ジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤のリン酸塩の新規結晶性形態
本発明は、(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンのリン酸二水素塩の結晶性無水多形体、ならびに、それらの調製のためのプロセス、これらの新規形態を含有する医薬組成物及び糖尿病、肥満及び高血圧の治療のための本新規形態及び本医薬組成物の使用方法に関する。本発明はまた、(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンのリン酸二水素塩の新規結晶性溶媒和物ならびに結晶性脱溶媒和多形体及び本発明の無水多形体の調製のためのそれらの使用に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤のリン酸二水素塩の新規結晶性形態に関する。より具体的には、本発明は、強力なジペプチジルペプチダーゼ−IV(DPP−IV)の阻害剤である、(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンのリン酸二水素塩の新規結晶性溶媒和物及び無水物に関する。DPP−IV阻害剤のこれらの新規結晶性形態は、ジペプチジルペプチダーゼ−IVの阻害剤が適応となる疾病及び症状、特に2型糖尿病、高血糖、インスリン抵抗性、肥満及び高血圧の治療及び予防に有用である阻害剤を含有する医薬組成物の調製に有用である。本発明はさらに、本発明の新規結晶性リン酸二水素塩無水物多形相を含有する医薬組成物;該リン酸二水素塩溶媒和物及び無水物及びそれらの医薬組成物を調製するためのプロセス;及び、本発明の組成物を投与することを含む、DPP−IV阻害剤が適応となる症状の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グルコース依存性インスリン分泌促進ペプチド(GIP)及びグルカゴン様ペプチド1(GLP−1)の両方を不活性化する酵素である、ジペプチジルペプチダーゼ−IV(DPP−IV)の阻害は、インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)としても知られている2型糖尿病の治療及び予防に対する新規アプローチである。2型糖尿病の治療に対するDPP−IV阻害剤の治療可能性は、C.F.Deacon及びJ.J.Holst,“Dipeptidyl peptidase IV inhibition as an approach to the treatment and prevention of Type 2 diabetes:a historical perspective,”Biochem.Biophys.Res.Commun.,294:1−4(2000);K.Augustynsら、"Dipeptidyl peptidase IV inhibitors as new therapeutic agents for the treatment of Type 2 diabetes,”Exp.Opin.Ther.Patents,13:499−510(2003);及びD.J.Drucker,“Therapeutic potential of dipeptidyl peptidase IV inhibitors for the treatment of Type 2 diabetes,”Exp.Opin.Investig.Drugs,12:87−100(2003)で概説されている。
【0003】
WO03/004498(2003年1月16日公開)及び米国特許第6,699,871号(2004年3月2日発行)(両方ともMerck & Co.に譲渡)は、DPP−IVの強力な阻害剤であり、それゆえに2型糖尿病の治療に有用である、β−アミノテトラヒドロトリアゾロ[4,3−a]ピラジンのクラスについて述べている。WO03/004498で具体的に開示されているものは、(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンである。
【0004】
しかし、下記構造式I(本明細書中で以下、化合物Iと呼ぶ。)の(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンのリン酸二水素塩の新規に発見された結晶性溶媒和物及び無水物は、上記参考文献で開示されていない。
【発明の開示】
【0005】
(本発明の要約)
本発明は、構造式I(化合物I)の、ジペプチジルペプチダーゼ−IV(DPP−IV)阻害剤(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンのリン酸二水素塩の新規結晶性溶媒和物及び無水物に関する。本発明の結晶性溶媒和物及び無水物は、(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンのリン酸二水素塩の医薬組成物の調製において、加工、操作及び投薬の容易さなど、長所を有する。特に、それらは、溶解性、ストレスに対する安定性及び分解速度など、物理化学的特性が向上しており、様々な医薬剤形の製造に特に適するようになっている。本発明はまた、新規無水多形体を含有する医薬組成物;これらの溶媒和物及び無水物及びそれらの医薬組成物を調製するためのプロセス;及び2型糖尿病、高血糖、インスリン抵抗性、肥満及び高血圧の予防又は治療に対してそれらを使用するための方法に関する。
【0006】
(本発明の詳細な説明)
本発明は、構造式I(化合物I):
【0007】
【化8】
の(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンのリン酸二水素塩の新規結晶性溶媒和物及び無水物を提供する。
【0008】
ある実施形態において、本溶媒和物は、化合物IのC1−4アルカノラートである。この実施形態のクラスにおいて、C1−4アルカノラートは、メタノラート、エタノラート、1−プロパノラート又は2−プロパノラートである。別の実施形態において、本溶媒和物は、アセトン又はアセトニトリルなどの有機溶媒を含む。本結晶性溶媒和物は、結晶性無水形態Iもしくは形態III又はそれらの混合物に自然に転換する結晶性脱溶媒和無水形態IIの調製に有用であり、その混合物の組成は、処置又は保存する状態に依存する。無水形態I及びIIIは、化合物Iの安定な脱溶媒和無水物を表す。
【0009】
本発明はまた、本発明の化合物Iの結晶性溶媒和物から得られる化合物Iの新規結晶性脱溶媒和無水形態IIも提供する。
【0010】
本発明はまた、化合物Iの新規結晶性無水形態I及びIII及びそれらの混合物も提供する。
【0011】
本発明のさらなる実施形態は、結晶性無水形態IもしくはIII又はそれらの混合物を検出可能な量で含有する化合物I薬剤材料を提供する。「薬剤材料」とは、活性医薬成分(API)を意味する。この薬剤材料における、結晶性無水形態IもしくはIII又はそれらの混合物の量は、粉末X線回折(XRPD)、固体フッ素−19マジックアングルスピニング(MAS)核磁気共鳴分光法、固体炭素−13交差分極マジックアングルスピニング(CPMAS)核磁気共鳴分光法、固体フーリエ変換赤外分光法及びラマン分光法などの物理学的方法を使用することにより定量することができる。この実施形態のクラスにおいて、重量で約5%から約100%の結晶性無水形態IもしくはIII又はそれらの混合物が、本薬剤材料中に存在する。この実施形態の第二のクラスにおいて、重量で約10%から約100%の結晶性無水形態IもしくはIII又はそれらの混合物が、本薬剤材料中に存在する。この実施形態の第三のクラスにおいて、重量で約25%から約100%の結晶性無水形態IもしくはIII又はそれらの混合物が、本薬剤材料中に存在する。この実施形態の第四のクラスにおいて、重量で約50%から約100%の結晶性無水形態IもしくはIII又はそれらの混合物が、本薬剤材料中に存在する。この実施形態の第五のクラスにおいて、重量で約75%から約100%の結晶性無水形態IもしくはIII又はそれらの混合物が、本薬剤材料中に存在する。この実施形態の第六のクラスにおいて、化合物I薬剤材料の実質的に全てが、結晶性無水形態IもしくはIII又はそれらの混合物である、つまり、本化合物I薬剤材料は、実質的に純相である無水形態IもしくはIII又はそれらの混合物である。
【0012】
本発明の結晶性溶媒和物は、結晶性無水形態I及びIII及びそれらの混合物の調製に有用である。本結晶性溶媒和物は、脱溶媒和され、45℃にて約2時間加熱すると無水形態Iもしくは形態III又はそれらの混合物に転換する、中間体脱溶媒和無水形態IIになる。
【0013】
本発明の別の局面は、DPP−IVの阻害剤が適応となる臨床症状を予防又は治療するための方法を提供し、その方法には、そのような予防又は治療を必要とする患者に、化合物Iの結晶性無水形態IもしくはIII又はそれらの混合物の予防的又は治療的有効量を投与することが含まれる。そのような臨床症状には、糖尿病、特に2型糖尿病、高血糖、インスリン抵抗性、肥満及び高血圧が含まれる。
【0014】
本発明はまた、DPP−IVの阻害剤が適応となる臨床症状、特に2型糖尿病、高血糖、インスリン抵抗性、肥満及び高血圧の臨床症状の予防又は治療のための薬物の製造における、本発明の結晶性無水形態IもしくはIII又はそれらの混合物の使用を提供する。ある実施形態において、前記臨床症状は、2型糖尿病である。
【0015】
本発明の別の局面は、DPP−IVの阻害剤が適応となる臨床症状、特に、2型糖尿病、高血糖、インスリン抵抗性、肥満及び高血圧の治療において使用するための結晶性無水形態Iもしくは形態III又はそれらの混合物を提供する。この局面のある実施形態において、前記臨床症状は、2型糖尿病である。
【0016】
本発明はまた、1又は複数の医薬的に許容される担体又は賦形剤と組み合わせて結晶性無水形態IもしくはIII又はそれらの混合物を含有する医薬組成物も提供する。ある実施形態において、本医薬組成物は、医薬的に許容される賦形剤と混合した活性医薬成分(API)の予防的又は治療的有効量を含有し、該APIは、本発明の結晶性無水形態IもしくはIII又はそれらの混合物の検出可能な量を含有する。第二の実施形態において、本医薬組成物は、医薬的に許容される賦形剤と混合したAPIの予防的又は治療的有効量を含有し、該APIは、重量で約5%から約100%の本発明の結晶性無水形態IもしくはIII又はそれらの混合物を含有する。この第二の実施形態のクラスにおいて、かかる組成物中の本APIは、重量で約10%から約100%の結晶性無水形態IもしくはIII又はそれらの混合物を含有する。この実施形態の第二のクラスにおいて、かかる組成物中の本APIは、重量で約25%から約100%の結晶性無水形態IもしくはIII又はそれらの混合物を含有する。この実施形態の第三のクラスにおいて、かかる組成物中の本APIは、重量で約50%から約100%の結晶性無水形態IもしくはIII又はそれらの混合物を含有する。この実施形態の第四のクラスにおいて、かかる組成物中の本APIは、重量で約75%から約100%の結晶性無水形態IもしくはIII又はそれらの混合物を含有する。この実施形態の第五のクラスにおいて、本APIの実質的に全てが、化合物Iの結晶性無水形態IもしくはIII又はそれらの混合物であり、つまり、本APIは、実質的に純相である化合物I無水形態IもしくはIII又はそれらの混合物である。
【0017】
本発明による組成物は、錠剤、丸薬、カプセル、粉末、顆粒、滅菌溶液もしくは懸濁液、定量エアロゾルもしくは液体スプレー、ドロップ、アンプル、自己注射装置又は坐薬など、適切に単位投薬形態をとる。本組成物は、経口、非経口、鼻腔内、舌下もしくは直腸投与用であるか、又は吸入もしくは吹送による投与用である。本発明による組成物の配合は、都合よく、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、17版、1995に記載されているような、本分野で公知の方法により達成される。
【0018】
投与計画は、患者のタイプ、種、年齢、体重、性別及び病状;治療する症状の重症度;投与経路;及び患者の腎機能及び肝機能を含む、様々な要因に従い選択される。通常の技能を有する医師、獣医師又は臨床家は、症状の進行の予防、抑制及び停止に必要な薬物の有効量を容易に決定し処方することができる。
【0019】
本発明の経口投薬量は、望ましい効果のために使用する場合、約0.01mg/kg体重/日(mg/kg/日)から約100mg/kg/日、好ましくは、0.01から10mg/kg/日、最も好ましくは、0.1から5.0mg/kg/日の範囲である。経口投与のために、本組成物は、治療対象患者に対する投与量を症状に応じて調節するために、好ましくは、本APIを0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100及び500ミリグラム含有する錠剤の形態で与えられる。薬物は、通常、本APIを約0.01mgから約500mg、好ましくは、本APIを約1mgから約200mg含有する。静脈内投与の場合は、最も好ましい投与量は、一定速度の注入の間、約0.1から約10mg/kg/分の範囲となる。有利に、本発明の結晶性無水形態は、1日1回の投与で投与し得るか、又は、1日総投与量を、1日2、3又は4回の分割投与で投与し得る。さらに、本発明の結晶性無水形態は、適切な経鼻投与ビヒクルの局所使用を介して経鼻投与の形態で、又は、当業者にとって周知の経皮的皮膚パッチの形態を用いた経皮経路を介して、投与することができる。経皮的送達系の形態で投与するために、勿論、その投与は、投薬計画を通して、断続的であるよりむしろ連続的となろう。
【0020】
本発明の方法において、本明細書中で詳述する化合物I無水形態I及びIII又はそれらの混合物は、APIを形成することができ、通常、経口錠剤、カプセル、エリキシル剤、シロップ剤など、意図する投与形態に関して適切に選択され、従来の薬務に適合する適切な医薬の希釈剤、賦形剤又は担体(本明細書中でまとめて「担体」物質と呼ぶ。)と混合して投与される。
【0021】
例えば、錠剤又はカプセルの形態での経口投与のために、活性のある医薬成分を、経口用で非毒性の医薬的に許容される不活性担体、例えば、ラクトース、デンプン、スクロース、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、マンニトール、ソルビトールなどと組み合わせることができ;液体形態での経口投与のために、経口APIを、あらゆる経口用で非毒性の医薬的に許容される不活性担体、例えば、エタノール、グリセロール、水などと組み合わせることができる。さらに、所望する場合又は必要な場合、適切な結合剤、滑沢剤、崩壊剤及び着色剤もまた、本混合物に組み込むことができる。適切な結合剤には、デンプン、ゼラチン、天然の糖、例えばグルコース又はβ−ラクトース、コーンシロップ、天然及び合成ゴム、例えばアラビアゴム、トラガカントゴム又はアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックスなどが含まれる。これらの剤形において使用される滑沢剤には、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが含まれる。崩壊剤には、これらに限定されないが、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどが含まれる。
