアミノピリジン、4−ピロリジノピリジンなどの触媒をとして加えることが好ましく、触媒の使用量は、化合物[Ia]1モルに対し、通常0.001モル〜1モル、好ましくは0.1モル〜0.5モルである。反応温度は、通常−30℃〜150℃、好ましくは0℃〜80℃である。化合物[Ia]の酸ハライドと化合物[Ib]と塩基との仕込み順には特に制限がないが、化合物[Ia]の酸ハライドを化合物[Ib]と塩基の溶液に滴下することが好ましい。
【0025】
化合物[II]の精製は、反応液を常法による後処理(例えば、中和、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、クロマトグラフィーなど)により行なうことができるが、特に精製することなしに次工程に用いることができる。
【0026】
(工程2)化合物[II]→化合物[III]
化合物[III]は化合物[II]を分子内環化することにより製造できる。本反応は化合物[II]に塩基を作用させることにより好適に実施できる。塩基としては、金属水素化物(例えば、水素化カリウム、水素化ナトリウム、水素化リチウムなど)、金属の炭酸塩(例えば、炭酸セシウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムなど)、金属アルコキシド(例えば、tert−ブトキシカリウム、tert−ブトキシナトリウム、エトキシカリウム、エトキシナトリウム、メトキシカリウム、メトキシナトリウムなど)、三級アミン(例えば、トリエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネンなど)などが挙げられる。これらの内、金属アルコキシドが好ましく、なかでもtert−ブトキシカリウムが最も好ましい。塩基の使用量は、化合物[II]1モルに対し、通常0.5モル〜5モル、好ましくは1モル〜1.5モルである。
【0027】
反応溶媒としてはエーテル溶媒(例えば、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジグライム、テトラヒドロフランなど)、アミド溶媒(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなど)、ハロゲン化溶媒(例えば、塩化メチレン、クロロホルムなど)、芳香族溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ニトロベンゼンなど)、アルコール溶媒(例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノールなど)、水、あるいはそれらの混合溶媒などが挙げられるが、好ましくはテトラヒドロフラン、トルエンである。溶媒の使用量は、化合物[II]1kgに対し、通常1L〜100L、好ましくは3L〜30Lである。反応温度は通常−30℃〜150℃、好ましくは−10℃〜50℃である。反応時間は反応温度、原材料の使用量などにもよるが、通常1時間〜48時間、好ましくは2時間〜10時間である。
【0028】
化合物[III]の単離は、反応液を常法による後処理(例えば、中和、抽出、洗浄、乾燥、晶析など)により行なうことができるが、反応液に水を加えた後、有機溶媒(例えば、酢酸エチル、トルエン、tert−ブチルメチルエーテルなど)で洗浄、分液し、得られた水層をpH1〜8、好ましくはpH3〜7に中和し、化合物[IV]を晶析させることが特に好ましい。
【0029】
なお、化合物[III]は条件によっては化合物[III’]の構造をとりうることがある。
【化27】

