説明

スイッチング電源回路

【課題】全対応負荷領域でZVSとなる、シングルエンドの共振形コンバータの実用化を図る。
【解決手段】一次側スイッチングコンバータをE級共振形として構成し、このE級共振形コンバータの一次側直列共振回路のチョークコイルを絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1とするスイッチング電源回路を構成する。また、一次側並列共振回路のチョークコイルとしてのチョークコイル巻線N10は、一次巻線N1及び二次巻線N2に対する結合度が0の状態で、所定のインダクタンスが得られるようにして、絶縁コンバータトランスPITに巻装する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧共振形コンバータを備えて成るスイッチング電源回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
共振形によるいわゆるソフトスイッチング電源としては、電流共振形と電圧共振形の形式が広く知られている。現状においては、実用化が容易なことを背景に、2石のスイッチング素子によるハーフブリッジ結合方式の電流共振形コンバータが広く採用されている状況にある。
しかし、現在、例えば高耐圧スイッチング素子の特性が改善されてきている状況にあり、電圧共振形コンバータを実用化するにあたっての耐圧の問題はクリアされてきている状況にある。また、1石のスイッチング素子によるシングルエンド方式で構成した電圧共振形コンバータについては、1石の電流共振形フォワードコンバータと比較して、入力帰還ノイズや直流出力電圧ラインのノイズ成分などの点で有利であることも知られている。
【0003】
図19は、シングルエンド方式による電圧共振形コンバータを備えるスイッチング電源回路の一構成例を示している。
【0004】
この図に示すスイッチング電源回路においては、商用交流電源ACをブリッジ整流回路Di及び平滑コンデンサCiから成る整流平滑回路により整流平滑化することで、平滑コンデンサCiの両端電圧として、整流平滑電圧Eiを生成している。
なお、商用交流電源ACのラインに対しては、1組のコモンモードチョークコイルCMCと、2本のアクロスコンデンサCLから成り、コモンモードのノイズを除去するノイズフィルタが設けられている。
【0005】
上記整流平滑電圧Eiは、直流入力電圧として電圧共振形コンバータに対して入力される。この電圧共振形コンバータは、上記しているように、1石のスイッチング素子Qを備えたシングルエンド方式による構成を採る。また、この場合の電圧共振形コンバータとしては他励式となっており、MOS−FETのスイッチング素子Q1を、発振・ドライブ回路2によりスイッチング駆動するようにされている。
【0006】
スイッチング素子Q1に対しては、MOS−FETのボディダイオードDDが並列に接続される。また、スイッチング素子Q1のソース−ドレイン間に対して一次側並列共振コンデンサCrが並列に接続される。
【0007】
一次側並列共振コンデンサCrは、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1とによって一次側並列共振回路(電圧共振回路)を形成している。そして、この一次側並列共振回路によって、スイッチング素子Q1のスイッチング動作として電圧共振形の動作が得られるようにされている。
【0008】
発振・ドライブ回路2は、スイッチング素子Q1をスイッチング駆動するために、スイッチング素子Q1のゲートに対して、ドライブ信号としてのゲート電圧を印加する。これにより、スイッチング素子Q1は、ドライブ信号の周期に応じたスイッチング周波数によりスイッチング動作を行う。
【0009】
絶縁コンバータトランスPITは、スイッチング素子Q1のスイッチング出力を二次側に伝送する。
絶縁コンバータトランスPITの構造としては、例えば、フェライト材によるE字形状コアを組み合わせたEE字形コアを備える。そして、一次側と二次側とで巻装部位を分割したうえで、一次巻線N1と、二次巻線N2を、EE字形コアの中央磁脚に対して巻装している。
そのうえで、絶縁コンバータトランスPITのEE字形コアの中央磁脚に対しては1.0mm程度のギャップを形成するようにしており、これによって、一次側と二次側との間で、k=0.80〜0.85程度の結合係数kを得るようにしている。この程度の結合係数kは疎結合としてみてよい結合度であり、その分、飽和状態が得られにくくなる。また、この結合係数kの値が、リーケージインダクタンス(L1)の設定要素となる。
【0010】
絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1の一端は、スイッチング素子Q1と平滑コンデンサCiの正極端子間に挿入されるようになっていることで、スイッチング素子Q1のスイッチング出力が伝達されるようになっている。絶縁コンバータトランスPITの二次巻線N2には、一次巻線N1により誘起された交番電圧が発生する。
【0011】
この場合、二次巻線N2の一端に対して二次側直列共振コンデンサC2を直列に接続していることで、二次巻線N2のリーケージインダクタンスL2と二次側直列共振コンデンサC2のキャパシタンスとによって二次側直列共振回路(電流共振回路)が形成される。
そのうえで、この二次側直列共振回路に対して、図示するようにして整流ダイオードDo1,Do2、及び平滑コンデンサCoを接続することで、倍電圧半波整流回路を形成している。この倍電圧半波整流回路は、二次巻線N2に誘起される交番電圧V2の2倍に対応するレベルの二次側直流出力電圧Eoを、平滑コンデンサCoの両端電圧として生成する。二次側直流出力電圧Eoは負荷に供給されると共に、定電圧制御用の検出電圧として、制御回路1に入力される。
【0012】
制御回路1は、検出電圧として入力される二次側直流出力電圧Eoのレベルを検出して得られる検出出力を発振・ドライブ回路2に入力する。
発振・ドライブ回路2は、入力される検出出力が示す二次側直流出力電圧Eoのレベルに応じて、二次側直流出力電圧Eoが所定のレベルで一定となるようにして、スイッチング素子Q1のスイッチング動作を制御する。つまり、制御すべきスイッチング動作を得るためのドライブ信号を生成して出力する。これにより、二次側直流出力電圧Eoの安定化制御が行われる。
【0013】
図20及び図21は、上記図19に示した構成の電源回路についての実験結果を示している。なお、実験にあたっては、図19の電源回路の要部について下記のようにして設定している。
絶縁コンバータトランスPITは、コアにEER-35を選定し、中央磁脚のギャップについては、1mmのギャップ長を設定する。また、一次巻線N1及び二次巻線N2のターン数T(巻数)については、それぞれN1=39T、N2=23Tとし、二次巻線N2の1ターン(T)あたりの誘起電圧レベルについては、3V/Tを設定した。絶縁コンバータトランスPITの結合係数kについてはk=0.81を設定した。
また、一次側並列共振コンデンサCrのキャパシタンスについてはCr=3900pF、二次側直列共振コンデンサC2のキャパシタンスについてはC2=0.1μFを選定した。これに応じて、一次側並列共振回路の共振周波数fo1=230kHz、二次側直列共振回路の共振周波数fo2=82kHzが設定される。この場合、共振周波数fo1,fo2の相対的関係としては、fo1≒2.8×fo2と表すことができる。
二次側直流出力電圧Eoの定格レベルは135Vであり、対応負荷電力は、最大負荷電力Pomax=200W〜最小負荷電力Pomin=0Wである。
【0014】
図20は、図19に示した電源回路における要部の動作をスイッチング素子Q1のスイッチング周期により示す波形図であり、図20(a)には、最大負荷電力Pomax=200W時における電圧V1、スイッチング電流IQ1、一次巻線電流I1、二次巻線電流I2、二次側整流電流ID1、ID2が示されている。図20(b)には、中間の負荷電力Po=120W時における電圧V1、スイッチング電流IQ1、一次巻線電流I1、二次巻線電流I2が示されている。図20(c)には最小負荷電力Pomin=0W時における電圧V1、スイッチング電流IQ1が示される。
電圧V1は、スイッチング素子Q1の両端に得られる電圧であり、スイッチング素子Q1がオンとなる期間TONにおいて0レベルで、オフとなる期間TOFFにおいて正弦波状の共振パルスとなる波形である。この電圧V1の共振パルス波形が、一次側スイッチングコンバータの動作が電圧共振形であることを示している。
【0015】
スイッチング電流IQ1は、スイッチング素子Q1(及びボディダイオードDD)に流れる電流であり、期間TONにおいて図示する波形により流れ、期間TOFFにおいて0レベルとなる波形として得られる。
一次巻線N1に流れる一次巻線電流I1は、期間TONにおいて上記スイッチング電流IQ1として流れる電流成分と、期間TOFFにおいて一次側並列共振コンデンサCrに流れる電流とを合成したものとなる。
【0016】
また、図20(a)のみにおいて示しているが、二次側整流回路の動作として、整流ダイオードDo1,Do2に流れる整流電流ID1,ID2は、それぞれ図示するようにして正弦波状に流れるものとなる。この場合、整流電流ID1の波形のほうが、整流電流ID2よりも、二次側直列共振回路の共振動作が支配的に現れたものとなっている。
二次巻線N2に流れる二次巻線電流I2は、整流電流ID1,ID2が合成された波形として得られる。
【0017】
図21は、図19に示した電源回路についての、負荷変動に対するスイッチング周波数fs、スイッチング素子Q1のオン期間TON、オフ期間TOFF、及びAC→DC電力変換効率ηAC→DCを示している。
先ず、AC→DC電力変換効率(ηAC→DC)を見てみると、負荷電力Po=50W〜200Wまでの広範囲で90%以上となる高効率が得られていることが分かる。このような特性は、シングルエンド方式による電圧共振形コンバータに、二次側直列共振回路を組み合わせた場合に得られるものであることを、先に本出願の発明者は実験で確認している。
【0018】
また、図21のスイッチング周波数fs、オン期間TON、オフ期間TOFFによっては、図19に示す電源回路についての負荷変動に対する定電圧制御特性としてのスイッチング動作が示されることになる。この場合、スイッチング周波数fsは、負荷変動に対してほぼ一定となっている。これに対して、オン期間TON、オフ期間TOFFが図示するようにして相互に逆傾向となるようにしてリニアに変化を示している。このことは、二次側直流出力電圧Eoの変動に対してスイッチング周波数(スイッチング周期)はほぼ一定とされたうえで、オン期間とオフ期間との時比率を変化させるようにしてスイッチング動作を制御しているということを示す。このような制御は、1周期内のオン/オフ期間を可変する、PWM(Pulse Width Modulation)制御であるとみることができる。このPWM制御によって、図19に示す電源回路では、二次側直流出力電圧Eoについての安定化が図られる。
【0019】
図22は、図19に示す電源回路の定電圧制御特性を、スイッチング周波数fs(kHz)と二次側直流出力電圧Eoとの関係により、模式的に示している。
図19に示す電源回路では、一次側並列共振回路と二次側直列共振回路を備えることから、一次側並列共振回路の共振周波数fo1に応じた共振インピーダンス特性と、二次側直列共振回路の共振周波数fo2に応じた共振インピーダンス特性との2つの共振インピーダンス特性を複合的に有することになる。また、図19に示す電源回路では、fo1≒2.8×fo2の関係を有しているとされるので、図22にも示しているように、一次側並列共振周波数fo1に対して二次側直列共振周波数fo2が低い関係となる。
そのうえで、或る一定の交流入力電圧VACの条件でのスイッチング周波数fsに対する定電圧制御特性を想定すると、図示するようにして、一次側並列共振回路の共振周波数fo1に応じた共振インピーダンスの下での最大負荷電力Pomax時/最小負荷電力Pomin時の各定電圧制御特性としては、それぞれ特性曲線A,Bとして示され、二次側直列共振回路の共振周波数fo2に応じた共振インピーダンスの下での最大負荷電力Pomax時/最小負荷電力Pomin時の各定電圧制御特性としては、それぞれ特性曲線C,Dで示されるものとなる。そして、この図22に示す特性の下で、二次側直流出力電圧Eoの定格レベルであるtgにより定電圧制御を図ろうとすると、そのために必要なスイッチング周波数fsの可変範囲(必要制御範囲)は、Δfsで示される区間として表すことができる。
【0020】
図22に示される必要制御範囲Δfsは、二次側直列共振回路の共振周波数fo2に応じた最大負荷電力Pomax時の特性曲線Cから、一次側並列共振回路の共振周波数fo1に応じた最小負荷電力Pomin時の特性曲線Aまでに至るもので、その間に、二次側直列共振回路の共振周波数fo2に応じた最小負荷Pomin時の特性曲線Dと、一次側並列共振回路の共振周波数fo1に応じた最大負荷電力Pomax時の特性曲線Bをまたぐ。
このために、図19に示す電源回路の定電圧制御動作としては、スイッチング周波数fsはほぼ固定とされたうえで、1スイッチング周期における期間TON/TOFFの時比率を変化させるPWM制御の状態により、スイッチング駆動制御を行うものとなる。なお、このことは、図20(a)(b)(c)に示す最大負荷電力Pomax=200W時、負荷電力Po=100W時、最小負荷電力Pomin=0W時に示される1スイッチング周期(TOFF+TON)の期間長についてはほぼ一定とされたうえで、期間TOFF,TONの幅が変化していることによっても示されている。
このような動作は、電源回路における負荷変動に応じた共振インピーダンス特性として、一次側並列共振回路の共振周波数fo1の共振インピーダンス(容量性インピーダンス)が支配的となる状態と、二次側直列共振回路の共振周波数fo2(誘導性インピーダンス)が支配的となる状態との間での遷移が、狭いスイッチング周波数の可変範囲(Δfs)のもとで行われることにより得られるものであるとされる。
【0021】
【特許文献1】特開2000−134925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
