説明

スイッチング電源モジュールおよび電気機器

【課題】
実装密度を高くして小形化を容易にするとともに、実装される回路部品間の電磁干渉を低減したスイッチング電源モジュールを提供する。
【解決手段】
スイッチング電源モジュールSMJは、一面側と他面側との間の干渉を防止する干渉防止層AILを備えた配線基板PCBと、配線基板の一面側に実装されたスイッチングデバイスICと、配線基板の他面側にスイッチングデバイスに対向して実装された薄型インダクタLとを具備している。少なくともスイッチングデバイスICに熱伝導関係に接触する金属放熱体AHR1を配設することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源モジュールおよびこれを備えた電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング電源は、入力電力から希望の出力電力を得る電力変換装置において、電力を変換・調整するためにスイッチング素子を用いた電源装置である。その中には、直流電力を別の直流電力に変換するDC-DCコンバータが含まれる。
【0003】
半導体基板にSiC(炭化珪素)やGaN(窒化ガリウム)やダイヤモンドのようなワイドバンドギャップを有する半導体を用いて形成した半導体素子は、Siパワーデバイスの性能限界を大幅に突破するポテンシャルを有するとして注目されている。したがって、パワーデバイスの分野においてもワイドギャップ半導体素子への期待は大きい。
【0004】
また、ワイドバンドギャップ半導体を用いた代表的半導体素子としてJFET(接合型FET)、SIT(静電誘導型トランジスタ)、MESFET(金属−半導体FET:Metal−Semiconductor−Field−Effect−Transistor)、HFET(Heterojunction Field Effect Transistor)、HEMT(High Electron Mobility Transistor)および蓄積型FETなどがある。現状では、実用に供されているワイドバンドギャップ半導体素子は、ノーマリオン特性を有しているものが多いが、ノーマリオフ特性を有するワイドバンドギャップ半導体素子を得ることもできる。
【0005】
ワイドバンドギャップ半導体素子は、上述のように優れた特徴を有しているので、これをスイッチング電源のスイッチング素子として用いてMHz以上の領域で高周波動作をさせることに伴って薄形のインダクタを使用することができ、スイッチング電源の回路をモジュール化して大幅な小形化が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−283840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この高周波動作により実装デバイスから放射されるノイズ成分が増大して回路素子間で電磁干渉が生じるので、小形化を維持しつつこの電磁干渉を低減することが課題である。
【0008】
また、上記課題に加えて小形化に伴いスイッチング素子などの回路部品からの発生熱による回路部品の温度上昇が顕著になるので、回路部品の温度を低下させることも大切である。
【0009】
本発明は、実装密度を高くして小形化を容易にするとともに、実装される回路部品間の電磁干渉を低減したスイッチング電源モジュールおよびこれを備えた電気機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態によれば、スイッチング電源モジュールは、干渉防止層を備えた配線基板を具備している。干渉防止層は、その両面側に分かれて配線基板に実装されている回路部品間の電磁干渉を遮蔽する。そして、干渉防止層の一面側において配線基板にスイッチングデバイスが実装されている。干渉防止層の他面側においてスイッチングデバイスに対向して配線基板に薄型インダクタが実装されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スイッチング電源の主なノイズ放射源であるスイッチングデバイスと薄形インダクタとが干渉防止層の一面側と他面側とに分離して配線基板に実装され、かつ互いに対向しているため、薄形インダクタの実装面積が相対的に大きくてもスイッチングデバイスはその実装面積が小さくなるから、スイッチングデバイスおよび薄形インダクタ以外の回路部品を主として配線基板の一面側にスイッチングデバイスと一緒に実装することができるので、スイッチング電源の回路部品を無理なく実装することができて小形化が可能になるとともに、干渉防止層の両面側に実装される回路部品間の電磁干渉を防止したスイッチング電源モジュールおよびこれを備えた電気機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のスイッチング電源モジュールの第1の実施形態を示す模式的断面図である。
