説明

ジンクフィンガータンパク質による神経因性疼痛の処置

神経因性疼痛(neuropathic pain)の処置に用いるために、多様なジンクフィンガータンパク質(ZFP)およびそのようなタンパク質を利用する方法が提供される。神経因性疼痛を有する被験者において異常に発現している遺伝子の標的部位に結合するZFPについて記述する。さらに、神経因性疼痛を抱える被験者において正常レベルで発現している遺伝子の標的部位に結合し、その遺伝子発現を調節することによって疼痛知覚の減少をもたらすZFPも同様に提供される。例えば、疼痛患者の後根神経節(DRG)における過剰発現の遺伝子(例えば、VR1、TRKAおよび/またはNav1.8)を抑制することができ、一方で同じ集団における過小発現の遺伝子を活性化することができる。


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その開示が全ての目的のためにその全内容が参照として本明細書に組み入れられる、米国仮特許出願第60/560,535号(2004年4月8日提出)および第60/576,757号(2004年6月2日提出)の恩典を主張する。
【0002】
発明の背景
慢性疼痛と呼ばれることもある神経因性疼痛(neuropathic pain)は、神経、脊髄、または脳に対する損傷に起因する複雑な障害である。神経因性疼痛を有する被験者において神経線維が異常な興奮性、特に過興奮を示すという証拠がある。Zimmerman(2001)Eur J Pharmacol 429(1-3):23〜37(非特許文献1)。全米疼痛学会は、アメリカ人ほぼ5000万人が疼痛により完全または部分的に無能であると推定しているが、現在のところ利用できる有効で認容性の良好な処置はほとんどない。Wetzel et al.(1997)Ann Pharmacother 31(9):1082〜3(非特許文献2)。実際に、既存の治療薬は、主に、選択される受容体/チャンネルを特異的にターゲティングすることができる低分子薬を開発する難しさのために、一連の望ましくない副作用を引き起こす。
【0003】
侵害性の熱、機械的損傷、強い圧力、または刺激性化学物質によって興奮させることができるが、暖かさまたは軽く触れるような無害な刺激によっては興奮させることができない一次知覚ニューロンが存在することが、研究により示されている。これらの侵害受容器は、疼痛誘導刺激を選択的に検出して、他の知覚メカニズムとは異なるように思われる。このことは、侵害受容の分子メカニズムを抑制することによって、一般的な知覚の認識を障害することなく、有痛刺激の認識を制限することが可能であることを示唆している。
【0004】
侵害受容における侵害刺激の伝達は、典型的に非選択的イオンチャンネル(例えば、バニロイド受容体、VR1)、ナトリウムイオンチャンネル(例えば、PN3/Na3V1.8)、チロシン受容体キナーゼ(例えば、TrkA)、およびGPCR(例えば、ブラジキニン受容体)を含む細胞受容体によって媒介される。これらの受容体の大部分は、慢性および急性の侵害受容の双方に関係するニューロン細胞に限って発現され、それらは疼痛反応の制限を目的とした治療的介入の可能性がある標的となる。通常の治療アプローチは典型的に、これらの受容体のアンタゴニストとして機能するリガンドを同定する試みに重点を置いている。しかし、このアプローチに対する主な障害は、受容体アンタゴニストと、疼痛関連標的とは異なる類似の構造の他の受容体との交叉反応性である。
【0005】
神経因性疼痛を誘発する分子メカニズムの研究により、バニロイド受容体(VR1)、熱、pH、およびカプサイシン刺激に反応する非選択的陽イオンチャンネル(Hudson et al.(2001)Eur J Neurosci 13(11):2105〜2114(非特許文献3);Walker et al.(2003)J. Pharmacol. Exp Ther 304(1):56〜62(非特許文献4));慢性的な脊髄損傷後のDRGニューロンにおいてアップレギュレートされることが示されているチロシンキナーゼA受容体または高親和性NGF受容体(TRKA)(Qiao et al.(2002)J. Comp. Neurol. 449(3):217〜230(非特許文献5));(iii)ナトリウムチャンネルNav 1.8(PN3またはSCN10Aとも呼ばれる)(Coward et al.(2000)Pain 85(1-2):41〜50(非特許文献6));および酸化窒素シンターゼ(NOS)(Zimmerman, 上記)を含む、神経因性疼痛のモデルにおいて後根神経節(DRG)の知覚ニューロンにおいて異常に発現されるいくつかの遺伝子が同定された。Lai et al.(2002)Pain 95(1-2):143〜152(非特許文献7)は、Nav1.8レベルの低下が、慢性疼痛に関するラット脊髄神経損傷モデルにおいて神経因性疼痛の阻害に相関することを示した。
【0006】
しかし、神経因性疼痛において異常に発現される遺伝子を調節することは、これまで記述されていなかった。さらに、これらの遺伝子の発現を変化させることができれば、多くの型の疼痛を処置および/または予防するために有用性を有する可能性がある。
【0007】
【非特許文献1】Zimmerman(2001)Eur J Pharmacol 429(1-3):23〜37
【非特許文献2】Wetzel et al.(1997)Ann Pharmacother 31(9):1082〜3
【非特許文献3】Hudson et al.(2001)Eur J Neurosci 13(11):2105〜2114
【非特許文献4】Walker et al.(2003)J. Pharmacol. Exp Ther 304(1):56〜62
【非特許文献5】Qiao et al.(2002)J. Comp. Neurol. 449(3):217〜230
【非特許文献6】Coward et al.(2000)Pain 85(1-2):41〜50
【非特許文献7】Lai et al.(2002)Pain 95(1-2):143〜152
【発明の開示】
【0008】
発明の簡単な概要
神経因性疼痛の処置に用いるために、多様なジンクフィンガータンパク質(ZFP)およびそのようなタンパク質を利用する方法が提供される。神経因性疼痛を有する被験者において異常に発現している遺伝子の標的部位に結合するZFPが記述されている。さらに、その遺伝子の発現を調節することによって疼痛知覚の減少をもたらす、神経因性疼痛を抱える被験者において正常レベルで発現している遺伝子の標的部位に結合するZFPも同様に提供される。例えば、本明細書に記述の方法および組成物を用いて、疼痛患者(例えば、VR1、TRKAおよび/またはNav1.8)の後根神経節(DRG)における過剰発現の遺伝子を抑制することができ、一方で同じ集団において過小発現の遺伝子を活性化することができる。
【0009】
ZFPは融合タンパク質の一部として調節ドメインに融合させることができる。ZFPとの融合に関して活性化ドメインまたは抑制ドメインのいずれかを選択することによって、遺伝子発現を活性化または抑制することができる。このように、ZFPに融合した調節ドメインを適当に選択することによって、標的遺伝子の発現、およびしたがって神経因性疼痛に相関する様々な生理的プロセスを選択的に調節することができる。
【0010】
神経因性疼痛に様々な程度に関係する分子標的をコードする遺伝子に結合する(およびその発現を調節する)ZFPを操作することによって、生理的プロセスの調節される程度を変化させることができ、それによって処置を調整することができる。このことは、所定の任意の遺伝子における多数の標的部位(例えば、9、12、または18塩基対標的部位)に、本明細書において提供されたZFPが作用しうることから得ることができる。このように、いくつかの方法において、複数のZFP(またはこれらのZFPを含む融合体)を投与する。次に、これらのZFPを、単一の標的遺伝子(例えば、VR1、TRKA、Nav1.8等)内に存在する異なる標的部位に結合させることができる。または、ZFPは、異なる遺伝子(例えば、2個またはそれ以上のVR1、TRKA、NAV1.8等)における標的部位に結合することができる。そのようなZFPは、場合によっては相乗作用を有しうる。特定の方法において、複数の融合タンパク質には、異なる調節ドメインが含まれる。
【0011】
同様に、本明細書に開示のZFPをコードするポリヌクレオチドおよび核酸が、本明細書において提供される。さらに、核酸および/またはZFPを含む組成物も同様に提供される。例えば、特定の組成物には、薬学的に許容される担体または希釈剤と配合した、細胞において核酸を発現させる調節配列に機能的に結合した本明細書に記述のZFPの一つをコードする核酸が含まれる。タンパク質に基づく組成物には、本明細書に開示のZFPおよび薬学的に許容される担体または希釈剤が含まれる。
【0012】
これらおよび他の態様は、本開示を考慮して当業者に容易に想起されるであろう。
【0013】
発明の詳細な説明
本明細書に開示の方法の実践、ならびに、特に明記していなければ、そこに開示されている組成物の調製および使用、そして分子生物学、生化学、染色質の構造および分析、コンピューター化学、細胞培養、組換えDNA、ならびに関連技術における通常の技術は、当業者の範囲内である。これらの技術は文献において十分に説明されている。例えば、Sambrook et al.「MOLECULAR CLONING : A LABORATORY MANUAL」, Second edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989 and Third edition, 2001;Ausubel et al., 「CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY」, John Wiley & Sons, New York, 1987および定期的改訂版;the series「METHODS IN ENZYMOLOGY」, Academic Press, San Diego;Wolffe,「CHROMATIN STRUCTURE AND FUNCTION」, Third edition, Academic Press, San Diego, 1998;「METHODS IN ENZYMOLOGY」, Vol. 304, 「Chromatin」(P.M. Wassarman and A.P. Wolffe, eds.), Academic Press, San Diego, 1999;および「METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY」, Vol. 119, 「Chromatin Protocols」(P.B. Becker, ed.)Humana Press, Totowa, 1999を参照されたい。
【0014】
I.定義
「ジンクフィンガータンパク質」または「ZFP」は、亜鉛によって安定化されるDNA結合ドメインを有するタンパク質を指す。個々のDNA結合ドメインは典型的に、「フィンガー」と呼ばれる。ZFPは、少なくとも一つのフィンガー、典型的に2個、3個、4個、5個、6個、またはそれ以上のフィンガーを有する。それぞれのフィンガーは、DNA塩基対2〜4個、典型的にDNA塩基対3〜4個に結合する。ZFPは標的部位または標的セグメントと呼ばれる核酸配列に結合する。それぞれのフィンガーは、典型的にアミノ酸約30個の、亜鉛とキレートを形成するDNA結合サブドメインを含む。これらのタンパク質の一つのクラス(C2H2クラス)を特徴とする例示的なモチーフは、-Cys-(X)2〜4-Cys-(X)12-His-(X)3〜5-His-(Xは任意のアミノ酸である)(SEQ ID NO:1)である。さらなるクラスのジンクフィンガータンパク質が公知であり、方法の実践において、ならびに本明細書に開示の組成物の製造および使用において有用である(例えば、Rhodes et al.(1993)Scientific American 268:56〜65;および米国特許出願公報第2003/0108880号を参照されたい)。このクラスの一つのジンクフィンガーは、一つのβターンのシステイン残基2個と共に亜鉛と配位結合した不変のヒスチジン残基2個を含むαヘリックスからなることが研究により証明されている(例えば、Berg & Shi, Science 271:1081〜1085(1996)を参照されたい)。
【0015】
「標的部位」は、ZFPによって認識される核酸配列である。一つの標的部位は典型的に、約4〜約10塩基対を有する。典型的にフィンガー2個を有するZFPは、4〜7塩基対の標的部位を認識し、フィンガー3個のZFPは、6〜10塩基対の標的部位を認識し、フィンガー4個のZFPは、12〜14 bpの標的配列を認識し、およびフィンガー6個のZFPは、隣接する9〜10塩基対の標的部位2個または隣接する6〜7 bpの標的部位3個を含みうる18〜20 bpの標的配列を認識する。
【0016】
「標的サブ部位」または「サブ部位」は、交叉鎖相互作用を除く、一つのジンクフィンガーによって結合されるDNA標的部位の一部である。このように、交叉鎖相互作用の非存在下では、サブ部位は一般的に長さが3ヌクレオチドである。交叉鎖が起こる場合(すなわち、「D-可能サブ部位」、同一出願人による国際公開公報第00/42219号を参照されたい)、サブ部位は、長さが4ヌクレオチドであり、もう一つの3または4ヌクレオチドサブ部位と重なり合う。
【0017】
「Kd」は、結合分子に関する解離定数、すなわち、所定のアッセイシステムを用いて測定した場合(例えば、米国特許第5,789,538号を参照されたい)に、所定の条件(すなわち、[標的]<<Kd)で化合物のその標的に対する半最大結合を生じる化合物(例えば、ジンクフィンガータンパク質)の濃度である。Kdを測定するために用いられるアッセイ系は、それがZFPの実際のKdの最も正確な測定を提供するように選択しなければならない。如何なるアッセイ系も、それがZFPの実際のKdの正確な測定を生じる限り、用いることができる。一つの態様において、ZFPのKdは、電気泳動移動度シフトアッセイ(「EMSA」)を用いて測定される。ZFPの純度または活性に関して補正を行わなければ、Kdの計算によって、所定のZFPに関する真のKdの過大評価が起こることがある。好ましくは、遺伝子の転写を調節するために用いられるZFPのKdは、約100 nM未満、より好ましくは約75 nM未満、より好ましくは約50 nM未満、最も好ましくは約25 nM未満である。
【0018】
本開示の目的に関する「遺伝子」には、遺伝子産物をコードするDNA領域のみならず、そのような調節配列がコード配列および/または転写された配列に隣接するか否かによらず、遺伝子産物の産生を調節する全てのDNA領域が含まれる。したがって、遺伝子には、プロモーター配列、ターミネーター、リボソーム結合部位および配列内リボソーム侵入部位のような翻訳調節配列、エンハンサー、サイレンサー、インスレーター、結合エレメント、複製開始点、マトリクス結合部位、および座制御領域が含まれるがそれらに限定されるわけではない。神経因性疼痛に関与する遺伝子には、VR1、TRKA、およびNav1.8が含まれるがそれらに限定されるわけではない。
【0019】
さらに、「遺伝子」という用語には、天然の遺伝子と実質的に同一である核酸が含まれる。二つまたはそれ以上の核酸またはポリペプチドの状況において、「同一」または「同一性」のパーセントという用語は、例えば下記のような配列比較アルゴリズムを用いて測定して、または肉眼的検分を用いて、最大の一致となるように比較および整列させた場合に、同じであるヌクレオチドまたはアミノ酸残基の同じまたは明記された百分率を有する二つまたはそれ以上の配列または部分配列を指す。
【0020】
二つの核酸またはポリペプチドの状況において、「実質的に同一である」という句は、少なくとも75%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、95%、またはそれ以上、またはヌクレオチドまたはアミノ酸残基同一性のそのあいだの任意の整数値を有する二つまたはそれ以上の配列または部分配列を指す。好ましくは実質的な同一性は、長さが少なくとも約10、好ましくは約20、より好ましくは約40〜60残基、またはそのあいだの任意の整数値、好ましくは60〜80残基より長い領域、より好ましくは少なくとも約90〜100残基である配列の領域に対して存在し、および最も好ましくは配列は、例えばヌクレオチド配列のコード領域のような、比較される配列の完全長に対して実質的に同一である。
【0021】
配列比較のために、典型的に一つの配列が参照配列として作用して、これに対して試験配列を比較する。配列比較アルゴリズムを用いる場合、試験および参照配列をコンピューターに入力して、必要であれば部分配列の座標を指定して、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。次に、配列比較アルゴリズムは、指定されたプログラムパラメータに基づいて、参照配列と比較した試験配列に関する%配列同一性を計算する。
【0022】
比較のための配列の最適なアラインメントを、例えばSmith & Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482(1981)の局所相同性アルゴリズムによって、Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443(1970)の相同性アラインメントアルゴリズムによって、Pearson & Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444(1988)の類似性法の検索によって、これらのアルゴリズム(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Compyter Group, 575 Science Dr., Madison, Wis.のGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)のコンピューターによる実行によって、または肉眼的検分によって[一般的に、supplement 46(April 1999)のような補則を含む、「Current Protocols in Molecular Biology」(Ausubel, F.M., et al., eds), John Wiley & Sons, Inc., New York(1987〜1999)を参照されたい]行うことができる。配列比較を行うためにこれらのプログラムを用いることは、それぞれのプログラムに対して特異的なデフォルトパラメータを用いて典型的に行われる。
【0023】
配列同一性のパーセントおよび配列類似性を決定するために適したアルゴリズムのもう一つの例は、BLASTアルゴリズムであり、これはAltschul et al., J. Mol. Biol. 215:403〜410(1990)において記述される。BLAST分析を行うソフトウェアは、米国生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)から公的に入手可能である。このアルゴリズムは、データベース配列における同じ長さのワードと共に整列させた場合にいくつかの陽性値閾値スコアTにマッチするまたはこれを満たす、クエリ配列における長さWの短いワードを同定することによって、ハイスコア配列対(high scoring sequence pairs、HSP)を最初に同定する段階を含む。これは近隣ワードスコア閾値と呼ばれる(Altschul et al, 前記)。これらの最初の近隣ワードヒットは、それらを含むより長いHSPを発見するための検索を開始するためのシードとして作用する。次に、累積アラインメントスコアが増加する限り、ワードヒットを各配列に沿って双方向に伸長させる。累積スコアは、ヌクレオチド配列に関して、パラメータM(マッチさせる残基の対に関するリワードスコア;常に>0)、およびN(ミスマッチ残基のペナルティスコア;常に<0)を用いて計算する。アミノ酸配列に関して、スコア行列を用いて累積スコアを計算する。各方向におけるワードヒットの伸長は以下の場合に停止する:累積アラインメントスコアがその最大値より量X低下した場合;一つもしくは複数の陰性スコア残基アラインメントの蓄積により、累積スコアがゼロもしくはそれ未満になった場合;またはいずれかの配列の末端に達した場合。配列類似性を決定する場合、BLASTプログラムのデフォルトパラメータが適している。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列)は、デフォルトとしてワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=-4、および双方の鎖の比較を用いる。アミノ酸配列の場合、BLASTPプログラムは、デフォルトとしてワード長(W)3、期待値(E)10、およびBLOSUM62スコア行列を用いる。TBLASTNプログラム(ヌクレオチド配列に関してタンパク質配列を用いる)は、デフォルトとしてワード長(W)3、期待値(E)10、およびBLOSUM62スコア行列を用いる。(Henikoff & Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915(1989)を参照されたい)。11171 配列同一性のパーセントを計算する他に、BLASTアルゴリズムはまた、二つの配列間の類似性に関する統計分析を行う(例えば、Karlin & Altschul, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 90:5873〜5787(1993)を参照されたい)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の一つの測定は、最小和確率(P(N))であり、これはそれによって二つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間のマッチが偶然に起こるであろう確率の指標を提供する。例えば、核酸は、参照核酸に対する試験核酸の比較における最小和確率が約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、および最も好ましくは約0.001未満である場合、参照配列と類似であると見なされる。
【0024】
二つの核酸配列が実質的に同一であるもう一つの指標は、二つの分子がストリンジェントな条件で互いにハイブリダイズすることである。「実質的にハイブリダイズする」とは、プローブ核酸と標的核酸とのあいだの相補的ハイブリダイゼーションを指し、標的ポリヌクレオチド配列の所望の検出を得るために、ハイブリダイゼーション培地のストリンジェンシーを低下させることによって適合させることができる軽微なミスマッチを含む。「特異的にハイブリダイズする」という句は、配列が複雑な混合物(例えば、総細胞)DNAまたはRNA中に存在する場合に、ストリンジェントな条件で特定のヌクレオチド配列に限って分子が結合する、二本鎖を形成する、またはハイブリダイズすることを指す。
【0025】
二つの核酸配列またはポリペプチドが実質的に同一であるさらなる指標は、第一の核酸によってコードされるポリペプチドが下記のように第二の核酸によってコードされるポリペプチドと免疫学的に交叉反応することである。
【0026】
特定のポリヌクレオチド配列の「保存的改変変種」は、同一または本質的に同一のアミノ酸配列をコードするそれらのポリヌクレオチド、またはポリヌクレオチドがアミノ酸配列をコードしない場合、本質的に同一の配列を指す。遺伝子コードの縮重のために、多数の機能的に同一の核酸が所定のポリペプチドをコードする。例えば、コドンCGU、CGC、CGA、CGG、AGA、およびAGGは全てアミノ酸アルギニンをコードする。このように、アルギニンがコドンによって明記されるあらゆる位置で、コドンは、コードされるポリペプチドを変化させることなく、記述される対応する任意のコドンに変化させることができる。そのような核酸変種は「サイレント変種」であり、これは「保存的改変変種」の一つの種である。ポリペプチドをコードする本明細書に記述のあらゆるポリヌクレオチド配列も同様に、特にそうでないことが明記されている場合を除き、あらゆる起こりうるサイレント変種を記述する。当業者は、核酸におけるそれぞれのコドン(メチオニンに関する通常、唯一のコドンであるAUGを除く)を、標準的な技術によって機能的に同一の分子を生じるように改変することができることを認識するであろう。したがって、ポリペプチドをコードする核酸のそれぞれの「サイレント変種」は、それぞれの記述される配列において必然的に含まれる。
【0027】
ポリペプチドは典型的に、例えば二つのペプチドが保存的置換に限って異なる場合、第二のポリペプチドと実質的に同一である。タンパク質を記述する場合、「保存的置換」は、タンパク質の活性を実質的に変化させないタンパク質のアミノ酸組成における変化を指す。このように、特定のアミノ酸配列の「保存的改変変種」は、タンパク質活性にとって重要ではないアミノ酸のアミノ酸置換、または重要なアミノ酸の置換が活性を実質的に変化させないように、類似の特性(例えば、酸、塩基、陽電荷または陰電荷、極性または非極性等)を有する他のアミノ酸とのアミノ酸の置換を指す。機能的に類似のアミノ酸を提供する保存的置換の表は、当技術分野で周知である。例えば、Creighton(1984)Proteins, W.H. Freeman and Companyを参照されたい。さらに、コードされる配列における単一のアミノ酸またはアミノ酸の小さい割合を変化、付加、または欠失させる個々の置換、欠失、または付加も同様に、「保存的改変変種」である。
【0028】
タンパク質、ポリペプチド、または核酸の「機能的断片」、または「機能的同等物」は、その配列が完全長のタンパク質、ポリペプチド、または核酸と同一ではないが、完全長のタンパク質、ポリペプチド、または核酸と同じ機能を保持しているタンパク質、ポリペプチド、または核酸である。機能的断片は、対応する天然の分子より多くの、より少ない、または同数の残基を有しうる、および/または一つまたは複数のアミノ酸またはヌクレオチド置換を含みうる。核酸の機能(例えば、コード機能、もう一つの核酸とのハイブリダイズ能力、調節分子との結合)を決定する方法は、当技術分野において周知である。同様に、タンパク質機能を決定する方法は周知である。例えば、ポリペプチドのDNA結合機能は、例えばフィルター結合、電気泳動移動度シフト、または免疫沈殿アッセイによって決定することができる。Ausubel et al.、前記を参照されたい。タンパク質のもう一つのタンパク質との相互作用能は、例えば免疫共沈殿、2-ハイブリッドアッセイ、または遺伝的および生化学的相補性によって決定することができる。例えば、Fields, et al.(1989)Nature 340:245〜246;米国特許第5,585,245号およびPCT国際公開公報第98/44350号を参照されたい。
【0029】
「核酸」、「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」という用語は、互換的に用いられ、一本鎖または二本鎖型のいずれかのデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマーを指す。本開示の目的に関して、これらの用語は、ポリマーの長さに関して制限的に解釈すべきではない。用語は、天然のヌクレオチドの公知の類似体、ならびに、塩基、糖、および/またはリン酸塩部分が改変されたヌクレオチドを含みうる。一般的に、特定のヌクレオチドの類似体は同じ塩基対形成特異性を有する、すなわちAの類似体はTと塩基対を形成するであろう。このように、ポリヌクレオチド配列という用語は、ポリヌクレオチド分子のアルファベットによる表示である。このアルファベットによる表示を、中央演算処理装置を有するコンピューターにおいてデータベースに入力して、機能的ゲノミクスおよび相同性検索のようなバイオインフォマティクス応用のために用いることができる。この用語はさらに、参照核酸と類似の結合特性を有し、参照ヌクレオチドと類似の方法で代謝される、合成、天然、または非天然である公知のヌクレオチド類似体または改変骨格残基もしくは結合を含む核酸を含む。そのような類似体の例には、ホスホロチオエート、ホスホロアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2-O-メチルリボヌクレオチドおよびペプチド核酸(PNA)が含まれるがそれらに限定されるわけではない。ヌクレオチド配列は、本明細書において通常の5'−3'方向に示される。
【0030】
「染色質」は、細胞ゲノムを含む核タンパク質構造である。「細胞染色質」は、核酸、主にDNA、ならびにヒストンおよび非ヒストン染色体タンパク質を含むタンパク質を含む。真核細胞の細胞染色質の大部分はヌクレオソームの形で存在し、ヌクレオソームのコアは、ヒストンH2A、H2B、H3およびH4をそれぞれ2個ずつ含む8量体に会合したDNA約150塩基対を含み;リンカーDNA(生物に応じて可変の長さを有する)は、ヌクレオソームのコアのあいだに伸長する。ヒストンH1分子は一般的に、リンカーDNAに会合する。本開示の目的に関して、「染色質」という用語は、原核細胞および真核細胞の全てのタイプの細胞核タンパク質を含むという意味である。細胞染色質には染色体性およびエピソーム性両方の染色質が含まれる。
【0031】
「染色体」は、細胞のゲノムの全てまたは一部を含む染色質の複合体である。細胞のゲノムはしばしば、その核型を特徴とし、これは細胞のゲノムを含む全ての染色体のコレクションである。細胞のゲノムは一つまたは複数の染色体を含みうる。
【0032】
「エピソーム」は、複製核酸、核タンパク質複合体、または細胞の染色体核型の一部ではない核酸を含む他の構造である。エピソームの例には、プラスミドおよび特定のウイルスゲノムが含まれる。
【0033】
「外因性分子」は、細胞に通常存在しないが、一つまたは複数の遺伝的、生化学的、または他の方法によって細胞に導入することができる分子である。細胞に通常存在するか否かは、特定の発達段階および環境状態に関して決定される。このように、例えば筋肉の胚発達の際に限って存在する分子は、成体の筋細胞に関して外因性の分子である。外因性の分子は、例えば機能障害性の内因性の分子の機能型、または正常に機能する内因性の分子の機能障害型を含みうる。