【0022】
化合物Iの結晶性無水形態I及びIII又はそれらの混合物は、水に対して高い溶解性を有することが分かっており、それによりこれらは、製剤の調製、とりわけ、APIの比較的濃縮された水溶液が必要とされる、鼻腔内及び静脈内投与用製剤の調製に対して特に適切なものとなる。結晶性化合物I無水形態Iもしくは形態III又はそれらの混合物の水中の溶解度は、120mg/mLを超える。
【0023】
さらなる局面において、本発明は、DPP−IV阻害剤が適応となる臨床症状の治療及び/又は予防のための方法を提供し、該方法には、そのような予防又は治療を必要とする患者に、本発明の無水形態IもしくはIII又はそれらの混合物の予防的又は治療的有効量、又は無水形態IもしくはIII又はそれらの混合物の予防的又は治療的有効量を含有する医薬組成物を投与することが含まれる。
【0024】
次の非限定例は、本発明を説明することを意図するものであり、本発明の範囲又は精神を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0025】
本明細書中に記載されている化合物は、ケト−エノール互変異性体などの互変異性体として存在し得る。個々の互変異性体ならびにそれらの混合物は、構造式Iの化合物により包含される。
【0026】
「%鏡像体過剰率」(「ee」と略称)という用語は、主要鏡像異性体の%から少ない方の鏡像異性体の%を差し引いたものを意味するものとする。したがって、70%鏡像体過剰率は、一方の鏡像異性体形成率が85%であり、他方の鏡像異性体形成率が15%であることに相当する。「鏡像体過剰率」という用語は、「光学純度」という用語と同義である。
【0027】
化合物Iの溶媒和物及び脱溶媒和無水形態IIの調製及び、無水形態I及びIIIの調製及び無水形態IとIIIとの間の相互転換のための一般的方法:
化合物Iは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、アセトン及びアセトニトリルなどのいくつかの有機溶媒とともに、非化学量論的な同形溶媒和物を形成する。この様々な本発明の溶媒和物は、同形であり、同様の粉末X線回折パターン、F−19固体NMRスペクトル及びDSC曲線を示す。
【0028】
溶媒和物は、おおよそ室温にて、約5分間、無水形態I、IIもしくはIII又はそれらの混合物を溶媒和剤と接触させることにより調製される。溶媒和物はまた、溶媒和剤の存在下における遊離塩基からのリン酸二水素塩の調製のプロセスにより生じるが、ここで、その水活性は、該溶媒和物の溶解度が他のどの無水物又は一水和物よりも低いような状態である。例えば、エタノール溶媒和物は、遊離塩基をエタノール中にてリン酸水溶液で処理することにより形成することができる。
【0029】
エタノール溶媒和物は、(a)約25℃にて約5時間、試料を窒素気流で乾燥させる、又は(b)約25℃にて約5時間、真空中で乾燥させることにより、脱溶媒和無水形態IIに転換することができる。
【0030】
脱溶媒和無水形態IIは、準安定性であり、約45℃にて約2時間で、無水形態Iもしくは形態III又はそれらの混合物に転換される。
【0031】
無水形態Iは、(a)物理学的な撹拌を用いた乾燥、(b)圧縮又は(c)粉砕により、無水形態IIIに転換することができる。無水形態IIIは、約110℃にて約30分間加熱することにより無水形態Iに転換することができる。
【0032】
無水形態I及びIIIの様々な組成の混合物は、室温での形態I又はそれらの混合物の粉砕又は圧縮において形成されるが、その結果、その混合物中の形態IIIの割合が多くなる。
【0033】
無水多形形態I及び形態IIIは、互変性の関係を有し、低温領域では、ある形態がより安定であり、約34℃の遷移温度を含む高温では、他方がより安定となる。無水形態IIIは、低温安定型であり、約34℃より低温で安定である。無水形態Iは、高温安定型であり、約34℃より高温で安定である。
【0034】
無水形態I及びIIIは、水和物が安定ではない水活性で、イソアミルアルコールなど、化合物Iが溶媒和しない溶媒から直接結晶化することができる。形態IIIは、約34℃以下で優先的に結晶化することができ、形態Iは、約34℃より高温で優先的に結晶化することができる。
【0035】
無水形態Iが優先的に結晶化される一般条件:
40℃、イソアミルアルコール(IAA)/水系において:
(1)水濃度が3.4重量%以下であるようなIAA及び水において、化合物Iの混合物から結晶化し;
(2)得られた固相を回収し;
(3)そこから溶媒を除去する。
【0036】
60℃、IAA/水系において:
(1)水濃度が4.5重量%以下であるようなIAA及び水中の化合物Iの混合物から結晶化し;
(2)得られた固相を回収し;
(3)そこから溶媒を除去する。
【0037】
無水形態IIIが優先的に結晶化される一般条件:
25℃、イソアミルアルコール(IAA)/水系において:
(1)水濃度が2.7重量%以下であるようなIAA及び水中の化合物Iの混合物から結晶化し;
(2)得られた固相を回収し;
(3)そこから溶媒を除去する。
【実施例1】
【0038】
【化9】
【0039】
(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミン リン酸二水素無水形態I及び形態III混合物
3−(トリフルオロメチル)−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン 塩酸塩(1−4)の調製
【0040】
【化10】
【0041】
段階A:ビスヒドラジド(1−1)の調製
ヒドラジン(20.1g、水中35wt%、0.22mol)をアセトニトリル310mLと混合した。トリフルオロ酢酸エチル 31.5g(0.22mol)を60分間にわたり添加した。内部温度を14℃から25℃に上昇させた。得られた溶液を22℃から25℃にて60分間熟成させた。その溶液を7℃に冷却した。50wt%NaOH水溶液 17.9g(0.22mol)及び塩化クロロアセチル 25.3g(0.22mol)を16℃以下の温度にて130分間にわたり、同時に添加した。反応が完了したら、27℃から30℃にて、26から27Hg vacuum(約3600Pa)で、その混合物を減圧蒸留して、水及びエタノールを除去した。蒸留中に、アセトニトリル 720mLをゆっくりと添加し、一定の体積に維持した(約500mL)。スラリーを濾過して塩化ナトリウムを除去した。アセトニトリル 約100mLでケーキをすすいだ。溶媒を除去して、ビス−ヒドラジド1−1(43.2g、96.5%回収率、HPLCアッセイにより94.4面積%純度)。
【0042】
1H−NMR(400MHz、DMSO−d6):δ4.2(s,2H),10.7(s,1H)及び11.6(s,1H)ppm。
【0043】
13C−NMR(100MHz、DMSO−d6):δ41.0、116.1(q,J=362Hz),155.8(q,J=50Hz)及び165.4ppm。
【0044】
段階B:5−(トリフルオロメチル)−2−(クロロメチル)−1,3,4−オキサジアゾール(1−2)の調製
ACN(82mL)中の段階Aからのビスヒドラジド1−1(43.2g、0.21mol)を5℃に冷却した。温度を10℃以下に維持しながらオキシ塩化リン(32.2g、0.21mol)を添加した。その混合物を80℃に加熱し、HPLCにより1−1が2面積%未満であることが示されるまで、この温度で24時間熟成させた。別個の容器で、IPAc 260mL及び水 250mLを混合し、0℃に冷却した。内部温度を10℃以下に維持しながら、この反応スラリーの反応を停止させた。添加後、その混合物を30分間激しく撹拌し、温度を室温に上げ、水層を除去した。次に、有機層を水 215mL、5wt%重炭酸ナトリウム水溶液 215mLで洗浄し、最後に、20wt% 食塩水溶液 215mLで洗浄した。HPLCアッセイにより、処理後、86%から92%が回収された。75−80mmHg、55℃での蒸留により揮発性物質を除去し、油状物質を得て、さらに精製せずに段階Cで直接使用することができた。他の場合には、その生成物を蒸留により精製して、70%から80%回収率で1−2を得ることができる。
【0045】
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ4.8(s,2H)ppm。
【0046】
13C−NMR(400MHz,CDCl3):δ32.1,115.8(q,J=337Hz),156.2(q,J=50Hz)及び164.4ppm。
【0047】
段階C:N−[(2Z)−ピペラジン−2−イリデン]トリフルオロアセトヒドラジド(1−3)の調製
−20℃に冷却したメタノール(150mL)中のエチレンジアミン(33.1g、0.55mol)の溶液に、段階Bからの蒸留したオキサジアゾール1−2(29.8g、0.16mol)を添加し、その間、内部温度を−20℃に維持した。添加終了後、得られたスラリーを−20℃にて1時間熟成させた。次に、エタノール(225mL)を入れ、スラリーを−5℃にゆっくりと温めた。−5℃にて60分間経過後、−5℃にてそのスラリーを濾過し、エタノール(60mL)で洗浄した。72%回収率で、白色の固体としてアミジン1−3を得た(24.4g、HPLCにより99.5面積wt%純度)。
【0048】
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6):δ2.9(t,2H),3.2(t,2H),3.6(s,2H)及び8.3(b,1H)ppm。13C−NMR(100MHz,DMSO−d6):δ40.8,42.0,43.3,119.3(q,J=350Hz),154.2及び156.2(q,J=38Hz)ppm。
【0049】
段階D:3−(トリフルオロメチル)−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン塩酸塩(1−4)の調製
メタノール 110mL中のアミジン1−3(27.3g、0.13mol)の懸濁液を、55℃に温めた。37% 塩酸(11.2mL、0.14mol)をこの温度にて15分間にわたり添加した。添加の間、固形物が全て溶解され、その結果透明な溶液となった。この反応物を30分間熟成させた。この溶液を20℃に至るまで冷却し、種床が形成されるまで(10分から1時間)この温度で熟成させた。MTBE 300mLを20℃にて1時間にわたり入れた。得られたスラリーを2℃に冷却し、30分間熟成させ、濾過した。固形物をエタノール:MTBE(1:3) 50mLで洗浄し、45℃にて真空下で乾燥させた。トリアゾール1−4を26.7g(HPLCにより99.5面積wt%純度)を回収した。
【0050】
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6):δ3.6(t,2H),4.4(t,2H),4.6(s,2H)及び10.6(b,2H)ppm;13C−NMR(100MHz,DMSO−d6):δ:39.4,39.6,41.0,118.6(q,J=325Hz),142.9(q,J=50Hz)及び148.8ppm。
【0051】
【化11】
【0052】
段階A:4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−オン(2−3)の調製
2,4,5−トリフルオロフェニル酢酸(2−1)(150g、0.789mol)、Meldrum酸(125g、0.868mol)及び4−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)(7.7g、0063mol)を5L 三つ首フラスコに入れた。N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)(525mL)を室温にて1回で添加し、固形物を溶解した。室温にてN,N−ジイソプロピルエチルアミン(282mL、1.62mol)を1回で添加し、その間、温度を40℃以下に維持した。塩化ピバロイル(107mL、0.868mol)を1時間から2時間にわたり滴下添加し、その間、温度を0℃から5℃の間に維持した。その反応混合物を5℃にて1時間熟成させた。40℃から50℃にてトリアゾール塩酸塩1−4(180g、0.789mol)を一度に添加した。その反応溶液を70℃にて数時間熟成させた。次に、20℃から45℃にて、5% 炭酸水素ナトリウム水溶液(625mL)を滴下添加した。1回分を播種し、20℃から30℃にて1時間熟成させた。次に、2時間から3時間にわたり、5% 炭酸水素ナトリウム水溶液 525mLをさらに滴下添加した。室温にて数時間熟成させた後、スラリーを0℃から5℃に冷却し、1時間熟成させ、その後、固形物を濾過した。湿ったケーキを、20%DMAc水(300mL)、続いて、20% DMAc水(400mL)のさらに2回分及び最後に水(400mL)で置換−洗浄した。そのケーキを室温にて吸引乾燥した。最終産物2−3の単離回収率は、89%であった。
【0053】
段階B:(2Z)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブト−2−エン−2−アミン(2−4)の調製
5Lの丸底フラスコに、メタノール(100mL)、ケトアミド2−3(200g)及び酢酸アンモニウム(110.4g)を入れた。次に、添加中、温度を30℃以下に維持しながら、メタノール(180mL)及び28%水酸化アンモニウム水溶液(58.6mL)を添加した。さらなるメタノール(100mL)をその反応混合物に添加した。その混合物を還流温度で加熱し、2時間熟成させた。反応物を室温に冷却し、次に、氷浴中で約5℃に冷却した。30分後、固形物を濾過し、乾燥させ、固体として2−4を得た(180g);m.p.271.2℃。
【0054】
段階C:(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミン(2−5)の調製
500mLのフラスコに、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)二量体{[Rh(cod)Cl]2}(292mg、1.18mmol)及び(R,S)t−ブチル Josiphos(708mg、1.3mmol)を窒素雰囲気下で入れた。次に、脱気したMeOHを添加し(200mL)、その混合物を室温にて1時間撹拌した。4L 水素添加装置に、エナミンアミド2−4(118g、0.29mol)をMeOH(1L)とともに入れた。スラリーを脱気した。次に、触媒溶液を窒素下で水素添加装置に移した。3回脱気した後、エナミンアミドに200psi水素ガスで50℃にて13時間、水素添加した。HPLCにより、アッセイ回収率が93%であり、光学純度が94%eeであることが分かった。
【0055】