【図2】本発明のスイッチング電源モジュールの第1の実施形態におけるスイッチングデバイスを示し、(a)はレジスト層を見たときの模式的上面図、(b)は(a)のA−A´線に沿う集積回路の模式的断面図である。
【図3】同じく薄形インダクタの模式的一部拡大・一部断面斜視図である。
【図4】本発明のスイッチング電源モジュールの第1の実施形態に採用し得るスイッチング電源の回路例の全体を示す回路図である。
【図5】同じくスイッチング電源のうちチョッパ回路の回路配置例を示す回路図である。
【図6】本発明のスイッチング電源モジュールの第2の実施形態を示す模式的断面図である。
【図7】本発明のスイッチング電源モジュールの第3の実施形態を示す模式的断面図である。
【図8】本発明の電気機器の第1の実施形態であるLED照明装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(スイッチング電源モジュールの第1の実施形態)を説明する。
【0014】
第1の実施形態は、図1に示すように、スイッチング電源モジュールSMJが、配線基板PCB、スイッチングデバイスIC、薄形インダクタL、その他の回路部品RC、第1および第2の金属放熱体MHR1、MHR2ならびにパッケージPKを主な構成要素として具備している。そして、スイッチング電源モジュールSMJがスイッチング電源SRの少なくとも主要部またはほぼ全体を構成する。したがって、スイッチング電源モジュールSMJを直流電源(または交流電源)と負荷との間に介在するように接続すれば、負荷を付勢して作動させることができる。
【0015】
配線基板PCBは、いずれも後述するスイッチングデバイスIC、薄形インダクタLおよびその他の回路部品RCを実装して、後述する図4に示す回路構成のスイッチング電源SRの主要部またはほぼ全体をスイッチング電源モジュールSMJとして構成するための配線手段を提供する。配線基板PCBの配線手段は、既知の各種実装方式を適宜採用することができる。
【0016】
本実施形態において、配線基板PCBは、干渉防止層AILを介して2枚すなわち第1および第2の配線基板PC1、PC2を重ね合わせた構造を備えている。なお、図中の符号T1、T2は、配線基板PCBの端子導出部であり、図示を省略しているスイッチング電源モジュールSMJの外部端子に接続する。端子導出部T1、T2は、いずれも直流である。配線基板PCBが提供する実装方式は、特段限定されない。本実施形態においては、例えばフリップチップ実装および表面実装を併用している。
【0017】
上記干渉防止層AILは、その両面側に分離して配線基板PCBに実装される回路部品間の電磁干渉を防止する手段である。本実施形態において、干渉防止層AILは、導電性金属、例えば銅またはアルミニウムなどの薄板ないし膜状体を用いて構成されている。そして、所望により接地することができる。また、第1および第2の配線基板PC1、PC2のいずれか一方または両方に配設したグランド層により干渉防止層AILを構成することが許容される。
【0018】
スイッチングデバイスICは、干渉防止層AILの一面側において、第1の配線基板PC1に実装されていて、スイッチング電源としての主スイッチング動作を担当する図4に示すスイッチング素子Q1を少なくとも含む。
【0019】
本実施形態において、スイッチング素子Q1は、スイッチング電源SRのスイッチングを担当する手段であり、ノーマリオン特性を有するスイッチング素子すなわちノーマリオンスイッチおよびノーマリオフ特性を有するスイッチング素子すなわちノーマリオフスイッチのいずれであってもよい。
【0020】
