スイッチング電源装置
【課題】ディスクリート部品を用いることなく必要な振幅のリップル成分を得ることができるリップルモード方式のスイッチング電源装置を提供する。
【解決手段】CR積分回路11のキャパシタCiには、インダクタLoに印加される電圧の積分値に応じた電圧が発生する。キャパシタCiに生じるリップル電圧は、インダクタLoに流れるリップル電流と相似な波形を持つ。このキャパシタCiの電圧が電圧電流変換回路12において電流Iqに変換され、コンパレータ2における出力フィードバック電圧VFBの伝達経路上に設けられた誤差増幅器に注入される。誤差増幅器には、インダクタLoに流れるリップル電流に応じたリップル電圧が印加され、このリップル電圧と出力フィードバック電圧VFBとの合成電圧が参照電圧Vrefと比較される。
【解決手段】CR積分回路11のキャパシタCiには、インダクタLoに印加される電圧の積分値に応じた電圧が発生する。キャパシタCiに生じるリップル電圧は、インダクタLoに流れるリップル電流と相似な波形を持つ。このキャパシタCiの電圧が電圧電流変換回路12において電流Iqに変換され、コンパレータ2における出力フィードバック電圧VFBの伝達経路上に設けられた誤差増幅器に注入される。誤差増幅器には、インダクタLoに流れるリップル電流に応じたリップル電圧が印加され、このリップル電圧と出力フィードバック電圧VFBとの合成電圧が参照電圧Vrefと比較される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高効率で応答が高速なスイッチング電源装置に係り、例えば出力のリップル成分としきい値との比較に基づいて出力制御を行うリップルモード方式のスイッチング電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機に代表されるモバイル機器の急速な普及を背景として、モバイル機器向けのスイッチング電源装置に求められる性能はますます厳しくなっている。低電圧で動作し、高効率で応答が速く、しかも部品点数の少ないスイッチング電源装置の技術開発が活発に行われている。
【0003】
図17は、一般的な電圧モード方式のスイッチング電源装置の構成例を示す図である。
図17の例において、MOSトランジスタMH,ML、インダクタLo及びキャパシタCoは降圧型コンバータを構成する。降圧型コンバータは、ハイサイドのMOSトランジスタMHとローサイドのMOSトランジスタMLを交互にオンさせることで、入力電圧Vinより低い出力電圧Voを発生する。インダクタLoにおいて連続的に電流が流れる場合、ハイサイドのMOSトランジスタMHのデューティ比(スイッチング周期に対するオン時間の比)にほぼ比例した出力電圧Voが得られる。
【0004】
抵抗R31〜R34,キャパシタC31〜C33及び演算増幅器101は誤差増幅回路を構成する。誤差増幅回路は、参照電圧Vrefと出力電圧Voutに対応するVFBとの誤差を増幅する。コンパレータ102は、この誤差増幅回路から出力される誤差信号と三角波発生器103より出力される三角波信号とを比較し、この比較結果に応じたPWM信号を生成する。PWM信号は、誤差信号のレベルに応じてパルス幅が変化する。ゲート駆動回路105は、MOSトランジスタMLのゲートを駆動するローサイド・ドライバと、MOSトランジスタMHのゲートを駆動するハイサイド・ドライバを有する。ローサイド・ドライバはPWM信号に応じてゲート駆動電圧を発生し、ハイサイド・ドライバはPWM信号をインバータ104により反転した信号に応じて駆動電圧を発生する。
上記の構成により、出力電圧Voutと参照電圧Vrefとの誤差が増大すると、その誤差を減少させるようにMOSトランジスタMHのデューティ比が調節される。
【0005】
電圧モード方式のスイッチング電源装置は、インダクタLoとキャパシタCoの共振周波数で生じる位相の遅れによりフィードバック制御系が不安定になることを防止するため、高域でのループ・ゲインが比較的低く設定されることから、一般に応答速度が遅い。近年、消費電力を低減するために、機器の動作状態に応じて電源電圧をダイナミックに変化させる手法が広く採用されるようになってきており、スイッチング電源装置には高速な応答が要求されている。しかしながら、電圧モード方式では上記のような事情があることから、この高速化要求に対して十分に応えることができない。また、位相補償のために単体部品(ディスクリート部品)として抵抗R33〜R34やキャパシタC31〜C33を設けなければならないため基板面積の増大や実装コストの上昇を招くという不利益や、それらの適切な素子値を評価するために多くの工数を要するという不利益もある。
【0006】
上述した電圧モード方式の欠点を克服するものとして、リップルモード方式が知られている(非特許文献1を参照)。リップルモード方式は、Bang−Bang制御やヒステリシスPWM制御、D−capモードなどとも呼ばれている。
【0007】
図18は、一般的なリップルモード方式のスイッチング電源装置の構成例を示す図である。
抵抗R31及びR32の直列回路は出力電圧Voutを分圧し、出力フィードバック電圧VFBとしてコンパレータ102に入力する。コンパレータ102は、出力フィードバック電圧VFBと参照電圧Vrefとを比較し、出力フィードバック電圧VFBが参照電圧Vrefより低くなると「1」、参照電圧Vrefより高くなると「0」を出力する。制御回路106は、コンパレータ102の出力が「0」から「1」へ変化したときに一定時間だけMOSトランジスタMHをオン、MOSトランジスタMLをオフさせる制御信号を生成する。
【0008】
MOSトランジスタMHがオン、MOSトランジスタMLがオフするとき、インダクタLoには電圧(Vin−Vout)が印加されるため、インダクタLoに流れる電流は直線的に増大する。他方、MOSトランジスタMHがオフ、MOSトランジスタMLがオンするとき、インダクタLoには上記と逆極性の出力電圧Voutが印加されるため、インダクタLoに流れる電流は直線的に減少する。すなわち、インダクタLoには三角波状のリップル電流が流れる。このリップル電流がキャパシタCoの等価直列抵抗ESR(equivalent series resistance)に流れることにより、出力電圧Voにはリップル電流と相似なリップル電圧が重畳する。図18に示すリップルモード方式のスイッチング電源装置においては、出力フィードバック電圧VFBに重畳するリップル成分のボトムと参照電圧Vrefとが定常状態においてほぼ等しくなるように帰還制御が働く。リップルモード方式は、電圧モード方式のような位相補償が不要であり、高速な負荷応答を実現できる。
【0009】
しかしながら、リップルモード方式において制御系を安定に動作させるためには、出力フィードバック電圧VFBに適切な振幅のリップル成分が含まれていなければならない。出力電圧Voutのリップル成分を「Vorp」、抵抗R31,R32の抵抗値をそれぞれ「r31」,「r32」とすると、出力フィードバック電圧VFBのリップル成分Vfrpは次式で表わされる。
【0010】
(数1)
Vfrp=Vorp×(r31/(r31+r32))…(1)
【0011】
図18に示すリップルモード方式において出力フィードバック電圧VFBのリップル成分Vfrpを大きくするには、例えば、抵抗R31,R32の抵抗比を変更したり、抵抗R32と並列にキャパシタを接続するなどの方法が考えられる。しかし、それでも限界がある場合には、出力電圧Voutのリップル成分Vorpそのものを大きくしなければならない。
メモリやCPU等のLSIの動作電圧は低消費電力化のために年々低くなっており、電源システムに要求される出力電圧は1Vを下回るまでになりつつある。そのような状況で、電源電圧のリップル成分を大きくすることはLSIの動作マージンを減少させることに繋がるので、システムの信頼性の観点から好ましくない。
【非特許文献1】鍋島隆他3名、「CR積分回路を用いたヒステリシスPWM制御による降圧形コンバータの制御特性」、電子情報通信学会論文誌、社団法人電子情報通信学会、2006年5月、Vol.J89−B、No.5、p.664−672
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
リップルモード方式において出力電圧のリップル成分そのものを大きくすることなく安定な帰還制御を実現する方法として、例えば非特許文献1に記載されるようにCR積分回路を用いる手法が知られている。この手法では、インダクタLoと並列に接続したCR積分回路によってインダクタLoに流れるリップル電流と相似な信号を取り出し、これを出力フィードバック電圧に重畳する。
【0013】
図19は、CR積分回路により取り出したリップル信号を用いるリップルモード方式のスイッチング電源装置の構成例を示す図である。
図19に示すスイッチング電源装置では、抵抗R35とキャパシタC35の直列回路によるCR積分回路がインダクタLoと並列に接続されている。キャパシタC35には、インダクタLoに流れるリップル電流と相似なリップル電圧が生じる。抵抗R35とキャパシタC35の接続ノードがキャパシタC34を介して抵抗R31及びR32の接続ノードと接続されるため、キャパシタC35に生じるリップル電圧が出力フィードバック電圧VFBに重畳される。
【0014】
図20は、図19に示すスイッチング電源装置における各部の信号波形を例示する図である。
出力電圧Voutのリップル電圧が比較的小さい場合でも(図20(B))、出力フィードバック電圧VFBにおいて十分な振幅のリップル電圧Vrpが得られる(図20(C))。出力フィードバック電圧VFBのボトムが参照電圧Vrefより低くなると、MOSトランジスタMHのゲート−ソース電圧Vgsが一定時間ハイレベルになる(図20(A))。
【0015】
図19に示すスイッチング電源装置は、出力フィードバック電圧VFBに適切な振幅のリップル電圧Vrpを重畳させることにより、出力電圧Voutのリップル電圧が比較的小さい場合でも、制御系の動作を安定させることができるという利点を有する。
【0016】
ところで、リップルモード方式では、リップル成分のピークやボトムを参照電圧Vrefと一致させるように制御を行うため、リップル電圧Vrpの振幅をあまり大きくできない。リップル電圧Vrpの振幅が大き過ぎると、参照電圧Vrefによって規定される直流レベルと実際の出力電圧Voutの直流レベルとのズレが大きくなってしまい、出力電圧Voutの直流精度を確保する上で不利になるからである。従って、リップル電圧Vrpの振幅は、出力電圧Voutに要求される精度等を勘案して適切な範囲内に設定しなくてはならない。ところが、そうすると、スイッチング周波数との兼ね合いによって、CR積分回路(R35,C35)の時定数を比較的大きくしなくてはならない場合がある。キャパシタの容量が例えば数千pF程度になると、これを半導体チップ上に形成するのは困難であり、ディスクリート部品として基板に実装する必要が生じる。
一般に、図19に示すスイッチング電源装置では、抵抗R35やキャパシタC34,C35をディスクリート部品として基板に実装しなくてはならないため、基板面積の増大や部品実装コストの上昇といった不利益がある。
【0017】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ディスクリート部品を用いることなく必要な振幅のリップル成分を得ることができるリップルモード方式のスイッチング電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係るスイッチング電源装置は、入力電圧を受ける入力端子と、出力電圧を出力する出力端子と、上記入力端子と第1のノードとの間に接続される第1のスイッチングトランジスタと、上記第1のノードと基準電位との間に接続され、上記第1のスイッチングトランジスタと相補的に動作する第2のスイッチングトランジスタと、上記第1のノードと上記出力端子との間に接続されるインダクタンス素子と、上記出力端子と基準電位との間に接続される出力キャパシタンス素子と、上記出力端子に接続され、上記出力電圧に応じたフィードバック電圧を生成する分圧回路と、上記出力電圧に含まれており、上記スイッチングトランジスタのスイッチング動作に対応するリップル電圧を検出するリップル電圧検出回路と、上記フィードバック電圧と上記リップル電圧との加算電圧を基準電圧と比較して比較結果を出力する比較回路と、上記比較結果に応じて上記第1及び第2のスイッチングトランジスタをオン・オフ制御する制御回路とを含む。上記リップル電圧検出回路が上記インダクタンス素子に接続される積分回路を含み、上記第1のスイッチングトランジスタのオン時間が、上記出力電圧と上記入力電圧との比と、上記第1及び第2のスイッチングトランジスタのスイッチング周期との積で定義される。
【0019】
好適には、上記積分回路が、上記第1のノードと上記出力端子との間に直列に接続される抵抗素子とキャパシタンス素子とを含んでよい。
また、上記リップル電圧を入力して当該リップル電圧に応じた電流信号を出力する電圧電流変換回路を更に含み、上記比較回路が、上記電流信号を電圧信号に変換するための第1の抵抗素子と、上記フィードバック電圧と上記電圧信号との加算電圧を上記基準電圧と比較するための差動回路とを含んでもよい。
【0020】
更には、上記比較回路が、上記フィードバック電圧を入力する第1のバッファ回路と、上記基準電圧を入力する第2のバッファ回路と、上記第2のバッファ回路の出力に結合された第2の抵抗素子とを更に含み、上記フィードバック電圧が、上記第1のバッファ回路と上記第1の抵抗素子とを介して上記差動回路の第1の入力に供給され、上記基準電圧が、上記第2のバッファ回路と上記第2の抵抗素子とを介して上記差動回路の第2の入力に供給され、上記差動回路の第1の入力と上記第1の抵抗素子との接続中点に上記電圧電流変換回路から第1の電流が供給され、上記第2のバッファ回路の出力と上記第2の抵抗素子との接続中点に上記電圧電流変換回路から第2の電流が供給される構成としてもよい。
【0021】
好適に、上記キャパシタンス素子の一方の端子の電圧を入力する第1のトランジスタと、上記キャパシタンス素子の他方の端子の電圧を入力する第2のトランジスタとを含む差動増幅回路と、上記第1のトランジスタに流れる電流に対応する上記第1の電流を出力する第1の電流源回路と、上記第2のトランジスタに流れる電流に対応する上記第2の電流を出力する第2の電流源回路とを含んでよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、上記積分回路のキャパシタに生じるリップル電圧の振幅を変換してリップル信号を生成することにより、ディスクリート部品を用いることなく必要な振幅のリップル成分を得ることができるリップルモード方式のスイッチング電源装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1の実施形態に係るスイッチング電源装置の構成の一例を示す図である。
【図2】電圧電流変換回路の構成の一例を示す図である。
【図3】図1に示すスイッチング電源装置におけるコンパレータの構成の一例を示す図である。
【図4】CR積分回路に生じる電圧と電圧電流変換回路の電流の波形を例示する図である。
【図5】図3に示すコンパレータの各部の信号波形を例示する図である。
【図6】第2の実施形態に係るスイッチング電源装置の構成の一例を示す図である。
【図7】第3の実施形態に係るスイッチング電源装置の構成の一例を示す図である。
【図8】第4の実施形態に係るスイッチング電源装置の構成の一例を示す図である。
【図9】図8に示すスイッチング電源装置におけるリップル信号生成回路の構成の一例を示す図である。
【図10】図8に示すスイッチング電源装置における合成信号と参照電圧の関係を例示する図である。
【図11】第5の実施形態に係るスイッチング電源装置の構成の一例を示す図である。
【図12】図11に示すスイッチング電源装置における、コンパレータの構成の一例を示す図である。
【図13】第6の実施形態に係るスイッチング電源装置の構成の一例を示す図
【図14】図13に示すスイッチング電源装置におけるリップル信号生成回路の一構成例を示す図である。
【図15】図13に示すスイッチング電源装置における合成信号と出力フィードバック電圧の関係を例示する図である。
【図16】図13に示すスイッチング電源装置におけるリップル信号生成回路の他の構成例を示す図である。
【図17】一般的な電圧モード方式のスイッチング電源装置の構成例を示す図である。
【図18】一般的なリップルモード方式のスイッチング電源装置の構成例を示す図である。
【図19】CR積分回路により取り出したリップル信号を用いるリップルモード方式のスイッチング電源装置の構成例を示す図である。
【図20】図19に示すスイッチング電源装置における各部の信号波形を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係るスイッチング電源装置の構成の一例を示す図である。
図1に示すスイッチング電源装置は、リップル信号生成回路1と、コンパレータ2と、制御回路3と、駆動回路4と、電圧フィードバック用の抵抗Rf1,Rf2と、n型のMOSトランジスタML及びMHと、インダクタLoと、キャパシタCoを有する。リップル信号生成回路1は、キャパシタCi及び抵抗Riの直列回路からなるCR積分回路11と、電圧電流変換回路12を有する。
キャパシタCoは、本発明における第1キャパシタの一実施形態である。
インダクタLoは、本発明におけるインダクタの一実施形態である。
MOSトランジスタML及びMHは、本発明におけるスイッチング回路の一実施形態である。
リップル信号生成回路1は、本発明におけるリップル信号生成回路の一実施形態である。
コンパレータ2は、本発明における比較回路の一実施形態である。