上記図19に示す電源回路では次のような問題を有している。
先に説明した図20の波形図において、図20(a)に示される最大負荷電力Pomax時のスイッチング電流IQ1は、ターンオンタイミングであるオフ期間TOFFの終了時点に至るまでは0レベルで、オン期間TONに至ると、先ず負極性の電流がボディダイオードDDに流れ、この後に反転してスイッチング素子Q1のドレイン−ソースを流れるようにして動作する。この動作は、ZVS(Zero Voltage Switching)が適正に行われている状態を示している。
これに対して、図20(b)に示される、中間負荷に対応するPo=120W時のスイッチング電流IQ1は、ターンオンタイミングのオフ期間TOFFの終了時点に至る以前のタイミングで、スイッチング電流IQ1がノイズ的に流れる動作が得られている。この動作は、ZVSが適正に行われていない異常動作である。
【0023】
つまり、図19に示されるようにして、二次側直列共振回路を備える電圧共振形コンバータでは、中間負荷時においてZVSが適正に実行されない異常動作となることが分かっている。図19の電源回路の実際としては、例えば図21に示す区間Aとしての負荷変動範囲の領域で、このような異常動作となることが確認されている。
二次側直列共振回路を備える電圧共振形コンバータは、先にも説明したように、傾向としては負荷変動に対して高効率が良好に維持できる特性を本来有しているが、図20(b)のスイッチング電流IQ1として示すように、スイッチング素子Q1のターンオン時において相応のピーク電流が流れることになるので、これによるスイッチング損失の増加を招き、電力変換効率の低下要因を抱えることになる。
また、いずれにせよ、上記のような異常動作が生じることで、例えば定電圧制御回路系の位相−ゲイン特性にずれが生じることとなって、異常発振状態でのスイッチング動作となる。このために、実用化することは、現実的には困難であるとの認識が現状においては強い。
【課題を解決するための手段】
【0024】
そこで、本発明は上記した課題を考慮して、スイッチング電源回路として次のように構成することとした。
つまり、少なくとも整流素子と平滑コンデンサを備えて形成され、商用交流電源を入力して整流平滑化することで、平滑コンデンサの両端電圧として整流平滑電圧を生成する整流平滑回路と、整流平滑電圧を直流入力電圧として入力してスイッチングを行うスイッチング素子と、スイッチング素子をスイッチング駆動するスイッチング駆動手段とを備える。
また、整流平滑電圧がスイッチング素子に入力される経路に対して直列に挿入される第1のインダクタと、スイッチング素子に対して並列となる関係により接続され、少なくとも第1のインダクタのインダクタンスと自身のキャパシタンスとによって一次側並列共振回路を形成する一次側並列共振コンデンサを備える。
また、第2のインダクタと、この第2のインダクタと直列となる関係により接続されることで、少なくとも第2のインダクタのインダクタンスと自身のキャパシタンスとによって一次側直列共振回路を形成し、第2のインダクタと自身との直列接続回路がスイッチング素子に対して並列となる関係により接続されるようにして設けられる一次側直列共振コンデンサを備える。
また、少なくとも、第2のインダクタを一次巻線として巻装するとともに、この一次巻線に得られたスイッチング出力により交番電圧が誘起される二次巻線を巻装して形成され、疎結合とみなされる所要の一次側と二次側との総合結合係数が得られるようにして、自身の結合係数が設定されるコンバータトランスと、このコンバータトランスの二次巻線に誘起される交番電圧を入力して整流動作を行って、二次側直流出力電圧を生成するように構成された二次側直流出力電圧生成手段とを備える。
そして、コンバータトランスは、第1のインダクタンスについて、所定のインダクタンスを有するようにされるととともに、一次巻線及び二次巻線に対する磁気結合の度合いが一定以下の状態となるようにして巻装した構造を与えることとした。
【0025】
なお、本願発明において「結合係数」とは、電磁的な結合の度合いを示すものであり、数値として1が最も結合の度合いが高いことを示し、数値として0が最も結合の度合いが低い(結合していない)ことを示す。また、結合係数の用語は、構成態様によらず総称として一般に用いられるものであるが、コンバータトランス自体の結合係数と区別するために、一次側の全体と二次側の全体との間の電磁的な結合の度合いについては「総合結合係数」という。例えば、コンバータトランスに他のインダクタンス成分が付加されない場合には、結合係数の値と総合結合係数の値とは一致する。
【0026】
上記構成による電源回路は、一次側においてE級スイッチングコンバータとしての回路形態を形成する。E級スイッチングコンバータは、並列共振回路(一次側並列共振回路)と直列共振回路(一次側直列共振回路)を備える複合共振形といわれるソフトスイッチングコンバータの一形式である。そのうえで、E級スイッチングコンバータにおける直列共振回路(一次側直列共振回路)を形成するインダクタ(第2のインダクタ)をコンバータトランスの一次巻線として電源回路を構成している。
また、このような構成では、コンバータトランスの一次側と二次側との総合結合係数は、コンバータトランス自身の結合係数と、第1のインダクタとコンバータトランスの一次巻線(第2のインダクタ)との等価的な並列回路により得られる一次側のリーケージインダクタンスにより決定される。本発明は、このようにして総合結合係数が設定されることを考慮したうえで、疎結合としてみなされる所要の総合結合係数が得られるようにして、コンバータトランス自身の結合係数を設定するようにしている。このような総合結合係数の設定とすることで、中間負荷とされる負荷条件でのZVS動作が得られなくなる状態を回避する一要因となる。
このようにして総合結合係数を設定することにより、中間負荷とされる負荷条件範囲の下でZVS(Zero Voltage Switching:ゼロ電圧スイッチング)動作が得られなくなる異常動作を解消して、適正なZVS動作を得ている。
【0027】
また、本発明では、一次側のE級スイッチングコンバータは、商用交流電源を整流平滑化する整流平滑回路を形成する平滑コンデンサの両端電圧である整流平滑電圧を入力してスイッチングを行うようにされている。このとき、平滑コンデンサからE級スイッチングコンバータに流入する電流は、一次側並列共振回路を形成する第1のインダクタを介してスイッチング素子側に流れるようにされることで、直流となる。
【0028】
さらに、本発明では、一次巻線及び二次巻線とともに、第1のインダクタについても、コンバータトランスに巻装して設けることとしている。この第1のインダクタは、所定のインダクタンスを有し、また、一次巻線及び二次巻線に対する磁気結合の度合いが一定以下の状態となるようにして、コンバータトランスに巻装される。このことは、第1のインダクタがコンバータトランスの構造内に含められているとしても、一次巻線及び二次巻線に影響されることなく、E級スイッチングコンバータにおける一次側並列共振回路の動作を適正に実行可能であることを意味する。
【発明の効果】
【0029】
このようにして本発明は、一次側に並列共振回路を備えるスイッチング電源回路として、中間負荷とされる負荷条件範囲の下でZVS(Zero Voltage Switching:ゼロ電圧スイッチング)動作が得られなくなる異常動作が解消される。このことにより、二次側直列共振回路を備える電圧共振形コンバータの実用化が容易に実現されることになる。
また、商用交流電源から整流平滑電圧(直流入力電圧)を生成する整流平滑回路の平滑コンデンサからスイッチングコンバータに流入する電流が直流となることで、上記平滑コンデンサとしての部品素子のキャパシタンスについて小さい値を選定し、また、汎用品を選定することが可能になり、例えば平滑コンデンサの低コスト化や小型化などの効果が得られる。
また、第1のインダクタがコンバータトラスの構造内に含められることで、スイッチング電源回路としては、コンバータトランスと第1のインダクタとを別部品により回路基板に実装する必要が無くなる。これにより、例えば基板上の部品レイアウトなどが効率的なものとなって、例えば回路基板の小型化や、サイズ形状の自由度が高まる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態という)について説明するのに先立ち、本実施の形態の背景技術となる、E級共振形によりスイッチング動作するスイッチングコンバータ(以下、E級スイッチングコンバータともいう)の基本構成について、図17及び図18を参照して説明しておく。
図17は、E級スイッチングコンバータとしての基本構成を示している。この図に示すE級スイッチングコンバータは、E級共振形で動作するDC-ACインバータとしての構成を採る。
この図に示すE級スイッチングコンバータは、1石のスイッチング素子Q1を備える。この場合のスイッチング素子Q1はMOS−FETであることとしている。このMOS−FETとしてのスイッチング素子Q1には、ボディダイオードDDが、ドレイン−ソース間に対して並列接続されるようにして形成される。この場合のボディダイオードDDの順方向は、ソースからドレインへの方向に沿ったものとなる。
また、同じくスイッチング素子Q1のドレイン−ソース間に対しては、並列共振コンデンサCrが並列に接続される。
【0031】
スイッチング素子Q1のドレインは、チョークコイルL10の直列接続を介して、直流入力電圧Einの正極と接続される。スイッチング素子Q1のソースは、直流入力電圧Einの負極と接続される。
【0032】
また、スイッチング素子Q1のドレインに対しては、チョークコイルL11の一端が接続され、他端には直列共振コンデンサC11が直列に接続される。直列共振コンデンサC11と直流入力電圧Einの負極との間には、負荷となるインピーダンスZが挿入される。ここでのインピーダンスZの具体例には圧電トランス、高周波対応の蛍光灯などを挙げることができる。
【0033】
このような構成のE級スイッチングコンバータは、チョークコイルL10のインダクタンスと並列共振コンデンサCrのキャパシタンスとにより形成される並列共振回路と、チョークコイルL11のインダクタンスと直列共振コンデンサC11のキャパシタンスとにより形成される直列共振回路とを備える複合共振形コンバータの一形態であるとみることができる。また、スイッチング素子を1つのみ備えて形成される点では、シングルエンド方式の電圧共振形コンバータと同じであるといえる。
【0034】
図18は、上記図17に示した構成のE級スイッチングコンバータについての要部の動作を示している。
スイッチング電圧V1は、スイッチング素子Q1の両端に得られる電圧であり、スイッチング素子Q1がオンとなる期間TONにおいて0レベルで、オフとなる期間TOFFにおいて正弦波状のパルスとなる波形である。このスイッチングパルス波形は、上記並列共振回路の共振動作(電圧共振動作)により得られる。
【0035】
スイッチング電流IQ1は、スイッチング素子Q1(及びボディダイオードDD)に流れる電流であり、期間TOFFでは0レベルで、期間TONにおいては、先ず開始時点から一定期間において、ボディダイオードDDを流れることで負極性となり、この後に反転して正極性となって、スイッチング素子Q1のドレインからソースに流れる。
また、E級スイッチングコンバータの出力として、上記直列共振回路に流れるとされる電流I2は、スイッチング素子Q1(及びボディダイオードDD)に流れるスイッチング電流IQ1と、並列共振コンデンサCrに流れる電流とを合成したものとなり、正弦波成分を含む波形となる。
【0036】
また、上記スイッチング電流IQ1とスイッチング電圧V1との関係によっては、スイッチング素子Q1のターンオフタイミングにおいてZVS動作が得られており、ターンオンタイミングにおいてZVS及びZCS動作が得られていることも示される。
【0037】
また、直流入力電圧Einの正極端子からチョークコイルL10を流れるようにしてE級スイッチングコンバータに流入する電流I1は、チョークコイルL10,L11のインダクタンスについて、L10>L11の関係を設定していることで、図示するようにして所定の平均レベルをとる脈流波形となる。このような脈流波形は、近似的な直流としてみることができる。
【0038】
本実施の形態としては、上記基本構成に基づくE級スイッチングコンバータを電源回路に適用する。そこで先ず、第1の実施の形態の電源回路の構成例を図1の回路図に示す。
この図に示すスイッチング電源回路においては、まず、商用交流電源ACのラインに対して、図示するようにして、1組のコモンモードチョークコイルCMCと、2本のアクロスコンデンサCLが挿入される。これらコモンモードチョークコイルCMC、及びアクロスコンデンサCL,CLにより、商用交流電源ACのラインに重畳するコモンモードのノイズを除去するノイズフィルタが形成される。
【0039】
商用交流電源AC(交流入力電圧VAC)は、ブリッジ整流回路Diにより整流され、その整流出力は平滑コンデンサCiに充電される。つまり、ブリッジ整流回路Di及び平滑コンデンサCiから成る整流平滑回路により商用交流電源を整流平滑化する。これにより平滑コンデンサCiの両端電圧として整流平滑電圧Eiが得られる。この整流平滑電圧Eiが、後段のスイッチングコンバータのための直流入力電圧となる。
【0040】
この図において、上記整流平滑電圧Eiを直流入力電圧として入力してスイッチング動作を行うスイッチングコンバータは、上記図17の基本構成に基づいたE級スイッチングコンバータとして形成される。
この場合のスイッチング素子Q1には高耐圧のMOS−FETが選定されている。また、この場合のE級スイッチングコンバータの駆動方式は、発振・ドライブ回路2によりスイッチング素子をスイッチング駆動する他励式である。
【0041】
スイッチング素子Q1のドレインは、チョークコイル巻線N10の直列接続を介して平滑コンデンサCiの正極端子と接続される。従って、この場合には、直流入力電圧(Ei)は、チョークコイル巻線N10の直列接続を介してスイッチング素子Q1に供給されるようになっている。スイッチング素子Q1のソースは一次側アースに接続される。このチョークコイル巻線N10としてのインダクタ(第1のインダクタ)は、図17に示したE級スイッチングコンバータにおけるチョークコイルL10に相当する機能部位となる。また、この場合のチョークコイル巻線N10は、後述するようにして絶縁コンバータトランスPITの構造に含められるようにして巻装されて設けられる。
