説明

スイッチング電源装置およびその制御回路

【目的】キャリア信号Voscの周期毎にスイッチング素子がオフすることを保証するとともに、インダクタ電流を減少させたい場合にはインダクタ電流を素早く減少させることのできるスイッチング電源装置およびその制御回路を提供する。
【構成】トランスコンダクタンスアンプOTA2とコンデンサC3で構成される誤差増幅回路の出力電圧を、演算増幅器OP1とダイオードD2で構成されるクランプ回路でクランプすることにより、キャリア信号Voscの周期毎にスイッチング素子がオフすることを保証する。誤差増幅回路の出力電圧を減少させるときはクランプ電圧以下の値が初期値となることから、スイッチング電源装置のインダクタ電流を減少させたい場合には短時間で減少させることができ、これによりインダクタ電流を素早く減少させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誤差増幅回路の出力に基づきスイッチング素子をオンオフして所定の出力電圧を得るスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器にはスイッチング電源装置、特に交流電圧を入力とするスイッチング電源装置が広く利用されている。こうしたスイッチング電源装置は、入力と出力を結ぶスイッチング素子をスイッチング動作させることにより、入力電圧を所望の大きさの直流出力電圧に変換して負荷に供給するものである。
【0003】
図5は、力率改善型スイッチング電源装置の基本構成例を示す回路図である。ここでは、電流連続モードで動作する力率改善(PFC:Power Factor Correction)型スイッチング電源装置を示している。
【0004】
図5に示す従来の力率改善型スイッチング電源装置は商用電源2からの交流電圧を全波整流する全波整流器4を有し、全波整流器4の出力は、スイッチングノイズを濾過するためのコンデンサCinの一端とインダクタLの一端とに接続されている。このインダクタLの他端は、ダイオードD1のアノードと、スイッチング素子を構成するたとえばNチャネルMOSトランジスタMN1のドレイン端子とに接続されている。インダクタLの他端は、ダイオードD1およびコンデンサCoからなる整流平滑回路を介して負荷6に接続され、負荷6に対し直流電圧Voutが出力される。10は半導体集積回路などにより構成される力率改善制御回路である。
【0005】
スイッチング素子であるNチャネルMOSトランジスタMN1は、ソース端子が接地電位(GND)に接続されるとともに、ゲート端子が力率改善制御回路10の出力端子OUTに接続されている。抵抗R1,R2からなる直列抵抗回路の一端が全波整流器4とインダクタLとの接続点に接続され、他端は接地されている。力率改善制御回路10の乗算器入力端子VDETは全波整流器4の出力電圧の検出値を入力する端子であり、抵抗R1とR2の接続点がこの乗算器入力端子VDETに接続されている。また、全波整流器4は抵抗R3を介して接地されており、全波整流器4と抵抗R3との接続点が力率改善制御回路10のインダクタ電流信号生成用入力端子ISに接続されている。さらに、負荷6には抵抗R4,R5の直列回路が並列接続されて、ここに負荷6と同じ直流出力電圧Voutが印加されている。力率改善制御回路10のフィードバック電圧入力端子FBは直流出力電圧Voutの検出値を入力する端子であり、ここでは、抵抗R4,R5の接続点がフィードバック電圧入力端子FBと接続され、ここに直流出力電圧Voutを抵抗分割した電圧信号が帰還される。
【0006】
つぎに、上述した図5の従来の力率改善型スイッチング電源装置の動作について簡単に説明する。
図5の従来の力率改善型スイッチング電源装置は平均電流制御方式や平均電流モード制御などと呼ばれている制御方式を採用していて、力率改善制御回路10は、直流出力電圧Voutを安定化しながら交流の商用電源2側に流れる電流を交流入力電圧と同位相の正弦波状に制御するものである。力率改善制御回路10のフィードバック電圧入力端子FBは、直流出力電圧Voutに対する電圧指令値Vrefを設定する基準電圧源Vref(電圧指令値と基準電圧源に同じ符号を付した。)とともに、電圧誤差増幅回路EAMP1を構成するトランスコンダクタンスアンプ(もしくはオペレーショナルトランスコンダクタンスアンプ)OTA1の入力端子に接続されている。電圧誤差増幅回路EAMP1は、トランスコンダクタンスアンプOTA1,および力率改善制御回路10の端子VCMPを介して一端がトランスコンダクタンスアンプOTA1の出力端子と接続されたコンデンサC1により構成されている。なお、コンデンサC1の他端は接地電位(GND)に接続されている。この電圧誤差増幅回路EAMP1では、直流出力電圧Voutの検出値(この場合は分圧値)Vfbと基準電圧源Vrefから出力される電圧指令値Vref(例えば、2.5V)との差を増幅した電圧誤差信号Ver1を生成する。この電圧誤差信号Ver1は、乗算器12の第1入力端子に供給されている。