制御回路3は、本発明における制御回路の一実施形態である。
CR積分回路11は、本発明における積分回路の一実施形態である。
キャパシタCiは、本発明における第2キャパシタの一実施形態である。
電圧電流変換回路12は、本発明における電圧電流変換回路の一実施形態である。
【0025】
MOSトランジスタMLはノードNswと基準電位Gの間に接続され、MOSトランジスタMHは入力電圧Vinの供給ラインとノードNswの間に接続される。駆動回路4は、制御信号SLに応じてMOSトランジスタMLのゲートを駆動するとともに、制御信号SHに応じてMOSトランジスタMHのゲートを駆動する。
【0026】
インダクタLoは、ノードNswとノードNoutとの間に接続される。キャパシタCoは、ノードNoutと基準電位Gとの間に接続される。キャパシタCoは、等価直列抵抗ESRを有する。
ノードNoutには、負荷RLが接続される。負荷RLは、例えば、ノードNoutに発生する電圧Voutを受けて動作するLSI等の電子回路を表す。
【0027】
抵抗Rf1,Rf2は、ノードNoutと基準電位Gの間に直列に接続される。抵抗Rf1はノードNfbと基準電位Gの間に接続され、抵抗Rf2はノードNoutとノードNfbの間に接続される。ノードNfbには、出力電圧Voutを抵抗Rf1及びRf2の直列回路により分圧した出力フィードバック電圧VFBが発生する。
【0028】
CR積分回路11は、抵抗Ri及びキャパシタCiの直列回路により構成されており、インダクタLoと並列に接続される。抵抗RiはノードNswとノードNciの間に接続され、キャパシタCiはノードNciとノードNoutの間に接続される。
MOSトランジスタML及びMHによるスイッチングの1サイクル期間がCR積分回路11の時定数に比べて十分に短い場合、この1サイクル期間におけるキャパシタCiの電圧の変化(すなわちキャパシタCiのリップル電圧の振幅)はインダクタLoに印加される方形波状の電圧の振幅に比べて十分に小さく無視できる。この場合、抵抗Riに流れる電流は、インダクタLoに印加される電圧にほぼ比例する。キャパシタCiは、抵抗Riに流れる電流によって充放電されるため、キャパシタCiに発生する電圧は、インダクタLoに印加される電圧の積分値にほぼ比例する。ここで、インダクタLoに流れる電流はインダクタLoに印加される電圧の積分値に比例することから、キャパシタCiに生じるリップル電圧の波形は、インダクタLoに流れるリップル電流の波形と相似になる。
【0029】
電圧電流変換回路12は、キャパシタCiに生じる電圧を電流に変換する回路であり、例えば次式に示すように、キャパシタCiに生じる電圧と所定の相互コンダクタンスgmとの積に応じた電流Iqを生成する。
【0030】
(数2)
Iq=(Vci−Vout)×gm=Vid×gm…(2)
【0031】
図2は、電圧電流変換回路12の構成の一例を示す図である。
図2に示す電圧電流変換回路12は、p型のMOSトランジスタM1〜M6と、n型のMOSトランジスタM7〜M10と、npnトランジスタQ1,Q2と、抵抗R1,R2と、電流源CS1を有する。
【0032】
npnトランジスタQ1のエミッタは抵抗R1を介してノードNmに接続され、そのコレクタはMOSトランジスタM1のドレインに接続され、そのベースはノードNoutに接続される。npnトランジスタQ2のエミッタは抵抗R2を介してノードNmに接続され、そのコレクタはMOSトランジスタM2のドレインに接続され、そのベースはノードNciに接続される。
電流源CS1は、ノードNmと基準電位Gの間に接続される。
MOSトランジスタM1〜M6の各ソースは、電源ラインVddに接続される。MOSトランジスタM1のゲートとドレインが共通に接続され、MOSトランジスタM3,M4のゲートがMOSトランジスタM1のゲートに接続される。MOSトランジスタM2のゲートとドレインが共通に接続され、MOSトランジスタM5,M6のゲートがMOSトランジスタM2のゲートに接続される。MOSトランジスタM3のドレインは、MOSトランジスタM7のドレインに接続される。MOSトランジスタM4のドレインは、MOSトランジスタM8のドレインに接続される。
MOSトランジスタM7〜M10の各ソースは、基準電位Gに接続される。MOSトランジスタM7のゲートとドレインが共通に接続され、MOSトランジスタM9のゲートがMOSトランジスタM7のゲートに接続される。MOSトランジスタM8のゲートとドレインが共通に接続され、MOSトランジスタM10のゲートがMOSトランジスタM8のゲートに接続される。MOSトランジスタM9のドレインとMOSトランジスタM5のドレインは、ノードN1に共通接続される。MOSトランジスタM10のドレインとMOSトランジスタM6のドレインは、ノードN4に共通接続される。
【0033】
npnトランジスタQ2のベースには電圧Vciが印加され、npnトランジスタQ1のベースには電圧Voutが印加される。対をなすnpnトランジスタQ1,Q2のコレクタ電流には、電圧差Vid(=Vci−Vout)に応じた電流差が生じる。
【0034】
MOSトランジスタM1,M3,M4,M7,M8,M9,M10はカレントミラー回路を構成しており、MOSトランジスタM9,M10のドレイン電流はMOSトランジスタM1のドレイン電流に比例する。他方、MOSトランジスタM2,M5,M6はカレントミラー回路を構成しており、MOSトランジスタM5,M6のドレイン電流はMOSトランジスタM2のドレイン電流に比例する。
ここで、MOSトランジスタM9,M10のドレイン電流とMOSトランジスタM1のドレイン電流が等しく、かつ、MOSトランジスタM5,M6のドレイン電流とMOSトランジスタM2のドレイン電流が等しいとすると、ノードN1,N2からそれぞれ電圧差Vidに応じた電流Iqが出力される。
図2に示す電圧電流変換回路12の相互コンダクタンスgmは概ね次式で表わされる。
【0035】
(数3)
gm=1/[r1+(0.026×2/Ics2)]…(3)
【0036】
式(3)において、「r1」は抵抗R1,R2の抵抗値を示し、「Ics2」は電流源CS2の電流値を示す。
以上が、電圧電流変換回路12の説明である。
【0037】
コンパレータ2は、電圧電流変換回路12により取り出されたキャパシタCiのリップル信号と出力電圧Voutに応じた出力フィードバック電圧VFBとの合成信号を参照電圧Vrefと比較し、この比較結果に応じた信号Scpを出力する。コンパレータ2は、出力フィードバック電圧VFBの伝達経路に設けられた抵抗に対して電圧電流変換回路12の電流Iqを注入されており、これにより発生する出力フィードバック電圧VFBとリップル信号との合成信号を参照電圧Vrefと比較する。
【0038】
図3は、コンパレータ2の構成の一例を示す図である。
図1に示すコンパレータ2は、pnpトランジスタQ3,Q4と、npnトランジスタQ5,Q6と、抵抗R3,R4と、電流源CS2〜CS6と、出力増幅回路21とを有する。
pnpトランジスタQ3及び電流源CS3を含む回路は、本発明における第1バッファ回路の一実施形態である。
pnpトランジスタQ4及び電流源CS4を含む回路は、本発明における第2バッファ回路の一実施形態である。
npnトランジスタQ5,Q6及び電流源CS2,CS5,CS6を含む回路は、本発明における増幅段の一実施形態である。
抵抗R3は、本発明における第1抵抗の一実施形態である。
【0039】
pnpトランジスタQ3,Q4の各コレクタは基準電位Gに接続される。pnpトランジスタQ3のエミッタは電流源CS3を介して電源ラインVddに接続され、そのベースはノードNfbに接続される。pnpトランジスタQ4のエミッタは電流源CS4を介して電源ラインVddに接続され、そのベースには参照電圧Vrefが入力される。
npnトランジスタQ5,Q6のエミッタは共通に接続されており、そのエミッタと基準電位Gの間に電流源CS2が接続される。npnトランジスタQ5のコレクタは電流源CS5を介して電源ラインVddに接続され、そのベースは抵抗R3を介してpnpトランジスタQ3のエミッタに接続される。npnトランジスタQ6のコレクタは電流源CS6を介して電源ラインVddに接続され、そのベースは抵抗R4を介してpnpトランジスタQ4のエミッタに接続される。
なお図3において、ノードN1はpnpトランジスタQ3のエミッタを示し、ノードN2はpnpトランジスタQ4のエミッタを示し、ノードN3はnpnトランジスタQ5のベースを示し、ノードN4はnpnトランジスタQ6のベースを示す。
【0040】
出力増幅回路21は、npnトランジスタQ5,Q6のコレクタ電圧の差を増幅し、ハイレベル又はローレベルを有する信号Scpを生成する。
【0041】
pnpトランジスタQ3と電流源CS3は、高入力インピーダンスかつ低出力インピーダンスのバッファ回路(エミッタフォロワ回路)を構成する。pnpトランジスタQ3のエミッタ(ノードN1)には、出力フィードバック電圧VFBをほぼ一定のベース−エミッタ電圧だけレベルシフトした電圧Vn1が発生する。pnpトランジスタQ4と電流源CS4も同様なバッファ回路(エミッタフォロワ回路)を構成しており、pnpトランジスタQ4のエミッタ(ノードN2)には、参照電圧Vrefをレベルシフトした電圧Vn2が発生する。
【0042】
上述した2つのバッファ回路の出力電圧Vn1,Vn2は、npnトランジスタQ5,Q6及び電流源CS2,CS5,CS6により構成される差動増幅回路に入力される。差動増幅回路は、npnトランジスタQ5,Q6のベースに入力される電圧の差を増幅し、コレクタ電圧の差として出力する。
電流Iqの注入を考慮しない場合、この差動増幅回路では、電圧Vn1及びVn2の電圧差、すなわち出力フィードバック電圧VFBと参照電圧Vrefとの電圧差が増幅される。
【0043】
さて、図3に示すコンパレータ2においては、上述したバッファ回路(Q3,CS3)から差動増幅回路へ電圧Vn1を伝達する経路上に抵抗R3が設けられており、この抵抗R3に対してトランジスタQ5のベース側(ノードN3側)から電流Iqが注入される。npnトランジスタQ5のベース抵抗が十分に大きい場合、電流Iqの大半が抵抗R3を介してバッファ回路(Q3,CS3)に流れるため、抵抗R3の両端には電流Iqに応じた電圧が発生する。この抵抗R3に発生する電圧とノードN1の電圧Vn1とを加算した電圧Vn3が、npnトランジスタQ5のベースに入力される。
【0044】
一方、バッファ回路(Q4,CS4)から差動増幅回路へ電圧Vn2を伝達する経路にも抵抗R4が設けられているが、この経路においては、バッファ回路の出力側、すなわちpnpトランジスタQ4のエミッタ(ノードN2)に対して電流Iqが注入される。
ノードN2に電流Iqを注入することで、上述した2つのバッファ回路には等価な電流Iqが注入される。これにより、pnpトランジスタQ3,Q4のエミッタ電流の直流的なバランスが向上し、両者のベース−エミッタ電圧のアンバランスが小さくなるので、入力オフセット電圧が低減するという効果が得られる。
【0045】
バッファ回路(Q4,CS4)の出力インピーダンスは、npnトランジスタQ6のベースに比べてインピーダンスが十分小さいため、ノードN2に注入された電流Iqの大半は抵抗R4へ流れずバッファ回路(Q4,CS4)に流れる。npnトランジスタQ6のベース電流を無視すると、npnトランジスタQ6のベースに入力される電圧Vn4は、ノードN2の電圧Vn2とほぼ等しくなる。すなわち、npnトランジスタQ6のベースには、電流Iqによるリップル信号が重畳されていない電圧Vn4が入力される。
【0046】
このように、npnトランジスタQ5及びQ6による差動増幅回路では、電流Iqによるリップル信号が重畳された電圧Vn3と、リップル信号が重畳されていない電圧Vn4との差が増幅される。この増幅結果が更に出力増幅回路21において増幅されることにより、ロジック信号Scpが生成される。
以上が、コンパレータ2の説明である。
【0047】
制御回路3は、コンパレータ2から出力される信号Spに応じてMOSトランジスタML,MHのオン又はオフを制御する制御信号SL,SHを生成する。例えば制御回路3は、リップル信号を重畳された電圧Vn3が電圧Vn4より低くなったことを示すコンパレータ2の信号Spを入力すると、一定の時間MOSトランジスタMHをオンさせるとともにMOSトランジスタMLをオフさせる制御信号SL,SHを生成する。これにより、定常状態においては、電圧Vn3のボトムが電圧Vn4とほぼ等しくなるように出力電圧Voutが制御される。例えば、スイッチングの周期をT、入力電圧をVin、出力電圧をVout、トランジスタMHのオン期間(トランジスタHLのオフ期間)をTonとすると、Ton=T・(Vout/Vin)の関係式が成立する。
【0048】
ここで、上述した構成を有するスイッチング電源装置の動作を説明する。
【0049】
図4は、CR積分回路11に生じる電圧Vciと電圧電流変換回路12の電流Iqの波形を例示する図である。
MOSトランジスタMHは、例えば図4(A)に示すようなゲート−ソース電圧Vgsを受けて周期的にオンし、MOSトランジスタMLはMOSトランジスタMHのオンの期間に同期してオフする。MOSトランジスタML及びMHが交互にオンすることにより、インダクタLoの電圧波形は方形波状になる。
【0050】
MOSトランジスタML及びMHによるスイッチングの周期がCR積分回路11の時定数に比べて十分に短い場合、抵抗Riを介してキャパシタCiを充放電する電流はインダクタLoの方形波状の電圧と相似になる。この場合、キャパシタCiには、インダクタLoに流れるリップル電流と相似なリップル電圧Vrcが生じる。
リップル電圧Vrcは概ね次式で表わされる。
【0051】
(数4)
Vrc=(VL/r3)×(1/c2)×(Vout/Vin)×(1/fs)…(4)
【0052】
式(4)において、「VL」はインダクタLoの電圧(Vin−Vout)を示し、「fs」はスイッチング周波数を示す。
【0053】
図4(B)に示すように、出力電圧VoutにもインダクタLoのリップル電流に相似なリップル電圧が生じているが、その振幅は電圧Vciに含まれるリップル電圧の振幅に比べて小さい。キャパシタCoに例えばセラミックコンデンサなどESRの小さい素子を用いることで、出力電圧Voutのリップル電圧は非常に小さくなる。
【0054】
キャパシタCiの電圧(Vci−Vout)は、電圧電流変換回路12において電流Iqに変換される。例えば図4(B)に示すように、ノードNciの電圧Vciは出力電圧Voutを中心に振動する。この場合、キャパシタCiの電圧(Vci−Vout)は正負に振動しているため、電圧電流変換回路12より出力される電流Iqも正負に振動する(図4(C))。
【0055】
図5は、図3に示すコンパレータ2の各部の信号波形を例示する図である。
図5(A),(B)に示すように、出力フィードバック電圧VFBは、バッファ回路(Q3,CS3)の出力において、pnpトランジスタQ3のベース−エミッタ電圧Vbeだけ高電位側にレベルシフトされた電圧Vn1となる。また参照電圧Vrefは、バッファ回路(Q4,CS4)の出力において、pnpトランジスタQ4のベース−エミッタ電圧Vbeだけ高電位側にレベルシフトされた電圧Vn2となる。
pnpトランジスタQ3及びQ4のベース−エミッタ電圧が等しい場合(Vbe)、電圧Vn1とVn2の電位差は、出力フィードバック電圧VFBと参照電圧Vrefの電位差と等しくなる。電圧Vn1,Vn2は、抵抗R3,R4を介して差動増幅回路(Q5,Q6,CS2,CS5,CS6)に入力される。
【0056】
コンパレータ2のノードN3に注入される電流Iqは、インピーダンスの大きいnpnトランジスタQ5のベースには流れず、その大半が抵抗R3を介してバッファ回路(Q3,CS3)に流れる。そのため、ノードN3の電圧Vn3は、図5(C)の鎖線の波形に示すように、電流Iqによって抵抗R3(抵抗値r3)に生じるリップル電圧(Iq×r3)とノードN1の電圧Vn1とを加算した電圧にほぼ等しくなる。
【0057】
一方、コンパレータ2のノードN4に注入される電流Iqの大半は、低インピーダンスのバッファ回路(Q4,CS4)に流れる。そのため、抵抗R4に流れる電流は微小となり、ノードN4の電圧Vn4はノードN2の電圧Vn2とほぼ等しくなる。
従って、差動増幅回路(Q5,Q6,CS2,CS5,CS6)には、電流Iqによるリップル信号を重畳された電圧Vn3と、リップル信号を重畳されていない電圧Vn4とが入力される。
【0058】
差動増幅回路(Q5,Q6,CS2,CS5,CS6)において電圧Vn3,Vn4の電圧差が増幅され、その増幅結果が更に出力増幅回路21で増幅されることにより、電圧Vn3及びVn4の大小関係に応じたハイレベル又はローレベルのロジック信号Scpが生成される。
【0059】
電圧Vn3が電圧Vn4より低くなったことを示す信号Scpがコンパレータ2において生成されると、制御回路3によって一定の時間MOSトランジスタMHがオンに設定されるとともにMOSトランジスタMLがオフに設定される。MOSトランジスタMHがオンすると、ノードNswの電圧がノードNoutの電圧より高くなるので、キャパシタCiの電圧が直線的に上昇し、これに応じて電圧Vn3も直線的に上昇する。一定時間後にMOSトランジスタMHがオフしMOSトランジスタMLがオンすると、ノードNswの電圧がノードNoutの電圧より低くなるので、キャパシタCiの電圧が直線的に低下し、これに応じて電圧Vn3も直線的に低下する。従って、定常状態においては、電圧Vn3が低下から上昇へ転じるボトム付近のレベルと電圧Vn4とが等しくなる。
【0060】
