説明

ジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤の燐酸塩

4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−&agr;]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンの燐酸二水素塩は、ジペプチジルペプチダーゼ−IVの強力な阻害剤であり、2型糖尿病とも呼ばれるインスリン非依存性糖尿病の予防および治療の少なくとも一方に有用である。本発明は、その燐酸二水素塩の結晶質一水和物およびその調製方法、この新規形を含有する医薬組成物、ならびに糖尿病、肥満および高血圧の治療のための使用方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤の特定の塩に関する。更に詳細には、本発明は、ジペプチジルペプチダーゼ−IVの強力な阻害剤である4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンの燐酸二水素塩に関する。この新規の塩およびその結晶質水和物は、ジペプチジルペプチダーゼ−IVの阻害剤が指示される疾病および状態、特に2型糖尿病、肥満および高血圧、の治療および予防に有用である。更に、本発明は、2型糖尿病、肥満および高血圧の治療に有用な前記燐酸二水素塩およびその結晶質水和物を含む医薬組成物、ならびに前記燐酸二水素塩およびその結晶質水和物ならびにそれらの医薬組成物の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グルコース依存性インスリン分泌性ペプチド(GIP)とグルカゴン様ペプチド1(GLP−1)の両方を不活性化する酵素であるジペプチジルペプチダーゼ−IV(DP−IV)の阻害は、インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)としても知られている2型糖尿病の治療および予防への新規アプローチの代表である。2型糖尿病の治療に関するDP−IV阻害剤の治療上の可能性は、次の文献に総説されている:C.F.DeaconおよびJ.J.Holst,「2型糖尿病の治療および予防へのアプローチとしてのジペプチジルペプチダーゼ−IVの阻害:歴史的背景(Dipeptidyl peptidase IV inhibition as an approach to the treatment and prevention of Type 2 diabetes: a historical perspective)」,Biochem.Biophys.Res.Commun.,294:1−4(2000);K.Augustynsら,「2型糖尿病治療用の新規治療薬としてのジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤(Dipeptidyl peptidase IV inhibitors as new therapeutic agents for the treatment of Type 2 diabetes)」,Expert.Opin.Ther.Patents,13:499−510(2003);およびD.J.Drucker,「2型糖尿病の治療に関するジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤の治療上の可能性(Therapeutic potential of dipeptidyl peptidase IV inhibitors for the treatment of Type 2 diabetes)」,Expert Opin.Investig.Drugs.12:87−100(2003)。
【0003】
メルク社(Merck & Co.)に譲渡された国際公開公報第03/004498号(2003年1月16日発行)は、DP−IVの強力な阻害剤であり、従って2型糖尿病の治療に有用であるβ−アミノテトラヒドロトリアゾロ[4,3−a]ピラジンの種類を記載している。具体的には、4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンが、国際公開公報第03/004498号に開示されている。この化合物の医薬適合性の塩は、一般に、国際公開公報第03/004498号の範囲に包含される。
【0004】
しかし、上の参考文献には、新たに開示する下記構造式Iの4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンの一塩基性燐酸二水素塩の具体的な開示はない。
【0005】
本発明は、ジペプチジルペプチダーゼ−IV(DP−IV)阻害剤4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンの新規燐酸二水素塩およびその結晶質水和物、特に、結晶質一水和物に関する。本発明の燐酸二水素塩および結晶質水和物は、4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンの医薬組成物の調製において、調製しやすさ、取扱いやすさおよび投薬しやすさなどの利点を有する。特に、それらは、応力、高温および湿度に対する安定性などの改善された物理的および化学的安定性、ならびに可溶性および溶解速度などの改善された物理化学的特性を示し、そうしたことが、それらを様々な医薬剤形の製造に特に適するものにしている。本発明は、特に2型糖尿病、肥満および高血圧の予防または治療のための、その新規の塩および水和物を含有する医薬組成物ならびにそれらのDP−IV阻害剤としての使用方法にも関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
(発明の詳細な説明)
本発明は、下記構造式I:
【0007】
【化4】

の4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンの新規一塩基性燐酸二水素塩またはその結晶質水和物を提供する。詳細には、本発明は、式Iの燐酸二水素塩の結晶質一水和物を提供する。
【0008】
本発明の燐酸二水素塩は、で示すステレオジェニック炭素原子での不斉中心を有し、故に、ラセミ体、ラセミ混合物および単一のエナンチオマーとして発生し得る。すべての異性体形が、本発明に包含される。実質的に他のものを含まない単独のエナンチオマー、ならびに2つのエナンチオマーの混合物も、本発明の範囲に包含される。