【0030】
(工程3)化合物[III]→化合物[IV]
化合物[IV]は化合物[III]と4−クロロフェノールとを反応させることにより製造できる。本反応は、塩基の存在下に好適に行うことができ、さらに触媒存在下で行なうのが好ましい。
塩基としては、例えば、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、ピリジン、2,6−ジ−tert−ブチルピリジン、イミダゾール、1−メチルイミダゾールなどの有機塩基、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、炭酸セシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、重炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸リチウムなどの無機塩基が挙げられる。これらの内、とくに炭酸セシウム、炭酸カリウムが好ましい。塩基の使用量は、化合物[III]1モルに対し、通常0.5モル〜5モル、好ましくは1モル〜2モルである。
4−クロロフェノールの代わりに、4−クロロフェノールと上記の塩基とを先に反応させることにより調製した4−クロロフェノキシ金属塩を用いることもできる。金属塩としては、セシウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、リチウム塩などが挙げられるが、セシウム塩、カリウム塩が好ましい。
【0031】
触媒としては、遷移金属を含む化合物、アミノ酸またはその誘導体が挙げられる。遷移金属を含む化合物としては、ロジウム、ニッケル、鉄、銅などの遷移金属を含む化合物などがあげられ、銅(0)または銅(I)を含む化合物が好ましい。銅(I)を含む化合物としては、銅(I)のハロゲン化物(例えば、塩化銅(I)、臭化銅(I)、ヨウ化銅(I)など)、酸化物、鉱酸塩(例えば、硫酸塩、硝酸塩、燐酸塩、炭酸塩など)、有機酸塩、銅(0)と銅(I)との錯体などが挙げられるが、ヨウ化銅(I)と塩化銅(I)が特に好ましい。触媒量としては、化合物[III]1モルに対し、通常0.001モル〜0.5モル、好ましくは0.01モル〜0.1モルである。
【0032】
アミノ酸およびその誘導体としては、例えば、グリシン、N−メチルグリシン、N、N−ジメチルグリシン、アラニン、フェニルアラニンなどが挙げられるが、N、N−ジメチルグリシンが好ましい。アミノ酸およびその誘導体の使用量としては、化合物[III]1モルに対し、通常0.001モル〜0.5モル、好ましくは0.005モル〜0.01モルである。
4−クロロフェノールの使用量としては、化合物[II]1モルに対し、通常1モル〜5モル、好ましくは1.0モル〜1.5モルである。
【0033】
反応溶媒としては、例えば、エーテル溶媒(例えば、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジグライム、テトラヒドロフランなど)、アミド溶媒(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなど)、ケトン溶媒(例えば、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノンなど)、ニトリル溶媒(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリルなど)、アルコール溶媒(例えば、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノールなど)、ハロゲン化溶媒(例えば、塩化メチレン、クロロホルムなど)、芳香族溶媒(例えば、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ニトロベンゼンなど)、水、あるいはそれらの混合溶媒などが挙げられる。これらの内、好ましくはジグライムまたは1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンである。溶媒の使用量は、化合物[III]1kgに対し、通常1L〜100L、好ましくは3L〜30Lである。
【0034】
反応温度は通常0℃〜200℃、好ましくは50℃〜150℃である。反応時間は反応温度、原材料の使用量などにもよるが、通常0.5時間〜48時間、好ましくは0.5時間〜6時間である。反応時間が長くなると収率が低下する傾向がある。
【0035】
化合物[III]、4−クロロフェノール(またはその金属塩)、塩基、添加剤との仕込み順には特に制限がない。反応の雰囲気としては、不活性ガス、例えば窒素、アルゴンなどが好ましい。
【0036】
化合物[IV]の単離は、反応液を常法による後処理(例えば、中和、抽出、洗浄、乾燥、晶析など)により行なうことができるが、反応液に水を加えた後、有機溶媒(例えばメタノール、エタノールなどのアルコール、あるいは該アルコールとテトラヒドロフラン、tert−ブチルメチルエーテルもしくはトルエンとの混合溶媒など)で洗浄、分液し、得られた水層をpH1〜8、好ましくはpH6〜8に中和し、化合物[IV]を晶析させることが好ましい。
なお、化合物[IV]は条件によっては、互変異性体である化合物[IV’]の構造をとりうることがあり、本願発明では、両者を包含するものである。
【化28】