【0034】
外因性の分子は、中でもコンビナトリアルケミストリープロセスによって生成されるような低分子、またはタンパク質、核酸、糖質、脂質、糖タンパク質、リポタンパク質、多糖類、前記の分子の任意の改変誘導体、もしくは前記の分子の一つもしくは複数のを含む任意の複合体のような高分子となりうる。核酸には、DNAおよびRNAが含まれ、これらは一本鎖または二本鎖となりうる;直鎖、分岐鎖、または環状となりうる;および任意の長さとなりうる。核酸には、二本鎖を形成することができる核酸のみならず、三本鎖形成核酸が含まれる。例えば米国特許第5,176,996号および第5,422,251号を参照されたい。タンパク質には、DNA結合タンパク質、転写因子、染色質再構築因子、メチル化DNA結合タンパク質、ポリメラーゼ、メチラーゼ、デメチラーゼ、アセチラーゼ、デアセチラーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、インテグラーゼ、リコンビナーゼ、リガーゼ、トポイソメラーゼ、ジャイレース、およびヘリカーゼが含まれるがそれらに限定されるわけではない。
【0035】
外因性の分子は、それが内因性の分子とは異なる配列を有する限り、内因性の分子と同じタイプの分子、例えばタンパク質または核酸(すなわち、外因性の遺伝子)となりうる。外因性の分子を細胞に導入する方法は当業者に公知であり、これには脂質媒介移入(すなわち、中性および陽イオン脂質を含むリポソーム)、電気穿孔、直接注入、細胞融合、粒子衝突、リン酸カルシウム共沈殿、DEAEデキストラン媒介移入およびウイルスベクター媒介移入が含まれるがそれらに限定されるわけではない。
【0036】
対照的に、「内因性分子」は、特定の環境条件で特定の発達段階の特定の細胞に通常存在する分子である。
【0037】
「内因性の遺伝子」は、その通常のゲノムおよび染色質の状況において存在する遺伝子である。内因性の遺伝子は、例えば染色体、エピソーム、細菌ゲノム、またはウイルスゲノムに存在しうる。
【0038】
「転写開始部位に隣接する」という句は、転写開始部位の上流または下流のいずれかの約50塩基内に存在する標的部位を指す。転写開始部位の「上流」は、転写開始部位(すなわち、遺伝子の非転写領域)の5'の約50より多い塩基である標的部位を指す。転写開始部位の「下流」は、転写開始部位の3'の約50より多い塩基である標的部位を指す。
【0039】
「融合分子」は、二つまたはそれ以上のサブユニット分子が結合、典型的に共有結合している分子である。サブユニット分子は、同じ化学タイプの分子となりうる、または異なる化学タイプの分子となりうる。第一のタイプの融合分子の例には、融合ポリペプチド(例えば、ZFP DNA結合ドメインと転写活性化ドメインとの融合体)および融合核酸(例えば、前記の融合ポリペプチドをコードする核酸)が含まれるがそれらに限定されるわけではない。第二のタイプの融合分子の例には、三本鎖形成核酸とポリペプチドとの融合体、副溝結合体と核酸との融合体が含まれるがそれらに限定されるわけではない。
【0040】
「遺伝子発現」は、遺伝子に含まれる情報の遺伝子産物への変換を指す。遺伝子産物は、遺伝子の直接の転写産物(例えば、mRNA、tRNA、rRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、構造RNA、または任意の他のタイプのRNA)となりうる、またはmRNAの翻訳によって産生されたタンパク質となりうる。遺伝子産物にはまた、キャッピング、ポリアデニル化、メチル化、およびエディティングのようなプロセスによって改変されたRNA、ならびに例えばメチル化、アセチル化、リン酸化、ユビキチン化、ADP-リボシル化、ミリスチル化、およびグリコシル化によって改変されたタンパク質が含まれる。
【0041】
「遺伝子の活性化」は、遺伝子産物の産生の増加が起こる任意のプロセスを指す。遺伝子産物は、RNA(mRNA、rRNA、tRNA、および構造RNAが含まれるがそれらに限定されるわけではない)、またはタンパク質となりうる。したがって、遺伝子の活性化には、遺伝子の転写および/またはmRNAの翻訳を増加させるプロセスが含まれる。転写を増加させる遺伝子活性化プロセスの例には、転写開始複合体の形成を促進するプロセス、転写開始速度を増加させるプロセス、転写伸長速度を増加させるプロセス、転写のプロセシビティ(processivity)を増加させるプロセス、および転写抑制を軽減するプロセス(例えば、転写リプレッサーの結合を阻害することによって)が含まれるがそれらに限定されるわけではない。遺伝子の活性化は、例えば既存のレベルを超える発現の刺激と共に、抑制の阻害を構成しうる。翻訳を増加させる遺伝子活性化プロセスの例には、翻訳の開始を増加させるプロセス、翻訳の伸長を増加させるプロセス、およびmRNAの安定性を増加させるプロセスが含まれる。一般的に、遺伝子の活性化は、遺伝子産物の産生における任意の検出可能な増加を含み、場合によっては遺伝子産物の産生の約2倍の増加、他の場合においては約2倍〜約5倍またはそのあいだの任意の整数倍の増加、さらに他の状況において約5〜約10倍またはそのあいだの任意の整数倍、さらに他の状況において約10〜約20倍またはそのあいだの任意の整数倍、時に約20〜約50倍またはそのあいだの任意の整数倍、他の状況において約50〜約100倍またはそのあいだの任意の整数倍、およびさらに他の状況において100倍またはそれ以上の増加を含む。
【0042】
「遺伝子抑制」および「遺伝子発現の阻害」は、それによって遺伝子産物の産生の減少が起こる任意のプロセスを指す。遺伝子産物はRNA(mRNA、rRNA、tRNA、および構造RNAが含まれるがそれらに限定されるわけではない)、またはタンパク質となりうる。したがって、遺伝子発現には、遺伝子の転写および/またはmRNAの翻訳を減少させるプロセスが含まれる。転写を減少させる遺伝子抑制プロセスの例には、転写開始複合体の形成を阻害するプロセス、転写開始速度を減少させるプロセス、転写伸長速度を減少させるプロセス、転写のプロセシビティを減少させるプロセス、および転写の活性化に拮抗するプロセス(例えば、転写活性化因子の結合を阻害することによって)が含まれるがそれらに限定されるわけではない。遺伝子の抑制は、例えば活性化の防止のみならず、既存のレベルより低い発現の阻害を構成しうる。翻訳を減少させる遺伝子抑制プロセスの例には、翻訳の開始を減少させるプロセス、翻訳の伸長を減少させるプロセス、およびmRNAの安定性を減少させるプロセスが含まれる。転写の抑制には、遺伝子転写の可逆的および非可逆的不活化の双方が含まれる。一般的に、遺伝子抑制は、遺伝子産物の任意の検出可能な減少を含み、場合によっては遺伝子産物の産生の約2倍の減少、他の場合においては約2倍〜約5倍またはそのあいだの任意の整数倍、さらに他の状況において約5〜約10倍またはそのあいだの任意の整数倍、なおさらに他の状況において約10〜約20倍またはそのあいだの任意の整数倍、時に約20〜約50倍またはそのあいだの任意の整数倍、他の状況において約50〜約100倍またはそのあいだの任意の整数倍、さらに他の状況において100倍またはそれ以上の減少を含む。さらに他の状況において、遺伝子抑制によって遺伝子産物が検出されなくなるまで遺伝子発現の完全な阻害が起こる。
【0043】
「調節」は、活性またはプロセスのレベルまたは程度の変化を指す。変化は増加または減少のいずれかとなりうる。例えば、遺伝子発現の調節には、遺伝子の活性化と遺伝子の抑制の双方が含まれる。調節は、標的遺伝子(例えば、VR1、TRKA、Nav1.8)の発現によって間接的または直接影響を受ける任意のパラメータを決定することによってアッセイすることができる。そのようなパラメータには、例えばRNAまたはタンパク質レベルの変化、タンパク質活性の変化、産物レベルの変化、下流の遺伝子発現の変化、レポーター遺伝子(ルシフェラーゼ、CAT、βガラクトシダーゼ、βグルクロニダーゼ、緑色蛍光タンパク質(例えば、Mistili & Spector, Nature Biotechnology 15:961〜964(1997)を参照されたい))の転写の変化;シグナル伝達、リン酸化および脱リン酸化、受容体-リガンド相互作用、二次情報伝達物質濃度(例えば、cGMP、cAMP、IP3、およびCa2+)、細胞増殖、ならびに血管形成の変化が含まれる。これらのアッセイは、インビトロ、インビボ、およびエクスビボとなりうる。そのような機能的作用は、当業者に公知の任意の手段、例えばRNAまたはタンパク質レベルの測定、RNA安定性の測定、例えば化学発光、蛍光、比色反応、抗体結合、誘導マーカー、リガンド結合アッセイによる下流のまたはレポーター遺伝子発現の同定、cGMPおよびイノシトール三リン酸(IP3)のような細胞内二次情報伝達物質の変化;細胞内カルシウムレベルの変化;サイトカイン放出等によって測定することができる。
【0044】
「調節ドメイン」または「機能的ドメイン」は、DNA結合ドメイン、すなわちZFPに結合した場合に転写調節活性を有するタンパク質またはタンパク質ドメインを指す。典型的に、調節ドメインは、ZFPに共有結合または非共有結合して(例えば、融合体分子を形成して)、転写の調節を行う。調節ドメインは、活性化ドメインまたは抑制ドメインとなりうる。活性化ドメインには、核因子κ-BのVP16、VP64、およびp65サブユニットが含まれるがそれらに限定されるわけではない。抑制ドメインには、KRAB、KOX、MBD2Bおよびv-ErbAが含まれるがそれらに限定されるわけではない。さらなる調節ドメインには、例えば、転写因子および共因子(例えば、MAD、ERD、SID、初期増殖反応因子1、および核ホルモン受容体)、エンドヌクレアーゼ、インテグラーゼ、リコンビナーゼ、メチルトランスフェラーゼ、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ、ヒストンデアセチラーゼ等が含まれる。アクチベータおよびリプレッサーには、コアクチベータおよびコリプレッサーが含まれる(例えば、Utley et al., Nature 394:498〜502(1998)を参照されたい)。または、ZFPは、調節ドメインがなくとも単独で作用して、転写の調節を行うことができる。
【0045】
「機能的に結合した」または「実行可能に結合した」という用語は、双方の成分が通常に機能して、成分の少なくとも一つが少なくとも一つの他の成分に対して発揮される機能を媒介することができる可能性を許容するように、成分が整列している二つまたはそれ以上の成分(配列エレメントのような)の近位を参照して用いられる。説明すると、プロモーターのような転写調節配列は、転写調節配列が一つまたは複数の転写調節因子の存在または非存在に反応してコード配列の転写レベルを制御する場合、コード配列に対して実行可能に結合している。実行可能に結合した転写調節配列は一般的に、コード配列に対してシスで結合するが、必ずしもそれに直接隣接する必要はない。例えば、エンハンサーは、それらが隣接していない場合であっても、コード配列に実行可能に結合した転写調節配列を構成しうる。
【0046】
融合ポリペプチドに関して、「機能的に結合した」または「実行可能に結合した」という用語は、成分のそれぞれが、他の成分と結合しても、そのように結合していない場合と同じ機能を発揮するという事実を指しうる。例えば、ZFP DNA結合ドメインが転写活性化ドメイン(またはその機能的断片)に融合している融合ポリペプチドに関して、ZFP DNA結合ドメインおよび転写活性化ドメイン(またはその機能的断片)は、融合ポリペプチドにおいて、ZFP DNA結合ドメイン部分がその標的部位および/またはその結合部位に結合することができるが、転写活性化ドメイン(またはその機能的断片)が転写を活性化することができれば、実行可能に結合している。
【0047】
細胞を参照して用いる場合の「組換え型」という用語は、細胞が、外因性の核酸を複製する、または外因性の核酸によってコードされるペプチドまたはタンパク質を発現することを示している。組換え型細胞は、細胞の天然型(非組換え型)には存在しない遺伝子を含みうる。組換え型細胞はまた、遺伝子が改変されて、人工的手段によって細胞に再導入される、細胞の天然型において認められる遺伝子も含みうる。この用語はまた、細胞から核酸を除去することなく改変されている、細胞に対して内因性の核酸を含む細胞を含む;そのような改変には、遺伝子置換、部位特異的変異誘発、および関連技術によって得られた改変が含まれる。
【0048】
「組換え発現カセット」、「発現カセット」、または「発現構築物」は、そのような配列と適合性の宿主において制御エレメントに実行可能に結合した構造遺伝子の発現を行うことができる制御エレメントを有する、組換えまたは合成によって産生された核酸構築物である。発現カセットには、少なくともプロモーター、および任意で転写終了シグナルが含まれる。典型的に、組換え発現カセットには、少なくとも転写されるべき核酸(例えば、所望のポリペプチドをコードする核酸)およびプロモーターが含まれる。発現を行うために必要または有用なさらなる要因を、本明細書に記述のように用いることができる。例えば、発現カセットには、発現されたタンパク質の宿主細胞からの分泌を指示するシグナル配列をコードするヌクレオチド配列が含まれうる。転写終了シグナル、エンハンサー、および遺伝子発現に影響を及ぼす他の核酸配列も同様に、発現カセットに含まれうる。
【0049】
「プロモーター」は、転写を指示する核酸制御配列のアレイとして定義される。本明細書において用いられるように、プロモーターは典型的に、特定のRNAポリメラーゼII型プロモーター、TATAエレメント、CCAATボックス、SP-1部位等の場合のような、転写の開始部位近傍に必要な核酸配列を含む。本明細書において用いられるように、プロモーターにはまた、転写開始部位から数千塩基対も離れた位置に存在しうる遠位エンハンサーまたはリプレッサーエレメントが含まれる。プロモーターはしばしば、ポリペプチドのようなDNA結合部分によるトランス活性化に反応するエレメント、例えば核受容体、Gal4、lacリプレッサー等を有する。
【0050】
「構成的」プロモーターは、ほとんどの環境的および発達条件で活性であるプロモーターである。「誘導型」プロモーターは、特定の環境および発達条件で活性であるプロモーターである。
【0051】
「弱いプロモーター」は、Eisenberg & McKnight, Mol. Cell. Biol. 5:1940〜1947(1985)に記述されているように、野生型単純ヘルペスウイルス(「HSV」)チミジンキナーゼ(「tk」)プロモーターまたは変異型HSV tkプロモーターとほぼ同じ活性を有するプロモーターを指す。
【0052】
「発現ベクター」は、宿主細胞における特定の核酸の転写、および任意で宿主細胞における発現ベクターの組み込みまたは複製を許容する明記された一連の核酸エレメントを有する、組換えまたは合成によって産生された核酸構築物である。発現ベクターは、ウイルス起源または非ウイルス起源のプラスミド、ウイルス、または核酸断片の一部となりうる。典型的に、発現ベクターには、プロモーターに機能的に結合した、転写されるべき核酸を含む「発現カセット」が含まれる。発現ベクターという用語はまた、プロモーターに機能的に結合した裸のDNAを含む。
【0053】
「宿主細胞」とは、そのいずれかが任意でZFPまたはZFP融合タンパク質をコードする発現ベクターまたは核酸を含む細胞を意味する。宿主細胞は典型的に、発現ベクターの複製または発現を支持する。宿主細胞は、例えば、大腸菌のような原核細胞であってもよく、または酵母、真菌、原虫、高等植物、昆虫、もしくは両生類細胞、もしくはCHO、HeLa、293、COS-1等のような哺乳動物細胞、例えば培養細胞(インビトロ)、外植体、および初代培養(インビトロおよびエクスビボ)、ならびにインビボでの細胞であってもよい。
【0054】
物体に対して適用される「天然に存在する」という用語は、ヒトによって人工的に産生されたものとは異なり、物体が天然において認められうることを意味する。
【0055】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は本明細書において互換的に用いられ、アミノ酸残基のポリマーを指す。この用語は、一つまたは複数のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の類似体または模倣体であるアミノ酸ポリマーのみならず、天然に存在するアミノ酸ポリマーにも当てはまる。ポリペプチドは、例えば糖質残基を付加して糖タンパク質を形成することによって改変することができる。「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語には、糖タンパク質ならびに非糖タンパク質が含まれる。ポリペプチド配列は、本明細書において通常のN末端からC末端方向で示される。
【0056】
核酸またはポリペプチドを参照して用いられる場合の「部分配列」または「セグメント」は、それぞれ、ヌクレオチドまたはアミノ酸(例えば、ポリペプチド)のより長い配列の一部を含むヌクレオチドまたはアミノ酸の配列を指す。
【0057】
本明細書において用いられるように「処置する」または「処置」という用語は、症状の重症度および/または頻度の減少、症状および/または基礎となる原因の消失、症状の発生およびその基礎となる原因の予防、ならびに損傷の改善または矯正を指す。
【0058】
薬学的組成物の「有効」量(または「治療的有効」量)とは、所望の作用を提供するための物質の十分な、しかし非毒性量を意味する。この用語は、被験者を処置するために十分な量を指す。このように、治療量という用語は、疾患または他の望ましくない症状の進行を予防、妨害、遅延、または逆転することによって、疾患状態または症状を救済するために十分な量を指す。予防的有効量という用語は、疾患をまだ有しない被験者に投与される量を指し、このように疾患の発症を予防、妨害、または遅延するために有効な量である。
【0059】
II.概要
神経因性疼痛を有する被験者において過剰発現または過小発現している標的遺伝子の発現を調節するための多様な組成物および方法が、本明細書において提供される。例えば、神経の興奮に関与する一つまたは複数の標的遺伝子の発現を調節することができ、それによって慢性疼痛を調節するジンクフィンガータンパク質が提供される。細胞、または生物のような細胞集団に、例えば神経興奮および疼痛に関与する標的遺伝子における特異的配列に結合する一つまたは複数のジンクフィンガータンパク質(ZFP)を接触させることによって神経因性疼痛を処置する方法も、同様に記述される。特定の方法において、一つのZFPが投与され、単一の標的遺伝子における標的部位に結合することができる。他の方法は、単一の標的遺伝子または多数の標的遺伝子における多数の標的部位に結合する複数の異なるZFPを投与することを含む。
【0060】
このように、神経因性疼痛に関与する遺伝子における特定の核酸セグメント(標的部位)を特異的に認識して結合するように、これらの遺伝子の発現を調節してそれによって疼痛を処置するように、操作された多様なジンクフィンガータンパク質も同様に本明細書において提供される。一つの態様において、ZFPを調節ドメインに結合させて、キメラ転写因子を作製し、疼痛に関与する一つまたは複数の遺伝子の転写を活性化または抑制する。
【0061】
そのようなZFPによって、標的遺伝子の発現を増強することができる;特定の他のZFPによって発現を抑制することができる。標的部位は、転写開始部位(ヌクレオチド+1として定義される)に隣接する、上流、および/または下流となりうる。先に示したように、一つまたは複数のZFPを用いて一つまたは複数の標的遺伝子の発現を調節することができる。このように、利用する特定のZFPに応じて、一つまたは複数の遺伝子の発現されるレベルを調節することができる。
【0062】
例示的な標的遺伝子には、VR1、TrkA、およびNav1.8遺伝子が含まれる。カプサイシンおよびバニロイド受容体(VR1)は、後根神経節(DRG)の小さい神経線維に限って存在する。これは、しばしば組織損傷に関連する侵害性の熱、脂質、および低いpHによって活性化される。これは、他の侵害受容器(その活性は神経生長因子(NGF)およびブラジキニンによって高められる)に密接に関連することが判明しており、したがって様々な疼痛誘導刺激の積分器として見なされる。VR-/-マウスは、侵害受容が障害されていることを除き、生存して通常の感覚を有し、同腹子とほぼ見分けがつかない。
【0063】
チロシンキナーゼ受容体A(TrkA)は、NGFの受容体であり、これは侵害受容閾値の重要な調節物質である。TrkA発現は、主に侵害受容に関係するニューロン亜集団に限定される。これは、熱過敏症を促進するためにDRGにおける一次知覚神経終末において機能する。TrkAはいずれもVR1機能を促進して、その自身の機能にとってもVR1が必要である。TrkAを欠損する成体マウスは、侵害受容の障害を示す。
【0064】
テトロドトキシン耐性ナトリウムチャンネル(PN3としても知られるNaV1.8、SNS、およびSCN10a)は、DRGにおける末梢の直径の小さい知覚ニューロンに限定され、脊髄に侵害受容情報を伝搬するために独自の役割を有すると考えられている。その発現はまた、NGFおよびTrkAによっても影響を受ける。NaV1.8-/-マウスは見かけは正常であるが、熱受容、および炎症痛の発生に欠損を示し、侵害機械刺激に対するその行動学的反応は、完全に消失しているように思われる。
【0065】
ZFPが標的部位に結合できること、および神経興奮に関与する遺伝子の発現に影響を及ぼすことができることから、本明細書において提供したZFPは、広範な神経因性疼痛を処置するために用いることができる。例えば、VR1、TRKAおよび/またはNav1.8発現の抑制は、本明細書に記述のZFPを用いて行うことができ、それによって神経因性疼痛を改善または消失させることができる。このように、特定の応用において、ZFPは、インビトロおよびインビボの双方において神経因性疼痛を有する被験者において過剰発現される遺伝子の発現を抑制するために用いることができる。そのような抑制は、例えば慢性疼痛の処置として利用することができる。
【0066】
その発現によって、慢性疼痛の減少が起こるさらなる遺伝子には、例えばダイノルフィン、NT3、およびCCK-bが含まれる。逆に、BDNF、NGF、およびGDNF遺伝子の発現の活性化も同様に、疼痛減少のために用いることができる。Sah et al(2003)Nat. Rev. Drug Disc. 2:460〜472。遺伝子発現の活性化および抑制は、当技術分野で公知の任意の方法(例えば、アンチセンス、siRNA)によって行うことができる。遺伝子発現を調節するための好ましい方法は、転写調節ドメインを含む操作されたジンクフィンガータンパク質を利用することに関する。
【0067】
さらに、例えばVR1、TrkA、およびNav1.8のような疼痛知覚に関与する遺伝子の不活化を、神経因性疼痛の処置のために用いることができる。これらの態様において、操作されたジンクフィンガードメインと切断ドメイン(または切断ハーフドメイン)とを含む融合タンパク質を、神経因性疼痛に関与する内因性の遺伝子におけるDNA配列の標的化切断のために用いる。標的化切断によって、非相同末端結合による切断遺伝子への変異のその後の導入が起こりうる;または一つもしくは複数の配列を、標的化切断の後、相同的組換えによって遺伝子に挿入することができる。標的化切断および組換えに関するさらなる詳細に関しては、米国特許出願公報第2003/0232410号、第2005/0026157号、第2005/0064474号、および国際公開公報第03/87341号を参照されたい。
【0068】
転写の標的化調節および標的化DNA切断のための組成物および方法が本明細書において開示され、これは例えば神経因性疼痛の処置において有用である。これらには、操作されたジンクフィンガータンパク質と、例えば転写抑制ドメイン、転写活性化ドメイン、ヌクレアーゼドメイン、またはヌクレアーゼハーフドメインのような機能的ドメインとを含む融合タンパク質が含まれる。適した機能的ドメインが当技術分野において公知であり、これには例えばVP16、VP64、およびp65のような転写活性化ドメイン;例えばKOXおよびv-erbAのような転写抑制ドメイン;例えばHOのような切断ドメイン、および例えばFokIの切断ドメインのような切断ハーフドメインが含まれるがそれらに限定されるわけではない。同じまたは異なる機能的ドメインの一つまたは複数が所定の融合タンパク質に存在しうる。例示的な転写活性化および抑制ドメインの開示に関して、参照として本明細書に組み入れられる、同一出願人による米国特許出願公報第2002/0160940号を参照されたい。参照として本明細書に組み入れられる同一出願人による米国特許出願公報第2005/0064474号は、例示的な切断ドメインおよび切断ハーフドメインを開示する。
【0069】
III.遺伝子発現を調節するためのジンクフィンガータンパク質
A.全般
本明細書に開示のジンクフィンガータンパク質は、DNAに対して配列特異的に結合することができるタンパク質である。先に示したように、これらのZFPは、インビボまたはインビトロで標的遺伝子(例えば、神経興奮に関与する遺伝子)の発現を調節するために用いることができ、そうすることによって慢性疼痛を処置することができる。これらのタンパク質の一つのクラス、C2H2クラスの特徴を示す例示的なモチーフは、-Cys-(X)2-4-Cys-(X)12-His-(X)3-5-His(式中、Xは任意のアミノ酸である)(SEQ ID NO:1)である。いくつかの構造研究から、フィンガードメインが不変のヒスチジン残基2個を含むαヘリックス、および亜鉛を通して配位結合したβターンにおいて不変のシステイン残基2個を含むことが証明された。しかし、本明細書において提供したZFPは、この特定のクラスに限定されない。ジンクフィンガータンパク質のさらなるクラスが公知であり、本明細書に開示の方法および組成物において同様に用いることができる。例えば、Rhodes, et al.,(1993)Scientific American 268:56〜65および米国特許出願公報第2003/0108880号を参照されたい。特定のZFPにおいて、単一のフィンガードメインは、長さがアミノ酸約30個である。ジンクフィンガードメインは、DNA認識に関与するのみならず、RNA結合およびタンパク質-タンパク質結合にも関与する。
【0070】
マウス転写因子の3フィンガードメインであるZif268のx線結晶構造は、同源のDNA配列との複合体において解明されており、それぞれのフィンガーを、周期的なローテーションによって次のフィンガーに重なり合わせることができることを示している。この構造は、それぞれのフィンガーが3塩基対の間隔で独立してDNAと相互作用して、それぞれの認識ヘリックスにおける-1、+2、+3、および+6位での側鎖はそのそれぞれのDNAトリプレットサブ部位と相互作用することを示唆している。番号は、ジンクフィンガーのヘリックス位置の最初に関してつけられ、この番号付けスキームでは、ジンクフィンガーの第一(または最もアミノ末端)の保存されたヒスチジン残基が+7と指定される。Zif268のアミノ末端は、それが最も接触するDNA鎖の3'末端に存在する。いくつかのジンクフィンガーは、標的セグメントにおいて第四の塩基に結合することができる。ジンクフィンガータンパク質が最も接触する鎖を標的鎖と命名するならば、いくつかのジンクフィンガータンパク質は、標的鎖における三塩基トリプレットおよび非標的鎖における第四の塩基に結合する。第四の塩基は、三つの塩基サブ部位のすぐ3'側にある塩基と相補的である。
【0071】
B.例示的なZFP
神経因性疼痛に関与する遺伝子における特定の標的部位に結合するZFPを、本明細書において開示する。標的部位は転写開始部位(ヌクレオチド+1として定義される)の上流または下流に存在しうる。標的部位には、例えば9ヌクレオチド、12ヌクレオチド、または18ヌクレオチドが含まれうる。
【0072】
標的部位は、転写開始部位に隣接して存在しうる、または転写開始部位の有意に上流または下流に存在しうる。特定の態様において、単一の標的部位はZFPによって認識される。他の状況において、それぞれが単一の遺伝子(例えば、VR1、TRKA、またはNAV1.8)または多数の遺伝子において異なる標的を認識する多数のZFPを用いることができる。
【0073】
これらの標的部位に結合するZFPには、典型的に少なくとも一つのジンクフィンガーが含まれるが、複数のジンクフィンガー(例えば、2、3、4、5、6個、またはそれ以上のフィンガー)も含まれうる。特定のZFPはフィンガー4または6個を含む。フィンガー3個を含むZFPは、典型的に9または10ヌクレオチドを含む標的部位を認識する;4フィンガーZFPは、12〜14ヌクレオチド標的部位を認識する、およびフィンガー6個を有するZFPは18〜21ヌクレオチドを含む標的部位を認識することができる。ZFPはまた、そのドメインが転写活性化または抑制ドメインとなりうる、一つまたは複数の調節ドメインを含む融合タンパク質となりうる。
【0074】
VR1、Trk-A、またはNaV1.8遺伝子における標的部位に結合する例示的なジンクフィンガータンパク質を、実施例および表2、3、4、5、および7においてより詳細に記述する。
【0075】
表1は、VR1、Trk-AおよびNaV1.8遺伝子に結合する例示的なジンクフィンガータンパク質の標的部位のヌクレオチド配列、および転写開始部位と比較したそれぞれの標的部位の位置を示す。ヒトNaV1.8遺伝子の場合、転写開始部位は、ラットおよびイヌにおける対応する遺伝子との相同性に基づいて推定された。負の数は、転写開始部位の上流のbpを指し、正の数は転写開始部位の下流のbpを指し、転写開始部位はヌクレオチド+1として定義される。小文字で示したヌクレオチドは、ジンクフィンガーと接触していないヌクレオチドを表す。これらの場合、ジンクフィンガータンパク質は、スキップしたヌクレオチドのいずれかの側でDNAに結合するフィンガーのあいだの長い非標準型のリンカーによって設計された。例えば米国特許第6,479,626号および国際公開公報第01/53480号を参照されたい。標的部位に関して調べた遺伝子には、ラットVR1(GenBankアクセッション番号NW_047336)、ラットTRK-A(GenBankアクセッション番号NW_047626)、ヒトTrkA(GenBankアクセッション番号NT_079484)、およびヒトNAV1.8(GenBankアクセッション番号NT_022517)が含まれる。
【0076】
(表1)