【0007】
乗算器12の第2入力端子は、力率改善制御回路10の乗算器入力端子VDETと接続され、ここから全波整流器4の出力電圧の検出値(この場合は分圧値)Vdetが入力されている。乗算器12では、第1入力端子に供給される電圧誤差信号Ver1と第2入力端子に供給される全波整流器4の出力電圧の検出値Vdetとを乗算して、電流誤差増幅回路EAMP2への電流指令値Vmulを出力する。
【0008】
電流誤差増幅回路EAMP2は、トランスコンダクタンスアンプOTA2,および力率改善制御回路10の端子ICMPを介して一端がトランスコンダクタンスアンプOTA2の出力端子に接続されているコンデンサC2により構成されている。なお、コンデンサC2の他端は接地電位(GND)に接続されている。インダクタLに流れるインダクタ電流を電流検出用の抵抗R3で電圧変換した電圧信号がインダクタ電流信号生成用入力端子ISに入力され、インダクタ電流信号生成用入力端子ISに入力される電圧信号をさらに反転増幅回路11で反転増幅したインダクタ電流信号Videtが、その指令値となる乗算器12の出力信号Vmulとともに電流誤差増幅回路EAMP2に入力される。電流誤差増幅回路EAMP2は、インダクタ電流信号Videtと電流指令値となる乗算器12の出力信号Vmulとの差を増幅した電流誤差信号Ver2を出力する。反転増幅回路11は、インダクタ電流信号生成用入力端子ISからの電圧信号が負電位であるので、これを正電位のインダクタ電流信号Videtに変換するために設けられている。反転増幅回路自体の機能・構成は周知であるので、その説明は省略する。
【0009】
発振回路(OSC)15では、スイッチング周期を決める周波数一定の鋸歯状、もしくは三角波のキャリア信号Voscを生成してPWMコンパレータ(比較器)13に入力している。このキャリア信号Voscと電流誤差信号Ver2が入力されるPWMコンパレータ13では、これらの信号の大小関係を比較してパルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)されたスイッチング素子の制御信号Doutを生成し、これがドライバ回路14および力率改善制御回路10の出力端子outを介してスイッチング素子MN1のゲート端子に印加されている。
【0010】
以上の構成により、出力電圧Voutの検出値(分圧値)Vfbがその指令値Vrefより低いほど電圧誤差信号Ver1が大きくなり、これがさらに乗算器12,電流誤差増幅回路EAMP2およびPWMコンパレータ13を介してスイッチング素子であるNチャネルMOSトランジスタMN1のオン時比率を拡大させるよう機能する。
【0011】
スイッチング電源装置の立ち上げ時や、負荷6が重負荷となって出力電圧Voutが低下したときなどでは、電圧誤差信号Ver1が大きくなりすぎてしまい、NチャネルMOSトランジスタMN1のオン時比率が100%となってしまうことがある。この状態は、インダクタLに流れるインダクタ電流が増大し続けるので、インダクタ電流が過大となってインダクタのコアが磁気飽和し、コアが磁気飽和するとインダクタのインダクタンスが減少してインダクタ電流の増加がさらに加速されて、NチャネルMOSトランジスタMN1などの回路部品や結線の破損等の重大な事故につながるおそれがある。
【0012】
過電流自体は、インダクタ電流が所定の値を超えたらスイッチング素子を強制的にオフする過電流保護回路を設けることでも対策可能であるが、その場合、スイッチング周波数がキャリア信号Voscの周波数ではなく、過電流保護回路の動作で決まることになる。すなわち、重負荷等の条件が継続していると、過電流保護回路が働いていないときはスイッチング素子がオンのままであり、過電流保護回路が働いているときのみスイッチング素子がオフすることになるから、スイッチング素子のスイッチング周期は過電流保護回路の動作周期と等しくなる。キャリア信号Voscの周波数は通常60kHz以上に設定されるが、過電流保護回路の動作によって定まるスイッチング周波数がリモコン周波数(約40kHz)や可聴周波数(20kHz以下)まで低下すると、リモコンに対する干渉が起こったり、音鳴りが発生したりするなどの問題が生じる。