ワイドバンドギャップ半導体を用いたスイッチング素子の場合、ノーマリオン特性を有しているものの方が得やすく、スイッチングが早く、かつ低オン抵抗である。また、ノーマリオフスイッチは、電源投入時にオフしているので、扱いやすいが、自励発振で動作させた場合、発振開始の起動回路を必要とする。ノーマリオンスイッチであれば、電源投入時に起動回路を付加しなくてもよいので、回路を簡素化でき、その分スイッチング電源モジュールMJの小形化に寄与する。ノーマリオンスイッチの場合のオフ動作は、定電流手段CCMで行うのが好ましい。さらに、ノーマリオンスイッチは、そのスイッチングの閾値が負であるものを用いると、後述する図4および図5に示すインダクタL1に磁気結合した駆動巻線DWを用いたオフ制御が容易になるので好適である。しかし、ノーマリオフスイッチであっても、簡単な起動回路を付加すればよいので、基本的な問題はない。
【0021】
スイッチング素子Q1にワイドバンドギャップ半導体を用いたスイッチング素子、例えばGaN−HEMTを用いると、高周波でのスイッチング特性が著しく向上するので、MHz以上、好ましくは10MHz以上で動作するスイッチング素子Q1として好適である。スイッチング電源SRの動作周波数が上述のように高くなると、スイッチング損失が低下するとともに、薄形インダクタLも小形化するためにスイッチング電源SRの大幅な小形化を図ることができる。なお、ワイドバンドギャップ半導体は、例えば半導体基板にSiC(炭化珪素)やGaN(窒化ガリウム)やダイヤモンドのようなワイドバンドギャップを有する半導体であればどのようなものであってもよい。
【0022】
本実施形態において、スイッチングデバイスICは、図4および図5に示すとともに後述するように、スイッチングデバイスICのスイッチング素子Q1のスイッチングに付随して実質的なスイッチング動作を行う回路素子として定電流手段CCMおよびダイオードD1を所定の回路接続をしたうえで内包している。すなわち、スイッチングデバイスICのスイッチング素子Q1、定電流手段CCMおよびダイオードD1は、図4および図5に示すように直列接続体SCBを形成するとともに、5つの外部端子P1〜P5を備えた集積回路の形態をなしている。
【0023】
次に、図2を参照してスイッチングデバイスICの構造を詳細に説明する。スイッチングデバイスICは、図2の(a)のレジスト層の模式的上面図および(b)の(a)のA−A´線に沿う模式的断面図に示すように、例えばGaN系マルチチップ構造によって構成され、配線基板PCBの一面側にフリップチップ実装されている。なお、所望によりGaN系シングルチップにスイッチング素子Q1、定電流手段CCMおよびダイオードD1を直列接続するように連続して形成した構成であってもよい。
【0024】
GaN系マルチチップ構造は、図2の(b)に示すように、例えば金属基板M、絶縁層I、GaNチップGC、レジスト層Rおよび半田バンプBを備えた積層体である。GaNチップGTは、図4の(a)の点線で示す相対的に大きな四角形部分が、スイッチング素子Q1、定電流手段CCMおよびダイオードD1それぞれのチップであり、それらが一体化され、かつ直列接続して構成されている。なお、図中の実線で示す相対的に小さな四角形部分は、レジスト層Rに形成されたバンプ用開口であり、その中に外部端子P1〜P5が導出されるスイッチ素子Q1、定電流手段CCMおよびダイオードD1の模式的端子部分を形成する電極Eが臨んでいる。また、点線で示す相対的に小さな四角形部分は、外部端子が導出されない上記と同様の模式的端子部分である。図2の(b)に示されている3つの半田バンプBは、図4および図5中の外部端子P1、P2およびP3を形成している。なお、半田バンプBを除いてスイッチングデバイスICの外周を既知のパッケージ(図示しない。)で包囲することができる。
【0025】
図1において、配線基板PCBの一面側にフリップチップ実装されたスイッチングデバイスICは、その半田バンプBの周囲の空間と配線基板PCBとの間にアンダーフィルUF1が充填されて、実装部位の防湿性が維持されるように構成されている。
【0026】
薄形インダクタLは、干渉防止層AILの他面側すなわち第2の配線基板PC2にスイッチングデバイスに対向して実装されていて、スイッチングデバイスICと協働してチョッパ動作の主要回路部品として機能する。薄形インダクタLの配線基板PCBに対する実装方法は特段限定されない。本実施形態においては、図1に示すようにフリップチップ実装されている。なお、図において、薄形インダクタL1に配設された半田バンプBの周囲の空間と配線基板PCBとの間にアンダーフィルUF2が充填されて、実装部位の防湿性が維持されるように構成されている。
【0027】