【0009】
本発明の1つの実施態様は、下記構造式II:
【0010】
【化5】

の(2R)4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンの燐酸二水素塩またはその結晶質水和物を提供する。
【0011】
本発明の第二の実施態様は、下記構造式III:
【0012】
【化6】

の(2S)4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンの燐酸二水素塩またはその結晶質水和物を提供する。
【0013】
より具体的には、本発明の燐酸二水素塩は、1モル当量のモノプロトン化4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンカチオンおよび1モル当量の燐酸二水素(重燐酸)アニオンから成る。
【0014】
本発明の更なる実施態様において、上記構造式IからIIIの燐酸二水素塩は、結晶質水和物である。この実施態様の1つの類では、前記結晶質水和物は、結晶質一水和物である。
【0015】
本発明の更なる実施態様は、検出可能な量で存在する結晶質一水和物を含む構造式IからIIIの燐酸二水素塩原薬を提供する。「原薬」とは、活性医薬成分(「API」)を意味する。その原薬中の結晶質一水和物の量は、X線粉末回折、固体フッ素19マジック角回転(MAS)核磁気共鳴分光法、固体炭素13交差分極マジック角回転(CPMAS)核磁気共鳴分光法、固体フーリエ変換赤外線分光法、およびラマン分光法などの物理学的方法の使用によって定量することができる。この実施態様の1つの類では、約5重量%から約100重量%の本結晶質一水和物が、原薬中に存在する。この実施態様の第二の類では、約10重量%から約100重量%の本結晶質一水和物が、原薬中に存在する。この実施態様の第三の類では、約25重量%から約100重量%の本結晶質一水和物が、原薬中に存在する。この実施態様の第四の類では、約50重量%から約100重量%の本結晶質一水和物が、原薬中に存在する。この実施態様の第五の類では、約75重量%から約100重量%の本結晶質一水和物が、原薬中に存在する。この実施態様の第六の類では、その燐酸二水素塩原薬の実質的にすべてが、本発明の結晶質一水和物であり、すなわち、その燐酸二水素塩原薬は、実質的に単一相の一水和物である。
【0016】
本発明の結晶質燐酸二水素塩は、薬理活性成分を含有する医薬品の調製において、遊離塩基および以前に開示された塩酸塩(国際公開公報第03/004498号)を越える製薬上の利点を有する。特に、本結晶質燐酸二水素塩一水和物の強化された化学的および物理的安定性は、薬理活性成分を含有する固体製剤形の調製において有利な特性の要因となる。
【0017】
強力なDP−IV阻害特性を示す本発明の燐酸二水素塩は、2型糖尿病、肥満および高血圧の予防または治療に特に有用である。
【0018】
本発明のもう1つの局面は、DP−IVの阻害剤が必要とされる臨床状態を予防または治療するための方法を提供し、この方法は、そうした予防または治療が必要な患者に予防または治療有効量の構造式Iの燐酸二水素塩またはその水和物、特にその結晶質一水和物を投与することを含む。そうした臨床状態には、糖尿病、特に2型糖尿病、高血糖、インスリン抵抗性および肥満が挙げられる。
【0019】
本発明は、DP−IVの阻害剤が必要とされる臨床状態の予防または治療用薬物を製造するための、構造式Iの燐酸二水素塩またはその水和物、特に結晶質一水和物の使用も提供する。
【0020】
本発明は、構造式Iの燐酸二水素塩またはその水和物、特に結晶質一水和物を1つ以上の医薬適合性の担体または賦形剤とともに含む医薬組成物も提供する。1つの実施態様において、本医薬組成物は、治療有効量の活性医薬成分を医薬適合性の賦形剤との混合物の状態で含み、この場合、前記活性医薬成分は、検出可能な量の本発明の結晶質一水和物を含む。第二の実施態様において、本医薬組成物は、治療有効量の活性医薬成分を医薬適合性の賦形剤との混合物の状態で含み、この場合、前記活性医薬成分は、約5重量%から約100重量%の本発明の結晶質一水和物を含む。この第二の実施態様の1つの類では、そうした組成物中の活性医薬成分は、約10重量%から約100重量%の本結晶質一水和物を含む。この実施態様の第二の類では、そうした組成物中の活性医薬成分は、約25重量%から約100重量%の本結晶質一水和物を含む。この実施態様の第三の類では、そうした組成物中の活性医薬成分は、約50重量%から約100重量%の本結晶質一水和物を含む。この実施態様の第四の類では、そうした組成物中の活性医薬成分は、約75重量%から約100重量%の本結晶質一水和物を含む。この実施態様の第五の類では、活性医薬成分の実質的にすべてが、本発明の結晶質燐酸二水素塩一水和物であり、すなわち、活性医薬成分は、実質的に単一相の燐酸二水素塩一水和物である。
【0021】
本発明の組成物は、適切には、錠剤、ピル、カプセル、粉末、顆粒、無菌溶液もしくは懸濁液、定量エーロゾルもしくは液体噴霧剤、滴剤、アンプル、自己注射装置または坐剤などの単位剤形である。本組成物は、経口、非経口、鼻腔内、舌下もしくは直腸内投与、または吸入もしくは通気による投与のためのものである。本発明の組成物の調合は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第17版,1995に記載されているような、当該技術分野では公知の方法によって適便に行うことができる。
【0022】
薬剤投与計画は、患者のタイプ、種、年齢、体重、性別および医療状態;治療すべき状態の重症度;投与形路;および患者の腎臓および肝臓機能を含む様々な因子に従って選択される。通常技能の医師、獣医、または臨床家は、その状態の進行を防止、対抗または阻止するために必要な薬物の有効量を容易に決定し、処方することができる。
【0023】