スイッチング素子Q1のゲートに対しては、発振・ドライブ回路2から出力されるスイッチング駆動信号(電圧)が印加されるようになっている。
【0042】
この場合のスイッチング素子Q1には、MOS−FETが選定されていることから、図示するようにして、ソース−ドレイン間に対して並列に接続されるようにしてボディダイオードDDを内蔵する。このボディダイオードDDとしては、アノードがスイッチング素子Q1のソースと接続され、カソードがスイッチング素子Q1のドレインと接続される状態を形成する。このボディダイオードDDは、スイッチング素子Q1のオン/オフ動作(スイッチング動作)により生じる、逆方向のスイッチング電流を流す経路を形成する。
【0043】
また、スイッチング素子Q1のドレイン−ソース間に対しては、一次側並列共振コンデンサCrが並列に接続される。
一次側並列共振コンデンサCrは、自身のキャパシタンスと絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1のリーケージ(漏洩)インダクタンスL1とによって、スイッチング素子Q1に流れるスイッチング電流に対する一次側並列共振回路(電圧共振回路)を形成する。この一次側並列共振回路が共振動作を行うことによって、スイッチング素子Q1のスイッチング動作として、1つには電圧共振形の動作が得られる。これに応じて、スイッチング素子Q1の両端電圧(ドレイン−ソース間電圧)V1としては、そのオフ期間において正弦波状の共振パルス波形が得られる。
【0044】
また、スイッチング素子Q1のドレイン−ソース間に対しては、後述する絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1と一次側直列共振コンデンサC11とから成る直列接続回路が並列に接続される。この場合には、一次巻線N1の巻き終わり端部をスイッチング素子Q1のドレインと接続し、巻始め端部を一次側直列共振コンデンサC11と接続している。一次側直列共振コンデンサC11の一次巻線N1と接続されない側の極端子は、一次側アース電位にてスイッチング素子Q1のソースと接続される。
【0045】
発振・ドライブ回路2は、例えば他励式によりスイッチング素子Q1を駆動するために、発振回路と、この発振回路により得られた発振信号に基づいて、MOS−FETをスイッチング駆動するためのゲート電圧であるドライブ信号を生成して、スイッチング素子Q1のゲートに印加するようにされる。これにより、スイッチング素子Q1は、ドライブ信号波形に応じて連続的にオン/オフ動作を行う。つまり、スイッチング動作を行う。
【0046】
絶縁コンバータトランスPITは、一次側と二次側とを直流的に絶縁した状態で、一次側スイッチングコンバータのスイッチング出力を二次側に伝送するもので、このために、一次巻線N1と二次巻線N2が巻装される。また、本実施の形態の場合には、チョークコイル巻線N10についても、絶縁コンバータトランスPITの構造内に含まれるようにして巻装される。
なお、絶縁コンバータトランスPITの構造例については、後述する。
【0047】
絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1は、後述するようにして、一次側に形成されるE級スイッチングコンバータにおける一次側直列共振回路を形成するための素子であり、スイッチング素子Q1のスイッチング出力に応じた交番出力が得られる。
【0048】
絶縁コンバータトランスPITの二次側では、一次巻線N1により誘起された交番電圧が二次巻線N2に発生する。
この二次巻線N2に対しては、二次側直列共振コンデンサC2を直列となる接続関係によりに接続している。これにより、二次巻線N2のリーケージインダクタンスL2と二次側直列共振コンデンサC2のキャパシタンスとによって二次側直列共振回路を形成する。この二次側直列共振回路は、後述する二次側整流回路の整流動作に応じて共振動作を行うが、これにより、二次巻線N2に流れる二次巻線電流は正弦波状となる。つまり、二次側において電流共振動作が得られる。
【0049】
この場合の二次側整流回路は、上記のようにして二次側直列共振コンデンサC2が直列接続された二次巻線N2に対して、2本の整流ダイオードDo1,Do2と、1本の平滑コンデンサCoを接続することで、倍電圧半波整流回路として形成される。この倍電圧半波整流回路の接続態様としては、まず、二次巻線N2の巻き終わり端部側に対して、二次側直列共振コンデンサC2を介して整流ダイオードDo1のアノードと、整流ダイオードDo2のカソードを接続する。また、整流ダイオードDo1のカソードを平滑コンデンサCoの正極端子に接続する。二次巻線N2の巻始め端部と、整流ダイオードDo2のアノードは、二次側アース電位にて平滑コンデンサCoの負極端子と接続する。
また、この場合においては、二次巻線N2と二次側直列共振コンデンサC2の直列接続回路に対して、二次側部分電圧共振コンデンサCp2を並列に接続している。
【0050】
このようにして形成される倍電圧半波整流回路の整流動作は次のようになる。
先ず、二次巻線N2に誘起される交番電圧である二次巻線N2の両端電圧(二次巻線電圧)の一方の極性に対応する半周期においては、整流ダイオードDo2に順方向電圧が印加されることになるので、整流ダイオードDo2が導通し、整流電流を二次側直列共振コンデンサC2に対して充電する動作が得られる。これによって、二次側直列共振コンデンサC2には、二次巻線N2に誘起される交番電圧レベルの等倍に対応したレベルの両端電圧が生成される。次の、二次巻線電圧V2の他方の極性に対応する半周期においては、整流ダイオードDo2に順方向電圧が印加されて導通する。このとき、平滑コンデンサCoに対しては、二次巻線電圧V1の電位と、上記二次側直列共振コンデンサC2の両端電圧とが重畳された電位により充電が行われる。
これによって平滑コンデンサCoの両端電圧としては、二次巻線N2に励起される交番電圧レベルの2倍に対応したレベルによる二次側直流出力電圧Eoが得られることになる。
この整流動作では、平滑コンデンサCoに対しては、二次巻線N2に励起される交番電圧の一方の半周期にのみ充電が行われる。つまり、倍電圧半波としての整流動作が得られている。また、このような整流動作では、二次巻線N2と二次側直列共振コンデンサC2の直列接続により形成される二次側直列共振回路の共振出力について整流動作を行っているものとしてみることができる。
このようにして生成される二次側直流出力電圧Eoは、負荷に供給される。また、分岐して制御回路1に対して検出電圧として出力される。
【0051】
また、先に説明した接続態様により二次側部分電圧共振コンデンサCp2が接続されることで、絶縁コンバータトランスPITの二次側に得られるリーケージインダクタンスと、二次側部分電圧共振コンデンサCp2とのキャパシタンスとによって、整流ダイオードDo1、Do2がターンオフ/ターンオンするタイミングにおいてのみ電圧共振動作を行う、二次側部分電圧共振回路が形成される。なお、二次側部分電圧共振コンデンサCp2は、二次側直列共振コンデンサC2と比較して非常に小さなキャパシタンスが設定されるので、二次側直列共振コンデンサC2を含む二次側直列共振回路の共振周波数fo1(s)などに影響を与えるものではない。
【0052】
制御回路1は、入力された二次側直流出力電圧Eoのレベル変化に応じた検出出力を発振・ドライブ回路2に供給する。発振・ドライブ回路2では、入力された制御回路1の検出出力に応じてスイッチング周波数、あるいは1スイッチング周期におけるオン期間TONとオフ期間TOFFの時比率(導通角)を可変するようにして、スイッチング素子Q1を駆動する。この動作が二次側直流出力電圧に対する定電圧制御動作となる。
【0053】
電圧共振形コンバータの基本的な定電圧制御動作は、スイッチング素子Q1のオフ期間TOFFは一定とされたうえで、オン期間TONを可変制御してスイッチング周波数を可変する動作となる。しかしながら、本実施の形態のようにして、二次側直列共振回路を備える場合には、上記もしているように、1スイッチング周期内の導通角を制御する、PWM(Pulse Width Modulation)制御としての定電圧制御動作も生じる。つまり、定電圧制御動作全体としては、スイッチング周波数制御とPWM制御との複合的な制御が行われるものとなる。
【0054】
上記のようにしてスイッチング素子Q1のスイッチング周波数及び導通角が可変制御されることにより、電源回路における一次側、二次側の共振インピーダンス、電力伝送有効期間が変化し、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1から二次巻線N2側に伝送される電力量、また、二次側整流回路から負荷に供給すべき電力量が変化することになる。これにより、二次側直流出力電圧Eoのレベル変動がキャンセルされるようにして、二次側直流出力電圧Eoのレベルを制御する動作が得られることになる。つまり、二次側直流出力電圧Eoの安定化が図られる。
【0055】
上記のようにして形成される本実施の形態の電源回路の一次側において形成されるスイッチングコンバータ(Q1、Cr、N10、N1、C11)と、先に図17に示したE級コンバータとしての回路構成とを比較してみると、本実施の形態のスイッチングコンバータは、図17の回路から負荷となるインピーダンスZを省略し、チョークコイルL10として機能するチョークコイル巻線N10として絶縁コンバータトランスPITの構造内に巻装するとともに、チョークコイルL11の巻線を絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1(リーケージインダクタンスL1)と置き換えたものとしてみることができる。また、本実施の形態の一次側スイッチングコンバータでは、チョークコイル巻線N10のインダクタンスと一次側並列共振コンデンサCrのキャパシタンスとによって一次側並列共振回路を形成し、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1と一次側直列共振コンデンサC11のキャパシタンスとにより一次側直列共振回路を形成する。
このことから、本実施の形態の一次側スイッチングコンバータは、E級共振形のスイッチング動作を行うE級スイッチングコンバータとして形成されている、ということがいえる。そして、この一次側スイッチングコンバータのスイッチング動作により得られるスイッチング出力(交番出力)を、絶縁コンバータトランスPITにおける磁気結合を介するようにして、チョークコイルL11に相当する一次巻線N1から二次巻線N2に伝達し、二次側にて整流を行って直流出力電圧Eoを得るようにされている。つまり、図1に示す実施の形態の電源回路は一次側にE級スイッチングコンバータを備えるDC-DCコンバータとして構成される。
また、本実施の形態のようにして形成される一次側のE級スイッチングコンバータは、チョークコイル巻線N10、及び一次側並列共振コンデンサCrとともに電圧共振形コンバータを形成するスイッチング素子Q1(及びボディダイオードDD)に対して、一次側直列共振回路を形成する一次巻線N1及び一次側直列共振コンデンサC11の直列接続回路を並列接続した複合共振形コンバータ、ソフトスイッチング電源の構成であるともみることができる。
【0056】
ここで、図1の電源回路に備えられる絶縁コンバータトランスPITの構造例を、図2に示す。
先ず、図2に示される絶縁コンバータトランスPITは、例えばフェライト材によるE字形状コアCR1、CR2を互いの磁脚が対向するように組み合わせたEE字形コアを備える。
そして、一次側と二次側の巻装部について相互に独立するようにして分割した形状により、例えば樹脂などによって形成される、ボビンBb1が備えられる。このボビンBb1の一方の巻装部に対して一次巻線N1を巻装する。また、他方の巻装部に対して二次巻線N2を巻装する。
このようにして一次側巻線及び二次側巻線が巻装されたボビンBb1を、上記E字形状コアCR1,CR2から成るEE字形コアの中央磁脚が貫通するようにして取り付けることで、一次側巻線及び二次側巻線とがそれぞれ異なる巻装領域により、EE字形コア部分の中央磁脚に巻装される状態となる。
また、上記EE字形コア(CR1,CR2)に対しては、さらにE字形状コアCR3が図示するようにして組み合わされる。この場合には、EE字形コア(CR1,CR2)におけるE字形状コアCR1側の側面に対して、E字形状コアCR3の脚部端面が対向するようにして組み合わされる。
このE字形状コアCR3に対しては、1つの巻装領域を持つボビンBb2が取り付けられ、その巻装領域に対してチョークコイル巻線N10を巻装する。これにより、チョークコイル巻線N10は、E字形状コアCR3の中央磁脚に対して巻装される状態となる。
【0057】
そして、EE字形コア(CR1,CR2)の中央磁脚に対しては、図のようにして、所定長のギャップG1を形成する。これによって、絶縁コンバータトランスPIT自体における一次側と二次側との結合係数kとしては、例えばk≒0.75程度による疎結合の状態を得るようにしている。つまり、従来技術として図19に示した電源回路の絶縁コンバータトランスPITよりも、さらに疎結合の状態としている。なお、ギャップG1は、E字形状コアCR1,CR2の中央磁脚を、2本の外磁脚よりも短くすることで形成することができる。
また、例えばEE字形状コアCR3の中央磁脚を外磁脚よりも短く形成することで、EE字形状コアCR3の中央磁脚の端部と、EE字形状コアCR1との側面部との間にギャップG2を形成するようにされる。この場合のギャップG2のギャップ長は、上記ギャップG1のギャップ長に対して約1/2を設定することとしている。
【0058】