また、薄形インダクタLは、図3に示すように、インダクタL1および動巻線DWを例えば扁平コイル素線を平面において渦巻状をなすように巻回して形成し、それらが適度の離間状態となるように保持し、かつ内部および周囲を磁性体層MGで被覆してなり、全体として平面状に構成されている。そして、インダクタL1および駆動巻線DWの一端は、コイルの中心部に位置して端子部tを構成している。そして、当該端子部tの中心にスルーホールhが形成され、スイッチングデバイスICの定電流手段CCMの他方の主端子(アノード)導体を当該スルーホールhに挿入し、さらに導電体を内部に注入して、インダクタL1、駆動巻線DWおよびスイッチングデバイスICの接続導体を一緒に接続するように構成されている。なお、磁性体層MGは、図3の一部を図の右側に拡大して断面を示すように、例えばフェライト微粒子を分散したセラミックスまたはプラスチックスからなる。
【0028】
また、薄型インダクタLは、その動作周波数がMHz以上、好適には10MHz以上の領域である場合には、相応してインダクタンス値が小さくてもよくなるから、上述の構成の他に配線基板PCBの内部に直接実装することも許容される。すなわち、配線基板PCBの配線パターンの一部にコイルパターンを形成し、かつコイルパターンに磁性シートを重ねることで薄形インダクタLを形成することができる。
【0029】
その他の回路部品RC1、RC2は、スイッチング電源SRにおいて以上説明したスイッチングデバイスIC、薄形インダクタLを除くその他の回路部品である。例えば、図4に示す直流電源DCを構成するダイオードブリッジからなる整流回路Rec、図5に示すコンデンサC1〜C3、可調整電位源E1およびこれに付随する検出回路などを構成する抵抗器、コンデンサおよびコンパレータなどの図示を省略している制御回路部品などである。
【0030】
本実施形態において、その他の回路部品RC1、RC2は、リフロー半田を用いて実装する表面実装により配線基板PCBに実装されるように構成されている。なお、符号TSは、表面実装される回路部品RC1、RC2の両側面部に配設された外部端子である。
【0031】
第1および第2の金属放熱体MHR1、MHR2は、スイッチングデバイスICおよび薄形インダクタL内で発生する熱を外部へ放散させるための放熱手段である。第1の金属放熱体MHR1は、スイッチングデバイスICの発生熱を放散させるようにヒートパスHP1を介してスイッチングデバイスICの配線基板PCBに対して反対側の表面に熱伝導関係に接触している。第2の金属放熱体MHR2は、薄形インダクタL1の発生熱を放散させるようにヒートパスHP2を介して薄形インダクタL1の配線基板PCBに対して反対側の表面に熱伝導関係に接触している。また、第1および第2の金属放熱体MHR1、MHR2は、後述するパッケージPKの外面に露出するように配設するのが好ましい。
【0032】
スイッチング電源モジュールSMJが上記の構成を具備している結果、スイッチングデバイスICおよび薄形インダクタLは、第1および第2の金属放熱体MHR1、MHR2の間に挟まれている。このため、第1および第2の金属放熱体MHR1、MHR2がスイッチングデバイスICおよび薄形インダクタLの遮蔽体としての機能を発揮する。電磁シールド部材としての機能および放熱体としての機能をより一層向上させるために、第1および第2の金属放熱体MHR1、MHR2の面積を図1に示すように、スイッチングデバイスICおよび薄形インダクタLの上記表面のそれより明らかに大きく設定することができる。
【0033】
パッケージPKは、スイッチング電源モジュールSMJの全体を包囲して内部に収納される回路部品およびその回路を保護するとともに、当該モジュールSMJの取り扱いを容易にする。本実施形態において、パッケージPKには樹脂モールドの形態を採用している。しかし、セラミックスや金属などの素材を主体とする既知の他の形態のパッケージを適宜採用することができるのはいうまでもない。
【0034】
また、本実施形態の場合、パッケージPKの外表面に第1および第2の金属放熱体MHR1、MHR2が露出しているので、スイッチング電源モジュールSMJを被取付体に取り付けるだけで、スイッチング電源モジュールSMJの発生熱を被取付体へ伝導させることができる。このため、被被取付体の熱放散性が良好であれば、スイッチング電源モジュールSMJの発生熱を放散させて温度上昇を抑制することができる。なお、スイッチングデバイスICに熱伝導関係に接触する第1の金属放熱体MHR1を被取付体に当接して取り付けることにより、より一層温度上昇が抑制されるとともに、ノイズ発生も低減する。これはスイッチングデバイスICおよび薄形インダクタLを比較すると、前者の方が後者より発生熱およびノイズ放射が多いからである。
