説明

スイッチング電源装置およびシート処理装置

【課題】連続発振モードと間欠発振モードとを備えたスイッチング電源装置において、負荷を起動してから定常状態に移行するまでの期間に間欠発振モードに遷移してしまうことを抑制する。
【解決手段】スイッチング電源100は、最大負荷と最小負荷との差が大きな負荷に電力を供給しつつ、待機状態での電源効率の低下を抑制するために、連続発振モードと間欠発振モードとを備える。スイッチング電源100では、負荷が起動した直後にスイッチング電源装置が連続発振モードから間欠発振モードに一旦遷移してしまいやすい。そこで、スイッチング電源100は、負荷が起動状態から定常状態に移行するまでの期間は強制的に連続発振モードを維持する。そのため、負荷が起動した直後にスイッチング電源100が連続発振モードから間欠発振モードに一旦遷移してしまうことを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源装置の制御技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自励式スイッチング電源(RCC電源)は、単純な回路構成で比較的安価であるため、利用価値が高い。一般にRCC電源は熱設計の観点からRCC電源が搭載される機器に求められる最大負荷の状態において効率が最大となるように設計される。これは、RCC電源は負荷が軽くなると効率が低下してしまうことを意味する。例えば、装置を駆動するためのDCブラシレスモータは起動時に大電流を消費し、待機時に非常に小さい電流だけを消費する。このように、最大負荷と最小負荷との差が顕著でかつ、最小負荷となる期間の長い駆動対象をRCC電源に接続すると、待機状態での電源効率が極めて低下する。
【0003】
動作状態と待機状態とで負荷の変動幅が大きい装置に対しては、待機状態においてメインスイッチング素子の発振を停止できる擬似共振電源か、またはCPUを備えた電源が必要となる。後者では、CPUが、電源の間欠発振および連続発振させるタイミングを負荷の駆動タイミングにより規定することになる。一方、前者の擬似共振電源には電源ICが必要となる。電源ICは、待機状態においても電力を必要とする。CPUも同様に待機状態においても電力が必要となる。さらに電源ICやCPUは高価な部品であるため、より、スイッチング電源の省エネルギー化、低コスト化の観点で問題となっていた。
【0004】
そのため、電源ICやCPUを使用せず、かつ待機状態での効率を高める構成が求められる。特許文献1では、検知回路により二次側の出力電流を検知し、電流が少ない時は間欠発振を行い、電流が多い時は連続発振に切り替えるスイッチング電源が提案されている。特許文献1の発明では、電源ICやCPUが不要となるためコスト的に有利であり、待機時の効率低下も抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−153057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載の発明では、二次側に流れる電流を検知し、電流が多い期間だけ間欠発振モードから連続発振モードに切り替えている。そのため、特許文献1の発明では、次のような課題が存在する。たとえば、DCブラシレスモータでは、起動してから回転数が規定回転数に達するとブレーキがかけられて消費電流が少なくなる軽負荷状態に移行する。その後、DCブラシレスモータは、定常回転状態に移行する。定常回転状態で消費される電流は、起動時に必要となる電流(起動電流)よりも少ない。つまり、DCブラシレスモータは、起動状態、ブレーキ状態、定常回転状態というように遷移する。問題なのは、ブレーキ状態において、電源が間欠発振モードに遷移してしまうことである。つまり、ブレーキ状態から定常回転状態に遷移する際に、間欠発振モードから連続発振モードに移行しなければならない。間欠発振モードは、連続発振モードに比べ電圧リップルが大きい。よって、定常回転数付近で回転数の収束制御を行っているときに電圧リップルが大きくなってしまうのである。このように、一旦、間欠発振モードに入ってしまうと、回転数の収束制御の初期に回転が安定しなくなったり、必要な電流を十分に供給できなくなったりする恐れがあった。
【0007】
さらに、特許文献1に記載の電源では、モータ巻線のショートなどの回路故障が発生して電流が流れ続ける状態になると、連続発振が継続されてしまう。つまり、過電流検知回路などの異常検知回路が必要となる。
【0008】
そこで、本発明は、連続発振モードと間欠発振モードとを備えたスイッチング電源装置において、負荷を起動してから定常状態に移行するまでの期間に間欠発振モードに遷移してしまうことを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、スイッチング電源装置として実現できる。スイッチング電源装置は、たとえば、一次側の電圧を変換して二次側に出力する電圧変換器と、直流電源から電圧変換器の一次側に流れる電流を制御するスイッチング素子と、電圧変換器の二次側に出力された電圧であって平滑及び整流された電圧と基準電圧との誤差電圧を出力する誤差検知回路と、誤差検知回路からの誤差電圧に応じてスイッチング素子をオンオフ制御して発振させる発振制御回路と、スイッチング素子の動作モードであってスイッチング素子を間欠発振させる間欠発振モードと、スイッチング素子を連続発振させる連続発振モードとを切り替えるモード切替回路とを備える。とりわけ、モード切替回路は、電圧変換器の二次側に接続された負荷の起動状態から起動状態よりも負荷の要する電流の量が少ない定常状態に移行するまでの期間は連続発振モードを維持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