このようにして、図2に示す絶縁コンバータトランスPITは複合トランスとしての構造を採る。つまり、一次巻線N1と二次巻線N2が直流的に絶縁される状態で巻装される基本構成を採ったうえで、一次側に備えられるチョークコイル巻線N10も巻装される構造である。そして、このような図2に示す構造では、先ず、一次巻線N1及び二次巻線N2に電流が流れることによっては、E字形状コアCR1、CR2から成るEE字形コアにて主たる磁路(磁気回路)を形成するが、チョークコイル巻線N10に電流が流れることによっては、E字形状コアCR3側のみにて主たる磁路を形成する。このようにして磁路が形成されることで、一次巻線N1及び二次巻線N2が形成する磁路の磁束と、チョークコイル巻線N10が形成する磁路の磁束が鎖交する度合いは非常に小さくなる。この結果、チョークコイル巻線N10としては、例えば巻線数やギャップG2のギャップ長などに応じた所定のインダクタンスを有するとともに、一次巻線N1及び二次巻線N2に対する磁気結合の度合い(結合係数)は、0とみなしてよい程度の一定以下にまで小さいものとなる。つまり、チョークコイル巻線N10側と一次巻線N1及び二次巻線N2側とではトランス結合は存在しないものとしてみてよい状態を生じている。これにより、一次巻線N1と二次巻線N2とを結合するコンバータトランス機能と、チョークコイル巻線N10によるチョークコイルとしての機能は、それぞれ相互に影響されることなく独立しているものとされる状態で動作する。従って、一次巻線N1、二次巻線N2及びチョークコイル巻線N10が1つのトランス構造内に含まれているのに関わらず、一次側において適正なE級スイッチングコンバータの動作が得られることになる。
【0059】
例えば一般的には、絶縁コンバータトランスPITはEE字形コア(CR1,CR2)に対して一次巻線N1及び二次巻線N2を巻装した構造とし、チョークコイルL10は、絶縁コンバータトランスPITに対して独立した部品として構成することになる。このような構成では、絶縁コンバータトランスPITとチョークコイルL10とで独立した2つの部品が必要になる。これに対して、本実施の形態の絶縁コンバータトランスPITの構造であれば、これらの部品は1つにまとめられることとなる。これにより、例えば回路基板における部品配置などがこれまでよりも効率的なものとなって、例えば回路基板サイズの小型化などが図られることになる。
【0060】
絶縁コンバータトランスPITの他の構造例について、図3、図4に示す。
図3に示される絶縁コンバータトランスPITは、例えばフェライト材によるE字形状コアCR11、CR12を互いの磁脚が対向するように組み合わせたEE字形コアを備える。なお、このEE字形コアにおける2本の外磁脚及び1本の中央磁脚の断面サイズは同じであるようにされている。
そのうえで、ボビンBb11において形成される2つに分割された巻装部に対して、それぞれ、一次巻線N1、二次巻線N2を巻装し、このボビンBb11をEE字形コアの一方の外磁脚に対して取り付けるようにする。これにより、一次巻線N1、二次巻線N2は、それぞれ異なる巻装領域により、同じ外磁脚に巻装される状態となる。このようにして一次巻線N1、二次巻線N2を巻装したうえで、EE字形コアの中央磁脚に対しては所定長のギャップG11を形成する。これにより、一次巻線N1と二次巻線N2については、所定の結合係数kによる疎結合とされる結合度が得られる。
また、ボビンBb12の巻装部に対してはチョークコイル巻線N10を巻装して、このボビンBb12をEE字形コアの一方の外磁脚に対して取り付ける。これにより、チョークコイル巻線N10は、一次巻線N1及び二次巻線N2が巻装される外磁脚に対して、中央磁脚を対称にして反対側となる外磁脚に巻装される状態となる。
このような構造では、一次巻線N1及び二次巻線N2による主たる磁路は、これら一次巻線N1及び二次巻線N2が巻回される外磁脚と中央磁脚とをつなぐようにして形成され、チョークコイル巻線N10による主たる磁路は、チョークコイル巻線N10が巻回される外磁脚と中央磁脚とをつなぐようにして形成されることから、この場合にも両磁路の磁束が鎖交する度合いは非常に小さくなる。これにより、チョークコイル巻線N10と、一次巻線N1及び二次巻線N2との結合度(結合係数)はほぼ0とみなしてよく、トランス結合は存在しないとする状態を、図2の場合と同様に得ることができる。
【0061】
また、図4に示される絶縁コンバータトランスPITは、例えば先ず、フェライト材によるU字形状コアCR21、CR22を互いの磁脚が対向するように組み合わせたUU字形コアを形成し、さらにこのUU字形コアに対して、U字形状コアCR23が組み合わされる。
UU字形コア側におけるU字形状コアCR21、CR22の各2本の磁脚が互いに対向する部位には、図示するようにして、所定ギャップ長のギャップG21、G22が形成される。また、UU字形コア(CR21、CR22)におけるU字形状コアCR22の側面部に対して、U字形状コアCR23の2本の磁脚端部が対向する各部位においては、所定のギャップ長のギャップG23,G24を形成するようにしている。
そのうえで、ボビンBb21において形成される2つに分割された巻装部に対して、一次巻線N1と二次巻線N2をそれぞれ巻装し、このボビンBb21をUU字形コア(CR21、CR22)の一方の磁脚に対して取り付ける。これにより、一次巻線N1及び二次巻線N2は、UU字形コア(CR21、CR22)の一方の磁脚において、それぞれ異なる巻装領域において巻装される状態となり、上記ギャップG21、G22のギャップ長の設定により、一次巻線N1と二次巻線N2については、所定の結合係数kによる疎結合とされる結合度が得られる。
また、ボビンBb22に対してチョークコイル巻線N10を巻装し、U字形状コアCR23の一方の磁脚に対して取り付けることで、チョークコイル巻線N10がU字形状コアCR23の一方の磁脚に巻装される状態とする。このとき、一次巻線N1及び二次巻線N2による主たる磁路はUU字形コア(CR21、CR22)にて形成され、チョークコイル巻線N10による主たる磁路はU字形状コアCR23側にて形成され、両磁路の磁束の鎖交はほとんど無いとされる状態が得られる。これにより、図2、図3と同様に、チョークコイル巻線N10と、一次巻線N1及び二次巻線N2との磁気的結合度(結合係数)はほぼ0とみなされ、トランス結合も存在しないとみなしてよい状態を得ることができる。
【0062】
そして、図1に示した回路形態の電源回路について、後述する図5及び図6に示される実験結果を得るのにあたり、要部については、下記のように選定した。
先ず、絶縁コンバータトランスPITについては、図2に示した構造を採用することとして、EE字形コア(CR1,CR2)についてEER-35を選定して、ギャップG1については1.6mmのギャップ長を設定した。一次巻線N1及び二次巻線N2の各巻数(ターン数)Tについては、N1=59T、N2=30Tを選定した。これにより、絶縁コンバータトランスPIT自体における一次側と二次側との結合係数kについてはk=0.75が設定される。
また、EE字形状コアCR3についてはER−35を選定して、ギャップG2については、0.8mmとして、インダクタンスL10=1.05mHとなるようにしてチョークコイル巻線N10を巻装した。
なお、上記EERのコアは、よく知られているように、製品としてのコアの型式、規格の1つであり、この型式には、EEのあることも知られている。本願においてEE字形という場合には、断面がEE字形状であることに応じて、EER、EEの何れのタイプについてもEE字形のコアであるとして扱うものとする。
また、一次側並列共振コンデンサCrのキャパシタンスについてはCr=5600pFを選定した。この一次側並列共振コンデンサCrについてのキャパシタンス設定と、上記チョークコイル巻線N10のインダクタンス(L10)とにより、一次側並列共振回路の共振周波数fo1(p)=65.8kHzが設定される。
また、一次側直列共振コンデンサC11は、0.027μFを選定しており、このキャパシタンス設定と、次に説明する絶縁コンバータトランスPITの一次側の総合結合係数ktに応じた一次側のリーケージインダクタンスとにより、一次側直列共振回路の共振周波数fo1(s)=45kHzが設定される。
また、二次側直列共振コンデンサC2は、0.082μFを選定しており、このキャパシタンス設定と、二次巻線N2のリーケージインダクタンスL2とにより、二次側直列共振回路の共振周波数fo2=48kHzを設定している。
また、二次側部分電圧共振コンデンサCp2については470pFを選定した。
上記した共振周波数fo1(p),fo1(s),fo2の相対的な関係としては、共振周波数fo1(s),fo2についてはほぼ同等として、これら共振周波数fo1(s),fo2に対して、共振周波数fo1(p)が1.4倍〜1.5倍程度となるようにして設定している、ということがいえる。また、図19に示した従来の電源回路における一次側並列回路の共振周波数fo1と二次側直列共振回路の共振周波数fo2との比較では、共振周波数fo1(p),fo1(s),fo2は、全体としてより低い周波数が設定され、また、共振周波数fo1(p),fo1(s),fo2での間の周波数差も縮小されている。
対応負荷電力は、最大負荷電力Pomax=300W、最小負荷電力Pomin=0W(無負荷)とし、二次側直流出力電圧Eoの定格レベルは175Vとしている。
【0063】
ここで、図1に示す電源回路における絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1とチョークコイルL10とについてスイッチング周期でみた場合には、並列接続の関係にあることと等価であるとみることができる。チョークコイル巻線N10から発生する磁束は、この場合には、絶縁コンバータトランスPITの二次巻線N2とは結合することがない。このことから、絶縁コンバータトランスPITの一次側におけるリーケージインダクタンスの成分は増加するものとしてみることができる。
このために、絶縁コンバータトランスPITそのものとしての結合係数kとしては、前述したように、例えばk=0.75程度が設定されるのであるが、上記のようにして、絶縁コンバータトランスPITの一次側のリーケージインダクタンスが増加することで、電源回路内における絶縁コンバータトランスPITの総合的な結合係数としては、0.75よりも低い値が得られることになる。つまり、電源回路としてみた、絶縁コンバータトランスPITの一次側と二次側の間の総合的な結合度としては、絶縁コンバータトランスPITの構造自体による結合係数kに対して、より低く設定されることになる。この結合度についての数値を、ここでは、総合結合係数ktとして扱う。
本実施の形態としては、例えば、チョークコイル巻線N10について、先に説明した所定のインダクタンス値を設定することで、総合結合係数ktについて、0.7程度またはそれ以下の疎結合とみなされる値を設定することとし、実際としては、kt=0.65を設定することとしている。この場合の総合結合係数ktの設定要素としては、絶縁コンバータトランスPITの構造自体による結合係数kと、チョークコイル巻線N10のインダクタンスであることになる。一次巻線N1と一次側直列共振コンデンサC11とを直列接続することで形成される一次側直列共振回路については、総合結合係数ktに応じた一次側のリーケージインダクタンスと、一次側直列共振コンデンサC11のキャパシタンスとにより設定される。
【0064】
図5の波形図は、図1の電源回路についての要部の動作をスイッチング素子Q1のスイッチング周期により示している。図5(a)には、最大負荷電力Pomax=300W時における入力電流I1、スイッチング電圧V1、一次巻線電流I2、スイッチング電流IQ1、一次側直列共振電圧V2、二次側交番電圧V3、二次側部分共振電流I4、二次側整流電流ID1,ID2が示される。図5(b)には、中間負荷とされる負荷電力Po=225W時における入力電流I1、スイッチング電圧V1、一次巻線電流I2、スイッチング電流IQ1が示される。図5(c)には、最小負荷電力Pomin=0W時における入力電流I1、スイッチング電圧V1、一次巻線電流I2、スイッチング電流IQ1が示される。交流入力電圧条件は、VAC=100Vである。
【0065】
図5(a)に示す最大負荷電力Pomax=300W時の波形図により、図1の電源回路の基本的な動作について説明する。
入力電流I1は、平滑コンデンサCiから一次側スイッチングコンバータに流入しようとする電流である。入力電流I1がスイッチング素子Q1側に流入する経路である、平滑コンデンサCoの正極端子とスイッチング素子Q1のドレイン側との間のラインには、一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1よりも大きなインダクタンスが設定されたチョークコイルL10が挿入されていることで、入力電流I1は、チョークコイルL10を介するようにして流れることになる。このために、入力電流I1は平均値I0の脈流となる。このような波形の入力電流I1は、直流としてみることができる。つまり、本実施の形態では、平滑コンデンサCiからスイッチングコンバータに流入する電流は直流となる。チョークコイルL10を介して流れた入力電流I1は、一次巻線N1−一次側直列共振コンデンサC11の直列回路と、スイッチング素子Q1(及びボディダイオードDD)、一次側並列共振コンデンサCrに対して分流するようにして流れる。
【0066】
スイッチング素子Q1は、平滑コンデンサCiの両端電圧(Ei)を直流入力電圧として入力してスイッチング動作を行う。スイッチング電圧V1は、スイッチング素子Q1のドレイン−ソース間の電圧であり、スイッチング電流IQ1は、ドレイン側からスイッチング素子Q1(及びボディダイオードDD)に流れる電流となる。スイッチング電圧V1及びスイッチング電流IQ1によっては、スイッチング素子Q1のオン/オフタイミングが示される。1スイッチング周期は、スイッチング素子Q1がオンとなるべき期間TONと、オフとなるべき期間TOFFとに分けられ、スイッチング電圧V1は、期間TONにおいては0レベルで、期間TOFFにおいて共振パルスが得られる波形となる。このスイッチング電圧V1の共振パルスは、一次側並列共振回路の共振動作により、正弦波状の共振波形として得られる。
スイッチング電流IQ1は、期間TOFFにおいては0レベルであり、この期間TOFFが終了して期間TONが開始されてターンオンタイミングに至ると、先ず、ボディダイオードDDを流れることで負極性の波形となり、続いて反転してドレインからソースに流れることで正極性による波形となる。
【0067】
