説明

ジベンゾチオフェン骨格を有する化合物における屈折率付与効果を増大又は調整する方法

【課題】ジベンゾチオフェン骨格を有する化合物を使用して物品の屈折率を付与する際に、当該にジベンゾチオフェン骨格を有する化合物による屈折率向上効果を増大又は調整する方法を提供すること。
【解決手段】下記式(I)で表されるジベンゾチオフェン骨格を有する化合物を使用して物品の屈折率を付与する方法において、前記式(I)におけるA環及び/又はB環に芳香環を縮合させることにより、前記化合物による屈折率付与効果を増大させる方法を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジベンゾチオフェン骨格を有する化合物を使用して物品の屈折率を付与する方法において、当該化合物による屈折率付与効果を増大させる方法に関する。また、本発明は、ジベンゾチオフェン骨格を有する化合物において、当該化合物による屈折率付与効果を調整する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック光学材料は、無機材料に比べて軽量で、割れにくく、加工しやすいという利点があり、近年、眼鏡やカメラのレンズをはじめ、各種の光学部材として急速に普及している。このようなプラスチック光学材料の例として、特許文献1には、アクリル樹脂系、ポリカーボネート樹脂系等の樹脂が挙げられている。しかし、これらの樹脂の屈折率は、確かに樹脂材料としては高いとはいえ、1.6未満である。そのため、これらの樹脂は、レンズとして使用した場合に、ガラスよりもレンズの厚さが大きくなるという課題を有する。
【0003】
一方、光学材料用途として使用される各種の樹脂に微量の添加剤を添加して、当該樹脂の屈折率を付与させることも行われている。このような手法によれば、上記のようなプラスチック光学材料の屈折率をより一層高くすることが可能となる。このような手法の例として、例えば特許文献2には、樹脂製の光ファイバにおける屈折率向上のためのドーパントとして、ジベンゾチオフェンを使用することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−28513号公報
【特許文献2】特開2009−210706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
確かに、ジベンゾチオフェンは、有機化合物としては大きな屈折率付与効果を有し、樹脂等の光学材料に添加されることにより、当該光学材料の屈折率を向上させることができる。しかし、軽量化等を目的として各種光学材料のガラスから樹脂への置き換えが進むにつれて、より高い屈折率を樹脂等の光学材料に付与することのできる有機化合物が必要とされる。
【0006】
本発明は以上の状況に鑑みてなされたものであり、第一には、ジベンゾチオフェン骨格を有する化合物による屈折率向上効果を増大させる方法を提供することを目的とする。また本発明は、第二には、ジベンゾチオフェン骨格を有する化合物による屈折率向上効果を調整する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、ジベンゾチオフェン骨格を有する化合物において、ジベンゾチオフェン骨格の芳香環に対して他の芳香環を縮合させることにより、当該化合物の屈折率付与効果が増大することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
より具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
【0009】
(1)下記式(I)で表されるジベンゾチオフェン骨格を有する化合物を使用して物品の屈折率を付与する方法において、前記式(I)におけるA環及び/又はB環に芳香環を縮合させることにより、前記化合物による屈折率付与効果を増大させる方法。
【化1】

【0010】
(2)前記芳香環がベンゾ環、ポリベンゾ環、フラン環、ピリジン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環からなる群より選択される少なくとも1つである(1)項記載の方法。
【0011】
(3)前記芳香環が前記式(I)における5位及び6位の炭素原子間における結合、並びに/又は、5’位及び6’位の炭素原子間における結合、で縮合した(1)項又は(2)項記載の方法。
【0012】
(4)下記式(I)で表されるジベンゾチオフェン骨格を有する化合物において、前記ジベンゾチオフェン骨格に対して少なくとも一つの芳香環を縮合させ、さらに前記芳香環の種類とその縮合位置とを調整することにより、前記化合物による屈折率付与効果を調整する方法。
【化2】

【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第一には、ジベンゾチオフェン骨格を有する化合物による屈折率向上効果を増大させる方法が提供される。また、本発明によれば、第二には、ジベンゾチオフェン骨格を有する化合物による屈折率向上効果を調整する方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のジベンゾチオフェン骨格を有する化合物における屈折率付与効果を増大又は調整する方法について説明する。
【0015】
まず、本発明の方法において、屈折率付与効果を増大又は調整される対象である化合物について説明する。この化合物は、下記式(I)で表されるジベンゾチオフェン骨格を有する。このようなジベンゾチオフェン骨格を有する化合物としては、下記式(I)で表される化合物自体であるジベンゾチオフェン、下記式(I)の炭素原子に結合する水素原子の1又は2以上が各種の置換基で置換された化合物、下記式(I)で表される骨格を側鎖に含む高分子化合物、及び下記式(I)で表される骨格を主鎖に含む高分子化合物が例示される。
【0016】
【化3】