【0077】
表2は、ラットVR1における標的配列に結合するように設計された様々なジンクフィンガータンパク質のそれぞれのフィンガー(F1からF6)の認識領域に含まれるアミノ酸配列を示す。示したアミノ酸配列は、ジンクフィンガーのヘリックス部分における第一のアミノ酸残基から番号をつけた場合の残基-1〜+6位を示す。
【0078】
(表2)

【0079】
表3は、ラットTrk-Aにおける標的配列に結合するように設計されたジンクフィンガータンパク質のそれぞれのフィンガー(F1からF6)の認識領域に含まれるアミノ酸配列を示す。示したアミノ酸配列は、ジンクフィンガーのヘリックス部分における第一のアミノ酸残基から番号をつけた場合の残基-1〜+6位を示す。
【0080】
(表3)

【0081】
表4は、ヒトNaV1.8における標的配列に結合するように設計されたジンクフィンガータンパク質のそれぞれのフィンガー(F1からF6)の認識領域に含まれるアミノ酸配列を示す。示したアミノ酸配列は、ジンクフィンガーのヘリックス部分における第一のアミノ酸残基から番号をつけた場合の残基-1〜+6位を示す。
【0082】
(表4)

【0083】
表5は、ヒトTrkA遺伝子における標的配列に結合するように設計された様々なジンクフィンガータンパク質のそれぞれのフィンガー(F1からF6)の認識領域に含まれるアミノ酸配列を示す。示したアミノ酸配列は、ジンクフィンガーのヘリックス部分における第一のアミノ酸残基から番号をつけた場合の残基-1〜+6位を示す。
【0084】
(表5)

【0085】
先に示したように、標的部位は如何なる長さであってもよいが、好ましくは長さが9〜10、12〜14、または18〜21ヌクレオチドである。
【0086】
このように、本明細書において示したように、本明細書において記述した一つまたは複数のZFPは、神経因性疼痛に関与する一つまたは複数の遺伝子の発現を調節するために利用することができ、そうすることによってこの疼痛を処置することができる。様々なZFPおよび/またはその組み合わせを賢明に選択することによって、標的化遺伝子調節を行うことができ、したがって神経因性疼痛の処置を調整することができる。
【0087】
C.PN3遺伝子にターゲティングされるジンクフィンガータンパク質
本明細書に開示の疼痛治療および鎮痛のための方法は、中でも、被験者の一つまたは複数の細胞において、PN3遺伝子における標的配列に結合して、その転写を抑制する融合タンパク質を発現させることによって、PN3(NaV1.8としても知られる)をコードする内因性の細胞遺伝子の発現の調節を含む。そのような融合タンパク質は、タンパク質をコードする核酸(DNAまたはRNA)を細胞に導入することによって、またはタンパク質を直接細胞に導入することによって、細胞において発現させることができる。核酸および/またはタンパク質はまた、核酸またはタンパク質が被験者の一つまたは複数の細胞に入るように、被験者に投与することができる(下記を参照されたい)。さらに、核酸および/またはタンパク質を、エクスビボで、被験者から単離された細胞に導入することができ、核酸および/またはタンパク質を導入して任意でインキュベートした後、該細胞を被験者に戻すことができる。
【0088】
特定の態様において、前記の融合タンパク質は、DNA結合ドメインおよび機能的ドメイン(例えば、転写活性化ドメインまたは転写抑制ドメイン)を含む。DNA結合ドメインは、例えば同一出願人による米国特許第6,453,242号;第6,534,261号;第6,607,882号;第6,785,613号;第6,794,136号;および第6,824,978号に記述されるように操作されたジンクフィンガードメインとなりうる。同様に例えば米国特許第5,5,789,538号;第6,007,988号;第6,013,453号;第6,140,466号;第6,242,568号;第6,410,248号;第6,479,626号;第6,746,838号;および第6,790,941号も参照されたい。
【0089】
DNA結合ドメインは、PN3遺伝子の転写もしくは非転写領域における任意の配列、またはPN3遺伝子の転写が調節される限り他の任意の配列に結合することができる。ジンクフィンガータンパク質による結合に関する標的部位を選択する方法は、同一出願人による米国特許第6,453,242号に開示されている。特定の態様において、標的部位は、例えば、同一出願人による米国特許出願公報第2002/0064802 A1号に記述されるように細胞染色質の到達可能な領域に存在する。
【0090】
DNA結合ドメインが操作されたジンクフィンガー結合ドメインである態様に関して、ジンクフィンガードメインは、特異的標的部位に結合するように操作される。結合ドメインは、複数のジンクフィンガー(例えば、2、3、4、5、6個またはそれ以上のジンクフィンガー)を含む。一般的に、個々のジンクフィンガーは、ヌクレオチド3〜4個のサブ部位に結合する。サブ部位は、標的部位に隣接することができる(および場合によっては重なり合う);またはサブ部位は、ヌクレオチド1、2、3個またはそれ以上のギャップによって隣接するサブ部位から離れることができる。ヌクレオチド1個またはそれ以上のギャップによって離れたサブ部位に対する結合は、隣接するジンクフィンガーのあいだに非標準的なより長いリンカー配列を用いることによって促進される。例えば、米国特許第6,479,626号および米国特許出願公報第2002/0173006号および第2003/0119023号を参照されたい。
【0091】
PN3発現を調節するジンクフィンガータンパク質の例示的な標的部位を、表6に示す。この表において、標的部位は、3-ヌクレオチドのサブ部位で構成されているように示されている。ジンクフィンガーに接触しているサブ部位を含むヌクレオチドを大文字で示す。ジンクフィンガーに接触していないサブ部位間のヌクレオチドを小文字で示す。「位置」と表示する欄の数字は、標的部位の近位末端からPN3遺伝子の開始コドンの第一のヌクレオチドまでのヌクレオチドでの距離を指す。このヌクレオチド、配列「ATG」における「A」は、ヒト第3染色体のマイナス鎖上の38810505位に存在する(すなわち、ATGコドンの「T」は38810504位に存在する)。ヒトゲノム(build 35.1)、NCBIを参照されたい。
【0092】
これらの標的部位に結合する例示的なジンクフィンガー結合ドメインを表7に示す。この表は、6-フィンガータンパク質のそれぞれに関して、それぞれのジンクフィンガーの7残基認識領域(ジンクフィンガーのヘリックス部分の開始点からアミノ酸残基-1〜+6位)のアミノ酸配列を示す。
【0093】
(表6)


【0094】
(表7)