【0035】
次に、図4を参照してスイッチング電源モジュールSMJの回路構成例について説明する。すなわち、スイッチング電源SRは、直流電源DCおよびチョッパ回路CHCを具備し、入力端が交流電源ACに接続し、出力端に負荷回路LCが接続される。そして、チョッパ回路CHCの部分をスイッチング電源モジュールSMJとして構成することができる。しかし、所望により直流電源DCをも含む全体をスイッチング電源モジュールSMJとして構成してもよい。
【0036】
チョッパ回路CHCは、降圧チョッパ、昇圧チョッパおよび昇降圧チョッパなどの各種チョッパを含む概念である。上記各チョッパは、いずれもスイッチングデバイスICおよび薄形インダクタLを主構成要素として構成されるものである。そして、スイッチングデバイスICのスイッチング素子Q1をオンさせることにより、直流電源DCからインダクタL1に増加電流が流れる。また、スイッチング素子Q1をオフさせることにより、インダクタL1に蓄積された電磁エネルギーの放出によりダイオードD1を経由して減少電流が流れるという動作を繰り返す。そうして、直流電源DCの電圧をDC-DC変換して出力端に直流電圧を出力する点で共通している。
【0037】
また、チョッパ回路CHCは、インダクタL1に磁気結合する駆動巻線DWを具備している。この駆動巻線DWは、スイッチング素子Q1がオンしてインダクタL1に増加電流が流れると、それを検出して、その出力電圧でスイッチング素子Q1をオフ状態に維持する。
【0038】
さらに、チョッパ回路CHCは、直流入力端t1、t2および直流出力端t3、t4を備え、内部が降圧チョッパ、昇圧チョッパおよび昇降圧チョッパなど既知の各種チョッパのいずれかにより構成されている。
【0039】
直流電源DCは、上述のチョッパ回路CHCに対して変換前の直流電圧を入力するための手段である。また、直流電圧を出力すればどのような構成でもよいが、例えば整流回路Recを主体として構成され、所望により平滑コンデンサなどからなる平滑回路を備えていることができる。本形態において、整流回路Recは、好ましくはブリッジ形整流回路からなり、交流電源AC、例えば商用交流電源の交流電圧を全波整流して直流電圧を出力する。
【0040】
上述のスイッチング電源SRがMHz以上の周波数領域、好適には10MHz以上の周波数領域で動作する場合、スイッチング電源モジュールSMJに配設される外部端子は、そのいずれも直流であり、直流の入出力だけであるから、動作が安定であるとともに、スイッチング電源SRの顕著な小形化を実現することができる。このため、スイッチング電源SRを負荷回路LC、例えば照明装置の発光ダイオードに隣接して配設することも可能になり、照明装置などの負荷全体の著しい小形化に寄与する。
【0041】
次に、チョッパ回路CHCが降圧形である場合の回路構成例について図5を参照して説明する。この回路構成例は、チョッパ回路CHCが降圧形であり、スイッチングデバイスICのスイッチング素子Q1および定電流手段CCMにそれぞれGaN−HEMTを用いているとともに、インダクタL1が負荷回路LCと入力端t2との間に接続している。駆動巻線DWは、負荷回路LCおよび結合コンデンサC2を介してスイッチングデバイスICの外部端子P4とP3との間、すなわちスイッチング素子Q1の制御端子(ゲート)と定電流手段CCMの他方の主端子(ソース)との間に接続している。
【0042】
また、スイッチングデバイスICは、その外部端子P1が入力端t1に接続し、外部端子P2が入力端t2に接続し、外部端子P3が負荷回路LCの一端に接続している。
【0043】
図中の符号C1は、チョッパ回路CHCの入力端t1、t2間に接続した高周波バイパス用コンデンサである。符号Aは第1の回路、符号Bは第2の回路である。負荷回路LCの符号LEDは発光ダイオード、C3は出力コンデンサである。
【0044】
第1の回路Aは、入力端t1、スイッチング素子Q1、定電流手段CCM、出力コンデンサC3および負荷回路LCの並列回路、インダクタL1ならびに入力端t2の直列回路により構成されている。第2の回路Bは、インダクタL1、ダイオードD1ならびに出力コンデンサC3および負荷回路LCの並列回路の閉回路により構成されている。