最大負荷と最小負荷との差が大きな負荷に電力を供給するスイッチング電源装置で、待機状態での電源効率の低下を抑制するためには、連続発振モードと間欠発振モードとを備えることが有効である。このような、連続発振モードと間欠発振モードとを備えたスイッチング電源装置では、負荷が起動した直後にスイッチング電源装置が連続発振モードから間欠発振モードに一旦遷移してしまいやすい。起動状態から定常状態へ遷移中の期間に間欠発振モードに移行してしまうと、スイッチング電源装置は、負荷に十分な電流を供給できなくなり、負荷の安定動作を阻害する可能性があった。一方、本発明のスイッチング電源装置は、負荷が起動状態から定常状態に移行するまでの期間は強制的に連続発振モードを維持する。そのため、負荷が起動した直後にスイッチング電源装置が連続発振モードから間欠発振モードに一旦遷移してしまうことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明第1の実施例を最もよく表す自励式スイッチング電源および当該電源に接続された負荷の図である。
【図2】自励式スイッチング電源の各部位の電圧波形を示した図である。
【図3】本発明第1〜第3の実施例の電源における負荷への電流を示した図である。
【図4】自励式スイッチング電源の間欠発振を説明するための図である。
【図5】本発明第1の実施例の電源における負荷への出力電圧と、トリガ信号の出力状況と、電源状態の遷移を示したタイミングチャートである。
【図6】本発明第2の実施例を表す自励式スイッチング電源および当該電源に接続された負荷の図である。
【図7】本発明第2の実施例の電源における負荷への電流と、トリガ信号の出力状況と、電源状態の遷移を示したタイミングチャートである。
【図8】本発明第3の実施例を表す自励式スイッチング電源および当該電源に接続された負荷の図である。
【図9】本発明第3の実施例の電源における負荷への電流と、紙有無検知信号の遷移と、トリガ信号の出力状況と、電源状態の遷移を示したタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施例1]
図1(a)を用いて、実施例1における自励式のスイッチング電源100について説明する。図1(a)において絶縁トランスT101は一次側の電圧を変換して二次側に出力する電圧変換器の一例である。絶縁トランスT101は一次巻線L1、二次巻線L2および一次側の補助巻線L3で構成されている。なお、絶縁トランスT101に代えて圧電素子などが電圧変換器として採用されてもよい。補助巻線L3は一次巻線L1と同極に、二次巻線L2は一次巻線L1と異極となるように接続される。ブリッジダイオードD101はAC入力電圧を整流する整流回路である。電解コンデンサC101はブリッジダイオードD101にて整流された電圧を平滑化する平滑回路である。メインスイッチング素子Q101は、商用電源、ブリッジダイオードD101および電解コンデンサC101により構成された直流電源から電圧変換器の一次側に流れる電流を制御するスイッチング素子である。メインスイッチング素子Q101の電流流入端子は絶縁トランスT101の一次巻線L1の一端と接続されている。メインスイッチング素子Q101の電流流出端子は当該直流電源のマイナス側に接続されている。メインスイッチング素子Q101は、制御端子に入力された信号にしたがって絶縁トランスT101のオン/オフ制御を行う。スイッチング素子Q102は、メインスイッチング素子Q101のオン/オフを制御するスイッチング素子である。スイッチング素子Q102の電流流入端子はメインスイッチング素子Q101の制御端子と接続されている。スイッチング素子Q102の電流流出端子は入力電圧Vinのマイナス側に接続されている。
【0013】
抵抗R101は入力電圧Vinのプラス側とメインスイッチング素子Q101の制御端子との間に挿入された起動抵抗である。抵抗R102はメインスイッチング素子Q101の制御端子と入力電圧Vinのマイナス側との間に接続されている。つまり、抵抗R101と抵抗R102とで構成される分圧回路によって入力電圧Vinが分圧される。メインスイッチング素子Q101がオンするのに十分な電圧となるように、分圧比が設定されている。
【0014】
コンデンサC102および抵抗R103はメインスイッチング素子Q101の制御端子と補助巻線L3の一次巻線L1との同極側との間に直列に接続されている。コンデンサC103は入力電圧Vinのマイナス側とスイッチング素子Q102の制御端子との間に接続されている。抵抗R104は補助巻線L3の一端とスイッチング素子Q102の制御端子との間に接続されている。抵抗R104とコンデンサC103は時定数回路を構成する。スイッチング素子Q102は、誤差検知回路からの誤差電圧に応じてスイッチング素子をオンオフ制御して発振させる発振制御回路の主要部である。
【0015】
整流ダイオードD102は二次巻線L2の一次巻線L1との異極側にアノードが接続される整流用のダイオードである。電解コンデンサC104は整流ダイオードD102のカソードと二次巻線L2の一次巻線L1との同極側との間に接続される電圧平滑用のコンデンサである。
【0016】