【0095】
表2、3、4、5、および7に示したアミノ酸残基は、ジンクフィンガーのαヘリックス部分の開始点から-1〜+6位に対応し、これらの残基の一つまたは複数が核酸結合の配列特異性に関与することから、「認識領域」と呼ばれている。したがって、任意のポリペプチド骨格配列において同じ認識領域を含むタンパク質は、それらが同じDNA結合特異性を有することから、表2、3、4、5、および7において同定されたタンパク質と同等であると見なされる。
【0096】
このように、特定の態様において、表2、3、4、5、および7に開示した認識領域は、任意のジンクフィンガー骨格に存在することができ(例えば、米国特許第6,453,242号および第6,534,261号を参照されたい)、例えば神経因性疼痛の処置において転写を調節するために用いることができる。
【0097】
認識領域において、残基-1、+3、および+6位はタンパク質-ヌクレオチド接触に主に関与する。+2位での残基はまた時に、結合特異性にも関与している。したがって、さらなる同等物の非制限的な例には、本明細書に開示の任意のジンクフィンガーの残基と同一である-1、+3、および+6位(および任意で+2位)での残基を含むジンクフィンガーが含まれる。
【0098】
ジンクフィンガーの認識領域の-1、+3、および+6(および任意で+2)接触残基でのアミノ酸と、標的部位におけるヌクレオチドのあいだの一致が記述されている。例えば、米国特許第6,007,988号;第6,013,453号;第6,746,838号;および第6,866,997号;ならびにPCT公開国際公開公報第96/06166号;国際公開公報第98/53058号;国際公開公報第98/53059号;および国際公開公報第98/53060号を参照されたい。したがって、同様に、前記の設計法則に従って、本明細書に開示のタンパク質と同じ結合特異性を有するジンクフィンガータンパク質も、同等物であると見なされる。
【0099】
IV.ZFPの特徴
ジンクフィンガータンパク質はジンクフィンガー成分から形成される。例えば、ジンクフィンガータンパク質は、1〜37個のフィンガーを有しうるが、一般的に2、3、4、5、または6フィンガーを有する。ジンクフィンガータンパク質は、標的遺伝子内の比較的小さい部分配列を表す標的部位(時に標的セグメントと呼ばれる)を認識して結合する。ジンクフィンガータンパク質のそれぞれの成分フィンガーは、標的部位内のサブ部位に結合することができる。サブ部位には、全て同じ鎖(時に標的鎖と呼ばれる)における三つの隣接塩基のトリプレットが含まれる。サブ部位には、標的鎖の3隣接塩基のすぐ3'側にある塩基と相補的な反対鎖上の第4の塩基が含まれてもよく、含まれなくてもよい。多くのジンクフィンガータンパク質において、ジンクフィンガーは、同じジンクフィンガータンパク質における他のフィンガーとは実質的に独立してそのトリプレットサブ部位に結合する。したがって、多数のフィンガーを含むジンクフィンガータンパク質の結合特異性は通常、その成分のフィンガーの特異性のほぼ集合体である。例えば、ジンクフィンガータンパク質がトリプレットXXX、YYY、およびZZZに個々に結合する第一、第二、および第三のフィンガーで形成される場合、ジンクフィンガータンパク質の結合特異性は3' XXX YYY ZZZ 5'である。
【0100】
ジンクフィンガータンパク質におけるフィンガーのN末端からC末端への相対的順序は、標的における3'から5'方向におけるトリプレットの相対的順序を左右する。例えば、ジンクフィンガータンパク質が、それぞれトリプレット5' GAC 3'、5' GTA 3'、および5' GGC 3'に個々に結合するN末端からC末端の第一、第二、および第三のフィンガーを含む場合、ジンクフィンガータンパク質は標的セグメント

に結合する。ジンクフィンガータンパク質が、フィンガーを別の順序で、例えば第二のフィンガー、第一のフィンガー、第三のフィンガーで含む場合、ジンクフィンガータンパク質は、異なる順列のトリプレット、この場合では

を含む標的セグメントに結合する。Berg & Shi, Science 271, 1081〜1086(1996)を参照されたい。その成分フィンガーの集合体としてのジンクフィンガータンパク質の結合特性の評価は、場合によっては、同じタンパク質における多数のフィンガー結合の状況依存的相互作用によって影響を受ける可能性がある。
【0101】
成分ジンクフィンガータンパク質の集合体である標的特異性を有する、二つまたはそれ以上のジンクフィンガータンパク質を、結合させることができる(例えば、Kim & Pabo, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A 95, 2812〜2817(1998)を参照されたい)。例えば、XXX、YYY、およびZZZにそれぞれ結合する第一、第二、および第三成分のフィンガーを有する第一のジンクフィンガータンパク質を、結合特異性AAA、BBBおよびCCCで第一、第二、および第三の成分フィンガーを有する第二のジンクフィンガータンパク質に結合させることができる。第一および第二のタンパク質を合わせた結合特異性は、このように

となり、式中の下線は短い介入領域(典型的に任意のタイプの0〜5塩基)を示す。この状況において、標的部位は、介入セグメントによって離れた二つの標的セグメントを含むと見なすことができる。
【0102】
結合は、以下の任意のペプチドリンカーを用いて達成されうる。

【0103】
または、DNA結合部位およびペプチド自身のモデルを形成することができるコンピュータープログラムを用いて、またはファージディスプレイ法を用いて、柔軟なリンカーを合理的に設計することができる。さらなる変化において、二つのジンクフィンガータンパク質を、二つのジンクフィンガータンパク質のヘテロ二量体形成を促進するドメインに融合させることによって、非共有結合を得ることができる。例えば、一つのジンクフィンガータンパク質をfosに融合させて、もう一つのタンパク質をjunに融合させることができる(Barbas et al.,国際公開公報第95/119431号を参照されたい)。
【0104】
二つのジンクフィンガータンパク質の結合は、哺乳動物ゲノムに独自の結合特異性を付与するために都合がよい。典型的な哺乳動物二倍体ゲノムは、3×109 bpからなる。四つのヌクレオチド、A、C、G、およびTがランダムに分布すると仮定すると、所定の9 bp配列は約23,000回存在する。このように、絶対的な特異性で9 bpを認識するZFPは、ゲノム内で約23,000部位に対する結合能を有するであろう。18 bpの配列は、その複雑度が哺乳動物ゲノムの10倍であるランダムDNA配列において約1回存在する。
【0105】
ジンクフィンガータンパク質の成分フィンガーは典型的に、アミノ酸約30個を含み、一つの態様において以下のモチーフ(N-C)を有する。

【0106】
単一のβターンにおける不変ヒスチジン残基2個および不変システイン残基2個は、亜鉛原子を通して配位結合する(例えば、Berg & Shi, Science 271, 1081〜1085(1996)を参照されたい)。前記のモチーフは、結合特異性を付与するジンクフィンガーの領域に関して当技術分野において標準的な番号付けの慣行を示す。第一の不変His残基の左側(N末端側)のアミノ酸に番号+6を割付して、さらに左側の他のアミノ酸には、連続して小さくなる数を割付する。αヘリックスは、残基1で始まり、第二の保存されたヒスチジン後の残基に伸長する。したがって、ヘリックス全体は、長さが可変であり、11〜13残基である。
【0107】
V.ZFPの設計
本明細書において提供されたZFPは、神経因性疼痛に関与する遺伝子(例えば、VR1、TRKA、またはNAV1.8)における選択された標的部位を認識するように操作される。これらおよび他の遺伝子の発現を調節するために適したZFPの非制限的な例を本明細書において記述する。
【0108】
ZFPを設計または選択するプロセスは典型的に、フレームワーク残基の源としての天然ZFPによって始まる。設計または選択のプロセスは、所望の結合特異性を付与するために、非保存位置(すなわち、-1〜+6位)を定義する役割を果たす。一つの適したZFPは、マウス転写因子Zif268のDNA結合ドメインである。このタンパク質のDNA結合ドメインは以下のアミノ酸配列を有し、

かつ、標的

に結合する。
【0109】
フレームワーク残基源としてのもう一つの適した天然のジンクフィンガータンパク質は、Sp-1である。ジンクフィンガータンパク質の構築のために用いられるSp-1配列は、Sp-1転写因子におけるアミノ酸531〜624位に対応する。この配列は長さがアミノ酸94個である。例えば、Sp1およびSp-1コンセンサス配列と呼ばれるSp-1の別の型の配列に関して、米国特許出願第20030021776号を参照されたい。
【0110】
Sp-1は、標的部位