【0013】
これに対し、過電流およびスイッチング周波数の低下の防止を目的として、オン時比率の最大値を制限して、キャリア信号Voscの周期毎にスイッチング素子をオフさせることが従来より行われている。オン時比率の最大値を制限する方法については、PWMコンパレータを利用する方法とフリップフロップを用いる方法が知られている(例えば、特許文献1,2を参照。)。
【0014】
図6はPWMコンパレータを用いてオン時比率の最大値を設定するスイッチング電源装置について説明するための図である。図5のPWMコンパレータ13およびドライバ回路14の部分を図6に示す回路で置き換えてスイッチング電源装置を構成するもので、図6以外の部分は図5と同じなので図示を省略する。図6に示す回路では、図5の2入力のPWMコンパレータ13に替えて、3入力のPWMコンパレータ13aが用いられる。PWMコンパレータ13aは、PWMコンパレータ13に対してもうひとつの反転入力端子が追加されていて、当該端子に定電圧源Vbからの定電圧Vb(定電圧源とその出力電圧に同じ符号を付した。)が入力されている。PWMコンパレータ13aは、2つの反転入力端子に入力される電流誤差信号Ver2と定電圧Vbの値が小さい方の電圧を、非反転入力端子に入力されるキャリア信号Voscを比較してスイッチング素子の制御信号Doutを生成する。この構成により、電流誤差信号Ver2が定電圧Vbより大きくなると、PWMコンパレータ13aは定電圧Vbとキャリア信号Voscの比較を行う。定電圧Vbはキャリア信号Voscの振幅内となるよう設定することにより、キャリア信号Voscの周期毎にスイッチング素子がオフされることが保証される。
【0015】
図7は、フリップフロップを用いてオン時比率の最大値を設定するスイッチング電源装置について説明するための図である。図5のPWMコンパレータ13,ドライバ回路14および発振回路15の部分を図7に示す回路で置き換えてスイッチング電源装置を構成する。図7以外の部分は図5と同じなので図示を省略する。図7に示す回路では、図5の発振回路15に替えて、キャリア信号Voscと同期したセットクロック信号SCLKおよびリセットクロック信号RCLKを出力する発振回路15aを設けるとともに、PWMコンパレータ13とドライバ回路14の間にORゲートOR1およびRSフリップフロップRSFFを設けている。ここでは、セットクロック信号SCLKがH(High)レベルになるタイミングでRSフリップフロップRSFFがセットされてスイッチング素子の制御信号DoutがL(Low)レベルからHレベルに立ち上がり、PWMコンパレータ13の出力もしくはリセットクロック信号RCLKがHレベルになるタイミングでRSフリップフロップRSFFがリセットされてスイッチング素子の制御信号DoutがHレベルからLレベルに立ち上がる。これにより、電流誤差信号Ver2が過大であるためにPWMコンパレータ13の出力がHレベルにならなくても、リセットクロック信号RCLKによってRSフリップフロップRSFFがリセットされるので、キャリア信号Voscの周期毎にスイッチング素子がオフされることが保証される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2006−311678号公報
【特許文献2】特開2009−44779号公報(図2,3など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
図8は、図6に示す回路により、電流誤差信号Ver2が過大となってもキャリア信号Voscの周期毎にスイッチング素子がオフされるようスイッチング素子の制御信号Doutが生成される動作を示すタイミングチャートである。制御信号DoutがHレベルのときスイッチング素子がオンし、Lレベルのときスイッチング素子がオフする。電流誤差信号Ver2が定電圧Vbより小さいときは、電流誤差信号Ver2とキャリア信号Voscの大小関係で制御信号Doutが決定され、電流誤差信号Ver2が定電圧Vbより大きいときは、定電圧Vbとキャリア信号Voscの大小関係で制御信号Doutが決定される。電流誤差信号Ver2が定電圧Vbより大きいときを考えると、キャリア信号Voscの周期毎にスイッチング素子がオフすることは保証されているものの、電流誤差信号Ver2が増大する要因が解決されない限り電流誤差信号Ver2は増大を続けてしまう。