上述の作用のために用いられる時の本発明の経口投薬量は、1日につき体重のkgあたり約0.01mg(0.01mg/kg/日)から約100mg/kg/日の間、好ましくは0.01から10mg/kg/日、および最も好ましくは0.1から5.0mg/kg/日の範囲である。経口投与のための本組成物は、その投薬量を治療すべき患者の症状に合わせるために、0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100、200および500ミリグラムの活性成分を含有する錠剤の形態で好ましくは提供される。薬物は、典型的には約0.01mgから約500mgの活性成分、好ましくは約1mgから約200mgの活性成分を含有する。静脈内への、最も好ましい用量は、定速注入の間、約0.1から約10mg/kg/分の範囲である。有利なことに、本発明の結晶形は、一回の日用量で投与してもよいし、または全日用量を1日につき2回、3回もしくは4回の分割量で投与してもよい。更に、本発明の結晶形は、適する鼻腔内用ビヒクルの局所使用により鼻腔内剤型で投与することができ、または通常の当業者によく知られている経皮パッチの形態を利用して経皮経路により投与することができる。経皮送達系の形態で投与するための用量投与は、勿論、その薬剤投与形画全体を通して、間欠的ではなく継続的なものある。
【0024】
本発明の方法において、本明細書に詳細に記載されている燐酸二水素塩および結晶質水和物は、活性医薬成分に成ることができ、および所期の投与形態(すなわち、経口錠、カプセル、エリキシル、シロップなど)に対して適切に選択され、通常の薬学的実施に矛盾しない、適する製薬用希釈剤、賦形剤または担体(本明細書では総称して「担体」材料と呼ぶ)との混合物の状態で、典型的には投与される。
【0025】
例えば、錠剤またはカプセルの形態での経口投与については、本活性医薬成分をラクトース、デンプン、スクロース、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、燐酸二カルシウム、硫酸カルシウム、マンニトール、ソルビトールなどの経口用非毒性医薬適合性不活性担体と併せることができ、液体形での経口投与については、本活性医薬成分をエタノール、グリセロール、水などのあらゆる経口用非毒性医薬適合性不活性担体と併せることができる。更に、所望されるか必要な際には、適する結合剤、滑沢剤、崩壊剤および着色剤もその混合物に配合することができる。適する結合剤には、デンプン、ゼラチン、天然糖(グルコースまたはβ−ラクトースなど)、トウモロコシ甘味料、天然および合成ゴム(アラビアゴム、トラガカントゴムまたはアルギン酸ナトリウムなど)、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、蝋などが挙げられる。これらの剤形に用いられる滑沢剤には、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられる。崩壊剤には、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
構造式Iの燐酸二水素塩およびその結晶質一水和物は、水への高い溶解度を有し、その結果、調合物、特に、活性成分の比較的濃縮された水溶液が求められる鼻腔内および静脈内用調合物、の調製にとりわけ適用できるようになることが判明した。水への式Iの結晶質燐酸二水素塩一水和物の溶解度は、約72mg/mLであることが判明した。
【0027】
更なる態様によると、本発明は、下記構造式IV:
【0028】
【化7】

の4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンを、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)およびイソアミルアルコール(IAA)などの適するC〜Cアルカノール、またはC〜Cアルカノール水溶液中、約1当量の燐酸と反応させることを含む、式Iの燐酸二水素塩の調製方法を提供する。この反応は、約25℃から約80℃の温度範囲で行われる。その燐酸溶液をアミン溶液に添加してもよいし、またはその添加を逆方向に行ってもよい。その結晶質燐酸二水素塩一水和物は、下に記載するような燐酸二水素塩のC〜Cアルカノール水溶液からの結晶化によって得られる。
【0029】
構造式Iの燐酸二水素塩の一水和物を結晶化するための一般法
(a)25℃、エタノール/水系中:
(1)水分濃度が31重量%より高いようなエタノールおよび水における化合物Iの混合物から結晶化、
(2)得られた固相の回収、および
(3)そこからの溶媒の除去。
【0030】
(b)25℃、イソアミルアルコール(IAA)/水系中:
(1)水分濃度が2.9重量%より高いようなIAAおよび水における化合物Iの混合物からの結晶化、
(2)得られた固相の回収、および
(3)そこからの溶媒の除去。
【0031】
(c)40℃、IAA/水系中:
(1)水分濃度が3.6重量%より高いようなIAAおよび水における化合物Iの混合物からの結晶化、
(2)得られた固相の回収、および
(3)そこからの溶媒の除去。
【0032】
(d)60℃、IAA/水系中:
(1)水分濃度が4.5重量%より高いようなIAAおよび水における化合物Iの混合物からの結晶化、
(2)得られた固相の回収、および
(3)そこからの溶媒の除去。
【0033】
(e)25℃、イソプロピルアルコール(IPA)/水系中:
(1)水分濃度が7.0重量%より高いようなIPAおよび水における化合物Iの混合物からの結晶化、
(2)得られた固相の回収、および
(3)そこからの溶媒の除去。
【0034】
(f)40℃、IPA/水系中:
(1)水分濃度が8.1重量%より高いようなIPAおよび水における化合物Iの混合物からの結晶化、
(2)得られた固相の回収、および
(3)そこからの溶媒の除去。
【0035】
(g)75℃、IPA/水系中:
(1)水分濃度が20重量%より高いようなIPAおよび水における化合物Iの混合物からの結晶化、
(2)得られた固相の回収、および
(3)そこからの溶媒の除去。
【0036】
構造式IVの出発化合物は、下の図式1から3および実施例1において詳述する手順によって調製することができる。
【0037】
尚、更なる態様において、本発明は、DP−IV阻害剤が必要とされる臨床状態の治療および予防の少なくとも一方のための方法を提供し、この方法は、そうした予防または治療が必要な患者に予防または治療有効量の上で定義したとおりの式Iの塩またはその結晶質水和物を投与することを含む。
【0038】
以下の非限定的実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲または精神に対する制限とは見なさないでいただきたい。
【0039】
本明細書に記載する化合物は、ケト−エノール互変異性体のような互変異性体として存在することがある。個々の互変異性体ならびにそれらの混合物は、構造式Iの化合物とともに包含される。
【0040】