【0017】
既に述べたように、ジベンゾチオフェンは、高い屈折率を有する有機化合物であることが知られている。したがって、ジベンゾチオフェン骨格を有する化合物は、例えば、光学材料を構成する樹脂に添加されることにより、当該樹脂の屈折率を向上させることができる。一例として、光学材料の一つとして知られるポリメチルメタクリレート(PMMA)を挙げると、PMMA自身の屈折率が1.494であるのに対して、PMMAにジベンゾチオフェンを31質量%添加した組成物では、屈折率が1.607まで向上する。
【0018】
本発明の方法では、上記式(I)で表されるジベンゾチオフェン骨格を有する化合物において、当該ジベンゾチオフェン骨格に芳香環を縮合させることにより、その化合物の有する屈折率付与効果を増大させる。縮合させる芳香環は、少なくとも1つであり、上記式(I)で表されるジベンゾチオフェン骨格のA環及び/又はB環に縮合される。つまり、芳香環は、A環又はB環のいずれか一方に1又は2以上縮合されてもよいし、A環及びB環のそれぞれに、独立して、1又は2以上縮合されてもよい。
【0019】
縮合される芳香環は、特に限定されないが、ベンゾ環、ポリベンゾ環、フラン環、ピリジン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環等が例示される。縮合される芳香環は、複数の芳香環が縮合された縮合環であってもよい。
【0020】
上記式(I)で表されるジベンゾチオフェン骨格に芳香環を縮合させる位置は、特に限定されず、上記式(I)中、3位及び4位、4位及び5位、5位及び6位、3’位及び4’位、4’位及び5’位、並びに5’位及び6’位の炭素原子間における結合のいずれであってもよい。これらの中でも、合成の容易性の観点からは、5位及び6位、並びに/又は、5’位及び6’位の炭素原子間における結合で芳香環が縮合されることが好ましい。
【0021】
上記式(I)で表されるジベンゾチオフェン骨格に芳香環が縮合された化合物を得る方法は、特に限定されず、公知の有機合成化学的手法、又は既にジベンゾチオフェン骨格に芳香環が縮合された化合物を石油精製の際に単離する方法が例示される。例えば、上記式(I)における5位及び6位、並びに5’位及び6’位の炭素原子間における結合のそれぞれに一つずつベンゾ環が縮合したジナフトチオフェンは、1,1’−ビナフトールにジメチルチオカルバモイルクロライドを作用させた後に、スルホラン中で加熱還流させる方法、又は2−ナフトール及び2−ナフタレンチオールから得られるジナフタレンスルフィドの酸化的光環化によって得ることができる。
【0022】
なお、合成によって上記(I)で表されるジベンゾチオフェン骨格に芳香環が縮合された化合物を得るにあたり、ジベンゾチオフェン骨格に芳香環を縮合させる合成反応を行うのではなく、上記ジナフトチオフェンを得るための合成反応のように、ジベンゾチオフェン骨格を含まない化合物を出発物質とした合成反応を行ってもよい。このように、ジナフトチオフェン骨格を有する化合物を出発物質としない合成反応によってジベンゾチオフェン骨格に芳香環が縮合された化合物を得て、その化合物を使用する態様も、本発明の範囲に含まれる。つまり、本発明では、どのような合成方法で得られた化合物が使用されるのかは問わず、最終的に、ジベンゾチオフェン骨格に芳香環が縮合された構造を有する化合物を使用していればよい。
【0023】
上記のように、本発明は、ジベンゾチオフェン骨格を有する化合物を使用して物品の屈折率を付与する方法において、当該化合物のジベンゾチオフェン骨格に対して芳香環を縮合させることにより、当該化合物による屈折率付与効果を増大させる方法に関するものであるが、これと同時に、当該化合物のジベンゾチオフェン骨格に芳香環を縮合させる位置と、縮合させる芳香環の種類とを調整することによって、当該化合物による屈折率付与効果を調整する方法に関するものでもある。特に芳香環部分の平面性を低下させることにより、可視域の透明性を保持し、屈折率特性を高めることが出来る。
【0024】
次に、本発明の方法について具体的な実施態様を示して説明するが、以下の実施態様は本発明の一例を示すものであり、本発明は以下の実施態様に限定されるものではない。
【0025】
[第一実施態様]
本発明の第一実施態様は、上記式(I)における5位及び6位、並びに5’位及び6’位の炭素原子間における結合のそれぞれに、ベンゾ環を1つずつ縮合させたジナフトチオフェン化合物に関するものである。下記一般式(II)で表されるジナフトチオフェン化合物は、対応するジベンゾチオフェン化合物よりも高い屈折率を示し、当該ジベンゾチオフェン化合物よりも屈折率付与効果が高い。
【0026】
【化4】