【0037】
(工程4)化合物[IV]→化合物[V]
化合物[V]は化合物[IV]を分子内環化することにより製造できる。本分子環化反応は脱水性溶媒中で好適に実施することができる。脱水性溶媒としては、例えば、硫酸、リン酸、ポリリン酸などが挙げられ、ポリリン酸、とくに粘度が調整できることから、リン酸と五酸化二リンから調製したポリリン酸が好ましい。リン酸の使用量は、化合物[IV]1kgに対し、通常1kg〜100kg、好ましくは3kg〜30kgである。五酸化二リンの使用量は、化合物[IV]1モルに対し、通常1モル〜10モル、好ましくは1モル〜3モルである。反応温度は通常20℃〜250℃、好ましくは120℃〜200℃である。反応時間は反応温度、原材料の使用量などにもよるが、通常10時間〜48時間、好ましくは15時間〜25時間。反応液を常法による後処理(例えば、中和、抽出、洗浄、乾燥、濃縮など)により取り出された化合物[V]を晶析精製できるが、濃縮物のままを次工程に用いてもよい。
【0038】
(工程5)化合物[V]→化合物[VI]
化合物[VI]は化合物[V]の炭素―炭素二重結合を還元することにより製造できる。本還元反応は、白金やパラジウムなどの貴金属触媒の存在下に接触還元することにより実施できるが、低級アルコールまたはアンモニア中に、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を作用させる方法などを用いることが好ましい。なかでも、低級アルコールまたはアンモニア中にアルカリ金属またはアルカリ土類金属を作用させる方法が好ましく、さらに好ましくは、低級アルコール中にマグネシウムを作用させる方法、アンモニア中に、リチウムまたはナトリウムを作用させる方法であり、最も好ましくは、メタノールまたはエタノール中にマグネシウムを作用させる方法である。低級アルコールまたはアンモニアの使用量としては、化合物[V]1kgに対して、通常4L〜100Lであり、好ましくは、5L〜30Lである。アルカリ金属またはアルカリ土類金属の使用量としては、化合物[V]1モルに対し、通常2モル〜25モル、好ましくは4モル〜7モルである。反応温度は通常0℃〜100℃、好ましくは40℃〜70℃である。反応時間は反応温度、原材料の使用量等にもよるが、通常1時間〜48時間、好ましくは4時間〜10時間である。化合物Vの精製は、反応液を常法による後処理(例えば、中和、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、クロマトグラフィーなど)により行なうことができ、特に精製することなしに次工程に用いることができる。
【0039】
(工程6)化合物[VI]→化合物[VII]
化合物[VII]は化合物[VI]のカルボニル基を還元することにより製造することができる。本還元反応は還元剤の存在下に好適に実施できる。還元剤としては、例えば、LiAlH、NaAlH(OCHCHOCH、LiAlH(t−BuO)、AlH、B、BH・THF、BH・OEt、NaBH/BF・THF、KBH/BF・THF、LiBH/BF・THF、NaBH/(CHSO、NaBH/HSOなどが用いられる。還元剤の量は通常、化合物[VI]1モルに対して1〜5モルである。反応溶媒は、通常ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジグライム、テトラヒドロフランなどのエーテル溶媒が挙げられ、好ましくはテトラヒドロフランである。溶媒の使用量は、化合物[VI]1kgに対し、通常1L〜100L、好ましくは3L〜30Lである。反応温度は、通常−80℃〜100℃である。
【0040】
化合物[VII]の精製は、反応液を常法による後処理(例えば、中和、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、晶析、クロマトグラフィーなど)により行なうことができ、抽出法と晶析法の両方を行なうことが好ましい。抽出法として好ましくは、酸塩基抽出法であり、晶析法として好ましくは、造塩晶析法である。まず酸塩基抽出を行なった後、造塩晶析させることが好ましい。酸塩基抽出法とは、粗製化合物[VII]を鉱酸(例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸など)または有機酸(例えば、メタンスルホン酸、トリクロロメタンスルホン酸、蟻酸、酢酸など)の水溶液に溶解し、得られた化合物[VII]の酸性水溶液を有機溶媒(例えば、酢酸エチル、tert−ブチルメチルエーテル、トルエンなど)で洗浄した後、塩基を加えることにより、中性〜塩基性にして精製する方法を指し、必要であれば、さらに抽出、乾燥、濃縮などを行い、単離する。酸塩基抽出法で用いる酸としては、硫酸、メタンスルホン酸を用いることが特に好ましい。造塩晶析法とは、有機溶媒(例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール溶媒、アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒、N、N−ジメチルホルムアミド、1−メチルピロリジノンなどのアミド溶媒、アセニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル溶媒、塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化溶媒)、水、あるいはこれらの混合溶媒などの溶媒中に、化合物[VII]と鉱酸(例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、臭化水素酸など)あるいは有機酸(例えば、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、蓚酸、琥珀酸など)を加え、造塩、晶析させる方法である。特に、マレイン酸を用いて造塩精製することが、そのまま医薬品として用いることが可能であるため好ましい。
【実施例】
【0041】
次に実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。
【0042】
[実施例1] エチル 2−(2−(2−クロロフェニル)−N−メチルアセタミド)アセテート[II]の合成
(2−クロロフェニル)酢酸(144g,844mmol)のトルエン(430ml)溶液に、N,N−ジメチルホルムアミド(0.3ml)加え、30〜50℃で、窒素雰囲気下で塩化チオニル(105g,883mmol)を30分間で滴下し、還流まで徐々に加熱した。反応終了後、トルエンを減圧留去後、得られた(2−クロロフェニル)アセチルクロライド溶液をサルコシンエチルエステル塩酸塩(129g,840mmol)、N,N−ジメチルアミノピリジン(10g)、テトラヒドロフラン(630ml)、トリエチルアミン(290ml)の混合溶液に0〜20℃で30分間かけて滴下し、終夜撹拌した。反応終了後、反応液に水(300ml)とトルエン(500ml)を加え、攪拌分液した。得られたトルエン層を水(300ml)、10%塩酸(200ml)、水(200ml)、5%重曹水(200ml)と食塩水(200ml)で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過、濃縮を行い、油状物化合物[II]を163g得た。見かけ収率:71.8%。