一次巻線電流I2は、スイッチング素子Q1のスイッチング動作に応じて一次巻線N1に流れる電流であり、この図に示す極性では、スイッチング電流IQ1と一次側並列共振コンデンサCrに流れる電流が合成されたものとしてみることができる。この一次巻線電流I2は、一次側直列共振回路の出力電流としてみることができる。つまり、スイッチング素子Q1がオン/オフ動作を行うことにより、期間TOFFのスイッチング電圧V1である電圧共振パルスが一次側直列共振回路を形成する一次巻線N1、一次側直列共振コンデンサC11の直列接続回路に印加される。これにより一次側直列共振回路が共振動作を行い、一次巻線電流I2は、スイッチング周期に応じた正弦波状の交番波形となる。また、一次側直列共振電圧V2は、一次側直列共振コンデンサC11の両端電圧である。この一次側直列共振電圧V2も、図示するようにして、スイッチング周期に応じた正弦波状の交番波形となる。
【0068】
期間TONが終了して期間TOFFに至ってスイッチング素子Q1がターンオフするタイミングでは、一次側並列共振コンデンサCrを充電するようにして正極性の一次巻線電流I2を流す動作が開始され、これに応じて、スイッチング電圧V1は0レベルから正弦波状により上昇を開始して、電圧共振パルスが立ち上がる。一次巻線電流I2が負極性に反転すると、一次側並列共振コンデンサCrは充電から放電が行われる状態に移行することになり、電圧共振パルスはピークレベルから正弦波状により下降していく。
そして、スイッチング電圧V1としての電圧共振パルス波形が0レベルにまで降下したとされると、先ず、ボディダイオードDDが導通して負極性の一次巻線電流I2を流すことになる。このときスイッチング電圧V1は0レベルであり、一定期間においてボディダイオードDDに一次巻線電流I2が流れると、スイッチング素子Q1のドレイン−ソース間がオンとなって、正極性の一次巻線電流I2を流す。このようにして期間TONにおいて、スイッチング素子Q1(及びボディダイオードDD)に一次巻線電流I2が流れることで、スイッチング電流IQ1の波形が得られる。このような動作は、スイッチング素子Q1のターンオン、ターンオフ時において、一次側並列共振回路によるZVS動作、及び一次側直列共振回路によるZCS動作が得られていることを示す。
【0069】
また、二次側交番電圧V3、二次側整流電流ID1,ID2によっては、二次側整流回路の動作が示される。
二次巻線N2と二次側直列共振コンデンサC2の直列接続回路の両端電圧であり、二次側整流回路が入力する二次側交番電圧V3は、二次側交番電圧V3の半周期の期間ごとに、整流ダイオードDo1,Do2に対して順方向電圧を印加し、これに応じて整流ダイオードDo1,Do2が交互に導通する。これにより、二次側交番電圧V3は、整流ダイオードDo1,Do2の導通期間に応じて二次側直流出力電圧Eoに応じた絶対値レベルによりクランプされた交番波形となる。また。この場合の二次側交番電圧V3は、部分電圧共振動作が生じるのに応じて、波形の立ち上がり/立ち下がりに一定の傾斜が生じている。
二次側整流電流ID1,ID2は、図示するようにして、半波の正弦波形状により交互となるようにして平滑コンデンサCoに対して流れる。二次巻線N2に流れる二次巻線電流I2は、二次側整流電流ID1,ID2を合成して得られ、図示するようにして正弦波状となる。
二次側部分共振電流I4は、整流ダイオードDo1がターンオフし、かつ、整流ダイオードDo2がターンオンするタイミングにおいてのみ正極性で流れ、整流ダイオードDo1がターンオンし、かつ、整流ダイオードDo2がターンオフするタイミングにおいてのみ負極性で流れている。この波形により、整流ダイオードDo1,Do2がターンオン/ターンオフするタイミングにおいてのみ電圧共振動作を生じる部分電圧共振動作が得られていることが示される。
【0070】
上記図5(a)として示される各部の動作をふまえて、図5(b)に示される中間の負荷電力Po=225W時、及び図5(c)に示される最小負荷電力Pomin=0W時の波形を参照してみると、一次側スイッチングコンバータの動作としては、軽負荷から無負荷の傾向となっていくのに従って、1スイッチング周期(TOFF+TON)の期間長は短くなっている。このことは、後述するようにして、最大負荷電力Pomax〜最小負荷電力Pominの範囲での負荷変動に応じた定電圧制御動作として、スイッチング周波数に相応の変化を与えていることを示す。また、期間TOFFと期間TONの時比率に着目すると、軽負荷から無負荷の傾向となっていくのに応じて、期間TOFFが拡大し、期間TONが縮小していく傾向となっている。このことは、最大負荷電力Pomax〜最小負荷電力Pominの範囲での負荷変動に応じた定電圧制御動作として、PWM制御による期間TOFFと期間TONの時比率の変化も与えられていることを示す。
【0071】
また、図5(b)に示す中間負荷電力Po=225W時のスイッチング電流IQ1の波形によると、図5(a)の場合と同様にして、期間TONが開始されるタイミングで負極性によりボディダイオードDDを流れている動作となっていることがわかる。つまり、適正にZVSが得られている。この点については、図5(c)に示す最小負荷電力Pomin=0W時のスイッチング電流IQ1についても同様のことがいえる。このことは、図1に示す電源回路では、対応負荷電力の全領域においてZVS動作が保証されていることを示している。
【0072】
図6は、図1に示した電源回路についての実験結果として、負荷変動に対するAC→DC電力変換効率(ηAC→DC)、スイッチング周波数fs、及び期間TON、TOFFの時間長、及びスイッチング電流IQ1の変化特性を示している。
この図に示すようにして、スイッチング周波数fsについては、最大負荷電力Pomax=300Wから最小負荷電力Pomin=0W(無負荷)までの範囲で、軽負荷の傾向となるのに応じてほぼ一定の傾きにより高くなっていく傾向で変化している。
また、スイッチング素子Q1がオンとなる期間TONの時間長は、最小負荷電力Pomin=0Wから最大負荷電力Pomax=300Wまでの範囲において、重負荷の傾向となっていくのに応じてほぼ一定の傾きにより増加する傾向となっている。これに対して、スイッチング素子Q1がオフとなる期間TOFFの時間長は、最小負荷電力Pomin=0Wから最大負荷電力Pomax=300Wまでの範囲において、重負荷の傾向となっていくのに応じてほぼ一定の傾きにより低下する傾向となっている。傾きの度合いは、期間TONのほうが期間TOFFよりも大きくなっている。
【0073】
このようなスイッチング周波数fs及び期間TON、TOFFの特性は、定電圧制御として、先ず、スイッチング周波数fsを可変するスイッチング周波数制御が行われていることを示している。スイッチング周波数fsが変化するということは、TON+TOFFで示される1スイッチング周期の時間長が変化するということであるが、本実施の形態では、スイッチング周波数fsが高くなるのに応じて1スイッチング周期の時間長(TON+TOFF)が短くなっていくときに、期間TONが一定の割合で短くなっていくのに対して、期間TOFFは一定の割合で長くなっていくという変化を示していることになる。このような1スイッチング周期内での期間TON、TOFFの変化は、スイッチング素子Q1の導通期間を制御するPWM制御が行われているものとみることができる。
このことから、本実施の形態ではスイッチング周波数制御とPWM制御とが同時に行われる複合的な定電圧制御動作となっているということがいえる。このような複合制御は制御感度が高い。
【0074】
図1の電源回路に関して、定電圧制御に関する実際の測定結果としては次のようになった。
先ず、交流入力電圧VAC=100Vで、最大負荷電力Pomax=300W〜最小負荷電力Pomin=0Wの負荷変動に対して二次側直流出力電圧Eoを175Vで安定化するために必要とされるスイッチング周波数fsの可変範囲(Δfs)は18.5KHzであり、また、期間TONの変動範囲(ΔTON)は3.6μs、期間TOFFの変動範囲(ΔTOFF)=1.8μsとなった
【0075】
また、この場合のAC→DC電力変換効率(ηAC→DC)は、最大負荷電力Pomax=300Wから負荷電力Po=100W程度までの範囲では、軽負荷傾向となるのに従って高くなっていく特性で、負荷電力Po=100W程度では、最大値として93%以上が得られている。また、最大負荷電力Pomax=300Wから負荷電力Po=25W程度までの範囲で90%以上が得られるという良好な特性である。
【0076】
また、スイッチング電流IQ1は、最小負荷電力Pomin=0W(無負荷)から最大負荷電力Pomax=300までの範囲において、重負荷の傾向となるのに応じてほぼ一定の傾きにより高くなっていく特性である。
【0077】
ここで、図1に示される本実施の形態の電源回路と、従来例として図19に示した電源回路とを比較してみると次のことがいえる。
一般的に、一次側に電圧共振形コンバータを備える電源回路は、負荷電力の制御範囲が狭く、また、軽負荷時におけるZVSが維持できないために、そのままでは実用化は不可能であると考えられている。そこで、図19に示したように、一次側電圧共振形コンバータに対して二次側直列共振回路を設け、二次側整流回路として倍電圧半波整流回路を形成した電源回路を構成して本願発明者が実験を行ったところ、それまでの電圧共振形コンバータを備える電源回路よりも、実現化に近づく特性が得られることが確認された。
しかしながら、図19の電源回路では、図20により説明したように、中間負荷時において、スイッチング素子Q1のオフ期間(TOFF)が終了しないうちにスイッチング素子Q1に正極方向(この場合はドレイン→ソース方向)に電流が流れてZVSの動作が得られないという異常動作を生じる。このために、図19の電源回路の構成であっても、依然として実用化は困難な状況であった。
これに対して、図1に示した実施の形態の電源回路では、図5の波形図によっても説明したように、対応負荷電力の全領域にわたってZVS動作が得られている。つまり、中間負荷時における異常動作は解消されている。E級スイッチングコンバータの基本構成は、1石のスイッチング素子と並列共振回路とを含んでいるので、本実施の形態の電源回路は、シングルエンド方式の電圧共振形コンバータの回路構成を備えるスイッチングコンバータとして、実用化が容易に実現可能となっている、ということがいえる。
【0078】
図19に示される電源回路の中間負荷時の異常動作は、電圧共振形コンバータに二次側直列共振回路を備えた形式の複合共振形コンバータを構成した場合に生じやすいことが確認されている。これは、電圧共振形コンバータを形成する一次側並列共振回路と、二次側直列共振回路(整流回路)とが同時に動作することによる相互作用が主たる原因となっている。
そこで、本実施の形態の場合には、上記した中間負荷時の異常動作は、一次側電圧共振形コンバータと二次側直列共振回路とを組み合わせた回路構成であることがそもそもの要因であると捉えることとした。
このことに基づき、先ず、本実施の形態としては、一次側スイッチングコンバータとして、電圧共振形コンバータに代えて、E級スイッチングコンバータを適用した構成のものを備えることとした。
また、総合結合係数kt=0.65程度を設定して、絶縁コンバータトランスPITの一次側と二次側の結合度を従来よりも低下させた。これにより、一次側のスイッチングコンバータの動作と、二次側整流回路の整流動作(スイッチング動作)との相互作用を希薄化した。
このような構成の電源回路とした結果、二次側に対して直列共振回路を設ける、あるいは設けない場合とに関わらず、中間負荷時においてZVSが得られなくなる異常動作が解消されるという実験結果が得られた。具体的には、例えば図20(b)に示した、期間TOFFの終了タイミングの前後で正極性のスイッチング電流IQ1が流れる現象が観察されなくなり、通常のZVSに対応するスイッチング電流IQ1の波形が得られることになる。
なお、図1に示す電源回路のようにして、二次側整流回路として倍圧半波整流回路を備える場合、二次巻線N2には、誘起電圧が正/負の各期間において電流が流れる。このような整流動作となる整流回路の場合には、二次側直列共振コンデンサを接続して二次側直列共振回路を形成することで、この二次側直列共振回路の共振動作による電力増加などの作用が得られ、電力変換効率の向上につなげることができる。
【0079】
また、図19に示す電源回路では、平滑コンデンサCiからスイッチングコンバータに流入する電流は、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1を経由してスイッチング素子Q1、一次側並列共振コンデンサCrに流入する。この場合、平滑コンデンサCiからスイッチングコンバータに流入する電流は一次巻線電流I1となるものであり、スイッチング周期による比較的高い周波数となる。つまり、平滑コンデンサCiに対しては商用交流電源周期に対して高周波で充放電電流が流れる。
平滑コンデンサCiとしての部品素子には高耐圧が要求されることなどに応じてアルミ電解コンデンサがしばしば採用される。アルミ電解コンデンサは、他の種類のコンデンサなどと比較して、高周波で動作させると静電容量が低下すると共に損失角の正接が増加しやすい性質を有している。このために、平滑コンデンサCiに使用するアルミ電解コンデンサには、ESR(等価直列抵抗)が低く、また、許容リップル電流が多い特殊品を選定する必要がある。また、平滑コンデンサCiとしての素子のキャパシタンスについても相応に大きな値を選定する必要が出てくる。例えば図19の電源回路の構成で、本実施の形態と同等の最大負荷電力Pomax=300Wに対応させる場合には、1000μF程度を選定することになる。このようなアルミ電解コンデンサは、汎用のアルミ電解コンデンサよりも高価であり、また、キャパシタンスの増加に応じた部品価格の上昇も含めてコスト的に不利となる。
【0080】