用語「%エナンチオマー過剰」(「ee」と略記する)は、少ない方の異性体(副異性体)の%を減じた多い方の異性体(主異性体)の%を意味することになる。従って、70%エナンチオマー過剰は、一方のエナンチオマー85%および他方15%の構成に相当する。用語「エナンチオマー過剰」は、用語「光学純度」と同義である。
【0041】
(実施例)
【0042】
【化8】

(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミン燐酸二水素塩一水和物
3−(トリフルオロメチル)−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン塩酸塩(1−4)の調製
【0043】
【化9】

【0044】
段階Aビスヒドラジド(1−1)の調製
ヒドラジン(20.1g、水中35重量%、0.22mol)を310mLのアセトニトリルと混合した。31.5gのトリフルオロ酢酸エチル(0.22mol)を60分かけて添加した。その内部温度を14℃から25℃に上昇させた。得られた溶液を22から25℃で60分間、時間を経過させた。その溶液を7℃に冷却した。16℃未満の温度で130分かけて17.9gの50重量%NaOH水溶液(0.22mol)および25.3gの塩化クロロアセチル(0.22mol)を同時に添加した。反応が完了したら、27から30℃、Hgで26〜27の真空下でその混合物を真空蒸留して、水およびエタノールを除去した。その蒸留中、720mLのアセトニトリルをゆっくりと添加して、一定量(約500mL)を維持した。そのスラリーを濾過して、塩化ナトリウムを除去した。そのケークを約100mLのアセトニトリルですすいだ。溶媒を除去することによって、ビス−ヒドラジド1−1(43.2g、収率96.5%、HPLCアッセイによる純度94.4面積%)を生じた。
【0045】
H−NMR(400MHz,DMSO−d):δ4.2(s,2H),10.7(s,1H)、および11.6(s,1H)ppm。
【0046】
13C−NMR(100MHz,DMSO−d):δ41.0,116.1(q,J=362Hz),155.8(q,J=50Hz)、および165.4ppm。
【0047】
段階B 5−(トリフルオロメチル)−2−(クロロメチル)−1,3,4−オキサジアゾール(1−2)の調製
ACN(82mL)中の段階Aからのビスヒドラジド1−1(43.2g、0.21mol)を5℃に冷却した。温度を10℃未満で維持しながらオキシ塩化燐(32.2g、0.21mol)を添加した。その混合物を80℃に加熱し、HPLCが2面積%未満の1−1を示すまで24時間この温度で時間を経過させた。別の容器で、260mLのIPAcおよび250mLの水を混合し、0℃に冷却した。内部温度を10℃未満に保ちながら、その反応スラリーを前記冷却物に添加した。添加後、その混合物を30分間、激しく攪拌し、その温度を室温まで上昇させて、水性層をカットした。その後、有機層を215mLの水、215mLの5重量%重炭酸ナトリウム水溶液、および最後に215mLの20重量%ブライン水溶液で洗浄した。処理後のHPLCアッセイ収率は、86から92%であった。75から80mmHg、55℃での蒸留によって揮発成分を除去して油を生じた。それは更なる精製をせずに段階Cで直接用いることができた。そうでなければ、その生成物を蒸留によって精製して、収率70から80%で1−2を生じることができる。
【0048】
H−NMR(400MHz,CDCl):δ4.8(s,2H)ppm。
【0049】
13C−NMR(100MHz,CDCl):δ32.1,115.8(q,J=337Hz),156.2(q,J=50Hz)、および164.4ppm。
【0050】
段階CN−[(2Z)−ピペラジン−2−イリデン]トリフルオロアセトヒドラジド(1−3)の調製
−20℃に冷却したメタノール(150mL)中のエチレンジアミン(33.1g、0.55mol)の溶液に、内部温度を−20℃に保ちながら、段階Bからの蒸留オキサジアゾール1−2(29.8g、0.16mol)を添加した。添加が完了した後、得られたスラリーを−20℃で1時間、時間を経過させた。その後、エタノール(225mL)を添加し、そのスラリーをゆっくり−5℃に温めた。−5℃で60分後、スラリーを濾過し、−5℃のエタノール(60mL)で洗浄した。アミジン1−3を白色の固体として収率72%で得た(24.4g、HPLCによる純度99.5面積重量%)。
【0051】
H−NMR(400MHz,DMSO−d):δ2.9(t,2H),3.2(t,2H),3.6(s,2H)、および8.3(b,1H)ppm。13C−NMR(100MHz,DMSO−d):δ40.8,42.0,43.3,119.3(q,J=350Hz),154.2、および156.2(q,J=38Hz)ppm。
【0052】
段階D 3−(トリフルオロメチル)−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン塩酸塩(1−4)
110mLのメタノール中のアミジン1−3(27.3g、0.13mol)の懸濁液を55℃に温めた。37%塩酸(11.2mL、0.14mol)をこの温度で15分かけて添加した。その添加中、すべての固体が溶解し、結果的に透明な溶液を生じた。反応を30分間、時間を経過させた。その溶液を20℃に冷却し、結晶種層が形成されるまで(10分から1時間)この温度で時間を経過させた。300mLのMTBEを20℃で1時間かけて添加した。得られたスラリーを2℃に冷却し、30分間おいて、濾過した。固体を50mLのエタノール:MTBE(1:3)で洗浄し、真空下、45℃で乾燥させた。トリアゾール1−4の収量は、26.7g(HPLCによる純度99.5面積重量%)であった。
【0053】
H−NMR(400MHz,DMSO−d):δ3.6(t,2H),4.4(t,2H),4.6(s,2H)、および10.6(b,2H)ppm;13C−NMR(100MHz,DMSO−d):δ39.4,39.6,41.0,118.6(q,J=325Hz),142.9(q,J=50Hz)、および148.8ppm。
【0054】
【化10】

【0055】
段階A 4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−オン(2−3)の調製