ステープラ110はスイッチング電源装置から負荷として電流を受給するシート処理ユニットの一例である。ステープラ110は二次側の整流および平滑された電圧(出力電圧Vout)が供給される負荷である。差動増幅器IC101は電圧変換器の二次側に出力された電圧であって平滑及び整流された電圧と基準電圧との誤差電圧を出力する誤差検知回路の一例である。差動増幅器IC101は抵抗R105と抵抗R106によって出力電圧Voutを分圧した値と基準電圧とを比較して出力端子の電圧に変換する回路である。基準電圧はツェナーダイオードZD101と抵抗R107とで生成される。抵抗R110およびコンデンサC105は差動増幅器IC101の反転入力端子と出力端子との間に直列に接続され、閉ループの利得および位相を調整する回路である。抵抗R108は差動増幅器IC101の出力端子に接続される電流制限用の抵抗である。
【0017】
リップル検知回路111は負荷の動作を監視する監視回路の一例である。リップル検知回路111は出力電圧Voutに接続され、ステープラ110へ供給される出力電圧Voutに含まれるリップルの周期を検知する回路である。リップル検知回路111は、出力電圧Voutのリップルの周期が所定閾値より短くなるとトリガ信号を出力する。時間設定回路113はステープラ110の動作開始から動作終了までの時間から予め設定された連続発振期間を保持する回路である。
【0018】
モード切替回路112は、メインスイッチング素子Q101の動作モードを切り替えるモード切替回路である。動作モードとしては、メインスイッチング素子Q101を間欠発振する間欠発振モードと、メインスイッチング素子Q101を連続発振する連続発振モードとがある。モード切替回路112は、負荷が動作を開始すると、時間設定回路113が設定した所定期間にわたってメインスイッチング素子Q101を連続発振モードに切り替えてから間欠発振モードに戻す。つまり、モード切替回路112は、電圧変換器の二次側に接続された負荷が多量の電流を必要とする起動状態から起動状態での電流よりも少ない量の電流を必要とする定常状態に移行するまでの期間は連続発振モードを維持する。このように、モード切替回路112は、電圧変換器の二次側に接続された負荷の起動状態から起動状態よりも負荷の要する電流の量が少ない定常状態に移行するまでの期間は連続発振モードを維持する。なお、所定期間は、予め予測された負荷が動作を開始してから終了するまでの期間よりも長い期間である。モード切替回路112は、リップル検知回路111に接続されており、リップル検知回路111からトリガ信号を入力される。モード切替回路112は、負荷であるステープラ110が動作していない待機状態においてパルス信号を出力する。さらに、モード切替回路112は、トリガ信号を入力されると、時間設定回路113より設定された所定期間だけパルス信号を停止する。スイッチング素子Q103は、モード切替回路112が出力するパルス信号に応じてオンオン動作する。スイッチング素子Q103の制御端子はモード切替回路112と接続され、電流流出端子は出力電圧Voutのマイナス側に接続されている。スイッチング素子Q103の電流流入端子には電流制限用の抵抗R109が接続されている。
【0019】
フォトカプラPC101は二次側の出力電圧Voutの変動を一次側に伝えるフィードバック回路の一部を形成している。フォトカプラPC101は発光ダイオードとフォトトランジスタとを備えている。抵抗R111はフォトカプラPC101が備えるフォトトランジスタに流れる電流を制限する抵抗である。フォトカプラPC101のフォトトランジスタの電流流出端子はスイッチング素子Q102の制御端子に接続されている。そのため、スイッチング素子Q102のオン/オフ切り替え時間は、差動増幅器IC101の出力にしたがって制御される。フォトカプラPC101はスイッチング素子Q103がオンしている時には、差動増幅器IC101の出力とは無関係にスイッチング素子Q102を強制的にオンさせる。
【0020】
図1(b)を用いて、リップル検知回路111の構成例について説明する。比較回路114は出力電圧Voutと基準電圧Vrefとを比較している。出力電圧Voutが基準電圧Vrefを下回ると、比較回路114はカウント開始信号を出力する。タイマー115は一定周期でパルス信号を出力する。カウンタ116はカウント開始信号をトリガとして、カウント値を0にリセットしてから、タイマー115が出力するパルスのカウントを開始する。リップル周期算出回路117は比較回路114が再度カウント開始信号を出力した時点のカウント値からリップル周期を算出する。カウント値とリップル周期との関係は予め数式化またはテーブル化されているものとする。トリガ出力回路118はリップル周期算出回路117により算出されたリップル周期が所定閾値より短くなるとトリガ信号を出力する。このように、リップル検知回路111は出力電圧Voutのリップル周期を検知し、リップル周期が所定閾値よりも短くなるとトリガ信号を出力する。このように、比較回路114、タイマー115、カウンタ116およびリップル周期算出回路117は、電圧変換器の二次側に出力される電圧に含まれるリップルの周期を検知するリップル検知回路として機能する。また、トリガ出力回路118は、リップル検知回路が検知した周期が所定周期より短くなると負荷が動作を開始したと判定する判定回路として機能する。
【0021】
図2を用いて各部の電圧波形と動作の関係を説明する。Vgsはメインスイッチング素子Q101の制御端子電圧である。Vdsはメインスイッチング素子Q101の電流流入端子と電流流出端子との端子間電圧である。Idはメインスイッチング素子Q101に流れる電流である。VL2は二次巻線L2に発生する電圧である。Isは二次側の整流ダイオードD102に流れる電流である。VL3は補助巻線L3に発生する電圧である。図2に示した記号NL1、NL2およびNL3は一次巻線L1、二次巻線L2、補助巻線L3それぞれの巻線数を示している。