これに対して図1に示した本実施の形態の電源回路は、平滑コンデンサCiからスイッチングコンバータに流入する電流は、チョークコイルL10を介してスイッチング素子Q1、一次側並列共振コンデンサCr、一次側直列共振回路(N1−C11)に流れるようになっている。このために、平滑コンデンサCoからスイッチングコンバータに流入する電流は、図5の入力電流I1としても示されるように直流となる。このようにして、平滑コンデンサCiからスイッチングコンバータに流入する電流が直流となることで、本実施の形態では、上記した静電容量の低下や損失角の正接の増加の問題は生じることが無く、従って、平滑コンデンサCiとして汎用のアルミ電解コンデンサを選定することができる。また、平滑コンデンサCiとしての素子のキャパシタンスについても、図19の回路の場合よりも低い値を選定できる。図1の回路の実際としては、680μFを選定できる。このようにして、本実施の形態では、平滑コンデンサCiについてのコストダウンを図ることが可能になる。
【0081】
また、本実施の形態の電源回路では、絶縁コンバータトランスPITの一次側と二次側との総合結合係数ktとして0.65程度を設定している。この総合結合係数ktは、絶縁コンバータトランスPIT自体の結合係数kと、一次巻線N1とチョークコイルL10とが等価的に並列接続されることによる一次巻線N1のリーケージインダクタンスの見かけ上の増加分とにより得られるものである。
例えば、図19に示した電源回路の構成のもとで、0.65程度の総合結合係数kを得ようとすれば、絶縁コンバータトランスPIT自体の結合係数ktについて0.65程度が設定されるようにすることになる。このためには、例えば、絶縁コンバータトランスPITが図2に示した構造を採る場合には、ギャップGについて2mm以上に拡大してコアを形成すればよい。しかし、ギャップ長の拡大は渦電流による損失(渦電流損)を増加させる要因となるので、いたずらにギャップ長を拡大していくことは好ましいことではなく、条件などによっては、渦電流損による電力損失が無視できなくなる場合も出てくる可能性がある。
本実施の形態の場合には、上記のようにして一次巻線N1のリーケージインダクタンスの増加分により、0.65程度の総合結合係数ktの値を得ていることで、絶縁コンバータトランスPIT自体の結合係数kについては0.75程度までの低下で抑えることができている。そして、これに伴って、絶縁コンバータトランスPITのコアに形成するギャップGについては1.6mm程度のギャップ長を設定できる。この程度のギャップ長であれば、渦電流損について特に考慮する必要はない。
【0082】
上記のようにして、本実施の形態の電源回路では、絶縁コンバータトランスPITにおける渦電流損失の増加を抑えるように考慮して、絶縁コンバータトランスPIT自体の結合係数kについては、総合結合係数よりも高い値を設定しているが、例えば従来としての図19の電源回路が結合係数k=0.80〜0.85程度であることと比較すれば、相当に低い値を設定している。
このように、本実施の形態の絶縁コンバータトランスPIT自体が有する結合係数kにまで疎結合の状態とすることは、従来の電圧共振形コンバータでは、一次側から二次側への電力伝送ロスの増加による電力変換効率の低下を招くということを理由に、これまで行われてこなかったという背景がある。
また、直流入力電圧がスイッチングコンバータに流入するラインに対して、比較的大きいインダクタンスのチョークコイルL10を挿入することによる電力損失も相応に生じる。
しかしながら、本実施の形態では、図6の実験結果としても示したように、対応負荷電力のほぼ全領域にわたって、良好とみてよい電力変換効率特性を得ている。
【0083】
本実施の形態において高電力変換効率が得られているのは、次のような構成に基づいている。
先ず、電圧共振形コンバータに対して二次側直列共振回路を備える電源回路の構成は、本来、電力変換効率に関しては有利であることが知られている。特に、この構成は、最大負荷電力から軽負荷の傾向となるのにしたがって、電力変換効率が増加していくという特徴的な性質を有しており、軽負荷傾向に応じて電力変換効率が低下する傾向となる電流共振形コンバータと比較すれば、負荷変動に対する電力変換効率特性としては非常に良好であるということがいえる。また、電圧共振形コンバータとしてシングルエンド方式を採用してスイッチング素子を必要最小限の1石とすることで、例えばハーフブリッジ結合方式、フルブリッジ結合方式、プッシュプル方式などの複数のスイッチング素子を備える構成と比較してスイッチング損失を減少させていることも、電力変換効率の向上要因となっている。
本実施の形態のE級スイッチングコンバータも、一次側並列共振回路と1石のスイッチング素子が組み合わされた構成を含むことで、シングルエンド方式の電圧共振形コンバータの構成を含んでいるということがいえ、上記したような電圧共振形コンバータとしての良好な電力変換効率特性を引き継いでいる。
【0084】
そのうえで、本実施の形態としては、上記もしているように中間負荷時における異常動作を解消して、適正なZVS動作が得られるようにしている。この異常動作の現象としては、図20(b)に示したように、ターンオン(期間TON開始)より以前のタイミングでスイッチング素子Q1がオンとなって、正極性のスイッチング電流IQ1がソース−ドレイン間を流れる動作となるのであるが、このようなスイッチング電流IQ1の動作によっては、スイッチング損失を増加させる。本実施の形態では、異常動作に対応するスイッチング電流IQ1の動作が生じないことで、これによるスイッチング損失の増加も無くなり、このことが、電力変換効率の向上要因の1つとなっているものである。
【0085】
また、図5(a)と図20(a)のスイッチング電流IQ1を比較して分かるように、本実施の形態に対応する図5(a)のスイッチング電流IQ1の波形は、期間TONの終了時以前のタイミングでピークが得られる波形となっている。この図5に示されるスイッチング電流IQ1の波形は、ターンオフ時におけるスイッチング電流IQ1のレベルが抑制されているということを意味する。ターンオフ時のスイッチング電流IQ1のレベルが抑制されれば、その分、ターンオフ時のスイッチング損失は低減され、電力変換効率が向上することになる。
このようなスイッチング電流IQ1の波形は、一次側スイッチングコンバータについてE級スイッチング動作としたことで得られるものである。
【0086】
図7の回路図は、本発明の第2の実施の形態としての電源回路の構成例を示している。
なお、この図において図1と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
この図に示す電源回路では、図1に示されるチョークコイル巻線N10について、チョークコイル巻線N10A、N10Bの2つの巻線部(第1のインダクタ部)に分割している。そして、チョークコイル巻線N10Aの巻始め端部を平滑コンデンサCiの正極端子に接続し、チョークコイル巻線N10Aの巻き終わり端部をチョークコイル巻線N10Bの巻き終わり端部と接続する。チョークコイル巻線N10Bの巻始め端部を、スイッチング素子Q1のドレインと接続する。つまり、本実施の形態では、E級スイッチングコンバータにおいて、平滑コンデンサCiの正極端子(直流電源)とスイッチング素子Q1のドレイン間に直列接続するチョークコイルL10について2分割し、この2分割したチョークコイルを差動接続しているものとしてみることができる。
【0087】
このような回路構成に対応して、本実施の形態の絶縁コンバータトランスPITは、例えば図8に示す構造を採るようにされる。
図8に示す絶縁コンバータトランスPITは、例えばフェライト材によるE字形状コアCR31、CR32を互いの磁脚が対向するように組み合わせたEE字形コアを備える。このEE字形コア(CR31、CR32)の中央磁脚は、両側2本の外磁脚よりも大きな断面積を持つ。また、中央磁脚に対しては、所定長のギャップG31を形成する。
そして、一次側と二次側の巻装部について相互に独立するようにして分割した形状により、例えば樹脂などによって形成される、ボビンBb31が備えられる。このボビンBb31の一方の巻装部に対して一次巻線N1を巻装する。また、他方の巻装部に対して二次巻線N2を巻装する。
このようにして一次側巻線及び二次側巻線が巻装されたボビンBb31を、上記E字形状コアCR31,CR32から成るEE字形コアの中央磁脚が貫通するようにして取り付けることで、一次側巻線及び二次側巻線とがそれぞれ異なる巻装領域により、EE字形コア部分の中央磁脚に巻装される状態となる。
また、一方のボビンBb32にはチョークコイル巻線N10Aを巻装し、このボビンBb32をEE字形コア(CR31、CR32)の一方の外磁脚が貫通するようにして取り付ける。また、他方のボビンBb32にはチョークコイル巻線N10Bを巻装し、このボビンBb32をEE字形コア(CR31、CR32)の他方の外磁脚が貫通するようにして取り付ける。これにより、チョークコイル巻線N10A,N10Bは、それぞれ、EE字形コア(CR31、CR32)の互いに異なる外磁脚に対して巻装される状態となる。
このようにして、図8に示す絶縁コンバータトランスPITについても、一次巻線N1及び二次巻線N2に対して、さらにチョークコイル巻線N10A、N10Bが巻装される複合トランスとしての構造を得ている。
【0088】
そして、上記した構造では、先ず、一次巻線N1と二次巻線N2とについては、ギャップG31のギャップ長に応じた所定の結合係数kによる疎結合とされる結合状態が得られるようにされる。
また、チョークコイル巻線N10A,N10Bは差動接続であることから、一次巻線N1及び二次巻線N2からチョークコイル巻線N10A,N10Bに誘起される電圧は、チョークコイル巻線N10A,N10Bにて相互に打ち消し合うように作用する。このために、チョークコイル巻線N10A,N10Bと、一次巻線N1及び二次巻線N2との磁気結合度(結合係数)は0と見なせる一定以下とすることができる。そのうえで、チョークコイル巻線N10A,N10Bの総合インダクタンスにより、チョークコイルL10として機能するために必要なインダクタンスが得られるようにされている。
このようにして、第2の実施の形態としても、一次巻線N1と二次巻線N2とが所定の結合度により磁気結合するようにして巻装されるとともに、チョークコイル巻線N10A,N10Bについては、一次巻線N1及び二次巻線N2に対して磁気結合度が0とみなされる状態を生じさせている。
なお、チョークコイル巻線N10A、N10Bについては、何れか一方の同じ外磁脚に対して巻装するようにしても、同様にして磁気結合度が0とみなされる状態を生じさせることはできる。しかしながら、実際的なこととして、チョークコイル巻線N10A、N10BによりチョークコイルL10としてのインダクタンス(1mH程度)を得るためには、チョークコイル巻線N10A、N10Bとしてのターン数(巻数)が相当に増加する。このために、チョークコイル巻線N10A、N10Bを同じ外磁脚に巻装しようとすると、巻装のための物理的なスペースを確保することが難しい。そこで、図8においては、実際的な構成として、チョークコイル巻線N10A、N10Bを分割して、それぞれ別の外磁脚に巻装した例を示している。
【0089】
また、第2の実施の形態における絶縁コンバータトランスPITについての複合トランスとしての他の構造例を図9に示す。
この図に示す絶縁コンバータトランスPITは、例えばフェライト材によるE字形状コアCR41、CR42を互いの磁脚が対向するように組み合わせたEE字形コアを備える。このEE字形コア(CR41、CR42)の中央磁脚に対しては、所定長のギャップG41を形成する。
この場合には、1つのボビンBb41が備えられる。このボビンBb41は、3つの巻装領域を有するようにして形成され、図示するようにして、中央の巻装領域に対して一次巻線N1を巻装する。また、両外側の巻装領域の一方に対して二次巻線N2を巻装し、他方に対してチョークコイル巻線N10A,N10Bを巻装する。
このような構造とされても、一次巻線N1と二次巻線N2とについては、ギャップG31のギャップ長に応じた所定の結合係数kによる疎結合とされる結合状態が得られる。また、チョークコイル巻線N10A,N10Bと、一次巻線N1及び二次巻線N2との磁気結合度(結合係数)は0とみなしてよい一定以下となるようにされたうえで、チョークコイルL10として機能するために必要なインダクタンスを生じさせることができる。
【0090】
この図7に示す電源回路について実験を行うのにあたり、要部については下記のように選定した。
先ず、絶縁コンバータトランスPITについては、図8に示した構造を採用することとして、EE字形コア(CR31,CR32)についてEER-40を選定して、ギャップG1については2mmのギャップ長を設定した。一次巻線N1及び二次巻線N2の各巻数(ターン数)Tについては、N1=50T、N2=20Tを選定した。これにより、絶縁コンバータトランスPIT自体における一次側と二次側との結合係数kについてはk=0.58が設定される。また、チョークコイル巻線N10A,N10Bについては、それぞれ100Tの巻数(ターン数T)とし、チョークコイル巻線N10A−N10B全体のインダクタンス(L10)としては、1.6mHを設定した。これにより、総合結合係数ktについては、kt=0.55が設定される。
また、一次側並列共振コンデンサCrのキャパシタンスについてはCr=6800pFを選定した。この一次側並列共振コンデンサCrについてのキャパシタンス設定と、上記チョークコイル巻線N10A−N10B全体のインダクタンス(L10)とにより、一次側並列共振回路の共振周波数fo1(p)=98.0kHzが設定される。
また、一次側直列共振コンデンサC11は、0.033μFを選定しており、このキャパシタンス設定と、絶縁コンバータトランスPITの総合結合係数ktに応じた一次側のリーケージインダクタンスとにより、一次側直列共振回路の共振周波数fo1(s)=63.9kHzが設定される。
また、二次側直列共振コンデンサC2は、0.15μFを選定しており、このキャパシタンス設定と、二次巻線N2のリーケージインダクタンスL2とにより、二次側直列共振回路の共振周波数fo2=56.7kHzが設定される。
また、二次側部分電圧共振コンデンサCp2については470pFを選定した。
対応負荷電力は、最大負荷電力Pomax=300W、最小負荷電力Pomin=0W(無負荷)とし、二次側直流出力電圧Eoの定格レベルは175Vとしている。
【0091】
上記のようにして構成した第2の実施の形態の電源回路についての実験結果として、先ず、動作波形については、第1の実施の形態の電源回路の動作として先に示した図5の波形図とほぼ同様の結果が得られている。つまり、第1の実施の形態と同様にして、中間負荷時における異常動作が解消されていることが確認された。