2,4,5−トリフルオロフェニル酢酸(2−1)(150g、0.789mol)、メルドラム酸(125g、0.868mol)、および4−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)(7.7g、0063mol)を5Lの3つ口フラスコに入れた。N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)(525mL)を室温で一度に添加して、固体を溶解した。温度を40℃未満で維持しながら、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(282mL、1.62mol)を室温で一度に添加した。温度を0℃と5℃の間で維持しながら、塩化ピバロイル(107mL、0.868mol)を1から2時間かけて一滴ずつ添加した。その反応混合物を5℃で1時間おいた。塩酸トリアゾール1−4(180g、0.789mol)を40から50℃で一度に添加した。その反応溶液を70℃で数時間おいた。その後、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(625mL)を20から45℃で一滴ずつ添加した。そのバッチに結晶種を入れ、20から30℃で1から2時間おいた。その後、追加の525mLの5%炭酸水素ナトリウム水溶液を2から3時間かけて一滴ずつ添加した。数時間、室温においた後、そのスラリーを0から5℃に冷却し、1時間おいた後、固体を濾過した。その湿潤ケークを、20%DMAc水溶液(300mL)、続いて追加の2バッチの20%DMAc水溶液(400mL)、および最後に水(400mL)で置換洗浄した。そのケークを室温で吸引乾燥させた。最終生成物2−3の単離された収率は、89%であった。
【0056】
段階B (2Z)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブト−2−エン−2−アミン(2−4)の調製
5L丸底フラスコにメタノール(100mL)、ケトアミド2−3(200g)および酢酸アンモニウム(110.4g)を入れた。その後、メタノール(180mL)および28%水酸化アンモニウム水溶液(58.6mL)を添加し、その添加中、温度は30℃未満に保った。追加のメタノール(100mL)をその反応混合物に添加した。その混合物を還流温度で加熱し、2時間おいた。反応を室温に冷却し、その後、氷浴で約5℃に冷却した。30分後、固体を濾過し、乾燥させて、2−4を固体として生じた(180g);融点271.2℃。
【0057】
段階C (2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミン(2−5)の調製
500mLフラスコに、窒素雰囲気下で、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)ダイマー{[Rh(cod)Cl]}(292mg、1.18mmol)および(R,S)t−ブチルJosiphos(708mg、1.3mmol)を入れた。その後、脱気MeOHを添加し(200mL)、その混合物を室温で1時間攪拌した。4L水素化装置に、エナミンアミド2−4(118g、0.29mol)をMeOH(1L)とともに入れた。そのスラリーを脱気した。その後、前記触媒溶液を窒素下でその水素化装置に移した。3回脱気した後、そのエナミンアミドを200psiの水素ガスのもと、50℃で13時間水素化した。HPLCにより、アッセイ収率は93%であり、光学純度は94%eeであると判定された。
【0058】
その光学純度を次の方法で更に高めた。その水素化反応からのメタノール溶液(MeOH 180mL中18g)を濃縮し、メチルt−ブチルエーテル(MTBE)(45mL)に交換した。この溶液にHPO水溶液(0.5M、95mL)を添加した。層の分離後、3NのNaOH(35mL)を水性層に添加し、その後、それをMTBE(180mL+100mL)で抽出した。そのMTBE溶液を濃縮し、溶媒を熱トルエン(180mL、約75℃)に交換した。その後、その熱トルエン溶液を放置してゆっくりと0℃に冷却した(5から10時間)。濾過によって結晶を単離した(13g、収率72%、98から99%ee);融点114.1から115.7℃。
【0059】
H NMR(300MHz,CDCN):δ7.26(m),7.08(m),4.90(s),4.89(s),4.14(m),3.95(m),3.40(m),2.68(m),2.49(m),1.40(bs)。
【0060】
化合物2−5は、アミド結合回転異性体として存在する。指示がない限り、その主および副回転異性体は、それらの炭素13シグナルが充分に分離されないので、一緒のグループにする。
【0061】
13C NMR(CDCN):δ171.8,157.4(ddd,JCF=242.4,9.2,2.5Hz),152.2(主),151.8(副),149.3(ddd;JCF=246.7,14.2,12.9Hz),147.4(ddd,JCF=241.2,12.3,3.7Hz),144.2(q,JCF=38.8Hz),124.6(ddd,JCF=18.5,5.9,4.0Hz),120.4(dd,JCF=19.1,6.2Hz),119.8(q,JCF=268.9Hz),106.2(dd,JCF=29.5,20.9Hz),50.1,44.8,44.3(副),43.2(副),42.4,41.6(副),41.4,39.6,38.5(副),36.9。
【0062】
結晶質遊離塩基は、次のようにして単離することもできる:
(a)水素化段階が完了したら、その反応混合物に25重量%のエコソルブ(Ecosorb)C−941を添加する。その混合物を窒素下で1時間攪拌し、その後、濾過する。そのケークを2L/kgのメタノールで洗浄する。遊離塩基の回収は、約95%であり、光学純度は、約95%eeである。
【0063】
(b)メタノール中のその遊離塩基の溶液を、(遊離塩基の添加量を基準にして)3.5から4.0L/kgの量に濃縮し、その後、イソプロパノール(IPA)に溶媒交換して、3.0L/kg IPAの最終量にする。
【0064】
(c)そのスラリーを40℃に加熱し、40℃で1時間おいて、その後、2時間かけて25℃に冷却する。
【0065】
(d)ヘプタン(7L/kg)を7時間かけて添加し、そのスラリーを22から25℃で12時間攪拌する。濾過前の上清濃度は、10から12mg/gである。
【0066】
(e)そのスラリーを濾過し、固体を30%IPA/ヘプタン(2L/kg)で洗浄する。
【0067】
(f)固体を40℃の真空オーブンで乾燥させる。
【0068】
(g)その遊離塩基の光学純度は、約99%eeである。
【0069】