に結合する。
【0111】
いくつかのジンクフィンガータンパク質の合理的設計を補助する多数の置換法則が存在する。例えば、ZFP DNA結合ドメインは、米国特許第6,453,242号;第6,534,261号;第6,746,838号;第6,785,613号;第6,794,136号;および第6,866,997号;米国特許出願公報第2003/0104526号;ならびに米国特許第5,789,538号:第6,007,408号;第6,013,453号;第6,140,081号;および第6,140,466号;ならびにPCT公開国際公開公報第95/19431号、国際公開公報第98/53058号、国際公開公報第98/53059号、国際公開公報第98/53060号、国際公開公報第98/54311号、国際公開公報第00/23464号、および国際公開公報第00/27878号に記述されているように特定の標的部位を認識するように設計および/または選択することができる。
【0112】
一つの態様において、ジンクフィンガーDNA結合ドメインの標的部位は、同一出願人による米国特許第6,453,242号に開示される部位選択法則に従って同定される。特定の態様において、ZFPは同一出願人による国際公開公報第02/077227号に記述されるように選択される;同様に国際公開公報第96/06166号;Desjarlais & Berg, PNAS 90, 2256〜2260(1993);Choo & Klug, PNAS 91, 11163〜11167(1994);Desjarlais & Berg PNAS 89, 7345〜7349(1992);Jamieson et al., Biochemistry 33:5689〜5695(1994);およびChoo et al.,国際公開公報第98/53057号、国際公開公報第98/53058号、国際公開公報第98/53059号、国際公開公報第98/53060号も参照されたい。
【0113】
これらの法則の多くは、汎在する転写因子Sp-1の3-フィンガードメインの部位特異的変異誘発によって支持される(Desjarlais and Berg, 1992;1993)。これらの法則の一つは、DNAトリプレットにおける5' Gが認識ヘリックスの6位でアルギニンを組み入れるジンクフィンガーに結合することができる点である。もう一つの置換法則は、サブ部位の中央のGが、ジンクフィンガーの3位にヒスチジン残基を含めることによって認識されうるという点である。さらなる置換法則は、トリプレットの中央でAを認識するように、アスパラギンを組み入れることができ、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、またはトレオニンをトリプレットの中央でCを認識するように組み入れることができ、およびアラニンのような小さい側鎖を有するアミノ酸を、トリプレットの中央でTを認識するように組み入れることができる点である。さらなる置換法則は、トリプレットサブ部位の3'塩基を、認識ヘリックスの-1位で以下のアミノ酸を組み入れることによって認識することができる点である:Gを認識するためにアルギニン、Aを認識するためにグルタミン、Cを認識するためにグルタミン酸(またはアスパラギン酸)、およびTを認識するためにトレオニン。これらの置換法則はジンクフィンガータンパク質を設計するために有用であるが、それらは可能性がある全ての標的部位を考慮に入れるわけではない。さらに、法則の基礎となる仮定、すなわちジンクフィンガーにおける特定のアミノ酸はサブ部位における特定の塩基との結合に関与しているという仮定は、おおよそであるに過ぎない。フィンガーにおける近位のアミノ酸のあいだの状況依存的相互作用、または多数のアミノ酸の単一の塩基に対する結合またはその逆は、既存の置換法則によって予測される結合特異性の変化を引き起こしうる。したがって、特定の態様において、既定の特異性を有するZFP DNA結合ドメインは、同一出願人による国際公開公報02/077227号に記述される方法に従って得られる。
【0114】
当技術分野で公知の任意の適した方法、例えばファージディスプレイ、ランダム変異誘発、組み合わせライブラリ、コンピューター/合理的設計、アフィニティ選択、PCR、cDNAまたはゲノムライブラリからのクローニング、合成構築等を用いて、ZFPをコードする核酸を設計および構築することができる(例えば、米国特許第5,786,538号:Wu et al., PNAS 92:344〜348(1995);Jamieson et al., Biochemistry 33:5689〜5695(1994);Rebar & Pabo, Science 263:671〜673(1994);Choo & Klug, PNAS 91:11163〜11167(1994);Choo & Klug, PNAS 91:11168〜11172(1994);Desjarlais & Berg, PNAS 90:2256〜2260(1993);Desjarlais & Berg, PNAS 89:7345〜7349(1992);Pomerantz et al., Science 267:93〜96(1995);Pomerantz et al., PNAS 92:9752〜9756(1995);およびLiu et al., PNAS 94:5525〜5530(1997);Griesman & Pabo, Science 275:657〜661(1997);Desjarlais & Berg, PNAS 91:11-99〜11103(1994)を参照されたい)。
【0115】
特定の好ましい態様において、DNA結合ドメイン(例えば、ZFP DNA結合ドメイン)の結合特異性は、疑問となる配列(例えば細胞の染色質における)における到達可能な領域を同定することによって決定される。到達可能な領域は、同一出願人による国際公開公報第01/83732号において記述されるように決定することができる。同様に米国特許出願第2003002176A1を参照されたい。次にDNA結合ドメインを、本明細書に記述されるように、到達可能な領域内で標的部位に結合するように設計および/または選択する。
【0116】
VI.ジンクフィンガータンパク質の産生
A.合成およびクローニング
ZFPポリペプチドおよびこれをコードする核酸は、組換え遺伝子学の領域における通常の技術を用いて作製することができる。一般的な方法を開示する基本的なテキストには、Sambrook et al., 「Molecular Cloning, A Laboratory Manual」(2nd ed.1989);Kriegler, 「Gene Transfer and Expression : A Laboratory Manual」(1990);および「Current Protocols in Molecular Biology」(Ausubel et al., eds, 1994)が含まれる。さらに、約100塩基未満の核酸は、The Midland Certified Reagent Company(mcrc@oligos.com)、The Great American Gene Company(http://www.genco.com)、ExpressGen Inc.(www.expressgen.com)、Operon Technologies Inc.(Alameda, Calif.)のような多様な市販源から注文して作製することができる。同様に、ペプチドは、PeptidoGenic(pkim@ccnet.com)、HTI Bio-products, Inc.(http://www.htibio.com)、BMA Biomedicals Ltd(U.K.)、Bio. Synthesis, Inc.のような多様な起源から注文して作製することができる。
【0117】
オリゴヌクレオチドは、Beaucage & Caruthers, Tetrahedron Letts. 22:1859〜1862(1982)によって最初に記述された固相ホスホロアミダイトトリエステル法に従って、Van Devanter et al., Nucleic Acids, Res.12:6159〜6168(1984)において記述されるように自動シンセサイザーを用いて化学合成することができる。オリゴヌクレオチドの精製は、変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動、または逆相HPLCのいずれかによって行う。クローニングした遺伝子および合成オリゴヌクレオチドの配列は、例えばWallace et al., Gene 16:21〜26(1981)の二本鎖鋳型をシークエンシングするためのチェーンターミネーション法を用いて、クローニング後に確認することができる。
【0118】
二つの代わりの方法を典型的に用いて、新しく設計されたDNA結合ペプチドを発現させるために必要なコード配列を作製する。一つのプロトコールは、重なり合うオリゴヌクレオチド6個を利用するPCRに基づくアセンブリ技法である。三つのオリゴヌクレオチドは、認識ヘリックス間のDNA結合ドメインの一部をコードする「普遍的」配列に対応する。これらのオリゴヌクレオチドは、典型的に、全てのジンクフィンガー構築物に関して不変のままである。他の三つの「特異的」オリゴヌクレオチドは、認識ヘリックスをコードするように設計される。これらのオリゴヌクレオチドは主に認識ヘリックス上の-1、2、3、および6位で置換を含み、それによってそれらは異なるDNA結合ドメインのそれぞれに対して特異的となる。
【0119】
PCR合成は二段階で行う。第一に、低温アニーリング段階を有する4サイクルPCR反応においてオリゴヌクレオチド6個(普遍的3個、特異的3個)を混合して、それによってオリゴヌクレオチドをアニールさせてDNAの「足場」を形成することによって、二本鎖DNA鋳型を作製する。足場におけるギャップを、高忠実度熱安定性ポリメラーゼによって塞ぐが、TaqとPfuポリメラーゼの混合でも十分である。第二の構築相において、シャトルベクターにクローニングするために、または発現ベクターに直接クローニングするために、いずれかの末端で制限部位を組み入れるように設計された外部プライマーによって、ジンクフィンガー鋳型を増幅する。
【0120】
新たに設計されたDNA結合タンパク質をクローニングするためのもう一つの方法は、所望のZFPの特異的領域をコードする相補的オリゴヌクレオチドをアニールリングすることに依存する。この特定の応用は、最終ライゲーション段階の前にオリゴヌクレオチドがリン酸化されることを必要とする。これは通常、アニーリング反応を設定する前に行われる。簡単に説明すると、タンパク質の定常領域をコードする「普遍的」オリゴヌクレオチド(前記のオリゴ1、2、および3)を、その相補的オリゴヌクレオチドとアニールさせる。さらに、フィンガー認識ヘリックスをコードする「特異的」オリゴヌクレオチドをそのそれぞれの相補的オリゴヌクレオチドとアニールさせる。これらの相補的オリゴは、前記のプロトコールにおいてポリメラーゼによって予め塞がれた領域を埋めるように設計される。オリゴ1および6に対して相補的なオリゴヌクレオチドは、以下の段階において選択されるベクターにクローニングするために用いられる制限部位に対して特異的なオーバーハング配列を残すように操作される。第二のアセンブリプロトコールは、以下の局面において最初のプロトコールとは異なる:新たに設計されたZFPをコードする「足場」は、完全に合成DNAで構成され、それによって、ポリメラーゼによる塞ぐ段階はなくなり、さらに、ベクターにクローニングされた断片を増幅する必要がない。最後に、配列特異的オーバーハングを残す設計によって、挿入断片の制限酵素消化の必要性がなくなる。または、ZFP認識ヘリックスに対する変化は、通常の部位特異的変異誘発法を用いて作製することができる。
【0121】
いずれのアセンブリ法も、新たに設計されたZFPをコードする得られた断片がベクターにライゲーションされる必要がある。最終的に、ZFPコード配列を発現ベクターにクローニングする。一般的に利用される発現ベクターには、改変pMAL-c2細菌発現ベクター(New England BioLabs, Beverly, Mass.)、または真核細胞発現ベクター、pcDNA(Promega, Madison, Wis.)が含まれるがそれらに限定されるわけではない。最終的な構築物は配列分析によって確認する。
【0122】
当業者に公知の任意の適したタンパク質精製法を用いてZFPを精製することができる(Ausubel、前記、Sambrook、前記を参照されたい)。さらに、任意の適した宿主、例えば細菌細胞、昆虫細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞等を発現のために用いることができる。
【0123】
マルトース結合タンパク質(MBP-ZFP)に融合したジンクフィンガータンパク質を細菌株JM109において発現させることによって、アミロースカラム(New England BioLabs, Beverly, Mass.)を通しての簡単な精製が可能となる。ジンクフィンガーキメラタンパク質の高い発現レベルは、pMal-c2発現プラスミドにおけるMBP-ZFP融合体がtacプロモーター(New England BioLabs, Beverly, Mass.)の制御下にあることから、IPTGの誘導によって得ることができる。MBP-ZFP融合体プラスミドを含む細菌を、10μM ZnCl2、0.02%グルコース、プラス50μg/mlアンピシリンを含む2×YT培地に接種して、37℃で振とう培養した。指数増殖中期においてIPTG 0.3 mMを加えて、培養物を振とうさせた。3時間後、細菌を遠心によって回収し、超音波によって、または加圧セルの中を通過させるもしくはライソザイムを用いることによって破壊して、不溶性材料を遠心によって除去する。MBP-ZFPタンパク質をアミロース結合樹脂上で捕捉して、20 mM トリス-HCl(pH 7.5)、200 mM NaCl、5 mM DTTおよび50μM ZnCl2を含む緩衝液によって十分に洗浄した後、本質的に同じ緩衝液においてマルトースによって溶出する(精製は、New England BioLabsの標準的なプロトコールに基づく)。精製タンパク質を定量して、生化学分析のために保存する。
【0124】
精製タンパク質の解離定数、例えばKdは、典型的に電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)によることを特徴とする(Buratowski & Chodosh、「Current Protocols in Molecular Biology」, pp.12.2.1〜12.2.7(Ausubel ed., 1996))。親和性は、標識した二本鎖オリゴヌクレオチド標的の固定量に対して精製タンパク質を滴定することによって測定する。標的は典型的に、天然の配列において認められる3 bpおよびさらなる定常隣接配列に隣接される天然の結合部位配列を含む。天然の結合部位は典型的に3-フィンガータンパク質に関して9 bpであり、6-フィンガーZFPの場合2×9 bp +介在塩基である。アニールしたオリゴヌクレオチド標的は、T4ファージポリヌクレオチドキナーゼによる標的の効率的な標識を可能にする1塩基5'オーバーハングを有する。アッセイに関して、標的を濃度1 nMまたはそれ未満で加えて(実際の濃度は予想解離定数より少なくとも10倍低く維持される)、精製ZFPを様々な濃度で加えて、反応を少なくとも45分間平衡にする。さらに、反応混合物はまた、10 mMトリス(pH 7.5)、100 mM KCl、1 mM MgCl2、0.1 mM ZnCl2、5 mM DTT、10%グリセロール、0.02%BSAを含む。
【0125】
平衡にした反応物を、トリス/グリシン緩衝液において予め45分間泳動した10%ポリアクリルアミドゲルにローディングして、結合および非結合標識標的を150 Vでの電気泳動によって分解する。または、4%ポリアクリルアミドスタッキングゲルを含む10〜20%勾配トリス-HClゲルを用いることができる。乾燥したゲルをオートラジオグラフィーまたはホスホイメージングによって可視化して、半最大結合を生じるタンパク質濃度を計算することによって、見かけのKdを決定する。
【0126】
アッセイにはまた、タンパク質調製物における活性分画の決定が含まれうる。活性分画は、その中でタンパク質が高濃度の標的DNAに対して滴定される化学量論的ゲルシフトによって決定される。滴定は、標的の100、50、および25%(通常マイクロモルレベル)で行われる。
【0127】
B.ファージディスプレイ
ファージディスプレイ技術は所望の標的特異性を有するジンクフィンガータンパク質を産生するほぼ経験的な手段を提供する(例えば、Rebar, 米国特許第5,789,538号;Choo et al., 国際公開公報第96/06166号;Barbas et al., 国際公開公報第95/19431号および国際公開公報第98/543111号;Jamieson et al.,前記を参照されたい)。方法は、合理的設計と共に、またはその代わりとして用いることができる。方法は、変異誘発されたジンクフィンガータンパク質の多様なライブラリの作製の後に、アフィニティ選択法を用いて所望のDNA結合特性を有するタンパク質の単離を含む。この方法を用いるために、実験者は典型的に以下のように進行する。第一にジンクフィンガータンパク質の遺伝子を変異誘発させて、結合特異性および/または親和性にとって重要な領域に多様性を導入する。典型的な応用において、これは、-1、+2、+3、および+6位ならびに時に+1、+5、+8、および+10のような補助的な位置での単一のフィンガーの無作為化によって行われる。次に、変異誘発遺伝子を、コートタンパク質pIIIをコードする糸状ファージの遺伝子IIIとの融合体として、ファージまたはファージミドベクターにクローニングする。ジンクフィンガータンパク質が、pIIIとのアミノ末端融合体として、または成熟のプロセシングされたタンパク質として発現されるように、ジンクフィンガー遺伝子を、膜輸送シグナルペプチドをコードする遺伝子IIIのセグメントとピルの残りとのあいだに挿入する。
【0128】
ファージミドベクターを用いる場合、変異誘発ジンクフィンガー遺伝子はまた、pIIIのファージ粒子へのアセンブリにとって必要な最小のC末端領域をコードする遺伝子IIIの切断型に融合させてもよい。得られたベクターライブラリを、大腸菌に形質転換して、これを用いて、コートタンパク質pIIIとの融合体としてその表面上に変種ジンクフィンガータンパク質を発現する糸状ファージを産生する。ファージミドベクターを用いる場合、この段階はヘルパーファージの重複感染を必要とする。次に、ファージライブラリを標的DNA部位と共にインキュベートして、アフィニティ選択法を用いて、高い親和性で標的に結合するファージをバルクファージから単離する。典型的に、DNA標的を固相支持体上に固定して、次にこれを全てのしかし最も堅固に結合したファージを除去するために十分な条件で洗浄する。洗浄後、支持体上に残っているファージを、ジンクフィンガー--DNA結合を破壊する条件での溶出によって回収する。回収されたファージを用いて新しい大腸菌を感染させ、次にこれを増幅して、新しいバッチのファージ粒子を産生させる。次に、これらがシークエンシングおよび/またはスクリーニング法を用いて同定されるように、選択および増幅を、堅固な結合体のファージプールを濃縮するために必要な回数繰り返す。方法は、pIII融合体に関して記述されるが、類似の原理を用いてpVIII融合体としてZFP変種をスクリーニングすることができる。
【0129】
特定の態様において、特定のジンクフィンガータンパク質に結合した配列を、タンパク質と無作為化二本鎖オリゴヌクレオチド配列のプールとの結合反応を行うことによって決定する(例えば、Kdの決定に関する条件、前記)。結合反応を電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)によって分析して、タンパク質-DNA複合体はゲルにおいて遅れた移動を示し、未結合の核酸と分離することができる。フィンガーに結合したオリゴヌクレオチドをゲルから精製して、例えばポリメラーゼ連鎖反応によって増幅する。選択(すなわち、結合反応およびEMSA分析)は、選択されたオリゴヌクレオチド配列に関して望ましい回数繰り返す。このようにして、特定のアミノ酸配列を有するジンクフィンガータンパク質の結合特異性を決定する。
【0130】
C.調節ドメイン
ジンクフィンガータンパク質はしばしば、融合タンパク質として外因性のドメイン(またはその機能的断片)と共に発現される。ZFPに付加するための一般的なドメインには、例えば転写因子ドメイン(アクチベータ、リプレッサー、コアクチベータ、コリプレッサー)、サイレンサー、腫瘍遺伝子(例えば、myc、jun、fos、myb、max、mad、rel、ets、bcl、myb、mosファミリーメンバー等)、DNA修復酵素およびその関連因子および修飾因子、DNA転位酵素およびその関連因子および修飾因子;染色質関連タンパク質およびその修飾因子(例えば、キナーゼ、アセチラーゼおよびデアセチラーゼ)、ならびにDNA改変酵素(例えば、メチルトランスフェラーゼ、トポイソメラーゼ、ヘリカーゼ、リガーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、ポリメラーゼ、エンドヌクレアーゼ)およびその関連因子および修飾因子が含まれる。標的遺伝子の発現を抑制するためにZFPが用いられる場合、ZFPを融合するための好ましいドメインは、ヒトKOX-1タンパク質のKRAB抑制ドメイン(Thiesen et al., New Biologist 2, 363〜374(1990);Margolin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91, 4509〜4513(1994);Pengue et al., Nucl. Acids Res. 22:2908〜2914(1994);Witzgall et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91, 4514〜4518(1994))である。活性化を得るための好ましいドメインには、HSV VP16活性化ドメイン(例えば、Hagmann et al., J. Virol. 71,5952〜5962(1997))、核ホルモン受容体(例えば、Torchia et al., Curr. Opin. Cell Biol. 10:373〜383(1998))、核因子κBのp65サブユニット(Bitko & Barik, J. Virol. 72:5610〜5618(1998)およびDoyle & Hunt, Neuroreport 8:2937〜2942(1997);Liu et al., Cancer Gene Ther. 5:3〜28(1998))、またはVP64のような人工キメラ機能的ドメイン(Seifpal et al., EMBO J. 11,4961〜4968(1992))が含まれる。
【0131】
神経因性疼痛に関与する遺伝子における新規配列および到達可能な領域(例えば、DNアーゼI過敏部位)の同定によって、疼痛の処置のための融合分子の設計が可能となる。このように、特定の態様において、本明細書に開示の組成物および方法は、神経因性疼痛に関与する標的遺伝子の一つまたは複数の調節領域に特異的にターゲティングされるDNA結合ドメインと、機能的(例えば、抑制または活性化)ドメイン(またはそのような融合体をコードするポリヌクレオチド)との融合体を含む。このようにして、抑制または活性化ドメインを、DNA結合ドメインによって結合される遺伝子における配列の近位に持ってくる。次に、機能的ドメインの転写調節機能は、選択された調節配列に対して作用することができる。
【0132】
さらなる態様において、同一出願人による国際公開公報第01/83793号に開示された染色質の標的化リモデリングを用いて、DNA結合分子の結合にとって到達可能である細胞染色質における一つまたは複数の部位を作製することができる。
【0133】
融合分子は、当業者に周知であるクローニングおよび生化学的結合法によって構築することができる。融合分子は、DNA結合ドメインと機能的ドメイン(例えば、転写活性化または抑制ドメイン)とを含む。融合分子はまた任意で、核局在化シグナル(例えば、SV40ミディアムT抗原に由来するような)およびエピトープタグ(例えばFLAGおよび血液凝集素のような)を含む。融合タンパク質(およびそれをコードする核酸)は、翻訳読み取り枠が融合体の成分において保存されるように設計される。
【0134】
片側に機能的ドメイン(またはその機能的断片)のポリペプチド成分を有し、もう片方に非タンパク質DNA結合ドメイン(例えば抗体、インターカレーター、副溝結合体、核酸)を有する融合体は、当業者に公知の生化学的結合法によって構築される。例えば、Pierce Chemical Company(Rockford, IL)カタログを参照されたい。副溝結合体とポリペプチドとの融合体を作製するための方法および組成物が記述されている。Mapp et al., (2000)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:3930〜3935。
【0135】
特定の態様において、ジンクフィンガータンパク質によって結合される標的部位は、細胞染色質の到達可能な領域に存在する。到達可能な領域は、例えば、同一出願人による国際公開公報第01/83732号に記述されているように決定することができる。標的部位が細胞染色質の到達可能な領域に存在しない場合、同一出願人による国際公開公報第01/83793号に記述されるように、一つまたは複数の到達可能な領域を作製することができる。さらなる態様において、融合分子のDNA結合ドメインは、その標的部位が到達可能な領域に存在するか否かによらず、細胞染色質に結合することができる。例えば、そのようなDNA結合ドメインは、リンカーDNAおよび/またはヌクレオソームDNAに結合することができる。このタイプの「パイオニア」DNA結合ドメインの例は、特定のステロイド受容体および肝細胞核因子3(HNF3)において認められる。Cordingley et al.(1987)Cell 48:261〜270;Pina et al.(1990)Cell 60:719〜731;およびCirillo et al.(1998)EMBO J.17:244〜254。
【0136】
そのような応用に関して、融合分子は典型的に当業者に公知であるように、薬学的に許容される担体と共に調製される。例えば、「Remington's Pharmaceutical Sciences」, 17th ed., 1985;および同一出願人による国際公開公報第00/42219号を参照されたい。
【0137】
融合分子の機能的成分/ドメインは、融合分子がそのDNA結合ドメインを通して標的配列に結合した後、遺伝子の転写に影響を及ぼすことができる多様な異なる任意の成分から選択することができる。したがって、機能的成分には、アクチベータ、リプレッサー、コアクチベータ、コリプレッサー、およびサイレンサーのような様々な転写因子ドメインが含まれうるがそれらに限定されるわけではない。
【0138】
例えば遺伝子の発現を抑制するために用いられるZFPのようなDNA結合ドメインを融合するための例示的な機能的ドメインは、ヒトKOX-1タンパク質のKOX抑制ドメインまたはKRAB抑制ドメインである(例えば、Thiesen et al., New Biologist 2, 363〜374(1990);Margolin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91, 4509〜4513(1994);Pengue et al., Nucl. Acids Res. 22:2908〜2914(1994);Witzgall et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91, 4514〜4518(1994)を参照されたい)。もう一つの適した抑制ドメインは、メチル結合ドメインタンパク質2B(MBD-2B)である(同様に、MBDタンパク質の記述に関しては、Hendrich et al.(1999)Mamm. Genome 10:906〜912を参照されたい)。もう一つの有用な抑制ドメインはv-ErbAタンパク質に関連するドメインである。例えば、Damm et al.(1989)Nature 339:593〜598;Evans (1989)Int. J. Cancer Suppl. 4:26〜28;Pain et al.(1990)New Biol. 2:284〜294;Sap et al.(1989)Nature 340:242〜244;Zenke et al.(1988)Cell 52:107〜119;およびZenke et al.(1990)Cell 61:1035〜1049を参照されたい。
【0139】
活性化を得るための適したドメインには、HSV VP16活性化ドメイン(例えば、Hagmann et al., J. Virol. 71, 5952〜5962(1997))核ホルモン受容体(例えば、Torchia et al., Curr. Opin. Cell Biol. 10:373〜383(1998));核因子κBのp65サブユニット(Bitko & Barik, J. Virol. 72:5610〜5618(1998)およびDoyle & Hunt, Neuroreport 8:2937〜2942(1997);Liu et al., Cancer Gene Ther. 5:3〜28(1998))、またはVP64のような人工キメラ機能的ドメイン(Seifpal et al., EMBO J. 11,4961〜4968(1992))が含まれる。さらなる例示的な活性化ドメインには、VP16、VP64、p300、CBP、PCAF、SRC1、PvALF、AtHD2A、およびERF-2が含まれるがそれらに限定されるわけではない。例えば、Robyr et al.(2000)Mol. Endocrinol. 14:329〜347;Collingwood et al.(1999)J. Mol. Endocrinol. 23:255〜275;Leo et al.(2000)Gene 245:1〜11;Manteuffel-Cymborowska(1999)Acta Biochim. Pol. 46:77〜89;McKenna et al.(1999)J. Steroid Biochem. Mol. Biol.69:3〜12;Malik et al.(2000)Trends Biochem. Sci. 25:277〜283;およびLemon et al.(1999)Curr. Opin. Genet. Dev. 9:499〜504を参照されたい。さらなる例示的な活性化ドメインには、OsGAI、HALF-1、C1、AP1、ARF-5、-6、-7、および-8、CPRF1、CPRF4、MYC-RP/GP、およびTRAB1が含まれるがそれらに限定されるわけではない。例えば、Ogawa et al.(2000)Gene 245:21〜29;Okanami et al.(1996)Genes Cells 1:87〜99:Goff et al.(1991)Genes Dev. 5:298〜309;Cho et al.(1999)Plant Mol. Biol. 40:419〜429;Ulmason et al.(1999)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:5844〜5849;Sprenger-Haussels et al.(2000)Plant J. 22:1〜8;Gong et al.(1999)Plant Mol. Biol. 41:33〜44;およびHobo et al.(1999)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:15,348〜15,353を参照されたい。
【0140】