【0045】
定電流手段CCMは、可調整電位源E1を用いてゲート電位を可変にすることで、その定電流値が可変にしている。すなわち、可調整電位源E1は、スイッチングデバイスICの外部端子P5と、負荷回路LCとを経由して定電流手段CCMの制御端子(ゲート)−他方の主端子(ソース)間に接続している。なお、図中の符号D2は、スイッチング素子Q1の制御端子(ゲート)−主端子(ソース)間電圧VGSが0.6V以上にならないようにクランプするためのクランプダイオードである。
【0046】
次に、回路動作について説明する。
【0047】
直流電源DCが投入されると、チョッパ回路CHCのスイッチング素子Q1がオンしているので、直流電源DCからスイッチング素子Q1、定電流手段CCMを経由して第1の回路A内を電流が流れ出し、電流は直線的に増加する。これにより、インダクタL1内に電磁エネルギーが蓄積される。なお、スイッチング素子Q1がオンの期間中スイッチング素子Q1のゲート・ソース間電圧VGSは0になる。増加する電流が定電流手段CCMの定電流値に達すると、電流の増加傾向が停止して定電流に保持される。なお、増加する電流がインダクタL1に流れている間、インダクタL1の端子電圧は、正極性である。
【0048】
増加する電流が定電流手段CCMの定電流値に達したとき、インダクタL1に流れる電流がさらに増加しようとするので、定電流手段CCMの電圧がパルス状に大きくなる。そして、これに伴ってスイッチング素子Q1の主端子(ソース)電位が制御端子(ゲート)の電位より高くなり、その結果制御端子が相対的に明らかに負電位になるため、スイッチング素子Q1はオフする。このため、インダクタL1に流入する増加する電流は、スイッチング素子Q1のオフによって遮断される。
【0049】
スイッチング素子Q1がオフすると同時にインダクタL1に蓄積されていた電磁エネルギーの放出が開始して、第2の回路Bに減少する電流が流れ出す。なお、減少する電流が流れている間、インダクタL1の電圧極性が反転して負極性になり、駆動巻線DWにはスイッチング素子Q1の制御端子が負電位になる電圧が誘起され、負電圧が定電流手段CCMを経由してスイッチング素子Q1の制御端子(ゲート)−他方の主端子(ソース)間に印加するので、スイッチング素子Q1はオフ状態に維持される。
【0050】
第2の回路Bに流れる減少する電流が0になると、スイッチング素子Q1の制御端子(ゲート)に印加されていた負電圧が誘起されなくなると同時に、逆起電力により上記制御端子が正になる電圧が駆動巻線DWに誘起されるので、スイッチング素子Q1は再びオンし、以後上述したのと同様な回路動作が繰り返される。
【0051】
以上の動作において、降圧形のチョッパ回路は、スイッチング素子Q1のオンデューティをαとし、入力電圧をVinとし、出力電圧をVoutとすると、Vout=Vin・α/1となり、入力電圧より低い出力電圧が得られる。
【0052】
以上の回路動作から明らかなように、チョッパ回路CHCは、降圧チョッパ動作を行い、その出力端t3、t4間に接続する負荷回路LCに増加する電流と減少する電流とが交互に流れる出力電流が形成され、それらの直流成分で発光ダイオードLEDが点灯し、出力コンデンサC3は高周波成分をバイパスする。
【0053】
また、可調整電位源E1を用いて基準電位を調整することで定電流手段CCMの定電流値が可変になるから、所望の負荷電流を設定するのが容易になる。また、これとともに、電源電圧変動に対して可調整電位源E1を帰還制御すれば、電源電圧変動に対する発光ダイオードの光出力の変動を抑制することもできる。さらに、スイッチング素子Q1の制御端子に印加される駆動巻線DWの負電圧に定電流手段CCMおよび負荷回路LCの電圧降下が加算される。
【0054】
(スイッチング電源モジュールの第2の実施形態)について説明する。
【0055】
第2の実施形態は、図6に示すように、スイッチングデバイスICに熱伝導関係に接触する第1の金属放熱体MHR1を配設しているが、薄形インダクタLには金属放熱体を配設していない。なお、図中図1と同一部分については同一符号を付して説明は省略する。
【0056】
前述のようにスイッチングデバイスICの方が薄形インダクタLより発生熱およびノイズ放射が多く、後者に対する金属放熱体の配設を省略しても差し支えない場合には、本実施形態でよく、その分構造が簡単化される。