次の方法において光学純度をさらに上げた。水素添加反応からのメタノール溶液(180mL MeOH中18g)を濃縮し、メチルt−ブチルエーテル(MTBE)(45mL)に交換した。この溶液に、H3PO4水溶液(0.5M、95mL)を添加した。その層を分離した後、3N NaOH(35mL)を水層に添加し、次にそれをMTBE(180mL+100mL)で抽出した。MTBE溶液を濃縮し、溶媒を熱トルエン(180mL、約75℃)に交換した。次に、この熱トルエン溶液を0℃にゆっくりと冷却(5時間から10時間)した。この結晶を濾過により単離した(13g、回収率72%、98%−99%ee);m.p.114.1−115.7℃。
【0056】
1H NMR(300MHz,CD3CN):δ7.26(m),7.08(m),4.90(s),4.89(s),4.14(m),3.95(m),3.40(m),2.68(m),2.49(m),1.40(bs)。
【0057】
化合物2−5は、アミド結合回転異性体として存在する。指示がない限り、主要な(major)回転異性体及び少ない方(minor)の回転異性体は、炭素−13シグナルが良く分解されないので、一緒にまとめる:
13C NMR(CD3CN):δ171.8,157.4(ddd,JCF=242.4,9.2,2.5Hz),152.2(major),151.8(minor),149.3(ddd;JCF=246.7,14.2,12.9Hz),147.4(ddd,JCF=241.2,12.3,3.7Hz),144.2(q,JCF=38.8Hz),124.6(ddd,JCF=18.5,5.9,4.0Hz),120.4(dd,JCF=19.1,6.2Hz),119.8(q,JCF=268.9Hz),106.2(dd,JCF=29.5,20.9Hz),50.1,44.8,44.3(minor),43.2(minor),42.4,41.6(minor),41.4,39.6,38.5(minor),36.9。
【0058】
結晶性遊離塩基2−5はまた、次のように単離することができる:
(a)水素添加段階が完了した反応混合物に、Ecosorb C−941 25wt%を加える。この混合物を窒素下で1時間撹拌し、次に濾過する。ケーキをメタノール 2L/kgで洗浄する。遊離塩基の回収は、約95%であり、光学純度は約95%eeである。
(b)メタノール中の遊離塩基溶液を3.5−4.0L/kg体積に濃縮し(遊離塩基投入量に基づく。)、次に、最終体積3.0L/kg イソプロパノール(IPA)になるように、イソプロパノール(IPA)で溶媒交換を行う。
(c)スラリーを40℃に加熱し、40℃にて1時間熟成させ、次に、25℃に2時間にわたり冷却する。
(d)ヘプタン(7L/kg)を7時間にわたって加え、22℃から25℃にて12時間、スラリーを撹拌する。濾過前の上清濃度は、10mg/gから12mg/gである。
(e)スラリーを濾過し、固形物を30% IPA/ヘプタン(2L/kg)で洗浄する。
(f)その固形物を真空中で40℃にて乾燥させる。
(g)遊離塩基の光学純度は、約99%eeである。
【0059】
生成物に対するパーセント転換率を決定するために、次の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)条件を使用した:
カラム:Waters Symmetry C18、250mmx4.6mm
溶出液:溶媒A:0.1体積% HClO4/H2O、
溶媒B:アセトニトリル
勾配:0分 75% A:25% B
10分 25% A:75% B
12.5分 25% A:75% B
15分 75% A:25% B
流速:1mL/分
注入体積:10μL
UV検出:210nm
カラム温度:40℃
保持時間:化合物2−4:9.1分、
化合物2−5:5.4分、
tBu Josiphos:8.7分
【0060】
光学純度を決定するために、次の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)条件を使用した:
カラム:Chirapak,AD−H,250mmx4.6mm
溶出液:溶媒A:ヘプタン中0.2体積% ジエチルアミン
溶媒B:エタノール中0.1体積%ジエチルアミン
定組成操作時間:18分
流速:0.7mL/分、
注入体積:7μL
UV検出:268nm
カラム温度:35℃
保持時間:(R)−アミン 2−5:13.8分
(S)−アミン 2−5:11.2分
【0061】
(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミン リン酸二水素無水形態I及びIII混合物の調製
オーバーヘッドスターラー、加熱マントル及びサーモカップルを取り付けた250mL丸底フラスコに、エタノール60mL、水 19mL、(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミン遊離塩基 15.0g(36.9mmol)及び85% リン酸水溶液 4.25g(36.9mmol)を入れた。その混合物を75℃から78℃に加熱した。低温で粘度の高い白色の沈殿物が形成されたが、75℃に到達した時点で溶解した。その溶液を68℃に冷却し、次に、その温度で4時間から8時間保持した。エタノール溶媒和物の固体のスラリーベッドがこの熟成時間中に形成された。次に、スラリーを4℃/時間の割合で21℃に冷却し、次に一晩保持した。次に、エタノール 70mLをエタノール溶媒和物のスラリーに添加した。1時間後、エタノール溶媒和物のスラリーを濾過し、45mL エタノールで洗浄した。その固形物を真空中で40℃にて18時間乾燥させた。形態I及び形態IIIの混合物である固形物 17.1gを回収した。その固形物は、HPLC面積パーセンテージにより、99.8%(面積%)純度を越えることが分かった(HPLC条件は、上記で示したものと同じ)。その固形物の結晶形が、粉末X線回折及び固体NMR分光法により、形態Iが主体の、無水形態I及びIIIの混合物であることが示された。
【実施例2】
【0062】
イソアミルアルコール溶液中の(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミン遊離塩基2−5(〜200mg/g)を晶析装置に添加した。次に、結晶種を添加し、続いて、96%イソアミルアルコール及び4%水混合液を構成するようにイソアミルアルコール及び水を添加した。この混合物を最初に熟成させ、次に約50℃以下に加熱した。次に、96%イソアミルアルコール及び4%水中のリン酸約1等量(最終的なバッチ濃度は85mg/gとなる。)をスラリー添加し、無水形態Iを結晶化させた。そのスラリーを熟成させ、次に室温に冷却した。その固体を濾過し、イソアミルアルコールで洗浄した。その湿った固形物を75℃から80℃で乾燥させた。粉末X線回折及び固体NMR分光法により、その固形物の結晶形が、形態Iが多い、無水形態I及びIIIの混合物であることが分かった。
【0063】
粉末X線回折試験は、分子構造、結晶化度及び多形の特性を明らかにするために広く使用されている。本発明の結晶性多形体の粉末X線回折パターンは、PW3040/60コンソール付きのPhilips Analytical X’Pert PRO X線回折システムで得た。PW3373/00セラミックCu LEF X線チューブ K−Alpha放射線をソースとして使用した。
【0064】
図1は、結晶性無水形態Iに対するX線回折パターンを示す。無水形態Iは、18.42、9.35及び6.26オングストロームのd−間隔に対応する特有の反射を示した。無水形態Iはさらに、5.78、4.71及び3.67オングストロームのd−間隔に対応する反射を特徴とした。無水形態Iはまたさらに、3.99、2.71及び2.66オングストロームのd−間隔に対応する反射を特徴とした。
【0065】
図11は、結晶性無水形態IIIに対するX線回折パターンを示す。この無水形態IIIは、17.88、6.06及び4.26オングストロームのd−間隔に対応する特有の反射を示した。この無水形態IIIはさらに、9.06、5.71及び4.55オングストロームのd−間隔に対応する反射を特徴とした。この無水形態IIIは、13.69、6.50及び3.04オングストロームのd−間隔に相当する反射をさらに特徴とした。
【0066】
図6は、結晶性脱溶媒和無水形態IIに対するX線回折パターンを示す。この脱溶媒和無水形態IIは、7.09、5.27及び4.30オングストロームのd−間隔に相当する特有の反射を示した。この脱溶媒和無水形態IIは、18.56、9.43及び4.19オングストロームのd−間隔に相当する反射をさらに特徴とした。この脱溶媒和無水形態IIは、またさらに、6.32、5.82及び3.69オングストロームのd−間隔に相当する反射を特徴とした。
【0067】
図16は、結晶性エタノール溶媒和物に対するX線回折パターンを示す。この結晶性エタノール溶媒和物は、7.09、5.27及び4.30オングストロームのd−間隔に対応する特有の反射を有する脱溶媒和無水形態IIと同様のXRPDパターンを示した。この結晶性エタノール溶媒和物は、18.56、9.43及び4.19オングストロームのd−間隔に相当する反射をさらに特徴とした。この結晶性エタノール溶媒和物は、6.32、5.82及び3.69オングストロームのd−間隔に相当する反射をさらに特徴とした。
【0068】
上述の粉末X線回折パターンに加えて、本発明の化合物Iの結晶性多形相はさらに、それらの固体炭素−13及びフッ素−19核磁気共鳴(NMR)スペクトルを特徴とした。その固体炭素−13NMRスペクトルは、Bruker 4mm 二重共鳴 CPMASプローブを用いて、Bruker DSX 400WB NMRシステムで得た。その固体炭素−13NMRスペクトルは、変動振幅交差分極とともにプロトン/炭素−13交差分極マジックアングルスピニングを利用した。試料を15.0kHzで回転させ、5秒の循環遅延で、全部で1024スキャンを収集した。FTを行う前に、スペクトルに対して40Hzの線幅拡大を適用した。TMSスケールにおいて、二次基準としてグリシンのカルボニル炭素(176.03p.p.m.)を使用して、化学シフトを記録した。
【0069】
Bruker 4mm CRAMPSプローブを用いて、Burker DSX 400WB NMRシステムで固体フッ素−19NMRスペクトルを得た。そのNMRスペクトルは、単純パルス捕捉パルスプログラム(simple pulse−acquire pulse program)を利用した。試料を15.0kHzで回転させ、5秒の循環遅延で、全部で128スキャンを収集した。フッ素バックグラウンドを最小にするためにべスペルエンドキャップ(vespel endocap)を利用した。FTを行う前に、スペクトルに対して100Hzの線幅拡大を適用した。−122ppmの化学シフトを割り当てられた外部二次基準としてポリ(テトラフルオロエチレン)(テフロン)を用いて、化学シフトを記録した。
【0070】
TA Instruments DSC 2910又は同等の機器を用いてDSCデータを得た。試料2mgから6mgをオープンパンに量り取った。次にこのパンを圧着封入し、熱量計セルの試料位置に置いた。空のパンを基準位置に置いた。熱量計セルを閉じ、窒素気流をそのセルに通した。約250℃の温度まで、10℃/分の加熱速度で試料を加熱するように、加熱プログラムをセットした。加熱プログラムをスタートさせた。実験終了時に、システムソフトウェアに含まれるDSC解析プログラムを用いてデータを解析した。融解吸熱を、吸熱が観察された温度範囲の上と下であるベースラインの温度点の間で積分した。報告データは、開始温度、ピーク温度及びエンタルピーである。
【0071】
図2は、化合物Iの結晶性無水形態Iに対する固体炭素−13 CPMAS NMRスペクトルを示す。
【0072】
図3は、化合物Iの結晶性無水形態Iに対する固体フッ素−19 MAS NMRスペクトルを示す。形態Iは、−65.3、−105.1及び−120.4p.p.m.の化学シフト値の特有のシグナルを示した。形態Iのさらなる特徴は、−80.6、−93.5及び−133.3p.p.m.の化学シフト値のシグナルである。
【0073】
図4は、結晶性無水形態Iに対する示差熱量測定走査を示す。形態Iは、215℃の開始温度、217℃のピーク温度及び221J/gのエンタルピーの融解吸熱を示した。
【0074】
図7は、化合物Iの結晶性脱溶媒和無水形態IIに対する固体炭素−13 CPMAS NMRスペクトルを示す。
【0075】
図8は、化合物Iの結晶性脱溶媒和無水形態IIに対する固体フッ素−19 MAS NMRスペクトルを示す。形態IIは、−65.1、−104.9及び−120.1p.p.m.の化学シフト値の特有のシグナルを示した。形態IIのさらなる特徴は、−80.3、−94.5、−134.4及び−143.3p.p.m.の化学シフト値のシグナルである。
【0076】
図9は、結晶性脱溶媒和無水形態IIに対する示差熱量測定走査を示す。形態IIは、114℃の開始温度、125℃のピーク温度及び2.3J/gのエンタルピーの、結晶性無水形態Iへの固体−固体遷移発熱を示した。
【0077】
図12は、化合物Iの結晶性無水形態IIIに対する固体炭素−13 CPMAS NMRスペクトルを示す。
【0078】
図13は、化合物Iの結晶性無水形態IIIに対する固体フッ素−19 MAS NMRスペクトルを示す。形態IIIは、−63.0、−103.1及び−120.2p.p.m.の化学シフト値の特有のシグナルを示した。形態IIIのさらなる特徴は、−95.3、−98.7、−135.2及び−144.0p.p.m.の化学シフト値のシグナルである。
【0079】
図14は、結晶性無水形態IIIに対する示差熱量測定走査を示す。形態IIIは、80℃の開始温度、84℃のピーク温度及び1.3J/gのエンタルピーの、結晶性無水形態Iへの固体−固体遷移発熱を示した。
【0080】
図17は、化合物Iの結晶性エタノール溶媒和物に対する固体炭素−13 CPMAS NMRスペクトルを示す。
【0081】
図18は、化合物Iの結晶性エタノール溶媒和物に対する固体フッ素−19 MAS NMRスペクトルを示す。このエタノール溶媒和物は、−64.7、−104.5及び−121.9p.p.m.の化学シフト値の特有のシグナルを示した。エタノール溶媒和物のさらなる特徴は、−94.3、−117.7、−131.2及び−142.6p.p.m.の化学シフト値のシグナルである。
【0082】
本発明の結晶性化合物Iの無水形態Iもしくは形態III又はそれらの混合物は、上述の粉末X線回折、フッ素−19 MAS NMR、炭素−13 CPMAS NMR及びDSC物理特性において、形態Iもしくは形態III又はそれらの混合物の少なくとも約5%の相純度を有する。ある実施形態において、この相純度は、上記の固体物理特性において、形態Iもしくは形態III又はそれらの混合物の少なくとも約10%である。第二の実施形態において、この相純度は、上記の固体物理特性において、形態Iもしくは形態III又はそれらの混合物の少なくとも約25%である。第三の実施形態において、この相純度は、上記の固体物理特性において、形態Iもしくは形態III又はそれらの混合物の少なくとも約50%である。第四の実施形態において、この相純度は、上記の固体物理特性において、形態Iもしくは形態III又はそれらの混合物の少なくとも約75%である。第五の実施形態において、この相純度は、上記の固体物理特性において、形態Iもしくは形態III又はそれらの混合物の少なくとも約90%である。第六の実施形態において、この結晶性化合物Iは、上記の固体物理特性において、実質的に純相である形態Iもしくは形態III又はそれらの混合物である。「相純度」という用語は、本明細書において述べられている固体物理的方法により決定される、化合物Iの別の特定の結晶性又は非晶形に関する、化合物I無水形態Iもしくは形態III又はそれらの混合物の固体純度を意味する。