【0022】
メインスイッチング素子Q101は起動抵抗R101と抵抗R102により分圧された電圧が制御端子に印加される。そのため、Vgsが上昇することでメインスイッチング素子Q101は導通状態となる。メインスイッチング素子Q101が導通状態となると、一次巻線L1に入力電圧Vinが印加され、補助巻線L3に一次巻線L1と同極側を正とする電圧が誘起される。この時、二次巻線L2にも電圧が誘起される。この電圧は整流ダイオードD102のアノード側を負とする電圧であるため、二次巻線L2に電流Isは流れない。一次巻線L1を流れる電流Idは直線的に増加し、絶縁トランスT101には励磁電流の2乗に比例したエネルギーが蓄積される。図2が示すように、この励磁電流は時間に比例して増大する。メインスイッチング素子Q101が導通状態であるため、Vdsは略零である。補助巻線L3に誘起された電圧によりコンデンサC102および抵抗R103を介してメインスイッチング素子Q101の制御端子が充電され、さらに導通状態が継続する。
【0023】
時定数回路を構成するコンデンサC103は補助巻線L3からの電荷で充電される。コンデンサC103の両端の電圧がスイッチング素子Q102の閾値より高くなるとスイッチング素子Q102が導通状態となる。これにより、メインスイッチング素子Q101の制御端子電圧Vgsが低下し、メインスイッチング素子Q101は非導通状態となる。この時、絶縁トランスT101の各巻線には起動時と逆極性の電圧が発生し、Vdsは入力電圧Vin、二次側の出力電圧Voutの巻線比倍の電圧(Vout×NL2/NL1)およびサージ電圧を重畳した電圧となる。二次巻線L2には整流ダイオードD102のアノード側を正とする電圧が発生する。このため、絶縁トランスT101に蓄積されたエネルギーが整流および平滑され二次側に伝達される。電流Isは負の傾きで直線的に減少する。絶縁トランスT101に蓄えられているエネルギーが二次側に全て伝達されると、メインスイッチング素子Q101は再び導通状態となり、継続して発振動作を行う。
【0024】
再び導通状態となる理由は次の通りである。メインスイッチング素子Q101が非導通状態になった直後は二次巻線L2に発生している電圧の巻線比分の電圧(Vout×NL3/NL2)が補助巻線L3に発生する。この電圧によってメインスイッチング素子Q101の制御端子が負にバイアスされているが、二次側にエネルギーの伝達が終わると負のバイアスが徐々に低下する。このため、容量結合しているコンデンサC102から再びメインスイッチング素子Q101の制御端子が正方向にバイアスされる。これにより、メインスイッチング素子Q101は再び導通状態となる。このように、メインスイッチング素子Q101は、動通状態と非動通状態とを繰り返すことで継続して発振する。この継続した発振を連続発振と呼ぶ。
【0025】
コンデンサC103の電圧がスイッチング素子Q102の制御端子の閾値電圧を超えると、メインスイッチング素子Q101がオフする。つまり、発振の周波数はコンデンサC103への充電速度により決定される。このコンデンサC103への充電電流は抵抗R104の電流とフォトカプラPC101のフォトトランジスタからの電流との和である。フォトカプラPC101のフォトトランジスタ電流は二次側の差動増幅器IC101の出力に依存する。差動増幅器IC101の反転入力端子には出力電圧Voutを抵抗R105およびR106にて分圧された値が入力される。非反転入力端子には基準電圧Vrefを作るための抵抗R107およびツェナーダイオードZD101が接続されている。出力電圧Voutが所望の値より大きくなると差動増幅器IC101の出力電圧は低くなる。出力電圧Voutが所望の値より小さくなると差動増幅器IC101の出力電圧は高くなる。これにより、フォトカプラPC101のフォトトランジスタの電流は出力電圧Voutが高ければ大きく、出力電圧Voutが低ければ小さくなる。従って、メインスイッチング素子Q101のオン時間は出力電圧Voutが高ければ短く、出力電圧Voutが低ければ長くなり、出力電圧Voutが一定になるよう動作する。
【0026】
一定に保たれた出力電圧Voutはステープラ110に供給されており、ステープラ110の駆動電源として使用される。ステープラ110は挿入されたシートの束を検知するシート検知回路と、挿入されたシートの束をステープルするステープル部を備えたシート処理置である。ステープル部は、DCブラシレスモータを備えている。DCブラシレスモータは、シート検知回路がシートを検知すると駆動してステープル動作を行う。
【0027】
図3が示すように、時刻t0でDCブラシレスモータが起動する。DCブラシレスモータにはモータ起動時に非常に大きな電流が流れる。時刻t1で、DCブラシレスモータが規定回転数もしくは規定時間に達するとブレーキをかけるかまたは給電を停止する。つまり、時刻t1でDCブラシレスモータは負荷電流が少ない軽負荷状態に移行する。時刻t2で、DCブラシレスモータは、定常回転状態に移行する。定常回転を維持するために起動電流より少ない電流をDCブラシレスモータは必要とする。時刻t0にシート束が挿入されてから時刻t3にステープル動作を終了するまでの時間Tは設計上あらかじめ定められている。つまり、この時間Tは予測可能な既知の時間である。時刻t3でステープル動作を終了すると、DCブラシレスモータは待機状態に遷移する。待機状態において、DCブラシレスモータはほとんど電流を必要としない。
【0028】