エチル 2−(2−(2−クロロフェニル)−N−メチルアセタミド)アセテート[II]のH−NMRデータ(ppm in CDCl):1.28(3H,t,J=7Hz),3.10(3H,s),3.88(2H,s),4.16(2H,s),4.20(2H,q,J=7Hz),7.20〜7.24(2H,m),7.36〜7.39(2H,m).
【0043】
[実施例2] 3−(2−クロロフェニル)−4−ヒドロキシ−1−メチル−1H−ピロール−2(5H)−オン[III]の合成
実施例1で得られた化合物[II](163g、0.604mol)をトルエン(400ml)とテトラヒドロフラン(100ml)に溶解させ、0〜20℃でtert−ブトキシカリウム(70.6g、0.63mol)を分割添加した。反応液を室温で終夜攪拌後、水(200ml)を少しずつ流入した。分液後、有機層を水(50ml)で抽出し、水層を合わせた。合わせた水層に35%塩酸を滴下し、pH約3に調整した後、析出した固体をろ過、乾燥して、3−(2−クロロフェニル)−4−ヒドロキシ−1−メチル−1H−ピロール−2(5H)−オン[III]を107.0g得た。(2−クロロフェニル)酢酸[Ia]からの通算収率は56.7%である。
3−(2−クロロフェニル)−4−ヒドロキシ−1−メチル−1H−ピロール−2(5H)−オン[III]のH−NMRデータ(ppm in DMSO−d):2.87(3H,s),3.95(2H,s),7.22〜7.46(4H,m),11.27(1H,s).
【0044】
[実施例3] 3−(2−(4−クロロフェノキシ)フェニル)−4−ヒドロキシ−1−メチル−1H−ピロール−2(5H)−オン(IV)の合成
実施例2で得られた化合物[III](20.0g,89.6mmol)、4−クロロフェノール(17.3g,134mmol)、炭酸セシウム(59.3g,182mmol)、ヨウ化銅(I)(0.34g,1.9mmol)、N,N−ジメチルグリシン塩酸塩(0.94g,6.7mmol)、ジグライム(190ml)との混合物を窒素雰囲気中、内温114〜116℃で50分間加熱後、HPLCにより原料の消失を確認した。反応マスを約10℃までに冷却、水(190ml)を徐々に流入した。得られた水溶液をトルエンで洗浄後、35%塩酸水でpHを7〜8に調整した。析出した固体をろ過、水洗浄、減圧乾燥して、固体の3−(2−(4−クロロフェノキシ)フェニル)−4−ヒドロキシ−1−メチル−1H−ピロール−2(5H)−オン[IV]が16.6g得られた。収率58.8%。
上記化合物[IV]のH−NMRデータ(ppm in CDCl):3.02(3H,s),3.82(2H,s),6.83(2H,d,J=9Hz),6.99〜7.02(1H,m),7.25〜7.33(3H,m),8.07(1H,s),8.12(1H,m).
【0045】
[実施例4] 5−クロロ−2,3−ジヒドロ−2−メチル−1H−ジベンゾ[2,3:6,7]オキセピノ[4,5−c]ピロール−1−オン(V)の合成
実施例3で得た化合物[IV](11.5g,36.5mmol)と105%リン酸(35.0g)を混合し、160℃で17時間加熱した。原料が残留していたため、五酸化二リン(7.9g)を加え、160℃で10時間加熱した。反応マスに水(100ml)と酢酸エチル(100ml)を順次流入した。析出した少量の生成物[VI]をろ過、回収し、ろ液を分液した。酢酸エチル層を水(50ml)、5%重曹水(100ml)と水(100ml)で順次洗浄後、減圧濃縮して、黄色固体の生成物[V]が上記の回収分と合わせて9.90g得られた。粗収率91.2%。
5−クロロ−2,3−ジヒドロ−2−メチル−1H−ジベンゾ[2,3:6,7]オキセピノ[4,5−c]ピロール−1−オン[V]のH−NMRデータ(ppm in DMSO−d):3.09(3H,d,J=2Hz),4.61(2H,d,J=4Hz),7.30〜7.60(6H,m),8.04(1H,t−like,J=ca.3Hz).
【0046】
[実施例5] 5−クロロ−2,3,3a,12b−テトラヒドロ−2−メチル−1H−ジベンゾ[2,3:6,7]オキセピノ[4,5−c]ピロール−1−オン(VI)の合成
実施例4で得られた5−クロロ−2,3−ジヒドロ−2−メチル−1H−ジベンゾ[2,3:6,7]オキセピノ[4,5−c]ピロール−1−オン[V]をJournal of Labelled Compounds and Radiopharmaceuticals,(1994),vol.XXXIV,No.9,845−869に記載の方法に準じて、無水メタノール中、マグネシウムを用いて還元することにより5−クロロ−2,3,3a,12b−テトラヒドロ−2−メチル−1H−ジベンゾ[2,3:6,7]オキセピノ[4,5−c]ピロール−1−オン[VI]を得る。
【0047】
[実施例6] トランス−5−クロロ−2,3,3a,12b−テトラヒドロ−2−メチル−1H−ジベンゾ[2,3:6,7]オキセピノ[4,5−c]ピロール[VII]の合成
実施例5で得られた5−クロロ−2,3,3a,12b−テトラヒドロ−2−メチル−1H−ジベンゾ[2,3:6,7]オキセピノ[4,5−c]ピロール−1−オン[VI]をJournal of Labelled Compounds and Radiopharmaceuticals,(1994),vol.XXXIV,No.9,845−869に記載の方法に準じて、LiAlHを用いて還元することにより、トランス−5−クロロ−2,3,3a,12b−テトラヒドロ−2−メチル−1H−ジベンゾ[2,3:6,7]オキセピノ[4,5−c]ピロール[VII]を得る。
(HPLC測定条件)
カラム:Inertsil ODS−2,4.6mmx150mm、カラム温度:35℃、移動層:A液;0.1%トリフルオロ酢酸水、B液;アセトニトリル。
B液濃度(グラジェント、v/v):20%から70%までに20分間、70%で5分間。
流速:1ml/min。検出:UV220nm。
保持時間:11.2min(シス異性体10.6min)。
トランス−5−クロロ−2,3,3a,12b−テトラヒドロ−2−メチル−1H−ジベンゾ[2,3:6,7]オキセピノ[4,5−c]ピロール(化合物[VII])のH−NMRデータ(ppm in CDCl3):2.56(3H,s)、3.08〜3.18(2H,m)、3.19〜3.28(2H,m)、3.64(2H,m)、7.05〜7.20(7H,m).
【0048】
[実施例7] トランス−5−クロロ−2,3,3a,12b−テトラヒドロ−2−メチル−1H−ジベンゾ[2,3:6,7]オキセピノ[4,5−c]ピロール マレエートの合成
実施例6で得られたトランス−5−クロロ−2,3,3a,12b−テトラヒドロ−2−メチル−1H−ジベンゾ[2,3:6,7]オキセピノ[4,5−c]ピロールを99.5%エタノールに溶解させ、マレイン酸のエタノール溶液を室温で滴下する。析出する固体をろ過、乾燥して、トランス−5−クロロ−2,3,3a,12b−テトラヒドロ−2−メチル−1H−ジベンゾ[2,3:6,7]オキセピノ[4,5−c]ピロール マレエートを得る。mp.141℃
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、医薬として有用なアセナピンおよびその合成中間体を効率的にかつ安全に製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式[III]:
【化1】