【0083】
医薬組成物の例:
1)直接打錠プロセス:
直接打錠プロセスにより、化合物I無水形態Iもしくは形態III又はそれらの混合物(API)を錠剤に配合した。100mg効力の錠剤は、API 124mg、微結晶セルロース 130mg、マンニトール 130mg(又はリン酸二カルシウム 130mg)、クロスカメロースナトリウム 8mg、ステアリン酸マグネシウム 8mg及びOpadry white(Colorcon(West Point,PA)製造の専売コーティング物質) 16mgからなる。このAPI、微結晶セルロース、マンニトール(又はリン酸二カルシウム)及びクロスカメロースナトリウムを最初に混合し、次にその混合物をステアリン酸マグネシウムで滑沢化し、錠剤に押圧した。次に、この錠剤をOpadry Whiteでフィルムコーティングした。
【0084】
2)ローラー圧縮プロセス:
化合物I無水形態Iもしくは形態III又はそれらの混合物をローラー圧縮プロセスにより錠剤に配合した。100mg効力の錠剤は、API 124mg、微結晶セルロース 195mg、マンニトール 65mg、クロスカメロースナトリウム 8mg、ステアリン酸マグネシウム 8mg及びOpadry white(Colorcon(West Point,PA)製造の専売コーティング物質) 16mgからなる。このAPI、微結晶セルロース、マンニトール及びクロスカメロースナトリウムを最初に混合し、次にその混合物を総量の3分の1のステアリン酸マグネシウムで滑沢化し、リボン状にローラー圧縮した。次に、これらのリボンを粉砕し、得られた顆粒を残りのステアリン酸マグネシウムで滑沢化し、錠剤に押圧した。次に、この錠剤をOpadry Whiteでフィルムコーティングした。
【0085】
3)pH4.5±0.2の10mM 酢酸ナトリウム/0.8%食塩水溶液中の化合物Iの無水形態Iもしくは形態III又はそれらの混合物として、静脈内用(i.v.)水性系を定義する。4.0mg/mLの濃度の処方に対し、NaCl 800mgを水 80mLに溶解し、次に、氷酢酸 57.5μLを添加し、続いて、無水形態Iもしくは形態III又はそれらの混合物 496mgを添加する。0.1N NaOH溶液でそのpHを4.5±0.2に調整する。水で最終体積を100mLに調整する。4.0mg/mL溶液 50.0mLをプラセボで100.0mLに希釈することにより、2.0mg/mL溶液を調製することができる。4.0mg/mL溶液 25.0mLをプラセボで100.0mLに希釈することにより、1.0mg/mL溶液を調製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】図1は、化合物Iの結晶性無水形態Iの特有のX線回折パターンである。
【図2】図2は、化合物Iの結晶性無水形態Iの炭素−13交差分極マジックアングルスピニング(CPMAS)核磁気共鳴(NMR)スペクトルである。
【図3】図3は、化合物Iの結晶性無水形態Iのフッ素−19マジックアングルスピニング(MAS)核磁気共鳴(NMR)スペクトルである。
【図4】図4は、化合物Iの結晶性無水形態Iの典型的なDSC曲線である。
【図5】図5は、化合物Iの結晶性無水形態Iの典型的な熱重量(TG)曲線である。
【図6】図6は、化合物Iの結晶性脱溶媒和無水形態IIの特有のX線回折パターンである。
【図7】図7は、化合物Iの結晶性脱溶媒和無水形態IIの炭素−13交差分極マジックアングルスピニング(CPMAS)核磁気共鳴(NMR)スペクトルである。
【図8】図8は、化合物Iの結晶性脱溶媒和無水形態Iのフッ素−19マジックアングルスピニング(MAS)核磁気共鳴(NMR)スペクトルである。
【図9】図9は、化合物Iの結晶性脱溶媒和無水形態IIの典型的なDSC曲線である。
【図10】図10は、化合物Iの結晶性脱溶媒和無水形態IIの典型的なTG曲線である。
【図11】図11は、化合物Iの結晶性無水形態IIIの特有のX線回折パターンである。
【図12】図12は、化合物Iの結晶性無水形態IIIの炭素−13交差分極マジックアングルスピニング(CPMAS)核磁気共鳴(NMR)スペクトルである。
【図13】図13は、化合物Iの結晶性無水形態IIIのフッ素−19マジックアングルスピニング(MAS)核磁気共鳴(NMR)スペクトルである。
【図14】図14は、化合物Iの結晶性無水形態IIIの典型的なDSC曲線である。
【図15】図15は、化合物Iの結晶性無水形態IIIの典型的なTG曲線である。
【図16】図16は、化合物Iの結晶性エタノール溶媒和物の特有のX線回折パターンである。
【図17】図17は、化合物Iの結晶性エタノール溶媒和物の炭素−13交差分極マジックアングルスピニング(CPMAS)核磁気共鳴(NMR)スペクトルである。
【図18】図18は、化合物Iの結晶性エタノール溶媒和物のフッ素−19マジックアングルスピニング(MAS)核磁気共鳴(NMR)スペクトルである。
【図19】図19は、化合物Iの結晶性エタノール溶媒和物の典型的なDSC曲線である。
【図20】図20は、化合物Iの結晶性エタノール溶媒和物の典型的なTG曲線である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤のリン酸二水素塩の新規結晶性形態に関する。より具体的には、本発明は、強力なジペプチジルペプチダーゼ−IV(DPP−IV)の阻害剤である、(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンのリン酸二水素塩の新規結晶性溶媒和物及び無水物に関する。DPP−IV阻害剤のこれらの新規結晶性形態は、ジペプチジルペプチダーゼ−IVの阻害剤が適応となる疾病及び症状、特に2型糖尿病、高血糖、インスリン抵抗性、肥満及び高血圧の治療及び予防に有用である阻害剤を含有する医薬組成物の調製に有用である。本発明はさらに、本発明の新規結晶性リン酸二水素塩無水物多形相を含有する医薬組成物;該リン酸二水素塩溶媒和物及び無水物及びそれらの医薬組成物を調製するためのプロセス;及び、本発明の組成物を投与することを含む、DPP−IV阻害剤が適応となる症状の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グルコース依存性インスリン分泌促進ペプチド(GIP)及びグルカゴン様ペプチド1(GLP−1)の両方を不活性化する酵素である、ジペプチジルペプチダーゼ−IV(DPP−IV)の阻害は、インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)としても知られている2型糖尿病の治療及び予防に対する新規アプローチである。2型糖尿病の治療に対するDPP−IV阻害剤の治療可能性は、C.F.Deacon及びJ.J.Holst,“Dipeptidyl peptidase IV inhibition as an approach to the treatment and prevention of Type 2 diabetes:a historical perspective,”Biochem.Biophys.Res.Commun.,294:1−4(2000);K.Augustynsら、"Dipeptidyl peptidase IV inhibitors as new therapeutic agents for the treatment of Type 2 diabetes,”Exp.Opin.Ther.Patents,13:499−510(2003);及びD.J.Drucker,“Therapeutic potential of dipeptidyl peptidase IV inhibitors for the treatment of Type 2 diabetes,”Exp.Opin.Investig.Drugs,12:87−100(2003)で概説されている。
【0003】
WO03/004498(2003年1月16日公開)及び米国特許第6,699,871号(2004年3月2日発行)(両方ともMerck & Co.に譲渡)は、DPP−IVの強力な阻害剤であり、それゆえに2型糖尿病の治療に有用である、β−アミノテトラヒドロトリアゾロ[4,3−a]ピラジンのクラスについて述べている。WO03/004498で具体的に開示されているものは、(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンである。
【0004】
しかし、下記構造式I(本明細書中で以下、化合物Iと呼ぶ。)の(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンのリン酸二水素塩の新規に発見された結晶性溶媒和物及び無水物は、上記参考文献で開示されていない。
【発明の開示】
【0005】
(本発明の要約)
本発明は、構造式I(化合物I)の、ジペプチジルペプチダーゼ−IV(DPP−IV)阻害剤(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンのリン酸二水素塩の新規結晶性溶媒和物及び無水物に関する。本発明の結晶性溶媒和物及び無水物は、(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンのリン酸二水素塩の医薬組成物の調製において、加工、操作及び投薬の容易さなど、長所を有する。特に、それらは、溶解性、ストレスに対する安定性及び分解速度など、物理化学的特性が向上しており、様々な医薬剤形の製造に特に適するようになっている。本発明はまた、新規無水多形体を含有する医薬組成物;これらの溶媒和物及び無水物及びそれらの医薬組成物を調製するためのプロセス;及び2型糖尿病、高血糖、インスリン抵抗性、肥満及び高血圧の予防又は治療に対してそれらを使用するための方法に関する。
【0006】
(本発明の詳細な説明)
本発明は、構造式I(化合物I):
【0007】
【化8】
の(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンのリン酸二水素塩の新規結晶性溶媒和物及び無水物を提供する。
【0008】
ある実施形態において、本溶媒和物は、化合物IのC1−4アルカノラートである。この実施形態のクラスにおいて、C1−4アルカノラートは、メタノラート、エタノラート、1−プロパノラート又は2−プロパノラートである。別の実施形態において、本溶媒和物は、アセトン又はアセトニトリルなどの有機溶媒を含む。本結晶性溶媒和物は、結晶性無水形態Iもしくは形態III又はそれらの混合物に自然に転換する結晶性脱溶媒和無水形態IIの調製に有用であり、その混合物の組成は、処置又は保存する状態に依存する。無水形態I及びIIIは、化合物Iの安定な脱溶媒和無水物を表す。
【0009】
本発明はまた、本発明の化合物Iの結晶性溶媒和物から得られる化合物Iの新規結晶性脱溶媒和無水形態IIも提供する。
【0010】
本発明はまた、化合物Iの新規結晶性無水形態I及びIII及びそれらの混合物も提供する。
【0011】
本発明のさらなる実施形態は、結晶性無水形態IもしくはIII又はそれらの混合物を検出可能な量で含有する化合物I薬剤材料を提供する。「薬剤材料」とは、活性医薬成分(API)を意味する。この薬剤材料における、結晶性無水形態IもしくはIII又はそれらの混合物の量は、粉末X線回折(XRPD)、固体フッ素−19マジックアングルスピニング(MAS)核磁気共鳴分光法、固体炭素−13交差分極マジックアングルスピニング(CPMAS)核磁気共鳴分光法、固体フーリエ変換赤外分光法及びラマン分光法などの物理学的方法を使用することにより定量することができる。この実施形態のクラスにおいて、重量で約5%から約100%の結晶性無水形態IもしくはIII又はそれらの混合物が、本薬剤材料中に存在する。この実施形態の第二のクラスにおいて、重量で約10%から約100%の結晶性無水形態IもしくはIII又はそれらの混合物が、本薬剤材料中に存在する。この実施形態の第三のクラスにおいて、重量で約25%から約100%の結晶性無水形態IもしくはIII又はそれらの混合物が、本薬剤材料中に存在する。この実施形態の第四のクラスにおいて、重量で約50%から約100%の結晶性無水形態IもしくはIII又はそれらの混合物が、本薬剤材料中に存在する。この実施形態の第五のクラスにおいて、重量で約75%から約100%の結晶性無水形態IもしくはIII又はそれらの混合物が、本薬剤材料中に存在する。この実施形態の第六のクラスにおいて、化合物I薬剤材料の実質的に全てが、結晶性無水形態IもしくはIII又はそれらの混合物である、つまり、本化合物I薬剤材料は、実質的に純相である無水形態IもしくはIII又はそれらの混合物である。
【0012】
本発明の結晶性溶媒和物は、結晶性無水形態I及びIII及びそれらの混合物の調製に有用である。本結晶性溶媒和物は、脱溶媒和され、45℃にて約2時間加熱すると無水形態Iもしくは形態III又はそれらの混合物に転換する、中間体脱溶媒和無水形態IIになる。
【0013】
本発明の別の局面は、DPP−IVの阻害剤が適応となる臨床症状を予防又は治療するための方法を提供し、その方法には、そのような予防又は治療を必要とする患者に、化合物Iの結晶性無水形態IもしくはIII又はそれらの混合物の予防的又は治療的有効量を投与することが含まれる。そのような臨床症状には、糖尿病、特に2型糖尿病、高血糖、インスリン抵抗性、肥満及び高血圧が含まれる。
【0014】
本発明はまた、DPP−IVの阻害剤が適応となる臨床症状、特に2型糖尿病、高血糖、インスリン抵抗性、肥満及び高血圧の臨床症状の予防又は治療のための薬物の製造における、本発明の結晶性無水形態IもしくはIII又はそれらの混合物の使用を提供する。ある実施形態において、前記臨床症状は、2型糖尿病である。
【0015】
本発明の別の局面は、DPP−IVの阻害剤が適応となる臨床症状、特に、2型糖尿病、高血糖、インスリン抵抗性、肥満及び高血圧の治療において使用するための結晶性無水形態Iもしくは形態III又はそれらの混合物を提供する。この局面のある実施形態において、前記臨床症状は、2型糖尿病である。
【0016】
本発明はまた、1又は複数の医薬的に許容される担体又は賦形剤と組み合わせて結晶性無水形態IもしくはIII又はそれらの混合物を含有する医薬組成物も提供する。ある実施形態において、本医薬組成物は、医薬的に許容される賦形剤と混合した活性医薬成分(API)の予防的又は治療的有効量を含有し、該APIは、本発明の結晶性無水形態IもしくはIII又はそれらの混合物の検出可能な量を含有する。第二の実施形態において、本医薬組成物は、医薬的に許容される賦形剤と混合したAPIの予防的又は治療的有効量を含有し、該APIは、重量で約5%から約100%の本発明の結晶性無水形態IもしくはIII又はそれらの混合物を含有する。この第二の実施形態のクラスにおいて、かかる組成物中の本APIは、重量で約10%から約100%の結晶性無水形態IもしくはIII又はそれらの混合物を含有する。この実施形態の第二のクラスにおいて、かかる組成物中の本APIは、重量で約25%から約100%の結晶性無水形態IもしくはIII又はそれらの混合物を含有する。この実施形態の第三のクラスにおいて、かかる組成物中の本APIは、重量で約50%から約100%の結晶性無水形態IもしくはIII又はそれらの混合物を含有する。この実施形態の第四のクラスにおいて、かかる組成物中の本APIは、重量で約75%から約100%の結晶性無水形態IもしくはIII又はそれらの混合物を含有する。この実施形態の第五のクラスにおいて、本APIの実質的に全てが、化合物Iの結晶性無水形態IもしくはIII又はそれらの混合物であり、つまり、本APIは、実質的に純相である化合物I無水形態IもしくはIII又はそれらの混合物である。