このため、電流誤差信号Ver2が増大する要因が解決されてインダクタ電流を減少させようとしても、電流誤差信号Ver2が過大な値となっていて、スイッチング素子がこの電流誤差信号Ver2が定電圧Vb以下になるまで定電圧Vbで定まる最大オン時比率でオンオフするため、インダクタ電流を直ぐには減少させることができないという問題が生じる。電圧誤差増幅回路EAMP1および電流誤差増幅回路EAMP2は、スイッチング電源装置が安定して動作するよう遅れ要素を含んでいるため、電流誤差信号Ver2が定電圧Vb以下になるまでに時間を要し、それまでの時間はむしろインダクタ電流が増加してしまい、インダクタ電流が所望の値まで低下するまでの時間が長引くのである。
【0018】
この問題は、フリップフロップを用いてオン時比率の最大値を設定する場合も、同様に発生する。図9は、図7に示す回路により、電流誤差信号Ver2が過大となってもキャリア信号Voscの周期毎にスイッチング素子がオフされるようスイッチング素子の制御信号Doutが生成される動作を示すタイミングチャートである。制御信号Doutはセットクロック信号SCLKの立ち上がりでHレベルになり、電流誤差信号Ver2がキャリア信号Voscの振幅内にあれば、電流誤差信号Ver2がキャリア信号Voscに等しくなるタイミングで制御信号DoutがLレベルになる。電流誤差信号Ver2がキャリア信号Voscの最大値より大きくなると、制御信号Doutはリセットクロック信号RCLKの立ち上がりでLレベルになる。この場合も、キャリア信号Voscの周期毎にスイッチング素子がオフすることは保証されているものの、電流誤差信号Ver2が増大する要因が解決されない限り電流誤差信号Ver2は増大を続けてしまうことから、インダクタ電流を減少させようとしても直ぐには減少させることができないという問題が生じる。
【0019】
また、スイッチング電源装置が力率改善型スイッチング電源装置であると、スイッチング電源装置に対する入力電圧が商用電源2の正弦波状の電圧となる。スイッチング素子MN1がオンしているときのインダクタ電流の増加率は入力電圧に比例するから、交流の商用電源2からの入力電圧が低いときのインダクタ電流の増加率は小さい。インダクタ電流の増加率が小さいとインダクタ電流だけでは負荷6に流れる負荷電流をまかないきれず、コンデンサCoの電荷が負荷電流に使われるので、出力電圧Voutが低下して電圧誤差信号Ver1が大きくなり、これが乗算器12および電流誤差増幅回路EAMP2を介して電流誤差信号Ver2を増大させる結果となる。従い、商用電源2の正弦波状の電圧が低いときに電流誤差信号Ver2がより大きくなり、特に商用電源2の正弦波状の電圧がゼロ電圧近傍になるときに上記の問題、すなわち、電流誤差信号Ver2がキャリア信号Voscの最大値より大きくなってしまい、インダクタ電流を減少させようとしても直ぐには減少させることができないという問題が生じ易くなる。発明者が行った実験では、商用電源2の正弦波状の電圧がゼロクロスするときに、インダクタ電流が正弦波から外れてオーバーシュートする現象が観察された。
【0020】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、キャリア信号Voscの周期毎にスイッチング素子がオフすることを保証するとともに、インダクタ電流を減少させたい場合に素早く減少させることのできるスイッチング電源装置およびその制御回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
そこで、上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、誤差増幅回路の出力電圧を上限電圧と下限電圧の間で振動するキャリア信号と比較することにより得られる時比率でスイッチング素子をオンオフさせて入力電圧から所定の出力電圧を生成するスイッチング電源装置であって、前記増幅回路の出力電圧をクランプ電圧でクランプするクランプ回路を有し、前記クランプ電圧が前記上限電圧より低く、前記下限電圧より高いことを特徴とする。
【0022】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記誤差増幅回路は前記スイッチング電源装置のインダクタに流れるインダクタ電流の検出値とその目標値の差を増幅する、もしくは前記出力電圧の検出値とその目標値との差を増幅することを特徴とする。
【0023】