【0057】
(スイッチング電源モジュールの第3の実施形態)について説明する。
【0058】
第3の実施形態は、図7に示すように、スイッチングデバイスICおよび薄形インダクタLに熱伝導関係に接触する金属放熱体が配設されていない。なお、図中図1と同一部分については同一符号を付して説明は省略する。
【0059】
例えば、スイッチング周波数が低いなどの理由により、スイッチングデバイスICおよび薄形インダクタLの発生熱およびノイズ放射が少ない場合には、スイッチング電源モジュールSMJに格別の金属放熱体を配設する必要がないので、本実施形態で差し支えない。
【0060】
したがって、本実施形態によれば、スイッチング電源モジュールSMJが第1および第2の実施形態より構造が簡素化されて安価になる。
【0061】
(電気機器の実施形態)について説明する。
本実施形態において、電気機器EAは、図8に示すLED照明装置である。このLED照明装置は、LEDモジュールLMおよびスイッチング電源モジュールSMJからなる複数組を支持基板BPに整列配置して構成されている。
【0062】
支持基板BPは、アルミニウムなどの熱伝導性の良好な部材により構成されている。スイッチング電源モジュールSMJは、以上説明した実施形態であり、図1、図6または図7に示すスイッチングデバイスICが配線基板PCBと支持基板BPとの間に位置するように取り付けられている。
【0063】
上記の構成により、発熱とノイズ放射が多いスイッチングデバイスICが支持基板BPと配線基板PCBの干渉防止層AILとの間に挟まれるとともに、スイッチングデバイスICが相対的に基板BPに接近するため、温度上昇および放射ノイズが低減しやすくなる。とりわけ、図1または図6に示す構成のスイッチング電源モジュールSMJの場合には、スイッチングデバイスICに熱伝導関係に接触する金属放熱体MHR1がスイッチング電源モジュールSMJの取り付けによって支持基板BPに熱伝導関係に接触しているから、スイッチングデバイスICの温度上昇および放射ノイズの低減が効果的に抑制される。
【0064】
また、本実施形態によれば、組を構成するLEDモジュールLMとスイッチング電源モジュールSMJとを隣接して支持基板BPに配置するのが一般的になるから、メンテナンスが容易になるばかりでなく、外観もすっきりして良好になる。
【符号の説明】
【0065】
AIL…干渉防止体、B…半田バンプ、CCM…定電流手段、D1…ダイオード、DW…駆動巻線、HP1、HP2…ヒートパス、IC…スイッチングデバイス、L…薄形インダクタ、L1…インダクタ、MHR1…第1の金属放熱体、MHR2…第2の金属放熱体、P1、P2、P3、P4、P5…外部端子、PCB、…配線基板、PC1…第1の配線基板、PC2…第2の配線基板、PK…パッケージ、Q1…スイッチング素子、RC1、RC2…その他の回路部品、SMJ…スイッチング電源モジュール、SR…スイッチング電源、T1、T2…端子出力部、TS…外部端子、UF1、UF2…アンダーフィル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面側と他面側との間の干渉を防止する干渉防止層を備えた配線基板と;
干渉防止層の一面側において配線基板に実装されたスイッチングデバイスと;
干渉防止層の他面側においてスイッチングデバイスに対向して配線基板に実装された薄型インダクタと;
を具備したことを特徴とするスイッチング電源モジュール。
【請求項2】
スイッチングデバイスに熱結合した第1の金属放熱体と;
薄形インダクタに熱結合した第2の金属放熱体と;
を具備し、スイッチングデバイスおよび薄形インダクタが第1および第2の金属放熱体の間に挟まれていることを特徴とする請求項1記載のスイッチング電源モジュール。
【請求項3】
電気機器本体と;
電気機器本体に配設された請求項1または2記載のスイッチング電源モジュールと;
を具備していることを特徴とする電気機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−16108(P2012−16108A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148525(P2010−148525)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】