【0017】
本発明による組成物は、錠剤、丸薬、カプセル、粉末、顆粒、滅菌溶液もしくは懸濁液、定量エアロゾルもしくは液体スプレー、ドロップ、アンプル、自己注射装置又は坐薬など、適切に単位投薬形態をとる。本組成物は、経口、非経口、鼻腔内、舌下もしくは直腸投与用であるか、又は吸入もしくは吹送による投与用である。本発明による組成物の配合は、都合よく、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、17版、1995に記載されているような、本分野で公知の方法により達成される。
【0018】
投与計画は、患者のタイプ、種、年齢、体重、性別及び病状;治療する症状の重症度;投与経路;及び患者の腎機能及び肝機能を含む、様々な要因に従い選択される。通常の技能を有する医師、獣医師又は臨床家は、症状の進行の予防、抑制及び停止に必要な薬物の有効量を容易に決定し処方することができる。
【0019】
本発明の経口投薬量は、望ましい効果のために使用する場合、約0.01mg/kg体重/日(mg/kg/日)から約100mg/kg/日、好ましくは、0.01から10mg/kg/日、最も好ましくは、0.1から5.0mg/kg/日の範囲である。経口投与のために、本組成物は、治療対象患者に対する投与量を症状に応じて調節するために、好ましくは、本APIを0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100及び500ミリグラム含有する錠剤の形態で与えられる。薬物は、通常、本APIを約0.01mgから約500mg、好ましくは、本APIを約1mgから約200mg含有する。静脈内投与の場合は、最も好ましい投与量は、一定速度の注入の間、約0.1から約10mg/kg/分の範囲となる。有利に、本発明の結晶性無水形態は、1日1回の投与で投与し得るか、又は、1日総投与量を、1日2、3又は4回の分割投与で投与し得る。さらに、本発明の結晶性無水形態は、適切な経鼻投与ビヒクルの局所使用を介して経鼻投与の形態で、又は、当業者にとって周知の経皮的皮膚パッチの形態を用いた経皮経路を介して、投与することができる。経皮的送達系の形態で投与するために、勿論、その投与は、投薬計画を通して、断続的であるよりむしろ連続的となろう。
【0020】
本発明の方法において、本明細書中で詳述する化合物I無水形態I及びIII又はそれらの混合物は、APIを形成することができ、通常、経口錠剤、カプセル、エリキシル剤、シロップ剤など、意図する投与形態に関して適切に選択され、従来の薬務に適合する適切な医薬の希釈剤、賦形剤又は担体(本明細書中でまとめて「担体」物質と呼ぶ。)と混合して投与される。
【0021】
例えば、錠剤又はカプセルの形態での経口投与のために、活性のある医薬成分を、経口用で非毒性の医薬的に許容される不活性担体、例えば、ラクトース、デンプン、スクロース、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、マンニトール、ソルビトールなどと組み合わせることができ;液体形態での経口投与のために、経口APIを、あらゆる経口用で非毒性の医薬的に許容される不活性担体、例えば、エタノール、グリセロール、水などと組み合わせることができる。さらに、所望する場合又は必要な場合、適切な結合剤、滑沢剤、崩壊剤及び着色剤もまた、本混合物に組み込むことができる。適切な結合剤には、デンプン、ゼラチン、天然の糖、例えばグルコース又はβ−ラクトース、コーンシロップ、天然及び合成ゴム、例えばアラビアゴム、トラガカントゴム又はアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックスなどが含まれる。これらの剤形において使用される滑沢剤には、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが含まれる。崩壊剤には、これらに限定されないが、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどが含まれる。
【0022】
化合物Iの結晶性無水形態I及びIII又はそれらの混合物は、水に対して高い溶解性を有することが分かっており、それによりこれらは、製剤の調製、とりわけ、APIの比較的濃縮された水溶液が必要とされる、鼻腔内及び静脈内投与用製剤の調製に対して特に適切なものとなる。結晶性化合物I無水形態Iもしくは形態III又はそれらの混合物の水中の溶解度は、120mg/mLを超える。
【0023】
さらなる局面において、本発明は、DPP−IV阻害剤が適応となる臨床症状の治療及び/又は予防のための方法を提供し、該方法には、そのような予防又は治療を必要とする患者に、本発明の無水形態IもしくはIII又はそれらの混合物の予防的又は治療的有効量、又は無水形態IもしくはIII又はそれらの混合物の予防的又は治療的有効量を含有する医薬組成物を投与することが含まれる。
【0024】
次の非限定例は、本発明を説明することを意図するものであり、本発明の範囲又は精神を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0025】
本明細書中に記載されている化合物は、ケト−エノール互変異性体などの互変異性体として存在し得る。個々の互変異性体ならびにそれらの混合物は、構造式Iの化合物により包含される。
【0026】
「%鏡像体過剰率」(「ee」と略称)という用語は、主要鏡像異性体の%から少ない方の鏡像異性体の%を差し引いたものを意味するものとする。したがって、70%鏡像体過剰率は、一方の鏡像異性体形成率が85%であり、他方の鏡像異性体形成率が15%であることに相当する。「鏡像体過剰率」という用語は、「光学純度」という用語と同義である。
【0027】
化合物Iの溶媒和物及び脱溶媒和無水形態IIの調製及び、無水形態I及びIIIの調製及び無水形態IとIIIとの間の相互転換のための一般的方法:
化合物Iは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、アセトン及びアセトニトリルなどのいくつかの有機溶媒とともに、非化学量論的な同形溶媒和物を形成する。この様々な本発明の溶媒和物は、同形であり、同様の粉末X線回折パターン、F−19固体NMRスペクトル及びDSC曲線を示す。
【0028】
溶媒和物は、おおよそ室温にて、約5分間、無水形態I、IIもしくはIII又はそれらの混合物を溶媒和剤と接触させることにより調製される。溶媒和物はまた、溶媒和剤の存在下における遊離塩基からのリン酸二水素塩の調製のプロセスにより生じるが、ここで、その水活性は、該溶媒和物の溶解度が他のどの無水物又は一水和物よりも低いような状態である。例えば、エタノール溶媒和物は、遊離塩基をエタノール中にてリン酸水溶液で処理することにより形成することができる。
【0029】
エタノール溶媒和物は、(a)約25℃にて約5時間、試料を窒素気流で乾燥させる、又は(b)約25℃にて約5時間、真空中で乾燥させることにより、脱溶媒和無水形態IIに転換することができる。
【0030】
脱溶媒和無水形態IIは、準安定性であり、約45℃にて約2時間で、無水形態Iもしくは形態III又はそれらの混合物に転換される。
【0031】
無水形態Iは、(a)物理学的な撹拌を用いた乾燥、(b)圧縮又は(c)粉砕により、無水形態IIIに転換することができる。無水形態IIIは、約110℃にて約30分間加熱することにより無水形態Iに転換することができる。
【0032】
無水形態I及びIIIの様々な組成の混合物は、室温での形態I又はそれらの混合物の粉砕又は圧縮において形成されるが、その結果、その混合物中の形態IIIの割合が多くなる。
【0033】
無水多形形態I及び形態IIIは、互変性の関係を有し、低温領域では、ある形態がより安定であり、約34℃の遷移温度を含む高温では、他方がより安定となる。無水形態IIIは、低温安定型であり、約34℃より低温で安定である。無水形態Iは、高温安定型であり、約34℃より高温で安定である。
【0034】
無水形態I及びIIIは、水和物が安定ではない水活性で、イソアミルアルコールなど、化合物Iが溶媒和しない溶媒から直接結晶化することができる。形態IIIは、約34℃以下で優先的に結晶化することができ、形態Iは、約34℃より高温で優先的に結晶化することができる。
【0035】
無水形態Iが優先的に結晶化される一般条件:
40℃、イソアミルアルコール(IAA)/水系において:
(1)水濃度が3.4重量%以下であるようなIAA及び水において、化合物Iの混合物から結晶化し;
(2)得られた固相を回収し;
(3)そこから溶媒を除去する。
【0036】
60℃、IAA/水系において:
(1)水濃度が4.5重量%以下であるようなIAA及び水中の化合物Iの混合物から結晶化し;
(2)得られた固相を回収し;
(3)そこから溶媒を除去する。
【0037】
無水形態IIIが優先的に結晶化される一般条件:
25℃、イソアミルアルコール(IAA)/水系において:
(1)水濃度が2.7重量%以下であるようなIAA及び水中の化合物Iの混合物から結晶化し;
(2)得られた固相を回収し;
(3)そこから溶媒を除去する。
【実施例1】
【0038】
【化9】
【0039】
(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミン リン酸二水素無水形態I及び形態III混合物
3−(トリフルオロメチル)−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン 塩酸塩(1−4)の調製
【0040】
【化10】
【0041】
段階A:ビスヒドラジド(1−1)の調製
ヒドラジン(20.1g、水中35wt%、0.22mol)をアセトニトリル310mLと混合した。トリフルオロ酢酸エチル 31.5g(0.22mol)を60分間にわたり添加した。内部温度を14℃から25℃に上昇させた。得られた溶液を22℃から25℃にて60分間熟成させた。その溶液を7℃に冷却した。50wt%NaOH水溶液 17.9g(0.22mol)及び塩化クロロアセチル 25.3g(0.22mol)を16℃以下の温度にて130分間にわたり、同時に添加した。反応が完了したら、27℃から30℃にて、26から27Hg vacuum(約3600Pa)で、その混合物を減圧蒸留して、水及びエタノールを除去した。蒸留中に、アセトニトリル 720mLをゆっくりと添加し、一定の体積に維持した(約500mL)。スラリーを濾過して塩化ナトリウムを除去した。アセトニトリル 約100mLでケーキをすすいだ。溶媒を除去して、ビス−ヒドラジド1−1(43.2g、96.5%回収率、HPLCアッセイにより94.4面積%純度)。
【0042】
1H−NMR(400MHz、DMSO−d6):δ4.2(s,2H),10.7(s,1H)及び11.6(s,1H)ppm。
【0043】
13C−NMR(100MHz、DMSO−d6):δ41.0、116.1(q,J=362Hz),155.8(q,J=50Hz)及び165.4ppm。
【0044】
段階B:5−(トリフルオロメチル)−2−(クロロメチル)−1,3,4−オキサジアゾール(1−2)の調製
ACN(82mL)中の段階Aからのビスヒドラジド1−1(43.2g、0.21mol)を5℃に冷却した。温度を10℃以下に維持しながらオキシ塩化リン(32.2g、0.21mol)を添加した。その混合物を80℃に加熱し、HPLCにより1−1が2面積%未満であることが示されるまで、この温度で24時間熟成させた。別個の容器で、IPAc 260mL及び水 250mLを混合し、0℃に冷却した。内部温度を10℃以下に維持しながら、この反応スラリーの反応を停止させた。添加後、その混合物を30分間激しく撹拌し、温度を室温に上げ、水層を除去した。次に、有機層を水 215mL、5wt%重炭酸ナトリウム水溶液 215mLで洗浄し、最後に、20wt% 食塩水溶液 215mLで洗浄した。HPLCアッセイにより、処理後、86%から92%が回収された。75−80mmHg、55℃での蒸留により揮発性物質を除去し、油状物質を得て、さらに精製せずに段階Cで直接使用することができた。他の場合には、その生成物を蒸留により精製して、70%から80%回収率で1−2を得ることができる。
【0045】
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ4.8(s,2H)ppm。
【0046】
13C−NMR(400MHz,CDCl3):δ32.1,115.8(q,J=337Hz),156.2(q,J=50Hz)及び164.4ppm。
【0047】
段階C:N−[(2Z)−ピペラジン−2−イリデン]トリフルオロアセトヒドラジド(1−3)の調製
−20℃に冷却したメタノール(150mL)中のエチレンジアミン(33.1g、0.55mol)の溶液に、段階Bからの蒸留したオキサジアゾール1−2(29.8g、0.16mol)を添加し、その間、内部温度を−20℃に維持した。添加終了後、得られたスラリーを−20℃にて1時間熟成させた。次に、エタノール(225mL)を入れ、スラリーを−5℃にゆっくりと温めた。−5℃にて60分間経過後、−5℃にてそのスラリーを濾過し、エタノール(60mL)で洗浄した。72%回収率で、白色の固体としてアミジン1−3を得た(24.4g、HPLCにより99.5面積wt%純度)。
【0048】
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6):δ2.9(t,2H),3.2(t,2H),3.6(s,2H)及び8.3(b,1H)ppm。13C−NMR(100MHz,DMSO−d6):δ40.8,42.0,43.3,119.3(q,J=350Hz),154.2及び156.2(q,J=38Hz)ppm。
【0049】
段階D:3−(トリフルオロメチル)−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン塩酸塩(1−4)の調製
メタノール 110mL中のアミジン1−3(27.3g、0.13mol)の懸濁液を、55℃に温めた。37% 塩酸(11.2mL、0.14mol)をこの温度にて15分間にわたり添加した。添加の間、固形物が全て溶解され、その結果透明な溶液となった。この反応物を30分間熟成させた。この溶液を20℃に至るまで冷却し、種床が形成されるまで(10分から1時間)この温度で熟成させた。MTBE 300mLを20℃にて1時間にわたり入れた。得られたスラリーを2℃に冷却し、30分間熟成させ、濾過した。固形物をエタノール:MTBE(1:3) 50mLで洗浄し、45℃にて真空下で乾燥させた。トリアゾール1−4を26.7g(HPLCにより99.5面積wt%純度)を回収した。