図1が示すように、ステープラ110にはリップル検知回路111が接続されている。リップル検知回路111は、ステープラ110の動作を監視しており、動作を開始したことを検知する。リップル検知回路111はステープラ110に入力される出力電圧Voutのリップル周期を監視する。リップル検知回路111は、リップル周期が所定閾値よりも短くなると、ステープラ110が駆動を開始したと判定してトリガ信号を出力する。
【0029】
図4(a)が示すように、モード切替回路112は、ステープラ110が駆動していない待機状態において、HI/LOWを繰り返すパルス信号を出力する。このパルス信号はスイッチング素子Q103を定期的にオン/オフ制御する。スイッチング素子Q103の制御端子がHIとなる期間では、フォトカプラPC101の発光ダイオードには、差動増幅器IC101の出力とは関係なく抵抗R109で制限される電流が流れる。この電流は差動増幅器IC101が制御する電流に比べて充分に大きい。発光ダイオードが点灯することでこの電流がフォトカプラPC101のフォトトランジスタに伝えられると、瞬時にコンデンサC103の電圧を上昇させる。これにより、スイッチング素子Q102が導通状態となり、メインスイッチング素子Q101が非導通状態となる。この状態を自励式スイッチング電源の発振周周期の例えば2〜20倍くらいの期間にわたって継続すると、絶縁トランスT101のエネルギーが完全に放出される。これにより、自励式スイッチング電源の一次側は起動前と同じ状態に戻る。
【0030】
ステープラ110は待機状態で小さな負荷であるため、出力電圧Voutはほぼそのままの状態で維持される。スイッチング素子Q103の制御端子がHIからLOWに戻ると、フォトカプラPC101の二次側の発光ダイオードに流れる電流もほぼ以前の状態に回復する。そのため、フォトカプラPC101のフォトトランジスタ電流もほぼ以前の状態に回復する。抵抗R104によるフォトトランジスタ電流の電圧降下をスイッチング素子Q102の閾値電圧よりも大きく設定した場合、スイッチング素子Q102はオン状態を継続し、起動抵抗R101の電流はスイッチング素子Q102に全て流れ込む。図4(c)の発振停止期間に示すように、メインスイッチング素子Q101はオンすることができず、自励式スイッチング電源は停止状態を継続する。
【0031】
その後、時間経過に従い、負荷は電解コンデンサC104にたまった電荷を消費する。図4(b)の発振停止期間に示すように、徐々に出力電圧Voutは下がる。それに伴い、差動増幅器IC101の出力電圧は上昇し、フォトカプラPC101のフォトトランジスタ電流は減少する。この電流による抵抗R104の電圧降下がスイッチング素子Q102の閾値よりも小さくなると、起動抵抗R101からコンデンサC103に充電が行われ、メインスイッチング素子Q101がオンする。その後、スイッチング電源が発振を始める。
【0032】
図4(c)が示すように、モード切替回路112が出力するパルス信号により、スイッチング電源100は、絶縁トランスT101のエネルギーが完全に放出された発振停止状態と発振状態とを定期的に繰り返す。この発振と停止を繰り返すことを間欠発振と呼ぶ。ステープラ110が駆動していない待機時は上記間欠発振により効率を高める。
【0033】
なお、間欠発振の周期(発振と停止の周期)は接続された負荷の重さにより変化する。負荷が軽い場合は出力電圧Voutの低下が小さいので間欠発振の周期が長くなる。逆に負荷が重い場合は間欠発振の周期が短くなる。ステープラ110が待機状態にある場合はステープラ110の消費電流は少ない。また、間欠発振の周期が長いので、出力電圧Voutのリップル周期も長くなる。一方、ステープラ110が待機状態から駆動状態に移行すると、消費電流が増大し、間欠発振の周期が短くなる。つまり、出力電圧Voutのリップル周期も短くなる。そのため、リップル検知回路111は電圧リップル周期を監視することで、ステープラ110の動作開始を検知することができる。
【0034】
図5が示すように、モード切替回路112は、トリガ信号が入力されると発振停止回路にパルス信号を出力することで間欠発振モードに切り替え、パルス信号を出力してから所定期間が経過するとパルス信号の出力を停止することで連続発振モードに切り替える。まず、時刻t0でステープラ110が駆動を開始すると、出力電圧Voutのリップル周期が短くなり始める。時刻taでステープラ110への出力電圧Voutのリップル周期が所定閾値よりも短くなり、リップル検知回路111はステープラ110が駆動を開始したと判定してモード切替回路112にトリガ信号を出力する。モード切替回路112はトリガ信号が入力されると、時間設定回路113により設定された期間Tにわたり、パルス信号の出力を停止する。時間設定回路113には、期間Tの値が保持されている。期間Tは、予測可能の時間であり、ステープラ110が駆動を開始したと判定された時刻taからステープル動作が終了する時刻tbまでの時間にマージンを加算して得られる時間である。つまり、期間Tは時刻taから時刻tcまでの期間である。期間Tにはマージンが加算されているため、ステープラ110が駆動を開始したと判定された時刻taからステープル動作が終了する時刻tbまでの期間よりも長い。
【0035】
時刻taで、モード切替回路112がパルス信号の出力を停止すると、スイッチング素子Q103はオフ状態となる。これによりスイッチング電源100は、間欠発振モードから連続発振モードへと切り替わる。スイッチング素子Q103はパルス信号が入力されるとスイッチング素子の発振を停止させる発振停止回路の主要部である。スイッチング電源100は連続発振モードに切り替わると重い負荷に対しても電流を供給することができるため、ステープラ110の継続駆動が可能となる。連続発振モードに切り替わってから、時間設定回路113により設定された期間Tが経過すると、モード切替回路112は、再びパルス信号を出力する。期間Tは、タイマーやカウンタなどの計時回路により計時することができる。この時、ステープラ110はすでに待機状態に遷移しているため、スイッチング電源100は、間欠発振モードにおいても充分な電流を供給できる。