以上述べたように、図1に示すスイッチング電源装置では、CR積分回路11のキャパシタCiにおいて、インダクタLoに印加される電圧の積分値に応じた電圧が発生する。キャパシタCiに生じるリップル電圧は、インダクタLoに流れるリップル電流と相似な波形を持つ。このキャパシタCiの電圧が電圧電流変換回路12において電流Iqに変換され、コンパレータ2における出力フィードバック電圧VFBの伝達経路上に設けられた抵抗R3に注入される。抵抗R3(抵抗値r3)には、インダクタLoに流れるリップル電流に応じたリップル電圧(Iq×r3)が生じる。その結果、コンパレータ2においては、インダクタLoのリップル電流に応じたリップル電圧(Iq×r3)と出力フィードバック電圧VFBに応じた電圧Vn1との合成信号である電圧Vn3が生成され、この電圧Vn3と参照電圧Vrefに応じた電圧Vn4とが比較される。コンパレータ2の出力信号Scpに応じて、電圧Vn3のボトム(若しくはピーク)と電圧Vn4とが等しくなるように、MOSトランジスタML及びMHのスイッチングが制御回路3により制御される。
【0061】
ところで、コンパレータ2の抵抗R3(抵抗値r3)に生じるリップル電圧(Iq×r3)の振幅は、電圧電流変換回路12の相互インダクタンスgmと抵抗値r3に応じて任意に設定可能である。CR積分回路11の時定数が小さい場合、キャパシタCiに生じるリップル電圧Vrcの振幅が必要以上に大きくなる可能性があるが、その場合でも、相互インダクタンスgmと抵抗値r3を適切に設定することによって、抵抗R3に生じるリップル電圧(Iq×r3)の振幅を適当に小さくなるように変換できる。すなわち、キャパシタCiに生じるリップル電圧と相似な信号であって、当該リップル電圧より振幅が小さいリップル信号を生成して、出力フィードバック電圧VFBに合成させることができる。
従って、図1に示すスイッチング電源装置によれば、キャパシタCi及び抵抗Riの素子値が半導体チップ上に形成可能な値となるように、CR積分回路11の時定数を小さく設定することが可能である。これにより、キャパシタCiと抵抗Riを半導体チップ上に集積することが可能となり、ディスクリート部品を削減することができる。
ディスクリート部品を削減できるので、従来に比べて回路面積を小さくすることが可能になるとともに、部品実装に係るコストを削減できる。また、部品の実装設計が容易になり、設計工数を短縮できる。
【0062】
また、図1に示すスイッチング電源装置によれば、図4(B)に示すように出力電圧Voutのリップル電圧が微小な場合であっても、十分な振幅のリップル信号を取り出して出力フィードバック電圧VFBに重畳できるので、キャパシタCoには低ESRタイプのキャパシタを使用できる。
【0063】
従来、リップルモード方式のスイッチング電源装置では、出力電圧において適当な振幅のリップル電圧を得るために、例えば機能性高分子アルミニウム電解コンデンサや導電性高分子アルミニウム固体コンデンサなど、比較的ESRの大きいキャパシタが使用されていた。セラミックコンデンサは、これらのキャパシタに比べて安価であり、占有面積が小さいという利点があるものの、ESRが非常に小さいため、リップルモード方式においては一般に使用されていなかった。
図1に示すスイッチング電源装置によれば、キャパシタCoにESRの小さいセラミックコンデンサを使用できるので、アルミニウム電解コンデンサ等を使用する場合に比べて部品コストを削減できるとともに回路面積を小さくすることができる。
また、セラミックコンデンサは故障時において一般にオープン状態となるので、キャパシタCoにセラミックコンデンサを用いれば、故障時にショート状態となるタイプのキャパシタを用いる場合に比べて信頼性を向上できる。
【0064】
更に、図1に示すスイッチング電源装置によれば、出力のキャパシタCoにセラミックコンデンサ等の低ESRタイプのキャパシタを用いることができるので、出力電圧Voutのリップル電圧を小さくできる。これにより、電圧Voutを電源電圧として使用する場合に電子回路の動作マージンを拡大することができ、信頼性を向上できる。
【0065】
また、図1に示すスイッチング電源装置においては、出力フィードバック電圧VFBを入力するバッファ回路(Q3,CS3)と参照電圧Vrefを入力するバッファ回路(Q4,CS4)がそれぞれ設けられており、前者のバッファ回路(Q3,CS3)の出力に接続された抵抗R3へ注入される電流Iqと等価な電流が後者のバッファ回路(Q3,CS3)の出力にも注入される。これにより、2つのバッファ回路に流れる電流のバランスが向上するので、当該2つのバッファ回路の入力オフセット電圧を低減できる。
【0066】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0067】
図6は、第2の実施形態に係るスイッチング電源装置の構成の一例を示す図である。
図6に示すスイッチング電源装置は、図1に示すスイッチング電源装置におけるリップル信号生成回路1を次に述べるリップル信号生成回路1Aに置き換えたものであり、他の構成要素については図1に示すスイッチング電源装置と同じである。
【0068】
リップル信号生成回路1Aは、図1におけるリップル信号生成回路1と同様な構成(CR積分回路11,電圧電流変換回路12)に加えて、キャパシタCiに生じる電圧を分圧する分圧回路13を有する。
分圧回路13は、本発明における分圧回路の一実施形態である。
【0069】
分圧回路13は、直列に接続された抵抗R5及びR6を含んでおり、抵抗R6の一方の端子がノードNciに接続され、他方の端子が抵抗R5を介してノードNoutに接続される。電圧電流変換回路12は、この分圧回路13により分圧された電圧、すなわち、抵抗R5の両端の電圧を電流Iqに変換する。
【0070】
キャパシタCi及び抵抗Riの素子値を半導体チップに集積可能な値に設定した場合、CR積分回路11の時定数が小さくなり、キャパシタCiに生じるリップル電圧の振幅が必要以上に大きくなってしまうことが考えられる。この振幅があまり大きいと、電圧電流変換回路12の入力レンジが不足してしまう可能性がある。本実施形態では、キャパシタCiに生じるリップル電圧の振幅を分圧回路13により分圧して電圧電流変換回路12に入力することにより、電圧電流変換回路12に入力されるリップル電圧を適切な範囲に設定することができる。
【0071】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
【0072】
図7は、第3の実施形態に係るスイッチング電源装置の構成の一例を示す図である。
図7に示すスイッチング電源装置は、図1に示すスイッチング電源装置におけるリップル信号生成回路1を次に述べるリップル信号生成回路1Bに置き換えたものであり、他の構成要素については図1に示すスイッチング電源装置と同じである。
【0073】
リップル信号生成回路1Bは、CR積分回路11Bと、電圧電流変換回路12と、分圧回路13B及び14を有する。
分圧回路13Bは、本発明における第1分圧回路の一実施形態である。
分圧回路14は、本発明における第2分圧回路の一実施形態である。
【0074】
CR積分回路11Bは、直列接続された抵抗Ri及びキャパシタCiを含んでおり、インダクタLo及びキャパシタCoの直列回路と並列に接続される。抵抗Riの一方の端子がノードNswに接続され、他方の端子がキャパシタCiを介して基準電位Gに接続される。
【0075】
分圧回路13Bは、キャパシタCiに生じる電圧を分圧する。分圧回路13Bは、直列接続された抵抗R5及びR6を含んでおり、抵抗R6の一方の端子が抵抗RiとキャパシタCiの接続ノード(ノードNci)に接続され、他方の端子が抵抗R5を介して基準電位Gに接続される。
【0076】
分圧回路14は、キャパシタCoに生じる電圧を分圧回路13Bと等価な分圧比により分圧する。分圧回路14は、直列接続された抵抗R7及びR8を含んでおり、抵抗R8の一方の端子がノードNoutに接続され、他方の端子が抵抗R7を介して基準電位Gに接続される。
【0077】
電圧電流変換回路12は、分圧回路13B及び14において分圧された電圧の差を電流Iqに変換する。図7の例では、抵抗R5及びR6の中間接続ノードと抵抗R7及びR8の中間接続ノードとの電圧差(Vdp−Vdn)を電流に変換する。電圧電流変換回路12は、例えば図2に示す構成を有する。
【0078】
図7に示すスイッチング電源装置においては、インダクタLo及びキャパシタCoの直列回路と並列にCR積分回路11Bが接続される。このCR積分回路11Bに印加される電圧は、インダクタLoのみに並列接続されたCR積分回路11(図1)に印加される電圧と比較して、キャパシタCoの電圧Voutだけ高くなる。従って、もし、CR積分回路11BのキャパシタCoに生じる電圧から電圧Voutを減算すれば、CR積分回路11(図1)のキャパシタCoに生じる電圧と等価な電圧が得られる。
ここで、分圧回路13B,14の分圧比を「γ」とすると、CR積分回路11BのキャパシタCoの電圧を分圧回路13Bによって分圧した電圧Vpnは、インダクタLoのみに並列接続されたCR積分回路11(図6)の電圧を分圧比γにより分圧した電圧に比べて「γ×Vout」だけ高くなる。従って、図7に示すように、分圧回路14によって得られる電圧「γ×Vout」と分圧回路13Bによって得られる電圧Vpnとの差(Vdp−Vdn)は、CR積分回路11の電圧を分圧比γにより分圧した電圧(図6参照)と等価になる。
【0079】
図7に示すスイッチング電源装置によれば、図6に示すスイッチング電源装置と同様に、キャパシタCiに生じるリップル電圧の振幅を電圧電流変換回路12の入力レンジに合わせて適切に低減できる。
また、図7に示すスイッチング電源装置では、電圧電流変換回路12の入力同相電圧がほぼ「γ×Vout」になっており、図6に示すスイッチング電源装置における電流電圧変換回路12の入力同相電圧「Vout」に比べて低くなる。これにより、電圧電流変換回路12の動作に使用する電源電圧を「Vout」より低くすることが可能となり、昨今の低電圧化したICに集積する上で有利である。
【0080】
<第4の実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
【0081】
図8は、第4の実施形態に係るスイッチング電源装置の構成の一例を示す図である。
図8に示すスイッチング電源装置は、図1に示すスイッチング電源装置におけるリップル信号生成回路1を次に述べるリップル信号生成回路1Cに置き換えたものであり、他の構成要素については図1に示すスイッチング電源装置と同じである。
【0082】
リップル信号生成回路1Cは、リップル信号生成回路1と同じCR積分回路11を有するとともに、キャパシタCiに生じるリップル電圧と出力フィードバック電圧VFBとを合成した合成信号Vci_fbを出力する信号合成回路15を有する。
信号合成回路15は、本発明における第1信号合成回路の一実施形態である。
【0083】
図9は、リップル信号生成回路1Cの構成の一例を示す図である。
図9に示すリップル信号生成回路1Cは、増幅器151〜153と抵抗R9〜R14を有する。
増幅器151の非反転入力端子はノードNciに接続され、その出力端子は反転入力端子に接続される。増幅器152の非反転入力端子はノードNfbに接続され、その出力端子は反転入力端子に接続される。増幅器153の反転入力端子は、抵抗R9を介して増幅器151の出力端子に接続されるとともに、抵抗R10を介して増幅器152の出力端子に接続される。増幅器153の出力端子は、抵抗R11を介してその反転入力端子に接続される。増幅器153の非反転入力端子は、抵抗R12を介してノードNoutに接続されるとともに、抵抗R13及びR14の並列回路を介して参照電圧Vrefに接続される。増幅器153において合成信号Vci_fbが出力される。
コンパレータ2は、この合成信号Vci_fbと参照電圧Vrefとを比較し、その比較結果に応じて信号Scpを生成する。
【0084】
図9に示す信号合成回路15において、増幅器151及び152はバッファ回路を構成しており、高インピーダンスで入力した電圧Vci,VFBを低インピーダンスで出力する。また、抵抗R9〜R11及び増幅器153は反転増幅回路を構成しており、増幅器151及び152で入力された電圧Vci,VFBにそれぞれ所定のゲインを乗じて加算する。反転増幅回路のゲインは負であり、各入力信号は反転増幅回路によって位相を反転される。
【0085】
増幅器153の非反転入力端子には、出力電圧Voutと参照電圧Vrefとを所定の割合で合成した合成電圧Vbが入力される。合成電圧Vbは、例えば次式で表わされる。
【0086】
(数5)
Vb=α・Vout+β・Vref…(5)
【0087】
合成電圧Vbにおける出力電圧Voutの成分(α・Vout)は、増幅器151に入力される電圧Vciの成分とともに、キャパシタCiの電圧(Vci−Vout)に比例した成分を生成する。割合αは、合成信号Vci_fbにおいてキャパシタCiの電圧(Vci−Vout)に比例した成分が生成されるように設定される。
【0088】
他方、合成電圧Vbにおける参照電圧Vrefの成分(β・Vref)は、合成信号Vci_fbにおける直流オフセット成分を生成する。割合βは、増幅器151において電圧Vciの代わりに出力電圧Voutを入力し(すなわちキャパシタCiの電圧をゼロとし)、かつ、増幅器152において出力フィードバック電圧VFBの代わりに参照電圧Vrefを入力した場合に生成される合成信号Vci_fbが参照電圧Vrefと等しくなるように設定される。
【0089】
ここで、図8に示すスイッチング電源装置の定常状態における動作について、図10を参照して説明する。図10は、合成信号Vci_fbと参照電圧Vrefの関係を例示する図である。
【0090】
合成信号Vci_fbに含まれる出力フィードバック電圧VFBの成分及びキャパシタCiの電圧(Vci−Vout)の成分は、共に位相が反転している。すなわち、出力フィードバック電圧VFBやキャパシタCiの電圧(Vci−Vout)が上昇すると合成信号Vci_fbのレベルは低下し、逆に、これらの電圧が低下すると合成信号Vci_fbのレベルは上昇する。
他方、本実施形態において、制御回路3は、合成信号Vci_fbが参照電圧Vrefより大きいことを示す信号Scpをコンパレータ2から入力すると、MOSトランジスタMHを一定時間オンさせる(図10(A))。MOSトランジスタMHがオンすると、インダクタLoに流れる電流が増大し、これに合わせてキャパシタCiの電圧(Vci−Vout)が上昇するため、合成信号Vci_fbは低下する(図10(B))。上記一定時間の後に制御回路3がMOSトランジスタMHをオフさせると(図10(A))、インダクタLoに流れる電流が減少し、キャパシタCiの電圧(Vci−Vout)も低下するため、合成信号Vci_fbは上昇する(図10(B))。従って、定常状態では、図10(B)に示すように、合成信号Vci_fbのピークと参照電圧Vrefとがほぼ等しくなる。
【0091】
さて、図9に示す信号合成回路15において、合成信号Vci_fbの直流オフセット成分は、キャパシタCiの電圧をゼロとし、かつ、出力フィードバック電圧VFBの代わりに参照電圧Vrefを入力した場合において、合成信号Vci_fbと参照電圧Vrefとが等しくなるように設定されている。従って、合成信号Vci_fbのピークと参照電圧Vrefとがほぼ等しくなる場合(図10(B))、キャパシタCiの微小なリップル電圧を無視すると、出力フィードバック電圧VFBは参照電圧Vrefに近似する。すなわち、定常状態の出力電圧Voutは、参照電圧Vrefと抵抗Rf1,Rf2の分圧比によって定められた目標電圧に近似する。
【0092】
図8に示すスイッチング電源装置によれば、信号合成回路15における電圧(Vci−Vout)のゲインを任意に設定できる。そのため、CR積分回路11の時定数を小さくしてキャパシタCiの電圧振幅を大きくした場合でも、合成信号Vci_fbに含まれるキャパシタCiの電圧成分の振幅を適当に小さくなるように変換することが可能である。従って、図8に示すスイッチング電源装置においても、CR積分回路11を半導体チップに集積化することが可能であり、図1に示すスイッチング電源装置と同様の効果を奏することができる。
【0093】
<第5の実施形態>
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。
【0094】
図11は、第5の実施形態に係るスイッチング電源装置の構成の一例を示す図である。図11に示すスイッチング電源装置は、図1に示すスイッチング電源装置におけるリップル信号生成回路1を次に述べるリップル信号生成回路1Dに置き換え、更にコンパレータ2をコンパレータ2Dに置き換えたものであり、他の構成要素については図1に示すスイッチング電源装置と同じである。
【0095】
リップル信号生成回路1Dは、リップル信号生成回路1と同じCR積分回路11を有するともに、キャパシタCiの電圧振幅を変換する振幅変換回路16を有する。
【0096】
振幅変換回路16は、キャパシタCiに生じるリップル電圧と相似な信号であって、当該リップル電圧より振幅が小さいリップル信号Vci_Xを生成する。図11の例において、リップル信号Vci_Xは出力電圧Voutを基準とする信号である。
【0097】
コンパレータ2Dは、出力フィードバック電圧VFBと参照電圧Vrefとの差を増幅するとともにリップル信号Vci_Xを増幅し、これらの増幅結果を合成して更に増幅することにより、ロジック信号Scpを生成する。
【0098】
図12は、コンパレータ2Dの構成の一例を示す図である。
図12に示すコンパレータ2Dは、npnトランジスタQ7〜Q10と電流源CS7〜CS10と、抵抗R15〜R18と、出力増幅回路21を有する。
npnトランジスタQ7,Q8、抵抗R15,R16及び電流源CS9を含む回路は、本発明の第1増幅段の一実施形態である。