【0050】
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6):δ3.6(t,2H),4.4(t,2H),4.6(s,2H)及び10.6(b,2H)ppm;13C−NMR(100MHz,DMSO−d6):δ:39.4,39.6,41.0,118.6(q,J=325Hz),142.9(q,J=50Hz)及び148.8ppm。
【0051】
【化11】
【0052】
段階A:4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−オン(2−3)の調製
2,4,5−トリフルオロフェニル酢酸(2−1)(150g、0.789mol)、Meldrum酸(125g、0.868mol)及び4−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)(7.7g、0063mol)を5L 三つ首フラスコに入れた。N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)(525mL)を室温にて1回で添加し、固形物を溶解した。室温にてN,N−ジイソプロピルエチルアミン(282mL、1.62mol)を1回で添加し、その間、温度を40℃以下に維持した。塩化ピバロイル(107mL、0.868mol)を1時間から2時間にわたり滴下添加し、その間、温度を0℃から5℃の間に維持した。その反応混合物を5℃にて1時間熟成させた。40℃から50℃にてトリアゾール塩酸塩1−4(180g、0.789mol)を一度に添加した。その反応溶液を70℃にて数時間熟成させた。次に、20℃から45℃にて、5% 炭酸水素ナトリウム水溶液(625mL)を滴下添加した。1回分を播種し、20℃から30℃にて1時間熟成させた。次に、2時間から3時間にわたり、5% 炭酸水素ナトリウム水溶液 525mLをさらに滴下添加した。室温にて数時間熟成させた後、スラリーを0℃から5℃に冷却し、1時間熟成させ、その後、固形物を濾過した。湿ったケーキを、20%DMAc水(300mL)、続いて、20% DMAc水(400mL)のさらに2回分及び最後に水(400mL)で置換−洗浄した。そのケーキを室温にて吸引乾燥した。最終産物2−3の単離回収率は、89%であった。
【0053】
段階B:(2Z)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブト−2−エン−2−アミン(2−4)の調製
5Lの丸底フラスコに、メタノール(100mL)、ケトアミド2−3(200g)及び酢酸アンモニウム(110.4g)を入れた。次に、添加中、温度を30℃以下に維持しながら、メタノール(180mL)及び28%水酸化アンモニウム水溶液(58.6mL)を添加した。さらなるメタノール(100mL)をその反応混合物に添加した。その混合物を還流温度で加熱し、2時間熟成させた。反応物を室温に冷却し、次に、氷浴中で約5℃に冷却した。30分後、固形物を濾過し、乾燥させ、固体として2−4を得た(180g);m.p.271.2℃。
【0054】
段階C:(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミン(2−5)の調製
500mLのフラスコに、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)二量体{[Rh(cod)Cl]2}(292mg、1.18mmol)及び(R,S)t−ブチル Josiphos(708mg、1.3mmol)を窒素雰囲気下で入れた。次に、脱気したMeOHを添加し(200mL)、その混合物を室温にて1時間撹拌した。4L 水素添加装置に、エナミンアミド2−4(118g、0.29mol)をMeOH(1L)とともに入れた。スラリーを脱気した。次に、触媒溶液を窒素下で水素添加装置に移した。3回脱気した後、エナミンアミドに200psi水素ガスで50℃にて13時間、水素添加した。HPLCにより、アッセイ回収率が93%であり、光学純度が94%eeであることが分かった。
【0055】
次の方法において光学純度をさらに上げた。水素添加反応からのメタノール溶液(180mL MeOH中18g)を濃縮し、メチルt−ブチルエーテル(MTBE)(45mL)に交換した。この溶液に、H3PO4水溶液(0.5M、95mL)を添加した。その層を分離した後、3N NaOH(35mL)を水層に添加し、次にそれをMTBE(180mL+100mL)で抽出した。MTBE溶液を濃縮し、溶媒を熱トルエン(180mL、約75℃)に交換した。次に、この熱トルエン溶液を0℃にゆっくりと冷却(5時間から10時間)した。この結晶を濾過により単離した(13g、回収率72%、98%−99%ee);m.p.114.1−115.7℃。
【0056】
1H NMR(300MHz,CD3CN):δ7.26(m),7.08(m),4.90(s),4.89(s),4.14(m),3.95(m),3.40(m),2.68(m),2.49(m),1.40(bs)。
【0057】
化合物2−5は、アミド結合回転異性体として存在する。指示がない限り、主要な(major)回転異性体及び少ない方(minor)の回転異性体は、炭素−13シグナルが良く分解されないので、一緒にまとめる:
13C NMR(CD3CN):δ171.8,157.4(ddd,JCF=242.4,9.2,2.5Hz),152.2(major),151.8(minor),149.3(ddd;JCF=246.7,14.2,12.9Hz),147.4(ddd,JCF=241.2,12.3,3.7Hz),144.2(q,JCF=38.8Hz),124.6(ddd,JCF=18.5,5.9,4.0Hz),120.4(dd,JCF=19.1,6.2Hz),119.8(q,JCF=268.9Hz),106.2(dd,JCF=29.5,20.9Hz),50.1,44.8,44.3(minor),43.2(minor),42.4,41.6(minor),41.4,39.6,38.5(minor),36.9。
【0058】
結晶性遊離塩基2−5はまた、次のように単離することができる:
(a)水素添加段階が完了した反応混合物に、Ecosorb C−941 25wt%を加える。この混合物を窒素下で1時間撹拌し、次に濾過する。ケーキをメタノール 2L/kgで洗浄する。遊離塩基の回収は、約95%であり、光学純度は約95%eeである。
(b)メタノール中の遊離塩基溶液を3.5−4.0L/kg体積に濃縮し(遊離塩基投入量に基づく。)、次に、最終体積3.0L/kg イソプロパノール(IPA)になるように、イソプロパノール(IPA)で溶媒交換を行う。
(c)スラリーを40℃に加熱し、40℃にて1時間熟成させ、次に、25℃に2時間にわたり冷却する。
(d)ヘプタン(7L/kg)を7時間にわたって加え、22℃から25℃にて12時間、スラリーを撹拌する。濾過前の上清濃度は、10mg/gから12mg/gである。
(e)スラリーを濾過し、固形物を30% IPA/ヘプタン(2L/kg)で洗浄する。
(f)その固形物を真空中で40℃にて乾燥させる。
(g)遊離塩基の光学純度は、約99%eeである。
【0059】
生成物に対するパーセント転換率を決定するために、次の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)条件を使用した:
カラム:Waters Symmetry C18、250mmx4.6mm
溶出液:溶媒A:0.1体積% HClO4/H2O、
溶媒B:アセトニトリル
勾配:0分 75% A:25% B
10分 25% A:75% B
12.5分 25% A:75% B
15分 75% A:25% B
流速:1mL/分
注入体積:10μL
UV検出:210nm
カラム温度:40℃
保持時間:化合物2−4:9.1分、
化合物2−5:5.4分、
tBu Josiphos:8.7分
【0060】
光学純度を決定するために、次の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)条件を使用した:
カラム:Chirapak,AD−H,250mmx4.6mm
溶出液:溶媒A:ヘプタン中0.2体積% ジエチルアミン
溶媒B:エタノール中0.1体積%ジエチルアミン
定組成操作時間:18分
流速:0.7mL/分、
注入体積:7μL
UV検出:268nm
カラム温度:35℃
保持時間:(R)−アミン 2−5:13.8分
(S)−アミン 2−5:11.2分
【0061】
(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミン リン酸二水素無水形態I及びIII混合物の調製
オーバーヘッドスターラー、加熱マントル及びサーモカップルを取り付けた250mL丸底フラスコに、エタノール60mL、水 19mL、(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミン遊離塩基 15.0g(36.9mmol)及び85% リン酸水溶液 4.25g(36.9mmol)を入れた。その混合物を75℃から78℃に加熱した。低温で粘度の高い白色の沈殿物が形成されたが、75℃に到達した時点で溶解した。その溶液を68℃に冷却し、次に、その温度で4時間から8時間保持した。エタノール溶媒和物の固体のスラリーベッドがこの熟成時間中に形成された。次に、スラリーを4℃/時間の割合で21℃に冷却し、次に一晩保持した。次に、エタノール 70mLをエタノール溶媒和物のスラリーに添加した。1時間後、エタノール溶媒和物のスラリーを濾過し、45mL エタノールで洗浄した。その固形物を真空中で40℃にて18時間乾燥させた。形態I及び形態IIIの混合物である固形物 17.1gを回収した。その固形物は、HPLC面積パーセンテージにより、99.8%(面積%)純度を越えることが分かった(HPLC条件は、上記で示したものと同じ)。その固形物の結晶形が、粉末X線回折及び固体NMR分光法により、形態Iが主体の、無水形態I及びIIIの混合物であることが示された。
【実施例2】
【0062】
イソアミルアルコール溶液中の(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミン遊離塩基2−5(〜200mg/g)を晶析装置に添加した。次に、結晶種を添加し、続いて、96%イソアミルアルコール及び4%水混合液を構成するようにイソアミルアルコール及び水を添加した。この混合物を最初に熟成させ、次に約50℃以下に加熱した。次に、96%イソアミルアルコール及び4%水中のリン酸約1等量(最終的なバッチ濃度は85mg/gとなる。)をスラリー添加し、無水形態Iを結晶化させた。そのスラリーを熟成させ、次に室温に冷却した。その固体を濾過し、イソアミルアルコールで洗浄した。その湿った固形物を75℃から80℃で乾燥させた。粉末X線回折及び固体NMR分光法により、その固形物の結晶形が、形態Iが多い、無水形態I及びIIIの混合物であることが分かった。
【0063】
粉末X線回折試験は、分子構造、結晶化度及び多形の特性を明らかにするために広く使用されている。本発明の結晶性多形体の粉末X線回折パターンは、PW3040/60コンソール付きのPhilips Analytical X’Pert PRO X線回折システムで得た。PW3373/00セラミックCu LEF X線チューブ K−Alpha放射線をソースとして使用した。
【0064】
図1は、結晶性無水形態Iに対するX線回折パターンを示す。無水形態Iは、18.42、9.35及び6.26オングストロームのd−間隔に対応する特有の反射を示した。無水形態Iはさらに、5.78、4.71及び3.67オングストロームのd−間隔に対応する反射を特徴とした。無水形態Iはまたさらに、3.99、2.71及び2.66オングストロームのd−間隔に対応する反射を特徴とした。
【0065】
図11は、結晶性無水形態IIIに対するX線回折パターンを示す。この無水形態IIIは、17.88、6.06及び4.26オングストロームのd−間隔に対応する特有の反射を示した。この無水形態IIIはさらに、9.06、5.71及び4.55オングストロームのd−間隔に対応する反射を特徴とした。この無水形態IIIは、13.69、6.50及び3.04オングストロームのd−間隔に相当する反射をさらに特徴とした。
【0066】
図6は、結晶性脱溶媒和無水形態IIに対するX線回折パターンを示す。この脱溶媒和無水形態IIは、7.09、5.27及び4.30オングストロームのd−間隔に相当する特有の反射を示した。この脱溶媒和無水形態IIは、18.56、9.43及び4.19オングストロームのd−間隔に相当する反射をさらに特徴とした。この脱溶媒和無水形態IIは、またさらに、6.32、5.82及び3.69オングストロームのd−間隔に相当する反射を特徴とした。
【0067】
図16は、結晶性エタノール溶媒和物に対するX線回折パターンを示す。この結晶性エタノール溶媒和物は、7.09、5.27及び4.30オングストロームのd−間隔に対応する特有の反射を有する脱溶媒和無水形態IIと同様のXRPDパターンを示した。この結晶性エタノール溶媒和物は、18.56、9.43及び4.19オングストロームのd−間隔に相当する反射をさらに特徴とした。この結晶性エタノール溶媒和物は、6.32、5.82及び3.69オングストロームのd−間隔に相当する反射をさらに特徴とした。
【0068】
上述の粉末X線回折パターンに加えて、本発明の化合物Iの結晶性多形相はさらに、それらの固体炭素−13及びフッ素−19核磁気共鳴(NMR)スペクトルを特徴とした。その固体炭素−13NMRスペクトルは、Bruker 4mm 二重共鳴 CPMASプローブを用いて、Bruker DSX 400WB NMRシステムで得た。その固体炭素−13NMRスペクトルは、変動振幅交差分極とともにプロトン/炭素−13交差分極マジックアングルスピニングを利用した。試料を15.0kHzで回転させ、5秒の循環遅延で、全部で1024スキャンを収集した。FTを行う前に、スペクトルに対して40Hzの線幅拡大を適用した。TMSスケールにおいて、二次基準としてグリシンのカルボニル炭素(176.03p.p.m.)を使用して、化学シフトを記録した。
【0069】
Bruker 4mm CRAMPSプローブを用いて、Burker DSX 400WB NMRシステムで固体フッ素−19NMRスペクトルを得た。そのNMRスペクトルは、単純パルス捕捉パルスプログラム(simple pulse−acquire pulse program)を利用した。試料を15.0kHzで回転させ、5秒の循環遅延で、全部で128スキャンを収集した。フッ素バックグラウンドを最小にするためにべスペルエンドキャップ(vespel endocap)を利用した。FTを行う前に、スペクトルに対して100Hzの線幅拡大を適用した。−122ppmの化学シフトを割り当てられた外部二次基準としてポリ(テトラフルオロエチレン)(テフロン)を用いて、化学シフトを記録した。
【0070】