【0027】
上記一般式(II)中、(R)又は(R)は、それぞれm個又はn個の同一又は異なる置換基を意味し、当該置換基は、それらが結合するナフタレン環における置換可能な炭素原子のいずれに結合してもよく、各Rは、それぞれ独立に、有機基、水酸基、アミノ基、ニトロ気、チオール基、スルホ基、ハロゲン原子、又は置換されてもよいシリル基を表す。また、上記一般式(II)中、mは、0〜6の整数であり、nは、0〜6の整数である。
【0028】
上記一般式(II)において、有機基は、炭素原子を含む置換基であり、この炭素原子に加えて、さらに酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでもよい。
【0029】
このような有機基としては、炭素数1〜20でヘテロ原子を含んでもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基若しくはアラルキル基、ビニル基、スチリル基、アリル基、(メタ)アクリロイルオキシメチル基、メチル(メタ)アクリロイルオキシメチル基、カルボキシル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ホルミル基、メチルカルボニル基、メトキシカルボニル基、N−エチルアミノカルボニル基、トリフルオロメチル基、トリメチルシリル基、シアノ基、シアノエチル基、イソシアナト基、チオイソシアナト基、ベンジリデンアミノ基等が例示される。他に、有機基は、後述するように、ポリマー鎖の主鎖を含むものであってもよい。
【0030】
炭素数1〜20でヘテロ原子を含んでもよいアルキル基は、直鎖状でも分枝状でもよい。このようなアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル基、メトキシ基、エトキシ基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基等が例示される。
【0031】
また、炭素数1〜20でヘテロ原子を含んでもよいシクロアルキル基は、単環構造でも複環構造でもよい。このようなシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が例示される。
【0032】
また、炭素数1〜20でヘテロ原子を含んでもよいアリール基は、単環構造でも縮環構造でもよい。このようなアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基等が例示される。
【0033】
また、炭素数1〜20でヘテロ原子を含んでもよいアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基等が例示される。
【0034】
上記一般式(II)において、Rで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が例示される。Rで表される各置換基は、本化合物に必要とされる溶解性、本化合物が添加される樹脂基材との相溶性等を考慮して、適宜選択すればよい。
【0035】
上記一般式(II)で表されるジナフトチオフェン化合物は、特に限定されないが、ジナフトチオフェン(ジナフト[2,1−b:1’,2’−d]チオフェン)自体であってもよいし、ジナフトチオフェンの1又は複数の水素原子が有機基又はハロゲン原子で置換されたものであってもよい。ジナフトチオフェンは、石油残渣中に含まれるものを分離精製して入手することもできるし、有機合成によって入手することもできる。ジナフトチオフェンを有機合成によって入手する方法の一例としては、1,1’−ビナフトールを塩基存在下でジメチルチオカルバモイルクロライドと反応させて、ジメチルチオカルバメート体とし、次いで、このジメチルチオカルバメート体をスルホラン(沸点285℃)中で加熱還流させることが挙げられる。
【0036】
ジナフトチオフェンに置換基Rを導入する方法としては、公知の方法を特に限定なく挙げることができる。例えば、ジナフトチオフェンにアルキル基を導入する場合、ジナフトチオフェンの臭素化物に、アルキルボロン酸化合物をパラジウム触媒の存在下で反応させればよい。
【0037】
上記一般式(II)で表されるジナフトチオフェン化合物の一例としては、ジナフトチオフェン、ジナフトチオフェン−6−カルボキシアルデヒド、6−ヒドロキシメチルジナフトチオフェン、5−ベンジルジナフトチオフェン、6−アセトキシメチルジナフトチオフェン、5,8−ジエチルジナフトチオフェン、6−ビニルジナフトチオフェン等が挙げられる。
【0038】
[第二実施態様]
次に、本発明の第二実施態様について説明する。本発明の第二実施態様は、主鎖にジナフトチオフェン骨格を含む重合体に関するものである。言い換えれば、本実施態様は、主鎖に上記式(I)で表されるジベンゾチオフェン骨格を含む重合体において、当該ジベンゾチオフェン骨格における5位及び6位、並びに5’位及び6’位の炭素原子間における結合のそれぞれに、ベンゾ環を1つずつ縮合させた重合体に関するものである。このような重合体は、下記一般式(III)で表される繰り返し単位を含み、主鎖にジベンゾチオフェン骨格を含む重合体よりも屈折率付与効果が高い。
【0039】
【化5】