npnトランジスタQ9,Q10、抵抗R17,R18及び電流源CS10を含む回路は、本発明の第2増幅段の一実施形態である。
電流源CS7は、本発明の第1負荷回路の一実施形態である。
電流源CS8は、本発明の第2負荷回路の一実施形態である。
出力増幅回路21は、本発明の第3増幅段の一実施形態である。
【0099】
npnトランジスタQ7のエミッタは抵抗R15を介してノードNm1に接続され、そのコレクタは電流合成ノードNS1(第1電流合成ノード)に接続され、そのベースには参照電圧Vrefが入力される。npnトランジスタQ8のエミッタは抵抗R16を介してノードNm1に接続され、そのコレクタは電流合成ノードNS2(第2電流合成ノード)に接続され、そのベースはノードNfbに接続される。電流源CS9は、ノードNm1と基準電位Gの間に接続される。
npnトランジスタQ9のエミッタは抵抗R17を介してノードNm2に接続され、そのコレクタは電流合成ノードNS1に接続され、そのベースはノードNoutに接続される。npnトランジスタQ10のエミッタは抵抗R18を介してノードNm2に接続され、そのコレクタは電流合成ノードNS2に接続され、そのベースにはリップル信号Vci_xが入力される。電流源CS10は、ノードNm2と基準電位Gの間に接続される。
電流源CS7は電流合成ノードNS1と電源ラインVddの間に接続され、電流源SC8は電流合成ノードNS2と電源ラインVddの間に接続される。
【0100】
npnトランジスタQ7,Q8、抵抗R15,R16及び電流源CS9は差動電圧を差動電流に変換する差動増幅回路を構成しており、出力フィードバック電圧VFBと参照電圧Vrefとの差に応じて、npnトランジスタQ7及びQ8のコレクタ電流の差(Iq8−Iq7)を発生する。
また、npnトランジスタQ9,Q10、抵抗R17,R18及び電流源CS10も差動電圧を差動電流に変換する差動増幅回路を構成しており、リップル信号Vci_Xと出力電圧Voutとの差(すなわちキャパシタCiの電圧)に応じて、npnトランジスタQ9及びQ10のコレクタ電流の差(Iq10−Iq9)を発生する。
そして、電流Iq7と電流Iq9が電流合成ノードNS1において合成されて電流源CS7に流れ、電流Iq8と電流Iq10が電流合成ノードNS2において合成されて電流源CS8に流れる。
従って、電流源CS7及びCS8に生じる電圧の差(すなわち電流合成ノードNS1及びNS2の電圧)は、差動電流(Iq8−Iq7)によって生じる成分と、差動電流(Iq10−Iq9)によって生じる成分とを合成したものになる。例えば、出力フィードバック電圧VFBが参照電圧Vrefに対して上昇する場合や、リップル信号Vci_Xが出力電圧Voutに対して上昇する場合には、電流合成ノードNS2の電流(Iq8+Iq10)が増大するため、電流合成ノードNS2の電圧が電流合成ノードNS1の電圧に対して低下する。逆に、出力フィードバック電圧VFBが参照電圧Vrefに対して低下する場合や、リップル信号Vci_Xが出力電圧Voutに対して低下する場合には、電流合成ノードNS2の電流(Iq8+Iq10)が減少するため、電流合成ノードNS2の電圧が電流合成ノードNS1の電圧に対して上昇する。
この電流合成ノードNS1及びNS2の電圧を、更に出力増幅回路21において増幅することにより、ハイレベル又はローレベルを有するロジック信号Scpが生成される。
【0101】
このように、図11にスイッチング電源装置では、出力フィードバック電圧VFBと参照電圧Vrefとの差を増幅した信号に対してリップル信号Vci_Xを合成し、その合成結果を更に増幅することにより、コンパレータ2Dのロジック信号Scpを生成している。そのため、出力フィードバック電圧VFBと参照電圧Vrefとの差が大きい段階では、ロジック信号Scpがハイレベル又はローレベルで一定となり、出力フィードバック電圧VFBと参照電圧Vrefとの差が十分小さくなると、リップル信号Vci_Xのピーク若しくはボトムを示すようにロジック信号Scpがハイレベル又はローレベルに切り替わる。
従って、図11に示すスイッチング電源装置においてもリップルモード方式の動作が可能である。
【0102】
また、図11に示すスイッチング電源装置によれば、振幅変換回路16においてキャパシタCiの電圧振幅を任意に変換できるため、CR積分回路11を半導体チップに集積化することが可能であり、図1に示すスイッチング電源装置と同様の効果を奏することができる。
【0103】
<第6の実施形態>
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。
【0104】
図13は、第6の実施形態に係るスイッチング電源装置の構成の一例を示す図である。図13に示すスイッチング電源装置は、図1に示すスイッチング電源装置におけるリップル信号生成回路1を次に述べるリップル信号生成回路1Eに置き換えたものであり、他の構成要素については図1に示すスイッチング電源装置と同じである。
【0105】
リップル信号生成回路1Eは、リップル信号生成回路1と同じCR積分回路11を有するとともに、キャパシタCiに生じるリップル電圧と参照電圧Vrefとを合成した合成信号Vref_ciを出力する信号合成回路17を有する。
信号合成回路17は、本発明における第2信号合成回路の一実施形態である。
【0106】
図14は、リップル信号生成回路1Eの一構成例を示す図である。
図14に示すリップル信号生成回路1Eは、電圧電流変換回路171と抵抗R19を有する。
電圧電流変換回路171は、キャパシタCiに生じる電圧(Vci−Vout)を電流Irpに変換する。電圧Vciが電圧Voutより低い場合に正の電流(吐き出し電流)を発生し、電圧Vciが電圧Voutより高い場合に負の電流(引き込み電流)を発生する。電圧電流変換回路171は、例えば図2に示す電圧電流変換回路12と同様な構成を有する。
抵抗R19は、一方の端子が電圧電流変換回路171の電流出力端子に接続され、他方の端子に参照電圧Vrefが印加される。電圧電流変換回路171の電流出力端子と抵抗R19との接続ノードにおいて合成信号Vref_ciが発生する。
コンパレータ2は、この合成信号Vref_ciと出力フィードバック電圧VFBとの比較結果に応じてロジック信号Scpを生成する。
【0107】
ここで、図13に示すスイッチング電源装置の定常状態における動作について、図15を参照して説明する。図15は、合成信号Vref_ciと出力フィードバック電圧VFBの関係を例示する図である。
【0108】
コンパレータ2の入力インピーダンスが十分に高い場合、電圧電流変換回路171から出力される電流の大半は抵抗R19に流れる。従って、抵抗R19の抵抗値を「r19」とすると、合成信号Vref_ciは次式で表わされる。
【0109】
(数6)
Vci_fb=r19×Irp+Vref…(6)
【0110】
制御回路3は、合成信号Vref_ciが出力フィードバック電圧VFBより高くなったことを示すコンパレータ2の信号Scpに応じて、MOSトランジスタMHを一定時間オンに設定する。MOSトランジスタMHがオンすると、インダクタLoの電流が増大し、キャパシタCiの電圧が上昇する。電流Irpは、「Vci<Vout」の場合に正となり、「Vci>Vout」の場合に負となるため、キャパシタCiの電圧が上昇すると合成信号Vci_fbは低下する。一定時間後、制御回路3がMOSトランジスタMHをオフに設定すると、インダクタLoの電流が減少し、キャパシタCiの電圧が低下するため、合成信号Vci_fbは上昇する。そして、合成信号Vref_ciが出力フィードバック電圧VFBより高くなると、再びMOSトランジスタMHがオンする。
このようにして、図15(B)に示すように、出力フィードバック電圧VFBは合成信号Vref_ciのピークとほぼ等しくなる。
【0111】
以上述べたように、図13に示すスイッチング電源装置によれば、電圧電流変換回路171の相互コンダクタンスや抵抗R19の抵抗値などを調整することによって、信号合成回路17における電圧(Vci−Vout)のゲインを任意に設定できるため、CR積分回路11の時定数を小さくしてキャパシタCiの電圧振幅を大きくした場合でも、合成信号Vci_fbに含まれるキャパシタCiの電圧成分の振幅を適当に小さくすることが可能である。従って、図13に示すスイッチング電源装置においても、CR積分回路11を半導体チップに集積化することが可能であり、図1に示すスイッチング電源装置と同様の効果を奏することができる。
【0112】
図16は、リップル信号生成回路1Eの他の構成例を示す図である。
図16に示すリップル信号生成回路1Eは、増幅器172〜174と抵抗R20〜R24を有する。
増幅器172の反転入力端子は、抵抗R20を介してノードNoutに接続される。増幅器172の出力端子は、抵抗R21を介してその反転入力端子に接続される。増幅器174の非反転入力端子は、ノードNciに接続される。増幅器174の反転入力端子は、その出力端子に接続される。増幅器173の反転入力端子は、抵抗R22を介して増幅器172の出力端子に接続されるとともに、抵抗R23を介して増幅器174の出力端子に接続される。増幅器173の出力端子は、抵抗R24を介してその反転入力端子に接続される。増幅器172及び173の非反転入力端子には参照電圧Vrefが印加される。
【0113】
増幅器174は、ノードNciの電圧Vciを高インピーダンスで入力し、これとほぼ等しい電圧を低インピーダンスで出力するバッファ回路を構成する。
増幅器172及び抵抗R20,R21は、電圧Voutを所定のゲインで位相を反転させて増幅する反転増幅回路を構成する。
また、増幅器173及び抵抗R22〜R24は、前段の反転増幅回路(172,R20,R21)の出力電圧及びバッファ回路(174)の出力電圧Vciをそれぞれ所定のゲインで位相を反転させて増幅し、加算する反転増幅回路を構成する。それぞれの反転増幅回路のゲインを適切に設定することにより、増幅器173から出力される合成信号Vci_fbには、キャパシタCiの電圧(Vci−Vout)に比例した成分が生じる。また、2つの反転増幅回路は何れも参照電圧Vrefを基準に増幅を行うため、キャパシタCiの電圧(Vci−Vout)がゼロの場合、合成信号Vci_fbは参照電圧Vrefと等しくなる。
従って、図16に示す回路構成でも、図14に示すリップル信号生成回路1Eと同等な合成信号Vci_fbを生成することができる。
【0114】
以上、本発明の幾つかの実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態のみに限定されるものではなく、種々のバリエーションを含んでいる。
【0115】
上述した実施形態では、インダクタLoに流れるリップル電流のボトム若しくはピークにおいてMOSトランジスタMHを一定時間オンさせ、これによりインダクタLoの電流を増大させる方式(固定オン時間方式)を例として挙げているが、本発明はこれに限定されない。例えば、インダクタLoに流れるリップル電流のボトム若しくはピークにおいてMOSトランジスタMHを一定時間オフさせ、これによりインダクタLoの電流を減少させる方式(固定オフ時間方式)にも本発明は適用可能である。また、入力電圧Vinや出力電圧Voutに応じて上記のオン時間やオフ時間を適応的に変化させることにより、スイッチング周波数の変動を抑える方式にも本発明は適用可能である。
あるいは、リップル成分と参照電圧を比較するコンパレータにヒステリシス特性を持たせてPWM信号を生成するヒステリシスPWM制御方式にも本発明は適用可能である。
すなわち、本発明は、様々なリップルモード方式のスイッチング電源装置に広く適用可能である。
【0116】
上述した第2、第3の実施形態は、その他の実施形態にも適用可能である。
例えば、図9に示すスイッチング電源装置では、キャパシタCiと並列に分圧回路13(図6)を設けて、その分圧回路13の出力電圧を信号合成回路15に入力してもよい。あるいは、CR積分回路11をCR積分回路11B(図7)に置換し、そのキャパシタCiと並列に分圧回路13B(図7)を設けて、分圧回路13Bの出力電圧を信号合成回路15に入力してもよい。
図11に示すスイッチング電源装置では、キャパシタCiと並列に分圧回路13(図6)を設けて、その分圧回路13の出力電圧を振幅変換回路16に入力してもよい。あるいは、CR積分回路11をCR積分回路11B(図7)に置換し、そのキャパシタCiと並列に分圧回路13B(図7)を設けるとともに、出力フィードバック電圧VFBを分圧する分圧回路14を設けて、分圧回路13B及び14の出力電圧の差を振幅変換回路16に入力してもよい。
図13に示すスイッチング電源装置では、キャパシタCiと並列に分圧回路13(図6)を設けて、その分圧回路13の出力電圧を信号合成回路17に入力してもよい。あるいは、CR積分回路11をCR積分回路11B(図7)に置換し、そのキャパシタCiと並列に分圧回路13B(図7)を設けるとともに、出力フィードバック電圧VFBを分圧する分圧回路14を設けて、分圧回路13B及び14の出力電圧の差を信号合成回路17に入力してもよい。
【0117】
上述した第1の実施形態では、出力フィードバック電圧VFBの伝達経路に設けられた抵抗R3に対して電流Iqを注入しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記とは逆に、参照電圧Vrefが伝達される経路の抵抗R4に対して電流Iqを注入してもよい。すなわち、参照電圧Vrefとリップル信号との合成信号を生成してもよい。この場合、ノードN1にも同じ電流Iqを注入することで、pnpトランジスタQ3,Q4に流れる電流の直流バランスを向上させて、入力オフセット電圧誤差を低減させることができる。
【符号の説明】
【0118】
1,1A〜1E…リップル信号生成回路、
2,2D…コンパレータ、
3…制御回路、
4…駆動回路、
11,11B…CR積分回路、
12,171…電圧電流変換回路、
13,13B,14…分圧回路、
15,17…信号合成回路、
16…振幅変換回路、
21…出力増幅回路、
151〜153,172,173…増幅器、
Lo…インダクタ、
Ci,Co…キャパシタ、
CS1〜CS10…電流源、
MH,ML…MOSトランジスタ、
M1〜M10…MOSトランジスタ、
Q1,Q2,Q5〜Q10…npnトランジスタ、
Q3,Q4…pnpトランジスタ、
R1〜R24…抵抗、
Rf1,Rf2…抵抗、
Vref…参照電圧、
VFB…出力フィードバック電圧
【技術分野】
【0001】
本発明は、高効率で応答が高速なスイッチング電源装置に係り、例えば出力のリップル成分としきい値との比較に基づいて出力制御を行うリップルモード方式のスイッチング電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機に代表されるモバイル機器の急速な普及を背景として、モバイル機器向けのスイッチング電源装置に求められる性能はますます厳しくなっている。低電圧で動作し、高効率で応答が速く、しかも部品点数の少ないスイッチング電源装置の技術開発が活発に行われている。
【0003】
図17は、一般的な電圧モード方式のスイッチング電源装置の構成例を示す図である。
図17の例において、MOSトランジスタMH,ML、インダクタLo及びキャパシタCoは降圧型コンバータを構成する。降圧型コンバータは、ハイサイドのMOSトランジスタMHとローサイドのMOSトランジスタMLを交互にオンさせることで、入力電圧Vinより低い出力電圧Voを発生する。インダクタLoにおいて連続的に電流が流れる場合、ハイサイドのMOSトランジスタMHのデューティ比(スイッチング周期に対するオン時間の比)にほぼ比例した出力電圧Voが得られる。
【0004】
抵抗R31〜R34,キャパシタC31〜C33及び演算増幅器101は誤差増幅回路を構成する。誤差増幅回路は、参照電圧Vrefと出力電圧Voutに対応するVFBとの誤差を増幅する。コンパレータ102は、この誤差増幅回路から出力される誤差信号と三角波発生器103より出力される三角波信号とを比較し、この比較結果に応じたPWM信号を生成する。PWM信号は、誤差信号のレベルに応じてパルス幅が変化する。ゲート駆動回路105は、MOSトランジスタMLのゲートを駆動するローサイド・ドライバと、MOSトランジスタMHのゲートを駆動するハイサイド・ドライバを有する。ローサイド・ドライバはPWM信号に応じてゲート駆動電圧を発生し、ハイサイド・ドライバはPWM信号をインバータ104により反転した信号に応じて駆動電圧を発生する。
上記の構成により、出力電圧Voutと参照電圧Vrefとの誤差が増大すると、その誤差を減少させるようにMOSトランジスタMHのデューティ比が調節される。
【0005】
電圧モード方式のスイッチング電源装置は、インダクタLoとキャパシタCoの共振周波数で生じる位相の遅れによりフィードバック制御系が不安定になることを防止するため、高域でのループ・ゲインが比較的低く設定されることから、一般に応答速度が遅い。近年、消費電力を低減するために、機器の動作状態に応じて電源電圧をダイナミックに変化させる手法が広く採用されるようになってきており、スイッチング電源装置には高速な応答が要求されている。しかしながら、電圧モード方式では上記のような事情があることから、この高速化要求に対して十分に応えることができない。また、位相補償のために単体部品(ディスクリート部品)として抵抗R33〜R34やキャパシタC31〜C33を設けなければならないため基板面積の増大や実装コストの上昇を招くという不利益や、それらの適切な素子値を評価するために多くの工数を要するという不利益もある。
【0006】
上述した電圧モード方式の欠点を克服するものとして、リップルモード方式が知られている(非特許文献1を参照)。リップルモード方式は、Bang−Bang制御やヒステリシスPWM制御、D−capモードなどとも呼ばれている。