TA Instruments DSC 2910又は同等の機器を用いてDSCデータを得た。試料2mgから6mgをオープンパンに量り取った。次にこのパンを圧着封入し、熱量計セルの試料位置に置いた。空のパンを基準位置に置いた。熱量計セルを閉じ、窒素気流をそのセルに通した。約250℃の温度まで、10℃/分の加熱速度で試料を加熱するように、加熱プログラムをセットした。加熱プログラムをスタートさせた。実験終了時に、システムソフトウェアに含まれるDSC解析プログラムを用いてデータを解析した。融解吸熱を、吸熱が観察された温度範囲の上と下であるベースラインの温度点の間で積分した。報告データは、開始温度、ピーク温度及びエンタルピーである。
【0071】
図2は、化合物Iの結晶性無水形態Iに対する固体炭素−13 CPMAS NMRスペクトルを示す。
【0072】
図3は、化合物Iの結晶性無水形態Iに対する固体フッ素−19 MAS NMRスペクトルを示す。形態Iは、−65.3、−105.1及び−120.4p.p.m.の化学シフト値の特有のシグナルを示した。形態Iのさらなる特徴は、−80.6、−93.5及び−133.3p.p.m.の化学シフト値のシグナルである。
【0073】
図4は、結晶性無水形態Iに対する示差熱量測定走査を示す。形態Iは、215℃の開始温度、217℃のピーク温度及び221J/gのエンタルピーの融解吸熱を示した。
【0074】
図7は、化合物Iの結晶性脱溶媒和無水形態IIに対する固体炭素−13 CPMAS NMRスペクトルを示す。
【0075】
図8は、化合物Iの結晶性脱溶媒和無水形態IIに対する固体フッ素−19 MAS NMRスペクトルを示す。形態IIは、−65.1、−104.9及び−120.1p.p.m.の化学シフト値の特有のシグナルを示した。形態IIのさらなる特徴は、−80.3、−94.5、−134.4及び−143.3p.p.m.の化学シフト値のシグナルである。
【0076】
図9は、結晶性脱溶媒和無水形態IIに対する示差熱量測定走査を示す。形態IIは、114℃の開始温度、125℃のピーク温度及び2.3J/gのエンタルピーの、結晶性無水形態Iへの固体−固体遷移発熱を示した。
【0077】
図12は、化合物Iの結晶性無水形態IIIに対する固体炭素−13 CPMAS NMRスペクトルを示す。
【0078】
図13は、化合物Iの結晶性無水形態IIIに対する固体フッ素−19 MAS NMRスペクトルを示す。形態IIIは、−63.0、−103.1及び−120.2p.p.m.の化学シフト値の特有のシグナルを示した。形態IIIのさらなる特徴は、−95.3、−98.7、−135.2及び−144.0p.p.m.の化学シフト値のシグナルである。
【0079】
図14は、結晶性無水形態IIIに対する示差熱量測定走査を示す。形態IIIは、80℃の開始温度、84℃のピーク温度及び1.3J/gのエンタルピーの、結晶性無水形態Iへの固体−固体遷移発熱を示した。
【0080】
図17は、化合物Iの結晶性エタノール溶媒和物に対する固体炭素−13 CPMAS NMRスペクトルを示す。
【0081】
図18は、化合物Iの結晶性エタノール溶媒和物に対する固体フッ素−19 MAS NMRスペクトルを示す。このエタノール溶媒和物は、−64.7、−104.5及び−121.9p.p.m.の化学シフト値の特有のシグナルを示した。エタノール溶媒和物のさらなる特徴は、−94.3、−117.7、−131.2及び−142.6p.p.m.の化学シフト値のシグナルである。
【0082】
本発明の結晶性化合物Iの無水形態Iもしくは形態III又はそれらの混合物は、上述の粉末X線回折、フッ素−19 MAS NMR、炭素−13 CPMAS NMR及びDSC物理特性において、形態Iもしくは形態III又はそれらの混合物の少なくとも約5%の相純度を有する。ある実施形態において、この相純度は、上記の固体物理特性において、形態Iもしくは形態III又はそれらの混合物の少なくとも約10%である。第二の実施形態において、この相純度は、上記の固体物理特性において、形態Iもしくは形態III又はそれらの混合物の少なくとも約25%である。第三の実施形態において、この相純度は、上記の固体物理特性において、形態Iもしくは形態III又はそれらの混合物の少なくとも約50%である。第四の実施形態において、この相純度は、上記の固体物理特性において、形態Iもしくは形態III又はそれらの混合物の少なくとも約75%である。第五の実施形態において、この相純度は、上記の固体物理特性において、形態Iもしくは形態III又はそれらの混合物の少なくとも約90%である。第六の実施形態において、この結晶性化合物Iは、上記の固体物理特性において、実質的に純相である形態Iもしくは形態III又はそれらの混合物である。「相純度」という用語は、本明細書において述べられている固体物理的方法により決定される、化合物Iの別の特定の結晶性又は非晶形に関する、化合物I無水形態Iもしくは形態III又はそれらの混合物の固体純度を意味する。
【0083】
医薬組成物の例:
1)直接打錠プロセス:
直接打錠プロセスにより、化合物I無水形態Iもしくは形態III又はそれらの混合物(API)を錠剤に配合した。100mg効力の錠剤は、API 124mg、微結晶セルロース 130mg、マンニトール 130mg(又はリン酸二カルシウム 130mg)、クロスカメロースナトリウム 8mg、ステアリン酸マグネシウム 8mg及びOpadry white(Colorcon(West Point,PA)製造の専売コーティング物質) 16mgからなる。このAPI、微結晶セルロース、マンニトール(又はリン酸二カルシウム)及びクロスカメロースナトリウムを最初に混合し、次にその混合物をステアリン酸マグネシウムで滑沢化し、錠剤に押圧した。次に、この錠剤をOpadry Whiteでフィルムコーティングした。
【0084】
2)ローラー圧縮プロセス:
化合物I無水形態Iもしくは形態III又はそれらの混合物をローラー圧縮プロセスにより錠剤に配合した。100mg効力の錠剤は、API 124mg、微結晶セルロース 195mg、マンニトール 65mg、クロスカメロースナトリウム 8mg、ステアリン酸マグネシウム 8mg及びOpadry white(Colorcon(West Point,PA)製造の専売コーティング物質) 16mgからなる。このAPI、微結晶セルロース、マンニトール及びクロスカメロースナトリウムを最初に混合し、次にその混合物を総量の3分の1のステアリン酸マグネシウムで滑沢化し、リボン状にローラー圧縮した。次に、これらのリボンを粉砕し、得られた顆粒を残りのステアリン酸マグネシウムで滑沢化し、錠剤に押圧した。次に、この錠剤をOpadry Whiteでフィルムコーティングした。
【0085】
3)pH4.5±0.2の10mM 酢酸ナトリウム/0.8%食塩水溶液中の化合物Iの無水形態Iもしくは形態III又はそれらの混合物として、静脈内用(i.v.)水性系を定義する。4.0mg/mLの濃度の処方に対し、NaCl 800mgを水 80mLに溶解し、次に、氷酢酸 57.5μLを添加し、続いて、無水形態Iもしくは形態III又はそれらの混合物 496mgを添加する。0.1N NaOH溶液でそのpHを4.5±0.2に調整する。水で最終体積を100mLに調整する。4.0mg/mL溶液 50.0mLをプラセボで100.0mLに希釈することにより、2.0mg/mL溶液を調製することができる。4.0mg/mL溶液 25.0mLをプラセボで100.0mLに希釈することにより、1.0mg/mL溶液を調製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】図1は、化合物Iの結晶性無水形態Iの特有のX線回折パターンである。
【図2】図2は、化合物Iの結晶性無水形態Iの炭素−13交差分極マジックアングルスピニング(CPMAS)核磁気共鳴(NMR)スペクトルである。
【図3】図3は、化合物Iの結晶性無水形態Iのフッ素−19マジックアングルスピニング(MAS)核磁気共鳴(NMR)スペクトルである。
【図4】図4は、化合物Iの結晶性無水形態Iの典型的なDSC曲線である。
【図5】図5は、化合物Iの結晶性無水形態Iの典型的な熱重量(TG)曲線である。
【図6】図6は、化合物Iの結晶性脱溶媒和無水形態IIの特有のX線回折パターンである。
【図7】図7は、化合物Iの結晶性脱溶媒和無水形態IIの炭素−13交差分極マジックアングルスピニング(CPMAS)核磁気共鳴(NMR)スペクトルである。
【図8】図8は、化合物Iの結晶性脱溶媒和無水形態Iのフッ素−19マジックアングルスピニング(MAS)核磁気共鳴(NMR)スペクトルである。
【図9】図9は、化合物Iの結晶性脱溶媒和無水形態IIの典型的なDSC曲線である。
【図10】図10は、化合物Iの結晶性脱溶媒和無水形態IIの典型的なTG曲線である。
【図11】図11は、化合物Iの結晶性無水形態IIIの特有のX線回折パターンである。
【図12】図12は、化合物Iの結晶性無水形態IIIの炭素−13交差分極マジックアングルスピニング(CPMAS)核磁気共鳴(NMR)スペクトルである。
【図13】図13は、化合物Iの結晶性無水形態IIIのフッ素−19マジックアングルスピニング(MAS)核磁気共鳴(NMR)スペクトルである。
【図14】図14は、化合物Iの結晶性無水形態IIIの典型的なDSC曲線である。
【図15】図15は、化合物Iの結晶性無水形態IIIの典型的なTG曲線である。
【図16】図16は、化合物Iの結晶性エタノール溶媒和物の特有のX線回折パターンである。
【図17】図17は、化合物Iの結晶性エタノール溶媒和物の炭素−13交差分極マジックアングルスピニング(CPMAS)核磁気共鳴(NMR)スペクトルである。
【図18】図18は、化合物Iの結晶性エタノール溶媒和物のフッ素−19マジックアングルスピニング(MAS)核磁気共鳴(NMR)スペクトルである。
【図19】図19は、化合物Iの結晶性エタノール溶媒和物の典型的なDSC曲線である。
【図20】図20は、化合物Iの結晶性エタノール溶媒和物の典型的なTG曲線である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性無水形態Iであることを特徴とする、構造式I:
【化1】
の(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンのリン酸二水素塩。
【請求項2】
18.42、9.35及び6.26オングストロームのスペクトルd−間隔における、粉末X線回折パターンから得られる特有の反射を特徴とする、請求項1に記載の結晶性無水形態I。
【請求項3】
5.78、4.71及び3.67オングストロームのスペクトルd−間隔における、粉末X線回折パターンから得られる特有の反射をさらに特徴とする、請求項2に記載の結晶性無水形態I。
【請求項4】
3.99、2.71及び2.66オングストロームのスペクトルd−間隔における、粉末X線回折パターンから得られる特有の反射をさらに特徴とする、請求項3に記載の結晶性無水形態I。
【請求項5】
図1の粉末X線回折パターンをさらに特徴とする、請求項4に記載の結晶性無水形態I。
【請求項6】
−65.3、−105.1及び−120.4p.p.m.においてシグナルを示す固体フッ素−19 MAS核磁気共鳴スペクトルを特徴とする、請求項1に記載の結晶性無水形態I。
【請求項7】
−80.6、−93.5及び−133.3p.p.m.においてシグナルを示す固体フッ素−19 MAS核磁気共鳴スペクトルをさらに特徴とする、請求項6に記載の結晶性無水形態I。
【請求項8】
図3の固体フッ素−19 MAS核磁気共鳴スペクトルをさらに特徴とする、請求項7に記載の結晶性無水形態I。
【請求項9】
図2の固体炭素−13 CPMAS核磁気共鳴スペクトルを特徴とする、請求項1に記載の結晶性無水形態I。
【請求項10】
図5の熱重量分析曲線を特徴とする、請求項1に記載の結晶性無水形態I。
【請求項11】
図4の示差走査熱量(DSC)曲線を特徴とする、請求項1に記載の結晶性無水形態I。
【請求項12】
結晶性無水形態IIIであることを特徴とする、構造式I:
【化2】
の(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンのリン酸二水素塩。
【請求項13】
17.88、6.06及び4.26オングストロームのスペクトルd−間隔における、粉末X線回折パターンから得られる特有の反射を特徴とする、請求項12に記載の結晶性無水形態III。
【請求項14】
9.06、5.71及び4.55オングストロームのスペクトルd−間隔における、粉末X線回折パターンから得られる特有の反射をさらに特徴とする、請求項13に記載の結晶性無水形態III。
【請求項15】
13.69、6.50及び3.04オングストロームのスペクトルd−間隔における、粉末X線回折パターンから得られる特有の反射をさらに特徴とする、請求項14に記載の結晶性無水形態III。
【請求項16】
図11の粉末X線回折パターンをさらに特徴とする、請求項15に記載の結晶性無水形態III。
【請求項17】
−63.0、−103.1及び−120.2p.p.m.においてシグナルを示す固体フッ素−19 MAS核磁気共鳴スペクトルを特徴とする、請求項12に記載の結晶性無水形態III。
【請求項18】
−95.3、−98.7、−135.2及び−144.0p.p.m.においてシグナルを示す固体フッ素−19MAS核磁気共鳴スペクトルをさらに特徴とする、請求項17に記載の結晶性無水形態III。
【請求項19】
図13の固体フッ素−19 MAS核磁気共鳴スペクトルをさらに特徴とする、請求項18に記載の結晶性無水形態III。
【請求項20】
図12の、固体炭素−13 CPMAS核磁気共鳴スペクトルを特徴とする、請求項12に記載の結晶性無水形態III。
【請求項21】
図15の熱重量分析曲線を特徴とする、請求項12に記載の結晶性無水形態III。
【請求項22】
図14の示差走査熱量(DSC)曲線を特徴とする、請求項12に記載の結晶性無水形態III。
【請求項23】
結晶性脱溶媒和無水形態IIであることを特徴とする、構造式I:
【化3】
の(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンのリン酸二水素塩。
【請求項24】
7.09、5.27及び4.30オングストロームのスペクトルd−間隔における、粉末X線回折パターンから得られる特有の反射を特徴とする、請求項23に記載の結晶性脱溶媒和無水形態II。
【請求項25】
18.56、9.43及び4.19オングストロームのスペクトルd−間隔における、粉末X線回折パターンから得られる特有の反射をさらに特徴とする、請求項24に記載の結晶性脱溶媒和無水形態II。
【請求項26】
6.32、5.82及び3.69オングストロームのスペクトルd−間隔における、粉末X線回折パターンから得られる特有の反射をさらに特徴とする、請求項25に記載の結晶性脱溶媒和無水形態II。
【請求項27】
図6の粉末X線回折パターンをさらに特徴とする、請求項26に記載の結晶性脱溶媒和無水形態II。
【請求項28】
−65.1、−104.9及び−120.1p.p.m.においてシグナルを示す固体フッ素−19 MAS核磁気共鳴スペクトルを特徴とする、請求項23に記載の結晶性脱溶媒和無水形態II。
【請求項29】