【0040】
上記一般式(III)中、(R)又は(R)は、それぞれp個又はq個の同一又は異なる置換基を意味し、当該置換基は、それらが結合するナフタレン環における置換可能な炭素原子のいずれに結合してもよく、各Rは、それぞれ独立に、有機基、水酸基、アミノ基、ニトロ基、チオール基、スルホ基、ハロゲン原子、又は置換されてもよいシリル基を表す。また、上記一般式(III)中、pは、0〜5の整数であり、qは、0〜5の整数である。また、上記一般式(III)中、Xは、単結合、二価の有機基又は二価の原子である。
【0041】
上記一般式(III)で表される繰り返し単位を含む重合体は、上記一般式(II)における2個のRがポリマー鎖の主鎖となる重合体である。そのため、上記一般式(III)において、置換基を導入することのできる炭素原子は、1つのナフタレン環あたり5個となり、合計10個となる。これら10個の炭素原子のいずれにも、独立に、任意の置換基Rを導入する又は導入しないことができる。この場合、導入される各置換基Rは、それぞれ独立して決定され、互いに同一でも異なってもよい。なお、上記一般式(III)において、Rで表される有機基としては、上記第一実施態様の一般式(II)において説明したものと同様のものを挙げることができる。また、上記一般式(III)において、Rで表されるハロゲン原子としては、上記第一実施態様の一般式(II)において説明したものと同様のものを挙げることができる。Rで表される各置換基は、本重合体に必要とされる溶解性、本重合体が添加される樹脂基材との相溶性等を考慮して、適宜選択すればよい。
【0042】
上記一般式(III)において、Xは、単結合、二価の有機基又は二価の原子である。Xが二価の有機基である場合、Xとしては、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子といったヘテロ原子を含んでもよいアルキレン基、アラルキレン基、アルケニレン基、エステル結合、アミド結合、イミド結合又はこれらの結合を主鎖に含むアルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基、二価の置換芳香族基、二価の置換へテロ芳香族基、二価の置換シリル基が例示される。また、Xが二価の原子である場合、Xとしては、酸素原子、硫黄原子、置換されてもよい錫原子、置換されてもよい燐原子が例示される。
【0043】
上記一般式(III)で表される繰り返し単位を含む重合体を合成する方法は、特に限定されない。このような合成方法の一例としては、ジナフトチオフェンに、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体の存在下、パラホルムアルデヒドを反応させる方法が挙げられる。この場合、上記一般式(III)で表される繰り返し単位を有する重合体は、ジナフトチオフェンがメチレン基で架橋された重合体となる。なお、ジナフトチオフェンの入手法は、既に述べた通りである。
【0044】
上記一般式(III)で表される繰り返し単位を有する重合体がジナフトチオフェンの重合体である場合、その質量平均分子量は、700〜200000が好ましく、1000〜50000がより好ましく、1000〜20000が最も好ましい。質量平均分子量が700以上であることにより、成膜性、耐揮散性、相溶性及び耐溶剤性が良好となり、質量平均分子量が200000以下であることにより、溶媒への溶解性の低下、溶液粘度の上昇が抑制される。
【0045】
[第三実施態様]
次に、本発明の第三実施態様について説明する。本発明の第三実施態様は、側鎖にジナフトチオフェン骨格を含む重合体に関するものである。言い換えれば、本実施態様は、上記式(I)で表されるジベンゾチオフェン骨格を側鎖に含む重合体において、当該ジベンゾチオフェン骨格における5位及び6位、並びに5’位及び6’位の炭素原子間における結合のそれぞれに、ベンゾ環を1つずつ縮合させた重合体に関するものである。このような重合体は、下記一般式(IV)で表される繰り返し単位を含み、側鎖にジベンゾチオフェン骨格を含む重合体よりも屈折率付与効果が高い。
【0046】
【化6】