さらなる例示的な抑制ドメインには、KRAB(「KOX」とも呼ばれる)、SID、MBD2、MBD3、DNMTファミリーメンバー(例えば、DNMT1、DNMT3、DNMT3B)、Rb、およびMeCP2が含まれるがそれらに限定されるわけではない。例えば、Bird et al.(1999)Cell 99:451〜454;Tyler et al.(1999)Cell 99:443〜446;Knoepfler et al.(1999)Cell 99:447〜450;およびRobertson et al.(2000)Nature Genet. 25:338〜342を参照されたい。さらなる例示的な抑制ドメインには、ROM2およびAtHD2Aが含まれるがそれらに限定されるわけではない。例えば、Chem et al.(1996)Plant Cell 8:305〜321;およびWu et al.(2000)Plant J. 22:19〜27を参照されたい。
【0141】
さらに例示的な機能的ドメインは、例えば同一出願人による米国特許第6,534,261号、および米国特許出願公報第2002/0160940号に開示されている。
【0142】
D.発現ベクター
選択されたZFPをコードする核酸は、典型的に、複製および/または発現のために原核細胞または真核細胞に形質転換するために、例えばKdを決定するために、中間ベクターにクローニングされる。中間ベクターは典型的に、ZFPをコードする核酸の貯蔵または操作のためまたはタンパク質の保存のための、原核細胞ベクター、例えばプラスミドもしくはシャトルベクター、または昆虫ベクターである。ZFPをコードする核酸はまた、典型的に植物細胞、動物細胞に投与するために、好ましくは哺乳動物細胞もしくはヒト細胞、真菌細胞、細菌細胞、または原虫細胞に投与するために、発現ベクターにクローニングされる。
【0143】
クローニングされた遺伝子または核酸の発現を得るために、ZFPは典型的に転写を指示するためのプロモーターを含む発現ベクターにサブクローニングされる。適した細菌および真核細胞プロモーターは当技術分野において周知であり、例えば、Sambrook et al., 「Molecular Cloning, A Laboratory Manual」(2nd ed. 1989);Kriegler,「Gene Transfer and Expression : A Laboratory Manual」(1990);および「Current Protocols in Molecular Biology」(Ausubel et al., eds, 1994)に記述されている。ZFPを発現するための細菌発現系は、例えば、大腸菌、バシラス属種(Bacillus sp.)およびサルモネラ属(Salmonella)において利用可能である(Palva et al., Gene 22:229〜235(1983))。そのような発現系のためのキットは市販されている。哺乳動物細胞、酵母、および昆虫細胞に関する真核細胞発現系は当技術分野で周知であり、同様に市販されている。
【0144】
ZFP核酸の発現を指示するために用いられるプロモーターは、特定の応用に依存する。例えば、ZFPの発現および精製のために、強い構成的プロモーターが典型的に用いられる。対照的に、ZFPがインビボで遺伝子調節のために投与される場合、ZFPの特定の用途に応じて構成的または誘導型プロモーターのいずれかを用いる。さらに、ZFPを投与するための好ましいプロモーターは、HSV TKのような弱いプロモーター、または類似の活性を有するプロモーターとなりうる。プロモーターには典型的に、トランス活性化に対して反応するエレメント、例えば低酸素症反応エレメント、Gal4反応エレメント、lacリプレッサー反応エレメント、ならびにtet-調節系およびRU-486系のような低分子制御系が含まれうる(例えば、Gossen & Bujard, PNAS 89:5547(1992);Oligino et al. Gene Ther. 5:491〜496(1998);Wang et al., Gene Ther. 4:432〜441(1997);Neering et al., Blood 88:1147〜1155(1996);およびRendahl et al., Nat. Biotechnol. 16:757〜761(1998)を参照されたい)。
【0145】
プロモーターの他に、発現ベクターは典型的に、原核細胞または真核細胞のいずれかである宿主細胞における核酸の発現にとって必要なさらなるエレメント全てを含む転写単位または発現カセットを含む。このように、典型的な発現カセットは、例えばZFPをコードする核酸配列に機能的に結合したプロモーター、および例えば転写物の効率的なポリアデニル化、転写の終了、リボソーム結合部位、または翻訳終了にとって必要なシグナルを含む。カセットのさらなるエレメントには、例えば、エンハンサー、および外因性のスプライシングイントロンシグナルが含まれてもよい。
【0146】
細胞に遺伝情報を輸送するために用いられる特定の発現ベクターは、ZFPの意図される用途に関して選択される。標準的な細菌発現ベクターには、pBR322に基づくプラスミド、pSKF、pET23Dのようなプラスミド、ならびにGSTおよびLacZのような市販の融合発現系が含まれる。好ましい融合タンパク質は、マルトース結合タンパク質、「MBP」である。そのような融合タンパク質はZFPの精製のために用いられる。例えばc-mycまたはFLAGのようなエピトープタグを同様に、組換え型タンパク質に加えて、発現をモニターするため、ならびに細胞および細胞下局在をモニターするための、簡便な単離法を提供することができる。
【0147】
真核細胞ウイルスからの調節エレメントを含む発現ベクターはしばしば、真核細胞発現ベクター、例えばSV40ベクター、乳頭腫ウイルスベクター、およびエプスタイン-バーウイルスに由来するベクターにおいて用いられる。他の例示的な真核細胞ベクターには、pMSG、pAV009/A+、pMTO10/A+、pMAMneo-5、バキュロウイルスpDSVEが含まれ、かつSV40初期プロモーター、SV40後期プロモーター、メタロチオネインプロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルスプロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、ポリヘドリンプロモーター、または真核細胞における発現にとって有効であることが示されている他のプロモーターの指示下でタンパク質の発現を可能にする任意の他のベクターが含まれる。
【0148】
いくつかの発現系は、チミジンキナーゼ、ヒグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ、およびジヒドロ葉酸レダクターゼのような安定にトランスフェクトした細胞株を選択するためのマーカーを含む。昆虫細胞においてバキュロウイルスベクターを用いるような高い収率の発現系も同様に、ポリヘドリンプロモーターまたは他の強いバキュロウイルスプロモーターの指示下にあるZFPコード配列に関して適している。
【0149】
発現ベクターに典型的に含まれるエレメントにはまた、大腸菌において機能するレプリコン、組換え型プラスミドを有する細菌の選択を可能にする抗生物質耐性をコードする遺伝子、および組換え型配列の挿入を可能にするためのプラスミドの非必須領域における独自の制限部位が含まれる。
【0150】
標準的なトランスフェクション法を用いて、タンパク質を大量に発現する細菌、哺乳動物、酵母、または昆虫細胞株を産生して、次にこれを標準的な技術を用いて精製する(例えば、Colley et al., J. Biol. Chem. 264:17619〜17622(1989);「Guide to Protein Purification」, Methods in Enzymology, vol. 182(Deutscher, ed., 1990)を参照されたい)。真核細胞および原核細胞の形質転換は標準的な技術に従って行われる(例えば、Morrison, J. Bact. 132:349〜351(1977);Clark-Curtiss & Curtiss, Methods in Enzymology 101:347〜362(Wu et al., eds, 1983)を参照されたい)。
【0151】
外来ヌクレオチド配列を宿主細胞に導入するための周知の任意の技法を用いてもよい。これらには、リン酸カルシウムトランスフェクション、ポリブレン、プロトプラスト融合、電気穿孔、リポソーム、マイクロインジェクション、裸のDNA、プラスミドベクター、エピソームおよび組込型ウイルスベクター、およびクローニングされたゲノムDNA、cDNA、合成DNAまたは他の外来遺伝子材料を宿主細胞に導入するための他の任意の周知の方法(例えば、Sambrook et al.、前記を参照されたい)を用いることが含まれる。用いる特定の遺伝子操作技法は、選択されるタンパク質を発現することができる宿主細胞に少なくとも一つの遺伝子を首尾よく導入できることが必要であるに過ぎない。
【0152】
VII.アッセイ
先に述べた技法に従ってZFPを設計して調製した後、指定されたZFPの活性に関する最初の評価を行う。次に、対象遺伝子の発現の調節能を示すZFPタンパク質を、それに対してZFPが設計される特定の応用に応じて、より特異的な活性に関してさらにアッセイすることができる。このように、例えば、本明細書において提供されるZFPを、最初に、神経因性疼痛に関与する遺伝子の発現の調節能に関してアッセイすることができる。次に、この疼痛を処置するために神経因性疼痛に関与する標的遺伝子の発現のZFPによる調節能に関してより特異的アッセイを典型的に行う。これらのより特異的アッセイに関する説明は以下の第IX章で記載する。
【0153】
多様なインビトロおよびインビボアッセイを用いて、例えばタンパク質またはmRNAレベル、産物レベル、酵素活性、腫瘍の増殖、レポーター遺伝子の転写活性化または抑制、二次情報伝達物質レベル(例えば、cGMP、cAMP、IP3、DAG、Ca2+)、サイトカインおよびホルモン産生レベル、ならびに血管新生を、例えばイムノアッセイ(例えば、抗体によるELISAおよび免疫組織化学アッセイ)、ハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、RNアーゼ保護、ノザンブロット、インサイチューハイブリダイゼーション、オリゴヌクレオチドアレイ試験)、比色アッセイ、増幅アッセイ、酵素活性アッセイ、腫瘍増殖アッセイ、表現型アッセイ等を用いて測定することによって、特定のZFPの活性を評価することができる。
【0154】
ZFPは典型的に、培養細胞、例えば293細胞、CHO細胞、VERO細胞、BHK細胞、HeLa細胞、COS細胞等を用いて、インビトロで活性に関して最初に試験する。好ましくは、ヒト細胞を用いる。ZFPはしばしば、レポーター遺伝子を有する一過性の発現系を用いて最初に試験され、その後標的内因性遺伝子の調節を、細胞および動物においてインビボおよびエクスビボの双方において試験する。ZFPは、細胞において組換えにより発現させてもよく、動物に移植された細胞において組換えにより発現させてもよく、またはトランスジェニック動物において組換えにより発現させてもよく、そして下記の送達媒体を用いて動物または細胞にタンパク質として投与してもよい。細胞は、固定されていてもよく、溶液中にあってもよく、動物に注射してもよく、またはトランスジェニックもしくは非トランスジェニック動物において天然に存在していてもよい。
【0155】
遺伝子発現の調節は、本明細書に記述のインビトロまたはインビボアッセイの一つを用いて試験される。試料またはアッセイをZFPによって処置して、調節の程度を調べるために、無処置対照試料と比較する。先に記述したように、内因性の遺伝子発現の調節に関して、ZFPは典型的にKd 200 nMまたはそれ未満、より好ましくは100 nMまたはそれ未満、より好ましくは50 nM、最も好ましくは25 nMまたはそれ未満を有する。
【0156】
ZFPの作用は、前記の任意のパラメータを調べることによって測定することができる。任意の適した遺伝子発現、表現型、または生理的変化を用いてZFPの影響を評価することができる。機能的結末を無傷の細胞または動物を用いて決定する場合、神経向性、公知のおよび特徴が調べられていない遺伝子マーカー双方に対する転写の変化(例えば、ノザンブロットまたはオリゴヌクレオチドアレイ試験)、細胞増殖またはpHの変化のような細胞代謝の変化、ならびにcAMPまたはcGMPのような細胞内二次情報伝達物質の変化のような、多様な作用を測定することができる。
【0157】
内因性遺伝子発現のZFP調節に関する好ましいアッセイは、インビトロで行うことができる。一つの好ましいインビトロアッセイフォーマットにおいて、培養細胞における内因性の遺伝子発現に関するZFPの調節は、ELISAアッセイを用いてタンパク質産生を調べることによって測定される。試験試料を、ZFPコード配列を欠損するベクター、またはもう一つの遺伝子にターゲティングされる無関係なZFPをコードするベクターによって処置した対照細胞と比較する。
【0158】
もう一つの態様において、内因性の遺伝子発現のZFP調節を、遺伝子mRNA発現レベル(例えば、VR1、TrkAおよび/またはNaV1.8の発現レベル)を測定することによってインビトロで決定する。遺伝子発現レベルは、増幅を用いて、例えばPCR、LCR、またはハイブリダイゼーションアッセイ、例えばノザンハイブリダイゼーション、ドットブロットおよびRNアーゼ保護を用いて測定される。定量的RT-PCR技術(すなわち、いわゆるTaqMan(登録商標)アッセイ)を用いることも同様に、転写物のレベルを定量するために利用することができる。タンパク質またはmRNAレベルは、直接または間接的に標識した検出物質、例えば本明細書において記述される蛍光または放射活性標識核酸、放射活性または酵素標識抗体等を用いて検出される。そのような方法はまた、そのそれぞれの全内容が参照として本明細書に組み入れられる、Gelfandに対する米国特許第5,210,015号、Livakらに対する米国特許第5,538,848号、およびHaalandに対する米国特許第5,863,736号、ならびにHeid, C.A. et al., Genome Research, 6:986〜994(1996);Gibson, U.E.M., et al., Genome Research 6:995〜1001(1996);Holland, P.M., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:7276〜7280(1991);およびLivak, K. J., et al., 「PCR Methods and Applications」357〜362(1995)に記述されている。
【0159】
または、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質、CAT、GAPDH、β-gal等のようなレポーター遺伝子に機能的に結合した選択された標的遺伝子(例えば、VR1、TRKA、および/またはNAV1.8)からの遺伝子プロモーターを用いてレポーター遺伝子系を考案することができる。レポーター構築物は典型的に、培養細胞に同時トランスフェクトされる。選択されたZFPによる処置後、レポーター遺伝子転写、翻訳、または活性の量を、当業者に公知の標準的な技術に従って測定する。
【0160】
内因性の遺伝子発現のZFP調節をモニターするために有用な好ましいアッセイフォーマットのもう一つの例はインビボで行われる。このアッセイは、慢性疼痛に関与する遺伝子を調べるために特に有用である。このアッセイにおいて、選択されるZFPは、異常な神経興奮を示す動物に投与される(例えば、筋肉内または静脈内注射)。適した期間の後、好ましくは4〜8週間後、神経機能および/または遺伝子発現を、異常な神経興奮を有するが、ZFPを投与していない対照動物と比較する。対照動物と試験動物のあいだで神経興奮性が有意に異なれば(例えば、スチューデントT検定を用いて)、ZFPによって影響を受けていると決定される。
【0161】
VIII.薬学的組成物
本明細書に提供したZFP、およびより典型的にそれらをコードする核酸は、任意で薬学的組成物として薬学的に許容される担体と共に調製することができる。
【0162】
A.核酸に基づく組成物
通常のウイルスおよび非ウイルスに基づく遺伝子移入法を用いて、哺乳動物細胞または標的組織において本発明のZFPをコードする核酸を導入することができる。そのような方法を用いて、ZFPをコードする核酸をインビトロで細胞に投与することができる。いくつかの場合において、ZFPをコードする核酸をインビボまたはエクスビボ遺伝子治療用途のために投与する。非ウイルスベクター送達系には、DNAプラスミド、裸の核酸、およびポロキサマーまたはリポソームのような送達媒体と複合体を形成した核酸が含まれる。ウイルスベクター送達系には、細胞に送達後エピソームとなる、またはゲノムに組み入れられるDNAおよびRNAウイルスが含まれる。遺伝子治療技法の論評に関しては、Anderson, Science 256:808〜813(1992);Nabel & Felgner, TIBTECH 11:211〜217(1993);Mitani & Caskey, TIBTECH 11:162〜166(1993);Dillon, TIBTECH 11:167〜175(1993);Miller, Nature 357:455〜460(1992);Van Brunt, Biotechnology 6(10):1149〜1154(1998);Vigne, Restorative Neurology and Neuroscience 8:35〜36(1995);Kremer & Perricaudet, British Medical Bulletin 51(1):31〜44(1995);Haddada et al., 「Current Topics in Microbiology and Immunology」Doerfler and Bohm(eds)(1995);およびYu et al., Gene Therapy 1:13〜26(1994)を参照されたい。
【0163】
本明細書に提供したZFPをコードする核酸の非ウイルス送達法は、リポフェクション、マイクロインジェクション、バイオリスティック(biolistics)、ビロソーム、リポソーム、イムノリポソーム、多価陽イオンまたは脂質:核酸結合体、裸のDNA、人工ビリオン、電気穿孔、および物質によるDNA取り込み増強が含まれる。リポフェクションは、例えば米国特許第5,049,386号、第4,946,787号、および第4,897,355号に記述されており、リポフェクション試薬は市販されている(例えば、Transfectam(商標)およびLipofectin(商標))。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識リポフェクションにとって適した陽イオンおよび中性脂質には、Felgner、国際公開公報第91/17424号、国際公開公報第91/16024号に記載のものが含まれる。送達は細胞(エクスビボ投与)または標的組織(インビボ投与)に対して行うことができる。
【0164】
免疫脂質複合体のような標的化リポソームを含む脂質:核酸複合体の調製は、当業者に周知である(例えば、Crystal, Science 270:404〜410(1995);Blaese et al., Cancer Gene Ther. 2:291〜297(1995);Behr et al., Bioconjugate Chem. 5:382〜389(1994);Remy et al., Bioconjugate Chem. 5:647〜654(1994);Gao et al., Gene Therapy 2:710〜722(1995);Ahmad et al., Cancer Res. 52:4817〜4820(1992);米国特許第4,186,183号、第4,217,344号、第4,235,871号、第4,261,975号、第4,485,054号、第4,501,728号、第4,774,085号、第4,837,028号、および第4,946,787号を参照されたい)。
【0165】
操作されたZFPをコードする核酸を送達するためにRNAまたはDNAウイルスに基づく系を用いることは、ウイルスを体内の特定の細胞にターゲティングするための、およびウイルスの負荷を核に移動させるための高度に進化したプロセスを利用する。ウイルスベクターは、患者に直接投与することができ(インビボ)、またはウイルスベクターを用いてインビトロで細胞を処置して、改変された細胞を患者に投与することができる(エクスビボ)。ZFPを送達するために通常のウイルスに基づく系には、遺伝子移入のための、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、および単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターが含まれうる。ウイルスベクターは、現在、標的細胞および組織における遺伝子移入のための最も効率的で用途の広い方法である。宿主ゲノムへの組み込みは、レトロウイルス、レンチウイルス、およびアデノ随伴ウイルス遺伝子移入法に関して可能であり、しばしば挿入されたトランスジーンの長期発現が起こる。さらに、多くの異なる細胞タイプおよび標的組織において高い形質導入効率が認められている。
【0166】
レトロウイルスの指向性は、外来のエンベロープタンパク質を組み入れて、可能性がある標的細胞の標的集団を増殖させることによって変化させることができる。レンチウイルスベクターは、非分裂細胞に形質導入または感染することができ、典型的に高いウイルス力価を生じるレトロウイルスベクターである。したがって、レトロウイルス遺伝子移入システムの選択は、標的組織に依存しうる。レトロウイルスベクターは、外来配列のパッケージング能が6〜10 kbまでであるシス作用長末端反復を含む。ベクターの複製およびパッケージングを行うためには最小のシス作用LTRで十分であり、次にこれを用いて治療遺伝子を標的細胞に組み入れて、永続的なトランスジーン発現を提供する。広く用いられるレトロウイルスベクターには、マウス白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、およびその組み合わせ(例えば、Buchscher et al., J. Virol. 66:2731〜2739(1992);Johann et al., J. Virol. 66:1635〜1640(1992);Sommerfelt et al., Virol. 176:58〜59(1990);Wilson et al., J. Virol. 63:2374〜2378(1989);Miller et al., J. Virol. 65:2220〜2224(1991);PCT/US94/05700を参照されたい)。
【0167】
ZFPの一過性の発現が好ましい応用では、アデノウイルスに基づく系が典型的に用いられる。アデノウイルスに基づくウイルスベクターは、多くの細胞タイプにおいて非常に高い形質導入効率を有し、細胞分裂を必要としない。そのようなベクターによって、高い力価および発現レベルが得られている。このベクターは、比較的単純な系において大量に産生することができる。アデノ随伴ウイルス(「AAV」)ベクターはまた、例えば核酸およびペプチドのインビトロ産生において、ならびにインビボおよびエクスビボ遺伝子治療技法のために(例えば、West et al., Virology 160:38〜47(1987);米国特許第4,797,368号;国際公開公報第93/24641号;Kotin, Human Gene Therapy 5:793〜801(1994);Muzyczka, J. Clin. Invest. 94:1351(1994)を参照されたい)、細胞に標的核酸を形質導入するために用いられる。組換え型AAVベクターの構築は、米国特許第5,173,414号、Tratschin et al., Mol. Cell. Biol. 5:3251〜3260(1985);Tratschin et al., Mol. Cell. Biol. 4:2072〜2081(1984);Hermonat & Muzyczka, PNAS 81:6466〜6470(1984);およびSamulski et al., J. Virol. 63:03822〜3828(1989)を含む多くの刊行物において記述されている。例えば実施例1を参照されたい。
【0168】
特に、臨床試験において遺伝子移入のために、少なくとも6個のウイルスベクターアプローチが現在利用可能であるが、レトロウイルスベクターは最も頻繁に用いられている系である。これらのウイルスベクターは全て、形質導入物質を生成するためにヘルパー細胞系列に挿入された遺伝子によって欠損ベクターを相補することを含むアプローチを利用する。
【0169】
pLASNおよびMFG-Sは、臨床試験において用いられているレトロウイルスベクターの例である(Dunbar et al., Blood 85:3048〜305(1995);Kohn et al., Nat. Med. 1:1017〜102(1995);Malech et al., PNAS 94:22 12133〜12138(1997))。PA317/pLASNは、遺伝子治療試験において用いられた最初の治療ベクターであった(Blaese et al., Science 270:475〜480(1995))。MFG-Sパッケージングベクターに関して、50%またはそれ以上の形質導入効率が認められている(Ellem et al., Immunol. Immunother. 44(1):10〜20(1997);Dranoff et al., Hum. Gene Ther. 1:111〜2(1997))。
【0170】
組換え型アデノ随伴ウイルスベクター(rAAV)は、欠損で非病原性のパルボウイルスアデノ随伴2型ウイルスに基づくもう一つの代わりの遺伝子送達系である。ベクターは全て、トランスジーン発現カセットに隣接するAAV 145 bp逆方向末端反復のみを保持するプラスミドに由来する。形質導入細胞のゲノムへの組み込みによる効率的な遺伝子移入および安定なトランスジーン送達は、このベクター系の重要な特徴である(Wagner et al., Lancet 351:9117 1702〜3(1998)、Kearns et al., Gene Ther. 9:748〜55(1996))。
【0171】
複製欠損組換え型アデノウイルスベクター(Ad)は、それらが高い力価で産生され、多くの異なる細胞タイプに容易に感染することから、結腸癌遺伝子治療のために主に用いられている。ほとんどのアデノウイルスベクターは、トランスジーンがAd E1a、E1b、およびE3遺伝子を置換するように操作される;その後複製欠損ベクターは、欠失した遺伝子機能をトランスで供給するヒト293細胞において増殖する。Adベクターは、インビボで、肝臓、腎臓、および筋系組織において認められる細胞のような非分裂、分化細胞を含む多数の型の組織に形質導入することができる。通常のAdベクターは、大きい輸送能を有する。臨床試験におけるAdベクターの使用の例は、筋肉内注射による抗腫瘍免疫のためのポリヌクレオチド治療を含んだ(Sterman et al., Hum. Gene Ther. 7:1083〜9(1998))。臨床試験における遺伝子移入のためにアデノウイルスベクターを用いるさらなる例には、Rosenecker et al., Infection 24:1 5〜10(1996);Sterman et al., Hum. Gene Ther. 9:7 1083〜1089(1998);Welsh et al., Hum. Gene Ther. 2:205〜18(1995);Alvarez et al., Hum Gene Ther. 5:597〜613(1997);Topfet et al., Gene Ther. 5:507〜513(1998);Sterman et al., Hum. Gene Ther. 7:1083〜1089(1998)が含まれる。
【0172】
パッケージング細胞は、宿主細胞に感染することができるウイルス粒子を形成するために用いられる。そのような細胞には、アデノウイルスをパッケージングする293細胞、およびレトロウイルスをパッケージングするpsi2細胞またはPA317細胞が含まれる。遺伝子治療において用いられるウイルスベクターは通常、ウイルス粒子に核酸ベクターをパッケージングする産生細胞株によって産生される。ベクターは典型的に、パッケージングおよびその後の宿主への組み込みにとって必要な最小のウイルス配列を含み、他のウイルス配列は発現されるタンパク質に関して発現カセットによって置換される。欠失ウイルス機能は、パッケージング細胞株によってトランスで供給される。例えば、遺伝子治療において用いられるAAVベクターは、パッケージングおよび宿主ゲノムへの組み込みにとって必要なAAVゲノムからのITR配列のみを有する。ウイルスDNAを、他のAAV遺伝子、すなわちrepおよびcapをコードするが、ITR配列を欠損するヘルパープラスミドを含む細胞株にパッケージングする。細胞株はまた、ヘルパーとしてアデノウイルスに感染させる。ヘルパーウイルスは、AAVベクターの複製およびヘルパープラスミドからのAAV遺伝子の発現を促進する。ヘルパープラスミドは、ITR配列の欠損により有意な量でパッケージングされない。アデノウイルスの混入は、例えばそれに対してアデノウイルスがAAVより感受性が高い熱処理によって減少させることができる。
【0173】
先に述べたように、当技術分野で公知の様々なウイルス送達媒体を用いて、核酸(例えば、ジンクフィンガータンパク質をコードする核酸)を細胞に導入することができる。送達媒体の選択は、送達される核酸の大きさおよび所望の標的細胞が含まれるがそれらに限定されるわけではない多数の要因に依存する。
【0174】
特定の態様において、アデノウイルスは送達媒体として用いられる。例としてのアデノウイルス媒体には、アデノウイルス2型、5型、12型および35型が含まれる。例えば、トランスジーンを造血幹細胞、例えばCD34+細胞に導入するために有用な媒体には、アデノウイルス35型が含まれる。さらなるアデノウイルス媒体には、いわゆる「無気力な(gutless)」アデノウイルスが含まれる。例えば、Kochanek et al.(1996)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:5,731〜5,736を参照されたい。
【0175】
レンチウイルス送達媒体は、例えば米国特許第6,312,682号および第6,669,936号および米国特許出願公報第2002/0173030号に記述されており、例えば免疫細胞(例えば、T細胞)にトランスジーンを導入するために用いることができる。レンチウイルスは、そのRNAゲノムのDNAコピーを宿主細胞のゲノムに組み込むことができる。例えば、Ory et al.(1996)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:11382〜11388;Miyoshi et al., (1998)J. Virology 72:8150〜8157;Dull et al. (1998)J. Virol. 72:8463〜8471;Zuffery et al., (1998)J. Virol.72:9873〜9880;Follenzi et al., (2000)Nature Genetics 25:217〜222、およびDelenda(2004)J. Gene Medicine 6:S125〜S138を参照されたい。特定のレンチウイルス媒体において、この組み込み機能は非組み込みレンチウイルス媒体を精製するために障害されている。例えば、Poon et al., (2003)J. Virology 77:3962〜3972およびVargas et al.(2004)Human Gene Therapy 15:361〜372を参照されたい。組み込みおよび非組み込みレンチウイルスベクターの双方を造血幹細胞の形質導入のために用いることは、Haas et al.(2000)Mol. Therapy 2:71〜80によって記述されている。組み込みレンチウイルスベクターを有するCD4+ T細胞の形質導入は、Humeau et al.(2004)Mol. Therapy 9:902〜913によって記述されている。