−80.3、−94.5、−134.4及び−143.3p.p.m.においてシグナルを示す固体フッ素−19 MAS核磁気共鳴スペクトルをさらに特徴とする、請求項28に記載の結晶性脱溶媒和無水形態II。
【請求項30】
図8の固体フッ素−19 MAS核磁気共鳴スペクトルをさらに特徴とする、請求項29に記載の結晶性脱溶媒和無水形態II。
【請求項31】
図7の固体炭素−13 CPMAS核磁気共鳴スペクトルを特徴とする、請求項23に記載の結晶性脱溶媒和無水形態II。
【請求項32】
図10の熱重量分析曲線を特徴とする、請求項23に記載の結晶性脱溶媒和無水形態II。
【請求項33】
図9の示差走査熱量(DSC)曲線を特徴とする、請求項23に記載の結晶性脱溶媒和無水形態II。
【請求項34】
アセトン溶媒和物、アセトニトリル溶媒和物、メタノラート、エタノラート、1−プロパノラート及び2−プロパノラートからなる群から溶媒和物が選択される、結晶性溶媒和物であることを特徴とする、構造式I:
【化4】
の(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンのリン酸二水素塩。
【請求項35】
前記溶媒和物がエタノラートである、請求項34に記載の結晶性溶媒和物。
【請求項36】
7.09、5.27及び4.30オングストロームのスペクトルd−間隔における、粉末X線回折パターンから得られる特有の反射を特徴とする、請求項35に記載の結晶性エタノラート。
【請求項37】
18.56、9.43及び4.19オングストロームのスペクトルd−間隔における、粉末X線回折パターンから得られる特有の反射をさらに特徴とする、請求項36に記載の結晶性エタノラート。
【請求項38】
6.32、5.82及び3.69オングストロームのスペクトルd−間隔における、粉末X線回折パターンから得られる特有の反射をさらに特徴とする、請求項37に記載の結晶性エタノラート。
【請求項39】
図16の粉末X線回折パターンをさらに特徴とする、請求項38に記載の結晶性エタノラート。
【請求項40】
−64.7、−104.5及び−121.9p.p.m.においてシグナルを示す固体フッ素−19 MAS核磁気共鳴スペクトルを特徴とする、請求項35に記載の結晶性エタノラート。
【請求項41】
−94.3、−117.7、−131.2及び−142.6p.p.m.においてシグナルを示す固体フッ素−19MAS核磁気共鳴スペクトルをさらに特徴とする、請求項40に記載の結晶性エタノラート。
【請求項42】
図18の固体フッ素−19MAS核磁気共鳴スペクトルをさらに特徴とする、請求項41に記載の結晶性エタノラート。
【請求項43】
図17の固体炭素−13CPMAS核磁気共鳴スペクトルを特徴とする、請求項35に記載の結晶性エタノラート。
【請求項44】
図20の熱重量分析曲線を特徴とする、請求項35に記載の結晶性エタノラート。
【請求項45】
図19の示差走査熱量(DSC)曲線を特徴とする、請求項35に記載の結晶性エタノラート。
【請求項46】
結晶性無水形態Iと結晶性無水形態IIIとの混合物を含む、構造式I:
【化5】
の(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンのリン酸二水素塩である、薬剤材料。
【請求項47】
結晶性無水形態Iもしくは結晶性無水形態III又はそれらの混合物の検出可能量を含む、構造式I:
【化6】
の(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンのリン酸二水素塩。
【請求項48】
実質的に全重量が、結晶性無水形態Iもしくは結晶性無水形態III又はそれらの混合物を含む、構造式I:
【化7】
の(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンのリン酸二水素塩。
【請求項49】
1又は複数の医薬的に許容される担体又は賦形剤と組み合わせて、請求項1もしくは請求項12に記載の塩又はそれらの混合物の予防的又は治療的有効量を含む、医薬組成物。
【請求項50】
2型糖尿病の治療を必要とする患者に請求項1もしくは請求項12に記載の塩又はそれらの混合物の治療的有効量を投与することを含む、2型糖尿病の治療方法。
【請求項51】
2型糖尿病の治療における使用のための、請求項1もしくは請求項12に記載の塩又はそれらの混合物。
【請求項52】
2型糖尿病の治療における使用のための薬物の製造における、活性成分としての請求項1もしくは請求項12に記載の塩又はそれらの混合物の使用。
【請求項1】
結晶性無水形態Iであることを特徴とする、構造式I:
【化1】
の(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンのリン酸二水素塩。
【請求項2】
18.42、9.35及び6.26オングストロームのスペクトルd−間隔における、粉末X線回折パターンから得られる特有の反射を特徴とする、請求項1に記載の結晶性無水形態I。
【請求項3】
5.78、4.71及び3.67オングストロームのスペクトルd−間隔における、粉末X線回折パターンから得られる特有の反射をさらに特徴とする、請求項2に記載の結晶性無水形態I。
【請求項4】
3.99、2.71及び2.66オングストロームのスペクトルd−間隔における、粉末X線回折パターンから得られる特有の反射をさらに特徴とする、請求項3に記載の結晶性無水形態I。
【請求項5】
図1の粉末X線回折パターンをさらに特徴とする、請求項4に記載の結晶性無水形態I。
【請求項6】
−65.3、−105.1及び−120.4p.p.m.においてシグナルを示す固体フッ素−19 MAS核磁気共鳴スペクトルを特徴とする、請求項1に記載の結晶性無水形態I。
【請求項7】
−80.6、−93.5及び−133.3p.p.m.においてシグナルを示す固体フッ素−19 MAS核磁気共鳴スペクトルをさらに特徴とする、請求項6に記載の結晶性無水形態I。
【請求項8】
図3の固体フッ素−19 MAS核磁気共鳴スペクトルをさらに特徴とする、請求項7に記載の結晶性無水形態I。
【請求項9】
図2の固体炭素−13 CPMAS核磁気共鳴スペクトルを特徴とする、請求項1に記載の結晶性無水形態I。
【請求項10】
図5の熱重量分析曲線を特徴とする、請求項1に記載の結晶性無水形態I。
【請求項11】
図4の示差走査熱量(DSC)曲線を特徴とする、請求項1に記載の結晶性無水形態I。
【請求項12】
結晶性無水形態IIIであることを特徴とする、構造式I:
【化2】
の(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンのリン酸二水素塩。
【請求項13】
17.88、6.06及び4.26オングストロームのスペクトルd−間隔における、粉末X線回折パターンから得られる特有の反射を特徴とする、請求項12に記載の結晶性無水形態III。
【請求項14】
9.06、5.71及び4.55オングストロームのスペクトルd−間隔における、粉末X線回折パターンから得られる特有の反射をさらに特徴とする、請求項13に記載の結晶性無水形態III。
【請求項15】
13.69、6.50及び3.04オングストロームのスペクトルd−間隔における、粉末X線回折パターンから得られる特有の反射をさらに特徴とする、請求項14に記載の結晶性無水形態III。
【請求項16】
図11の粉末X線回折パターンをさらに特徴とする、請求項15に記載の結晶性無水形態III。
【請求項17】
−63.0、−103.1及び−120.2p.p.m.においてシグナルを示す固体フッ素−19 MAS核磁気共鳴スペクトルを特徴とする、請求項12に記載の結晶性無水形態III。
【請求項18】
−95.3、−98.7、−135.2及び−144.0p.p.m.においてシグナルを示す固体フッ素−19MAS核磁気共鳴スペクトルをさらに特徴とする、請求項17に記載の結晶性無水形態III。
【請求項19】
図13の固体フッ素−19 MAS核磁気共鳴スペクトルをさらに特徴とする、請求項18に記載の結晶性無水形態III。
【請求項20】
図12の、固体炭素−13 CPMAS核磁気共鳴スペクトルを特徴とする、請求項12に記載の結晶性無水形態III。
【請求項21】
図15の熱重量分析曲線を特徴とする、請求項12に記載の結晶性無水形態III。
【請求項22】
図14の示差走査熱量(DSC)曲線を特徴とする、請求項12に記載の結晶性無水形態III。
【請求項23】
結晶性脱溶媒和無水形態IIであることを特徴とする、構造式I:
【化3】
の(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンのリン酸二水素塩。
【請求項24】
7.09、5.27及び4.30オングストロームのスペクトルd−間隔における、粉末X線回折パターンから得られる特有の反射を特徴とする、請求項23に記載の結晶性脱溶媒和無水形態II。
【請求項25】
18.56、9.43及び4.19オングストロームのスペクトルd−間隔における、粉末X線回折パターンから得られる特有の反射をさらに特徴とする、請求項24に記載の結晶性脱溶媒和無水形態II。
【請求項26】
6.32、5.82及び3.69オングストロームのスペクトルd−間隔における、粉末X線回折パターンから得られる特有の反射をさらに特徴とする、請求項25に記載の結晶性脱溶媒和無水形態II。
【請求項27】
図6の粉末X線回折パターンをさらに特徴とする、請求項26に記載の結晶性脱溶媒和無水形態II。
【請求項28】
−65.1、−104.9及び−120.1p.p.m.においてシグナルを示す固体フッ素−19 MAS核磁気共鳴スペクトルを特徴とする、請求項23に記載の結晶性脱溶媒和無水形態II。
【請求項29】
−80.3、−94.5、−134.4及び−143.3p.p.m.においてシグナルを示す固体フッ素−19 MAS核磁気共鳴スペクトルをさらに特徴とする、請求項28に記載の結晶性脱溶媒和無水形態II。
【請求項30】
図8の固体フッ素−19 MAS核磁気共鳴スペクトルをさらに特徴とする、請求項29に記載の結晶性脱溶媒和無水形態II。
【請求項31】
図7の固体炭素−13 CPMAS核磁気共鳴スペクトルを特徴とする、請求項23に記載の結晶性脱溶媒和無水形態II。
【請求項32】
図10の熱重量分析曲線を特徴とする、請求項23に記載の結晶性脱溶媒和無水形態II。
【請求項33】
図9の示差走査熱量(DSC)曲線を特徴とする、請求項23に記載の結晶性脱溶媒和無水形態II。
【請求項34】
アセトン溶媒和物、アセトニトリル溶媒和物、メタノラート、エタノラート、1−プロパノラート及び2−プロパノラートからなる群から溶媒和物が選択される、結晶性溶媒和物であることを特徴とする、構造式I:
【化4】
の(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンのリン酸二水素塩。
【請求項35】
前記溶媒和物がエタノラートである、請求項34に記載の結晶性溶媒和物。
【請求項36】
7.09、5.27及び4.30オングストロームのスペクトルd−間隔における、粉末X線回折パターンから得られる特有の反射を特徴とする、請求項35に記載の結晶性エタノラート。
【請求項37】
18.56、9.43及び4.19オングストロームのスペクトルd−間隔における、粉末X線回折パターンから得られる特有の反射をさらに特徴とする、請求項36に記載の結晶性エタノラート。
【請求項38】
6.32、5.82及び3.69オングストロームのスペクトルd−間隔における、粉末X線回折パターンから得られる特有の反射をさらに特徴とする、請求項37に記載の結晶性エタノラート。
【請求項39】
図16の粉末X線回折パターンをさらに特徴とする、請求項38に記載の結晶性エタノラート。
【請求項40】
−64.7、−104.5及び−121.9p.p.m.においてシグナルを示す固体フッ素−19 MAS核磁気共鳴スペクトルを特徴とする、請求項35に記載の結晶性エタノラート。
【請求項41】
−94.3、−117.7、−131.2及び−142.6p.p.m.においてシグナルを示す固体フッ素−19MAS核磁気共鳴スペクトルをさらに特徴とする、請求項40に記載の結晶性エタノラート。
【請求項42】
図18の固体フッ素−19MAS核磁気共鳴スペクトルをさらに特徴とする、請求項41に記載の結晶性エタノラート。
【請求項43】
図17の固体炭素−13CPMAS核磁気共鳴スペクトルを特徴とする、請求項35に記載の結晶性エタノラート。
【請求項44】
図20の熱重量分析曲線を特徴とする、請求項35に記載の結晶性エタノラート。
【請求項45】
図19の示差走査熱量(DSC)曲線を特徴とする、請求項35に記載の結晶性エタノラート。
【請求項46】
結晶性無水形態Iと結晶性無水形態IIIとの混合物を含む、構造式I:
【化5】
の(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンのリン酸二水素塩である、薬剤材料。
【請求項47】
結晶性無水形態Iもしくは結晶性無水形態III又はそれらの混合物の検出可能量を含む、構造式I:
【化6】
の(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンのリン酸二水素塩。
【請求項48】
実質的に全重量が、結晶性無水形態Iもしくは結晶性無水形態III又はそれらの混合物を含む、構造式I:
【化7】
の(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンのリン酸二水素塩。
【請求項49】
1又は複数の医薬的に許容される担体又は賦形剤と組み合わせて、請求項1もしくは請求項12に記載の塩又はそれらの混合物の予防的又は治療的有効量を含む、医薬組成物。
【請求項50】
2型糖尿病の治療を必要とする患者に請求項1もしくは請求項12に記載の塩又はそれらの混合物の治療的有効量を投与することを含む、2型糖尿病の治療方法。
【請求項51】
2型糖尿病の治療における使用のための、請求項1もしくは請求項12に記載の塩又はそれらの混合物。
【請求項52】
2型糖尿病の治療における使用のための薬物の製造における、活性成分としての請求項1もしくは請求項12に記載の塩又はそれらの混合物の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公表番号】特表2007−504230(P2007−504230A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525371(P2006−525371)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【国際出願番号】PCT/US2004/027983
【国際公開番号】WO2005/020920
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【国際出願番号】PCT/US2004/027983
【国際公開番号】WO2005/020920
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】
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