【0047】
上記一般式(IV)中、(R)は、r個の同一又は異なる置換基を意味し、当該置換基は、一般式(IV)におけるジナフトチオフェン骨格の置換可能な炭素原子のいずれに結合してもよく、各Rは、それぞれ独立に、有機基、水酸基、アミノ基、ニトロ基、チオール基、スルホ基、ハロゲン原子、又は置換されてもよいシリル基を表す。また、上記一般式(IV)中、rは、0〜11の整数である。また、上記一般式(IV)中、Yは、単結合、二価の有機基又は二価の原子であり、Rは、水素原子又はメチル基である。
【0048】
上記一般式(IV)で表される繰り返し単位を含む重合体は、上記一般式(II)における1個のRがポリマー主鎖への結合基となる化合物である。そのため、上記一般式(IV)において、置換基を導入することのできる炭素原子は、合計11個となる。これら11個の炭素原子のいずれにも、独立に、任意の置換基Rを導入する又は導入しないことができる。この場合、導入される各置換基Rは、それぞれ独立して決定され、互いに同一でも異なってもよい。なお、上記一般式(IV)において、Rで表される有機基としては、上記第一実施態様の一般式(II)において説明したものと同様のものを挙げることができる。また、上記一般式(IV)において、Rで表されるハロゲン原子としては、上記第一実施態様の一般式(II)において説明したものと同様のものを挙げることができる。Rで表される各置換基は、本重合体に必要とされる溶解性、本重合体が添加される樹脂基材との相溶性等を考慮して、適宜選択すればよい。
【0049】
上記一般式(IV)において、Yは、単結合、二価の有機基又は二価の原子である。Yが二価の有機基である場合、Yとしては、エステル結合、アミド結合、イミド結合、エーテル結合、スルフィド結合、又はこれらの結合を主鎖に含むアルキレン基が例示される。また、Yが二価の原子である場合、Yとしては、酸素原子、硫黄原子、置換されてもよい錫原子が例示される。
【0050】
上記一般式(IV)で表される繰り返し単位を含む重合体を合成する方法は、特に限定されない。このような合成方法の一例としては、(A)ジナフトチオフェンにビニル基、(メタ)アクリロイル基等のような重合性の不飽和基を結合させたモノマー誘導体を作製し、当該モノマー誘導体を単独で、又は他のモノマーとともに重合させる方法が挙げられる。また、(B)カルボキシル基や水酸基のような反応活性な置換基を側鎖に有する樹脂と、当該反応活性な置換基と反応して結合することのできる置換基を有するジナフトチオフェン誘導体とを反応させる方法が挙げられる。
【0051】
上記(A)の一例としては、ジナフトチオフェンをホルミル化した後、当該ホルミル基をWittig反応によりビニル基に変換させることにより、ジナフトチオフェンにビニル基を導入し、ラジカル重合開始剤により重合又は他のビニルモノマーと共重合させる方法が挙げられる。他のビニルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリロニトリル、グリシジル(メタ)アクリレート等のアクリレートモノマー、酢酸ビニル等のビニルエステル、ヒドロキシエチルアクリレート等の水酸基を持つビニルモノマー、ビニルエーテル、塩化ビニル等のビニルモノマー、スチレン、ビニルピリジン、ビニルベンゾフェノン、ビニルイミダゾール等の芳香族ビニルモノマーが挙げられる。
【0052】
上記(B)の一例としては、ポバール、又は酢酸ビニルをモノマーとして含む共重合体のけん化物と、グリシジル基を有するジナフトチオフェン誘導体とを反応させる方法や、(メタ)アクリル酸の重合体又は(メタ)アクリル酸をモノマーとして含む共重合体と、水酸基を有するジナフトチオフェン誘導体とを反応させる方法が挙げられる。
【0053】
上記一般式(IV)で表される繰り返し単位を有する重合体が共重合体である場合、当該共重合体を構成するモノマー成分のうち、上記一般式(IV)で表される構造に対応するモノマー成分の割合は、5〜95モル%であることが好ましく、30〜90モル%であることがより好ましく、50〜90モル%であることが最も好ましい。共重合体を構成するモノマー成分のうち、上記一般式(IV)で表される構造に対応するモノマー成分の割合が、5モル%以上であれば屈折率の向上効果が良好となり、95モル%以下であれば共重合によりもたらされる耐熱性、機械的強度、複屈折性の低減又は相溶性の向上効果が良好となる。
【0054】
上記一般式(IV)で表される繰り返し単位を含む重合体として、より具体的には、下記一般式(V)で表される重合体が挙げられる。
【0055】
【化7】

【0056】
上記一般式(V)中、R、R、Y及びrは、上記一般式(IV)におけるものと同様であり、R及びRは、水素原子又はメチル基を表し、W及びZは、それぞれ独立に、OCOR、OCONR、シアノ基又は置換芳香族基を表し、Rは、アルキル基、アラルキル基又はアリール基であってその構造中に酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含んでもよく、R及びRは、それぞれ独立に、水素、アルキル基、アラルキル基又はアリール基であってその構造中に酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含んでもよい。また、上記一般式(V)中、sは、1から1000の整数を、tは、0から1000の整数を、uは、0から1000の整数をそれぞれ表す。また、上記一般式(V)で表される重合体において、R、R又はRを含む各繰り返し単位は、それぞれs:t:uの比率で存在し、それぞれの繰り返し単位の結合する順序は特に限定されず任意である。
【実施例】
【0057】
以下、本発明の方法について、実施例を示すことによりさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0058】
[実施例1]
ジナフトチオ[2,1−b:1’,2’−d]チオフェン(DNpTh)の合成
【化8】