【0007】
図18は、一般的なリップルモード方式のスイッチング電源装置の構成例を示す図である。
抵抗R31及びR32の直列回路は出力電圧Voutを分圧し、出力フィードバック電圧VFBとしてコンパレータ102に入力する。コンパレータ102は、出力フィードバック電圧VFBと参照電圧Vrefとを比較し、出力フィードバック電圧VFBが参照電圧Vrefより低くなると「1」、参照電圧Vrefより高くなると「0」を出力する。制御回路106は、コンパレータ102の出力が「0」から「1」へ変化したときに一定時間だけMOSトランジスタMHをオン、MOSトランジスタMLをオフさせる制御信号を生成する。
【0008】
MOSトランジスタMHがオン、MOSトランジスタMLがオフするとき、インダクタLoには電圧(Vin−Vout)が印加されるため、インダクタLoに流れる電流は直線的に増大する。他方、MOSトランジスタMHがオフ、MOSトランジスタMLがオンするとき、インダクタLoには上記と逆極性の出力電圧Voutが印加されるため、インダクタLoに流れる電流は直線的に減少する。すなわち、インダクタLoには三角波状のリップル電流が流れる。このリップル電流がキャパシタCoの等価直列抵抗ESR(equivalent series resistance)に流れることにより、出力電圧Voにはリップル電流と相似なリップル電圧が重畳する。図18に示すリップルモード方式のスイッチング電源装置においては、出力フィードバック電圧VFBに重畳するリップル成分のボトムと参照電圧Vrefとが定常状態においてほぼ等しくなるように帰還制御が働く。リップルモード方式は、電圧モード方式のような位相補償が不要であり、高速な負荷応答を実現できる。
【0009】
しかしながら、リップルモード方式において制御系を安定に動作させるためには、出力フィードバック電圧VFBに適切な振幅のリップル成分が含まれていなければならない。出力電圧Voutのリップル成分を「Vorp」、抵抗R31,R32の抵抗値をそれぞれ「r31」,「r32」とすると、出力フィードバック電圧VFBのリップル成分Vfrpは次式で表わされる。
【0010】
(数1)
Vfrp=Vorp×(r31/(r31+r32))…(1)
【0011】
図18に示すリップルモード方式において出力フィードバック電圧VFBのリップル成分Vfrpを大きくするには、例えば、抵抗R31,R32の抵抗比を変更したり、抵抗R32と並列にキャパシタを接続するなどの方法が考えられる。しかし、それでも限界がある場合には、出力電圧Voutのリップル成分Vorpそのものを大きくしなければならない。
メモリやCPU等のLSIの動作電圧は低消費電力化のために年々低くなっており、電源システムに要求される出力電圧は1Vを下回るまでになりつつある。そのような状況で、電源電圧のリップル成分を大きくすることはLSIの動作マージンを減少させることに繋がるので、システムの信頼性の観点から好ましくない。
【非特許文献1】鍋島隆他3名、「CR積分回路を用いたヒステリシスPWM制御による降圧形コンバータの制御特性」、電子情報通信学会論文誌、社団法人電子情報通信学会、2006年5月、Vol.J89−B、No.5、p.664−672
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
リップルモード方式において出力電圧のリップル成分そのものを大きくすることなく安定な帰還制御を実現する方法として、例えば非特許文献1に記載されるようにCR積分回路を用いる手法が知られている。この手法では、インダクタLoと並列に接続したCR積分回路によってインダクタLoに流れるリップル電流と相似な信号を取り出し、これを出力フィードバック電圧に重畳する。
【0013】
図19は、CR積分回路により取り出したリップル信号を用いるリップルモード方式のスイッチング電源装置の構成例を示す図である。
図19に示すスイッチング電源装置では、抵抗R35とキャパシタC35の直列回路によるCR積分回路がインダクタLoと並列に接続されている。キャパシタC35には、インダクタLoに流れるリップル電流と相似なリップル電圧が生じる。抵抗R35とキャパシタC35の接続ノードがキャパシタC34を介して抵抗R31及びR32の接続ノードと接続されるため、キャパシタC35に生じるリップル電圧が出力フィードバック電圧VFBに重畳される。
【0014】
図20は、図19に示すスイッチング電源装置における各部の信号波形を例示する図である。
出力電圧Voutのリップル電圧が比較的小さい場合でも(図20(B))、出力フィードバック電圧VFBにおいて十分な振幅のリップル電圧Vrpが得られる(図20(C))。出力フィードバック電圧VFBのボトムが参照電圧Vrefより低くなると、MOSトランジスタMHのゲート−ソース電圧Vgsが一定時間ハイレベルになる(図20(A))。
【0015】
図19に示すスイッチング電源装置は、出力フィードバック電圧VFBに適切な振幅のリップル電圧Vrpを重畳させることにより、出力電圧Voutのリップル電圧が比較的小さい場合でも、制御系の動作を安定させることができるという利点を有する。
【0016】
ところで、リップルモード方式では、リップル成分のピークやボトムを参照電圧Vrefと一致させるように制御を行うため、リップル電圧Vrpの振幅をあまり大きくできない。リップル電圧Vrpの振幅が大き過ぎると、参照電圧Vrefによって規定される直流レベルと実際の出力電圧Voutの直流レベルとのズレが大きくなってしまい、出力電圧Voutの直流精度を確保する上で不利になるからである。従って、リップル電圧Vrpの振幅は、出力電圧Voutに要求される精度等を勘案して適切な範囲内に設定しなくてはならない。ところが、そうすると、スイッチング周波数との兼ね合いによって、CR積分回路(R35,C35)の時定数を比較的大きくしなくてはならない場合がある。キャパシタの容量が例えば数千pF程度になると、これを半導体チップ上に形成するのは困難であり、ディスクリート部品として基板に実装する必要が生じる。
一般に、図19に示すスイッチング電源装置では、抵抗R35やキャパシタC34,C35をディスクリート部品として基板に実装しなくてはならないため、基板面積の増大や部品実装コストの上昇といった不利益がある。
【0017】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ディスクリート部品を用いることなく必要な振幅のリップル成分を得ることができるリップルモード方式のスイッチング電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係るスイッチング電源装置は、入力電圧を受ける入力端子と、出力電圧を出力する出力端子と、上記入力端子と第1のノードとの間に接続される第1のスイッチングトランジスタと、上記第1のノードと基準電位との間に接続され、上記第1のスイッチングトランジスタと相補的に動作する第2のスイッチングトランジスタと、上記第1のノードと上記出力端子との間に接続されるインダクタンス素子と、上記出力端子と基準電位との間に接続される出力キャパシタンス素子と、上記出力端子に接続され、上記出力電圧に応じたフィードバック電圧を生成する分圧回路と、上記出力電圧に含まれており、上記スイッチングトランジスタのスイッチング動作に対応するリップル電圧を検出するリップル電圧検出回路と、上記フィードバック電圧と上記リップル電圧との加算電圧を基準電圧と比較して比較結果を出力する比較回路と、上記比較結果に応じて上記第1及び第2のスイッチングトランジスタをオン・オフ制御する制御回路とを含む。上記リップル電圧検出回路が上記インダクタンス素子に接続される積分回路を含み、上記第1のスイッチングトランジスタのオン時間が、上記出力電圧と上記入力電圧との比と、上記第1及び第2のスイッチングトランジスタのスイッチング周期との積で定義される。
【0019】
好適には、上記積分回路が、上記第1のノードと上記出力端子との間に直列に接続される抵抗素子とキャパシタンス素子とを含んでよい。
また、上記リップル電圧を入力して当該リップル電圧に応じた電流信号を出力する電圧電流変換回路を更に含み、上記比較回路が、上記電流信号を電圧信号に変換するための第1の抵抗素子と、上記フィードバック電圧と上記電圧信号との加算電圧を上記基準電圧と比較するための差動回路とを含んでもよい。
【0020】
更には、上記比較回路が、上記フィードバック電圧を入力する第1のバッファ回路と、上記基準電圧を入力する第2のバッファ回路と、上記第2のバッファ回路の出力に結合された第2の抵抗素子とを更に含み、上記フィードバック電圧が、上記第1のバッファ回路と上記第1の抵抗素子とを介して上記差動回路の第1の入力に供給され、上記基準電圧が、上記第2のバッファ回路と上記第2の抵抗素子とを介して上記差動回路の第2の入力に供給され、上記差動回路の第1の入力と上記第1の抵抗素子との接続中点に上記電圧電流変換回路から第1の電流が供給され、上記第2のバッファ回路の出力と上記第2の抵抗素子との接続中点に上記電圧電流変換回路から第2の電流が供給される構成としてもよい。
【0021】
好適に、上記キャパシタンス素子の一方の端子の電圧を入力する第1のトランジスタと、上記キャパシタンス素子の他方の端子の電圧を入力する第2のトランジスタとを含む差動増幅回路と、上記第1のトランジスタに流れる電流に対応する上記第1の電流を出力する第1の電流源回路と、上記第2のトランジスタに流れる電流に対応する上記第2の電流を出力する第2の電流源回路とを含んでよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、上記積分回路のキャパシタに生じるリップル電圧の振幅を変換してリップル信号を生成することにより、ディスクリート部品を用いることなく必要な振幅のリップル成分を得ることができるリップルモード方式のスイッチング電源装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1の実施形態に係るスイッチング電源装置の構成の一例を示す図である。
【図2】電圧電流変換回路の構成の一例を示す図である。
【図3】図1に示すスイッチング電源装置におけるコンパレータの構成の一例を示す図である。
【図4】CR積分回路に生じる電圧と電圧電流変換回路の電流の波形を例示する図である。
【図5】図3に示すコンパレータの各部の信号波形を例示する図である。
【図6】第2の実施形態に係るスイッチング電源装置の構成の一例を示す図である。
【図7】第3の実施形態に係るスイッチング電源装置の構成の一例を示す図である。
【図8】第4の実施形態に係るスイッチング電源装置の構成の一例を示す図である。
【図9】図8に示すスイッチング電源装置におけるリップル信号生成回路の構成の一例を示す図である。
【図10】図8に示すスイッチング電源装置における合成信号と参照電圧の関係を例示する図である。
【図11】第5の実施形態に係るスイッチング電源装置の構成の一例を示す図である。
【図12】図11に示すスイッチング電源装置における、コンパレータの構成の一例を示す図である。
【図13】第6の実施形態に係るスイッチング電源装置の構成の一例を示す図
【図14】図13に示すスイッチング電源装置におけるリップル信号生成回路の一構成例を示す図である。
【図15】図13に示すスイッチング電源装置における合成信号と出力フィードバック電圧の関係を例示する図である。
【図16】図13に示すスイッチング電源装置におけるリップル信号生成回路の他の構成例を示す図である。
【図17】一般的な電圧モード方式のスイッチング電源装置の構成例を示す図である。
【図18】一般的なリップルモード方式のスイッチング電源装置の構成例を示す図である。
【図19】CR積分回路により取り出したリップル信号を用いるリップルモード方式のスイッチング電源装置の構成例を示す図である。
【図20】図19に示すスイッチング電源装置における各部の信号波形を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係るスイッチング電源装置の構成の一例を示す図である。
図1に示すスイッチング電源装置は、リップル信号生成回路1と、コンパレータ2と、制御回路3と、駆動回路4と、電圧フィードバック用の抵抗Rf1,Rf2と、n型のMOSトランジスタML及びMHと、インダクタLoと、キャパシタCoを有する。リップル信号生成回路1は、キャパシタCi及び抵抗Riの直列回路からなるCR積分回路11と、電圧電流変換回路12を有する。
キャパシタCoは、本発明における第1キャパシタの一実施形態である。
インダクタLoは、本発明におけるインダクタの一実施形態である。
MOSトランジスタML及びMHは、本発明におけるスイッチング回路の一実施形態である。
リップル信号生成回路1は、本発明におけるリップル信号生成回路の一実施形態である。
コンパレータ2は、本発明における比較回路の一実施形態である。
制御回路3は、本発明における制御回路の一実施形態である。
CR積分回路11は、本発明における積分回路の一実施形態である。
キャパシタCiは、本発明における第2キャパシタの一実施形態である。
電圧電流変換回路12は、本発明における電圧電流変換回路の一実施形態である。
【0025】
MOSトランジスタMLはノードNswと基準電位Gの間に接続され、MOSトランジスタMHは入力電圧Vinの供給ラインとノードNswの間に接続される。駆動回路4は、制御信号SLに応じてMOSトランジスタMLのゲートを駆動するとともに、制御信号SHに応じてMOSトランジスタMHのゲートを駆動する。
【0026】
インダクタLoは、ノードNswとノードNoutとの間に接続される。キャパシタCoは、ノードNoutと基準電位Gとの間に接続される。キャパシタCoは、等価直列抵抗ESRを有する。
ノードNoutには、負荷RLが接続される。負荷RLは、例えば、ノードNoutに発生する電圧Voutを受けて動作するLSI等の電子回路を表す。
【0027】
抵抗Rf1,Rf2は、ノードNoutと基準電位Gの間に直列に接続される。抵抗Rf1はノードNfbと基準電位Gの間に接続され、抵抗Rf2はノードNoutとノードNfbの間に接続される。ノードNfbには、出力電圧Voutを抵抗Rf1及びRf2の直列回路により分圧した出力フィードバック電圧VFBが発生する。
【0028】
CR積分回路11は、抵抗Ri及びキャパシタCiの直列回路により構成されており、インダクタLoと並列に接続される。抵抗RiはノードNswとノードNciの間に接続され、キャパシタCiはノードNciとノードNoutの間に接続される。
MOSトランジスタML及びMHによるスイッチングの1サイクル期間がCR積分回路11の時定数に比べて十分に短い場合、この1サイクル期間におけるキャパシタCiの電圧の変化(すなわちキャパシタCiのリップル電圧の振幅)はインダクタLoに印加される方形波状の電圧の振幅に比べて十分に小さく無視できる。この場合、抵抗Riに流れる電流は、インダクタLoに印加される電圧にほぼ比例する。キャパシタCiは、抵抗Riに流れる電流によって充放電されるため、キャパシタCiに発生する電圧は、インダクタLoに印加される電圧の積分値にほぼ比例する。ここで、インダクタLoに流れる電流はインダクタLoに印加される電圧の積分値に比例することから、キャパシタCiに生じるリップル電圧の波形は、インダクタLoに流れるリップル電流の波形と相似になる。
【0029】
電圧電流変換回路12は、キャパシタCiに生じる電圧を電流に変換する回路であり、例えば次式に示すように、キャパシタCiに生じる電圧と所定の相互コンダクタンスgmとの積に応じた電流Iqを生成する。
【0030】
(数2)
Iq=(Vci−Vout)×gm=Vid×gm…(2)
【0031】
図2は、電圧電流変換回路12の構成の一例を示す図である。
図2に示す電圧電流変換回路12は、p型のMOSトランジスタM1〜M6と、n型のMOSトランジスタM7〜M10と、npnトランジスタQ1,Q2と、抵抗R1,R2と、電流源CS1を有する。
【0032】
npnトランジスタQ1のエミッタは抵抗R1を介してノードNmに接続され、そのコレクタはMOSトランジスタM1のドレインに接続され、そのベースはノードNoutに接続される。npnトランジスタQ2のエミッタは抵抗R2を介してノードNmに接続され、そのコレクタはMOSトランジスタM2のドレインに接続され、そのベースはノードNciに接続される。
電流源CS1は、ノードNmと基準電位Gの間に接続される。
MOSトランジスタM1〜M6の各ソースは、電源ラインVddに接続される。MOSトランジスタM1のゲートとドレインが共通に接続され、MOSトランジスタM3,M4のゲートがMOSトランジスタM1のゲートに接続される。MOSトランジスタM2のゲートとドレインが共通に接続され、MOSトランジスタM5,M6のゲートがMOSトランジスタM2のゲートに接続される。MOSトランジスタM3のドレインは、MOSトランジスタM7のドレインに接続される。MOSトランジスタM4のドレインは、MOSトランジスタM8のドレインに接続される。
MOSトランジスタM7〜M10の各ソースは、基準電位Gに接続される。MOSトランジスタM7のゲートとドレインが共通に接続され、MOSトランジスタM9のゲートがMOSトランジスタM7のゲートに接続される。MOSトランジスタM8のゲートとドレインが共通に接続され、MOSトランジスタM10のゲートがMOSトランジスタM8のゲートに接続される。MOSトランジスタM9のドレインとMOSトランジスタM5のドレインは、ノードN1に共通接続される。MOSトランジスタM10のドレインとMOSトランジスタM6のドレインは、ノードN4に共通接続される。
【0033】