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明において、前記増幅回路はトランスコンダクタンスアンプおよび該トランスコンダクタンスアンプの出力端子に接続されたコンデンサを有することを特徴とする。
【0024】
請求項4に係る発明は、請求項2に係る発明において、前記増幅回路は演算増幅器および該演算増幅器の出力端子と入力端子の間に接続された位相補償素子を有することを特徴とする。
【0025】
請求項5に係る発明は、請求項1ないし4のいずれか1項に係る発明において、前記スイッチング電源装置が力率改善型スイッチング電源装置であることを特徴とする。
請求項6に係る発明は、誤差増幅回路の出力電圧を上限電圧と下限電圧の間で振動するキャリア信号と比較することにより得られる時比率でスイッチング素子をオンオフさせて入力電圧から所定の出力電圧を生成するスイッチング電源装置の制御回路であって、前記増幅回路の出力電圧をクランプ電圧でクランプするクランプ回路を有し、前記クランプ電圧が前記上限電圧より低く、前記下限電圧より高いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係るスイッチング電源装置およびその制御回路によれば、誤差増幅回路の出力電圧自体をクランプ電圧でクランプすることによりキャリア信号Voscの周期毎にスイッチング素子がオフすることを保証できるとともに、誤差増幅回路の出力電圧を減少させるときはせいぜいクランプ電圧を初期値として減少させればよいことから、インダクタ電流を減少させたい場合に誤差増幅回路の出力電圧を短時間で減少させることができ、これによりインダクタ電流を素早く減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のスイッチング電源装置およびその制御回路に係る実施の形態の構成について説明するための図である。
【図2】本発明のスイッチング電源装置およびその制御回路に係る実施の形態によりスイッチング素子の制御信号Doutが生成される様子を示すタイミングチャートである。
【図3】本発明のスイッチング電源装置およびその制御回路に係る別の実施の形態の構成について説明するための図である。
【図4】電圧誤差増幅回路EAMP1,電流誤差増幅回路EAMP2の別の構成例を示す図である。
【図5】力率改善型スイッチング電源装置の基本構成例を示す回路図である。
【図6】PWMコンパレータを用いてオン時比率の最大値を設定するスイッチング電源装置について説明するための図である。
【図7】フリップフロップを用いてオン時比率の最大値を設定するスイッチング電源装置について説明するための図である。
【図8】図6に示す回路により、電流誤差信号Ver2が過大となってもキャリア信号Voscの周期毎にスイッチング素子がオフされるようスイッチング素子の制御信号Doutが生成される動作を示すタイミングチャートである。
【図9】図7に示す回路により、電流誤差信号Ver2が過大となってもキャリア信号Voscの周期毎にスイッチング素子がオフされるようスイッチング素子の制御信号Doutが生成される動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明のスイッチング電源装置およびその制御回路に係る実施の形態の構成について説明するための図である。図5の電流誤差増幅回路EAMP2,PWMコンパレータ13,ドライバ回路14および発振回路15の部分を図1に示す回路で置き換えてスイッチング電源装置を構成する。図1以外の部分は図5と同じなので図示を省略する。
【0029】
図1に示す回路は、図5の電流誤差増幅回路EAMP2の出力端子とPWMコンパレータ13の入力端子を結ぶ経路に、演算増幅器OP1とダイオードD2からなるクランプ回路を接続したものになっている。定電圧Vaが演算増幅器OP1の非反転入力端子に接続され、演算増幅器OP1の出力端子がダイオードD2のカソード端子に接続されている。ダイオードD2のアノード端子は、電流誤差増幅回路EAMP2を構成するトランスコンダクタンスアンプOTA2の出力端子とPWMコンパレータ13の入力端子を結ぶ経路および演算増幅器OP1の反転入力端子に接続されている。
【0030】
このクランプ回路は、電流誤差信号Ver2が演算増幅器OP1の非反転入力端子に入力されている定電圧Vaより大きくなると演算増幅器OP1の出力が低下して、コンデンサC2の電荷をダイオードD2を介して放電させることにより、電流誤差信号Ver2が定電圧Vaより大きくならないようにする。すなわち、電流誤差信号Ver2が定電圧Vaでクランプされる。なお、電流誤差信号Ver2が定電圧Vaより小さいと、演算増幅器OP1の出力が電流誤差信号Ver2より大きくなるが、これはダイオードD2により電流誤差信号Ver2に影響しない。