【0059】
三口フラスコに1,1’−ビナフトール(BNpOH)20.0g(69.9mmol)を秤取り、これにN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)150mLを加えて溶解させて溶液とした。この溶液に、窒素雰囲気下、氷冷しながら水素化ナトリウム(純度55%、油分散)6.70g(153.7mmol)を徐々に添加し、1時間撹拌した。得られた反応液にジメチルチオカルバモイルクロライド(純度95%)20.0g(153.7mmol)を加え、これらを、85℃で1時間加熱撹拌してから室温まで冷却した後、1質量%のKOH水溶液500mLに注ぎ、析出する沈殿物を濾別し水でよく洗浄した。濾別された沈殿物を塩化メチレン50mLに溶解させて溶液とし、この溶液に含まれる水分を硫酸マグネシウムで除いた後、溶液から塩化メチレンを留去した。留去後に残った固体を塩化メチレン/石油エーテルより再結晶させて、BNpOTc 27.4g(59.4mmol)を得た。得られたBNpOTcの融点(mp.)は、206.3℃だった。
【0060】
次に、BNpOTc 6.0g(13.1mmol)をスルホラン12mLに溶解させ、得られた溶液を、窒素雰囲気下で2時間加熱還流させた後、室温まで冷却し、蒸留水に注いだ。蒸留水中に析出した固体を、濾別し、減圧乾燥してからクロロホルムに溶解させた。これにより得られた溶液を活性炭で脱色処理し、さらにクロロホルム/ヘキサンより再結晶させてDNpTh 2.63g(9.3mmol)を得た。得られたDNpThを実施例1の化合物とした。実施例1の化合物は、ジベンゾチオフェン骨格に2つのベンゾ環(芳香環)が縮合したものである。得られたDNpThのmp.は、208.9℃だった。
【0061】
[実施例2]
ジナフトチオフェン−6−カルボキシアルデヒド(6−F−DNpTh)
【化9】

【0062】
三口フラスコにDNpTh 1.0g(3.6mmol)を秤取り、これに脱水エーテル200mLを加えて分散させた。この分散液に、アルゴン雰囲気下、0℃にて、n−ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.54M)6.8mL(10.6mmol)を徐々に滴下し、さらに2.5時間加熱還流させた。得られた反応液を、0℃に冷却し、DMF 0.4mL(10.6mmol)を徐々に滴下した後、2時間加熱還流させた。その後、反応液に、氷冷下、蒸留水60mL及び酢酸エチル50mLを加え、水層が中性になるまで水洗した。水洗後、有機層を分取し、この有機層に含まれる水分を硫酸マグネシウムで除いた後、有機層に含まれる溶媒を留去した。留去後に残った固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(クロロホルム:ヘキサン=3:1)により精製し、エタノールより再結晶して、黄色固体の6−F−DNpTh 0.62g(2.0mmol)を得た。得られた6−F−DNpThを実施例2の化合物とした。実施例2の化合物は、ホルミル基を有するジベンゾチオフェン骨格に2つのベンゾ環(芳香環)が縮合したものである。
6−F−DNpThの各物性値は、以下の通りである。
mp.210.4℃
H NMR(600MHz,CDCl)δ:10.412(s,1H),8.95(d,J=8.4Hz,1H),8.78(m,1H),8.494(s,1H),8.209(d,J=8.4Hz,1H),8.05(m,2H),7.980(d,J=8.4Hz,1H),7.73(m,1H),7.67(m,1H),7.60(m,2H)
IR(film):1682cm−1
【0063】
[実施例3]
6−ヒドロキシメチルジナフトチオフェン(6−HM−DNpTh)の合成
【化10】

【0064】
三口フラスコに6−F−DNpTh 1.1g(3.2mmol)を秤取り、これに脱水エタノール10mLを加えて分散させた。この分散液に、窒素雰囲気下、水素化ホウ素ナトリウム0.5g(13.2mmol)を加え、さらに65℃で1時間加熱撹拌した。得られた反応液に、氷冷下、1N塩酸30mL及び酢酸エチル50mLを加え、水層が中性になるまで水洗した。水洗後、有機層を分取し、この有機層に含まれる水分を硫酸マグネシウムで除いた後、有機層に含まれる溶媒を留去した。留去後に残った固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(クロロホルム:ヘキサン=3:1)により精製して、白色固体の6−HM−DNpTh 1.0g(3.0mmol)を得た。得られた6−HM−DNpThを実施例3の化合物とした。実施例3の化合物は、ヒドロキシメチル基を有するジベンゾチオフェン骨格に2つのベンゾ環(芳香環)が縮合したものである。
6−HM−DNpThの各物性値は、以下の通りである。
mp.150.9℃
H NMR(600MHz,CDCl)δ:8.85(m,2H),8.04(m,2H),7.97(m,3H),7.58(m,4H),5.156(s,2H)
IR(film):3365cm−1
【0065】
[実施例4]
ジナフトチオフェン骨格を有するポリマー(Polymer A)の合成
【化11】