npnトランジスタQ2のベースには電圧Vciが印加され、npnトランジスタQ1のベースには電圧Voutが印加される。対をなすnpnトランジスタQ1,Q2のコレクタ電流には、電圧差Vid(=Vci−Vout)に応じた電流差が生じる。
【0034】
MOSトランジスタM1,M3,M4,M7,M8,M9,M10はカレントミラー回路を構成しており、MOSトランジスタM9,M10のドレイン電流はMOSトランジスタM1のドレイン電流に比例する。他方、MOSトランジスタM2,M5,M6はカレントミラー回路を構成しており、MOSトランジスタM5,M6のドレイン電流はMOSトランジスタM2のドレイン電流に比例する。
ここで、MOSトランジスタM9,M10のドレイン電流とMOSトランジスタM1のドレイン電流が等しく、かつ、MOSトランジスタM5,M6のドレイン電流とMOSトランジスタM2のドレイン電流が等しいとすると、ノードN1,N2からそれぞれ電圧差Vidに応じた電流Iqが出力される。
図2に示す電圧電流変換回路12の相互コンダクタンスgmは概ね次式で表わされる。
【0035】
(数3)
gm=1/[r1+(0.026×2/Ics2)]…(3)
【0036】
式(3)において、「r1」は抵抗R1,R2の抵抗値を示し、「Ics2」は電流源CS2の電流値を示す。
以上が、電圧電流変換回路12の説明である。
【0037】
コンパレータ2は、電圧電流変換回路12により取り出されたキャパシタCiのリップル信号と出力電圧Voutに応じた出力フィードバック電圧VFBとの合成信号を参照電圧Vrefと比較し、この比較結果に応じた信号Scpを出力する。コンパレータ2は、出力フィードバック電圧VFBの伝達経路に設けられた抵抗に対して電圧電流変換回路12の電流Iqを注入されており、これにより発生する出力フィードバック電圧VFBとリップル信号との合成信号を参照電圧Vrefと比較する。
【0038】
図3は、コンパレータ2の構成の一例を示す図である。
図1に示すコンパレータ2は、pnpトランジスタQ3,Q4と、npnトランジスタQ5,Q6と、抵抗R3,R4と、電流源CS2〜CS6と、出力増幅回路21とを有する。
pnpトランジスタQ3及び電流源CS3を含む回路は、本発明における第1バッファ回路の一実施形態である。
pnpトランジスタQ4及び電流源CS4を含む回路は、本発明における第2バッファ回路の一実施形態である。
npnトランジスタQ5,Q6及び電流源CS2,CS5,CS6を含む回路は、本発明における増幅段の一実施形態である。
抵抗R3は、本発明における第1抵抗の一実施形態である。
【0039】
pnpトランジスタQ3,Q4の各コレクタは基準電位Gに接続される。pnpトランジスタQ3のエミッタは電流源CS3を介して電源ラインVddに接続され、そのベースはノードNfbに接続される。pnpトランジスタQ4のエミッタは電流源CS4を介して電源ラインVddに接続され、そのベースには参照電圧Vrefが入力される。
npnトランジスタQ5,Q6のエミッタは共通に接続されており、そのエミッタと基準電位Gの間に電流源CS2が接続される。npnトランジスタQ5のコレクタは電流源CS5を介して電源ラインVddに接続され、そのベースは抵抗R3を介してpnpトランジスタQ3のエミッタに接続される。npnトランジスタQ6のコレクタは電流源CS6を介して電源ラインVddに接続され、そのベースは抵抗R4を介してpnpトランジスタQ4のエミッタに接続される。
なお図3において、ノードN1はpnpトランジスタQ3のエミッタを示し、ノードN2はpnpトランジスタQ4のエミッタを示し、ノードN3はnpnトランジスタQ5のベースを示し、ノードN4はnpnトランジスタQ6のベースを示す。
【0040】
出力増幅回路21は、npnトランジスタQ5,Q6のコレクタ電圧の差を増幅し、ハイレベル又はローレベルを有する信号Scpを生成する。
【0041】
pnpトランジスタQ3と電流源CS3は、高入力インピーダンスかつ低出力インピーダンスのバッファ回路(エミッタフォロワ回路)を構成する。pnpトランジスタQ3のエミッタ(ノードN1)には、出力フィードバック電圧VFBをほぼ一定のベース−エミッタ電圧だけレベルシフトした電圧Vn1が発生する。pnpトランジスタQ4と電流源CS4も同様なバッファ回路(エミッタフォロワ回路)を構成しており、pnpトランジスタQ4のエミッタ(ノードN2)には、参照電圧Vrefをレベルシフトした電圧Vn2が発生する。
【0042】
上述した2つのバッファ回路の出力電圧Vn1,Vn2は、npnトランジスタQ5,Q6及び電流源CS2,CS5,CS6により構成される差動増幅回路に入力される。差動増幅回路は、npnトランジスタQ5,Q6のベースに入力される電圧の差を増幅し、コレクタ電圧の差として出力する。
電流Iqの注入を考慮しない場合、この差動増幅回路では、電圧Vn1及びVn2の電圧差、すなわち出力フィードバック電圧VFBと参照電圧Vrefとの電圧差が増幅される。
【0043】
さて、図3に示すコンパレータ2においては、上述したバッファ回路(Q3,CS3)から差動増幅回路へ電圧Vn1を伝達する経路上に抵抗R3が設けられており、この抵抗R3に対してトランジスタQ5のベース側(ノードN3側)から電流Iqが注入される。npnトランジスタQ5のベース抵抗が十分に大きい場合、電流Iqの大半が抵抗R3を介してバッファ回路(Q3,CS3)に流れるため、抵抗R3の両端には電流Iqに応じた電圧が発生する。この抵抗R3に発生する電圧とノードN1の電圧Vn1とを加算した電圧Vn3が、npnトランジスタQ5のベースに入力される。
【0044】
一方、バッファ回路(Q4,CS4)から差動増幅回路へ電圧Vn2を伝達する経路にも抵抗R4が設けられているが、この経路においては、バッファ回路の出力側、すなわちpnpトランジスタQ4のエミッタ(ノードN2)に対して電流Iqが注入される。
ノードN2に電流Iqを注入することで、上述した2つのバッファ回路には等価な電流Iqが注入される。これにより、pnpトランジスタQ3,Q4のエミッタ電流の直流的なバランスが向上し、両者のベース−エミッタ電圧のアンバランスが小さくなるので、入力オフセット電圧が低減するという効果が得られる。
【0045】
バッファ回路(Q4,CS4)の出力インピーダンスは、npnトランジスタQ6のベースに比べてインピーダンスが十分小さいため、ノードN2に注入された電流Iqの大半は抵抗R4へ流れずバッファ回路(Q4,CS4)に流れる。npnトランジスタQ6のベース電流を無視すると、npnトランジスタQ6のベースに入力される電圧Vn4は、ノードN2の電圧Vn2とほぼ等しくなる。すなわち、npnトランジスタQ6のベースには、電流Iqによるリップル信号が重畳されていない電圧Vn4が入力される。
【0046】
このように、npnトランジスタQ5及びQ6による差動増幅回路では、電流Iqによるリップル信号が重畳された電圧Vn3と、リップル信号が重畳されていない電圧Vn4との差が増幅される。この増幅結果が更に出力増幅回路21において増幅されることにより、ロジック信号Scpが生成される。
以上が、コンパレータ2の説明である。
【0047】
制御回路3は、コンパレータ2から出力される信号Spに応じてMOSトランジスタML,MHのオン又はオフを制御する制御信号SL,SHを生成する。例えば制御回路3は、リップル信号を重畳された電圧Vn3が電圧Vn4より低くなったことを示すコンパレータ2の信号Spを入力すると、一定の時間MOSトランジスタMHをオンさせるとともにMOSトランジスタMLをオフさせる制御信号SL,SHを生成する。これにより、定常状態においては、電圧Vn3のボトムが電圧Vn4とほぼ等しくなるように出力電圧Voutが制御される。例えば、スイッチングの周期をT、入力電圧をVin、出力電圧をVout、トランジスタMHのオン期間(トランジスタHLのオフ期間)をTonとすると、Ton=T・(Vout/Vin)の関係式が成立する。
【0048】
ここで、上述した構成を有するスイッチング電源装置の動作を説明する。
【0049】
図4は、CR積分回路11に生じる電圧Vciと電圧電流変換回路12の電流Iqの波形を例示する図である。
MOSトランジスタMHは、例えば図4(A)に示すようなゲート−ソース電圧Vgsを受けて周期的にオンし、MOSトランジスタMLはMOSトランジスタMHのオンの期間に同期してオフする。MOSトランジスタML及びMHが交互にオンすることにより、インダクタLoの電圧波形は方形波状になる。
【0050】
MOSトランジスタML及びMHによるスイッチングの周期がCR積分回路11の時定数に比べて十分に短い場合、抵抗Riを介してキャパシタCiを充放電する電流はインダクタLoの方形波状の電圧と相似になる。この場合、キャパシタCiには、インダクタLoに流れるリップル電流と相似なリップル電圧Vrcが生じる。
リップル電圧Vrcは概ね次式で表わされる。
【0051】
(数4)
Vrc=(VL/r3)×(1/c2)×(Vout/Vin)×(1/fs)…(4)
【0052】
式(4)において、「VL」はインダクタLoの電圧(Vin−Vout)を示し、「fs」はスイッチング周波数を示す。
【0053】
図4(B)に示すように、出力電圧VoutにもインダクタLoのリップル電流に相似なリップル電圧が生じているが、その振幅は電圧Vciに含まれるリップル電圧の振幅に比べて小さい。キャパシタCoに例えばセラミックコンデンサなどESRの小さい素子を用いることで、出力電圧Voutのリップル電圧は非常に小さくなる。
【0054】
キャパシタCiの電圧(Vci−Vout)は、電圧電流変換回路12において電流Iqに変換される。例えば図4(B)に示すように、ノードNciの電圧Vciは出力電圧Voutを中心に振動する。この場合、キャパシタCiの電圧(Vci−Vout)は正負に振動しているため、電圧電流変換回路12より出力される電流Iqも正負に振動する(図4(C))。
【0055】
図5は、図3に示すコンパレータ2の各部の信号波形を例示する図である。
図5(A),(B)に示すように、出力フィードバック電圧VFBは、バッファ回路(Q3,CS3)の出力において、pnpトランジスタQ3のベース−エミッタ電圧Vbeだけ高電位側にレベルシフトされた電圧Vn1となる。また参照電圧Vrefは、バッファ回路(Q4,CS4)の出力において、pnpトランジスタQ4のベース−エミッタ電圧Vbeだけ高電位側にレベルシフトされた電圧Vn2となる。
pnpトランジスタQ3及びQ4のベース−エミッタ電圧が等しい場合(Vbe)、電圧Vn1とVn2の電位差は、出力フィードバック電圧VFBと参照電圧Vrefの電位差と等しくなる。電圧Vn1,Vn2は、抵抗R3,R4を介して差動増幅回路(Q5,Q6,CS2,CS5,CS6)に入力される。
【0056】
コンパレータ2のノードN3に注入される電流Iqは、インピーダンスの大きいnpnトランジスタQ5のベースには流れず、その大半が抵抗R3を介してバッファ回路(Q3,CS3)に流れる。そのため、ノードN3の電圧Vn3は、図5(C)の鎖線の波形に示すように、電流Iqによって抵抗R3(抵抗値r3)に生じるリップル電圧(Iq×r3)とノードN1の電圧Vn1とを加算した電圧にほぼ等しくなる。
【0057】
一方、コンパレータ2のノードN4に注入される電流Iqの大半は、低インピーダンスのバッファ回路(Q4,CS4)に流れる。そのため、抵抗R4に流れる電流は微小となり、ノードN4の電圧Vn4はノードN2の電圧Vn2とほぼ等しくなる。
従って、差動増幅回路(Q5,Q6,CS2,CS5,CS6)には、電流Iqによるリップル信号を重畳された電圧Vn3と、リップル信号を重畳されていない電圧Vn4とが入力される。
【0058】
差動増幅回路(Q5,Q6,CS2,CS5,CS6)において電圧Vn3,Vn4の電圧差が増幅され、その増幅結果が更に出力増幅回路21で増幅されることにより、電圧Vn3及びVn4の大小関係に応じたハイレベル又はローレベルのロジック信号Scpが生成される。
【0059】
電圧Vn3が電圧Vn4より低くなったことを示す信号Scpがコンパレータ2において生成されると、制御回路3によって一定の時間MOSトランジスタMHがオンに設定されるとともにMOSトランジスタMLがオフに設定される。MOSトランジスタMHがオンすると、ノードNswの電圧がノードNoutの電圧より高くなるので、キャパシタCiの電圧が直線的に上昇し、これに応じて電圧Vn3も直線的に上昇する。一定時間後にMOSトランジスタMHがオフしMOSトランジスタMLがオンすると、ノードNswの電圧がノードNoutの電圧より低くなるので、キャパシタCiの電圧が直線的に低下し、これに応じて電圧Vn3も直線的に低下する。従って、定常状態においては、電圧Vn3が低下から上昇へ転じるボトム付近のレベルと電圧Vn4とが等しくなる。
【0060】
以上述べたように、図1に示すスイッチング電源装置では、CR積分回路11のキャパシタCiにおいて、インダクタLoに印加される電圧の積分値に応じた電圧が発生する。キャパシタCiに生じるリップル電圧は、インダクタLoに流れるリップル電流と相似な波形を持つ。このキャパシタCiの電圧が電圧電流変換回路12において電流Iqに変換され、コンパレータ2における出力フィードバック電圧VFBの伝達経路上に設けられた抵抗R3に注入される。抵抗R3(抵抗値r3)には、インダクタLoに流れるリップル電流に応じたリップル電圧(Iq×r3)が生じる。その結果、コンパレータ2においては、インダクタLoのリップル電流に応じたリップル電圧(Iq×r3)と出力フィードバック電圧VFBに応じた電圧Vn1との合成信号である電圧Vn3が生成され、この電圧Vn3と参照電圧Vrefに応じた電圧Vn4とが比較される。コンパレータ2の出力信号Scpに応じて、電圧Vn3のボトム(若しくはピーク)と電圧Vn4とが等しくなるように、MOSトランジスタML及びMHのスイッチングが制御回路3により制御される。
【0061】
ところで、コンパレータ2の抵抗R3(抵抗値r3)に生じるリップル電圧(Iq×r3)の振幅は、電圧電流変換回路12の相互インダクタンスgmと抵抗値r3に応じて任意に設定可能である。CR積分回路11の時定数が小さい場合、キャパシタCiに生じるリップル電圧Vrcの振幅が必要以上に大きくなる可能性があるが、その場合でも、相互インダクタンスgmと抵抗値r3を適切に設定することによって、抵抗R3に生じるリップル電圧(Iq×r3)の振幅を適当に小さくなるように変換できる。すなわち、キャパシタCiに生じるリップル電圧と相似な信号であって、当該リップル電圧より振幅が小さいリップル信号を生成して、出力フィードバック電圧VFBに合成させることができる。
従って、図1に示すスイッチング電源装置によれば、キャパシタCi及び抵抗Riの素子値が半導体チップ上に形成可能な値となるように、CR積分回路11の時定数を小さく設定することが可能である。これにより、キャパシタCiと抵抗Riを半導体チップ上に集積することが可能となり、ディスクリート部品を削減することができる。
ディスクリート部品を削減できるので、従来に比べて回路面積を小さくすることが可能になるとともに、部品実装に係るコストを削減できる。また、部品の実装設計が容易になり、設計工数を短縮できる。
【0062】
また、図1に示すスイッチング電源装置によれば、図4(B)に示すように出力電圧Voutのリップル電圧が微小な場合であっても、十分な振幅のリップル信号を取り出して出力フィードバック電圧VFBに重畳できるので、キャパシタCoには低ESRタイプのキャパシタを使用できる。
【0063】
従来、リップルモード方式のスイッチング電源装置では、出力電圧において適当な振幅のリップル電圧を得るために、例えば機能性高分子アルミニウム電解コンデンサや導電性高分子アルミニウム固体コンデンサなど、比較的ESRの大きいキャパシタが使用されていた。セラミックコンデンサは、これらのキャパシタに比べて安価であり、占有面積が小さいという利点があるものの、ESRが非常に小さいため、リップルモード方式においては一般に使用されていなかった。
図1に示すスイッチング電源装置によれば、キャパシタCoにESRの小さいセラミックコンデンサを使用できるので、アルミニウム電解コンデンサ等を使用する場合に比べて部品コストを削減できるとともに回路面積を小さくすることができる。
また、セラミックコンデンサは故障時において一般にオープン状態となるので、キャパシタCoにセラミックコンデンサを用いれば、故障時にショート状態となるタイプのキャパシタを用いる場合に比べて信頼性を向上できる。
【0064】
更に、図1に示すスイッチング電源装置によれば、出力のキャパシタCoにセラミックコンデンサ等の低ESRタイプのキャパシタを用いることができるので、出力電圧Voutのリップル電圧を小さくできる。これにより、電圧Voutを電源電圧として使用する場合に電子回路の動作マージンを拡大することができ、信頼性を向上できる。
【0065】
また、図1に示すスイッチング電源装置においては、出力フィードバック電圧VFBを入力するバッファ回路(Q3,CS3)と参照電圧Vrefを入力するバッファ回路(Q4,CS4)がそれぞれ設けられており、前者のバッファ回路(Q3,CS3)の出力に接続された抵抗R3へ注入される電流Iqと等価な電流が後者のバッファ回路(Q3,CS3)の出力にも注入される。これにより、2つのバッファ回路に流れる電流のバランスが向上するので、当該2つのバッファ回路の入力オフセット電圧を低減できる。
【0066】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0067】
図6は、第2の実施形態に係るスイッチング電源装置の構成の一例を示す図である。
図6に示すスイッチング電源装置は、図1に示すスイッチング電源装置におけるリップル信号生成回路1を次に述べるリップル信号生成回路1Aに置き換えたものであり、他の構成要素については図1に示すスイッチング電源装置と同じである。