【0036】
上述したように、最大負荷と最小負荷との差が大きな負荷に電力を供給するスイッチング電源装置で、待機状態での電源効率の低下を抑制するためには、連続発振モードと間欠発振モードとを備えることが有効である。このような、連続発振モードと間欠発振モードとを備えたスイッチング電源装置では、負荷が起動した直後にスイッチング電源装置が連続発振モードから間欠発振モードに一旦遷移してしまいやすい。起動状態から定常状態へ遷移中の期間に間欠発振モードに移行してしまうと、スイッチング電源装置は、負荷に十分な電流を供給できなくなり、負荷の安定動作を阻害する可能性があった。一方、本発明のスイッチング電源装置は、負荷が起動状態から定常状態に移行するまでの期間は強制的に連続発振モードを維持する。そのため、負荷が起動した直後にスイッチング電源装置が連続発振モードから間欠発振モードに一旦遷移してしまうことを抑制できる。
【0037】
たとえば、実施例1のモード切替回路112は、監視回路が負荷の動作開始を検知すると、予め予測された負荷が動作を開始してから終了するまでの期間よりも長い所定期間にわたって連続発振モードに切り替えてから間欠発振モードに戻す。このため、ステープラ110が起動直後に間欠発振モードに移行してしまうことを抑制できる。具体的な回路構成は、電圧変換器の二次側に接続された負荷の動作開始を検知すると、トリガ信号を出力する動作開始検知回路や、パルス信号が入力されるとスイッチング素子の発振を停止させる発振停止回路を備えてもよい。モード切替回路112は、トリガ信号が入力されると発振停止回路にパルス信号を出力することで間欠発振モードに切り替え、パルス信号を出力してから所定期間が経過するとパルス信号の出力を停止することで連続発振モードに切り替える。よって、比較的に安価かつ簡単な回路構成により、負荷が起動状態から定常状態に移行するまでの期間において強制的に連続発振モードを維持することが可能となる。
【0038】
このように、スイッチング電源100は、ステープラ110が動作状態に移行したときに連続発振モードに切り替わることで大電流を供給できる。さらに、スイッチング電源100は、負荷が動作を開始すると、負荷が動作を終了すると予測された時間までは連続発振モードを継続する。そのため、起動直後に間欠発振モードに切り替わってしまうことが抑制され、負荷を安定して立ち上げることが可能となる。さらに、実施例1では、負荷が待機状態に移行すると間欠発振モードに切り替わることで電源効率を改善できる。
【0039】
[実施例2]
実施例2は、負荷がシュレッダーであるケースである。図6を用いて実施例2について説明する。なお、実施例2で実施例1と共通する部分には同一の参照符号を付与することで説明の簡潔化を図る。
【0040】
シュレッダー610はスイッチング電源装置から負荷として電流を受給するシート処理ユニットの一例である。また、シュレッダー610はスイッチング電源100から出力される出力電圧Voutを供給される負荷の一例である。よく知られているように、シュレッダー610はシートなどの物体が挿入されたことを検知する検知センサを備えており、物体を検知するとDCブラシレスモータが駆動して物体をせん断する。図3に示したように、DCブラシレスモータはモータ起動時に非常に大きな電流が流れる。DCブラシレスモータは、所定条件が満たされるとブレーキをかけられるかまたは給電を停止され、重負荷状態から軽負荷状態に遷移する。その後、DCブラシレスモータは、定常回転状態に遷移する。検知センサが物体を検知したタイミングからせん断処理が終了するタイミングまでの時間は設計上予測可能な時間である。切断処理後の待機状態では、シュレッダー610は、ほとんど電流を必要としない。
【0041】
電流検知回路611は負荷の動作を監視する監視回路の一例である。また、電流検知回路611は電圧変換器の二次側に接続された負荷の動作開始を検知すると、トリガ信号を出力する動作開始検知回路の一例である。たとえば、電流検知回路611はシュレッダー610に流れる電流を検知する回路である。シュレッダー610に流れる電流は、検知抵抗R612によって電流から電圧に変換される。電流検知回路611は検知抵抗R612の両端の電圧を監視することで負荷に流れる電流の値を測定する。また、電流検知回路611は電流の測定値と所定閾値とを比較する比較回路を備え、測定値が閾値を超えるとトリガ信号を出力する。このように、電流検知回路611や検知抵抗R612は、負荷に通電される電流の値を検知する回路として機能するまた、電流検知回路611が備える比較回路は、検知した電流の値が所定値より大きくなると負荷が動作を開始したと判定する判定回路として機能する。本実施例では電流検知に検知抵抗を使用しているがこれに限るものではなく、電流の値を検知できるのであれば他の検知方法が採用されてもよい。時間設定回路613はシュレッダー610の動作開始から動作終了までの最長動作時間から予め決定された連続発振期間を保持している。最長動作時間は、例えば、シュレッダー610に挿入されることが想定されるシートのサイズのうち最大サイズ(例:A3)から算出された値とする。モード切替回路612はシュレッダー610が動作していない待機状態ではパルス信号を出力し、スイッチング電源100を間欠発振モードに遷移させる。また、モード切替回路612は電流検知回路611からトリガ信号を入力されると、時間設定回路613により設定された連続発振期間にわたってパルス信号の出力を停止することで、スイッチング電源100を連続発振モードに遷移させる。