次の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)条件を用いて、生成物への転化率を決定した。
【0070】
カラム: ウォーター・シンメトリー(Water Symmetry)C18、250mm x 4.6mm
溶離剤: 溶媒A: 0.1容量%HClO/H
溶媒B: アセトニトリル
傾斜: 0分 75% A: 25% B
10分 25% A: 75% B
12.5分 25% A: 75% B
15分 75% A: 25% B
流量: 1mL/分
注入量: 10μL
UV検出: 210nm
カラム温度: 40℃
保持時間: 化合物2−4: 9.1分
化合物2−5: 5.4分
t−ブチルJosiphos: 8.7分
次の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)条件を用いて、光学純度を決定した:
カラム: キラパック(Chirapak)、AD−H、250mm x 4.6mm
溶離剤: 溶媒A: ヘプタン中の0.2容量%ジエチルアミン
溶媒B: エタノール中の0.1容量%ジエチルアミン
イソクラティック(Isochratic)実行時間: 18分
流速: 0.7mL/分
注入量: 7μL
UV検出: 268nm
カラム温度: 35℃
保持時間: (R)−アミン2−5: 13.8分
(S)−アミン2−5: 11.2分
(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミン燐酸二水素塩一水和物
オーバーヘッドスターラー、加熱マントルおよび熱電対を装備した250mL丸底フラスコに、31.5mLのイソプロパノール(IPA)、13.5mLの水、15.0g(36.9mmol)の(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミン遊離塩基および4.25g(36.9mmol)の85%燐酸水溶液を入れた。その混合物を75℃に加熱した。濃厚な白色沈殿が低温で生成したが、75℃に達すると溶解した。その溶液を68℃に冷却し、その後、その温度で2時間保持した。この経過時間中に、固体のスラリー層が形成した[その溶液に、0.5から5重量%の小粒径(アルピーネミルド(alpine milled))一水和物の、結晶種を入れることができる]。その後、そのスラリーを4℃/時の速度で21℃に冷却して、一晩保持した。その後、105mLのIPAをそのスラリーに添加した。1時間後、スラリーを濾過し、45mLのIPAで洗浄した(固体を水/IPA溶液で洗浄して、他の結晶形への転換を回避することもできる)。固体を外気に触れさせながら、フリットで乾燥させた。18.6gの固体を回収した。それらの固体は、HPLC面積百分率(HPLC条件は、上で与えたものと同じであった)により純度99.8%以上であることが判明した。単離した固体の粒径分布分析は、平均PDSが80マイクロメートルであり、95%が180マイクロメートル未満であることを示した。それらの固体の結晶形は、X線粉末回折および熱重量分析により、一水和物であることが証明された。
【0071】
X線粉末回折検査は、分子構造、結晶性および多形性の特性付に幅広く用いられている。本結晶質燐酸二水素塩一水和物のX線粉末回折パターンは、PW3040/60コンソールを備えたフィリップス・アナリティカル・エキスパート・プロ・X線回折システム(Philips Analytical X’Pert PRO X−ray Diffraction System)で生成した。PW3373/00セラミックCu LEF X線管K−アルファ照射をX線源として用いた。
【0072】
図1は、構造式IIの燐酸二水素塩の結晶質一水和物形についてのX線回折パターンを示すものである。この一水和物は、7.42、5.48および3.96オングストロームの格子面間隔に対応する特性回折ピークを示した。この一水和物は、6.30、4.75および4.48オングストロームの格子面間隔を更なる特徴とした。この一水和物は、5.85、5.21および3.52オングストロームの格子面間隔を更にいっそうの特徴とした。
【0073】
上に記載したX線粉末回折パターンに加えて、構造式IIの燐酸二水素塩の結晶質一水和物形は、その固体炭素13およびフッ素19核磁気共鳴(NMR)スペクトルによって更に特徴づけられた。その固体炭素13NMRスペクトルは、ブルカー(Bruker)4mm二重共鳴CPMASプローブを用いるブルカーDSX 400WB NMRシステムで得た。その炭素13NMRスペクトルは、可変増幅交差分極でのプロトン/炭素13交差分極マジック角回転を利用したものだった。サンプルを15.0kHzで回転させ、合計2048のスキャンを20秒のリサイクル遅延で収集した。40Hzの線の広がりをスペクトルに適用した後、FTを行った。化学シフトは、第二リファレンスとしてグリシンのカルボニル炭素(176.03p.p.m)を用いてTMSスケールで報告される。
【0074】
その固体フッ素19NMRスペクトルは、ブルカー4mm CRAMPSプローブを用いるブルカーDSX 400WB NMRシステムで得た。このNMRスペクトルは、単純パルス−獲得パルスプログラムを利用したものだった。サンプルを15.0kHzで回転させ、合計16のスキャンを30秒のリサイクル遅延で収集した。ベスペル・エンドキャップを用いて、フッ素バックグラウンドを最小にした。100Hzの線の広がりをそのスペクトルに適用した後、FTを行った。化学シフトは、−122ppmの化学シフトを割り当てられるポリ(テトラフルオロエチレン)(テフロン)を外部第二リファレンスとして用いて報告される。
【0075】
図2は、構造式IIの燐酸二水素塩の結晶質一水和物形についての固体炭素13CPMAS NMRスペクトルを示すものである。この一水和物形は、169.1、120.8および46.5p.p.m.の化学シフト値を有する特性シグナルを示した。この一水和物形の更なる特徴は、159.0、150.9および40.7ppmの化学シフト値を有するシグナルであった。
【0076】
図3は、構造式IIの燐酸二水素塩の結晶質一水和物形についての固体フッ素19MAS NMRスペクトルを示すものである。この一水和物形は、−64.5、−114.7、−136.3および−146.2p.p.m.の化学シフト値を有する特性シグナルを示した。この一水和物形の更なる特徴は、−96.5、−104.4、−106.3および−154.5ppmの化学シフト値を有するシグナルであった。
【0077】