で表される化合物を4−クロロフェノールと反応させることを特徴とする式[IV]:
【化2】

で表される化合物の製造方法。
【請求項2】
式[II]:
【化3】

(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
で表される化合物を分子内閉環し、次いで、得られる式[III]:
【化4】

で表される化合物を4−クロロフェノールと反応させることを特徴とする式[IV]:
【化5】

で表される化合物の製造方法。
【請求項3】
式[Ia]:
【化6】

で表される化合物またはそのカルボキシル基における反応性誘導体と式[Ib]:
【化7】

(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
で表される2級アミン化合物とを縮合させ、得られる式[II]:
【化8】

(式中、Rは前記と同一意味を有する。)
で表される化合物を分子内閉環し、次いで、得られる式[III]:
【化9】

で表される化合物を4−クロロフェノールと反応させることを特徴とする式[IV]:
【化10】

で表される化合物の製造方法。
【請求項4】
式[Ia]:
【化11】

で表される化合物またはそのカルボキシル基における反応性誘導体と式[Ib]:
【化12】

(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
で表される2級アミン化合物を縮合させ、得られる式[II]:
【化13】

(式中、Rは前記と同一意味を有する。)
で表される化合物を分子内閉環することを特徴とする式[III]:
【化14】

で表される化合物の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかの方法により式[IV]:
【化15】

で表される化合物とし、得られる化合物[IV]を分子内閉環して式[V]:
【化16】

で表される化合物とし、得られる化合物[V]を還元して式[VI]:
【化17】

で表される化合物とし、ついで、得られる化合物[VI]のカルボニル基を還元して式[VII]:
【化18】

で表されるジベンゾオキセピノピロール化合物とし、所望により該化合物[VII]をその薬理的に許容しうる塩とすることを特徴とするジベンゾオキセピノピロール化合物または薬理的に許容しうる塩の製造方法。
【請求項6】
式[IV]
【化19】

で表される化合物。
【請求項7】
式[III]:
【化20】

で表される化合物。

【公開番号】特開2007−137877(P2007−137877A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−286275(P2006−286275)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】