【0092】
また、負荷変動に対するAC→DC電力変換効率(ηAC→DC)、スイッチング周波数fs、期間TON、期間TOFF、スイッチング電流IQ1の変動特性についても、第1の実施の形態の電源回路についての実験結果である図6とほぼ同等の結果が得られた。
具体的には、交流入力電圧VAC=100Vで、最大負荷電力Pomax=300W〜最小負荷電力Pomin=0Wの負荷変動に対して二次側直流出力電圧Eoを175Vで安定化するために必要とされるスイッチング周波数fsの可変範囲(Δfs)は19.8KHzであり、また、期間TONの変動範囲(ΔTON)は3.6μs、期間TOFFの変動範囲(ΔTOFF)=1.8μsとなった
【0093】
また、この場合のAC→DC電力変換効率(ηAC→DC)も、最大負荷電力Pomax=300Wから負荷電力Po=100W程度までの範囲では、軽負荷傾向となるのに従って高くなっていく傾向で、最大負荷電力Pomax=300Wから負荷電力Po=25W程度までの範囲で90%以上が得られるという良好な特性である。
【0094】
図10は、本発明の第3の実施の形態としての電源回路の構成例を示す回路図である。なお、この図において、図1及び図7と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
この図に示す電源回路では、1組のチョークコイル巻線N10を、平滑コンデンサCiの正極端子とスイッチング素子Q1のドレインとの間に直列に挿入する。なお、この場合には、チョークコイル巻線N10の巻始め端部を平滑コンデンサCiの正極端子と接続し、巻き終わり端部をスイッチング素子Q1のドレインと接続する。
【0095】
図11は、第3の実施の形態に対応する複合トランスとしての絶縁コンバータトランスPITの構造例を示している。
この図に示される制御トランスPRTとしては、4本の磁脚を有する2つのダブルコの字型コアCR51、CR52を備える。そして、これらダブルコの字型コアCR51、CR52の互いの磁脚の端部を接合するようにして、立体型コアを形成する。なお、この場合において、ダブルコの字型コアCR51、CR52は、互いに同一サイズ形状のものを用いることができる。
このようにして立体型コアを形成した場合には、上記4本の磁脚ごとに対応して、ダブルコの字型コアCR11、CR12の接合部は4つ在ることとなるが、この場合、これら4つの接合部について、それぞれ所定長のギャップG50をそれぞれ形成する。なお、これら複数のギャップG50に設定されるギャップ長は同じであってもよいし、必要に応じて異なる長さが設定されてもよい。この点については、後述する図12、図13の絶縁コンバータトランスPITの構造においても同様である。
【0096】
そして、このようにして形成される立体型コアにおいて、先ず、例えばダブルコの字型コアCR51側の隣り合う2本の磁脚に巻き付けるようにして、チョークコイル巻線N10を所定ターン数(巻数)巻装する。
一方、一次巻線N1及び二次巻線N2は、図示するようにして、ダブルコの字型コアCR52側において、上記チョークコイル巻線N10の巻方向に対して、ちょうど直交するようにさせて、隣り合う2本の磁脚に巻き付けるようにして、所定ターン数を巻装するようにされる。
【0097】
上記のような構造では、チョークコイル巻線N10の巻回方向は、一次巻線N1及び二次巻線N2の巻回方向に対して直交することになる。つまり、複合トランスである絶縁コンバータトランスPITとしては、いわゆる直交型トランスとしての構造が得られる。
【0098】
このようにして、一次巻線N1、二次巻線N2、チョークコイル巻線N10が巻装されることで、先ず、一次巻線N1及び二次巻線N2については、コアサイズやギャップ長等に応じて設定される所定の結合係数により磁気結合された状態を生じる。また、チョークコイル巻線N10は、例えばコアサイズと巻数などの定数から、所定のインダクタンスを有するようにされる。そのうえで、チョークコイル巻線N10の巻回方向が一次巻線N1及び二次巻線N2の巻回方向に対して直交するようにされることで、チョークコイル巻線N10を巻回した2本の磁脚において、一次巻線N1及び二次巻線N2側により形成される磁路は逆方向となって打ち消し合うことになる。これにより、チョークコイル巻線N10と、一次巻線N1及び二次巻線N2との磁気結合度としては、0とみなしてよい程度の一定以下とすることができる。
【0099】
第3の実施の形態に対応する複合トランスとしての絶縁コンバータトランスPITの他の構造例を、図12及び図13に示す。
先ず、図12に示す絶縁コンバータトランスPITは、立体型コアについて、一方のコアは4本の磁脚を有するダブルコの字型コアCR51のままとするが、他方のコアは、ダブルコの字型コアCR52に代えて、任意の断面がコ字状となるシングルコの字型コアCR60と組み合わせて形成することもできる。なお、このコア構造においても、ダブルコの字型コアCR51の4本の磁脚の端面と、シングルコの字型コアCR60とが対向する部位には、それぞれ、ギャップG50を形成するようにされる。
このコア構造において、チョークコイル巻線N10と、一次巻線N1及び二次巻線N2を、例えば図11と同様のダブルコの字型コアCR51の位置関係、及び巻方向の関係により巻装する。このようにしても、チョークコイル巻線N10と、一次巻線N1及び二次巻線N2の組とが、互いの巻き方向が直交する直交型トランスとしての構成が得られ、図11と同様にして、チョークコイル巻線N10は、所定のインダクタンスを有すると共に、一次巻線N1及び二次巻線N2に対する磁気結合度については0とみなしてよい状態を得ることができる。
【0100】
また、図13に示す絶縁コンバータトランスPITは、2つの半目字型コアCR71,CR72を用意し、これらのコアの互いの磁脚が対向するようにして組み合わせることで1つの平面型の目字型コアを形成する。また、目字型コアにおいては、外側2本と内側2本の計4本の磁脚が対向することになるが、この場合には、これらの4本の磁脚が対向する各面について、それぞれ、所定長のギャップG70を形成する。
そして、一次巻線N1及び二次巻線N2は、一方の半目字型コアCR71における2本の内側磁脚に跨るようにして所定ターン数を巻装する。
チョークコイル巻線N10は、他方の半目字型コアCR72における1本の外側磁脚と、この外側磁脚と隣り合う1本の内側磁脚とに跨るようにして、所定ターン数を巻装する。
【0101】
このような絶縁コンバータトランスPITの構造では、チョークコイル巻線N10が巻回される磁脚位置と、一次巻線N1及び二次巻線N2が巻回される磁脚位置とが互いに異なるようにされているが、この関係としては、図11及び図12に示したように巻回方向を直交させたのと等価となる。従って、この図13に示す構造によっても、絶縁コンバータトランスPITにおいては、チョークコイル巻線N10は、一次巻線N1及び二次巻線N2に対する結合度は0とみなされ、かつ、所要のインダクタンスを有する状態となる。
【0102】
この図5に示す電源回路について実験を行うのにあたり、要部については下記のように選定した。
先ず、絶縁コンバータトランスPITについては、図11に示した構造を採用することとして、ダブルコの字型コアCR51、CR52については、それぞれ、フェライト材による26mm×20mm×30mmのサイズのものを用いる。また、ギャップG50は2mmを設定した。
一次巻線N1及び二次巻線N2の各巻数(ターン数)Tについては、N1=60T、N2=28Tを選定した。これにより、絶縁コンバータトランスPIT自体における一次側と二次側との結合係数kについてはk=0.82が設定される。また、チョークコイル巻線N10については、90Tの巻数(ターン数T)とし、そのインダクタンス(L10)としては、1.0mHを設定した。これにより総合結合係数ktについては、kt=0.77が設定される。
また、一次側並列共振コンデンサCrのキャパシタンスについてはCr=5600pFを選定した。この一次側並列共振コンデンサCrについてのキャパシタンス設定と、上記チョークコイル巻線N10のインダクタンス(L10)とにより、一次側並列共振回路の共振周波数fo1(p)=101.4kHzが設定される。
また、一次側直列共振コンデンサC11は、0.047μFを選定しており、このキャパシタンス設定と、絶縁コンバータトランスPITの総合結合係数ktに応じた一次側のリーケージインダクタンスとにより、一次側直列共振回路の共振周波数fo1(s)=35.0kHzが設定される。
また、二次側直列共振コンデンサC2は、0.18μFを選定しており、このキャパシタンス設定と、二次巻線N2のリーケージインダクタンスL2とにより、二次側直列共振回路の共振周波数fo2=43.6kHzが設定される。
また、二次側部分電圧共振コンデンサCp2については470pFを選定した。
対応負荷電力は、最大負荷電力Pomax=300W、最小負荷電力Pomin=0W(無負荷)とし、二次側直流出力電圧Eoの定格レベルは175Vとしている。
【0103】
上記のようにして構成した第3の実施の形態の電源回路についての実験結果として、動作波形については、第1の実施の形態の電源回路の動作として先に示した図5の波形図とほぼ同様の結果が得られており、先の各実施の形態と同様に、中間負荷時における異常動作が解消されていることが確認された。
【0104】
また、負荷変動に対するAC→DC電力変換効率(ηAC→DC)、スイッチング周波数fs、期間TON、期間TOFF、スイッチング電流IQ1の変動特性についても、図6とほぼ同等の結果が得られた。
具体的には、交流入力電圧VAC=100Vで、最大負荷電力Pomax=300W〜最小負荷電力Pomin=0Wの負荷変動に対して二次側直流出力電圧Eoを175Vで安定化するために必要とされるスイッチング周波数fsの可変範囲(Δfs)は17.6KHzであり、また、期間TONの変動範囲(ΔTON)は3.6μs、期間TOFFの変動範囲(ΔTOFF)=1.8μsとなった
【0105】
また、この場合のAC→DC電力変換効率(ηAC→DC)も、最大負荷電力Pomax=300Wから負荷電力Po=100W程度までの範囲では、軽負荷傾向となるのに従って高くなっていく傾向で、最大負荷電力Pomax=300Wから負荷電力Po=25W程度までの範囲で90%以上が得られるという良好な特性である。
【0106】
以降、本発明の実施の形態の変形例として、二次側整流回路のバリエーションを、図14〜図16に示す。なお、これらの図においては、二次巻線N2及び二次側整流回路の構成のみが抜き出されて示されているが、図示されていない他の部分は、絶縁コンバータトランスPITの構造も含めて、先に説明した第1〜第3の実施の形態としての何れかの構成が採られるものである。
【0107】
先ず、図14に示す電源回路では、二次巻線N2と二次側直列共振コンデンサC2の直列接続回路(二次側直列共振回路)に接続される二次側整流回路として、4本の整流ダイオードDo1,Do2,Do3,Do4から成るブリッジ整流回路と、1本の平滑コンデンサCoから成るブリッジ全波整流回路を備える。
この場合、二次巻線N2の巻き終わり端部は、二次側直列共振コンデンサC2を介して整流ダイオードDo1のアノードと整流ダイオードDo2のカソードの接続点に接続する。また、二次巻線N2の巻始め端部を、整流ダイオードDo3のアノードと整流ダイオードDo4のカソードの接続点に接続する。整流ダイオードDo1のカソードと整流ダイオードDo3のカソードを平滑コンデンサCoの正極端子に接続する。平滑コンデンサCoの負極端子は二次側アース電位にて、整流ダイオードDo2のアノードと整流ダイオードDo4のアノードの接続点と接続される。
また、この場合の二次側部分電圧共振コンデンサCp2は、二次巻線N2と二次側直列共振コンデンサC2の直列接続回路に対して並列となる関係により接続しており、これにより、絶縁コンバータトランスPITの二次側のリーケージインダクタンスと、二次側部分電圧共振コンデンサCp2のキャパシタンスとにより、二次側部分電圧共振回路を形成する。
【0108】
上記のようにして形成される全波整流回路によっては、二次巻線N2に誘起(励起)される交番電圧の一方の半周期において、ブリッジ整流回路の整流ダイオード[Do1,Do4]の組が導通して、平滑コンデンサCoに対して整流電流を充電する動作が得られる。また、二次巻線N2に誘起される交番電圧の他方の半周期においては、整流ダイオード[Do2,Do3]の組が導通して平滑コンデンサCoに対して整流電流を充電する動作が得られる。
これによって平滑コンデンサCoの両端電圧として、二次巻線N2に誘起される交番電圧のレベルの等倍に対応したレベルの二次側直流出力電圧Eoが生成される。
【0109】
また、上記した整流動作に伴う二次側部分電圧共振回路の部分共振動作により、整流ダイオード[Do1,Do4]の組と、整流ダイオード[Do2,Do3]の組とがそれぞれターンオン/ターンオフするタイミングで、これら整流ダイオードに流れようとする電流が、二次側部分電圧共振コンデンサCp2に流れ、整流ダイオードDo1、Do2、Do3、Do4におけるスイッチング損失が低減される。
【0110】
図15に示す電源回路は、二次側整流回路として倍電圧全波整流回路を備える。
この場合の倍電圧全波整流回路としては、先ず、二次巻線N2についてセンタータップを施すことで、このセンタータップを境界にして二次巻線部N2A,N2Bに2分割する。二次巻線部N2A,N2Bには、同じ所定巻数(ターン数)が設定される。二次巻線N2のセンタータップは、二次側アースに接続される。
また、二次巻線N2における二次巻線部N2A側の端部に対しては二次側直列共振コンデンサC2Aを直列に接続し、二次巻線N2における二次巻線部N2B側の端部に対しては二次側直列共振コンデンサC2Bを直列に接続する。これにより、二次巻線部N2Aのリーケージインダクタンス成分と二次側直列共振コンデンサC2Aのキャパシタンスから成る第1の二次側直列共振回路と、二次巻線部N2Bのリーケージインダクタンス成分と二次側直列共振コンデンサC2Bのキャパシタンスから成る第2の二次側直列共振回路とが形成される。z
【0111】