【0042】
図7に示したタイミングチャートを参照しつつ、実施例2の動作を説明する。時刻t0でシュレッダー610に紙が挿入されたことを物体検知回路が検知すると、DCブラシレスモータが駆動を開始する。DCブラシレスモータが駆動を開始すると、DCブラシレスモータに流れる電流が増加する。
【0043】
時刻taで、電流検知回路611は電流の測定値が閾値を超えるとモード切替回路612にトリガ信号を出力する。モード切替回路612はトリガ信号を入力されると、パルス信号を停止するとともに、時間設定回路613により設定された期間Tを計時するタイマーをスタートさせる。これにより、スイッチング電源100は、連続発振モードに移行する。期間Tは、シュレッダー610が動作を開始してからせん断処理が終了するまでの時間にマージンを加算して予め算出された値である。スイッチング電源100は、間欠発振モードから連続発振モードに切り替わると、重い負荷に対しても十分な電流を供給することができるようになる。スイッチング電源100が連続発振モードに移行すると、シュレッダー610は挿入されたシートに対してせん断処理を行い、せん断処理が終了すると停止する。せん断処理の終了はシュレッダー610自身が判断する。
【0044】
時刻tbで、シュレッダー610はせん断処理を終了して、待機状態に移行する。時刻taから時刻tbまでの時間はシートのサイズによって変化するが、時刻taから時刻tcまでの期間Tは不変である。
【0045】
時刻tcで、タイマーが期間Tのカウントを終了すると、モード切替回路612はパルス信号の出力を再開する。これにより、スイッチング電源100は、間欠発振モードに移行する。時刻tc以降ではシュレッダー610が停止しているため、それほど多くの電流を必要としない。つまり、この電流は、間欠発振モードでも供給可能な程度の少ない電流である。よって、スイッチング電源100は間欠発振モードにおいても十分な電流を供給できるといえる。
【0046】
実施例2によれば、負荷がシュレッダーであっても、実施例1と同様の効果を奏することができる。つまり、実施例2のスイッチング電源100は、負荷が待機状態にあるときの電源の効率を高めつつ、負荷が起動状態にあるときには大電流を供給できる。さらに、スイッチング電源100は、起動直後に間欠発振モードに移行してしまうことを抑制しているため、負荷を安定して立ち上げることができる。
【0047】
[実施例3]
実施例3は、負荷が穿孔装置(パンチ)であるケースである。図8を用いて実施例3について説明する。なお、実施例3で実施例1と共通する部分には同一の参照符号を付与することで説明の簡潔化を図る。
【0048】
パンチ810はスイッチング電源装置から負荷として電流を受給するシート処理ユニットの一例である。また、パンチ810はスイッチング電源100が出力する出力電圧Voutを供給される負荷の一例である。よく知られているように、パンチ810はシート束などの物体が挿入されたことを検知する検知センサを備えており、物体を検知するとDCブラシレスモータが駆動して物体を穿孔処理する。穿孔処理においても、DCブラシレスモータは、起動時状態で大きな電流が流れる。DCブラシレスモータは、所定条件が満たされるとブレーキをかけられるかまたは給電を停止され、重負荷状態から軽負荷状態に遷移する。その後、DCブラシレスモータは、定常回転状態に遷移する。検知センサが物体を検知したタイミングから穿孔処理が終了するタイミングまでの時間は設計上予測可能な時間である。穿孔処理後の待機状態では、パンチ810は、ほとんど電流を必要としない。
【0049】
紙挿入検知回路811は負荷の動作を監視する監視回路の一例であり、負荷である装置に物体(例:シート)が挿入されたことを検知するとトリガ信号を出力する物体検知回路(例:シート検知回路)の一例である。紙挿入検知回路811はパンチ810にシート束が挿入されたか否かを検知するセンサ回路である。紙挿入検知回路811は電圧変換器の二次側に接続された負荷の動作開始を検知すると、トリガ信号を出力する動作開始検知回路の一例である。紙挿入検知回路811はパンチ810の一部であるが、図8では、便宜上、外部に存在するがごとく示されているにすぎない。紙挿入検知回路811は例えばフォトセンサなどで実現され、シート束が挿入されるとモード切替回路812にトリガ信号を出力する。時間設定回路813はパンチ810の動作開始から動作終了までの時間から予め決定された連続発振期間Tを保持している。
【0050】
モード切替回路812はパンチ810が駆動していない待機状態ではパルス信号を出力することで、スイッチング電源100を間欠発振モードに移行させる。紙挿入検知回路811からトリガ信号を入力されると、モード切替回路812は、パルス信号を停止するとともに、時間設定回路613により設定された期間Tを計時するタイマーをスタートさせる。これにより、スイッチング電源100は、連続発振モードに移行する。
【0051】
図9のタイミングチャートを用いて実施例3の動作を説明する。時刻taで紙挿入検知回路811はパンチ810に紙が挿入されたことを検知してトリガ信号を出力する。モード切替回路812は、トリガ信号を入力されると、パルス信号を停止する。さらに、モード切替回路812は、時間設定回路613により設定された期間Tを計時するタイマーをスタートさせる。これにより、スイッチング電源100は、連続発振モードに移行する。
【0052】