【0068】
リップル信号生成回路1Aは、図1におけるリップル信号生成回路1と同様な構成(CR積分回路11,電圧電流変換回路12)に加えて、キャパシタCiに生じる電圧を分圧する分圧回路13を有する。
分圧回路13は、本発明における分圧回路の一実施形態である。
【0069】
分圧回路13は、直列に接続された抵抗R5及びR6を含んでおり、抵抗R6の一方の端子がノードNciに接続され、他方の端子が抵抗R5を介してノードNoutに接続される。電圧電流変換回路12は、この分圧回路13により分圧された電圧、すなわち、抵抗R5の両端の電圧を電流Iqに変換する。
【0070】
キャパシタCi及び抵抗Riの素子値を半導体チップに集積可能な値に設定した場合、CR積分回路11の時定数が小さくなり、キャパシタCiに生じるリップル電圧の振幅が必要以上に大きくなってしまうことが考えられる。この振幅があまり大きいと、電圧電流変換回路12の入力レンジが不足してしまう可能性がある。本実施形態では、キャパシタCiに生じるリップル電圧の振幅を分圧回路13により分圧して電圧電流変換回路12に入力することにより、電圧電流変換回路12に入力されるリップル電圧を適切な範囲に設定することができる。
【0071】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
【0072】
図7は、第3の実施形態に係るスイッチング電源装置の構成の一例を示す図である。
図7に示すスイッチング電源装置は、図1に示すスイッチング電源装置におけるリップル信号生成回路1を次に述べるリップル信号生成回路1Bに置き換えたものであり、他の構成要素については図1に示すスイッチング電源装置と同じである。
【0073】
リップル信号生成回路1Bは、CR積分回路11Bと、電圧電流変換回路12と、分圧回路13B及び14を有する。
分圧回路13Bは、本発明における第1分圧回路の一実施形態である。
分圧回路14は、本発明における第2分圧回路の一実施形態である。
【0074】
CR積分回路11Bは、直列接続された抵抗Ri及びキャパシタCiを含んでおり、インダクタLo及びキャパシタCoの直列回路と並列に接続される。抵抗Riの一方の端子がノードNswに接続され、他方の端子がキャパシタCiを介して基準電位Gに接続される。
【0075】
分圧回路13Bは、キャパシタCiに生じる電圧を分圧する。分圧回路13Bは、直列接続された抵抗R5及びR6を含んでおり、抵抗R6の一方の端子が抵抗RiとキャパシタCiの接続ノード(ノードNci)に接続され、他方の端子が抵抗R5を介して基準電位Gに接続される。
【0076】
分圧回路14は、キャパシタCoに生じる電圧を分圧回路13Bと等価な分圧比により分圧する。分圧回路14は、直列接続された抵抗R7及びR8を含んでおり、抵抗R8の一方の端子がノードNoutに接続され、他方の端子が抵抗R7を介して基準電位Gに接続される。
【0077】
電圧電流変換回路12は、分圧回路13B及び14において分圧された電圧の差を電流Iqに変換する。図7の例では、抵抗R5及びR6の中間接続ノードと抵抗R7及びR8の中間接続ノードとの電圧差(Vdp−Vdn)を電流に変換する。電圧電流変換回路12は、例えば図2に示す構成を有する。
【0078】
図7に示すスイッチング電源装置においては、インダクタLo及びキャパシタCoの直列回路と並列にCR積分回路11Bが接続される。このCR積分回路11Bに印加される電圧は、インダクタLoのみに並列接続されたCR積分回路11(図1)に印加される電圧と比較して、キャパシタCoの電圧Voutだけ高くなる。従って、もし、CR積分回路11BのキャパシタCoに生じる電圧から電圧Voutを減算すれば、CR積分回路11(図1)のキャパシタCoに生じる電圧と等価な電圧が得られる。
ここで、分圧回路13B,14の分圧比を「γ」とすると、CR積分回路11BのキャパシタCoの電圧を分圧回路13Bによって分圧した電圧Vpnは、インダクタLoのみに並列接続されたCR積分回路11(図6)の電圧を分圧比γにより分圧した電圧に比べて「γ×Vout」だけ高くなる。従って、図7に示すように、分圧回路14によって得られる電圧「γ×Vout」と分圧回路13Bによって得られる電圧Vpnとの差(Vdp−Vdn)は、CR積分回路11の電圧を分圧比γにより分圧した電圧(図6参照)と等価になる。
【0079】
図7に示すスイッチング電源装置によれば、図6に示すスイッチング電源装置と同様に、キャパシタCiに生じるリップル電圧の振幅を電圧電流変換回路12の入力レンジに合わせて適切に低減できる。
また、図7に示すスイッチング電源装置では、電圧電流変換回路12の入力同相電圧がほぼ「γ×Vout」になっており、図6に示すスイッチング電源装置における電流電圧変換回路12の入力同相電圧「Vout」に比べて低くなる。これにより、電圧電流変換回路12の動作に使用する電源電圧を「Vout」より低くすることが可能となり、昨今の低電圧化したICに集積する上で有利である。
【0080】
<第4の実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
【0081】
図8は、第4の実施形態に係るスイッチング電源装置の構成の一例を示す図である。
図8に示すスイッチング電源装置は、図1に示すスイッチング電源装置におけるリップル信号生成回路1を次に述べるリップル信号生成回路1Cに置き換えたものであり、他の構成要素については図1に示すスイッチング電源装置と同じである。
【0082】
リップル信号生成回路1Cは、リップル信号生成回路1と同じCR積分回路11を有するとともに、キャパシタCiに生じるリップル電圧と出力フィードバック電圧VFBとを合成した合成信号Vci_fbを出力する信号合成回路15を有する。
信号合成回路15は、本発明における第1信号合成回路の一実施形態である。
【0083】
図9は、リップル信号生成回路1Cの構成の一例を示す図である。
図9に示すリップル信号生成回路1Cは、増幅器151〜153と抵抗R9〜R14を有する。
増幅器151の非反転入力端子はノードNciに接続され、その出力端子は反転入力端子に接続される。増幅器152の非反転入力端子はノードNfbに接続され、その出力端子は反転入力端子に接続される。増幅器153の反転入力端子は、抵抗R9を介して増幅器151の出力端子に接続されるとともに、抵抗R10を介して増幅器152の出力端子に接続される。増幅器153の出力端子は、抵抗R11を介してその反転入力端子に接続される。増幅器153の非反転入力端子は、抵抗R12を介してノードNoutに接続されるとともに、抵抗R13及びR14の並列回路を介して参照電圧Vrefに接続される。増幅器153において合成信号Vci_fbが出力される。
コンパレータ2は、この合成信号Vci_fbと参照電圧Vrefとを比較し、その比較結果に応じて信号Scpを生成する。
【0084】
図9に示す信号合成回路15において、増幅器151及び152はバッファ回路を構成しており、高インピーダンスで入力した電圧Vci,VFBを低インピーダンスで出力する。また、抵抗R9〜R11及び増幅器153は反転増幅回路を構成しており、増幅器151及び152で入力された電圧Vci,VFBにそれぞれ所定のゲインを乗じて加算する。反転増幅回路のゲインは負であり、各入力信号は反転増幅回路によって位相を反転される。
【0085】
増幅器153の非反転入力端子には、出力電圧Voutと参照電圧Vrefとを所定の割合で合成した合成電圧Vbが入力される。合成電圧Vbは、例えば次式で表わされる。
【0086】
(数5)
Vb=α・Vout+β・Vref…(5)
【0087】
合成電圧Vbにおける出力電圧Voutの成分(α・Vout)は、増幅器151に入力される電圧Vciの成分とともに、キャパシタCiの電圧(Vci−Vout)に比例した成分を生成する。割合αは、合成信号Vci_fbにおいてキャパシタCiの電圧(Vci−Vout)に比例した成分が生成されるように設定される。
【0088】
他方、合成電圧Vbにおける参照電圧Vrefの成分(β・Vref)は、合成信号Vci_fbにおける直流オフセット成分を生成する。割合βは、増幅器151において電圧Vciの代わりに出力電圧Voutを入力し(すなわちキャパシタCiの電圧をゼロとし)、かつ、増幅器152において出力フィードバック電圧VFBの代わりに参照電圧Vrefを入力した場合に生成される合成信号Vci_fbが参照電圧Vrefと等しくなるように設定される。
【0089】
ここで、図8に示すスイッチング電源装置の定常状態における動作について、図10を参照して説明する。図10は、合成信号Vci_fbと参照電圧Vrefの関係を例示する図である。
【0090】
合成信号Vci_fbに含まれる出力フィードバック電圧VFBの成分及びキャパシタCiの電圧(Vci−Vout)の成分は、共に位相が反転している。すなわち、出力フィードバック電圧VFBやキャパシタCiの電圧(Vci−Vout)が上昇すると合成信号Vci_fbのレベルは低下し、逆に、これらの電圧が低下すると合成信号Vci_fbのレベルは上昇する。
他方、本実施形態において、制御回路3は、合成信号Vci_fbが参照電圧Vrefより大きいことを示す信号Scpをコンパレータ2から入力すると、MOSトランジスタMHを一定時間オンさせる(図10(A))。MOSトランジスタMHがオンすると、インダクタLoに流れる電流が増大し、これに合わせてキャパシタCiの電圧(Vci−Vout)が上昇するため、合成信号Vci_fbは低下する(図10(B))。上記一定時間の後に制御回路3がMOSトランジスタMHをオフさせると(図10(A))、インダクタLoに流れる電流が減少し、キャパシタCiの電圧(Vci−Vout)も低下するため、合成信号Vci_fbは上昇する(図10(B))。従って、定常状態では、図10(B)に示すように、合成信号Vci_fbのピークと参照電圧Vrefとがほぼ等しくなる。
【0091】
さて、図9に示す信号合成回路15において、合成信号Vci_fbの直流オフセット成分は、キャパシタCiの電圧をゼロとし、かつ、出力フィードバック電圧VFBの代わりに参照電圧Vrefを入力した場合において、合成信号Vci_fbと参照電圧Vrefとが等しくなるように設定されている。従って、合成信号Vci_fbのピークと参照電圧Vrefとがほぼ等しくなる場合(図10(B))、キャパシタCiの微小なリップル電圧を無視すると、出力フィードバック電圧VFBは参照電圧Vrefに近似する。すなわち、定常状態の出力電圧Voutは、参照電圧Vrefと抵抗Rf1,Rf2の分圧比によって定められた目標電圧に近似する。
【0092】
図8に示すスイッチング電源装置によれば、信号合成回路15における電圧(Vci−Vout)のゲインを任意に設定できる。そのため、CR積分回路11の時定数を小さくしてキャパシタCiの電圧振幅を大きくした場合でも、合成信号Vci_fbに含まれるキャパシタCiの電圧成分の振幅を適当に小さくなるように変換することが可能である。従って、図8に示すスイッチング電源装置においても、CR積分回路11を半導体チップに集積化することが可能であり、図1に示すスイッチング電源装置と同様の効果を奏することができる。
【0093】
<第5の実施形態>
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。
【0094】
図11は、第5の実施形態に係るスイッチング電源装置の構成の一例を示す図である。図11に示すスイッチング電源装置は、図1に示すスイッチング電源装置におけるリップル信号生成回路1を次に述べるリップル信号生成回路1Dに置き換え、更にコンパレータ2をコンパレータ2Dに置き換えたものであり、他の構成要素については図1に示すスイッチング電源装置と同じである。
【0095】
リップル信号生成回路1Dは、リップル信号生成回路1と同じCR積分回路11を有するともに、キャパシタCiの電圧振幅を変換する振幅変換回路16を有する。
【0096】
振幅変換回路16は、キャパシタCiに生じるリップル電圧と相似な信号であって、当該リップル電圧より振幅が小さいリップル信号Vci_Xを生成する。図11の例において、リップル信号Vci_Xは出力電圧Voutを基準とする信号である。
【0097】
コンパレータ2Dは、出力フィードバック電圧VFBと参照電圧Vrefとの差を増幅するとともにリップル信号Vci_Xを増幅し、これらの増幅結果を合成して更に増幅することにより、ロジック信号Scpを生成する。
【0098】
図12は、コンパレータ2Dの構成の一例を示す図である。
図12に示すコンパレータ2Dは、npnトランジスタQ7〜Q10と電流源CS7〜CS10と、抵抗R15〜R18と、出力増幅回路21を有する。
npnトランジスタQ7,Q8、抵抗R15,R16及び電流源CS9を含む回路は、本発明の第1増幅段の一実施形態である。
npnトランジスタQ9,Q10、抵抗R17,R18及び電流源CS10を含む回路は、本発明の第2増幅段の一実施形態である。
電流源CS7は、本発明の第1負荷回路の一実施形態である。
電流源CS8は、本発明の第2負荷回路の一実施形態である。
出力増幅回路21は、本発明の第3増幅段の一実施形態である。
【0099】
npnトランジスタQ7のエミッタは抵抗R15を介してノードNm1に接続され、そのコレクタは電流合成ノードNS1(第1電流合成ノード)に接続され、そのベースには参照電圧Vrefが入力される。npnトランジスタQ8のエミッタは抵抗R16を介してノードNm1に接続され、そのコレクタは電流合成ノードNS2(第2電流合成ノード)に接続され、そのベースはノードNfbに接続される。電流源CS9は、ノードNm1と基準電位Gの間に接続される。
npnトランジスタQ9のエミッタは抵抗R17を介してノードNm2に接続され、そのコレクタは電流合成ノードNS1に接続され、そのベースはノードNoutに接続される。npnトランジスタQ10のエミッタは抵抗R18を介してノードNm2に接続され、そのコレクタは電流合成ノードNS2に接続され、そのベースにはリップル信号Vci_xが入力される。電流源CS10は、ノードNm2と基準電位Gの間に接続される。
電流源CS7は電流合成ノードNS1と電源ラインVddの間に接続され、電流源SC8は電流合成ノードNS2と電源ラインVddの間に接続される。
【0100】
npnトランジスタQ7,Q8、抵抗R15,R16及び電流源CS9は差動電圧を差動電流に変換する差動増幅回路を構成しており、出力フィードバック電圧VFBと参照電圧Vrefとの差に応じて、npnトランジスタQ7及びQ8のコレクタ電流の差(Iq8−Iq7)を発生する。
また、npnトランジスタQ9,Q10、抵抗R17,R18及び電流源CS10も差動電圧を差動電流に変換する差動増幅回路を構成しており、リップル信号Vci_Xと出力電圧Voutとの差(すなわちキャパシタCiの電圧)に応じて、npnトランジスタQ9及びQ10のコレクタ電流の差(Iq10−Iq9)を発生する。
そして、電流Iq7と電流Iq9が電流合成ノードNS1において合成されて電流源CS7に流れ、電流Iq8と電流Iq10が電流合成ノードNS2において合成されて電流源CS8に流れる。
従って、電流源CS7及びCS8に生じる電圧の差(すなわち電流合成ノードNS1及びNS2の電圧)は、差動電流(Iq8−Iq7)によって生じる成分と、差動電流(Iq10−Iq9)によって生じる成分とを合成したものになる。例えば、出力フィードバック電圧VFBが参照電圧Vrefに対して上昇する場合や、リップル信号Vci_Xが出力電圧Voutに対して上昇する場合には、電流合成ノードNS2の電流(Iq8+Iq10)が増大するため、電流合成ノードNS2の電圧が電流合成ノードNS1の電圧に対して低下する。逆に、出力フィードバック電圧VFBが参照電圧Vrefに対して低下する場合や、リップル信号Vci_Xが出力電圧Voutに対して低下する場合には、電流合成ノードNS2の電流(Iq8+Iq10)が減少するため、電流合成ノードNS2の電圧が電流合成ノードNS1の電圧に対して上昇する。
この電流合成ノードNS1及びNS2の電圧を、更に出力増幅回路21において増幅することにより、ハイレベル又はローレベルを有するロジック信号Scpが生成される。
【0101】
このように、図11にスイッチング電源装置では、出力フィードバック電圧VFBと参照電圧Vrefとの差を増幅した信号に対してリップル信号Vci_Xを合成し、その合成結果を更に増幅することにより、コンパレータ2Dのロジック信号Scpを生成している。そのため、出力フィードバック電圧VFBと参照電圧Vrefとの差が大きい段階では、ロジック信号Scpがハイレベル又はローレベルで一定となり、出力フィードバック電圧VFBと参照電圧Vrefとの差が十分小さくなると、リップル信号Vci_Xのピーク若しくはボトムを示すようにロジック信号Scpがハイレベル又はローレベルに切り替わる。
従って、図11に示すスイッチング電源装置においてもリップルモード方式の動作が可能である。
【0102】
また、図11に示すスイッチング電源装置によれば、振幅変換回路16においてキャパシタCiの電圧振幅を任意に変換できるため、CR積分回路11を半導体チップに集積化することが可能であり、図1に示すスイッチング電源装置と同様の効果を奏することができる。
【0103】
<第6の実施形態>
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。
【0104】
図13は、第6の実施形態に係るスイッチング電源装置の構成の一例を示す図である。図13に示すスイッチング電源装置は、図1に示すスイッチング電源装置におけるリップル信号生成回路1を次に述べるリップル信号生成回路1Eに置き換えたものであり、他の構成要素については図1に示すスイッチング電源装置と同じである。