【0031】
定電圧Vaの値をキャリア信号Voscの最大値と最小値の間に設定することにより、キャリア信号Voscの周期毎にスイッチング素子がオフすることを保証することができる。これについて、図2を参照して説明する。図2は、本発明のスイッチング電源装置に係る実施の形態によりスイッチング素子の制御信号Doutが生成される様子を示すタイミングチャートである。定電圧Vaの値は、キャリア信号Voscの最大値より少しだけ低い値に設定している。電流誤差信号Ver2が増加を続けている状態であり、電流誤差信号Ver2が定電圧Vaより低いときは、電流誤差信号Ver2とキャリア信号Voscとの大小関係で制御信号Doutの値が決定されている。電流誤差信号Ver2が定電圧Vaに達すると、電流誤差信号Ver2が定電圧Vaでクランプされるので、制御信号Doutの値は定電圧Vaとキャリア信号Voscとの大小関係で決定されるようになる。従い、いかなる状況においても、少なくとも定電圧Vaとキャリア信号Voscとの大小関係で決まるオフ時間は確保することができる。
【0032】
また、状況が変わり、電流指令値Vmulがインダクタ電流信号Videtより小さくなってインダクタ電流を減少させようとする場合、電流誤差信号Ver2が定電圧Vaでクランプされているため、この値を初期値として電流誤差信号Ver2が減少が開始することになり、電流誤差信号Ver2を短時間で所要の値まで減少させることができ、これによりインダクタ電流を素早く減少させることができる。
【0033】
図3は、図2の演算増幅器OP1とダイオードD2からなるクランプ回路を別のクランプ回路で置き換えた、本発明のスイッチング電源装置およびその制御回路に係る別の実施の形態の構成について説明するための図である。図3では、演算増幅器OP2とPチャネルMOSトランジスタMP1でクランプ回路を構成している。図2と同じ定電圧Vaが演算増幅器OP2の非反転入力端子に接続され、演算増幅器OP2の出力端子がPチャネルMOSトランジスタMP1のゲート端子に接続されている。PチャネルMOSトランジスタMP1のドレイン端子は接地され、ソース端子は電流誤差増幅回路EAMP2を構成するトランスコンダクタンスアンプOTA2の出力端子とPWMコンパレータ13の入力端子を結ぶ経路および演算増幅器OP2の反転入力端子に接続されている。このクランプ回路は一種のソースフォロワ回路であり、電流誤差信号Ver2が定電圧Vaより大きくなろうとすると、ソースフォロワ機能が働いて電流誤差信号Ver2が定電圧Vaより大きくならないようにする。その他の動作は図1のものと同様である。
【0034】
今までの説明において、電圧誤差増幅回路EAMP1および電流誤差増幅回路EAMP2についてはトランスコンダクタンスアンプを用いたものを例示してきたが、演算増幅器を用いて電圧誤差増幅回路EAMP1および/または電流誤差増幅回路EAMP2を構成してもよい。その構成例を図4に示す。図4(a)は演算増幅器を用いて電圧誤差増幅回路EAMP1を構成した例であり、図4(b)は演算増幅器を用いて電圧誤差増幅回路EAMP1を構成した例である。
【0035】
図4(a)に示す電圧誤差増幅回路EAMP1は、演算増幅器OP3およびその出力端子と反転入力端子の間に接続された抵抗Rc1およびCc1の直列回路からなる位相補償素子21により構成されている。この回路を図5の電圧誤差増幅回路EAMP1に置き換えても、図5の電圧誤差増幅回路EAMP1と同様の機能・効果を得ることができる。
【0036】
図4(b)に示す電流誤差増幅回路EAMP2は、演算増幅器OP4およびその出力端子と反転入力端子の間に接続された抵抗Rc2およびCc2の直列回路からなる位相補償素子22により構成されている。この回路を図5の電流誤差増幅回路EAMP2に置き換えても、図5の電流誤差増幅回路EAMP2と同様の機能・効果を得ることができる。
【0037】
また、本発明の実施の形態として力率改善型スイッチング電源装置およびその制御回路について説明してきたが、本発明は力率改善型に限るわけではなく、他のスイッチング電源装置およびその制御回路、例えばDC−DCコンバータおよびその制御回路にも適用できるものである。DC−DCコンバータの場合、図5の反転増幅回路11,乗算器12および電流誤差増幅回路EAMP2を削除して、電圧誤差増幅回路EAMP1の出力を直接PWMコンバレータ13の非反転入力端子に接続する構成となるが、図1や図2に示すクランプ回路を電圧誤差増幅回路EAMP1の出力端子に接続すればよい。