【0066】
三口フラスコにDNpTh 1.5g(5.3mmol)及びパラホルムアルデヒド0.16g(5.3mmol)を秤取り、これにジクロロエタン50mLを加えて分散させた。この分散液に、窒素雰囲気下でよく撹拌しながら、三弗化ホウ素ジエチルエーテル錯体(BF・OEt)0.65mLを加え、さらに室温で24時間撹拌した。その後、この反応液を撹拌中のメタノール500mLに徐々に滴下し、生成した固体を濾別して乾燥することにより、淡赤色粉末のPolymer A(ジナフトチオフェン骨格を有するポリマー)を得た。得られたPolymer Aを実施例4の化合物とした。実施例4の化合物は、ジベンゾチオフェン骨格を主鎖に含むポリマーにおいて、当該ジベンゾチオフェン骨格に2つのベンゾ環(芳香環)が縮合した化合物である。
Polymer Aの各物性値は、以下の通りである。
H−NMR(600MHz,CDCl)δ:8.8−9.1(m,Ar),8.2−8.3(m,Ar),7.9−8.1(m,Ar),7.4−7.7(m,Ar),5.1−5.5(m,−CH−)
GPC(THF)ポリスチレン換算:数平均分子量770,質量平均分子量1020
【0067】
[実施例5]
6−ビニルナフトチオフェン(6−V−DNpTh)の合成
【化12】

【0068】
三口フラスコにメチルトリフェニルホスホニウムブロマイド4.57g(12.8mmol)を秤取り、これに脱水テトラヒドロフラン(THF)50mLを加えて分散させた。この分散液に、窒素雰囲気下で氷冷しながら、n−ブチルリチウム(1.54M、n−ヘキサン溶液)7.9mL(12.2mmol)を徐々に添加し、室温で1時間撹拌した。得られた反応液に、氷冷下、6−F−DNpTh 4.57g(6.4mmol)をTHF20mLに溶解させた溶液を徐々に滴下し、さらに室温で3時間撹拌した。この反応液に、氷冷下、水100mLを加えてよく撹拌し、さらに酢酸エチル100mLを加えた後に、有機層を分離した。分離した有機層に飽和食塩水を加え、水層が中性になるまで繰り返し洗浄した。水洗後、有機層を分取し、この有機層に含まれる水分を硫酸マグネシウムで除いたあと、有機層に含まれる溶媒を留去した。留去後に残った固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(クロロホルム)で精製して、淡黄色固体の6−V−DNpTh 3.81g(12.3mmol)を得た。得られた6−V−DNpThを後述のPolymer Bの合成に使用した。
6−V−DNpThの各物性値は、以下の通りである。
mp.116.8℃
H NMR(600MHz,CDCl)δ:8.83(m,2H),8.04(m,3H),7.989(d,J=7.8Hz,1H),7.943(d,J=7.8Hz,1H),7.57(m,4H),7.191(dd,J=18.0Hz,J=10.8Hz,1H),6.166(d,J=18.0Hz,1H),5.630(d,J=10.8Hz,1H)
IR(film):1623cm−1
【0069】
[実施例6]
ジナフトチオフェン骨格を有するポリマー(Polymer B)の合成
【化13】

【0070】
重合管に6−V−DNpTh 1.0g(3.2mmol)及びアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)26.5mg(0.16mmol)を秤取り、これに脱水トルエン10mLを添加して溶解させた。この溶液を液体窒素で冷却し、凍結脱気窒素置換を3回繰り返した後、さらに凍結脱気して封管し、この溶液を60℃にて14時間撹拌して重合反応させた。得られた反応液をトルエン3mLで希釈し、メタノール200mLで再沈精製して、ほぼ白色の粉体であるPolymer Bを0.62g(2.0mmol)得た。得られたPolymer Bを実施例6の化合物とした。実施例6の化合物は、ジベンゾチオフェン骨格を側鎖に含むポリマーにおいて、当該ジベンゾチオフェン骨格に2つのベンゾ環(芳香環)が縮合した化合物である。
Polymer Bの各物性値は、以下の通りである。
H−NMR(600MHz,CDCl)δ:8.5〜6.0(br,11H),3.0〜0.8(br,3H)
GPC(THF)ポリスチレン換算:数平均分子量7000,質量平均分子量15150
【0071】
[比較例1]
下記式(VI)で表されるジベンゾチオフェン(和光純薬工業株式会社製)を比較例1の化合物とした。
【化14】