【0105】
リップル信号生成回路1Eは、リップル信号生成回路1と同じCR積分回路11を有するとともに、キャパシタCiに生じるリップル電圧と参照電圧Vrefとを合成した合成信号Vref_ciを出力する信号合成回路17を有する。
信号合成回路17は、本発明における第2信号合成回路の一実施形態である。
【0106】
図14は、リップル信号生成回路1Eの一構成例を示す図である。
図14に示すリップル信号生成回路1Eは、電圧電流変換回路171と抵抗R19を有する。
電圧電流変換回路171は、キャパシタCiに生じる電圧(Vci−Vout)を電流Irpに変換する。電圧Vciが電圧Voutより低い場合に正の電流(吐き出し電流)を発生し、電圧Vciが電圧Voutより高い場合に負の電流(引き込み電流)を発生する。電圧電流変換回路171は、例えば図2に示す電圧電流変換回路12と同様な構成を有する。
抵抗R19は、一方の端子が電圧電流変換回路171の電流出力端子に接続され、他方の端子に参照電圧Vrefが印加される。電圧電流変換回路171の電流出力端子と抵抗R19との接続ノードにおいて合成信号Vref_ciが発生する。
コンパレータ2は、この合成信号Vref_ciと出力フィードバック電圧VFBとの比較結果に応じてロジック信号Scpを生成する。
【0107】
ここで、図13に示すスイッチング電源装置の定常状態における動作について、図15を参照して説明する。図15は、合成信号Vref_ciと出力フィードバック電圧VFBの関係を例示する図である。
【0108】
コンパレータ2の入力インピーダンスが十分に高い場合、電圧電流変換回路171から出力される電流の大半は抵抗R19に流れる。従って、抵抗R19の抵抗値を「r19」とすると、合成信号Vref_ciは次式で表わされる。
【0109】
(数6)
Vci_fb=r19×Irp+Vref…(6)
【0110】
制御回路3は、合成信号Vref_ciが出力フィードバック電圧VFBより高くなったことを示すコンパレータ2の信号Scpに応じて、MOSトランジスタMHを一定時間オンに設定する。MOSトランジスタMHがオンすると、インダクタLoの電流が増大し、キャパシタCiの電圧が上昇する。電流Irpは、「Vci<Vout」の場合に正となり、「Vci>Vout」の場合に負となるため、キャパシタCiの電圧が上昇すると合成信号Vci_fbは低下する。一定時間後、制御回路3がMOSトランジスタMHをオフに設定すると、インダクタLoの電流が減少し、キャパシタCiの電圧が低下するため、合成信号Vci_fbは上昇する。そして、合成信号Vref_ciが出力フィードバック電圧VFBより高くなると、再びMOSトランジスタMHがオンする。
このようにして、図15(B)に示すように、出力フィードバック電圧VFBは合成信号Vref_ciのピークとほぼ等しくなる。
【0111】
以上述べたように、図13に示すスイッチング電源装置によれば、電圧電流変換回路171の相互コンダクタンスや抵抗R19の抵抗値などを調整することによって、信号合成回路17における電圧(Vci−Vout)のゲインを任意に設定できるため、CR積分回路11の時定数を小さくしてキャパシタCiの電圧振幅を大きくした場合でも、合成信号Vci_fbに含まれるキャパシタCiの電圧成分の振幅を適当に小さくすることが可能である。従って、図13に示すスイッチング電源装置においても、CR積分回路11を半導体チップに集積化することが可能であり、図1に示すスイッチング電源装置と同様の効果を奏することができる。
【0112】
図16は、リップル信号生成回路1Eの他の構成例を示す図である。
図16に示すリップル信号生成回路1Eは、増幅器172〜174と抵抗R20〜R24を有する。
増幅器172の反転入力端子は、抵抗R20を介してノードNoutに接続される。増幅器172の出力端子は、抵抗R21を介してその反転入力端子に接続される。増幅器174の非反転入力端子は、ノードNciに接続される。増幅器174の反転入力端子は、その出力端子に接続される。増幅器173の反転入力端子は、抵抗R22を介して増幅器172の出力端子に接続されるとともに、抵抗R23を介して増幅器174の出力端子に接続される。増幅器173の出力端子は、抵抗R24を介してその反転入力端子に接続される。増幅器172及び173の非反転入力端子には参照電圧Vrefが印加される。
【0113】
増幅器174は、ノードNciの電圧Vciを高インピーダンスで入力し、これとほぼ等しい電圧を低インピーダンスで出力するバッファ回路を構成する。
増幅器172及び抵抗R20,R21は、電圧Voutを所定のゲインで位相を反転させて増幅する反転増幅回路を構成する。
また、増幅器173及び抵抗R22〜R24は、前段の反転増幅回路(172,R20,R21)の出力電圧及びバッファ回路(174)の出力電圧Vciをそれぞれ所定のゲインで位相を反転させて増幅し、加算する反転増幅回路を構成する。それぞれの反転増幅回路のゲインを適切に設定することにより、増幅器173から出力される合成信号Vci_fbには、キャパシタCiの電圧(Vci−Vout)に比例した成分が生じる。また、2つの反転増幅回路は何れも参照電圧Vrefを基準に増幅を行うため、キャパシタCiの電圧(Vci−Vout)がゼロの場合、合成信号Vci_fbは参照電圧Vrefと等しくなる。
従って、図16に示す回路構成でも、図14に示すリップル信号生成回路1Eと同等な合成信号Vci_fbを生成することができる。
【0114】
以上、本発明の幾つかの実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態のみに限定されるものではなく、種々のバリエーションを含んでいる。
【0115】
上述した実施形態では、インダクタLoに流れるリップル電流のボトム若しくはピークにおいてMOSトランジスタMHを一定時間オンさせ、これによりインダクタLoの電流を増大させる方式(固定オン時間方式)を例として挙げているが、本発明はこれに限定されない。例えば、インダクタLoに流れるリップル電流のボトム若しくはピークにおいてMOSトランジスタMHを一定時間オフさせ、これによりインダクタLoの電流を減少させる方式(固定オフ時間方式)にも本発明は適用可能である。また、入力電圧Vinや出力電圧Voutに応じて上記のオン時間やオフ時間を適応的に変化させることにより、スイッチング周波数の変動を抑える方式にも本発明は適用可能である。
あるいは、リップル成分と参照電圧を比較するコンパレータにヒステリシス特性を持たせてPWM信号を生成するヒステリシスPWM制御方式にも本発明は適用可能である。
すなわち、本発明は、様々なリップルモード方式のスイッチング電源装置に広く適用可能である。
【0116】
上述した第2、第3の実施形態は、その他の実施形態にも適用可能である。
例えば、図9に示すスイッチング電源装置では、キャパシタCiと並列に分圧回路13(図6)を設けて、その分圧回路13の出力電圧を信号合成回路15に入力してもよい。あるいは、CR積分回路11をCR積分回路11B(図7)に置換し、そのキャパシタCiと並列に分圧回路13B(図7)を設けて、分圧回路13Bの出力電圧を信号合成回路15に入力してもよい。
図11に示すスイッチング電源装置では、キャパシタCiと並列に分圧回路13(図6)を設けて、その分圧回路13の出力電圧を振幅変換回路16に入力してもよい。あるいは、CR積分回路11をCR積分回路11B(図7)に置換し、そのキャパシタCiと並列に分圧回路13B(図7)を設けるとともに、出力フィードバック電圧VFBを分圧する分圧回路14を設けて、分圧回路13B及び14の出力電圧の差を振幅変換回路16に入力してもよい。
図13に示すスイッチング電源装置では、キャパシタCiと並列に分圧回路13(図6)を設けて、その分圧回路13の出力電圧を信号合成回路17に入力してもよい。あるいは、CR積分回路11をCR積分回路11B(図7)に置換し、そのキャパシタCiと並列に分圧回路13B(図7)を設けるとともに、出力フィードバック電圧VFBを分圧する分圧回路14を設けて、分圧回路13B及び14の出力電圧の差を信号合成回路17に入力してもよい。
【0117】
上述した第1の実施形態では、出力フィードバック電圧VFBの伝達経路に設けられた抵抗R3に対して電流Iqを注入しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記とは逆に、参照電圧Vrefが伝達される経路の抵抗R4に対して電流Iqを注入してもよい。すなわち、参照電圧Vrefとリップル信号との合成信号を生成してもよい。この場合、ノードN1にも同じ電流Iqを注入することで、pnpトランジスタQ3,Q4に流れる電流の直流バランスを向上させて、入力オフセット電圧誤差を低減させることができる。
【符号の説明】
【0118】
1,1A〜1E…リップル信号生成回路、
2,2D…コンパレータ、
3…制御回路、
4…駆動回路、
11,11B…CR積分回路、
12,171…電圧電流変換回路、
13,13B,14…分圧回路、
15,17…信号合成回路、
16…振幅変換回路、
21…出力増幅回路、
151〜153,172,173…増幅器、
Lo…インダクタ、
Ci,Co…キャパシタ、
CS1〜CS10…電流源、
MH,ML…MOSトランジスタ、
M1〜M10…MOSトランジスタ、
Q1,Q2,Q5〜Q10…npnトランジスタ、
Q3,Q4…pnpトランジスタ、
R1〜R24…抵抗、
Rf1,Rf2…抵抗、
Vref…参照電圧、
VFB…出力フィードバック電圧
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧を受ける入力端子と、
出力電圧を出力する出力端子と、
上記入力端子と第1のノードとの間に接続される第1のスイッチングトランジスタと、
上記第1のノードと基準電位との間に接続され、上記第1のスイッチングトランジスタと相補的に動作する第2のスイッチングトランジスタと、
上記第1のノードと上記出力端子との間に接続されるインダクタンス素子と、
上記出力端子と基準電位との間に接続される出力キャパシタンス素子と、
上記出力端子に接続され、上記出力電圧に応じたフィードバック電圧を生成する分圧回路と、
上記出力電圧に含まれており、上記スイッチングトランジスタのスイッチング動作に対応するリップル電圧を検出するリップル電圧検出回路と、
上記フィードバック電圧と上記リップル電圧との加算電圧を基準電圧と比較して比較結果を出力する比較回路と、
上記比較結果に応じて上記第1及び第2のスイッチングトランジスタをオン・オフ制御する制御回路と、
を含み、
上記リップル電圧検出回路が上記インダクタンス素子に接続される積分回路を含み、
上記第1のスイッチングトランジスタのオン時間が、上記出力電圧と上記入力電圧との比と、上記第1及び第2のスイッチングトランジスタのスイッチング周期との積で定義される、
スイッチング電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスイッチング電源装置であって、
上記積分回路が、上記第1のノードと上記出力端子との間に直列に接続される抵抗素子とキャパシタンス素子とを含む、スイッチング電源装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスイッチング電源装置であって、
上記リップル電圧を入力して当該リップル電圧に応じた電流信号を出力する電圧電流変換回路を更に含み、
上記比較回路が、上記電流信号を電圧信号に変換するための第1の抵抗素子と、上記フィードバック電圧と上記電圧信号との加算電圧を上記基準電圧と比較するための差動回路とを含む、
スイッチング電源装置。
【請求項4】
請求項3に記載のスイッチング電源装置であって、
上記比較回路が、上記フィードバック電圧を入力する第1のバッファ回路と、上記基準電圧を入力する第2のバッファ回路と、上記第2のバッファ回路の出力に結合された第2の抵抗素子とを更に含み、
上記フィードバック電圧が、上記第1のバッファ回路と上記第1の抵抗素子とを介して上記差動回路の第1の入力に供給され、上記基準電圧が、上記第2のバッファ回路と上記第2の抵抗素子とを介して上記差動回路の第2の入力に供給され、
上記差動回路の第1の入力と上記第1の抵抗素子との接続中点に上記電圧電流変換回路から第1の電流が供給され、上記第2のバッファ回路の出力と上記第2の抵抗素子との接続中点に上記電圧電流変換回路から第2の電流が供給される、
スイッチング電源装置。
【請求項5】
請求項4に記載のスイッチング電源装置であって、
上記電圧電流変換回路が、
上記キャパシタンス素子の一方の端子の電圧を入力する第1のトランジスタと、上記キャパシタンス素子の他方の端子の電圧を入力する第2のトランジスタとを含む差動増幅回路と、
上記第1のトランジスタに流れる電流に対応する上記第1の電流を出力する第1の電流源回路と、
上記第2のトランジスタに流れる電流に対応する上記第2の電流を出力する第2の電流源回路と、
を含む、
スイッチング電源装置。
【請求項1】
入力電圧を受ける入力端子と、
出力電圧を出力する出力端子と、
上記入力端子と第1のノードとの間に接続される第1のスイッチングトランジスタと、
上記第1のノードと基準電位との間に接続され、上記第1のスイッチングトランジスタと相補的に動作する第2のスイッチングトランジスタと、
上記第1のノードと上記出力端子との間に接続されるインダクタンス素子と、
上記出力端子と基準電位との間に接続される出力キャパシタンス素子と、
上記出力端子に接続され、上記出力電圧に応じたフィードバック電圧を生成する分圧回路と、
上記出力電圧に含まれており、上記スイッチングトランジスタのスイッチング動作に対応するリップル電圧を検出するリップル電圧検出回路と、
上記フィードバック電圧と上記リップル電圧との加算電圧を基準電圧と比較して比較結果を出力する比較回路と、
上記比較結果に応じて上記第1及び第2のスイッチングトランジスタをオン・オフ制御する制御回路と、
を含み、
上記リップル電圧検出回路が上記インダクタンス素子に接続される積分回路を含み、
上記第1のスイッチングトランジスタのオン時間が、上記出力電圧と上記入力電圧との比と、上記第1及び第2のスイッチングトランジスタのスイッチング周期との積で定義される、
スイッチング電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスイッチング電源装置であって、
上記積分回路が、上記第1のノードと上記出力端子との間に直列に接続される抵抗素子とキャパシタンス素子とを含む、スイッチング電源装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスイッチング電源装置であって、
上記リップル電圧を入力して当該リップル電圧に応じた電流信号を出力する電圧電流変換回路を更に含み、
上記比較回路が、上記電流信号を電圧信号に変換するための第1の抵抗素子と、上記フィードバック電圧と上記電圧信号との加算電圧を上記基準電圧と比較するための差動回路とを含む、
スイッチング電源装置。
【請求項4】
請求項3に記載のスイッチング電源装置であって、
上記比較回路が、上記フィードバック電圧を入力する第1のバッファ回路と、上記基準電圧を入力する第2のバッファ回路と、上記第2のバッファ回路の出力に結合された第2の抵抗素子とを更に含み、
上記フィードバック電圧が、上記第1のバッファ回路と上記第1の抵抗素子とを介して上記差動回路の第1の入力に供給され、上記基準電圧が、上記第2のバッファ回路と上記第2の抵抗素子とを介して上記差動回路の第2の入力に供給され、
上記差動回路の第1の入力と上記第1の抵抗素子との接続中点に上記電圧電流変換回路から第1の電流が供給され、上記第2のバッファ回路の出力と上記第2の抵抗素子との接続中点に上記電圧電流変換回路から第2の電流が供給される、
スイッチング電源装置。
【請求項5】
請求項4に記載のスイッチング電源装置であって、
上記電圧電流変換回路が、
上記キャパシタンス素子の一方の端子の電圧を入力する第1のトランジスタと、上記キャパシタンス素子の他方の端子の電圧を入力する第2のトランジスタとを含む差動増幅回路と、
上記第1のトランジスタに流れる電流に対応する上記第1の電流を出力する第1の電流源回路と、
上記第2のトランジスタに流れる電流に対応する上記第2の電流を出力する第2の電流源回路と、
を含む、
スイッチング電源装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2010−252627(P2010−252627A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150745(P2010−150745)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【分割の表示】特願2008−194203(P2008−194203)の分割
【原出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(390020248)日本テキサス・インスツルメンツ株式会社 (219)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【分割の表示】特願2008−194203(P2008−194203)の分割
【原出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(390020248)日本テキサス・インスツルメンツ株式会社 (219)
【Fターム(参考)】
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