図4は、構造式IIの燐酸二水素塩の結晶質一水和物形についての特性熱重量分析(TGA)曲線を示すものである。パーキン・エルマー・モデル(Perkin Elmer model)TGA 7または同等の装置を使用した。実験は、窒素流のもと、約250℃の最高温度まで10℃/分の昇温速度を用いて行った。バランスを自動的に控除した後、5から20mgのサンプルを白金皿に添加し、加熱炉を立ち上げて、昇温プログラムを開始させた。重量/温度データをその装置により自動的に収集した。結果の分析は、その装置のソフトウエアの中のデルタY(Delta Y)機能を選択すること、および重量損失を計算しなければならない温度を選択することによって行った。重量損失は、分解/蒸発の開始まで報告される。TGAは、周囲温度から約250℃までで約3.3647%の重量損失を示した。
【0078】
図5は、構造式IIの燐酸二水素塩の結晶質一水和物形についての特性DSC曲線を示すものである。ティー・エイ・インストルメンツ(TA Instruments)DSC 2910または同等の機器装備を使用した。2mgと6mgの間のサンプルを蓋のない皿に計り入れた。その後、この皿をクリンプさせて、その熱量計のセルのサンプル位置に置いた。空の皿をレファレンス位置に置いた。熱量計のセルを閉じ、窒素流をそのセルに通した。昇温プログラムは、約250℃の温度まで10℃/分の昇温速度でサンプルを加熱するように設定した。昇温プログラムが開始された。その実行が完了したら、そのシステムソフトウエアに含まれているDSC分析プログラムを用いてデータを分析した。溶解吸熱は、吸熱が観察される温度範囲より高い基線温度のポイントと低い基線温度のポイントの間で積分したものだった。報告されたデータは、開始温度、ピーク温度、およびエンタルピーである。
【0079】
本発明の結晶質燐酸二水素塩一水和物は、上記X線粉末回折、フッ素19MAS NMR、炭素13CPMAS NMR、およびDSC物理特性で、その形の少なくとも約5%の相純度を有する。1つの実施態様において、相純度は、上記固体物理特性で、その形の少なくとも約10%である。第2の実施態様において、相純度は、上記固体物理特性で、その形の少なくとも約25%である。第3の実施態様において、相純度は、上記固体物理特性で、その形の少なくとも約50%である。第4の実施態様において、相純度は、上記固体物理特性で、その形の少なくとも約75%である。第5の実施態様において、相純度は、上記固体物理特性で、その形の少なくとも約90%である。第6の実施態様において、本結晶質燐酸二水素塩一水和物は、上記固体物理特性で、実質的に単一相の形である。用語「相純度」とは、本出願に記載されている固体物理法によって決定されるような、燐酸二水素塩一水和物の、その塩の特定の結晶または非晶形に関する固体純度を意味する。
【0080】
本結晶質燐酸二水素塩一水和物は、周囲条件下で安定であることが判明した。それは、非常に乾燥した窒素流のもとで40℃より上に加熱した場合、脱水一水和物に転化することが判明した。脱水一水和物は、周囲条件下では一水和物に転化して戻った。
【0081】
医薬組成物の実施例
1)直接圧縮法:
本燐酸二水素塩一水和物は、直接圧縮法によって錠剤に調合することができる。100mg力価の錠剤を、128.4mgの本活性成分、127.8mgの微結晶性セルロース、127.8mgのマンニトール(または127.8mgの燐酸二カルシウム)、8mgのクロスカルメロースナトリウム、8mgのステアリン酸マグネシウムおよび16mgのオパドライ・ホワイト(Opadry white:ペンシルバニア州ウエストポイントのカラーコン(Colorcon)製の有標コーチング材料)から構成した。本活性成分、微結晶性セルロース、マンニトール(または燐酸二カルシウム)およびクロスカルメロースを先ずブレンドし、次に、その混合物をステアリン酸マグネシウムで潤滑させて、錠剤にプレスした。その後、それらの錠剤をオパドライ・ホワイトでフィルムコーチングした。
【0082】
2)ローラー圧縮法:
本燐酸二水素塩一水和物は、ローラー圧縮法によって錠剤に調合することができる。100mg力価の錠剤を、128.4mgの本活性成分、45mgの微結晶性セルロース、111.6mgの燐酸二カルシウム、6mgのクロスカルメロースナトリウム、9mgのステアリン酸マグネシウムおよび12mgのオパドライ・ホワイト(ペンシルバニア州ウエストポイントのカラーコン製の有標コーチング材料)から構成した。本活性成分、微結晶性セルロース、燐酸二カルシウムおよびクロスカルメロースを先ずブレンドし、次に、その混合物を全体の3分の1の量のステアリン酸マグネシウムで潤滑させ、ローラー圧縮してリボンにした。その後、これらのリボンを粉砕し、その後、得られた顆粒をステアリン酸マグネシウムの残量で潤滑させて、錠剤にプレスした。その後、それらの錠剤をオパドライ・ホワイトでフィルムコーチングした。
【0083】
3)静脈内(i.v.)用水性調合物は、pH4.5±0.2の10mMステアリン酸ナトリウム/0.8%食塩水中の式Iの燐酸二水素塩の一水和物と特徴づけられる。4.0mg/mLの濃度を有する調合物については、800mgのNaClを80mLの水に溶解し、その後、57.5μLの氷酢酸を添加し、続いて512mgの本燐酸二水素塩一水和物を添加する。0.1NのNaOH溶液でpHを4.5±0.2にする。水で最終量を100mLにする。2.0mg/mL溶液は、50.0mLのその4.0mg/mL溶液をプラシーボで100.0mLに希釈することによって製造することができる。1.0mg/mL溶液は、25.0mLのその4.0mg/mL溶液をプラシーボで100.0mLに希釈することによって製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】構造式IIのリン酸二水素塩の結晶質一水和物の特性X線回折パターンである。
【図2】構造式IIのリン酸二水素塩の結晶質一水和物の炭素13交差分極マジック角回転(CPMAS)核磁気共鳴(NMR)スペクトルである。
【図3】構造式IIのリン酸二水素塩の結晶質一水和物のフッ素19マジック角回転(MAS)核磁気共鳴(NMR)スペクトルである。
【図4】構造式IIのリン酸二水素塩の結晶質一水和物の典型的な熱重量分析(TGA)曲線である。
【図5】構造式IIのリン酸二水素塩の結晶質一水和物の典型的な示差走査熱量測定(DSC)曲線である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式I:
【化1】