【0176】
ニューロンおよび神経節において長期間発現されうる単純ヘルペスウイルス媒体が記述されている。例えば、Krisky et al.(1998)Gene Therapy 5(11):1517〜1530;Krisky et al.(1998)Gene Therapy 5(12):1593〜1603;Burton et al., (2001)Stem Cells 19:358〜377;Lilley et al.(2001)J. Virology 75(9):4343〜4356を参照されたい。
【0177】
造血幹細胞のレトロウイルス形質導入効率を改善する方法は、例えば米国特許第5,928,638号に開示されている。
【0178】
レトロウイルスおよびレンチウイルス送達媒体の指向性は、シュードタイピングのプロセスによって変化させることができ、それによって特定の細胞タイプへの核酸のウイルス送達が可能となる。例えば米国特許第5,817,491号を参照されたい。
【0179】
多くの遺伝子治療応用において、遺伝子治療ベクターは、特定の組織タイプに対して高い程度の特異性で送達されることが望ましい。ウイルスベクターは典型的に、ウイルス外表面上でのウイルスコートタンパク質との融合タンパク質としてリガンドを発現することによって、所定の細胞タイプに関する特異性を有するように改変される。リガンドは、対象細胞タイプに存在することが公知である受容体に関して親和性を有するように選択される。例えば、Han et al., PNAS 92:9747〜9751(1995)は、モロニーマウス白血病ウイルスを、gp70と融合したヒトヘレグリンを発現するように改変できること、および組換え型ウイルスがヒト上皮細胞増殖因子受容体を発現する特定のヒト乳癌細胞に感染することを報告した。この原理をリガンド融合タンパク質を発現するウイルスと、受容体を発現する標的細胞との他の対に拡大することができる。例えば、糸状ファージを、実質的に任意の選択された細胞受容体に対して特異的結合親和性を有する抗体断片(例えば、FABまたはFv)を表示するように操作することができる。前記の説明は主にウイルスベクターに当てはまるが、同じ原理を非ウイルスベクターに応用することができる。そのようなベクターは、特異的標的細胞による取り込みに都合がよいと考えられる特異的取り込み配列を含むように操作することができる。
【0180】
遺伝子治療ベクターを、典型的に下記のように全身投与(例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、または頭蓋内注入)によって、または局所投与によって個々の患者に投与することによってインビボで送達することができる。または、ベクターは、個々の患者から外植した細胞(例えば、リンパ球、骨髄吸引液、組織生検)または万能ドナー骨髄幹細胞のようなエクスビボ細胞に送達した後、通常、ベクターを組み入れた細胞に関して選択した後、細胞を患者に再移植することができる。
【0181】
診断、研究、または遺伝子治療(例えば、トランスフェクトした細胞の宿主生物への再注入によって)のためのエクスビボ細胞トランスフェクションは、当業者に周知である。場合によっては、細胞を被験生物から単離して、ZFP核酸(遺伝子またはDNA)をトランスフェクトして、被験生物(例えば、患者)に再注入する。エクスビボトランスフェクションに適した様々な細胞タイプが、当業者に周知である(例えば、Freshney et al.,「Culture of Animal Cells, A Manual of Basic Technique」(3rd ed. 1994)および患者からの細胞を単離および培養する方法に関する考察に関して本明細書に引用した参考文献を参照されたい)。
【0182】
一つの態様において、細胞トランスフェクションおよび遺伝子治療のためのエクスビボ技法において幹細胞を用いる。幹細胞を用いる長所は、それらがインビトロで他の細胞タイプに分化できる点、または哺乳動物(細胞のドナーのような)に導入することができ、そこで骨髄に定着するであろう点である。GM-CSF、IFN-YおよびTNF-αのようなサイトカインを用いて、CD34+細胞をインビトロで臨床的に重要な免疫細胞タイプに分化させる方法は公知である(Inaba et al., J. Exp. Med. 176:1693〜1702(1992)を参照されたい)。
【0183】
幹細胞は、公知の方法を用いて形質導入および分化のために単離される。例えば、CD4+およびCD8+(T細胞)、CD45+(汎B細胞)、GR-1(顆粒球)およびlad(分化した抗原提示細胞)のような望ましくない細胞に結合する抗体によって骨髄細胞を選別することによって、幹細胞を骨髄から単離する(Inaba et al., J. Exp. Med. 176:1693〜1702(1992)を参照されたい)。
【0184】
治療的ZFP核酸を含むベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、リポソーム等)はまた、インビボで細胞を形質導入するために生物に直接投与することができる。または、裸のDNAを投与することができる。投与は、最終的に血液または組織細胞に接触させるように分子を導入するために通常用いられる任意の経路によって行われる。そのような核酸を投与するために適した方法が利用可能であり、当業者に周知であるが、一つより多い経路を用いて特定の組成物を投与することができ、特定の経路はしばしば、他の経路より即時的でより有効な反応を提供することができる。
【0185】
薬学的に許容される担体は、部分的に、投与される特定の組成物と共に、組成物を投与するために用いられる特定の方法によって決定される。したがって、下記のように薬学的組成物の適した広範な製剤が存在する(例えば、「Remington's Pharmaceutical Sciences」17th ed., 1989を参照されたい)。
【0186】
B.タンパク質組成物
本発明のZFPのようなポリペプチド化合物の投与において重要な要因は、ポリペプチドが細胞の細胞質膜または核のような細胞内区画の膜を確実に通過できることである。細胞膜は、低分子の非イオン性親油性化合物が自由に通過でき、極性化合物、高分子、および治療または診断物質を本来透過しない脂質-タンパク質二重層で構成される。しかし、ZFPのようなポリペプチドを細胞質膜を超えて転位させることができるタンパク質およびリポソームのような他の化合物が記述されている。
【0187】
例えば、「膜転位ポリペプチド」は、膜転位担体としての作用能を有する両親媒性または疎水性アミノ酸部分配列を有する。一つの態様において、ホメオドメインタンパク質は、細胞膜の転位能を有する。ホメオドメインタンパク質の最も短いインターナライズ可能なペプチドであるAntennapediaは、アミノ酸43位から58位までタンパク質の第三のヘリックスであることが判明した(例えば、Prochiantz, Current Opinion in Neurobiology 6:629〜634(1996)を参照されたい)。もう一つの部分配列、シグナルペプチドのh(疎水性)ドメインは、類似の細胞質膜転位特徴を有することが判明した(例えば、Lin et al., J. Biol. Chem. 270:14255〜14258(1995)を参照されたい)。
【0188】
ZFPの細胞への取り込みを促進するために、ZFPに結合することができるペプチド配列の例には、以下が含まれるがそれらに限定されるわけではない:HIVのtatタンパク質のアミノ酸11個のペプチド;p16タンパク質のアミノ酸84〜103位に対応する20残基ペプチド配列(Fahraeus et al., Current Biology 6:84(1996)を参照されたい);Antennapediaの長さアミノ酸60個のホメオドメインの第三のヘリックス(Derossi et al., J. Biol. Chem. 269:10444(1994));カポジ線維芽細胞増殖因子(K-FGF)h領域のようなシグナルペプチドのh領域(Lin et al., 前記);またはHSVからのVP22転位ドメイン(Elliot & O'Hare, Cell 88:223〜233(1997))。細胞取り込みの増強を提供する他の適した化学部分も同様に、ZFPに化学結合させることができる。膜転位ドメイン(すなわち、インターナライゼーションドメイン)はまた、ランダムペプチド配列のライブラリから選択することができる。例えば、Yeh et al.(2003)Molecular Therapy 7(5):S461, Abstract #1191を参照されたい。
【0189】
毒素分子はまた、細胞膜を超えてポリペプチドの輸送能を有する。しばしば、そのような分子は少なくとも二つの部分で構成される(「バイナリ毒素」と呼ばれる):転位または結合ドメインまたはポリペプチド、および異なる毒素ドメインまたはポリペプチド。典型的に、転位ドメインまたはポリペプチドは、細胞受容体に結合するが、毒素は細胞に輸送される。ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)のι毒素、ジフテリア(diphtheria)毒素(DT)、シュードモナス(Pseudomonas)外毒素A(PE)、百日咳(pertussis)毒素(PT)、炭疽菌(Bacillus anthracis)毒素、および百日咳アデニレートシクラーゼ(CYA)を含むいくつかの細菌毒素は、内部またはアミノ末端融合体としてペプチドを細胞のサイトソルに送達する試みで用いられている(Arora et al., J. Biol. Chem. 268:3334〜3341(1993);Perelle et al., Infect. Immun. 61:5147〜5156(1993);Stemnark et al., J. Cell Biol. 113:1025〜1032(1991);Donnelly et al., PNAS 90:3530〜3534(1993);Carbonetti et al., Abstr. Annu. Meet. Am. Soc. Microbiol. 95:295(1995);Sebo et al., Infect. Immun. 63:3851〜3857(1995);Klimpel et al., PNAS U.S.A.89:10277〜10281(1992);およびNovak et al., J. Biol. Chem. 267:17186〜17193 (1992))。
【0190】
そのような部分配列は、細胞膜を超えてZFPを転位させるために用いることができる。ZFPは、そのような配列に簡便に融合させる、またはそのような配列によって誘導体化することができる。典型的に、転位配列は融合タンパク質の一部として提供される。任意で、リンカーを用いてZFPと転位配列とを結合させることができる。任意の適したリンカー、例えばペプチドリンカーを用いることができる。
【0191】
ZFPはまた、リポソームおよびイムノリポソームのようなリポソーム誘導体によって、動物細胞、好ましくは哺乳動物細胞に導入することができる。「リポソーム」という用語は、水相を封入する一つまたは複数の同心円に並んだ脂質二重層を含む小胞を指す。水相は典型的に、細胞に送達される化合物、すなわちZFPを含む。リポソームは細胞質膜と融合して、それによって薬物をサイトゾルに放出する。または、リポソームは、輸送小胞において細胞によって貪食されるまたは取り込まれる。エンドソームまたはファゴソームに存在すると、リポソームは分解または輸送小胞の膜と融合して、その内容物を放出する。
【0192】
リポソームによる薬物送達に関する現在の方法において、リポソームは最終的に透過性となり、封入された化合物(この場合、ZFP)を標的組織または細胞に放出する。全身または組織特異的送達に関して、これは、例えばリポソームが体内の様々な物質の作用によって時間と共にリポソーム二重層が分解する、受動的に行われうる。または、活性薬の放出は、リポソーム小胞における透過性の変化を誘導するために物質を用いることを含む。リポソーム膜は、環境がリポソーム膜付近で酸性となる場合にそれらが脱安定化されるように構築することができる(例えば、PNAS 84:7851(1987);Biochemistry 28:908(1989)を参照されたい)。リポソームが標的細胞によってエンドサイトーシスを受ける場合、例えば、それらは脱安定化されてその内容物を放出する。この脱安定化は膜融合(fusogenesis)と呼ばれる。ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)は、多くの「膜融合」系の基礎である。
【0193】
そのようなリポソームは典型的に、ZFPおよび脂質成分、例えば中性および/または陽イオン脂質を含み、任意で既定の細胞表面受容体またはリガンド(例えば、抗原)に結合する抗体のような受容体認識分子を含む。リポソームを調製するための多様な方法が、例えばSzoka et al., Ann. Rev. Biophys. Bioeng. 9:467(1980);米国特許第4,186,183号、第4,217,344号、第4,235,871号、第4,261,975号、第4,485,054号、第4,501,728号、第4,774,085号、第4,837,028号、第4,235,871号、第4,261,975号、第4,485,054号、第4,501,728号、第4,774,085号、第4,837,028号、第4,496,787号、PCT公開国際公開公報第91/17424号、Deamer & Bangham, Biochim. Biophys. Acta 443:629〜634(1976);Fraley, et al., PNAS 76:3348〜3352(1979);Hope et al., Biochim. Biophys. Acta 812:55〜65(1985);Mayer et al., Biochim. Biophys. Acta 858:161〜168(1986);Williams et al., PNAS 85:242〜246(1988);「Liposomes」(Ostro(ed.),1983, Chapter 1;Hope et al., Chem. Phys. Lip.40:89(1986);Gregoriadis, Liposome Technology(1984)およびLasic,「Liposomes: from Physics to Applications」(1993)において記述されるように利用可能である。適した方法には、例えばその全てが当技術分野において周知である、超音波、押出、高圧/ホモジナイゼーション、マイクロフルイデーション、洗浄剤透析、小さいリポソーム小胞のカルシウム誘導融合、およびエーテル融合法が含まれる。
【0194】
いくつかの状況において、リポソームは、特定の細胞タイプ、組織等に対して特異的であるターゲティング部分を用いてターゲティングされる。多様なターゲティング部分(例えば、リガンド、受容体、およびモノクローナル抗体)を用いるリポソームのターゲティングが既に記述されている(例えば、米国特許第4,957,773号および第4,603,044号を参照されたい)。
【0195】
リポソームにターゲティング物質をカップリングさせるための標準的な方法を用いることができる。これらの方法は一般的に、リポソーム脂質成分、例えばターゲティング物質または脂質誘導体化ブレオマイシンのような誘導体化親油性化合物を結合させるために活性化することができるホスファチジルエタノールアミンへの組み込みを含む。リポソームを標的とする抗体は、例えばプロテインAを組み入れるリポソームを用いて構築することができる(Renneisen et al., J. Biol. Chem. 265:16337〜16342(1990)およびLeonetti et al, PNAS 87:2448〜2451(1990)を参照されたい)。
【0196】
C.用量
ZFPの治療応用に関して、患者に投与される用量は、経時的に患者における有用な治療反応に影響を及ぼすために十分でなければならない。用量は、用いる特定のZFPの有効性およびKd、標的細胞の核容積、および患者の状態と共に、処置される患者の体重または表面積によって決定されるであろう。用量の大きさは、特定の患者における特定の化合物またはベクターの投与に伴う任意の有害な副作用の存在、性質、および程度によって決定されるであろう。
【0197】
神経因性疼痛の処置または予防において投与されるZFPの有効量を決定する場合、医師は、ZFPまたはZFPをコードする核酸の循環中の血漿レベル、可能性があるZFPの毒性、疾患の進行、および抗ZFP抗体の産生を評価する。投与は1回または分割用量で行うことができる。
【0198】
D.組成物および投与様式
1.全般
ZFPおよびZFPをコードする核酸は、遺伝子発現を調節するために、および治療的または予防的応用のために被験者(例えば患者)に直接投与することができる。一般的に、および本明細書における考察を考慮して、ZFPを動物または患者に導入することについて言及する句は、ZFPまたはZFP融合タンパク質が導入されること、および/またはZFPまたはZFP融合タンパク質をコードする核酸が、動物において発現されうる形で導入されることを意味しうる。例えば、以下の章により詳細に記述するように、ZFPおよび/または核酸は慢性疼痛の処置において用いることができる。
【0199】
治療的有効量の投与は、処置される組織に最終的に接触するようにZFPを導入するために通常用いられる任意の経路によって行われる。ZFPは、任意の適した方法で、好ましくは薬学的に許容される担体(例えば、ポロキサマーおよび/または緩衝液)と共に投与される。そのような調節物質を投与するための適した方法が利用可能であって当業者に周知であり、複数の経路を用いて特定の組成物を投与することができるが、ある特定の経路はしばしば、別の経路より即時的でより有効な反応を提供しうる。
【0200】
薬学的に許容される担体は、投与される特定の組成物と共に、組成物を投与するために用いられる特定の方法によって部分的に決定される。したがって、薬学的組成物の広範な適した製剤が存在する(例えば、「Remington's Pharmaceutical Sciences」, 17th ed.1985を参照されたい)。
【0201】
ZFPは、単独または他の適した成分と共に、吸入によって投与されるエアロゾル製剤(すなわち、それらを「ネブライズ」することができる)に調製することができる。エアロゾル製剤は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素等のような許容される加圧噴射剤に入れることができる。
【0202】
例えば、静脈内、筋肉内、皮内、および皮下経路によるような非経口投与に適した製剤には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、および製剤を意図されるレシピエントの血液と等張にする溶質、を含みうる水性および非水性の等張滅菌注射液、ならびに懸濁剤、溶解剤、濃化剤、安定化剤、および保存剤を含みうる水性および非水性滅菌懸濁液が含まれる。本開示の方法の実践において、組成物は、例えば静脈内注入、経口、局所、腹腔内、小胞内、または髄腔内によって投与することができる。化合物の製剤は、アンプルおよびバイアルのような単位用量または多用量密封容器において示すことができる。注射用溶液および懸濁液は、これまでに記述された種類の滅菌粉末、顆粒剤、および錠剤から調製することができる。
【0203】
2.例示的な送達の選択肢
神経因性疼痛に関与する遺伝子の発現を調節するために、多様な送達選択肢が、本明細書に提供された薬学的組成物を送達するために利用可能である。特定の適応に応じて(例えば、神経が疼痛に関与している)、組成物は被験者の特定の領域または組織にターゲティングすることができる。例えば、いくつかの方法において、疼痛を処置するために体の特異的領域に組成物を送達する。他の処置は対照的に、特異的領域に対する送達のターゲティングを求めずに一般的に組成物を投与することを含む。
【0204】
物質の送達を特定の領域に局在化するために、多くのアプローチを利用することができる。これらの方法のいくつかは、体腔または組織への送達を含む(例えば、米国特許第5,941,868号、第6,067,988号、第6,050,986号、および第5,997,509号;ならびにPCT公開国際公開公報第00/25850号、国際公開公報第00/04928号、国際公開公報第99/599666号;および国際公開公報第99/38559号を参照されたい)。神経因性疼痛に関与する遺伝子を調節するために組成物を送達する選択肢には、静脈内または皮下投与を用いる全身投与、および組織工学(米国特許第5,944,754号)が含まれる。様々なベクターを用いて、ポリヌクレオチドを知覚ニューロンおよび/または神経節に送達することができる。例えば、Glorioso et al.(2003)Curr. Opin. Mol. Ther.5(5):483〜488を参照されたい。同様に、Fleming et al.(2001)Hum. Gene Ther. 12(1):77〜86;Goins et al.(1999)J Virol 73(1):519〜532;Xu et al.(2003)Proc Natl Acad Sci USA 100(10):6204〜6209、およびGlatzel et al.(2000)Proc Natl Acad Sci USA 97(1):442〜447も参照されたい。
【0205】
当業者に公知の他の送達法には、米国特許第5,698,531号、第5,893,839号、第5,797,870号、第5,693,622号、第5,674,722号、第5,328,470号、および第5,707,969号において開示される方法が含まれる。
【0206】
IX.応用
A.全般
対象遺伝子において選択された標的部位に結合するように操作されたZFP、およびそれらをコードする核酸は、任意の被験者において標的遺伝子(例えば、神経因性疼痛に関与する遺伝子)の発現を調節するために用いることができ、そうすることによって神経因性疼痛を処置することができる。一般的に、細胞または細胞集団における核酸の標的部位を、その標的部位に対して結合特異性を有するZFPに接触させる。方法は、インビトロで細胞培養によって、またはインビボで行うことができる。慢性疼痛が、過興奮に関与する一つまたは複数の遺伝子(例えば、VR1、TRK-A、および/またはNAV1.8)の発現を抑制することによって処置されるように、特定の方法が行われる。
【0207】
B.トランスジェニック/ノックアウト動物
本明細書に記述の組成物および方法を用いて、トランスジェニック動物を標準的な技術を用いて作製することができる。さらに、遺伝子ノックアウト(例えば、VR1、TRK-Aおよび/またはNAV1.8の)またはノックダウンも同様に作製することができる。例えば、ノックアウトまたはノックダウン動物を作製するために、神経因性疼痛に関与する一つまたは複数の遺伝子にターゲティングされる本明細書に記述のZFPを任意の動物に投与する。これらの動物は、疾患モデルおよび薬物試験モデルとして有用である。このように、本明細書において記述されるZFP抑制物質は、ノックアウトを作製するために実現可能な方法が現在存在しない任意の動物モデルにおいて、遺伝子(例えば、VR1、TRK-Aおよび/またはNAV1.8)活性を減少または消失させるために有用となる。さらに、慢性疼痛を研究するためおよび候補薬物を評価するための多くの容認される動物モデルが、非マウスモデルであることから、本明細書に記述のZFPを用いて任意の動物においてこれらのノックアウト/ノックダウンを作製できることは、当技術分野において重要な進歩となる。
【0208】
さらに、例えば、例えば、VR1、TrkAおよび/またはNaV1.8遺伝子の発現をアップレギュレートするために、転写活性化ドメインを含むZFPを用いて、動物スクリーニングモデルを作製することができる。
【0209】
C.治療応用
本明細書に記載の薬学的組成物の場合のように、本明細書において提供されるZFPおよびそれらをコードする核酸は、神経興奮に関与する一つまたは複数の遺伝子の発現を調節(例えば、活性化または抑制)して、それによって慢性疼痛を調節するために利用することができる。神経興奮の調節によって、慢性疼痛の改善または消失が起こりうる。例えば、慢性疼痛において過剰発現される遺伝子は、神経の過興奮を減少させてそれによって慢性疼痛を処置するために、細胞培養(すなわちインビトロ応用)およびインビボの双方において標的を定めたZFPを用いて抑制することができる。本明細書に記述のZFP抑制物質は、任意の他の遺伝子(実施例を参照されたい)の発現レベルを有意に変化させないことから、それらはアンチセンス法より特異的である可能性がある。mRNAの多数のコピーを標的とする必要があるアンチセンスアプローチとは異なり、ZFPによって標的とされるそれぞれの細胞における結合部位、すなわち標的遺伝子の染色体コピーは限定されており、したがって、ZFPは比較的低い発現レベルで機能しうる。
【0210】
したがって、慢性疼痛を処置するための特定の方法は、一つまたは複数のVR1、TRK-Aおよび/またはNAV1.8を標的とするZFPを動物に導入する段階を含む。その標的部位に対する抑制ドメインを有するZFPの結合によって、神経興奮の減少および神経因性疼痛の改善(または消失)が起こる。典型的に、ZFPに融合した抑制ドメインは、標的遺伝子の発現を抑制する。
【0211】
遺伝子発現を評価するための多様なアッセイは、それが神経興奮および疼痛に関係することから公知である。例えば、電気生理的記録(例えば、過興奮および/または自発活性を決定するため)を得ることができる。例えば、Liu et al.(2001)Neuroscience 105(1):265〜75;Cain et al.(2001)J Neurosci. 21(23):9367〜76を参照されたい。熱感作も同様に測定することができる。単独または前記の任意のアッセイ法と併用して用いてもよい他の選択肢は、例えば、形態学的変化(例えば、分岐、繊維の減少等)を決定するための、神経および/またはその上の組織(例えば、皮膚)の免疫染色である。さらに、組織切片の顕微鏡検査を行うことができる。これらおよび他の方法は容認されたアッセイであり、その結果を他の系に外挿することができる。
【0212】
さらなるアッセイは例えば、Lutfy et al.(1997)Pain 70(1):31〜40;Foo et al.(1993)Pharmacol Biochem Behav 45(2):501〜505およびEaton et al.(2002)Gene Ther. 9(20):1387〜1395によって記述されている。
【0213】
本明細書において提供される組成物はまた、治療応用において遺伝子の発現を活性化するために用いることができる。これらの状況において、遺伝子における標的部位に結合するように操作されたZFPを、転写活性化ドメインに融合させる。その活性化が神経因性疼痛を処置するために用いられうる例示的な遺伝子には、脳由来神経栄養因子(BDNF)、グリア由来神経栄養因子(GDNF)、および神経生長因子(NGF)をコードする遺伝子が含まれる。
【0214】
以下の実施例は、開示の方法および組成物の特定の局面をより詳細に説明するために限って提供されるのであって、如何なるようにも制限的に解釈してはならない。
【0215】
実施例1:材料および方法
A.細胞培養およびトランスフェクション
ラットC6細胞を、10%FBSを含むDMEMにおいて培養した。ヌクレオフェクション(Nucleofection)を製造元のプロトコール(Amaxa Biosystems, Cologne, Germany)に従って行った。簡単に説明すると、細胞2×106個およびプラスミドDNA 2μgをNucleofector Solution V 100μlと混合した。NucleofectorプログラムU-30による電気穿孔後、細胞を6ウェルプレートに播種した。細胞をトランスフェクションの72時間後に回収した。
【0216】
ラットND8/34細胞を20%FBSを含むDMEMにおいて培養した。細胞を、トランスフェクションの前に〜1.5×105個/ウェルの密度で24ウェルプレートに16〜24時間播種した。FuGENE 6トランスフェクション試薬(Roche, Indianapolis, IN)を用いて、トランスフェクションをそれぞれの構築物に関して2連で行った。ZFP-TF発現プラスミドまたは対照プラスミド0.25μgおよびピューロマイシン耐性プラスミド0.05μgを、Fugene 6試薬0.75μlを用いて各ウェルにおいてトランスフェクトした。トランスフェクション試薬含有培地を8〜16時間後に除去して、2μg/mlピューロマイシンを含む新鮮な培地を加えた。細胞を、RNA単離のためにトランスフェクション後72時間目に回収した。
【0217】
ヒトIMR32細胞を20%FBSを含むDMEMにおいて培養した。細胞を、トランスフェクションの前に〜1.5×105個/ウェルの密度で24ウェルプレートに16〜24時間播種した。Lipofectamine 2000トランスフェクション試薬(Invitrogen)を用いて各構築物に関して3連でトランスフェクションを行った。各ウェルに関してZFP抑制物質プラスミド0.25μgをLipofectamine 2000トランスフェクション試薬1μlと30分間混合した。次に、複合体を培養に加えた。トランスフェクション試薬含有培地を8時間後に除去して、新鮮な培地を加えた。細胞をトランスフェクションの72時間後に回収した。
【0218】
B.トランスジーン陽性細胞に関して細胞比率を高めるための薬物選択
トランスフェクトした細胞集団の比率を高めるために、薬物選択プロトコールを行って非トランスフェクト細胞を死滅させた。ZFP-TF発現プラスミドまたは対照プラスミド1.2μgをピューロマイシン耐性ベクター0.3μgと共に同時トランスフェクトした。トランスフェクション後24時間目に、ピューロマイシンを培地に加えた。ピューロマイシン選択の60時間後、ほとんどの非トランスフェクト細胞は死滅した。耐性細胞をその後のRNA分析のために回収した。
【0219】
C.Taqman(登録商標)分析
RNAをRNeasy Kit(Qiagen, Valencia, CA)を用いて単離した。Taqmanアッセイは、既に記述されたように行った(J. Biol. Chem. 275:33850)。簡単に説明すると、TaqManをABI 7700 SDS機械(Perkin Elmer, Boston, MA)において96ウェルフォーマットで行い、SDSバージョン1.6.3ソフトウェアによって分析した。RNA試料(25 ng)を、PEからの1×TaqMan緩衝液Aにおいて、0.1μMプローブおよび最適な量の各プライマー、5.5 mM MgCl2、および0.3 mM(各)dNTP、AmpliTaq Gold DNAポリメラーゼ0.625単位、MultiScribe逆転写酵素6.25 単位、およびRNアーゼ阻害剤5単位と混合した。逆転写反応は48℃で30分間行った。95℃で10分間変性後、PCR増幅反応を、95℃で15秒間および60℃で1分間を40サイクル行った。標的遺伝子および18S mRNAのレベルを、125倍の濃度範囲(相対レベル0.2〜25;5倍希釈系列)に及ぶ標準曲線を用いて定量した。各RNA試料をTaqman反応において2連でアッセイした。標的/18Sの比を用いて、様々な試料における標的RNAの相対レベルを決定した。プライマーおよびプローブの配列および濃度は表1に提供される。
【0220】
VR1およびTrkAに関して、Taqman分析、逆転写段階は、遺伝子特異的プライマー対の代わりにポリdTプライマーを用いて行われる。これによって本発明者らは、ポリアデニル化メッセンジャーRNAのみを分析することができる(およびそれによって本発明者らが転写物レベルの減少を観察する機会は増大する)。オリゴdT(12-18)プライマー(Invitrogen)50 ngを反応混合物に加える。逆転写反応を48℃で60分行い。その後逆転写酵素を95℃で5分間不活化する。遺伝子特異的プライマーを反応に加えて、PCR反応を前記のように行う。プライマーおよびプローブの配列および濃度を表8に提供する。
【0221】
(表8)TAQMAN(登録商標)試薬