【0038】
また、スイッチング素子の制御信号Doutについては、PWMコンパレータ13が電流誤差信号Ver2とキャリア信号Voscを比較することにより生成する例を説明してきたが、図7の回路に類似した回路で生成するようにしてもよい。すなわち、図7の回路からORゲートOR1とリセットクロック信号RCLKを削除し、RSフリップフロップRSFFのリセット端子にクランプ回路により定電圧Vaでクランプされる電流誤差信号Ver2もしくは電圧誤差信号Ver1を入力するようにした回路で制御信号Doutを生成してもよい。
【符号の説明】
【0039】
2 商用電源
4 全波整流器
6 負荷
10 力率改善制御回路
11 反転増幅回路
12 乗算器
13,13a PWMコンパレータ
14 ドライバ回路
15 発振回路(OSC)
21,22 位相補償素子
C1,C2,Cin,Co,Cc1,Cc2 コンデンサ
D1,D2 ダイオード
Dout スイッチング素子の制御信号
EAMP1 電圧誤差増幅回路
EAMP2 電流誤差増幅回路
L インダクタ
MN1 NチャネルMOSトランジスタ(スイッチング素子)
MP1 PチャネルMOSトランジスタ
OP1〜OP4 演算増幅器
OR1 ORゲート
OTA1,OTA2 トランスコンダクタンスアンプ
R1〜R5,Rc1,Rc2 抵抗
RCLK リセットクロック信号
RSFF RSフリップフロップ
SCLK セットクロック信号
Va 定電圧
Vb 定電圧源もしくはその出力電圧
Vdet 全波整流器4の出力電圧の検出値(分圧値)
Ver1 電圧誤差信号
Ver2 電流誤差信号
Videt インダクタ電流信号
Vmul 電流指令値
Vosc キャリア信号
Vref 基準電圧源またはその出力である電圧指令値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誤差増幅回路の出力電圧を上限電圧と下限電圧の間で振動するキャリア信号と比較することにより得られる時比率でスイッチング素子をオンオフさせて入力電圧から所定の出力電圧を生成するスイッチング電源装置であって、
前記増幅回路の出力電圧をクランプ電圧でクランプするクランプ回路を有し、前記クランプ電圧が前記上限電圧より低く、前記下限電圧より高いことを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記誤差増幅回路は前記スイッチング電源装置のインダクタに流れるインダクタ電流の検出値とその目標値の差を増幅する、もしくは前記出力電圧の検出値とその目標値との差を増幅することを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記増幅回路はトランスコンダクタンスアンプおよび該トランスコンダクタンスアンプの出力端子に接続されたコンデンサを有することを特徴とする請求項2に記載のスイッチング電源装置。
【請求項4】
前記増幅回路は演算増幅器および該演算増幅器の出力端子と入力端子の間に接続された位相補償素子を有することを特徴とする請求項2に記載のスイッチング電源装置。
【請求項5】
前記スイッチング電源装置が力率改善型スイッチング電源装置であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のスイッチング電源装置。
【請求項6】
誤差増幅回路の出力電圧を上限電圧と下限電圧の間で振動するキャリア信号と比較することにより得られる時比率でスイッチング素子をオンオフさせて入力電圧から所定の出力電圧を生成するスイッチング電源装置の制御回路であって、
前記増幅回路の出力電圧をクランプ電圧でクランプするクランプ回路を有し、前記クランプ電圧が前記上限電圧より低く、前記下限電圧より高いことを特徴とするスイッチング電源装置の制御回路。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−182494(P2011−182494A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41806(P2010−41806)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】