の4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンの燐酸二水素塩またはその医薬適合性の水和物。
【請求項2】
印を付けたキラル中心での(R)立体配置を有する下記構造式II:
【化2】

の請求項1に記載の塩。
【請求項3】
印を付けたキラル中心での(S)立体配置を有する下記構造式III:
【化3】

の請求項1に記載の塩。
【請求項4】
結晶質一水和物であることを特徴とする、請求項2に記載の塩。
【請求項5】
7.42、5.48および3.96オングストロームのスペクトル格子面間隔のX線粉末回折パターンから得られた特性吸収バンドによって特徴づけられる、請求項4に記載の一水和物。
【請求項6】
更に、6.30、4.75および4.48オングストロームのスペクトル格子面間隔のX線粉末回折パターンから得られた特性吸収バンドによって特徴づけられる、請求項5に記載の一水和物。
【請求項7】
更に、5.85、5.21および3.52オングストロームのスペクトル格子面間隔のX線粉末回折パターンから得られた特性吸収バンドによって特徴づけられる、請求項6に記載の一水和物。
【請求項8】
図1のX線粉末回折パターンによって更に特徴づけられる、請求項7に記載の一水和物。
【請求項9】
169.1、120.8および46.5ppmでシグナルを示す固体炭素13CPMAS核磁気共鳴スペクトルによって特徴づけられる、請求項4に記載の一水和物。
【請求項10】
更に、159.0、150.9および40.7ppmでシグナルを示す固体炭素13CPMAS核磁気共鳴スペクトルによって特徴づけられる、請求項9に記載の一水和物。
【請求項11】
更に、図2の固体炭素13CPMAS核磁気共鳴スペクトルによって特徴づけられる、請求項10に記載の一水和物。
【請求項12】
−64.5、−114.7、−136.3および−146.2ppmでシグナルを示す固体フッ素19MAS核磁気共鳴スペクトルによって特徴づけられる、請求項4に記載の一水和物。
【請求項13】
更に、−96.5、−104.4、−106.3および−154.5ppmでシグナルを示す固体フッ素19MAS核磁気共鳴スペクトルによって特徴づけられる、請求項12に記載の一水和物。
【請求項14】
更に、図3の固体フッ素19MAS核磁気共鳴スペクトルによって特徴づけられる、請求項13に記載の一水和物。
【請求項15】
図4の熱重量分析曲線によって特徴づけられる、請求項4に記載の一水和物。
【請求項16】
図5の示差走査熱量測定曲線によって特徴づけられる、請求項4に記載の一水和物。
【請求項17】
検出可能な量の前記結晶質一水和物を含む、請求項4に記載の塩。
【請求項18】
約5重量%から約100重量%の前記結晶質一水和物を含む、請求項4に記載の塩。
【請求項19】
約10重量%から約100重量%の前記結晶質一水和物を含む、請求項4に記載の塩。
【請求項20】
約25重量%から約100重量%の前記結晶質一水和物を含む、請求項4に記載の塩。
【請求項21】
約50重量%から約100重量%の前記結晶質一水和物を含む、請求項4に記載の塩。
【請求項22】
約75重量%から約100重量%の前記結晶質一水和物を含む、請求項4に記載の塩。
【請求項23】
前記結晶質一水和物を実質的に全重量含む、請求項4に記載の塩。
【請求項24】
モノプロトン化4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンカチオンおよび燐酸二水素アニオンのイオンを含む塩。
【請求項25】
予防または治療有効量の請求項1に記載の塩またはその医薬適合性の溶媒和物を1つ以上の医薬適合性の担体とともに含む医薬組成物。
【請求項26】
予防または治療有効量の請求項4に記載の塩またはその医薬適合性の溶媒和物を1つ以上の医薬適合性の担体とともに含む医薬組成物。
【請求項27】
2型糖尿病の治療方法であって、そうした治療が必要な患者に治療有効量の請求項1に記載の塩またはその医薬適合性の水和物を投与することを含む、2型糖尿病の治療方法。
【請求項28】
2型糖尿病の治療方法であって、そうした治療が必要な患者に治療有効量の請求項4に記載の塩を投与することを含む、2型糖尿病の治療方法。
【請求項29】
約25から100℃の範囲の温度で、有機溶媒または水性有機溶媒中の1当量の4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンを約1当量の燐酸と接触させる段階を含む、請求項1に記載の塩の調製方法。
【請求項30】
前記有機溶媒が、C〜C直鎖または分枝鎖アルカノールである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
2型糖尿病の治療において使用するための薬物の製造における、活性成分としての、請求項1に記載の塩の使用。
【請求項32】
2型糖尿病の治療において使用するための薬物の製造における、活性成分としての、請求項4に記載の塩の使用。
【請求項33】
静脈内投与に適応するようにした、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項34】
請求項29に記載の方法に従って調製された4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンの燐酸塩。
【請求項35】
(a)水分濃度が6.8重量パーセントより高いようなイソプロパノールと水の混合物から、25℃で、請求項1に記載の前記燐酸二水素塩を結晶させる段階;
(b)得られた固相を回収する段階;および
(c)そこから溶媒を除去する段階
を含む、請求項4に記載の結晶質一水和物の調製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−516268(P2006−516268A)
【公表日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−518292(P2005−518292)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【国際出願番号】PCT/US2004/019683
【国際公開番号】WO2005/003135
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
テフロン
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】