時刻t0で、パンチ810は駆動を開始する。時刻taでスイッチング電源100は連続発振モードに移行しているため、起動状態での大電流も十分に供給できる。なお、連続発振期間Tは、トリガ信号が出力されたタイミングから穿孔処理が終了するまでに必要となる時間にマージンを加算して得られた長さの時間である。つまり、パンチ810の設計段階や製造段階で求めることが可能な時間である。
【0053】
時刻tbで、パンチ810は穿孔処理を終了し、DCブラシレスモータを停止させる。タイマーは期間Tの計時を時刻tcに終了する。時刻tcで、モード切替回路812はタイマーが停止したことを認識し、パルス信号の出力を再開する。これにより、スイッチング電源100は、連続発振モードから間欠発振モードに切り替わる。時刻tc以降ではパンチ810が停止しているため、それほど多くの電流を必要としない。つまり、この電流は、間欠発振モードでも供給可能な程度の少ない電流である。よって、スイッチング電源100は間欠発振モードにおいても十分な電流を供給できるといえる。
【0054】
実施例2によれば、負荷がパンチであっても、実施例1や2と同様の効果を奏することができる。つまり、実施例3のスイッチング電源100は、負荷が待機状態にあるときの電源の効率を高めつつ、負荷が起動状態にあるときには大電流を供給できる。さらに、スイッチング電源100は、起動直後に間欠発振モードに移行してしまうことを抑制しているため、負荷を安定して立ち上げることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側の電圧を変換して二次側に出力する電圧変換器と、
直流電源から前記電圧変換器の一次側に流れる電流を制御するスイッチング素子と、
前記電圧変換器の二次側に出力された電圧であって平滑及び整流された電圧と基準電圧との誤差電圧を出力する誤差検知回路と、
前記誤差検知回路からの前記誤差電圧に応じて前記スイッチング素子をオンオフ制御して発振させる発振制御回路と、
前記スイッチング素子の動作モードであって前記スイッチング素子を間欠発振させる間欠発振モードと、前記スイッチング素子を連続発振させる連続発振モードとを切り替えるモード切替回路とを備え、
前記モード切替回路は、前記電圧変換器の二次側に接続された負荷の起動状態から前記起動状態よりも前記負荷の要する電流の量が少ない定常状態に移行するまでの期間は前記連続発振モードを維持することを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記負荷の動作を監視する監視回路をさらに備え、
前記モード切替回路は、前記監視回路が前記負荷の動作開始を検知すると、予め予測された前記負荷が動作を開始してから終了するまでの期間よりも長い所定期間にわたって前記連続発振モードに切り替えてから前記間欠発振モードに戻すことを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記監視回路は、
前記電圧変換器の二次側に接続された前記負荷の動作開始を検知すると、トリガ信号を出力する動作開始検知回路を備え、
前記スイッチング電源装置は、
パルス信号が入力されると前記スイッチング素子の発振を停止させる発振停止回路をさらに備え、
前記モード切替回路は、前記トリガ信号が入力されると前記発振停止回路に前記パルス信号を出力することで前記間欠発振モードに切り替え、前記パルス信号を出力してから前記所定期間が経過すると前記パルス信号の出力を停止することで前記連続発振モードに切り替えることを特徴とする請求項2に記載のスイッチング電源装置。
【請求項4】
前記動作開始検知回路は、
前記電圧変換器の二次側に出力される電圧に含まれるリップルの周期を検知するリップル検知回路と、
前記リップル検知回路が検知した前記周期が所定周期より短くなると前記負荷が動作を開始したと判定する判定回路と
を備えることを特徴とする請求項3に記載のスイッチング電源装置。
【請求項5】
前記負荷は、シート束をステープルするためのステープラであることを特徴とする請求項4に記載のスイッチング電源装置。
【請求項6】
前記動作開始検知回路は、
前記負荷に通電される電流の値を検知する電流検知回路と、
前記電流検知回路が検知した前記電流の値が所定値より大きくなると前記負荷が動作を開始したと判定する判定回路と
を備えることを特徴とする請求項3に記載のスイッチング電源装置。
【請求項7】
前記負荷は、シートのせん断処理を行うためのシュレッダーであることを特徴とする請求項6に記載のスイッチング電源装置。
【請求項8】
前記動作開始検知回路は、
前記負荷である装置にシートが挿入されたことを検知すると前記トリガ信号を出力するシート検知回路を備えることを特徴とする請求項3に記載のスイッチング電源装置。
【請求項9】
前記負荷は、シート束に穿孔処理を行うためのパンチであることを特徴とする請求項8に記載のスイッチング電源装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載のスイッチング電源装置と、
前記スイッチング電源装置から負荷として電流を受給するシート処理ユニットと
を備えたことを特徴とするシート処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−217245(P2012−217245A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79796(P2011−79796)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】