注釈:アステリスク(**)は、プローブを指す。プローブの末端を以下によって標識する:5'--6FAM;および3'--BHQ1(「Black Hole Quencher 1」(登録商標) -- Biosearch)。
【0222】
D.免疫検出およびFACS分析
細胞を、PBS+0.5 mM EDTAにおいて室温で5〜10分間インキュベートすることによって浮遊させた。1000 rpmで5分間遠心した後、細胞をPBS+1%Tween 20+8%粉乳(ブロッキング試薬として用いる)に浮遊させて、4℃で30分間インキュベートした。細胞浮遊液を遠心して、上清を捨てた後、一次抗体溶液(PBS+1%Tween 20+1%粉乳において100倍希釈)において浮遊させた。細胞を4℃で1時間インキュベートした。
【0223】
インキュベーション後、細胞をPBS+1%Tween 20溶液において3回洗浄して、二次抗体溶液(ヤギ抗ウサギIgG-PE、Santa Cruz Biotechnology, sc 3739、PBS+1%Tween 20+1%粉乳において100倍希釈)に浮遊させた。細胞を4℃で1時間インキュベートした。
【0224】
この段階の後、細胞をPBS+1%Tween 20溶液において3回洗浄して、三次抗体溶液(ウシ抗ヤギIgG-PE、Santa Cruz Biotechnology, sc 3747、PBS+1%Tween 20+1%粉乳において100倍希釈)に浮遊させた。細胞を4℃で1時間インキュベートした。
【0225】
PBS+1%Tween 20溶液において3回洗浄後、細胞を1%ウシ胎児血清を含むPBS溶液に浮遊させた。Facscalibur(Becton Dickinson)フローサイトメーターを用いて、製造元の説明書に従って分析を行い、異なる試料におけるフィコエリスリン蛍光標識の強度を測定した。
【0226】
実施例2:C6細胞におけるVR1の抑制
ラットVR1(rVR1)における標的部位を認識するように設計された6-フィンガージンクフィンガータンパク質と抑制ドメインとを含む融合タンパク質を前記のように、および米国特許第6,607,882号に記載されるように設計した。設計されたZFPおよびこれらのZFPによって認識される標的部位を表1および2に示す。前記のように設計され、表2に示されるZFPを試験するために、以下の実験を行った。
【0227】
A.遺伝子発現
rVR1-ターゲティングZFP(6150、6332、6337、および6338)と抑制ドメイン(KOX)とを含む融合タンパク質をコードする配列を、pcDNA3.1プラスミド骨格(Invitrogen, Carlsbad, CA)に導入して、rVR1-ターゲティングZFP発現プラスミドを作製した。融合タンパク質は6150-KOX、6332-KOX、6337-KOX、および6338-KOXと命名した。空のpcDNA3.1プラスミドベクターも同様に、対照として用いるために調製した。
【0228】
6150-KOX、6332-KOX、6337-KOX、および6338-KOXの一つを含むプラスミドベクターを、実施例1に記述するように培養ラットC6細胞にトランスフェクトした。空のベクターを対照として用いた。ZFP発現は、実施例1に記述するように、Taqmanアッセイによって測定した。
【0229】
図1および2は、6332-KOX、6337-KOX、または6338-KOXを用いたラットVR1発現の抑制の結果を示す。rVR1-ターゲティングZFPの投与は、ラットVR1発現を有意に抑制した。
【0230】
B.タンパク質発現
rVR1の抑制はまた、実施例1に記述される免疫蛍光標識アッセイを用いてタンパク質レベルで証明された。ZFP抑制物質発現プラスミドを、Fugene 6試薬(Roche Cat. #1 814 443)を用いてラットC6細胞培養物にトランスフェクトした。発現プラスミドを有する細胞の比率を増加させるために、ピューロマイシン耐性プラスミドをZFPプラスミドまたは対照ベクターのいずれかと同時トランスフェクトした(非トランスフェクト細胞を死滅させるために、細胞を2μg/mlピューロマイシンで2日間選択した)。rVR1タンパク質を検出するために用いられる一次抗体は、抗ラットVR1(ウサギポリクローナル抗体)、ABR PA1-747(免疫検出プロトコール、実施例1を参照されたい)である。この実験により、6144、6149、6150、6332、6337、および6338は、タンパク質レベルでrVR1の発現をダウンレギュレートすることが判明した(図3)。
【0231】
この分析において、蛍光値2〜100のあいだの細胞集団を用いて平均蛍光を決定した。それぞれの試料に関して、これは細胞の>95%を含んだ。図3。
【0232】
このように、VR1-ターゲティングZFPは、ヌクレオチドおよびタンパク質レベルでrVR1の発現を抑制する。
【0233】
実施例3:TRKA発現の抑制
A.遺伝子発現
表3に示すZFP抑制物質を含む発現プラスミドを、Fugene 6試薬を用いてND8/34細胞培養物(マウス神経芽細胞腫/ラットDRGニューロンハイブリッド細胞株)にトランスフェクトした。発現プラスミドを投与された細胞の比率を増加させるために、ピューロマイシン耐性プラスミドをZFPプラスミドまたは対照ベクターのいずれかと共に同時トランスフェクトした。細胞を2μg/mlピューロマイシンによって2日間選択して、非トランスフェクト細胞を死滅させた。図4に示すように、6182-KOXおよび6297-KOXは、mRNAレベルでrTrkAの発現をダウンレギュレートした。
【0234】
B.タンパク質の発現
rTrkAの抑制も同様にタンパク質レベルで証明された。ZFP抑制物質発現プラスミドを、Fugene 6試薬を用いてND8/34細胞培養物にトランスフェクトした。発現プラスミドを投与した細胞の比率を増加させるために、ピューロマイシン耐性プラスミドをZFPプラスミドまたは対照ベクターのいずれかと共に同時トランスフェクトした(非トランスフェクト細胞を死滅させるために、細胞を2μg/mlピューロマイシンによって2日間選択した)。本アッセイにおいて用いた一次抗体は、抗TrkA(ウサギポリクローナル抗体)、Upstate #06574(免疫検出プロトコール、実施例1を参照されたい)であった。蛍光値0〜1000の細胞集団を用いて、平均蛍光を決定した。各試料に関してこれは細胞の>99%を含んだ。図5に示すように、TRKA-ターゲティングZFPは、タンパク質レベルでrTrkAの発現を有効にダウンレギュレートする。
【0235】
このように、VR1ターゲティングZFPは、ヌクレオチドおよびタンパク質レベルでrTRKAの発現を抑制する。
【0236】
実施例4:NAV1.8発現の抑制
ZFP抑制物質発現プラスミドをIMR32細胞培養物(ヒト神経芽細胞腫細胞)にトランスフェクトした。トランスフェクションは、Lipofectamine 2000プロトコール(Invitrogen, #11668-019)を用いて行い、これは〜80%のトランスフェクション効率を示した。図6に示すように、NAV1.8-ターゲティングZFP 6584、6585、6586、6587、6590、6591、6621、および6622(Koxドメインに結合)は、hNAV1.8の発現をダウンレギュレートする。
【0237】
実施例5:ヒトTRKA発現の抑制
様々なヒトTrkA-ターゲティングジンクフィンガータンパク質(表5)とKOX抑制ドメインとの融合体をコードするプラスミドを、標準的な分子生物学技術を用いて構築した。例えば、同一出願人による米国特許第6,453,242号、第6,534,261号を参照されたい。融合タンパク質の発現は、融合タンパク質をコードする配列に対して機能的に結合したプラスミドに含まれるヒトEF-1αプロモーターによって制御された。EF-1αプロモーターは、神経細胞および細胞株において有効に機能することから選択され、その活性は、細胞培養培地におけるオールトランスレチノイン酸の存在によって増強されうる。
【0238】
慢性骨髄性白血病細胞株K562は、浮遊液にて十分に増殖して、TrkAを発現し、高い効率でトランスフェクトされうることから、TrkA抑制を調べるために、この細胞株を選択した。細胞を6ウェル培養皿において、1 mMオールトランスレチノイン酸の存在下で細胞2×106個/ウェルの濃度で培養した。ヌクレオフェクション(Amaxa, Solution V, Program T-16)によってプラスミドをK562細胞に導入し、>90%のトランスフェクション効率が一般的に得られた。
【0239】
RNA分析
トランスフェクションの72時間後、RNeasy Mini Kit(Qiagen, Valencia, CA)を用いて、RNAを単離した。総RNA 25 ngを、ABI 7700配列検出システム(Perkin-Elmer Life Sciences)を用いて96ウェルフォーマットで逆転写およびリアルタイムPCR(TaqMan(登録商標))によってアッセイした。TrkA mRNAレベルをGAPDH mRNAレベルに対して標準化して、結果を図7に示す。ヒトTrkA特異的ZFP/KOX融合タンパク質は全て、TrkA mRNAレベルを抑制し、抑制の程度は3〜5倍である。
【0240】
タンパク質分析
TrkA mRNAを分析する(前記)同じ実験からの試料をTrkAタンパク質レベルに関して分析した(すなわち、トランスフェクションの72時間後)。細胞溶解物をRIPA緩衝液において調製して、QIAshredderカラム(Qiagen, Valencia, CA)に通過させて、NovexミニゲルシステムにおいてNuPAGE 4〜12%ビストリス(1 mm×10ウェル)ゲル(Cat # NP0321BOX、Invitrogen)上で分析した。ゲルを、Xcell IIブロットモジュール(Invitrogen)において、孔径0.2μmのニトロセルロースメンブレン(Cat # LC2000, Invitrogen)上にブロットした。ブロットを、ロッキングプラットフォームにおいてウサギ抗TrkA(1,000倍希釈、Upstate Biotechnology, NY)およびウサギ抗TFIIB(1,000倍希釈、Santa Cruz Biotechnology)に4℃で終夜曝露した後、洗浄して、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ウサギIgG(5,000倍希釈、Santa Cruz Biotechnology)に攪拌しながら室温で2時間曝露した。シグナルを、いずれもPierce Chemical Co(Rockland, IL)から得たSuperSignal WestDura Extended Duration基質および化学発光検出キットを用いて検出した。
【0241】
図8に示した結果は、TrkAタンパク質レベルがTrkA-ターゲティングZFP/KOX融合タンパク質による細胞のトランスフェクション後減少することを示し、TrkA mRNAの分析によって得られた結果を確認する。
【0242】
本明細書において記述した実施例および態様は、説明する目的に限られ、それらに照らして様々な改変または変更が当業者に示唆されるが、それらも本出願の趣旨および範囲、ならびに添付の特許請求の範囲の範囲に含まれるであろうと理解される。本明細書において引用した刊行物、特許、特許出願は全て、個々の刊行物、特許、または特許出願が特におよび個々に参照として本明細書にそのように組み入れられることが示されるのと同じ程度に、全ての目的に関してその全内容物が参照として本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0243】
【図1】KOX抑制ドメインとVR1-ターゲティングZFP(6332、6337、6338と称する)との融合体をコードするプラスミドをトランスフェクトしたラット細胞におけるVR1遺伝子発現の抑制を示すグラフである。融合タンパク質は、6332-KOX、6337-KOX、および6338-KOXと称する。「NTC」は、非トランスフェクト対照を指す。
【図2】KOX抑制ドメインとVR1-ターゲティングZFP(6144、6149、6150と称する)との融合体をコードするプラスミドをトランスフェクトしたラット細胞におけるVR1遺伝子発現の抑制を示すグラフである。融合タンパク質は、6144-KOX、6149-KOX、および6150-KOXと呼ばれる。「eGFP」は、高感度緑色蛍光タンパク質(GFP)対照を指す。
【図3】FACSの結果を示すグラフであり、KOX抑制ドメインとVR1-ターゲティングZFP(6144、6149、6150と称する)との融合体である6144-KOX、6149-KOX、6150-KOSをコードするプラスミドをトランスフェクトしたラット細胞におけるVR1タンパク質レベルの抑制を示す。融合タンパク質は、6144-KOX、6149-KOX、6150-KOX、6332-KOX、6337-KOX、および6338-KOXと称する。「GFP」は、GFP対照によって得られたFACS結果を指す。
【図4】KOX抑制ドメインとTrkA-ターゲティングZFP(6182、6297と称する)の融合体をコードするプラスミド、およびピューロマイシン耐性をコードするプラスミドをトランスフェクトしたラット細胞によるTrkA遺伝子発現の抑制を示すグラフである。ピューロマイシン選択は、非トランスフェクト細胞を死滅させるために用いられる。融合タンパク質は、6182-KOXおよび6297-KOXと称する。「ピューロマイシン対照」は、対照プラスミドと、ピューロマイシン耐性をコードするプラスミドとを同時トランスフェクトした対照を指す。
【図5】FACSの結果を示すグラフであり、6182-KOXまたは6297-KOXをコードするプラスミドとピューロマイシン耐性をコードするプラスミドとを同時トランスフェクトしたラット細胞におけるTrkAタンパク質レベルの抑制を示す。「ピューロマイシン対照」は、対照プラスミドとピューロマイシン耐性をコードするプラスミドとを同時トランスフェクトした対照を指す。
【図6】KOX抑制ドメインとNAV1.8-ターゲティングZFP(6584、6585、6586、6587、6590、6591、6621、および6622と称する)の融合体をコードするプラスミドをトランスフェクトしたヒト細胞におけるNAV1.8の抑制を示すグラフである。融合タンパク質は、6584-KOX、6585-KOX、6586-KOX、6587-KOX、6590-KOX、6591-KOX、6621-KOX、および6622-KOXと称する。「eGFP」は、高感度緑色蛍光タンパク質(GFP)対照を指す。
【図7】ZFP/KOX融合タンパク質をコードするプラスミドをトランスフェクトしたK562細胞における、ヒトGAPDH mRNAに対して標準化したヒトTrkA mRNAのレベルを示すグラフである。コードされるタンパク質の識別を横座標に示す:EF-1aは、融合タンパク質の発現を制御するプロモーターを指す;Koxは、コードされるタンパク質におけるKOX抑制ドメインの存在を指し、および数値は、特定のTrkA-ターゲティングジンクフィンガー結合ドメインを指す(これらのジンクフィンガードメインのDNA標的配列および認識ドメインアミノ酸配列に関してはそれぞれ、表1および5を参照されたい)。EF-1aGFPKoxおよびpBluescriptは対照プラスミドである;EF-1aGFPKoxは、操作されたジンクフィンガー結合ドメインを欠損する;pBluescriptは、融合タンパク質をコードする配列を欠損するベクターである。バーは、2連の測定の平均値に関する標準誤差を示す。
【図8】TrkA-ターゲティングZFP/KOX融合タンパク質をコードするプラスミドをトランスフェクトした細胞からの溶解物を分析するタンパク質ブロットのオートラジオグラフィー画像である。上のパネルは、TrkAおよびTFIIBの存在に関するアッセイを示す。下のパネルは、一次マウス抗FLAG M2モノクローナル抗体およびロバ抗マウスIgG-西洋ワサビペルオキシダーゼ二次抗体を用いた、ジンクフィンガー/Kox融合タンパク質の存在に関するアッセイを示す。略語およびタンパク質識別は、図7と同じである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む、被験者における神経因性疼痛(neuropathic pain)を処置するための方法:
(i)VR1、NaV1.8、およびTrkAからなる群より選択される遺伝子の標的部位に結合するように操作されたジンクフィンガーDNA結合ドメイン;および
(ii)転写抑制ドメイン
を含むポリペプチドをコードする核酸を、
核酸が被験者の一つまたは複数の細胞において発現し、それによってポリペプチドが標的部位に結合して遺伝子の転写を抑制するように、
被験者に導入する段階。
【請求項2】
遺伝子がTrkA遺伝子である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ジンクフィンガーDNA結合ドメインが、ジンクフィンガー6個を含み、ジンクフィンガーの認識領域のアミノ酸配列が以下の通りである、請求項2記載の方法。

【請求項4】
DNA結合ドメインがジンクフィンガー6個を含み、ジンクフィンガーの認識領域のアミノ酸配列が以下の通りである、操作されたジンクフィンガーDNA結合ドメインを含むタンパク質をコードするポリヌクレオチド。

【請求項5】
転写抑制ドメインがKOXドメインである、請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−506359(P2008−506359A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−507384(P2007−507384)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【国際出願番号】PCT/US2005/011049
【国際公開番号】WO2005/100392
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(302043837)サンガモ バイオサイエンシズ インコーポレイテッド (11)
【Fターム(参考)】