【0072】
[屈折率の評価]
・試験例1〜5
実施例1〜4及び6の化合物のそれぞれについて、当該化合物20mgを1mLのクロロホルムに溶解させて溶液とし、次いで、この溶液をメンブランフィルター(0.50μm)で濾過した。得られた濾液をパスツールピペットを用いて1滴、スピンコーターによりシリコンウェーハ(15mm角)の表面に塗布し、塗布された濾液に含まれていたクロロホルムを蒸発させて上記化合物の膜(膜厚100μm)を形成させた。得られた化合物の膜はいずれも均一透明であり、当該膜のそれぞれについて、632.8nmの光に対する屈折率をエリプソンメーター(DHA−OLX/S4、株式会社溝尻光学工業所製)により測定した。その結果を表1に示す。なお、実施例1の化合物を使用したものは試験例1に、実施例2の化合物を使用したものは試験例2に、実施例3の化合物を使用したものは試験例3に、実施例4の化合物を使用したものは試験例4に、実施例6の化合物を使用したものは試験例5に、それぞれ対応する。また、試験例4及び5(実施例4及び6の化合物)については、塩化メチレン可溶部20mgを使用して、上記試験を行った。
【0073】
・試験例6
実施例1の化合物について、当該化合物とポリメタクリル酸メチル(PMMA、数平均分子量3900)とを表1に示す割合で混合して樹脂組成物を作製した。得られた樹脂組成物20mgを1mLのクロロホルムに溶解させて溶液とし、次いで、この溶液をメンブランフィルター(0.50μm)で濾過した。得られた濾液をパスツールピペットを用いて1滴、スピンコーターによりシリコンウェーハ(15mm角)の表面に塗布し、塗布された濾液に含まれていたクロロホルムを蒸発させて上記樹脂組成物の膜(膜厚100μm)を形成させた。得られた樹脂組成物の膜はいずれも均一透明であり、当該膜のそれぞれについて、632.8nmの光に対する屈折率をエリプソンメーター(DHA−OLX/S4、株式会社溝尻光学工業所製)により測定した。その結果を表1において試験例5として示す。
【0074】
・比較試験例1
実施例1の化合物の代わりに比較例1の化合物を使用したこと以外は、試験例5と同様の手順にて比較試験例1を実施した。その結果を表1に示す。
【0075】
・比較試験例2
試験例5及び比較試験例1と同じPMMAを使用し、このPMMA20mgを1mLのクロロホルムに溶解させて溶液とし、次いで、この溶液をメンブランフィルター(0.50μm)で濾過した。得られた濾液をパスツールピペットを用いて1滴、スピンコーターによりシリコンウェーハ(15mm角)の表面に塗布し、塗布された濾液に含まれていたクロロホルムを蒸発させてPMMAの膜(膜厚100μm)を形成させた。得られたPMMAの膜について、632.8nmの光に対する屈折率をエリプソンメーター(DHA−OLX/S4、株式会社溝尻光学工業所製)により測定した。その結果を表1に示す。
【0076】
【表1】

【0077】
表1から明らかなように、実施例1〜4又は6のいずれかの化合物を使用した試験例1〜6では、1.70〜1.81程度という高い屈折率が得られ、本発明の方法の有効性が理解される。特に、試験例6と比較試験例1とを対比すると、ジベンゾチオフェンをPMMAに混合させた比較試験例1では屈折率が1.6073であるのに対して、ジベンゾチオフェンに2つのベンゾ環が縮合したジナフトチオフェンをPMMAに混合させた試験例5では、屈折率が1.7028になることが理解される。このことから、ジベンゾチオフェン骨格を有する化合物に芳香環を縮合させることにより、当該化合物による屈折率付与効果が増大することがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表されるジベンゾチオフェン骨格を有する化合物を使用して物品の屈折率を付与する方法において、
前記式(I)におけるA環及び/又はB環に芳香環を縮合させることにより、前記化合物による屈折率付与効果を増大させる方法。
【化1】

【請求項2】
前記芳香環がベンゾ環、ポリベンゾ環、フラン環、ピリジン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環からなる群より選択される少なくとも1つである請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記芳香環が前記式(I)における5位及び6位の炭素原子間における結合、並びに/又は、5’位及び6’位の炭素原子間における結合、で縮合した請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
下記式(I)で表されるジベンゾチオフェン骨格を有する化合物において、
前記ジベンゾチオフェン骨格に対して少なくとも一つの芳香環を縮合させ、さらに前記芳香環の種類とその縮合位置とを調整することにより、前記化合物による屈折率付与効果を調整する方法。
【化2】


【公開番号】特開2011−162584(P2011−162584A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23409(P2010−23409)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(592218300)学校法人神奈川大学 (243)
【Fターム(参考)】