そして、二次巻線N2における二次巻線N2A側の端部を、上記二次側直列共振コンデンサC2Aの直列接続を介して整流ダイオードDo1のアノードと整流ダイオードDo2のカソードとの接続点に対して接続する。また、二次巻線N2における二次巻線N2B側の端部を、二次側直列共振コンデンサC2Bの直列接続を介して、整流ダイオードDo3のアノードと整流ダイオードDo4のカソードとの接続点に対して接続する。
整流ダイオードDo1,Do3の各カソードは、平滑コンデンサCoの正極端子に接続する。平滑コンデンサCoの負極端子は二次側アースに接続される。また、整流ダイオードDo2,Do4の各アノードの接続点は二次側アースに接続する。
また、この場合の二次側部分電圧共振コンデンサCp2は、二次巻線N2に対して、二次側直列共振コンデンサC2A、C2Bを介して並列関係が得られるようにして接続している。つまり、二次側部分電圧共振コンデンサCp2の一方の極端子を、二次側直列共振コンデンサC2Aを介して二次巻線N2の巻き終わり端部と接続し、二次側部分電圧共振コンデンサCp2の他方の極端子を、二次側直列共振コンデンサC2Bを介して二次巻線N2の巻き始め端部と接続する。このような接続態様により、絶縁コンバータトランスPITの二次側のリーケージインダクタンスと、二次側部分電圧共振コンデンサCp2のキャパシタンスとにより、二次側部分電圧共振回路が形成される。
【0112】
上記接続形態では、二次巻線部N2A,二次側直列共振コンデンサC2A、整流ダイオードDo1,Do2、及び平滑コンデンサCoから成る、第1の二次側直列共振回路を備える第1の倍電圧半波整流回路と、二次巻線部N2B,二次側直列共振コンデンサC2B、整流ダイオードDo1,Do2、及び平滑コンデンサCoから成る、第2の二次側直列共振回路を備える第2の倍電圧半波整流回路とが形成されることになる。
第1の倍電圧半波整流回路では、二次巻線N2に誘起される交番電圧の、一方の極性の半周期の期間において、[二次巻線部N2A→整流ダイオードDo2→二次側直列共振コンデンサC2A→二次巻線部N2A]の整流電流経路により整流動作を行い、二次巻線部N2Aの交番電圧の電位により二次側直列共振コンデンサC2Aに対する充電を行う。他方の極性の半周期の期間において、[二次巻線部N2A→二次側直列共振コンデンサC2A→整流ダイオードDo1→平滑コンデンサCo→二次巻線部N2A]の整流電流経路により整流動作を行うことで、二次側直列共振コンデンサC2Aの両端電圧と二次巻線N2Aの交番電圧の重畳電位により、平滑コンデンサCoに対する充電を行う。
また、第2の倍電圧半波整流回路は、二次巻線N2に誘起される交番電圧の、上記他方の極性の半周期の期間において、[二次巻線部N2B→整流ダイオードDo4→二次側直列共振コンデンサC2B→二次巻線部N2B]の整流電流経路により整流動作を行って、二次巻線部N2Aの交番電圧の電位により、二次側直列共振コンデンサC2Bを充電し、上記一方の極性の半周期の期間において、[二次巻線部N2B→二次側直列共振コンデンサC2B→整流ダイオードDo3→平滑コンデンサCo→二次巻線部N2B]の整流電流経路により整流動作を行って、二次側直列共振コンデンサC2Bの両端電圧と二次巻線N2Bの交番電圧の重畳電位により平滑コンデンサCoに対する充電を行う。
【0113】
上記した整流動作によれば、平滑コンデンサCoに対しては、二次巻線N2の交番電圧の、一方の極性の半周期では、二次巻線部N2Bの誘起電圧と二次側直列共振コンデンサC2Bの両端電圧の重畳電位による整流電流の充電が行われ、他方の極性の半周期では、二次巻線部N2Aの誘起電圧と二次側直列共振コンデンサC2Aの両端電圧の重畳電位による整流電流の充電が行われることとなる。これにより、平滑コンデンサCoの両端電圧である二次側直流出力電圧Eoとしては、二次巻線部N2A,N2Bの誘起電圧レベルの2倍に対応するレベルが得られることになる。つまり、倍電圧全波整流回路が得られている。
【0114】
また、この回路構成では、二次側部分電圧共振回路の共振動作は、第1の倍電圧半波整流回路と第2の倍電圧半波整流回路に対して共通に動作するものとなる。そして、この場合にも、二次側部分電圧共振回路が共振動作を行うことで、整流ダイオードDo1、Do2、Do3、Do4がそれぞれターンオン/ターンオフするタイミングで、これら整流ダイオードに流れようとする電流が二次側部分電圧共振コンデンサCp2に流れることとなって、上記整流ダイオードにおけるスイッチング損失が低減される。
【0115】
図16に示す回路は、二次側整流回路として両波整流回路を備える。この場合の両波整流回路は、次のようにして形成されている。
先ず、二次巻線N2については、センタータップを施すことで、センタータップを境界にして二次巻線部N2A,N2Bに分割する。センタータップは二次側アースに接続する。
そのうえで、両波整流回路を形成する部品素子として、この場合には、2本の整流ダイオードDo1,Do2、及び1本の平滑コンデンサCoを備える。整流ダイオードDo1のアノードを二次巻線N2における二次巻線部N2A側の端部と接続し、整流ダイオードDo2のアノードを二次巻線N2における二次巻線部N2B側の端部と接続する。整流ダイオードDo1,Do2のカソードを共に平滑コンデンサCoの正極端子に接続し、平滑コンデンサCoの負極端子は二次側アースにて、二次巻線N2のセンタータップと接続する。
【0116】
このようにして形成される二次側両波整流回路では、二次巻線N2に誘起される二次巻線電圧の一方の極性の半周期に対応しては、二次巻線部NA→整流ダイオードDo1→平滑コンデンサCoの経路で整流電流が流れて平滑コンデンサCoに充電を行う。また、二次巻線V3の他方の極性の半周期に対応しては、二次巻線部NB→整流ダイオードDo2→平滑コンデンサCoの経路で整流電流が流れて平滑コンデンサCoに充電を行う。このようにして、二次巻線電圧の正負の各半周期の期間に対応して平滑コンデンサCoに対して整流電流を充電する両波整流動作が行われる。これにより、平滑コンデンサCoの両端電圧としては、二次巻線部N2A,N2Bの誘起電圧レベルの等倍に対応するレベルの二次側直流出力電圧Eoが得られる。
この図16に示す例では、二次側整流回路を両波整流回路としたことに応じて、二次側直列共振コンデンサを備えない構成を示している。また、二次側部分電圧共振コンデンサCp2も省略している。
なお、前述したように、この図16に示すようにして、二次側直列共振回路を備えない電源回路の構成とした場合においても、中間負荷時においてZVSが得られなくなる異常動作が解消され、対応負荷電力の全領域範囲にわたって正常なスイッチング動作となる。
【0117】
また、本発明としては、上記各実施の形態として示した構成に限定されるものではない。例えば、一次側のE級スイッチングコンバータの細部の回路形態や、二次側整流回路の構成などは他にも考えられるものである。
また、メインスイッチング素子(及び補助スイッチング素子)については、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、バイポーラトランジスタなど、MOS−FET以外の素子を選定することも考えられる。また、上記各実施の形態では、他励式のスイッチングコンバータを挙げているが、自励式として構成した場合にも本発明は適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明の第1の実施の形態としての電源回路の構成例を示す回路図である。
【図2】第1の実施の形態の電源回路に備えられる絶縁コンバータトランスの構造例を示す図である。
【図3】第1の実施の形態の電源回路に備えられる絶縁コンバータトランスの他の構造例を示す図である。
【図4】第1の実施の形態の電源回路に備えられる絶縁コンバータトランスの他の構造例を示す図である。
【図5】第1の実施の形態の電源回路の要部の動作をスイッチング周期により示す波形図である。
【図6】第1の実施の形態の電源回路についての、負荷変動に対するAC→DC電力変換効率、スイッチング周波数、スイッチング素子のオン期間及びオフ期間、スイッチング電流の変動特性を示す図である。
【図7】第2の実施の形態としての電源回路の構成例を示す回路図である。
【図8】第2の実施の形態の電源回路に備えられる絶縁コンバータトランスの構造例を示す図である。
【図9】第2の実施の形態の電源回路に備えられる絶縁コンバータトランスの他の構造例を示す図である。
【図10】第3の実施の形態としての電源回路の構成例を示す回路図である。
【図11】第3の実施の形態の電源回路に備えられる絶縁コンバータトランスの構造例を示す図である。
【図12】第3の実施の形態の電源回路に備えられる絶縁コンバータトランスの他の構造例を示す図である。
【図13】第3の実施の形態の電源回路に備えられる絶縁コンバータトランスの他の構造例を示す図である。
【図14】第1〜第3の実施の形態の電源回路に対応する二次側の変形例としての構成例を示す回路図である。
【図15】第1〜第3の実施の形態の電源回路に対応する二次側の変形例としての構成例を示す回路図である。
【図16】第1〜第3の実施の形態の電源回路に対応する二次側の変形例としての構成例を示す回路図である。
【図17】E級スイッチングコンバータの基本構成例を示す回路図である。
【図18】図17に示すE級スイッチングコンバータの動作を示す波形図である。
【図19】従来例としての電源回路の構成例を示す回路図である。
【図20】図19に示した電源回路の要部の動作を示す波形図である。
【図21】図19に示した電源回路についての、負荷変動に対するAC→DC電力変換効率、スイッチング周波数、スイッチング素子のオン期間の変動特性を示す図である。
【図22】従来の電源回路についての定電圧制御特性を概念的に示す図である。
【符号の説明】
【0119】
1 制御回路、2 発振・ドライブ回路、Di ブリッジ整流回路、Ci 平滑コンデンサ、Q1 スイッチング素子、PIT 絶縁コンバータトランス、N10 チョークコイル巻線、Cr 一次側並列共振コンデンサ、N1 一次巻線、N2(N2A,N2B) 二次巻線、C11 一次側直列共振コンデンサ、Do1,Do2,Do3,Do4 (二次側)整流ダイオード、Co (二次側)平滑コンデンサ、Cp2 二次側部分電圧共振コンデンサ、CR1・CR2・CR3・CR11・CR12・CR31・CR32・CR41・CR42 E字形状コア、CR21・CR22 U字形状コア、CR51・CR52 ダブルコの字型コア、CR60 シングルコの字型コア、CR71・CR72 半目字型コア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも整流素子と平滑コンデンサを備えて形成され、商用交流電源を入力して整流平滑化することで、上記平滑コンデンサの両端電圧として整流平滑電圧を生成する整流平滑回路と、
上記整流平滑電圧を直流入力電圧として入力してスイッチングを行うスイッチング素子と、
上記スイッチング素子をスイッチング駆動するスイッチング駆動手段と、
上記整流平滑電圧が上記スイッチング素子に入力される経路に対して直列に挿入される第1のインダクタと、
上記スイッチング素子に対して並列となる関係により接続され、少なくとも上記第1のインダクタのインダクタンスと自身のキャパシタンスとによって一次側並列共振回路を形成する一次側並列共振コンデンサと、
第2のインダクタと、
上記第2のインダクタと直列となる関係により接続されることで、少なくとも上記第2のインダクタのインダクタンスと自身のキャパシタンスとによって一次側直列共振回路を形成し、上記第2のインダクタと自身との直列接続回路が上記スイッチング素子に対して並列となる関係により接続されるようにして設けられる一次側直列共振コンデンサと、
少なくとも、上記第2のインダクタを一次巻線として巻装するとともに、該一次巻線に得られたスイッチング出力により交番電圧が誘起される二次巻線を巻装して形成され、疎結合とみなされる所要の一次側と二次側との総合結合係数が得られるようにして、自身の結合係数が設定されるコンバータトランスと、
上記コンバータトランスの二次巻線に誘起される交番電圧を入力して整流動作を行って、二次側直流出力電圧を生成するように構成された二次側直流出力電圧生成手段とを備え、
上記コンバータトランスは、上記第1のインダクタンスについて、所定のインダクタンスを有するようにされるとともに、上記一次巻線及び上記二次巻線に対する磁気結合の度合いが一定以下の状態となるようにして巻装した構造を有する、
ことを特徴とするスイッチング電源回路。
【請求項2】
上記コンバータトランスは、
上記一次巻線及び二次巻線により形成される磁路の磁束と、上記第1のインダクタにより形成される磁路の磁束との鎖交の度合いが一定以下となるようにして、所定形状のコアに対して、上記一次巻線、上記二次巻線、及び上記第1のインダクタを巻装した構造を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。
【請求項3】
上記第1のインダクタを2分割して得られる2つの第1のインダクタ部を差動接続するとともに、
上記コンバータトランスは、
上記一次巻線及び上記二次巻線により一方の上記第1のインダクタ部に誘起される電圧と、上記一次巻線及び上記二次巻線により他方の上記第1のインダクタ部に誘起される電圧とが打ち消し合わされるようにして、所定形状のコアに対して、上記一次巻線、上記二次巻線、及び上記第1のインダクタを巻装した構造を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。
【請求項4】
上記コンバータトランスは、
上記一次巻線及び二次巻線の巻方向に対して上記第1のインダクタの巻方向が直交するようにして、所定形状のコアに対して、上記一次巻線、上記二次巻線、及び上記第1のインダクタを巻装したとされる構造を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2006−311742(P2006−311742A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−133076(P2005−133076)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】